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明細書 :多視点立体ディスプレイ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4660769号 (P4660769)
公開番号 特開2008-015121 (P2008-015121A)
登録日 平成23年1月14日(2011.1.14)
発行日 平成23年3月30日(2011.3.30)
公開日 平成20年1月24日(2008.1.24)
発明の名称または考案の名称 多視点立体ディスプレイ装置
国際特許分類 G02B  27/22        (2006.01)
G03B  35/18        (2006.01)
H04N  13/04        (2006.01)
FI G02B 27/22
G03B 35/18
H04N 13/04
請求項の数または発明の数 7
全頁数 15
出願番号 特願2006-185022 (P2006-185022)
出願日 平成18年7月5日(2006.7.5)
審査請求日 平成19年3月5日(2007.3.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
発明者または考案者 【氏名】掛谷 英紀
個別代理人の代理人 【識別番号】100082669、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 賢三
【識別番号】100095337、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 伸一
【識別番号】100061642、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 武通
審査官 【審査官】野田 定文
参考文献・文献 特開2005-173190(JP,A)
特開2005-165236(JP,A)
調査した分野 G02B 27/00
特許請求の範囲 【請求項1】
画素を表示する表示面と、
前記表示面からの光を入射して平行光線を出射する集光系の複数が前記の表示面に沿って隣接して形成された集光系アレイと、
前記の集光系アレイからの平行光線を入射して、観察者の両眼のそれぞれに向かって出射する大口径集光系と、
上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記観察者から見て上記集光系アレイよりも遠方にあって上記表示面の前または後の位置に設けた複数の表示面、あるいは、上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記大口径集光系と上記観察者の間にあって上記大口径集光系の結像面の前または後の位置に設けた複数の表示面と、備え、
上記集光系から出射される平行光線は、上記集光系アレイと上記大口径集光系との間では結像せず、上記大口径集光系と上記観察者の間で結像する範囲にある平行光線であり、
前記の大口径集光系は、上記大口径集光系と前記の観察者との間の結像面上に結像することを特徴とする多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項2】
上記の集光系アレイは、凸レンズアレイであることを特徴とする請求項1に記載の多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項3】
上記の集光系アレイは、複数のレンズを組み合わせた集光系のアレイであることを特徴とする請求項1に記載の多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項4】
上記の大口径集光系は、凸レンズであることを特徴とする請求項1に記載の多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項5】
上記の大口径集光系は、複数のレンズあるいはミラーを組み合わせた集光系であることを特徴とする請求項1に記載の多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項6】
上記の表示面と前記の複数の表示面とを用いて3次元画像情報を表示し、
前記の複数の表示面には、上記の表示面に表示される画像の奥行き位置に対応した画像を表示するものであって、
上記の表示面の画像とさらに設けた複数の表示面の全てが上記の観察者から見える構成を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の多視点立体ディスプレイ装置。
【請求項7】
上記表示面と観察者を結ぶ線上で、上記観察者から見て上記集光系アレイよりも遠方にあって上記の表示面の前または後の位置に、あるいは、上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記大口径集光系と上記観察者の間にあって上記大口径集光系の結像面の前または後の位置に、上記の表示面に表示される画像のエッジパターンを表示するエッジパターン表示面を複数設けて、上記の画像の奥行き位置に対応したエッジパターン表示面にあらかじめ決められた細かなエッジパターンを表示するものであって、
