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明細書 :新規ダニアレルゲンおよびその利用

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982848号 (P4982848)
公開番号 特開2008-035790 (P2008-035790A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年2月21日(2008.2.21)
発明の名称または考案の名称 新規ダニアレルゲンおよびその利用
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C07K  14/435       (2006.01)
C12N   1/21        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C07K  16/18        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C07K 14/435
C12N 1/21
C12P 21/02 C
C07K 16/18
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 36
出願番号 特願2006-215082 (P2006-215082)
出願日 平成18年8月7日(2006.8.7)
審査請求日 平成21年3月31日(2009.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】小埜 和久
【氏名】秋 庸裕
【氏名】河本 正次
【氏名】磯部 敏秀
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
審査官 【審査官】引地 進
参考文献・文献 特開2005-336204(JP,A)
特開2006-045230(JP,A)
特開2006-045162(JP,A)
J. Allergy Clin. Immunol.,1994年,Vol.94, No.6, Pt.1,pp.989-996
免疫学用語事典,株式会社 最新医学社,1993年,第三版,487頁
Sambrook & Russell,"Molecular Cloning, A Laboratory Manual",3rd. Ed.,2001,Vol.2,10.47
J. Med. Entomol.,2002年,Vol.39, No.2,pp.384-391
J. Allergy Clin. Immunol.,1998年,Vol.102, No.4, Pt.1, pp.631-636
調査した分野 C12N 15/00-15/90
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/(STN)
Uniplot/GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
JDreamII

特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1および2に示されるアミノ酸配列を含む、ダニ由来のタンパク質であって、以下の(a)~(c)に記載のタンパク質:
(a)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が14~16kDaである;
(b)等電点が5.0~6.0である;および
(c)アレルゲン活性を有する。
【請求項2】
グループ2ダニアレルゲンに属することを特徴とする請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
ダニ由来のタンパク質であって、以下の(d)または(e)に記載のタンパク質:
(d)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、かつアレルゲン活性を有するタンパク質;
(e)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質。
【請求項4】
請求項3に記載のタンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド
【請求項5】
下記の(f)または(g)のいずれかであることを特徴とする請求項4に記載のポリヌクレオチド:
(f)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(g)配列番号4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4または5に記載のポリヌクレオチドを含むことを特徴とするベクター
【請求項7】
請求項6に記載のベクターを用いることを特徴とする請求項3に記載のタンパク質の生産方法
【請求項8】
請求項4または5に記載のポリヌクレオチドが導入されていることを特徴とする形質転換体
【請求項9】
請求項8に記載の形質転換体を用いることを特徴とする請求項3に記載のタンパク質の生産方法
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質と結合することを特徴とする抗体
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質を含有することを特徴とする、当該タンパク質に特異的に結合しかつ当該タンパク質のアレルゲン活性を阻害する阻害物質のスクリーニング方法を行なうために用いられるキット
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載のタンパク質を含有することを特徴とするダニアレルギー性疾患の診断キット
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニ(Dermatophagoides farinae等)に由来する新規なアレルゲンタンパク質、および当該アレルゲンタンパク質をコードするポリヌクレオチド、並びに当該アレルゲンタンパク質が含まれるダニアレルギー性疾患の予防または治療薬をはじめとする当該ダニアレルゲンタンパク質の代表的な利用例に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダニ(Dermatophagoides farinae、Dermatophagoides pteronyssinus等)はアトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、喘息などの深刻なアレルギー性疾患を引き起こす原因となっている(例えば非特許文献1、2、3、4参照)。ダニは家中に偏在するため、ダニを生活環境から除去することはきわめて困難であり、そしてアレルギー患者はいつもそのアレルゲンにさらされている。そしてそのような絶え間無い暴露が、時間経過とともにアレルギー症状をさらに悪化させる。
【0003】
アレルゲンによって感作されアレルギーを発症してしまった患者に対しては、抗ヒスタミン剤などの副作用を有する対症療法剤を用いた一時的な解決策に依存せざるを得ないのが実状である。このため、アレルギー患者は、抗ヒスタミン剤等の薬剤を使用し続けない限り発症を繰り返すことになり、財政的にも、肉体的にも大きな負担を強いられる。また、上記薬剤の使用を中止するとリバウンドによる症状の悪化も懸念されるという問題をも抱えている。このようにダニに対するアレルギーは、慢性的となり、そして治療することが困難である。
【0004】
上記の対症療法剤に代わるアレルギーの治療方法として減感作療法が注目を浴びている。減感作療法とはアレルゲンを少しずつ投与し、患者の免疫を慣れさせてアレルギーを治療する手法である。しかしながら、現行の減感作療法では、ダニに含まれる無数のタンパク質をまとめて抽出し、患者に投与する方法が主流である。このためアレルゲン以外にもたくさんのタンパク質を患者に注射することになり、過剰な免疫応答による、アナフィラキシーショックなどの副作用を引き起こすことや、異物が大量に体内に入り込んだことで、別のアレルギーを発症してしまうことがある。そこで、アレルゲンとなるタンパク質を、遺伝子工学などの手法により特定し、合成ペプチドやDNAワクチンとして用いることで副作用がなく、特定のアレルギーを選択的に治療する方法が試みられている。例えば、ダニアレルゲンであるDer fファミリーまたはDer pファミリータンパク質をコードする遺伝子を用いてDNAワクチンとして投与するという方法が知られている(非特許文献5参照)。

【非特許文献1】Platts-Mills TAE, Chapman MD: Dust mites, immunology, allergic disease, and environmental control. J Allergy Clin Immunol, 80: 755-775 (1987)
【非特許文献2】Lin KL, Hsieh KH, Thomas WR, Chang BL, Chua KY: Allergens, IgE, mediators, inflammatory, mechanisms. Characterization of Der p 5 allergen, cDNA analysis, and IgE-mediated reactivity to the recombinant protein. J Allergy Clin Immunol, 94: 989-996 (1994)
【非特許文献3】International workshop report: dust mite allergens and asthma: a world wide problem. WHO Bulletin, 66: 769-780 (1988)
【非特許文献4】Van der Zee JS, Van Swieten P, Janse HM, Aalberse RC: Skin tests and histamine release with PI-depleted Dermatophagoides pteronyssinus body extracts and purified PI. J Allergy Clin Immunol, 81: 884-895 (1988)
【非特許文献5】Nacksung KS, Soon SK, Jaechun Lee, Sohyung Kim, Tai JY: Protective effects of the DNA vaccine encoding the major house dust mite allergens on allergic inflammation in the murine model of house dust mite allergy. Clinical and Molecular Allergy, 4:4 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまで同定されたダニアレルゲンタンパク質以外のアレルゲンによってアレルギー反応が誘発される場合も多く見られる。よってこれまでに同定され単離されたダニアレルゲンタンパク質を用いた減感作療法では、ダニアレルギー患者によっては、十分な効果を得ることができない場合があった。かかる問題点を解決するためには、これまでに単離されたダニアレルゲンタンパク質以外の新規ダニアレルゲンタンパク質を取得する必要がある。
【0006】
そこで本発明は、これまでに知られていないダニアレルゲンタンパク質であって、ダニアレルギー患者由来の血清と高頻度に反応するダニアレルゲンタンパク質を提供することを目的とした。さらに本発明は、上記ダニアレルゲンタンパク質を含むダニアレルギー性疾患の予防または治療薬等の当該ダニアレルゲンタンパク質の代表的な利用例を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、コナヒョウダニ(Dermatophagoides farinae(「D. farinae」ともいう))抽出物の二次元免疫染色解析によって、ダニアレルギー性疾患を示す患者(「ダニアレルギー患者」ともいう)の血清中IgE抗体と高頻度に反応するスポットを検索した結果、観測分子量が約15キロダルトン(kDa)、等電点が約5.5であるタンパク質に高いアレルゲン活性があることを初めて見出した。さらに、本発明者らはプロテオーム技術及び遺伝子工学的手法を用い、当該新規アレルゲンタンパク質の部分構造を解明して、ダニcDNAライブラリーからそれをコードする遺伝子のクローニングに成功した。そして、本発明者らは遺伝子組換え技術を用いて当該アレルゲンタンパク質を組換えタンパク質として発現させ、当該組換えタンパク質がダニアレルギー患者血清IgEと反応することを確認し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるタンパク質は、
ダニ(例えばDermatophagoides farinae等)由来のタンパク質であって、以下の(a)~(c)に記載のタンパク質である:
(a)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が約15kDaである;
(b)等電点が約5.5である;および
(c)アレルゲン活性を有する。
【0009】
また本発明にかかるタンパク質は、配列番号1および2に示されるアミノ酸配列を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0010】
また本発明にかかるタンパク質は、グループ2ダニアレルゲンに属するものであってもよい。
【0011】
また本発明にかかるタンパク質は、
アレルゲン活性を有するダニ(例えば、Dermatophagoides farinae等)に含まれるタンパク質であって、以下の(d)または(e)に記載のタンパク質である:
(d)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質;
(e)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質。
【0012】
上記本発明にかかるタンパク質は、ダニアレルギー患者血清IgEと高頻度に反応する新規アレルゲンタンパク質である。よって上記タンパク質によれば、新規のダニアレルギー性疾患の治療薬、予防薬および診断薬を提供することができる。
【0013】
一方、本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記タンパク質をコードすることを特徴としている。
【0014】
また本発明にかかるポリヌクレオチドは、下記の(f)または(g)のいずれかであることを特徴とするポリヌクレオチドであってもよい:
(f)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または
(g)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0015】
一方、本発明にかかるベクターは、上記のポリヌクレオチドを含むことを特徴としている。
【0016】
また本発明にかかるタンパク質の生産方法は、上記ベクターを用いることを特徴としている。
【0017】
また本発明にかかる形質転換体は、上記ポリヌクレオチドが導入されていることを特徴としている。
【0018】
また本発明にかかるタンパク質の生産方法は、上記形質転換体を用いることを特徴としている。
【0019】
上記本発明にかかるポリヌクレオチド、ベクター、形質転換体、またはタンパク質の生産方法によれば、上記本発明にかかるタンパク質を、遺伝子工学的手法を用いて大量かつ簡便に生産することができる。よって、本発明はダニアレルギー性疾患の治療や診断に対して有効である。
【0020】
