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明細書 :ガラス材料の加工法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734569号 (P4734569)
公開番号 特開2008-019123 (P2008-019123A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成20年1月31日(2008.1.31)
発明の名称または考案の名称 ガラス材料の加工法
国際特許分類 C03C  15/00        (2006.01)
C03C  23/00        (2006.01)
C03C  14/00        (2006.01)
G02B   6/13        (2006.01)
G02B   6/12        (2006.01)
G02B   3/00        (2006.01)
G02B   1/02        (2006.01)
FI C03C 15/00 G
C03C 23/00 D
C03C 14/00
G02B 6/12 M
G02B 6/12 N
G02B 3/00 Z
G02B 1/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2006-191795 (P2006-191795)
出願日 平成18年7月12日(2006.7.12)
審査請求日 平成21年7月6日(2009.7.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】小松 高行
【氏名】本間 剛
【氏名】紅野 安彦
【氏名】藤原 巧
個別代理人の代理人 【識別番号】100105647、【弁理士】、【氏名又は名称】小栗 昌平
【識別番号】100105474、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 弘徳
【識別番号】100108589、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 利光
審査官 【審査官】山崎 直也
参考文献・文献 特開2000-313629(JP,A)
特開2006-290630(JP,A)
特開2008-156200(JP,A)
調査した分野 C03C 15/00-23/00
特許請求の範囲 【請求項1】
SiO、GeO、B、P、TeO、Ga、MoO及びWOから選ばれる少なくとも1種のガラス形成酸化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種とを含有するガラス母体に、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、銅から選ばれる少なくとも1種を添加してなるガラスを、(a)還元処理または酸化処理して表面から所定深度にわたりレーザ光の発振波長における吸収係数が増大した光吸収層を形成した後、(b)ガラス表面または前記光吸収層の所定の深度にレーザ光の焦点を合わせて該レーザ光を照射し、前記ガラスの表面から前記深度にわたり前記ガラスに含まれる成分からなる異質層を形成した後、エッチング剤と接触させて前記異質層または該異質層の周囲部分を除去することを特徴とするガラス材料の加工法。
【請求項2】
前記(a)の後に、還元処理により前記光吸収層を形成した場合は酸化処理を行い、酸化処理により前記光吸収層を形成した場合は還元処理を行って当該光吸収層のガラス表面側の領域を一部消失させる工程を行うことを特徴とする請求項1記載のガラス材料の加工法。
【請求項3】
レーザ光を照射して異質層を形成した後、光吸収層を還元処理により形成した場合は酸化処理を行い、酸化処理により形成した場合は還元処理を行って前記光吸収層を消失させることを特徴とする請求項1または2記載のガラス材料の加工法。
【請求項4】
異質層として、ガラス組成の異なる領域、クラック、屈折率の異なる領域、結晶化領域または相分離領域を形成することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のガラス材料の加工法。
【請求項5】
結晶化領域が、非線形光学結晶BaTiSi、BaTiGe、BiBO、BaB、(Sr、Ba)NbO、LaBGeO、Nd(MoO、Sm(MoO、Gd(MoO、BaTi(BO、BaTi(BO、LiBGeO、BaTiO、LiNbO、KNbOからなる結晶群の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項4記載のガラス材料の加工法。
【請求項6】
