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明細書 :一般焼却灰を原料とするプロトン伝導性材料及びその製造方法。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5034038号 (P5034038)
公開番号 特開2008-016273 (P2008-016273A)
登録日 平成24年7月13日(2012.7.13)
発行日 平成24年9月26日(2012.9.26)
公開日 平成20年1月24日(2008.1.24)
発明の名称または考案の名称 一般焼却灰を原料とするプロトン伝導性材料及びその製造方法。
国際特許分類 H01B  13/00        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
C01B  25/32        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
FI H01B 13/00 Z
H01B 1/06 A
C01B 25/32 B
H01M 8/02 M
請求項の数または発明の数 5
全頁数 6
出願番号 特願2006-185160 (P2006-185160)
出願日 平成18年7月5日(2006.7.5)
審査請求日 平成21年3月10日(2009.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】福井 国博
【氏名】吉田 英人
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
【識別番号】100138955、【弁理士】、【氏名又は名称】末次 渉
【識別番号】100151873、【弁理士】、【氏名又は名称】鶴 寛
【識別番号】100109449、【弁理士】、【氏名又は名称】毛受 隆典
審査官 【審査官】井上 能宏
参考文献・文献 特開平10-279301(JP,A)
特開2004-203641(JP,A)
特開2003-217339(JP,A)
特開2006-164644(JP,A)
特開2007-265803(JP,A)
調査した分野 H01B 13/00
H01B 1/00~ 1/24
C01B 25/00~25/46
H01M 8/00~ 8/24


特許請求の範囲 【請求項1】
主成分としてカルシウムを含有する一般焼却灰リン酸とを混合した混合物を加熱してリン酸カルシウムガラスを主成分とする金属リン酸塩ガラスを生成し、
前記金属リン酸塩ガラスに水を加えてゲル化させ、リン酸カルシウムハイドロゲルを主成分とするプロトン伝導性材料を得ることを特徴とするプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項2】
前記混合物を800℃以上で加熱することを特徴とする請求項1に記載したプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項3】
前記金属リン酸塩ガラスを粉砕して得られたリン酸塩ガラス粉末に水を加え、加温してゲル化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項4】
得られた前記プロトン伝導性材料を更に水蒸気に暴露して結晶化させることを特徴とする、請求項1ないし請求項のいずれか一項に記載したプロトン伝導性材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載したプロトン伝導性材料の製造方法により製造されることを特徴とする、リン酸カルシウムを主成分とするプロトン伝導性材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、一般焼却灰を原料とするプロトン伝導性材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般焼却灰の新たなリサイクルの手段を提供すると共に、水素を燃料とする燃料電池や電解式オゾン水製造装置用として安価なプロトン伝導性材料を提供し、特に燃料電池の普及促進に貢献するものである。非特許文献1に拠れば、わが国の一般廃棄物の排出量は、平成15年度では5,160万トンであり、ほぼ横ばいである。排出量の約90%は中間処理に回される。その中間処理の80%弱は直接焼却であり、その結果として650万トン以上の焼却灰(前記のように一般廃棄物を焼却処理した結果排出された焼却灰を以後一般焼却灰と呼ぶ)が排出する。そして、この一般焼却灰が最終処分量の約80%を占めている。近年、リサイクルの促進により徐々に一般焼却灰の排出量が減少しているとは言え、上記の構図に大きな変化はない。年々最終処分場の確保が難しくなっている現状において、この一般焼却灰処分の負担は非常に大きく、それを減らすことは急務である。
【0003】
一般焼却灰の一部は、既にセメントの原料として再利用されているが、セメント原料としては既に高炉スラグ、石炭灰、副産石膏、汚泥・スラッジその他多くの廃棄物が使用されている上、セメント自体の需要はむしろ減少傾向にあることから、これ以上多くは望めない。他に、一般焼却灰をゼオライトやトバモライトの原料として利用する研究がされているが、未だ研究段階である上、付加価値としては高くはない。従って、もっと付加価値が高く有効な再利用の方法の開発が望まれているのが現状である。