また本発明にかかる抗体は、上記本発明にかかるタンパク質と結合することを特徴としている。本発明にかかる抗体によれば、抗原抗体反応を利用することによって、上記本発明にかかるタンパク質の検出、および当該タンパク質の分離精製を行なうことができる。また上記本発明の抗体を、患者に投与することによって、ダニアレルギー性疾患用の抗体医薬として利用することができる。
【0021】
また本発明にかかるペプチドは、上記本発明にかかるタンパク質に含まれるペプチドであって、ダニアレルギー患者由来のT細胞を増殖させる活性を有することを特徴としている。上記本発明にかかるペプチドは、本発明にかかるタンパク質の一部分、特にT細胞によって特異的に認識されるエピトープを含んでいるので、アレルゲンとして作用する。したがって、本発明にかかるポリペプチドは、ダニアレルギー性疾患の診断薬や治療薬として有効である。特に、上記ペプチドは不要なタンパク質が含まれていないために、当該ペプチドはアナフィラキシーショック等の副作用が少ないダニアレルギー性疾患用治療薬に利用することができる。
【0022】
また本発明にかかるポリヌクレオチドは、上記ペプチドをコードすることを特徴としている。上記本発明にかかるポリヌクレオチドによれば、上記本発明にかかるペプチドを、遺伝子工学的手法を用いて大量かつ簡便に生産することができる。よって、本発明はダニアレルギー性疾患の治療や診断に対して有効である。
【0023】
また本発明にかかるスクリーニング方法は、上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドを用い、当該タンパク質に特異的に結合し、かつ当該タンパク質のアレルゲン活性を阻害する阻害物質(例えば抗体等)をスクリーニングする方法である。上記スクリーニング方法によれば上記阻害物質を取得することができる。上記阻害物質は、本発明にかかるタンパク質(すなわち新規ダニアレルゲンタンパク質)のアレルゲン活性を阻害することができるために、当該阻害物質はダニアレルギー性疾患の治療薬として利用され得る。
【0024】
また本発明にかかるキットは、上記本発明にかかるスクリーニング方法を行なうために用いられるキットであって、上記本発明にかかるタンパク質または上記本発明にかかるペプチドを含有することを特徴としている。上記本発明にかかるキットによれば、上記阻害物質を簡便に取得することが可能となる。
【0025】
また本発明にかかるダニアレルギー性疾患用薬学的組成物は、上記本発明にかかるスクリーニング方法により得られた阻害物質を含有することを特徴としている。上記阻害物質は、既述の通り、本発明にかかるタンパク質(すなわち新規ダニアレルゲンタンパク質)のアレルゲン活性を阻害することができるために、当該阻害物質はダニアレルギー性疾患の治療薬または予防薬として有効である。
【0026】
また本発明にかかるダニアレルギー性疾患用薬学的組成物は、上記本発明にかかる抗体を含有することを特徴としている。上記本発明にかかる抗体は、既述の通り、本発明にかかるタンパク質(すなわち新規ダニアレルゲンタンパク質)と特異的に結合することができるために、アレルゲンとT細胞との結合を阻害することができる。よって、当該抗体はダニアレルギー性疾患の予防または治療薬または予防薬として有効である。
【0027】
また本発明にかかるダニアレルギー性疾患用薬学的組成物は、上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドを含有することを特徴としている。上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドは減感作療法に好ましく適用され得る。よって、上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドはダニアレルギー性疾患の予防または治療に有効である。
【0028】
また本発明にかかるダニアレルギー性疾患の診断キットは、上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドを含有することを特徴としている。
【0029】
また本発明にかかるダニアレルギー性疾患の発症または発症の可能性を検出する方法は、上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドと、生体から採取された試料とを反応させることにより、ダニアレルギー性疾患の発症又は発症の可能性を検出することを特徴としている。
【0030】
上記本発明にかかるタンパク質またはペプチドはダニアレルゲンタンパク質である。したがって、上記タンパク質またはペプチドを用いることによって、ダニアレルギー性疾患の発症または発症の可能性を診断(検出)することができる。特に本発明にかかるタンパク質またはペプチドは新規ダニアレルゲンタンパク質であるため、従来公知のダニアレルゲンタンパク質を用いた診断では検出することができなかった患者に対して、ダニアレルギー性疾患であるか否かを診断(検出)することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかるタンパク質は、ダニアレルギー患者血清IgEと高頻度に反応する新規アレルゲンタンパク質である。よって上記タンパク質は、新規のダニアレルギー性疾患の治療薬、予防薬および診断薬を提供することができる。
【0032】
よって本発明は、ダニアレルギー性疾患の治療、予防、診断において特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、これに限定されるものではない。
【0034】
(1)本発明にかかるタンパク質
ダニアレルゲンにおいては、Der fファミリーおよびDer pファミリーの主要抗原が同定され詳細に研究されているが、その他のアレルゲンに関しては、未だ充分なされていない。そこで、本発明者らは、ダニに含まれるアレルゲンの網羅的解析を目指して、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)虫体抽出物を2次元電気泳動により展開した後、ウェスタンブロット法によってダニアレルギー患者血清IgEと特異的かつ高頻度に反応するスポットを検索した。その結果、分子量約15kDaで、等電点約5.5付近のスポットに高いアレルゲン活性が存在することを発見した。
【0035】
上記スポットのアミノ酸シークエンス解析をESI Q-TOF MSを用いて行ない、ホモロジー検索をしたところ、家畜の皮膚炎ダニや貯蔵食品に生息するコナダニやニクダニのグループ2アレルゲンに相同性を示す全くの新規タンパク質であった。
【0036】
また、本発明にかかるタンパク質をコードするDNAを単離するため、ダニから精製した全RNAを用いてダニcDNAライブラリーを構築した。当該タンパク質の保存配列から縮重プライマーを設計し、cDNAを鋳型としてPCRを行なった。増幅産物についてシークエンス解析を行なった。上記で決定された塩基配列を基にプライマーの設計を行ない、RACE法によって全長DNAを取得した。得られたDNAは、開始コドンおよび終始コドンを含みそのORFは554塩基対(bp)であった。また、ESI Q-TOF MSの解析で得られたアミノ酸配列から推定される塩基配列と相同性を示す塩基配列が、上記全長DNAにおいて確認された。
【0037】
本発明は上記新規知見によって完成されたものである。なお本発明にかかるタンパク質はダニ、特にコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)から見出されたものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、その他のダニ(例えば、Dermatophagoides pteronyssinus、Acarus siro、Blomia tropicalis、Dermatophagoides microceras、Euroglyphus maynei、Glycyphagus domesticus、Lepidoglyphus destructor、Tyrophagus putrescentiae、Psoroptes ovis)に由来するタンパク質をも包含する。
【0038】
本発明にかかるタンパク質は以下(a)~(c)の、物理化学的性質または、生物活性を持つ。
(a)SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が約15kDaである。
(b)等電点が約5.5である。
(c)アレルゲン活性を有する。
【0039】
本発明のタンパク質の物理化学的性質(分子量および等電点)は、公知のSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法および等電点電気泳動法を実施した後、ゲル内のタンパク質を染色することによって調べられ得る。染色法は従来公知の方法を採用することができるが、例えば、クマシー染色法や銀染色法等が挙げられる。
【0040】
ここで「タンパク質の分子量は、約15kDaである」とは、タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法に供した場合において、14~16kDa(より詳細には14.5~15.5kDa)範囲内にバンドが検出されるタンパク質であることを意味する。
【0041】
また「タンパク質の等電点は、約5.5である」とは、タンパク質を等電点電気泳動に供した場合において、等電点が5.0~6.0(より詳細には5.2~5.7)範囲内にスポットが検出されるタンパク質であることを意味する。
【0042】
また本明細書中において「アレルゲン活性」とは、肥満細胞上のIgEと結合し、アトピー性の人に即時型アレルギー反応を引き起こす活性のみならず、単に血清中のIgEと結合する活性をも含むものとする。したがって、例えば、あるタンパク質におけるアレルゲン活性の有無は、IgEの結合性を調べればよく、それを調べる方法として、具体的には、ウェスタンブロットやELISA等の公知の方法を挙げることができる。
【0043】
また、本発明の一実施形態にかかるタンパク質はトリプシンで酵素消化が行なわれると、下記の部分アミノ酸配列(そのアミノ酸を配列番号1および2に示す)を生じることを特徴とする。換言すれば、本発明のタンパク質は下記のアミノ酸配列を含むタンパク質である。なお上記トリプシンによる当該タンパク質の酵素消化は公知の方法により行われ得る。
【0044】
(配列番号1)—Tyr—Ser—Tyr—Asn—Val—Pro—Ala—Val—Xaa—Pro—Asn-Xaa-Lys—、および
(配列番号2)—Val-Xaa-Gly—Asp—Asn—Gly—Xaa-Val—Cys—Xaa—Lys
なお上記アミノ酸配列1および2において、XaaはLeuまたはIleを示す。
【0045】
また本発明の一実施形態にかかるタンパク質のアミノ酸配列と、8種類のグループ2ダニアレルゲン(Pso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2)のアミノ酸とを比較した。その結果を図5に示す。図5においてグループ2のダニアレルゲン(Pso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2)のアミノ酸と、本発明のタンパク質(図5において「DFA22」と表記する)のアミノ酸とが完全に一致した箇所にはアスタリスク「*」を記載した。またグループ2ダニアレルゲンに保存されている6つのCys配列を四角囲みで示した。図5の結果によれば、本発明のタンパク質は、グループ2ダニアレルゲンタンパク質に保存されている6つのCys配列を含んでいることが分かった。よって、本発明のタンパク質は、グループ2ダニアレルゲンに属するということが推察された。なお、図5において記載したPso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、および配列番号13に記載されている。また、Pso_o_2は家畜皮膚炎ダニPsoroptes ovis由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Temeyer et al.,J Med Entomol 39:384-391, 2002」を参照のこと。Lep_d_2は貯蔵穀類ダニLepidoglyphus destructor由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Varela et al.,Eur J Biochem 225:93-98, 1994」を参照のこと。Gly_d_2.02とGly_d_2.02は貯蔵穀類ダニGlycophagus demesticus由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Gafvelin et al.,J Allergy Clin Immunol 107:511-518, 2001」を参照のこと。Tyr_p_2は貯蔵穀類ダニTyrophagus putrescentiae由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Eriksson et al.,Eur J Biochem 251:443-447, 1998」を参照のこと。Eur_m_2は屋内塵中ダニEuroglyphus maynei由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Smith et al.,Int Arch Allergy Immunol 118:15-22, 1999」を参照のこと。Der_p_2は屋内塵中ダニDermatophagoides farinae由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Chua et al.,Int Arch Allergy Appl Immunol 91:118-123, 1990」を参照のこと。Der_f_2は屋内塵中ダニDermatophagoides farinae由来のダニアレルゲンであり、詳細については「Yuuki et al.,Arerugi 39:557-561, 1990」を参照のこと。
【0046】
グループ2ダニアレルゲンは当初、屋内塵中ダニD. farinaeからMe1(17 kD, pI 8.0, Haida et al.,J Allergy Clin Immunol 75:686-692, 1985)、DF2(15 kD, pI 7.8-8.3, Yasueda et al.,Int Arch Allergy Appl Immunol 81:214-223, 1986)およびAg19/20(14.5 kD, pI 8.0, Holck et al.,Allergy 41:408-417, 1986)として、また、D. pteronyssinusからDpX(18-20 kD, pI 5-7, Lind, J Allergy Clin Immunol 76:753-761, 1985)およびDP2(Yasueda et al.,Int Arch Allergy Appl Immunol 81:214-223, 1986)として、各々単離同定された。これらは異なる分子量または等電点を示す成分群であったが、それぞれDer_f_2およびDer_p_2として統一され、対応するcDNAがクローニングされた(Yuuki et al.,Arerugi 39:557-561, 1990およびChua et al.,Int Arch Allergy Appl Immunol 91:118-123, 1990)。その後、数~十数ヶ所程度の塩基配列が異なる遺伝子多型の存在が明らかとなり、タンパク質分子としての多様性を説明する根拠とされた(Chua et al.,Clin Exp Allergy 26:829-37, 1996,Smithet al.,Int Arch Allergy Immunol 124:61-63, 2001,Piboonpocanun et al.,Clin Exp Allergy 36:510-516, 2006)。その後、上記のPso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2が同定され、グループ2のダニアレルゲンとして分類された。