上記の表示面の画像と上記のエッジパターン表示面のエッジパターンの全てが上記の観察者から見える構成を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の多視点立体ディスプレイ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、同時に複数人が固有視点からの立体像を見ることが出来、また、立体視特有の目の疲労を感じずに観賞でき、しかも簡単な構造をもった多視点立体ディスプレイに関している。
【背景技術】
【0002】
立体ディスプレイ装置は、より実物に近い表示ができることから、展示用の表示の他に、コンピュータゲーム、訓練用シミュレータ、装置の遠隔操作の表示装置、などに用いられており、さらにその応用分野は拡大している。しかし、立体ディスプレイ装置を長時間使用すると、通常の平面ディスプレイ装置によるものとは異なる疲労が残ることが知られている。
【0003】
空間上のある点を凝視した際における、目線の向き(輻輳:近くのものを見るときに寄り目になる動き)、左右の目に映る像のずれの量(両眼視差)、水晶体の厚さ(焦点距離)の3つによって立体が知覚されていることが知られている。例えば、メガネを使用する方式の立体ディスプレイでは、偏光フィルタや液晶シャッターなどを用いて左右の目それぞれに異なる画像を入力することにより、両眼視差と輻輳角の提示を実現している。しかし、これらの立体表示方式では、輻輳と焦点調節との間に生理的矛盾が生じるという問題があり、この立体視特有の目の疲労は、両眼の輻輳角と各眼の焦点調節の間に生じる輻輳調節矛盾によるところが大きいと言われている。この問題を解決する目的で、既に多くの手法が提案されている。
【0004】
そのひとつは光線再現型解決法であり、その代表例として、ホログラムがある。しかし、ホログラムでは、処理すべき情報が膨大であるため、電子ディスプレイでこれを実現するのは現時点では困難である。また、電子的に細かな光線再現を実現する方法として、超多眼方式が知られている(非特許文献1,2)。ただし、この方式でも用意すべきデータの量は非常に多く、実現するためには、画像の解像度(画素数)を犠牲にせざるをえない。
【0005】
処理すべき情報量を抑えた上で輻輳調節矛盾を解決する方法として、シリンダーレンズと高周波パターンを組み合わせる方法が提案されている(非特許文献3)。この方法は、必要なデータ数の増加は大幅に減らすことが可能であるが、元画像に高周波パターンを重畳することから、それによる画質の低下は避けられない。
【0006】
一方、映像を高速に回転させたり、複数枚のスクリーンを重ねたりすることにより、ボリュームディスプレイを実現する方式もいくつか提案されている(非特許文献4、5、6)。これらの方式では、対応する奥行きに光源が置かれるので、輻輳調節矛盾は生じない。しかし、ボリュームディスプレイの場合、一般に物体間の隠蔽関係(occlusion ; オクルージョン)や光沢を表現することができないという問題が生じる。また、ボリューム表示を実現するためには、当然映像空間のボリューム情報が必要となる。実世界に対して実時間での正確な3次元計測は困難であり、実写をボリュームディスプレイに表示するのは一般には難しい。
【0007】
以上の問題を全て同時に解決する手法として、本発明の発明者らはエッジ領域のみをボリュームディスプレイで表示し、フラット領域(エッジ以外の領域)をステレオ方式で表示する立体映像表示方法を提案している(非特許文献7)。しかし、この方法はボリューム表示に多数のモノクロ液晶を並べて表示するため、装置はある程度高価とならざるをえない。また、フラット領域をステレオ式で表示するための多視点立体ディスプレイをいかにコンパクトかつ安価に構築するかの問題も残る。
【0008】

【非特許文献1】梶木善裕,吉川浩,本田捷夫, 集束化光源列(FLA)による超多眼式立体ディスプレイ,3次元画像コンファレンス1996 講演論文集,pp.108-113, 1996.
【非特許文献2】高木康博, 64眼式三次元カラーディスプレイとコンピューター合成した三次元物体の表示 ,3次元画像コンファレンス2002講演論文集, pp. 85-88, 2002.
【非特許文献3】掛谷英紀, 阿久津剛, 輻輳調節矛盾がない立体映像提示を安価に実現する方法, 3次元画像コンファレンス2004講演論文集, pp. 9-12, 2004.
【非特許文献4】S. Suyama, M. Date, H. Takada, Three-dimensional Display System with Dual-Frequency Liquid-Crystal Varifocal Lens,Jpn.J. April. Phys., 39, pp. 480-484, 2000.