レーザ光を、連続的に移動させながら間歇的に照射する、あるいは移動速度0.1~5000μm/sにて連続的に移動させることで異質層をパターン化することを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のガラス材料の加工法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの表面及び/または内部にパターンを形成するための微細加工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイパネル、光導波路、フォトニック結晶等に代表されるように、ガラス材料の微細加工技術において、ナノ~サブμmオーダーでの加工技術が要求されつつある。一般的にガラス表面を加工する技術としては(1)半導体プロセスを応用したフォトリソグラフィーや、(2)現在プラズマディスプレイパネルのリプ形成において利用されているサンドブラスト加工等が挙げられる(例えば、特許文献1~3参照)。しかし、フォトリソグラフィーでは半導体技術をそのまま応用できるため、ナノオーダーでの加工が可能であるものの、レジスト形成-エッチング-レジスト除去の一連の工程を経るため工程が複雑である。また、サンドブラスト加工では、大面積領域を高速に加工できるものの、マイクロメートルオーダーより微細な加工は困難である。
【0003】
また、これらの手法はガラス表面を加工する方法であるが、ガラス内部を微細加工する方法は報告例が少ない。良く知られた方法では、ピコ~フェムト秒のパルス幅を持つレーザを透明なガラスに集光照射して集光点で小爆発(マイクロエクスプロージョン)を誘起させてスルーホールを形成する方法が報告されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、加工対象の多くはシリカ系であり、密度の高いガラスに対しては注入するエネルギー量(消費電力)に対する加工効率が悪く実用的な技術までには至っていない。また、加工部が滑らかな仕上がりであることも電子部品及び光学部品等の応用には必要事項であるが、上記のフォトリソグラフィー以外で達成することは困難であった。
【0004】

【特許文献1】特開平6-64939号公報
【特許文献2】特開平10-104815号公報
【特許文献3】特開平5-182592号公報
【特許文献4】特開2004-101585号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、ガラスの表面または内部に対し微細なパターンを高精度で効率良く、低コストで形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は下記のガラス材料の加工法を提供する。
(1)SiO、GeO、B、P、TeO、Ga、MoO及びWOから選ばれる少なくとも1種のガラス形成酸化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種とを含有するガラス母体に、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、銅から選ばれる少なくとも1種を添加してなるガラスを、(a)還元処理または酸化処理して表面から所定深度にわたりレーザ光の発振波長における吸収係数が増大した光吸収層を形成した後、(b)ガラス表面または前記光吸収層の所定の深度にレーザ光の焦点を合わせて該レーザ光を照射し、前記ガラスの表面から前記深度にわたり前記ガラスに含まれる成分からなる異質層を形成した後、エッチング剤と接触させて前記異質層または該異質層の周囲部分を除去することを特徴とするガラス材料の加工法。
(2)前記(a)の後に、還元処理により前記光吸収層を形成した場合は酸化処理を行い、酸化処理により前記光吸収層を形成した場合は還元処理を行って当該光吸収層のガラス表面側の領域を一部消失させる工程を行うことを特徴とする上記(1)記載のガラス材料の加工法。
(3)レーザ光を照射して異質層を形成した後、光吸収層を還元処理により形成した場合は酸化処理を行い、酸化処理により形成した場合は還元処理を行って前記光吸収層を消失させることを特徴とする上記(1)または(2)記載のガラス材料の加工法。
(4)異質層として、ガラス組成の異なる領域、クラック、屈折率の異なる領域、結晶化領域または相分離領域を形成することを特徴とする上記(1)~(3)の何れか1項に記載のガラス材料の加工法。
(5)結晶化領域が、非線形光学結晶BaTiSi、BaTiGe、BiBO、BaB、(Sr、Ba)NbO、LaBGeO、Nd(MoO、Sm(MoO、Gd(MoO、BaTi(BO、BaTi(BO、LiBGeO、BaTiO、LiNbO、KNbOからなる結晶群の少なくとも1種を含有することを特徴とする上記(4)記載のガラス材料の加工法。
(6)レーザ光を、連続的に移動させながら間歇的に照射する、あるいは移動速度0.1~5000μm/sにて連続的に移動させることで異質層をパターン化することを特徴とする上記(1)~(5)の何れか1項に記載のガラス材料の加工法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォトリソグラフィー等の複雑な工程を経ないで微細加工が可能であることから、コスト削減に有効である。また、得られる微細加工ガラスは光導波路、フォトニック結晶素子、ディスプレイパネル基板等の電子部品、光学部品に供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1~図3は、本発明に係るガラス材料の加工法の基本工程を模式的に示す図であり、図1はその斜視図、図2はレーザ照射部分を図1のXZ断面に沿って示す図、図3は同じくYZ断面に沿って示す図(但し、異質層は4条)である。
【0010】
