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明細書 :動物の汚染調査方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5589185号 (P5589185)
公開番号 特開2006-254743 (P2006-254743A)
登録日 平成26年8月8日(2014.8.8)
発行日 平成26年9月17日(2014.9.17)
公開日 平成18年9月28日(2006.9.28)
発明の名称または考案の名称 動物の汚染調査方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 Z
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 7
出願番号 特願2005-074245 (P2005-074245)
出願日 平成17年3月16日(2005.3.16)
審判番号 不服 2011-018896(P2011-018896/J1)
審査請求日 平成20年2月26日(2008.2.26)
審判請求日 平成23年9月1日(2011.9.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504300088
【氏名又は名称】国立大学法人帯広畜産大学
発明者または考案者 【氏名】石井 利明
【氏名】西村 和彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100090402、【弁理士】、【氏名又は名称】窪田 法明
参考文献・文献 Toxicol.Sci.,vol.54,pages 81-87(2000)
第139回日本獣医学会学術集会講演要旨集,第159頁,J-SY-3(2005年3月1日)
日本家禽学会誌,第37巻,秋季大会号,第35頁(2000年)
調査した分野 C12N15/00-15/90
PubMed
JSTPlus(JDreamII)
WPI/BIOSIS/CAPlus(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
環境汚染を調査したい地域に棲息する成体ほ乳類動物(ヒトを除く)について、当該ほ乳類動物の雌雄と逆性の性ホルモンによって誘導されるチトクロームP450遺伝子を分析することにより該チトクロームP450遺伝子の発現を調べて環境汚染を知ることを特徴とする動物の汚染調査方法。
【請求項2】
前記チトクロームP450遺伝子が肝細胞に誘導発現された遺伝子であることを特徴とする請求項1に記載の汚染調査方法。
【請求項3】
前記チトクロームP450遺伝子がCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子であることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染調査方法。
【請求項4】
前記チトクロームP450遺伝子の発現量を測定することによって汚染の程度を知ることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の汚染調査方法。
【請求項5】
前記成体ほ乳類動物が家畜又は野生動物であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の汚染調査方法。
【請求項6】
環境汚染を調査したい地域に棲息する雌成体イエネズミを複数匹捕獲し、捕獲した複数匹の該雌成体イエネズミの肝臓を取り出し、取り出した該肝臓についてCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子を調べ、捕獲した複数匹の該雌成体イエネズミの総数に対するCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子を発現している雌成体イエネズミの数の割合を求め、該特定地域の環境汚染の程度を求めることを特徴とする動物の汚染調査方法。
【請求項7】
環境汚染を調査したい地域に棲息する雌成体イエネズミを捕獲し、肝臓におけるCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子の発現量を調べ、該発現量によって環境汚染の程度を求めることを特徴とする動物の汚染調査方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ほ乳類動物の環境汚染を簡単に知ることのできる動物の汚染調査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人類は多種多様な化学物質を合成し、その生活をより豊かに、より快適にしてきた。しかし、その結果、多種多様な化学物質が環境中に廃棄物、排水、廃ガス、農薬等の形で大量に拡散し、蓄積してきている。
【0003】
近年、これら化学物質の中には生物の体内に入ると微量でも生物の内分泌系を撹乱し、生殖障害など健康や生態系に悪影響を与えるものが有ることが指摘されている。
【0004】
これらの化学物質は環境ホルモンと呼ばれており、例えば、メスでは性成熟の遅れ、生殖可能齢の短縮、妊娠維持困難及び流産などが、オスでは、精巣萎縮、精子減少、性行動の異常などが報告されている。
【0005】
我々人類やその他の生物はこの環境ホルモンに汚染された環境の中で生活しており、人類やその他の生物に対する環境ホルモンの悪影響が懸念されている。そこで、化学物質による環境汚染の程度を早急に調べ、その対策を取ることが急務になってきている。
【0006】
現在、化学物質による環境汚染の程度は、土壌、河川、農作物を含めた植物、あるいは動物体内における環境化学物質の残留濃度を化学分析で個別に計測して調べている。

【特許文献1】特開2003-262630号公報
【特許文献2】特開2001-194297号公報
【特許文献3】特開2000-171393号公報
【非特許文献1】環境省 総合環境政策局 環境保健部 環境安全課編「化学物質と環境」環境省 2003年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、環境化学物質の残留濃度を化学分析で個別に計測するためには、調査対象となる化学物質をあらかじめ特定し、それらを分析・定量する必要が有り、煩雑な操作と莫大な費用がかかり、時間的損失も大きい。
【0008】
また、環境化学物質の残留濃度を化学分析で個別に計測する従来の手法では、特定されていない新種の環境化学物質に適応出来ない欠点がある。