【0047】
上記グループ2のダニアレルゲンは、ダニアレルギー性疾患患者のおよそ80%が感作しているとされており、Der_f_1やDer_p_1を含むグループ1ダニアレルゲンとともに重要なアレルゲンであると認識されている。また、IgE結合に関与するB細胞エピトープ(Takai et al.,Mol Immunol 34:255-261, 1997)や、T細胞増殖に関わるT細胞エピトープ(Joost van Neerven et al.,J Immunol 151:2326-2335, 1993)が報告されている。
【0048】
ダニ体内における上記グループ2のアレルゲンの生理学的役割は依然として明らかではないが、アミノ酸配列の相同性、Der_f_2のタンパク質立体構造のX線解析(Johannessen et al.,FEBS Lett 579:1208-1212, 2005)およびNMR解析(Ichikawa et al.,J Biochem 137:255-263, 2005)、ならびにDer_p_2のNMR解析(Mueller et al.,Biochemistry 37:12707-12714, 1998,Derewenda et al.,J Mol Biol 318:189-197, 2002)から、MD-2型脂質認識ドメインと構造類似性が高いことが明らかとなった。当該ドメインをもつタンパク質としては、ほ乳類のToll-like receptor 4と協同してLPS応答に不可欠でLPSのLipid Aに結合するMD-2(Miyake,Trends Microbiol 12:186-192, 2004)や、Niemann-Pick C2型疾患に関与してコレステロールに結合するNPC2(Vanier et al.,Biochim Biophys Acta 1685:14-21, 2004)が知られている。
【0049】
また本発明のタンパク質の一実施形態としては、例えば、以下の(d)または(e)に記載のタンパク質が挙げられる。
(d)配列番号3に示されるアミノ酸配列からなり、かつアレルゲン活性を有するタンパク質;
(e)配列番号3のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、アレルゲン活性を有するタンパク質。
【0050】
上記「1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異タンパク質作製法により置換、欠失、挿入、および/または付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、最も好ましくは5個以下)のアミノ酸が置換、欠失、挿入および/または付加されていることを意味する。このような変異タンパク質は、上述したように、公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在する変異タンパク質を単離精製したものであってもよい。
【0051】
なお、本発明にかかるタンパク質は、アミノ酸がペプチド結合しているポリペプチドであればよいが、これに限定されるものではなく、ポリペプチド以外の構造を含む複合ポリペプチドであってもよい。本明細書中で使用される場合、「ポリペプチド以外の構造」としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0052】
また、本発明にかかるタンパク質は、付加的なポリペプチドを含むものであってもよい。付加的なポリペプチドとしては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識ポリペプチドが挙げられる。
【0053】
また、本発明にかかるタンパク質は、後述する本発明にかかるポリヌクレオチド(すなわち本発明のタンパク質をコードする遺伝子)を宿主細胞に導入して、そのタンパク質を細胞内で発現させた状態であってもよいし、細胞、組織などから単離精製された場合であってもよい。
【0054】
他の実施形態において、本発明にかかるタンパク質は、融合タンパク質のような改変された形態で組換え発現され得る。例えば、本発明のタンパク質の付加的なアミノ酸、特に荷電性アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間または引き続く操作および保存の間の安定性および持続性を改善するために、タンパク質のN末端に付加され得る。
【0055】
本発明にかかるタンパク質は、例えば、融合されたタンパク質の精製を容易にするペプチドをコードする配列であるタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)にN末端またはC末端へ付加され得る。このような配列は、タンパク質の最終調製の前に除去され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、タグアミノ酸配列は、ヘキサ-ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)において提供されるタグ)であり、他の中では、それらの多くは公的および/または商業的に入手可能である。例えば、Gentzら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824(1989)(本明細書中に参考として援用される)において記載されるように、ヘキサヒスチジンは、融合タンパク質の簡便な精製を提供する。「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)タンパク質由来のエピトープに対応する精製のために有用な別のペプチドであり、それは、Wilsonら、Cell 37:767(1984)(本明細書中に参考として援用される)によって記載されている。
【0056】
また本発明は、上記本発明にかかるタンパク質に含まれるペプチドであって、ダニアレルギー患者由来のT細胞を増殖させる活性を有するペプチドをも包含する。すなわち、上記ペプチドは、本発明のタンパク質の部分断片であって、特にT細胞によって特異的に認識されるエピトープ(以下「T細胞エピトープ」という)を含むものである。上記ペプチドのことを本明細書においては「部分ペプチド」と称する。
【0057】
上記「ダニアレルギー患者由来のT細胞を増殖させる活性」とは、ダニアレルギー性疾患患者(「ダニアレルギー患者」)由来の末梢血単核細胞群(T細胞が多く含まれる)を、上記部分ペプチドの存在下で培養したときに、該末梢血単核細胞群のDNA合成速度を、上記部分ペプチドの非存在下で培養した末梢血単核細胞群の2倍を越える速度、より好ましくは5倍以上の速度にする活性のことを意味する。
【0058】
上記部分ペプチドを同定する際には、まず本発明にかかるタンパク質のオーバーラップペプチドを合成する。ここで「オーバーラップペプチド」とは、本発明にかかるタンパク質(例えば、配列番号3に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質)のアミノ酸配列に基づき、N末端からC末端に至る全アミノ酸残基をカバーするペプチドのことである。かかるオーバーラップペプチドは、市販されているペプチド自動合成装置により容易に合成することができる。これらのオーバーラップペプチドの中から、少なくとも一つのT細胞エピトープを含むペプチドを同定すればよい。
【0059】
またT細胞エピトープを同定するためには、ダニアレルギー患者の末梢血リンパ球から、本発明にかかるタンパク質を特異的に認識し、増殖応答するT細胞ラインを樹立する必要がある。一般に、患者毎に反応するT細胞エピトープが異なるため、患者毎にT細胞ラインを樹立することが望ましい。
【0060】
T細胞ラインを樹立するためには、通常患者の末梢血リンパ球を本発明にかかるタンパク質の存在下、7日間程度培養して抗原刺激によりT細胞を活性化し、さらに、活性化T細胞を、抗原と抗原提示細胞と共に7日間培養することを数回繰り返して抗原刺激することにより、抗原特異的T細胞ラインを作製することができる。
【0061】
しかしながら、T細胞が増殖因子のIL-2の存在下でよく増殖している場合は、抗原刺激は最初だけにすることが好ましい。T細胞ラインを数度抗原刺激すると、増殖率の高いT細胞が選択的に取れ、T細胞エピトープを含むペプチドを同定する場合において、エピトープによっては十分な増殖応答を示さない場合が生じるからである。
【0062】
なお、抗原刺激に使用する本発明にかかるタンパク質としては、ダニから取得した天然型のものが最も望ましいが、組換えタンパク質、あるいはオーバーラップペプチドの混合物も好適に使用できる。上記本発明にかかるタンパク質は、大腸菌で発現させ精製したものが利用され得る。
【0063】
また、上記で使用する抗原提示細胞としては、T細胞ラインと同一人の末梢血リンパ球を、マイトマイシンC処理あるいは放射線照射して増殖能力を失わせたものが望ましい。しかし、採血回数が多くなるため、Epstein-Barr virus(EBV)を自己のBリンパ球に感染させトランスフォーメーションを起こさせたものは、in vitroで増殖し続けリンパ芽球様細胞株(B細胞株)となるため、このB細胞株を抗原提示細胞として用いてもよい。B細胞株の樹立方法は既に確立されている[組織培養の技術第二版、187-191 頁、日本組織学会編(1988.8.10)]。
【0064】
それぞれの患者固有のT細胞ラインが認識する、T細胞エピトープを含むペプチドは以下のようにして同定される。ここで「認識する」という意味は、T細胞レセプターが抗原エピトープ(MHC 分子を含めて)と特異的に結合し、その結果、T細胞が活性化されることを意味し、活性化の状態は、リンホカインの産生や、DNAの合成をブロモデオキシウリジン(BrdU)や [ 3H] チミジンの取込み量を指標として測定することにより観察される。例えば、T細胞ラインとマイトマイシンC処理した同一人のB細胞株とを、96穴平底プレートに播種し、オーバーラップペプチドと共に混合培養し、 [ 3H] チミジンの取込み量(cpm )を液体シンチレーションカウンターで測定する。その際、 [ 3H] チミジンの取込みは、個々の培養系で異なるため、例えば、個々のペプチドに対するT細胞ラインの [ 3H] チミジン取込み量(cpm)を、抗原を添加していないコントロールの [ 3H] チミジン取込み量(cpm )で除した数(stimulation index: SI )が2以上のものを上記ペプチドと同定する。
【0065】
次に本発明にかかるタンパク質の調製方法を説明する。本発明の一実施形態にかかるタンパク質は、従来既知の方法を用いてコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)から精製することができる。例えば、コナヒョウヒダニをPBS(phosphate buffer saline)等の緩衝液に懸濁し超音波等の方法により破砕する。破砕方法は超音波に限らず、リゾチームによって細胞膜を破壊しても良い。その後、遠心分離し上清を回収する。得られた上清から、IgEを用いたアフィニティー精製、タンパク質の荷電を利用したイオン交換クロマトグラフィー、タンパク質の分子量を利用したゲルろ過クロマトグラフィー等のカラムクロマトグラフィーを用いて、精製することができる。また、精製されたタンパク質溶液を適当な緩衝液に透析することで不要な塩を除去することもできる。上記のタンパク質の精製工程は、タンパク質の分解を抑えるために低温で行なうのが適しており、温度は4℃が特に適している。また、上記の精製に用いる緩衝液には、タンパク質の立体構造を安定に保つためDTT(dithiothreitol)等の還元剤を加えても良いし、タンパク質の分解を防ぐためにアプロチニンやロイペプチン等のプロテアーゼインヒビターを加えても良い。
【0066】
本発明にかかるタンパク質または部分ペプチドの化学的な合成には、通常市販のタンパク質(ペプチド)合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α-アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質(ペプチド)の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質(ペプチド)を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質または部分ペプチドを取得する。
【0067】
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質(ペプチド)合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0068】
部分ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明の部分ペプチドもしくは本発明のタンパク質を構成し得る部分ペプチドまたはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)~(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明にかかる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドまたは部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0069】
また本発明にかかるタンパク質は、遺伝子工学的手法を用いて組換えタンパク質として生成可能である。上記生成方法としては、当該分野において周知の方法を使用して行なうことができ、例えば、後に詳述されるようなベクターおよび細胞を用いて行なうことができる。
【0070】
(2)本発明にかかるポリヌクレオチド
本発明にかかるポリペプチドは、上記本発明にかかるタンパク質または部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドのことである。本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
【0071】
本発明にかかるポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、またはそれは、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
【0072】
また本発明にかかるポリヌクレオチドは、その5’側または3’側で上述のタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合され得る。
【0073】
本発明はさらに、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの変異体に関する。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
【0074】
このような変異体としては、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、または付加した変異体が挙げられる。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、または付加を生成し得る。
【0075】
本発明はさらに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは当該ポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、単離したポリヌクレオチドを提供する。