本発明では、SiO、GeO、B、P、TeO、Ga、V、MoO、WOから選ばれる少なくとも1種のガラス形成酸化物と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移元素及び希土類元素から選ばれる少なくとも1種とを含有するガラス母体に、チタン、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、バナジウム、銅から選ばれる少なくとも1種(以下、「熱源元素」という)を添加してなるガラス1を出発材料に用いる。ガラス1において、ガラス形成酸化物は、ガラス形成能を高める効果がある。また、熱源元素は、レーザ光の吸収源として作用し、異質層の形成に寄与する。更に、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び希土類元素は、異質層の形成を促進するための補助媒体として機能する。
【0011】
尚、ガラス1において、これら各成分の組み合わせには制限はなく、使用する用途に応じで任意の組成を選択することが好ましい。また、ガラス1は、一般のガラスに含まれるその他の成分を含んでもよい。更に、ガラス1は、ガラス転移温度が250~750℃となるようなガラス組成であることが好ましい。ガラス転移温度が低くなるほど、遷移金属及び希土類元素の添加量は少なくて済むが、250℃未満では化学耐久性に問題が生じ、エッチング液に浸漬しなくても大気中で分解するおそれがある。一方、ガラス転移温度が高くなるほど遷移金属及び希土類元素を多量に添加する必要がある。光学部品への応用を考慮すると、透明性が保たれるガラス転移温度の上限は750℃程度が好ましい。
【0012】
加工に際し、先ず、各図の(a)に示すように、ガラス1の表面に還元処理または酸化処理に施す。還元処理または酸化処理により、ガラス1の熱源元素のイオン価が変わり、ガラス1の表面から所定深度にわたり、照射されるレーザ光の吸収係数が増大した光吸収層3が形成される。従って、還元処理及び酸化処理の何れかを採択するかは、照射されるレーザ光の発振波長における吸収係数が大きくなればどちらでもよい。例えば、波長1064nmのNd:YAGレーザを用いる場合は、ガラス1の熱源元素のイオン価がそれぞれTi3+、V3+、V4+、Fe2+、Cr3+、Cr4+、Mn4+、Cu2+であるとより効率的にレーザ光を熱に変換する。そのため、ガラス1に添加された状態での熱源元素のイオン価を元に、このようなイオン価になるように、還元処理または酸化処理の何れかを選択する。
【0013】
尚、酸化処理は、酸化性の気体(酸素、オゾン、二酸化窒素等)、酸化性溶融塩(過マンガン酸カリウム、二酸化ナトリウム等)中にてガラス1を熱処理すればよい。一方、還元処理は還元性の気体(水素、アンモニア、アセチレン、一酸化炭素等)、還元性溶融塩(アンモニウム塩、ハロゲン化物塩等)中にてガラス1を熱処理すればよい。また、熱処理に用いられる酸化剤や還元剤の種類、気体を用いるときの気圧、加熱温度等の条件はガラス1の組成に応じ適宜設定されるが、加熱温度はガラス転移温度±100℃の範囲が好ましい。還元処理または酸化処理を施す前に、レーザ照射面となるガラス表面を光学研磨することも好ましい。
【0014】
次いで、光吸収層3中にレーザ光4を照射する。レーザ光4はレンズ5を用いて、光吸収層3に集光点6を合わせ、集光点6の位置を例えばX方向に空間的に連続して移動させることで、光吸収層3に線状の異質層2を形成することができる。これは、照射されたレーザ光4が、光吸収層3に存在する熱源元素にレーザ光4に対応するエネルギー順位間の遷移を励起し、光励起した電子が輻射を伴わない緩和、つまり熱を放出し、これら熱源元素の周囲で局所的な加熱が起こるためである。そして、光吸収層3では、上記のように熱源元素が光励起をより起こしやすいイオン価になっており、異質層2の形成がより促進される。従って、異質層2を確実に形成するには、熱源元素の含有量を、ガラス1を構成する全成分の合計量に対して0.1~20モル%とすることが好ましく、0.5~5モル%がより好ましい。
【0015】
レーザ光4は、照射部分を異質層2に変化させることができるエネルギー量であれば、発振波長、種類は問わないが、熱源元素の極大吸収波長近傍であることが好ましく、具体的には波長1064nmのNd:YAGレーザを用いることが好ましい。ナノ秒以下のパルス幅を持つレーザを使用することによってガラス内部に異質層2を形成することができる。また、連続発振のレーザを用いることにより、空間的にレーザ光4の集光点6を移動させて線状加工が可能となる。また、波長1064nmのNd:YAGレーザを用いた場合、レーザ光4の照射パワーが3~100W/cmであることが特に好ましい。尚、線状に移動させる場合、レーザ光4の移動速度は0.1~5000μmであることが好ましく、より好ましくは0.1~500μm/sであり、特に好ましくは1~100μm/sである。
【0016】
異質層2は、ガラス組成が異なる領域、クラック、屈折率の異なる領域、結晶化領域、相分離領域の何れかであるが、これらの何れの形態を採るかは、ガラス組成やレーザ照射強度等により決まる。尚、クラックの形成には、ビッカース圧子により微小クラックを形成し、その後、微小クラックにレーザ照射すればよい。
【0017】
次いで、各図の(b)に示すように、ガラス1を、異質層2が形成された深度までエッチング液に浸漬することで、ガラス1を優先的にエッチングし、異質層2のみを残すことでガラス1の表面に線状の凸部が形成される。あるいは、図3(c)に示すように、ガラス1の全体をエッチング液中に浸漬し、異質層2を優先的にエッチングすることで、ガラス1の表面に線状の凹溝を形成することもできる。
