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明細書 :物質と蛋白質との間の相互作用の検出方法、物質と相互作用する蛋白質のスクリーニング方法、及び、物質とその物質と相互作用する蛋白質との複合体の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3706942号 (P3706942)
登録日 平成17年8月12日(2005.8.12)
発行日 平成17年10月19日(2005.10.19)
発明の名称または考案の名称 物質と蛋白質との間の相互作用の検出方法、物質と相互作用する蛋白質のスクリーニング方法、及び、物質とその物質と相互作用する蛋白質との複合体の形成方法
国際特許分類 G01N 33/50      
G01N 33/15      
G01N 33/566     
C12N 15/00      
FI G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
G01N 33/566
C12N 15/00
請求項の数または発明の数 39
全頁数 65
出願番号 特願2003-519415 (P2003-519415)
出願日 平成14年8月7日(2002.8.7)
国際出願番号 PCT/JP2002/008078
国際公開番号 WO2003/014734
国際公開日 平成15年2月20日(2003.2.20)
優先権出願番号 2001239175
2002172129
優先日 平成13年8月7日(2001.8.7)
平成14年6月12日(2002.6.12)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成17年6月3日(2005.6.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000079
【氏名又は名称】学校法人慶應義塾
発明者または考案者 【氏名】柳川 弘志
【氏名】宮本 悦子
【氏名】松村 展敬
【氏名】土居 信英
【氏名】舘山 誠司
【氏名】石坂 正道
【氏名】堀澤 健一
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100090516、【弁理士】、【氏名又は名称】松倉 秀実
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
審査官 【審査官】加々美 一恵
参考文献・文献 特開2001-027633(JP,A)
国際公開第98/16636(WO,A1)
特開2001-128690(JP,A)
特開2000-139468(JP,A)
特開平11-322781(JP,A)
特開2002-176987(JP,A)
調査した分野 G01N 33/50
G01N 33/15
G01N 33/566
特許請求の範囲 【請求項1】
ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、検出用標識として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳を行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び検出用標識を利用して行われることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
ベイトが蛋白質であり、分離用修飾として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、無細胞翻訳系において、ベイトを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳が行われることにより、ベイトが無細胞翻訳系に存在する請求項1記載の方法。
【請求項3】
ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び翻訳されたプレイと会合したmRNAを利用して行われることを特徴とする前記方法。
【請求項4】
mRNAが、その3'末端に結合したスペーサー領域と、スペーサー領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを有することにより、翻訳されたプレイが該mRNAと会合する請求項3記載の方法。
【請求項5】
ペプチドアクセプター領域が、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなる請求項4記載の方法。
【請求項6】
スペーサー領域が、ポリエチレングリコール(PEG)を主成分としたPEG領域である請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
mRNAが、その3'末端領域に長さが2~10塩基のポリA配列を有する請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞転写翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより、無細胞転写翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び翻訳されたプレイと会合したDNAを利用して行われることを特徴とする前記方法。
【請求項9】
DNAが、蛋白質とストレプトアビジン又はアビジンとの融合蛋白質をコードし、DNAがビオチンにより標識され、DNA一分子がエマルジョンの一区画に含まれる状態で転写及び翻訳が行われることにより、翻訳されたプレイが該DNAと会合する請求項8記載の方法。
【請求項10】
ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で前記翻訳を行う請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ベイトが完全長蛋白質である請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プレイが、複数のプレイからなるプレイライブラリーとして提供される請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
プレイをコードするDNAが、ランダムプライミングcDNAライブラリーとして提供される請求項8又は9記載の方法。
【請求項14】
プレイをコードするDNAが、dTプライミングcDNAライブラリーとして提供される請求項8又は9記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイを選択する選択工程を含む、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法。
【請求項16】
選択工程で選択されたプレイを調製する調製工程を含み、