【0076】
本発明にかかるポリヌクレオチドの一実施形態は、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、下記の(f)または(g)のいずれかであることを特徴としている:
(f)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド
(g)以下の(i)もしくは(ii)のいずれかとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド:
(i)配列番号4に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;もしくは
(ii)配列番号4に示される塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【0077】
なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。
【0078】
上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行なうことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができる。
【0079】
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAやRNAを包含する。またDNAには例えばクローニングや化学合成技術またはそれらの組み合わせで得られるようなcDNAやゲノムDNAなどが含まれる。さらに、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
【0080】
本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを取得する方法として、公知の技術により、本発明にかかるポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法が挙げられる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、本発明にかかるポリヌクレオチドの塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列および/または長さのものを用いてもよい。
【0081】
あるいは、本発明にかかるポリヌクレオチドを取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、本発明におけるポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行ない、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、本発明にかかるポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
【0082】
(3)本発明にかかる抗体
本発明は、本発明にかかるタンパク質と特異的に結合する抗体を提供する。本明細書中で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン(IgA、IgD、IgE、IgY、IgG、IgMおよびこれらのFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fcフラグメント)を意味し、例としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単鎖抗体、抗イディオタイプ抗体およびヒト化抗体が挙げられるがこれらに限定されない。本発明にかかる抗体は、本発明にかかるタンパク質を発現する生物材料を選択する際に有用である。また本発明にかかるタンパク質を含む粗溶液から、当該タンパク質を精製する際にも有用である。
【0083】
「抗体」は、種々の公知の方法(例えば、HarLowら、「Antibodies:A laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1988)」、岩崎ら、「単クローン抗体 ハイブリドーマとELISA、講談社(1991)」)に従えば作製することができる。より具体的には以下の通りである。
【0084】
例えば、本発明にかかるタンパク質のモノクローナル抗体を作製する際には、まずモノクローナル抗体産生細胞を作製する。本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2~6週毎に1回ずつ、計2~10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2~5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。従来公知の方法を使用して、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングすることができる。なおモノクローナル抗体産生ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体の分離精製は、公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法(例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法)に従って行なうことができる。
【0085】
また本発明にかかるタンパク質のポリクローナル抗体を作製する際には、例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に対して、抗体産生が可能な部位に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2~6週毎に1回ずつ、計約3~10回程度行なわれる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0086】
ここで本明細書中で使用される場合、用語「本発明にかかるタンパク質と特異的に結合する抗体」は、本発明にかかるタンパク質抗原に特異的に結合し得る完全な抗体分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)を含むことを意味する。FabおよびF(ab’)フラグメントは完全な抗体のFc部分を欠いており、循環によってさらに迅速に除去される。また、細胞のFcレセプターと結合することがないため、当該FabおよびF(ab’)フラグメントと細胞間の非特異的結合がほとんど生じない。(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316-325(1983)(本明細書中に参考として援用される))。従って、これらのフラグメントが好ましい。
【0087】
さらに、本発明にかかるタンパク質のペプチド抗原に結合し得るさらなる抗体が、抗イディオタイプ抗体の使用を通じて2工程手順で産生され得る。このような方法は、抗体それ自体が抗原であるという事実を使用し、従って、二次抗体に結合する抗体を得ることが可能である。この方法に従って、本発明にかかるタンパク質と特異的に結合する抗体は、動物(好ましくは、マウス)を免疫するために使用される。次いで、このような動物の脾細胞はハイブリドーマ細胞を産生するために使用され、そしてハイブリドーマ細胞は、本発明にかかるタンパク質と特異的に結合する抗体に結合する能力が本発明にかかるポリペプチド抗原によってブロックされ得る抗体を産生するクローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、そしてさらなる本発明にかかるポリペプチドと特異的に結合する抗体の形成を誘導するために動物を免疫するために使用され得る。
【0088】
FabおよびF(ab’)ならびに本発明にかかる抗体の他のフラグメントは、本明細書中で開示される方法に従って使用され得ることが、明らかである。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生じる)またはペプシン(F(ab’)フラグメントを生じる)のような酵素を使用するタンパク質分解による切断によって産生される。あるいは、本発明にかかるポリペプチド結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用または合成化学によって産生され得る。
【0089】
このように、本発明にかかる抗体は、少なくとも、本発明にかかるタンパク質を認識する抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab’)フラグメント)を備えていればよいといえる。すなわち、本発明にかかるタンパク質を認識する抗体フラグメントと、異なる抗体分子のFcフラグメントとからなる免疫グロブリンも本発明に含まれることに留意すべきである。
【0090】
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるタンパク質を認識する抗体を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の免疫グロブリンの種類(IgA、IgD、IgE、IgY、IgGまたはIgM)、キメラ抗体作製方法、ペプチド抗原作製方法等に存するのではない。したがって、上記各方法以外によって取得される抗体も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0091】
(4)本発明にかかるタンパク質またはポリヌクレオチドの利用
(4-1)ベクター
本発明は、本発明にかかるタンパク質を生成するために使用されるベクターを提供する。本発明にかかるベクターは、インビトロ翻訳に用いるベクターであっても組換え発現に用いるベクターであってもよい。
【0092】
本発明にかかるベクターは、上述した本発明にかかるポリヌクレオチドを含むものであれば、特に限定されない。例えば、本発明にかかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのcDNAが挿入された組換え発現ベクターなどが挙げられる。組換え発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。
【0093】
ベクターの具体的な種類は特に限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択すればよい。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明にかかるポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明にかかるポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。
【0094】
上記ベクターとしては、例えば大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC18、pUC118)、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどを利用することができる。
【0095】
また本発明において利用可能なプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応した適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、宿主が大腸菌(Escherichia coli)である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。
【0096】
また本発明にかかるベクターには、以上の他に、所望により当該技術分野で公知の、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製起点などを付加することができる。また、必要に応じて、本発明のポリヌクレオチドにコードされたタンパク質と他のタンパク質(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼおよびプロテインA)との融合タンパク質として発現させることも可能である。このような融合タンパク質は、適当なプロテアーゼを使用して切断することによって、それぞれのタンパク質に分離することができる。
【0097】
本発明にかかるベクターには、少なくとも1つの選択マーカーが含まれていることが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、および大腸菌や他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。
【0098】
上記選択マーカーを用いれば、本発明にかかるポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、本発明にかかるタンパク質を融合ポリペプチドとして発現させてもよく、例えば、オワンクラゲ由来の緑色蛍光ポリペプチドGFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明にかかるタンパク質をGFP融合ポリペプチドとして発現させてもよい。
【0099】
上記の宿主細胞は、特に限定されるものではなく、例えば、大腸菌、昆虫細胞、動物細胞などの従来公知の各種細胞を好適に用いることができる。具体的には、例えば、大腸菌(Escherichia coli)等の細菌、酵母(出芽酵母Saccharomyces cerevisiae、分裂酵母Schizosaccharomyces pombe)、線虫(Caenorhabditis elegans)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0100】
大腸菌の具体例としては、Escherichia coli K12・DH1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 60:160(1968))、JM103(Nucleic Acids Research, 9:309(1981))、JA221(Journal of Molecular Biology, 120:517(1978))、およびHB101(Journal of Molecular Biology, 41:459(1969))などが用いられる。
【0101】
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS-7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO、マウスL細胞、マウスAtT-20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当分野で周知である。
【0102】
上記発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、例えば、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を昆虫で転移発現させる場合には、バキュロウイルスを用いた発現系を用いればよい。
【0103】
このように、本発明にかかるベクターは、少なくとも、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含めばよいといえる。すなわち、発現ベクター以外のベクターも、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0104】