【非特許文献5】Actuality System, Perspecta Spacial 3D, http://www.actuality-systems.com/
【非特許文献6】A. Sullivan, LightSpace Technologies, Inc., DepthCube solid state 3D volumetric display ,Stereoscopic Display and Virtual Reality Systems XI, SPIE Vol.5291, pp. 279-284, 2004.
【非特許文献7】R. Yasui, I Matsuda, H Kakeya, Combining volumetric edge display and multiview display for expression of natural 3D images, SPIE proceeding Volume 6055: Stereoscopic Displays and Virtual Reality Systems XIII, pp. 0Y1・0Y9, 2006.
【非特許文献8】大越孝敬, 三次元画像工学, 朝倉書店, 1991.
【非特許文献9】T. Hattori, T. Igarashi, K. Shimamoto, A. Sawaki, T. Ishiguchi, H. Kobayashi, Advanced autostereoscopic display for G-7 pilot project, SPIE proceedings Volume 3639: Stereoscopic Displays and Virtual Reality Systems VI, pp.66-75,1999.
【0009】

【特許文献1】特開2005-165236号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、輻輳調節矛盾を解消する多視点立体ディスプレイの安価な構築法を提案し、多視点立体ディスプレイを簡単な構成とするために、新たな光学系の提案を行なう。輻輳調節矛盾の解消法として、多層化された多視点立体映像を表示する方法と、多視点立体映像に重ねて多層のバックグラウンドエッジを提示する方法を提案する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によって、輻輳調節矛盾を抑制した多視点立体ディスプレイを安価に構築できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記のエッジの分離表示手法を利用しつつ、装置全体をできるだけ簡単な構成にして安価にできる多視点立体表示方式に関するものである。以下では、まず多視点立体表示部の改良について説明し、次に簡単な方法で輻輳調節矛盾を解消する方法として、表示する多視点立体映像を多層化する方式と、エッジパターンを層状に重ねて提示する方式を説明する。
【0013】
[多視点立体表示部の改良]
多視点立体表示方法として、本発明の発明者らは、図1に示す多視点FLOATSを既に提案している(特許文献1)。この装置のうち、観察者に近いフレネルレンズは、空間像生成を目的としたもので、これを除いてもフライアイレンズ上が焦点調節点となる立体ディスプレイとして機能する。さらに、フライアイレンズを取り除いた光学系を考えると、LCD(液晶表示装置)と凸レンズアレイの組み合わせは、プロジェクタアレイと見立てられ、教科書レベルのテキスト(非特許文献8)にも記載されており、凸レンズ光学系による古典的ステレオ表示方式の多視点への拡張版に相当する。
【0014】
上記で、なぜフライアイレンズが必要になるかというと、図2に示す様に、レンズの光軸から大きくずれた角度から画像を観測する場合、画面の中央部以外ではプロジェクタによる結像が不十分になるからである。これを放置すると、視点位置によって像の位置が大きく揺れる。このため、歪なく定位する立体像を観測することはできない。そこで、多視点FLOATSでは、個々の微小レンズの焦点距離が十分長いフライアイレンズを挿入し、微妙に光を拡散する。この方法で、像をフライアイレンズ面に定位し、視点位置の移動による像のゆれが解消している。ただし、今度は、フライアイレンズ面での不十分な集光が、像のぼけという形で現れることになり、表示される立体像の鮮明度は低下してしまう、という問題が起こる。