【0018】
ここで、異質層2をエッチングするのか、周辺のガラス1をエッチングするのかは、ガラス構成成分及び異質層2の形態によって異なる。また、エッチング液の種類及び濃度は、ガラス組成によって化学的耐久性が異なるため、ガラスの化学的耐久性に応じて選択されるべきであるが、作業の効率を考慮すると、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸等の強酸水溶液、有機酸もしくはそれらの混合液で処理されることが好ましい。
【0019】
尚、所望により、図2(c)に示すように、残存する光吸収層3を消失させることもできる。光吸収層3を消失させるには、先の光吸収層3の形成に際し、還元処理を行った場合は酸化処理、酸化処理を行った場合は還元処理を行えばよい。ここでの還元処理または酸化処理は、光吸収層3を形成したきの還元処理または酸化処理と同様に行うことができ、その処理条件はいずれも残存する光吸収層3を消失できれば制限はない。
【0020】
また、上記の工程に従い、光吸収層3にレーザ光4を移動させながら間歇的に照射し、エッチング液に浸漬することにより、図4に示すように、異質層2を周期的なドットアレイとして形成することもできる。
【0021】
更に、上記の工程では、レーザ光4を光吸収層3の表面に照射しているが、レーザ光4を、レンズ5を調整して集光点6を光吸収層3の内部の所望の位置(深さ)に照射することで、ガラス1の内部に異質層2を形成することもできる。また、レンズ5によりレーザ光4の集光点6の深度調整を行う方法の他に、下記の工程を経ることでガラス1の内部に異質層2を形成することができる。
【0022】
図5はその工程を示す模式図であるが、図2に従いXZ断面を示している。先ず、図5(a)に示すように、ガラス1を還元処理または酸化処理して所定の深度で光吸収層3を形成する。
【0023】
次いで、図5(b)に示すように、光吸収層3を還元処理で形成した場合は酸化処理、光吸収層3を酸化処理で形成した場合には還元処理を行い、光吸収層3のガラス表面側の一部を所定の深度まで消失させる。ここでの還元処理または酸化処理は、光吸収層3を形成したきの還元処理または酸化処理と同様に行うことができ、その処理条件はいずれも残存する光吸収層3を消失できれば制限はない。これにより、ガラス1の所定の深度に光吸収層3が形成される。
【0024】
次いで、図5(c)に示すように、光吸収層3にレーザ光1を照射して照射部分を異質層2に変化させる。レーザ照射は、レンズ5を調整して、集光点6を光吸収層3に合わせ、X方向またはY方向に走査する。
【0025】
そして、ガラス1をエッチング液に浸漬することで、側端面に露出している異質層2を起点としてエッチング液がガラス内部へと浸入し、異質層2が除去される。
【0026】
尚、この場合も、所望により、図5(d)に示すように残存する光吸収層3を消失させる。光吸収層3を消失させるには、上記と同様に、先の光吸収層3の形成に際し、還元処理を行った場合は酸化処理、酸化処理を行った場合は還元処理を行う。
【0027】
尚、上記一連の工程は、酸化処理または還元処理により光吸収層3を形成した後、光吸収層3にレーザ照射を行っている。しかし、ガラス1に含まれる熱源元素が、レーザ光の吸収係数が大きくなるイオン価(上記の例では、Ti3+、V3+、V4+、Fe2+、Cr3+、Cr4+、Mn4+、Cu2+)に予めなっている場合には、光吸収層3を形成することなく、レーザ照射を行うことができる。このように吸収係数の大きなイオン価の熱源元素を含むガラス1にするには、ガラス形成に用いる熱源元素含有化合物として、前記イオン価となるものを使用する。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
[実施例1]
0.3モル%のFe、33.3モル%のBaO、16.7モル%のTiO及び50モル%のGeOからなるガラスを溶融法により作製し、10mm×10mm×1mmに加工後、レーザ照射面となる10mm×10mmの面に光学研磨を施した。その後、レーザ照射面を上にして、ガラス転移温度近傍の670℃で、2時間、1気圧、7%H-93%Ar混合雰囲気中にて還元熱処理を行い、表面近傍にFe2+を多く含有する光吸収層3を生成した(図2(a)参照)。光吸収層3の生成は、端面を鏡面加工して光学顕微鏡観察で行い、表面から200μmの厚さを持つことを確認した。
【0029】
次いで、光吸収層3の表面に集光点を合わせ、連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー80W/cmでX方向に空間的に連続して5μm/sの速度で移動させ、線状に成長した結晶からなる異質層2を形成した(図2(b)参照)。異質層2についてX線回折測定及び顕微ラマン散乱スペクトルにより定性分析を行ったところ、BaTiGe結晶が形成していた。
【0030】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2以外の周辺のガラスが優先的にエッチングされていた。図6にレーザ照射部分の電子顕微鏡写真を示すが、線状の凸部が形成されていることがわかる。
【0031】
[実施例2]