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターを提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々のベクター種および細胞種、ならびにベクター作製方法および細胞導入方法に存するのではない。したがって、上記以外のベクター種およびベクター作製方法を用いて取得したベクターも本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0105】
(4-2)形質転換体または細胞
本発明は、上述した本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドが導入された形質転換体または細胞を提供する。ここで「形質転換体」とは、組織または器官だけでなく、生物個体を含むことを意味する。
【0106】
形質転換体または細胞の作製方法(生産方法)は特に限定されるものではないが、例えば、上述した組換えベクターを宿主に導入して形質転換する方法を挙げることができる。また、形質転換の対象となる生物も特に限定されるものではなく、上記宿主細胞で例示した各種微生物、植物または動物を挙げることができる。
【0107】
本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含む形質転換体は、当該ポリヌクレオチドを含む組換えベクターを、当該ポリヌクレオチドが発現し得るように宿主細胞中に導入することにより得ることができる。
【0108】
宿主へのポリヌクレオチドの導入には、当業者に公知の形質転換方法(例えば、アグロバクテリウム法、遺伝子銃、PEG法、エレクトロポレーション法など)が用いられる。また、ポリヌクレオチドを直接細胞または組織に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、遺伝子銃法が知られている。
【0109】
ポリヌクレオチドが宿主に導入されたか否かの確認は、PCR法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などによって行なうことができる。例えば、形質転換植物からDNAを調製し、DNA特異的プライマーを設計してPCRを行なえばよい。
【0110】
PCR増幅産物については、アガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動またはキャピラリー電気泳動などを行ない、臭化エチジウム、SYBR Green液などによって染色し、増幅産物を1本のバンドとして検出することによって、形質転換されたことを確認することができる。また、予め蛍光色素などによって標識したプライマーを用いてPCRを行ない、増幅産物を検出することもできる。さらに、マイクロプレートなどの固相に増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応などによって増幅産物を確認する方法も採用することができる。
【0111】
上記形質転換体を作製し、有性生殖あるいは無性生殖、または培養等することにより、上記形質転換体内で本発明にかかるタンパク質を生産することができるため、上記タンパク質を容易に大量調製することが可能となる。
【0112】
このようにして得られた、本発明にかかるベクターで形質転換された形質転換体は、当該技術分野で公知の方法に従って培養することができる。例えば、宿主が大腸菌の場合、培養は通常約15~43℃、好ましくは37℃、で約3~24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、pHは約6~8に調整された培地を用いて、通常約30~40℃、好ましくは37℃、で約15~60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加えることもできる。
【0113】
(4-3)タンパク質の生産方法
本発明は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を生産する方法を提供する。
【0114】
一実施形態において、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いることを特徴とする。
【0115】
本実施形態の1つの局面において、本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、上記ベクターを無細胞タンパク質合成系に用いることが好ましい。無細胞タンパク質合成系を用いる場合、種々の市販のキットを用いればよい。好ましくは、本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、上記ベクターと無細胞タンパク質合成液とをインキュベートする工程を包含する。
【0116】
本実施形態の他の局面において、本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、組換え発現系を用いることが好ましい。組換え発現系を用いる場合、本発明にかかるポリヌクレオチドを組換え発現ベクターに組み込んだ後、公知の方法により発現可能な宿主に導入し、宿主内で翻訳されて得られる上記タンパク質を精製するという方法などを採用することができる。組換え発現ベクターは、プラスミドであってもなくてもよく、宿主に目的ポリヌクレオチドを導入することができればよい。好ましくは、本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、上記ベクターを宿主に導入する工程を包含する。
【0117】
このように宿主に外来ポリヌクレオチドを導入する場合、発現ベクターは、外来ポリヌクレオチドを発現するように宿主内で機能するプロモーターを組み込んであることが好ましい。組換え的に産生されたタンパク質を精製する方法は、用いた宿主、精製されるタンパク質の性質によって異なるが、タグの利用等によって比較的容易に目的のタンパク質を精製することが可能である。
【0118】
本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を含む細胞または組織の抽出液から当該タンパク質(または部分ペプチド)を精製する工程をさらに包含することが好ましい。タンパク質(または部分ペプチド)を精製する工程は、周知の方法(例えば、細胞または組織を破壊した後に遠心分離して可溶性画分を回収する方法)で細胞や組織から細胞抽出液を調製した後、この細胞抽出液から周知の方法(例えば、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィー)によって精製する工程が好ましいが、これらに限定されない。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。
【0119】
別の実施形態において、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を天然に発現する細胞または組織から当該タンパク質(または部分ペプチド)を精製することを特徴とする。本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、上述した抗体またはオリゴヌクレオチドを用いて本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を天然に発現する細胞または組織を同定する工程を包含することが好ましい。また、本実施形態にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、上述したタンパク質(または部分ペプチド)を精製する工程をさらに包含することが好ましい。
【0120】
さらに他の実施形態において、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を化学合成することを特徴とする。当業者は、本明細書中に記載される本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)のアミノ酸配列に基づいて周知の化学合成技術を適用すれば、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を化学合成できることを、容易に理解する。
【0121】
以上のように、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を生産する方法によって取得されるタンパク質(または部分ペプチド)は、天然に存在する変異タンパク質であっても、人為的に作製された変異タンパク質であってもよい。
【0122】
変異タンパク質を作製する方法についても、特に限定されるものではない。例えば、部位特異的変異誘発法(例えば、Hashimoto-Gotoh,Gene 152,271-275(1995)参照)、PCR法を利用して塩基配列に点変異を導入し変異タンパク質を作製する方法、またはトランスポゾンの挿入による突然変異株作製法などの周知の変異タンパク質作製法を用いることによって、変異タンパク質を作製することができる。変異タンパク質の作製には市販のキットを利用してもよい。
【0123】
このように、本発明にかかるタンパク質(部分ペプチド)の生産方法は、少なくとも、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)のアミノ酸配列、または本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドの塩基配列に基づいて公知慣用技術を用いればよいといえる。
【0124】
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の生産方法を提供することにあるのであって、上述した種々の工程以外の工程を包含する生産方法も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0125】
(4-4)検出器具
本発明は、種々の検出器具をも提供する。本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはそのフラグメントが基板上に固定化されたもの、または、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)もしくは抗体が基板上に固定化されたものであり、種々の条件下において、本発明にかかるポリヌクレオチドおよびタンパク質(または部分ペプチド)の発現パターンの検出または測定などに利用することができる。
【0126】
一実施形態において、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドが基板上に固定化されていることを特徴とする。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、いわゆるDNAチップである。本明細書中で使用される場合、用語「DNAチップ」とは、合成したオリゴヌクレオチドを基板上に固定化した合成型DNAチップを意味するが、これに限定されず、PCR産物などのcDNAを基板上に固定化した貼付け型DNAマイクロアレイもまた包含する。DNAチップとしては、例えば、本発明の遺伝子と特異的にハイブリダイズするプローブ(すなわち、本発明にかかるオリゴヌクレオチド)を基板(担体)上に固定化したDNAチップが挙げられる。
【0127】
プローブとして用いる配列は、cDNA配列の中から特徴的な配列を特定する公知の方法(例えば、SAGE法(Serial Analysis of Gene Expression法)(Science 276:1268,1997;Cell 88:243,1997;Science 270:484,1995;Nature 389:300,1997;米国特許第5,695,937号)等が挙げられるがこれらに限定されない)によって決定することができる。
【0128】
なお、DNAチップの製造には、公知の方法を採用すればよい。例えば、オリゴヌクレオチドとして、合成オリゴヌクレオチドを使用する場合には、フィトリオグラフィー技術と固相法DNA合成技術との組み合わせにより、基板上でオリゴヌクレオチドを合成すればよい。一方、オリゴヌクレオチドとしてcDNAを用いる場合は、アレイ機を用いて基板上に張り付ければよい。
【0129】
また、一般的なDNAチップと同様、パーフェクトマッチプローブ(オリゴヌクレオチド)と、該パーフェクトマッチプローブにおいて一塩基置換されたミスマッチプローブとを配置してポリヌクレオチドの検出精度をより向上させてもよい。さらに、異なるポリヌクレオチドを並行して検出するために、複数種のオリゴヌクレオチドを同一の基板上に固定化してDNAチップを構成してもよい。
【0130】
本実施形態にかかる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。上記した基板以外には、例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、種々の生物またはその組織もしくは細胞から作製したcDNAライブラリーを標的サンプルとする検出に用いられる。
【0131】
他の実施形態において、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリペプチドまたは抗体が基板上に固定化されていることを特徴とする。本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、いわゆるプロテインチップである。
【0132】
本明細書中で使用される場合、用語「基板」は、目的物(例えば、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリペプチドまたはタンパク質)を担持することのできる物質が意図され、用語「支持体」と交換可能に使用される。好ましい基板(支持体)としては、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ)、固相(例えば、ガラスチューブ、試薬ストリップ、ポリスチレン製のマイクロタイタープレートまたはアミノ基結合型のマイクロタイタープレート)などが挙げられるが、これらに限定されない。目的物をこれらの基板に固定化する方法は、当業者に周知であり、例えば、Nature 357:519-520(1992)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0133】
本実施形態にかかる検出器具に用いる基板の材質としては、ポリペプチドまたは抗体を安定して固定化することができるものであればよい。上記した基板以外には、例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
【0134】
上記の方法以外のタンパク質(ポリペプチド)または抗体を基板上に固定化する方法としては、例えば、ニトロセルロース膜やPDVF膜にタンパク質(ポリペプチド)や抗体をドットブロットの要領でスポットする物理吸着法、または、タンパク質(ポリペプチド)や抗体の変性を軽減するために、スライドガラス上にポリアクリルアミドのパッドを接合して、これにタンパク質(ポリペプチド)や抗体をスポットする方法が挙げられる。さらに、タンパク質(ポリペプチド)や抗体を基板表面に吸着させるだけでなく、強固に結合させるため、アルデヒド修飾ガラスを利用した方法(G.MacBeath,S.L.Schreiber,Science,289,1760(2000))を用いることもできる。また、基板上でのタンパク質(ポリペプチド)の配向を揃えて固定化する方法としては、オリゴヒスチジンタグを介して、ニッケル錯体で表面修飾した基板へ固定化する方法(H.Zhu,M.Bilgin,R.Bangham,D.Hall,A.Casamayor,P.Bertone,N.Lan,R.Jansen,S.Bidlingmaier,T.Houfek,T.Mitchell,P.Miller,R.A.Dean,M.Gerstein,M.Snyder,Science,293,2101(2001))を用いることができる。