【0015】
光軸から離れた視点においても、安定した立体像を観測することが可能になる光学系として、本発明では、LCD部とレンズアレイ部との距離が、レンズアレイを構成する各レンズの焦点距離と概ね等しくなるように配置する光学系を提案する。この場合、レンズアレイから出てくる光は概ね平行光となるので、このままでは結像はおこらない。そこで、結像には、手前のフレネルレンズの力を利用することになる。このフレネルレンズは、もともとは各視点に対応する画像をそれぞれの視点でのみ観測できるように振り分けることを意図して使われるものであるが、これを結像にも利用するという考え方である。この場合、実像がフレネルレンズよりさらに手前の空中に結ばれることになる。空間像を生成するという点では、図1のFLOATSと同様であるが、実像の生成が1回で済むので、システム全体の光路長は大幅に短縮されるという利点がある。
【0016】
[輻輳調節矛盾の解消]
立体映像観察時に観察者が目の疲労や酔いを感じるのは、両眼視差に基づく目の輻輳角と、それぞれの眼で像をはっきりとらえるための焦点調節の間において矛盾が生じることが主原因となっていると言われている。これを解消する方法として、映像提示面を一枚ではなく複数枚にし、複数の奥行きに像を提示することが考えられる。提示する立体像を、本来の奥行きに最も近い提示面に表示することで、輻輳調節矛盾を解消することができる。ただし、この方法を実践するには、表示する立体映像の全ての画素について、その画素がどの奥行きから由来するものなのかを知っている必要がある。そのため、コンピュータグラフィックスでの応用は可能であるが、実写映像での応用は難しい。
【0017】
実写における輻輳調節矛盾の低減は、次の方法で実現可能である。人間が物体を注視する際、焦点調節の手がかりとして画像中のエッジの情報を用いていると考えられる。このエッジのぼけが最も少なくなる距離に人間は焦点を合わせようとする。この性質を利用し、本発明の発明者らは画像中のエッジ情報のみを取り出し、それをボリュームディスプレイ上に表示することで、輻輳調節矛盾する方法を提案している(非特許文献7)。具体的には、両眼視差・輻輳の提示は平滑化した画像を用い、それにより提示した立体像と重なるようにエッジ画像を配置する。この方法では、エッジ部分についてのみ、その画素の奥行きを知る必要があるが、それならば実写でもステレオマッチング法によって、かなりの精度で実現することが可能である。
【0018】
さらに、ここで、システム全体を簡略化するアプローチが考えられる。上で述べた手法は、立体像に含まれるエッジを積極的に取り出して表示する方法である。しかし、もともと電子ディスプレイでは、本来意図しないエッジが存在している。それは画像ピッチのエッジである。これが焦点調節をある程度誘導してしまう可能性は否定できない。そこで、この現象を逆に積極的に利用し、画像ピッチのような一定の細かなパターンを意図的に複数の奥行きにバックグラウンドとしてばら撒いて重ねて表示する方法が考えられる。
【0019】
この方法を実際に多視点立体ディスプレイと組み合わせる場合、個々の視点に対応するLCDの前後に細かなエッジパターンがプリントされた透明シートを挿入する、あるいは、空間像が生成されることを利用し、空間像ができる付近にそれを配置することで、層状のバックグラウンドエッジを多視点画像と重ねて表示できる。
【0020】
このため、本発明の多視点立体ディスプレイ装置は、画素を表示する表示面と、前記表示面からの光を入射して概ね平行である平行光線を出射する集光系の複数が前記の表示面に沿って隣接して形成された集光系アレイと、前記の集光系アレイからの概ね平行である平行光線を入射して、観察者の両眼のそれぞれに向かって出射する大口径集光系と、上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記観察者から見て上記集光系アレイよりも遠方にあって上記表示面の前または後の位置に設けた複数の表示面、あるいは、上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記大口径集光系と上記観察者の間にあって上記大口径集光系の結像面の前または後の位置に設けた複数の表示面と、を備える。前記の大口径集光系は、大口径集光系と前記の観察者との間の結像面上に結像させるものである。但し、ここでいう結像面は、表示面上の画像の結像点の張る仮想的な2次元面である。また、概ね平行である平行光線とは、上記の集光系アレイと大口径集光系との間では結像せず、大口径集光系と観察者の間で結像する範囲にある平行光線である。