【0004】
一方、一般焼却灰はカルシウム(以下Caと表す)を主成分とする金属類の混合物であることから、本発明の発明者等は、これを原料とするプロトン伝導性材料の合成の可能性に着目した。
【0005】
特許文献1には、プロトン伝導性材料に関する従来の技術とその問題点ついて詳しく述べられている。即ち、室温付近で高い電導性を示すプロトン伝導性材料として、ウラニル酸水和物やモリブド酸水和物の無機結晶系プロトン伝導体や、フッ化ビニル系高分子にパースルホン酸基を含む側鎖を有する高分子イオン交換膜等の有機系プロトン伝導材、さらにケイ酸塩を主成分としリン酸が少量添加されたゾル-ゲル多孔質ガラスなどが知られている。
【0006】
さらに、特許文献1によれば、上記の無機結晶系プロトン伝導体は結晶が微小な固体であることから薄肉化及び大型化され難く燃料電池には不向きである。また、有機系プロトン伝導体やゾル-ゲル多孔質ガラスは、高い電導性を維持するために周囲の水蒸気圧を飽和状態に近く維持する必要があり、そのためにこれらを燃料電池用の電解質として使用する場合、燃料電池に加湿器が必須となってシステムが大型化するなどの問題がある。これは実用化の大きな障害となっている。さらに、高分子イオン交換膜やゾル-ゲル多孔質ガラスを燃料電池の電解質として使用する場合、材料に存在する微小な孔が、水素を供給するためのメタノール自体を透過してしまう現象(クロスオーバー現象)を生じ発電効率が悪化し易いことも知られている。
【0007】
特許文献1ではこれらの問題点を解決するする手段として、二価の金属のリン酸塩ハイドロゲルをプロトン伝導性材料とすることを提唱している。
【0008】
しかし、焼却灰を原料としたリン酸塩ハイドロゲルによるプロトン伝導性材料に関する研究は報告されていない。

【非特許文献1】環境省大臣官房廃棄物リサイクル対策部廃棄物対策課 : 日本の廃棄物処理 平成 15 年度版(2005)
【特許文献1】特開2003-217339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般焼却灰を原料とするプロトン伝導性材料と、その製造法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は一般焼却灰にリン酸を混合し熱処理する方法によりプロトン伝導性物質を製造し、一般焼却灰を再利用することを特徴とする。一般廃棄物焼却に於いては、燃焼の際にダイオキシンやSOx・NOxの発生を抑制する目的でカルシウム化合物が供給される。そのため派生する灰には、主成分としてCaが通常50%以上含まれるが、廃棄物や補助燃料に由来する他の金属、例えばカリウムK、ケイ素Si、アルミニウムAl、イオウS、亜鉛Zn、鉄Fe、チタンTiなども含まれるのが通常である。発明者は一般焼却灰にリン酸を混合して熱処理することにより、リン酸カルシウムハイドロゲルを主成分とする物質であってプロトン伝導材料としての特性を有する物質が生成されることを確認した。
【0011】
前記したプロトン伝導材料としての特性を示すリン酸カルシウムハイドロゲルを主成分とする物質の生成工程は、一般焼却灰にリン酸を加えた混合物を800℃以上、望ましくは800℃~1300℃の温度で熱処理をする。リン酸の添加量は灰に含まれる金属分をリン酸塩にするに要する理論量の0.5~2.5倍量(リン酸/Ca重量比)の範囲であり、望ましくは5/8以上とする。前記の一般焼却灰に含まれた各種金属はリン酸と反応してリン酸塩となり、反応の進行とともにガラス化する。その結果、リン酸カルシウムガラスを主成分とし、他の金属のリン酸塩のガラスも含んだ混合物を得る。
【0012】
次に、得られたリン酸カルシウムガラスを主成分とする金属リン酸塩ガラスを粉砕して微粉末とし、これに水を加えて20℃~60℃、相対湿度80%以上の環境下に保持してゲル化反応を進行させる。この反応でリン酸カルシウムハイドロゲルを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲルを得る。実験の結果このゲルは、純粋な炭酸カルシウムを原料として、同様の方法で造ったリン酸カルシウムハイドロゲルを上回るプロトン伝導性を有することが確認された。
【0013】
さらに、上記0011及び0012に記載した工程で生成したゲルを、80℃以上の高温の水蒸気に暴露して結晶化させることにより、プロトン伝導性は更に向上することが確認された。以上に記載した一般焼却灰とリン酸との化合物を熱処理して生成された物質は、一般焼却灰に通常含有される微量金属の存在にも関わらずプロトン伝導性を有し、燃料電池等の電解物質としての使用が可能であることが確認された。
【発明の効果】
【0014】
一般焼却灰を原料とするリン酸カルシウムハイドロゲルを主成分とするリン酸塩ハイドロゲルをプロトン伝導性材料として使うことにより、燃料電池の大幅なコストダウンを実現し、燃料電池の普及が図れ、結果として地球環境対策に大きく貢献することができる。また、一般焼却灰のリサイクルを促進し、最終処分場の負荷の軽減に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に実施例を示すが、これは本発明の限定を意図するものではない。