【0135】
本実施形態の好ましい局面において、本実施形態にかかる検出器具は、種々の生物またはその組織もしくは細胞からの抽出液を標的サンプルとする検出に用いられる。
【0136】
このように、本発明にかかる検出器具は、少なくとも、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)もしくは当該タンパク質(または部分ペプチド)と結合する抗体が支持体上に固定化されていればよいといえる。また、本発明にかかる検出器具は、本発明にかかるポリヌクレオチドもしくはオリゴヌクレオチド、または本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)もしくは当該タンパク質(または部分ペプチド)と結合する抗体が固定化されている基板を備えていればよいといえる。すなわち、これらの支持体(基板を含む)以外の構成部材を備える場合も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0137】
つまり、本発明の目的は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)または本発明にかかるポリヌクレオチド、あるいは本発明にかかる抗体に結合するポリペプチドを検出する器具を提供することにあるのであって、本明細書中に具体的に記載した個々の支持体の種類、固定化方法に存するのではない。したがって、上記支持体以外の構成部材を包含する検出器具も本発明の技術的範囲に属することに留意しなければならない。
【0138】
(4-5)本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を用いた抗体の精製
本発明で精製される抗体としては、動物に抗原を免疫することにより得られた抗血清、動物に抗原を免疫し免疫動物の脾臓細胞より作製したハイブリドーマ細胞が分泌するモノクローナル抗体、遺伝子組換え技術により作製された抗体、すなわち抗体遺伝子を挿入した抗体発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより取得された抗体などいかなるものでもよい。また、抗体のFc領域を融合させた融合タンパク質なども本発明では抗体として含まれる。また上記抗体はモノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよい。その抗体については、「(3)抗体」の記載を適宜参照できる。
【0139】
本発明にかかる抗体の精製方法は、例えば本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を固定した担体を用いたクロマトグラフィーにより達成される。本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)が固定化される担体としては、アガロース、アクリル系合成樹脂のポリマー等があげられ、好ましくはアクリル酸エステルのポリマーがあげられる。そのほか市販のアフィニティー担体を適宜選択の上使用すればよい。例えば、HiTrap NHS-activated HP columns (Amersham Bioscience Corp製)、CNBr-activated Sepharose 4 Fast Flow Lab Packs(Amersham Bioscience Corp製)が利用可能である。また、高速液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」と表記する)システムを使用する場合は、一般に市販されているHPLCシステムであれば、いかなるものでもよい。例えば、LC-6A(Shimadzu社製)などがあげられる。固定化の方法については、担体に応じて適宜最適な方法を適用すればよい。
【0140】
(5)本発明にかかるスクリーニング方法およびスクリーニングキット
本発明にかかるタンパク質は、アレルゲン活性を有するので、当該タンパク質の活性を阻害する化合物は、例えば、ダニアレルギー性疾患の予防または治療薬として使用できる。したがって、本発明にかかるタンパク質は、本発明にかかるタンパク質の活性を阻害する化合物のスクリーニングのための試薬として有用である。すなわち、本発明は、本発明にかかるタンパク質を用いることによって、本発明のタンパク質(または部分ペプチド)と特異的に結合し且つ当該タンパク質のアレルゲン活性を阻害する化合物(以下、適宜「阻害剤」と称する)のスクリーニング方法や、本発明にかかるタンパク質とIgEとの結合を阻害する抗体のスクリーニング方法などを提供する。
【0141】
本発明にかかるスクリーニング方法においては、上記した本発明にかかるタンパク質にIgEを接触させた場合と、上記した本発明にかかるタンパク質にIgEおよび試験化合物または抗体を接触させた場合における、当該タンパク質に対するIgEの結合量を測定して比較する。
【0142】
本発明にかかるスクリーニング方法としての具体例としては、例えば、IgEを本発明のタンパク質に接触させた場合と、IgEおよび試験化合物または抗体を当該タンパク質に接触させた場合における、IgEの当該タンパク質に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする、IgEと当該タンパク質との結合を阻害する化合物または抗体のスクリーニング方法を挙げることができる。
【0143】
本発明にかかるスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。まず、本発明にかかるスクリーニング方法に用いる本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)としては、上記の本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を含有するものであれば何れのものであってもよい。例えば、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をコードするポリヌクレオチドを含む組み換えベクターで形質転換された形質転換体を用いて本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を大量発現した後、精製された本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)が適している。IgEは検出のために適当な化合物等で標識されているのが好ましい。標識化合物としては、例えば放射性同位元素(例、〔H〕、〔14C〕、〔32P〕、〔35S〕など)、蛍光物質〔例、シアニン蛍光色素(例、Cy2、Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7(アマシャムバイオサイエンス社製)など)、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなど〕、酵素(例、β-ガラクトシダーゼ、β-グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素など)、発光物質(例、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなど)、ビオチン等を用いることができる。
【0144】
具体的には、IgEと本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)との結合を阻害する化合物のスクリーニングを行なうには、まず本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)をマルチプレート表面に固相化する。固相化の方法としては、例えばサンドイッチ法のように抗体を用いてプレート表面に固相化する等の公知の方法を用いることができる。当該プレートに、一定量の標識したIgEと試験化合物または抗体を混ぜた溶液を加える。溶液に用いるバッファーには、pH4~10(望ましくはpH6~8)のリン酸バッファー、トリス-塩酸バッファーなどのタンパクと化合物または抗体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のIgEを加えた試料も用意する。反応温度は特に制限されるものではないが、生体内に近い温度(例えば、20~40℃)が好ましい。反応後、適量の同バッファーで洗浄した後、プレート上に残存するIgEを計測する。計測方法はIgEに標識した化合物を計測すればよく、例えば、IgEを放射性同位元素や酵素で標識していれば、それぞれ液体シンチレーションカウンターや酵素活性を測定することによって計測することができる。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B-NSB)を100%とした時、特異的結合量(B-NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0145】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。抗体としては、本発明のタンパク質とIgEとの結合を特異的に阻害するのであれば、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でも良い。
【0146】
一方、本発明にかかるスクリーニング用キットは、本発明にかかるタンパク質または部分ペプチドを含有するものである。また本発明にかかるタンパク質もしくは部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するものであってもよい。本発明にかかるスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、本発明にかかるタンパク質のアレルゲン活性を阻害する化合物である。
【0147】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物または抗体はダニアレルギー性疾患の予防または治療薬などの医薬として有用である。
【0148】
(6)本発明にかかる薬学的組成物
本発明にかかる薬学的組成物(ダニアレルギー性疾患用治療薬または予防薬)の一実施形態としては、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)が有効成分として含まれているものが挙げられる。上記薬学的組成物をダニアレルギー性疾患の減感作治療へ適用することによって、ダニアレルギー性疾患の症状を治療または予防することができる。
【0149】
また本発明にかかる薬学的組成物は、既述の阻害剤、または本発明にかかる抗体(特に本発明にかかるタンパク質または部分ペプチドとIgEとの結合を阻害する抗体)を含有するものであってもよい。上記阻害剤または本発明にかかる抗体は、本発明にかかるタンパク質または部分ペプチドのアレルゲン活性を阻害するものである。よって、本発明にかかる抗体や阻害剤を含有する薬学的組成物を、ダニアレルギー患者に投与すれば、本発明にかかる抗体や阻害剤が、体内に侵入したダニアレルゲンのIgEエピトープをトラップし、肥満細胞または好塩基球上のIgE分子架橋形成を阻害することができ、ダニアレルギー性疾患の症状を改善することができる。
【0150】
本発明にかかる薬学的組成物についてさらに詳しく説明すると、本発明にかかる薬学的組成物の一実施形態としては、例えば、本発明にかかるペプチドまたは抗体を0.01%(w/w)~100%(w/w)、好ましくは0.05%(w/w)~50%(w/w)、さらに好ましくは0.5%(w/w)~5.0%(w/w)含んでなる。本発明にかかる薬学的組成物は、当該ペプチドまたは抗体単独の形態はもとより、それ以外に生理的に許容される、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、マンニトール、プルランなどの担体、賦形剤、免疫助成剤、安定剤、さらには必要に応じてステロイドホルモンやクロモグリク酸ナトリウムなどの抗炎症剤や抗ヒスタミン剤、抗ロイコトリエン剤、抗タキキニン剤を含む1種または2種以上の他の薬剤と組み合わせた組成物としての形態を包含する。さらに、本発明の薬学的組成物は、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投薬単位形態の薬剤とは、本発明にかかるペプチドまたは抗体を、例えば、1日当たりの用量またはその整数倍(4倍まで)またはその約数(1/40まで)に相当する量を含有し、投与に適する物理的に分離した一体の剤形にある薬剤を意味する。このような投薬単位形態の薬剤としては、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、口腔剤、シロップ剤、乳剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、噴霧剤、注射剤などが挙げられる。
【0151】
本発明の薬学的組成物は、ダニアレルギー性疾患の治療、改善または予防を目的に、経口、経皮、点鼻、点眼または注射投与される。ヒトにおける投薬量は、投与の目的や方法、症状によっても異なるが、通常、対象者の症状や投与後の経過を観察しながら、成人1日当たり0.01mg~1000mg、好ましくは1mg~10mgを目安に、毎日1回~毎月1回の頻度で、約1~6ヶ月間、通常、用量を増やしながら反復投与される。
【0152】
(7)本発明にかかる診断キットおよびその利用>
本発明は、ダニアレルギー性疾患の診断キット(検出キット)には、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を含むことを特徴としている。本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)と被験者の血清との結合性(反応性)をELISA法等で検討することによって、被験者血清中にダニアレルゲンに対するIgE抗体が存在するか否かを判断することができ、被験者がダニアレルギー性疾患である(またはダニアレルギー性疾患を発症する可能性がある)か否かを検出(診断)することができる。
【0153】
なお本発明にかかる診断キット(検出キット)に含まれる本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)は、一種類に限定されるものではなく、複数種類のタンパク質またはペプチドを包含するものであってもよい。例えば、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の他に、ダニアレルゲンタンパク質(公知のDer fファミリータンパク質、Der pファミリータンパク質等)が含まれていてもよい。複数のダニアレルゲンタンパク質に対する被験者の反応を検出することによって、より正確にダニアレルギー性疾患(またはその可能性)を検出(診断)することができる。
【0154】
さらに、他のアレルゲンタンパク質(例えばスギ花粉アレルゲンなど)が本発明にかかる診断キット(検出キット)に含まれていてもよい。複数のアレルゲンタンパク質に対する被験者の反応を検出することによって、アレルギー症状の原因を正確かつ網羅的に検出することができる。
【0155】
また、本発明にかかる診断キットには、ELISA法を行なうために必要な試薬(2次抗体、発色試薬等)、プレート(96ウェルプレート等)等が含まれていてもよい。またウェスタンブロット法を行なうために必要なメンブレン、電気泳動用ゲル、電気泳動装置、ブロッティング装置、ブロッティング用試薬等が含まれていてもよい。上記構成が含まれることによって、上記診断(検出)をさらに簡便に行なうことができる。