【0021】
上記の集光系アレイの要素あるいは大口径集光系は、凸レンズであってもよい。
【0022】
上記の集光系アレイの要素あるいは大口径集光系は、レンズあるいはミラーを組み合わせた集光系であってもよい。
【0023】
また、上記の表示面と前記の複数の表示面とを用いて3次元画像情報を表示する。前記の複数の表示面には、上記の表示面に表示される画像の奥行き位置に対応した画像を表示するもので、上記の表示面の画像とさらに設けた複数の表示面の全てが観察者から見えるようにすることで、立体表示を行なうことが出来る。
【0024】
また、上記の多視点立体ディスプレイ装置で、上記表示面と観察者を結ぶ線上で、上記観察者から見て上記集光系アレイよりも遠方にあって上記の表示面の前または後の位置に、あるいは、上記表示面と上記観察者とを結ぶ線上で、上記大口径集光系と上記観察者の間にあって上記大口径集光系の結像面の前または後の位置に、上記の表示面に表示される画像のエッジパターン、あるいはあらかじめ決められたバックグラウンドエッジパターンを表示するエッジパターン表示面を複数設けて、上記の画像の奥行き位置に対応したエッジパターン表示面にそのエッジパターンを表示するものであって、上記の表示面の画像と上記のエッジパターン表示面のエッジパターンの全てが上記の観察者から見える構成を備えるようにすることで、輻輳調節矛盾を解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、図11に示すように、画素を表示する表示面1と、前記表示面1からの光を入射して概ね平行である平行光線を出射する集光系の複数が前記の表示面に沿って隣接して形成された集光系アレイ2と、前記の集光系アレイ2からの概ね平行である平行光線を入射して、観察者5の両眼のそれぞれに向かって出射する大口径集光系3と、とを備え、前記の大口径集光系3は、大口径集光系3と前記の観察者5との間の結像面4上に結像させるものである。但し、ここでいう結像面は、表示面上の画像の結像点の張る仮想的な2次元面である。また、概ね平行である平行光線とは、上記の集光系アレイ2と大口径集光系3との間では結像せず、大口径集光系3と観察者5の間で結像する範囲にある平行光線である。表示面1は、表示制御器6で制御される。
【0026】
本発明ではまた、図12に示す様に、上記の表示面1の近傍にさらに複数の表示面、図12の7a、7bを設けて、上記の表示面1と前記の複数の表示面とを用いて3次元画像情報を表示し、前記の複数の表示面には、上記の表示面1に表示される画像の奥行き位置に対応した画像を表示するものであって、上記の表示面1の画像とさらに設けた複数の表示面の全てが観察者から見えるように配置する。ここで(7a、7b)は例であって、複数の表示面をこれらの2面に限るものではない。
【0027】
また、本発明は、図13、14に示す様に、上記の表示面1の近傍、あるいは、上記の結像面4の近傍の、表示面1と観察者5を結ぶ線上で前後する位置に、上記の表示面1に表示される画像のエッジパターンを表示するエッジパターン表示面、図13の11a、11b、あるいは、図14の12a、12b、を複数設けて、上記の画像の奥行き位置に対応したエッジパターン表示面にそのエッジパターンを表示するものであって、上記の表示面1の画像とエッジパターン表示面のエッジパターンの全てが観察者から見えるように配置する。表示面1は、結像面4に結像し、エッジパターン表示面、図13の11a、11bは、結像面4a、4bに結像する。上記と同様に、(図13の11a、11b、あるいは、図14の12a、12bは、例であって、複数の表示面をこれらの2面に限るものではない。それぞれのエッジパターン表示面は、エッジパターン表示制御器9あるいは10で制御する。
【実施例1】
【0028】
まずは、多視点立体表示部の改良のために、以上の光学設計方針に基づき、構成要素を配置した例の光路シミュレーションを行った。凸レンズアレイとしてFナンバーが小さい光学系を使った場合、画面の端では像が一定の場所に結像しないが、Fナンバーを上げると、結像状態は良好となり、安定した像が観測されることが分かった(図4)。
【0029】