実施例1と同一のガラスを用い、670℃、1気圧、7%H-93%Ar混合雰囲気中にて還元熱処理を2時間行って光吸収層3を形成した後、光吸収層3に連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー60W/cmでX方向に空間的に連続して7μm/sの速度で移動させ、屈折率の異なる異質層2を形成した(図2(b)参照)。異質層2についてX線回折測定及び顕微ラマン散乱スペクトルにより定性分析を行ったところ、周囲のガラス同様に非晶質体であることを確認した。
【0032】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2が優先的にエッチングされていた。図7にレーザ照射部分の電子顕微鏡写真を示すが、線状の凹溝が形成されていることがわかる。
【0033】
[実施例3]
実施例1と同一のガラスを用い、670℃、1気圧、7%H-93%Ar混合雰囲気中にて還元熱処理を2時間行って光吸収層3を形成した後、光吸収層3の表面にビッカース圧子を用いて微小クラックを形成し、クラックの周辺に集光点を合わせ、連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー35W/cmでX方向に空間的に連続して500μm/sの速度で移動させ、クラックを進展させた。顕微鏡観察したところ、レーザビームが照射された部分の表面から深さ100μmにわたってクラックが形成しているのを確認した。
【0034】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2が優先的にエッチングされており、線状の凹溝が形成されていた。
【0035】
[実施例4]
実施例1と同一のガラスを用い、670℃、1気圧、7%H-93%Ar混合雰囲気中にて還元熱処理を2時間行って光吸収層3を形成した後、光吸収層3に連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー80W/cmでX方向及びY方向に移動させ、一箇所当たり10秒間レーザ照射し、BaTiGe結晶からなるドット状の異質層2を形成した。
【0036】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2以外の周辺のガラスが優先的にエッチングされており、ドット状の凸部が形成されていた(図4参照)。
【0037】
[実施例5]
実施例1と同一のガラスを用い、670℃、1気圧、7%H-93%Ar混合雰囲気中にて還元熱処理を2時間行って光吸収層3を形成した後、光吸収層3に連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー60W/cmでX方向及びY方向に移動させ、一箇所当たり3秒間レーザ照射してドット状の異質層2を形成した。
【0038】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2が優先的にエッチングされており、ドット状の凹部が形成されていた。
【0039】
[実施例6]
10モル%のSm、40モル%のBaO、50モル%のBからなるガラスを用い、還元熱処理を行うことなく、連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー60W/cmでX方向に空間的に連続して10μm/sの速度で移動させ、屈折率の異なる異質層2を形成した。
【0040】
次いで、ガラスを室温下、無水酢酸中に1.5時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したところ、異質層2が優先的にエッチングされ、線状の凹溝が形成されていた。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同一のガラスを用い、還元熱処理を行うことなく、表面に集光点を合わせて連続発振のNd:YAGレーザ(波長1.06μm)を、照射パワー100W/cmでX方向に空間的に連続して5μm/sの速度で移動させたが、照射部に変化は確認されなかった。
【0042】
次いで、ガラスを室温下、1モル/L濃度硝酸溶液中に1時間浸漬することによりエッチング処理を施した。共焦点レーザ顕微鏡によりレーザ照射部分を観察したが、レーザ照射部及び周辺のガラス部のエッチング速度は同じであり、凸凹形状は確認されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係るガラス加工法の基本工程を模式的に示す断面図である。
【図2】図1のXZ断面に沿って示す図である。
【図3】図1のYZ断面に沿って示す図である。
【図4】レーザ光を間歇照射し、エッチングした後のガラスを示す模式図である。
【図5】光吸収層をガラス内部に形成し、レーザ照射を行う工程を説明するための模式図である。
【図6】実施例1で得られたガラスをエッチング処理後の、レーザ照射部周辺部の共焦点レーザ顕微鏡像写真(a)及び断面プロファイル(b)である。
【図7】実施例2で得られたガラスをエッチング処理後の、レーザ照射部周辺部の共焦点レーザ顕微鏡像写真(a)及び断面プロファイル(b)である。
【符号の説明】
【0044】
1:ガラス
2:異質層
3:光吸収層
4:レーザ光
5:集光レンズ
6:集光点
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6