【0156】
また本発明にかかる診断キットは、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)が基板上に固定化されている検出器具が含まれている態様であってもよい。当該実施態様にかかる検出器具は、いわゆるプロテインチップである。
【0157】
本明細書中で使用される場合、用語「基板」は、目的物(例えば、ペプチドまたはタンパク質等)を担持することのできる物質が意図され、用語「支持体」と交換可能に使用される。好ましい基板(支持体)としては、ビーズ(例えば、ポリスチレンビーズ)、固相(例えば、ガラスチューブ、試薬ストリップ、ポリスチレン製のマイクロタイタープレートまたはアミノ基結合型のマイクロタイタープレート)などが挙げられるが、これらに限定されない。目的物をこれらの基板に固定化する方法は、当業者に周知であり、例えば、Nature 357:519-520(1992)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0158】
本実施態様にかかる検出器具に用いる基板の材質としては、ペプチドを安定して固定化することができるものであればよい。上記した基板以外には、例えば、ポリカーボネートやプラスティックなどの合成樹脂、ガラス等を挙げることができるが、これらに限定されない。基板の形態も特に限定されないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
【0159】
上記の方法以外のペプチドを基板上に固定化する方法としては、例えば、ニトロセルロース膜やPDVF膜にポリペプチドや抗体をドットブロットの要領でスポットする物理吸着法、または、ポリペプチドや抗体の変性を軽減するために、スライドガラス上にポリアクリルアミドのパッドを接合して、これにペプチドをスポットする方法が挙げられる。さらに、ペプチドを基板表面に吸着させるだけでなく、強固に結合させるため、アルデヒド修飾ガラスを利用した方法(G.MacBeath,S.L.Schreiber,Science,289,1760(2000))を用いることもできる。また、基板上でのペプチドの配向を揃えて固定化する方法としては、オリゴヒスチジンタグを介して、ニッケル錯体で表面修飾した基板へ固定化する方法(H.Zhu,M.Bilgin,R.Bangham,D.Hall,A.Casamayor,P.Bertone,N.Lan,R.Jansen,S.Bidlingmaier,T.Houfek,T.Mitchell,P.Miller,R.A.Dean,M.Gerstein,M.Snyder,Science,293,2101(2001))を用いることができる。
【0160】
このように、本発明にかかかる診断キットには、少なくとも、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)が含まれていればよいといえる。その他にダニアレルギー性疾患の診断に必要な構成を備える場合も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意すべきである。
【0161】
<本発明にかかる検出方法>
本発明はダニアレルギー性疾患の発症又は発症の可能性を検出する方法(以下「本発明にかかる検出方法」という)を提供する。本発明にかかる検出方法は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)と生体から採取された試料(たとえば被験者の血清、被験動物の血清等)と反応させる工程(反応工程)を含むことを特徴としている。本発明にかかるタンパク質(部分ペプチド)と試料(被験者の血清等)との結合性(反応性)をELISA法等で検討することによって、試料(被験者の血清等)中にダニアレルゲンに対するIgE抗体が存在するか否かを判断することができ、被験者がダニアレルギー性疾患を発症している(またはその可能性)を検出(診断)することができる。
【0162】
当該反応工程を行なう方法は特に限定されるものではなく、例えばELISA法、RIA法、ウェスタンブロット法、ドットブロット法等公知の方法を適宜選択の上、適用可能である。例えば、ELISA法を採用する場合は、マイクロタイタープレート上に本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)を固定し、試料(被験者の血清等)をアプライして反応させればよい。なお試料(被験者の血清等)は、適当な濃度になるように緩衝液(リン酸緩衝液等)で希釈して使用することが好ましい。試料(血清)の濃度が高すぎると本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)と非特異的に結合するからである。本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)の固定量、反応温度、反応時間等の反応条件については、適宜検討の上、設定すればよい。なお、試料(被験者の血清等)と反応させるのは、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)に限定されるものではなく、その他のダニアレルゲンタンパク質や、その他公知のアレルゲンタンパク質等と反応させてもよい。したがって、上記マイクロタイタープレート上に固定する物質は、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)のみならず、その他のダニアレルゲンタンパク質や、その他公知のアレルゲンタンパク質等であってもよい。
【0163】
また本発明にかかる検出方法には、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)と試料(被験者の血清等)中に含まれるIgE抗体との結合を検出する検出工程が含まれていることが好ましい。本発明にかかるタンパク質(部分ペプチド)に結合した試料(被験者の血清等)中に含まれるIgE抗体に、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ等で標識した2次抗体(抗ヒトIgE抗体)を結合させ、さらに標識した酵素によって発色する基質を加え発色させることによって、本発明にかかるタンパク質(または部分ペプチド)と試料(被験者の血清等)中に含まれるIgE抗体との結合を容易かつ定量的に検出することができ、被験者がダニアレルギー性疾患である(またはその可能性がある)か否かを判断することができる。なお検出工程は、放射性同位体標識した2次抗体を用いても良く、また検出感度を向上させるべく2次抗体に対する抗体(3次抗体)を用いてもよい。なお検出には、適宜市販の抗体、および検出用試薬を適宜選択の上、利用すればよい。
【0164】
上記反応工程、検出工程には、当該工程に必要な操作(例えば、未反応の血清抗体等を反応系から除去する洗浄操作、マイクロタータープレートと抗体との非特異的な結合を防止するブロッキング操作等)が含まれていてもよい。また本発明にかかる検出方法には、生体(被験者、被験動物等)から採血する工程、採血した血液から遠心分離により血清を調製する血清調製工程等が含まれていてもよい。なお、ELISA法の具体的な方法については、実施例の記載を適宜援用することが可能である。
【0165】
以下添付した図面に沿って実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることはいうまでもない。さらに、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、それぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0166】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0167】
以下に示す実施例において使用した試薬は、特記しない限り、ナカライテスク株式会社、和光純薬工業株式会社、シグマ社、ディコフ社等から購入した市販のものを使用した。また、制限酵素等の遺伝子工学用試薬はタカラバイオ株式会社、東洋紡績株式会社、インビトロジェン社等から購入し、販売者の指示に従って使用した。
【0168】
<実施例1> ダニ虫体抽出物のプロテオーム解析
(1)ダニ虫体抽出物の調製
コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)をマウス・ラット・ハムスター用粉末飼料(オリエンタル酵母工業株式会社、Tokyo、Japan)と襖の混合培地(7:3)中で湿度75%、25℃において30日間培養した。その後、ダニ培養物を飽和食塩水に懸濁して遠心分離し、その上清を含む浮遊物を濾過した。濾紙上(Tokyo Roshi Kaisha、Ltd.110 mm)に回収されたダニ虫体は、使用するまで-80℃で保存した。
【0169】
ダニ虫体を0.1mM PMSF、5mM EDTA、1mM monoiodoacetic acid、5mM EPNPを含むリン酸緩衝液、pH7.2中で乳鉢を用いてすり潰した後、-80℃で一晩凍結させた。その後凍結乾燥を行ったものをダニ虫体抽出物として以下の実施例に用いた。ダニ虫体抽出物は使用するまで-80℃で保存した。
【0170】
ダニ虫体抽出物3.6gを溶解バッファー(5M 尿素、2M チオ尿素、2% CHAPS、2%SB 3-10、1%DTT、2% Ampholine)36mlに溶解し、40000×gで10分間遠心分離し不溶性成分を除去した。その後、トリクロロ酢酸(TCA)を終濃度20%となるように加え、氷上で1.5時間静置した。静置後、3500rpm、0℃で30分間遠心分離し、上清を捨て、沈殿を氷冷アセトン10mlで洗浄した。洗浄後、3500rpmで20分、0℃で遠心分離し、上清を捨て、沈殿に氷冷ジエチルエーテルを加え十分懸濁した。再度3500rpm、0℃で20分間遠心分離し、上清を捨て、遠心減圧乾固させた。得られたタンパクを溶解バッファーに溶解し、十分懸濁し、タンパク濃度を測定後、使用するまで-80℃で保存した。TCA沈殿処理したダニ虫体抽出物のタンパク濃度は、Bio-Rad Protein Assay(Biorad社)を用いてBSA換算タンパク濃度として算出した。
【0171】
(2)ダニ虫体抽出物の2次元電気泳動
TCA沈殿処理後、溶解バッファーに溶解したダニ虫体抽出物(100μgタンパク質)を全量が500μlとなるように溶解バッファーに溶かし、二次元ゲル電気泳動による分離および解析を藤村ら(Fujimura et al.(2004) Int. Arch. Allergy Immunol. 133、 125-135)の方法に従って行った。一次元目はImmobiline DryStrip gel pH3-10(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を使用し、MultiphorII水平型電気泳動装置(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)で20℃、約12時間電気泳動を行なった。ゲルを平衡化バッファー(A)(尿素14.4g、グリセロール15.125g、10% SDS 8ml、0.5M Tris—HCl(pH 6.8) 8ml、DTT 200mg/40ml 超純水)中で15分間振盪した後、平衡化バッファー(B)(尿素14.4g、グリセロール15.125g、10% SDS 8ml、0.5M Tris—HCl(pH6.8) 8ml、ヨードアセトアミド3.6g、ブロモフェノールブルー0.005g/40ml 超純水)中で15分間振とうを行ないシステイン残基にカルバミドメチル化を行なった。二次元目は9~18%ポリアクリルアミドグラジエント平板ゲルを使用し、20℃、80Vで16~18時間電気泳動を行なった。ゲル内の全タンパク質は銀染色によって可視化した。その結果を図1に示す。
【0172】
(3)ダニアレルゲンタンパク質の検出
ダニアレルゲンタンパク質をウェスタンブロット法により検出した。2次元電気泳動を行なった後に、ゲル内のタンパク質を60V,6時間でPVDFメンブレンに転写させ,ブロッキングバッファー(5% スキムミルク,1% BSA,0.1% Tween20/PBS)中に4℃で一晩ブロッキングした。その後,PBST(PBS,0.5% Tween20)で5分×1回,10分×1回洗浄した。洗浄後、メンブレンを、0.02% アジ化ナトリウム/PBS中に4℃で保存した。メンブレンをPBSTで洗浄した後、ダニアレルギー性疾患患者血清を希釈バッファー(5%スキムミルク,1% BSA,0.1% Tween20/PBS)で10倍希釈させた溶液に浸して、4℃で一晩振とうさせた。上記ダニアレルギー性疾患患者血清は、ハウスダストまたはダニに対する皮内反応陽性の検体から採取した血液を遠心分離して得られた上清を用いた。その後、PBSTで5分×1回,10分×3回,5分×1回洗浄した。洗浄後、ビオチン化ヤギ抗-ヒトIgE(Vector Laboratories社)を0.5% Tween20を含む希釈バッファーで1万倍希釈した溶液に浸し、室温で1時間振盪させた。メンブレンを洗浄した後、ECL-Plus(Amersham Pharmacia Biotech UK社)15.375mlをメンブレン上に滴下して5分静置し、Hyper film ECL(Amersham Pharmacia Biotech UK社)に露光させて、ダニアレルゲンタンパク質である陽性スポットを検出した。
【0173】
検出された陽性スポットのうち、分子量約14~15kDa、等電点約5.5の成分が77.5%の頻度で患者血清に反応することがわかった。上記成分を「DFA22」と命名した。
(4)質量分析法によるダニアレルゲンタンパク質の同定
DFA22のタンパク質はQ-TOF型nano-ESI MS/MS(Applied Biosystems社、QSTAR(登録商標)XL Hybrid LC/MS/MS System)によって同定した。すなわち、ウェスタンブロットの結果と比較し、二次元電気泳動後のゲルから目的の陽性スポットと一致する部位をメスで切り出し、1mm程度に切り刻み、30mM フェリシアンカリウム/100mM硫酸ナトリウム等量混合液を加えてゲルが黄色になるまで激しく振とうした。溶液を除去し、超純水でゲルが透明になるまで洗浄した。100mM炭酸水素アンモニウムを加え10分間の強振とうを2回行ない、アセトニトリルを加え10分間強振とうを行ない、100mM炭酸水素アンモニウムを加え10分間強振とうを行ない、アセトニトリルを加え10分の強振とうを2回行ない、完全にゲルが白くなるまで脱水した。遠心濃縮機で20分間ゲルを乾燥させ、トリプシン溶液(10ng/μlトリプシン、40mM炭酸水素アンモニウム、10%アセトニトリル)をゲルに加え、室温で45分インキュベートした。トリプシン消化バッファー(40mM炭酸水素アンモニウム、10%アセトニトリル)をゲルの半分程度加え、37℃で16時間程度インキュベートした。その後、5%TFAを加えて20分間強振とうを行ない、5%TFA/50%アセトニトリルを加えて20分間の強振とうを3回行ない、ペプチドを抽出した。遠心濃縮器で10μl程度まで抽出液を濃縮した。脱塩はZipTip C18(日本ミリポア社製)を用いて行なった。
【0174】
QSTAR(登録商標) XL System(Applied Biosystems社製)に付属されているマニュアルに従って、positive modeでsex pheromone inhibitor iPD1(MW+H=829.5393;BACHEM社)とヨウ化セシウム(MW+H=132.9049)とを用いてキャリブレーションした。高濃度に濃縮し脱塩したべプチドをGELoader Tips を用いてNanoTip(Sigma社)にアプライし、先端にサンプルを集めた。装置にセットした後、適切な電圧(900~1200V)でTOF MSスペクトルを得た。明瞭なピークを与える多価イオンはさらにproduct ion modeでMS/MS解析を行なった。得られたMS/MSスペクトルをBioAnalyst software(Applied Biosystems社製)を用いて解析した。