実際に、LCDとして3840X2400ピクセルの22インチ液晶モニタ、凸レンズアレイとして焦点距離90mm、一辺の長さ35mmの正方形フレネルレンズ104枚を用い、観察者側のフレネルレンズとして焦点距離600mm、一辺の長さ600mmのレンズを凸レンズアレイから1000mmの場所に配置した104視点の多視点立体ディスプレイを製作した。その結果、鮮明な立体像がある程度安定した位置に定位して観測されることを確認した。
【0030】
Fナンバーが大きい場合、表示すべき画像はLCD上に稠密に並んでいるため、凸レンズアレイとフレネルレンズの間の距離を十分大きくとらなければ、立体像を大画面に表示することはできない。これは、大画面化には装置のサイズの大型化が不可避であることを意味する。もちろん、収差が起きないような特殊なレンズを用いることも考えられるが、凸レンズアレイに使う個々のレンズが高価になると、装置全体の製作コストも大幅に増大することになる。フレネルレンズの代わりに、一般的な凸レンズを組み合わせることで、短い光路でも大きな立体像を少ない収差で提示できる光学系をつくることは可能である。
【実施例2】
【0031】
また、「複数の奥行きに細かなバックグラウンドエッジが層状にある場合、提示する視差画像の輻輳角に応じて、輻輳角に最も近いバックグラウンドエッジ提示面に焦点調節が誘導される」という仮説を立てて以下のように検証した。この仮説が実証されれば、多層のバックグラウンドエッジを挿入するだけで、輻輳調節矛盾を解消できることになる。
【0032】
この仮説を検証するために組んだ実験系を、図5に示す。この実験では、観察者から1mの位置に視差提示を行う。視差提示は、図6のような光学系(非特許文献9)を用いて行い、提示画像としては図7に示す彩度をそろえた色によるグラデーションをつけた画像を用いた。
【0033】
まずは、観察者から40cmの奥行きに輻輳角が誘導できるように視差画像の位置をずらして提示し、その上で、観察者から1枚だけのバックグラウンドエッジを33cm、40cm、50cmの奥行きに挿入した場合、およびそれぞれの奥行きに1枚ずつ計3枚のバックグラウンドエッジを挿入した場合について、観察者の目の球面度数をレフラクトメータにより測定した。7名の被験者についての実験結果を図8に示す。図8は、バックグラウンドエッジを一層だけ表示した場合と多層表示した場合の観察者の眼の球面度数を示す。図8から容易にわかるように、エッジ画像を3枚重ねて提示した実験では、40cmの奥行きのみにエッジを提示した場合と同様の結果が得られ、視差による立体像の融像が行われる奥行き付近に焦点が誘導されていることが確認された。
【0034】
しかし、この実験結果だけでは、3枚重ねたエッジ画像のうちの真ん中の位置に立体像を浮かび上がらせていたために、バックグラウンドエッジを重ねて提示するときは、それらのうちの中央の奥行き付近に焦点調節が誘導されるという説明も成り立つ。
【0035】
そこで次に、33cm、40cm、50cmの位置に計3枚のバックグラウンドエッジを提示しつつ、視差画像の視差量を変化させ、輻輳が観察者から33cm、40cm、50cmの奥行きに誘導されるようにした場合について、観察者の目の球面度数を測定した。3名の被験者について得られた実験結果を図9に示す。図9は、3層のバックグラウンドエッジを固定し、輻輳角を変化させた場合の観察者の眼の球面度数で、標準値は、その奥行きにある実指標観察時の球面度数である。ここで、標準値とは、実物体(指標)を対応する奥行きに置いたときの計測結果である。図9が示すとおり、全ての場合において、焦点調節は視差画像の輻輳角に対応する奥行き付近に合うという結果が得られた。
【0036】
図15は、表示面近くにバックグラウンドエッジ表示面(13a、13b)を設置した構成を示す図である。表示面1は、結像面4に結像し、バックグラウンドエッジ表示面(13a、13b)は、結像面4a、4bに結像する。また、図16は、結像面近くにバックグラウンドエッジ表示面(14a、14b)を設置した構成を示す図である。これらの図では、バックグラウンドエッジ表示面を2面ずつ記載しているが、これは例であって、さらに多くのバックグラウンドエッジ表示面を用意する方が望ましい。また、バックグラウンドエッジ表示面に用いることができるパターンには、任意性があり種々のものを用いることができる。図17にその例を示す。