まず、一般焼却灰の組成の一例を表-1に示す。これは、蛍光X線分析により定量分析した結果である。Caを主成分とする金属の混合物であることが分かる。
【表1】
JP0005034038B2_000002t.gif

【0016】
上記の例と同じ一般焼却灰(中位径60μm )20.0gと85%リン酸27.0gの混合物を、マッフル炉により30分間1,200℃で熱処理を行った後、急冷させてリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩のガラスを得る。比較のために、一般焼却灰の代わりに純粋な炭酸カルシウムを原料として同様の方法でリン酸カルシウムガラスを造った。
【0017】
次に、上記で得られたリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ガラスを鋼製ボールミルで粉砕した。このガラス粉末と蒸留水を混合し、恒温恒湿度条件下でゲル化反応を進行させることにより、リン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲルを生成させた。ハイドロゲルの電導率をゲル化反応時間に応じて測定した。導電率は後述の測定法を用いて行った。比較のために造った上記の純粋なリン酸カルシウムガラスについても、同様の方法で、ゲル化させてリン酸カルシウムハイドロゲルとし導電率を測定した。
【0018】
図1は、上記の方法で造ったリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲルの導電率をゲル化時間に対してプロットしたものである。また図1には、比較のために造った純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルの導電率も同様にプロットした。これによれば本発明によるリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲルの導電率は、純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルのそれよりも高いことが分かる。
【0019】
次に、上記で得たリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲルを90℃の水蒸気に6時間暴露することにより結晶化させた。得られた結晶化ゲルの導電率を10℃~70℃の範囲で温度を変えて測定し、導電率に対する温度の影響をみた。比較のために造った純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルについても同様の方法で結晶化し導電率を測定した。
【0020】
図2に、結晶化前後の本発明による金属リン酸塩ハイドロゲルの導電率を温度に対してプロットした。また図2には、比較のために純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルについても同様に導電率をプロットした。これによれば、結晶化により電導度は上昇することが分かる。また、温度の上昇に伴って伝導度は指数的に上昇することがわかる。さらに、結晶化後における電導度は、純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルの方が高いが、本発明による金属リン酸塩ハイドロゲルも充分実用に耐える電導度を持っていることが分かる。
【0021】
以上から、本発明の方法により、一般焼却灰を原料とする高プロトン伝導性材料と、その製造法を提供できることが分かった。
【0022】
ゲルの電気的特性は、交流4端子法でインピーダンスを測定することにより評価した。インピーダンスから、下記の式を使って導電率を算出した。なお、インピーダンス測定の際のゲルの含水率は52%、交流周波数は100Hz~10kHz、印加電圧は1.0Vとした。
σ = L / (Z・A)
σ:導電率 (S/cm)
L :電圧端子間距離 (cm)
Z :インピーダンス値(Ω)
A :試料断面積 (cm2)
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、一般焼却灰の有効利用と、安価な高プロトン伝導性材料を提供する重要な技術である。本発明で得られる高プロトン伝導性材料は、燃料電池や電解式オゾン水製造装置の電解膜としての適用の可能性が高く、特に燃料電池の普及促進に寄与することが期待される。また一般焼却灰のリサイクルを促進し、最終処分場の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明によるリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲル、及び純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルの、ゲル化反応時間と導電率との関係を示すグラフである。
【図2】本発明によるリン酸カルシウムを主成分とする金属リン酸塩ハイドロゲル、及び純粋なリン酸カルシウムハイドロゲルの、結晶化前と結晶化後における、温度と導電率との関係 を示したグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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