【0175】
その結果を図2に示した。図2(A)はDFA22を質量分析に供した時のピークを示す図であり、図中に記載されたイオン分子量は各々のイオン群の代表値である。また、図2(B)はDFA22のトリプシン消化によって生じたペプチドの推定アミノ酸配列と、そのモノアイソトピック分子量とを示す図である。
【0176】
図2の結果から、739.4296(M+2H)および623.3568(M+2H)の多価イオンペプチドについて、それぞれ、
配列番号1:YSYNVPAV(LまたはI)PN(LまたはI)K、および配列番号2:V(LまたはI)GDNG(LまたはI)VC(LまたはI)Kからなるアミノ酸配列が推定された。図2(B)に示されているアミノ酸配列であって、配列番号1および2以外のアミノ酸配列を配列番号28~32に示した。当該アミノ酸配列について、DDBJ(日本DNAデータバンク)のBlast検索により全生物種を対象に相同性検索を行なったところ、グループ2ダニアレルゲンと相同性が高いことがわかったが、既知のダニアレルゲンタンパク質とは完全に一致することはなく、新規のダニアレルゲンタンパク質であった。
【0177】
なお、同様の手法で、分子量約16kDa、等電点7~9の複数の成分が公知のダニアレルゲンDer f 2であることが確認された(図1中黒矢印で示す)。
<実施例2> DFA22の全長遺伝子配列の決定
(5)ダニ由来cDNAライブラリーの作成
D.farinaeの全RNAを調製するため、180℃、12時間乾熱滅菌した乳鉢にD.farinae虫体2g(-80℃凍結保存状態)、適量の液体窒素、トリゾール(Life Technologies 社製)20mlを入れ、石英砂により粉状になるまで破砕した。60℃に保温しておいた5mlのトリゾールを加え、30秒間激しく攪拌し、15分、60℃でインキュベートして、遠心分離(14000rpm、1分間、4℃)を行なった。1.5mlマイクロチューブに上清を1mlずつ分注し、5分室温でインキュベートした後、各チューブに200μlずつクロロホルムを加え、エマルジョンになるまで激しく攪拌した。3分間室温でインキュベートし、遠心分離(14000rpm、15分間、4℃)して、2層に分かれた上層部分を別のマイクロチューブにとり、500μlのイソプロパノールを加えて10分間室温で静置した。遠心分離(14000rpm、10分間、4℃)後、上清を除き、残存した沈殿に300μlの氷冷した4M塩化リチウムを加え、ピペッティングにより溶解し、遠心分離(6500rpm、5分間、室温)した。上清を除き、沈殿物に200μlの0.5% SDS-TEbufferと200μlのクロロホルムを加え、激しく攪拌した後、遠心分離(6500rpm、10分間、室温)して、上層の水層部分を別のマイクロチューブにとった。その水層部分に1/10量の3M酢酸ナトリウムと2倍量のエタノールを加え、5分間-80℃で静置した。遠心分離(14000rpm、10分間、4℃)して、上清を除いた沈殿(RNA)に75%エタノールを加えてリンスして遠心分離(14000rpm、2分間)して得た沈殿を風乾した後、DEPC処理水に溶解し、全RNAサンプルとした。Oligotex-dt30(super)mRNA Purification Kit(タカラバイオ社製)を用いて、メーカーの指示通り使用して、mRNAを精製した。cDNAはBD SMART RACE cDNA Amplification Kit(BD Bioscienes社製)を用いて、合成された。
【0178】
(6)PCR法による遺伝子の増幅
DFA22遺伝子をPCR法によって増幅するため、MS/MS解析で得られたアミノ酸配列(配列番号1:YSYNVPAV(LまたはI)PNL(LまたはI)K、および配列番号2:V(LまたはI)GDDG(LまたはI)VG(LまたはI)K)と、D.farinaeのcodon usageを考慮して縮重プライマーを設計した。
【0179】
5’RACE用は、Spot22 R LL(配列番号14:TTIARRCADCCNACIARDCCRTC)、Spot22 R LI(15:TTIARRCADCCIACDATDCCRTC)、Spot22 R IL(配列番号16:TTDATRCADCCIACIARDCCRTC)、Spot22 R II(配列番号17:TTDATRCADCCIACDATDCCRTC)、Spot22 R nested(配列番号18:ACNAIDCCRTCRTCDCCNAIIAC)とし、3’RACE用はSpot22 F(配列番号19:TAYWSITAYAAYGTICCNGCHG)、Spot22 F nested LL(配列番号20:CCIGCHGTHYTNCCIAAYYTIAAR)、Spot22 F nested IL(配列番号21:CCIGCHGTHATHCCIAAYYTIAAR)、Spot22 F nested LI(配列番号22:CCIGCHGTHYTICCIAAYATHAAR)、Spot22 F nested II(配列番号23:CCIGCHGTHATHCCIAAYATHAAR)とした。合成したcDNAをテンプレートとして用い、Gene Amp PCR system 9600 (Perkin-Elmer corporation、 Norwalk、 CT、 USA)により増幅させた。
【0180】
反応液組成は以下の通りである。
5’RACE:TaKaRa Ex taqTM (5units/μl) 0.5μl、10×ExTaqTM Buffer 5μl、dNTP mix (2.5 mM each) 4μl、Templete 5’RACE cDNA 2.5μl、Universal Primer Mix (10×) 5μl、5’RACE用 Primer (10μM) 1μl、MilliQ 32μl。
3’RACE:TaKaRa Ex taqTM (5 units/μl)0.5μl、10×Ex TaqTM Buffer 5μl、dNTP mix (2.5mM each) 4μl、Templete 3’RACE cDNA 2.5μl、3’RACE用 Primer (10μM) 1μl、Universal Primer Mix (10×) 5μl、MilliQ 32μl。
【0181】
反応条件は、94℃×5min、[94℃×1min、52℃×30sec、72℃×50sec]×35cycles、72℃×7minとした。
【0182】
(7)PCR産物のクローニング
PCR産物の一部をとり、pGEM-T Easy vector (10ng/μl)(Promega社)1μl、10×Ligation buffer 1.5μl、T4リガーゼ(3Weiss units/μl)1μlを加えて15℃で一晩インキュベートした。この溶液15μlにコンピテントセル(E.coli DH5α)100μlを加え、5分間氷冷後、42℃で30秒インキュベートし、直ちに氷上に戻し2分静置した。次に、SOC培地を500μl加え37℃で1時間振盪培養した。この菌体懸濁液にあらかじめ100mM IPTG 40μl、20mg/ml X-gal 40μlをスプレッドしておいたLBプレート培地(50μg/mlアンピシリン)にまき、37℃、12時間培養した。形成されたコロニーをLB培地(50μg/ml アンピシリン)5mlで37℃、12hr振盪培養し、得られた培養液からRapid Plasmid Miniprep System(MARLIGEN社)を用いてプラスミドを精製した。挿入断片の塩基配列をBig Dye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)およびABI PRISM 3100-Avant Genetic Analyzer(Applied Biosystem)を用いて決定した。
【0183】
5’RACEと3’RACEから得られたオーバーラップした配列を全長遺伝子として取得するために、5’RACE産物の末端配列(S22 all Apa 1 F(配列番号24:GTCGGGCCCACGCGGGGATCCAATTG))と3’RACEのアダプター配列(S22 all Sac 1 R(配列番号25:CCAGAGCTCAAGCAGTGGTATCAAC))とをプライマーとし、3’RACE用のcDNAをテンプレートとして全長遺伝子を取得した。PCR産物をゲル抽出により精製し、ApaI、SacIで消化して、pGEM T-Easy Vectorに挿入して、塩基配列を確認した。
【0184】
その結果、DFA22遺伝子は開始コドンと終止コドンを含み、そのopen reading frameが554bpからなる塩基配列であることが明らかになった(配列番号5)。また、この塩基配列を翻訳して得られる推定アミノ酸配列(配列番号3)はMS/MS解析で得られた上記2配列(配列番号1および2で示されるアミノ酸配列)およびMS解析で観察されたトリプシン消化断片の分子量と理論的に一致する配列を含んでいた(図2(B)、モノアイソトピックイオン分子量756.6361、851.5527、979.5256、1175.2750、1244.6640、1477.8106)。また、理論分子量15524.97および理論等電点5.45はいずれも二次元電気泳動で観察されたものとほぼ同等であった。ただし、天然型タンパク質はシグナル配列などが切断除去されている可能性がある。なお、配列番号5に示される塩基配列の第68~499位までの塩基配列(すなわち開始コドンから終止コドンまでを含む塩基配列)を、DFA22をコードするポリヌクレオチドとして配列番号4に示した。
【0185】
またDFA22のアミノ酸配列と、8種類のグループ2ダニアレルゲン(Pso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2)のアミノ酸とを比較した結果を図5に示す。図5においてグループ2のダニアレルゲン(Pso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2)のアミノ酸と、DFA22のアミノ酸とが完全に一致した箇所にはアスタリスク「*」を記載した。またグループ2ダニアレルゲンに保存されている6つのCys配列を四角囲みで示した。その結果、グループ2ダニアレルゲンに特徴的な6つのCys残基の位置が一致していた。これらのアレルゲンはMLタンパク質と立体構造が類似していることが報告されている(S. Ichikawa et al. J. Biochem. 137、 255-263 (2005))。DFA22と最も相同性が高いタンパク質はsheep scab mite(Psoroptes ovis)のPso o 2であり、61.5%の相同性であった(図4参照のこと)。図4は、DFA22および従来公知のグループ2ダニアレルゲンの分類を示す系統樹である。
<実施例3>組み換えDFA22タンパク質の発現
(8)大腸菌発現ベクターへのサブクローニング
DFA22を、大腸菌シャペロンの一種であるトリガーファクター(TF)融合タンパク質(N末端にHis×6、TFとDFA22の間にthronbim消化部位)として発現させるため、S22 EXP F Nde1(配列番号26:ATCCATATGATCAAATTTTTGTGCATCTT)およびS22 EXP R Xho1(配列番号27:CAGCTCGAGTTAATCGGCGATTTCACCAT)の塩基配列からなる遺伝子組換え用のオリゴDNAプライマーを作製した。上記プライマーを用いダニ由来cDNAを鋳型としてPCR増幅を行なった。PCRにより得られた増幅産物を制限酵素NdeIおよびXhoIで消化し、pCold TF DNAベクター(タカラバイオ社製)に連結させた後に、E.coli Rosetta-gami(DE3)pLysSへトランスフォーメーションした。LBプレート培地(15μg/mlカナマイシン、34μg/mlクロラムフェニコール、12.5μg/mlテトラサイクリン、50μg/mlアンピシリン)上に生育した形質転換体をLB液体培地(15μg/mlカナマイシン、34μg/mlクロラムフェニコール、12.5μg/mlテトラサイクリン、50μg/mlアンピシリン)で37℃にて培養し、OD600=0.5に達した時点で培養液を15℃に冷却し、30分間静置した。その後、終濃度1.0mMになるようにIPTGを添加し15℃で24時間培養して、TF融合タンパク質として発現させた。
(9)銀染色による組換えDFA22の検出
その後、菌体成分を破砕し遠心分離を行なった。その後、上清のみの試料と、上清にthrombinを加えた試料とをSDS-PAGEにより分画し、銀染色によってタンパク質を検出した。その結果を図3(A)に示した。図3(A)によれば、DFA22は可溶性画分に存在することが確認された。また、thrombinによる酵素消化でTF部分を切り離したところ、理論分子量約16.2kD(N末端付加配列0.73kDを含む)に相当する組換えDFA22の遊離確認された(図3(A)レーン5矢印部参照)。
(10)ウェスタンブロット法による組換えDFA22、およびダニアレルギー性疾患患者血清IgEとの結合の検証
DFA22がダニアレルゲンタンパク質であるかを1次抗体にダニアレルギー性疾患患者血清IgEを用いて調べた。組み換えDFA22タンパク質を発現誘導した後の菌体成分をSDS-PAGEにより分画し、セミドライ式転写装置によって、ゲルよりPVDF膜(メタノールに数秒浸した後、25mM Tris/20mMグリシン/20%メタノールで平衡化したもの)に転写した。PVDF膜は、ブロッキングバッファー(5%スキムミルク、1%BSA、0.1%Tween20/PBS)中にて1時間室温で振とうした。患者血清を同溶液で30倍に希釈したもので膜を4℃で一晩振とうした。その後の操作は、二次元電気泳動と同様の条件で行った。
【0186】
その結果を図3(B)に示した。図3(B)によれば、DFA22タンパク質はダニアレルギー性疾患患者血清IgEと結合することが明らかになり、ダニアレルゲンタンパク質であることが確認された(図3(B)レーン4、5、6およびレーン5矢印部参照)。
【産業上の利用可能性】
【0187】
本発明は、アレルギー性疾患を示す患者に対して高頻度に反応する新規ダニアレルゲンタンパク質およびその代表的な利用例を提供する。よって本発明は、ダニアレルギーの研究において奏効するものであるため、例えば、アレルギー治療薬や予防薬の開発や、アレルギー診断の分野において利用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】ダニ虫体抽出物を2次元電気泳動に供した後に、ダニ全タンパク質を銀染色法により検出を行なった結果を示す図である。
【図2】(A)はDFA22を質量分析に供した時のピークを示す図であり、(B)はDFA22のトリプシン消化によって生じたペプチドの推定アミノ酸配列を示す図である。
【図3】(A)はDFA22を発現させた大腸菌の菌体破砕上清をSDS-PAGE分画し、ゲル内のタンパク質を銀染色によって染色した結果を示す図であり、(B)はDFA22とダニアレルギー性疾患患者血清IgEとの交差反応をウェスタンブロットによって調査した結果を示す図である。
【図4】DFA22および従来公知のグループ2ダニアレルゲンの分類を示す系統樹を示す図である。
【図5】DFA22のアミノ酸配列と、8種類のグループ2ダニアレルゲン(Pso_o_2、Lep_d_2、Gly_d_2.02、Gly_d_2.01、Tyr_p_2、Eur_m_2、Der_p_2、Der_f_2)のアミノ酸とを比較した結果を示す図である。
図面
【図2】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図1】
3
【図3】
4