図17(a)は縦横の格子模様、(b)は斜線の格子模様、(c)は何らかのパターンの繰り返し、(d)は、位相をずらした繰り返し模様、(e)は微細構造をもった紋様を規則的にならべたもの、(f)は格子点に単純な図形を配置した模様、(g)はランダムに点あるいは線分を配置したもの、(h)は2つのパターンを合成したもの、である。このようなパタンーンを例えば透明なガラス板上に描いて、図16あるいは図17に示すように配置する。これらのバックグラウンドエッジ表示面が観察者からすべて重なって見えるように配置する。異なったパターンをもったバックグラウンドエッジ表示面を、例えば図15、あるいは図16の13a、13b、あるいは、14a、14bに用いてもよい。
【0037】
上記で凸レンズアレイとしたが、これは、一般に焦点をもった集光系アレイに拡張することができる。また、大口径凸レンズとしてフレネルレンズを用いたが、これも、一般に焦点をもった大口径集光系に拡張しても問題ない。また、前記の集光系アレイは、複数のレンズアレイを組み合わせた結果として集光系アレイとして働けば、本発明に適用できる事は明らかである。同様に、大口径集光系をレンズあるいはミラーを組み合わせて構成してもよい事は明らかである。集光系アレイのそれぞれに2枚の凸レンズを、また、大口径集光系にも2枚の凸レンズを用いて収差を抑制した例を図10に示す。
【産業上の利用可能性】
【0038】
上記の説明においては、集光系アレイや大口径集光系は、固定された焦点距離をもつものとすると理解し易い。しかし、これらの集光系は、可変焦点の集光系であっても何ら問題はない。可変焦点の集光系を用いることによって、また、場面ごとに焦点特性を僅かに変えることによって、さらに適した表示を行なうことができる。
【0039】
また、上記の説明では、観察者として1名を図示したのみであるが、この観察者の位置を変えても、上記の説明は、成立するので、多数の観察者にとって、本発明の多視点立体ディスプレイ装置の立体画像を同時に観察できる事は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】多視点FLOATSを示す概念図である。
【図2】多視点FLOATSで、なぜフライアイレンズが必要になるかを説明するための図である。
【図3】エッジ画像の配置を示す図である。
【図4】Fナンバーを上げると、結像状態は良好となり、安定した像が観測される旨を示す図である。
【図5】仮説を検証するために組んだ実験系を示す図である。
【図6】視差提示に用いる光学系を示す図である。
【図7】視差提示に再に用いる提示画像を示す図である。
【図8】バックグラウンドエッジを一層だけ表示した場合と多層表示した場合の観察者の眼の球面度数を示す図である。
【図9】3層のバックグラウンドエッジを固定し、輻輳角を変化させた場合の観察者の眼の球面度数を示す図である。
【図10】集光系アレイのそれぞれに2枚の凸レンズを、また、大口径集光系にも2枚の凸レンズを用いて収差を抑制した例を示す図である。
【図11】本発明の構成を示すブロック図である。
【図12】画像表示面を多層化し、多層の結像面を形成させる本発明の構成を示すブロック図である。
【図13】エッジパターン表示制御器で表示面近くのエッジパターン表示面を制御する本発明の構成を示すブロック図である。
【図14】エッジパターン表示制御器で結像面近くのエッジパターン表示面を制御する本発明の構成を示すブロック図である。
【図15】表示面近くにバックグラウンドエッジ表示面を設置した構成を示すブロック図である。
【図16】結像面近くにバックグラウンドエッジ表示面を設置した構成を示すブロック図である。
【図17】バックグラウンドエッジのパターン例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 表示面
2 集光系アレイ
3 大口径集光系
4 結像面
4a、4b 結像面
5 観察者
6 表示制御器
7a、7b 表示面
9、10 エッジパターン表示制御器
11a、11b エッジパターン表示面
12a、12b エッジパターン表示面
13a、13b バックグラウンドエッジ表示面
14a、14b バックグラウンドエッジ表示面
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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