【0009】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、従来の手法で環境化学物質を計測しようとする場合、煩雑な操作と莫大な費用と時間がかかり、しかも、特定されていない新種の環境化学物質に適応出来ない点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る動物の汚染調査方法は、環境汚染を調査したい地域に棲息する成体ほ乳類動物(ヒトを除く)について、当該ほ乳類動物の雌雄と逆性の性ホルモンによって誘導されるチトクロームP450遺伝子を分析することにより該チトクロームP450遺伝子の発現を調べて環境汚染を知ることを特徴とするものである。ここで、前記チトクロームP450遺伝子が肝細胞に誘導発現された遺伝子であってもよい。また、前記チトクロームP450遺伝子がCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子であってもよい。また、前記チトクロームP450遺伝子の発現量を測定することによって汚染の程度を知るようにしてもよい。また、前記ほ乳類動物は家畜でもよいし、野生動物でもよい。
【0011】
また、本発明に係る動物の汚染調査方法は、環境汚染を調査したい地域に棲息する雌成体イエネズミを複数匹捕獲し、捕獲した複数匹の該雌成体イエネズミの肝臓を取り出し、取り出した該肝臓についてCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子を調べ、捕獲した複数匹の該雌成体イエネズミの総数に対するCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子を発現している雌成体イエネズミの数の割合を求め、該特定地域の環境汚染の程度を求めるものであってもよい。また、環境汚染を調査したい地域に棲息する雌成体イエネズミを捕獲し、肝臓におけるCYP2C11遺伝子及び/又はCYP3A2遺伝子の発現量を調べ、該発現量によって環境汚染の程度を求めるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境化学物質の体内暴露に対する生化学反応を指標とするために、特定の化学物質に着目することなく、化学物質が野生動物や家畜に及ぼす影響とその程度を客観的に評価することが出来る。
【0013】
また、本発明によれば、正常雌成体ネズミには発現していない雄生誘導型CYP遺伝子の発現有無を調べるため、結果が明瞭でしかも評価が簡便であり、誰にでも再現性の良い結果を得ることが出来る。
【0014】
また、本発明によれば、測定は、CYP定量用の既存の市販キット製品を利用して簡単に行うことが可能であるため、生化学的な専門知識や煩雑な定量分析機器操作を必要としない。
【0015】
また、本発明によれば、自然界の生態系に影響を及ぼすことなく、しかも公衆衛生上害となるイエネズミの駆除にもつながる利点がある。イエネズミは雑食性であり、魚類や鳥類などとは異なり行動範囲が狭いため棲息地域が大きく変動することがなく、調査する地域の環境を正確にモニタリングすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
環境化学物質による汚染の程度を客観的且つ簡便に求めるという目的を、自然界の生態系を乱すこと無く実現した。
【実施例1】
【0017】
北海道(帯広市農場)ならびに大阪府(大阪市と堺市の市街地)の環境の異なる二つの地域に棲息する雌成体イエネズミ(ドブネズミならびにクマネズミ)の肝臓CYP遺伝子群の発現誘導を調査し、棲息環境の違いにより発現誘導に顕著な差異が認められるCYPアイソザイムを特定した。
【0018】
肝臓に発現する8種類の代表的なCYPアイソザイム(1A1, 2B1/2, 2E1, 1A2, 2C11, 3A2, 3A1, 4A1)のmRNA発現量をcompetitive RT-PCR法により定量後、それらの発現量を北海道と大阪府で捕獲した雌成体イエネズミ間で比較したところ、図1及び表1に示す通りとなった。
【0019】
【表1】
JP0005589185B2_000002t.gif

【0020】
図1において、A1とA2は、北海道(帯広市農場)で捕獲した成体イエネズミ♀2例の異なるCYP isoform発現量を示している。また、B1とB2は、大阪府(大阪市と堺市の市街地)で捕獲した成体イエネズミ♀2例の異なるCYP isoform発現量を示している。
【0021】
図1及び表1に示すように、雄性誘導型のCYP2C11 ならびにCYP3A2 のmRNA発現誘導は、大阪府で捕獲した雌成体イエネズミに50%の割合で認められた。ところが、北海道で捕獲した雌成体イエネズミにおいては、これら雄性誘導型CYPアイソザイムの発現誘導を全く確認できなかった。
【0022】
雄性誘導型CYP2C11 ならびにCYP3A2のアイソザイムは、図2に示すように、実験動物の幼弱雌ネズミ(~ 5週齢まで)では発現するが、性成熟後の正常雌成体ネズミ(7週齢以降)には全く発現していない。ところが、図2に示すように、3週齢で卵巣を摘出した成体雌ネズミには雄生誘導型CYP遺伝子が発現することから、正常雌成体ネズミにおける雄生誘導型CYP遺伝子の発現誘導は、性成熟に伴い卵巣から分泌される雌性ホルモンにより抑制されていることが示唆された。
【0023】
雌成体ネズミにおけるCYP2C11 ならびにCYP3A2の雄性誘導型CYPアイソザイムの発現誘導は、実験動物の雌ネズミに以下に示す種々の化学物質を直接投与することにより実験的に証明されている。例えば、lindane (殺虫剤)、DDT (農薬・殺虫剤)、dexamethason (合成副腎皮質ホルモン)、phenytoin (hydantoin系抗痙攣薬)、 oxandrolone (蛋白質同化ステロイド)などである。
【0024】
大阪府市街地で捕獲した雌成体イエネズミに認められた雄性誘導型CYP2C11 ならびにCYP3A2 のmRNA発現誘導は、イエネズミが棲息する環境がこれらの化合物や構造類似体を含めた化学物質により汚染されている可能性を示唆している。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明により得られた結果を用いて都市計画を作成し、環境汚染の進んでいる地域は農地や住宅地として利用しないように導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】雌成体イエネズミにおけるCYPアイソザイムの発現状況を示す図である。
【図2】SDラット雌におけるCYPアイソザイムの発現状況を示す図である。
図面
【図1】
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【図2】
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