調製されたプレイを、検出工程で使用されたベイトの代わりに又はそのベイトと共に用いて、検出工程、選択工程及び調製工程を繰り返す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項3~7のいずれか1項に記載の方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイをコードするmRNAを選択することによりプレイを選択する選択工程を含み、選択工程で選択されたmRNAを検出工程のmRNAとして用いて検出工程及び選択工程を繰り返す、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法。
【請求項18】
請求項8又は9記載の方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイをコードするDNAを選択することによりプレイを選択する選択工程を含み、選択工程で選択されたDNAを検出工程のDNAとして用いて検出工程及び選択工程を繰り返す、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法。
【請求項19】
ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で検出工程での翻訳を行う請求項17又は18記載の方法。
【請求項20】
ベイトが完全長蛋白質である請求項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
検出工程におけるプレイが、複数のプレイからなるプレイライブラリーとして提供される請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
検出工程における、プレイをコードするDNAが、ランダムプライミングcDNAライブラリーとして提供される請求項18記載の方法。
【請求項23】
検出工程における、プレイをコードするDNAが、dTプライミングcDNAライブラリーとして提供される請求項18記載の方法。
【請求項24】
選択工程において複数のプレイが選択される請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、検出用標識として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳を行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法。
【請求項26】
ベイトが蛋白質であり、分離用修飾として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、無細胞翻訳系において、ベイトを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳が行われることにより、ベイトが無細胞翻訳系に存在する請求項25記載の方法。
【請求項27】
ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法。
【請求項28】
mRNAが、その3'末端に結合したスペーサー領域と、スペーサー領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを有することにより、翻訳されたプレイが該mRNAと会合する請求項27記載の方法。
【請求項29】
ペプチドアクセプター領域が、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなる請求項28記載の方法。
【請求項30】
スペーサー領域が、ポリエチレングリコール(PEG)を主成分としたPEG領域である請求項28又は29記載の方法。
【請求項31】
mRNAが、その3'末端領域に長さが2~10塩基のポリA配列を有する請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞転写翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより、無細胞転写翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法。
【請求項33】
DNAが、蛋白質とストレプトアビジン又はアビジンとの融合蛋白質をコードし、DNAがビオチンにより標識され、DNA一分子がエマルジョンの一区画に含まれる状態で転写及び翻訳が行われることにより、翻訳されたプレイが該DNAと会合する請求項32記載の方法。
【請求項34】
ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で前記翻訳を行う請求項25~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
ベイトが完全長蛋白質である請求項25~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
ベイトと、複数のプレイからなるプレイライブラリーとを接触させることにより、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させる工程が行われる請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
ベイトと、複数のプレイからなるプレイライブラリーとを接触させることにより、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させる工程が行われ、プレイをコードするDNAが、ランダムプライミングcDNAライブラリーである請求項32又は33記載の方法。
【請求項38】
ベイトと、複数のプレイからなるプレイライブラリーとを接触させることにより、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させる工程が行われ、プレイをコードするDNAが、dTプライミングcDNAライブラリーである請求項32又は33記載の方法。
【請求項39】
複合体を形成するプレイが、複数のプレイからなる請求項25~38のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、物質と蛋白質との間の相互作用の検出方法、物質と相互作用する蛋白質のスクリーニング方法、及び、物質とその物質と相互作用する蛋白質との複合体の形成方法に関する。
背景技術
現在、ウイルスからヒトまで多様な生物のゲノムの塩基配列が解読されようとしている。ゲノムシーケンスの研究では、第2幕のポストシーケンスの研究として、解読したゲノム情報からその意味を解析する研究、すなわち、遺伝子の機能解析の研究が期待されている(Saegusa A. Japan boosts proteomics and cell biology...Nature 401, 6751(1999), Dalton R, Abbott A. Can researchers find recipe for proteins and chips? Nature 402, 6763(1999))。遺伝子機能の解析技術としては、コンピューターによる大量のゲノムシーケンスデータの中から、蛋白質の構造解析により得た機能モチーフパターンを見つけ出すアルゴリズムなどを駆使して遺伝子機能を解析するバイオインフォマティックス(Sali A. Functional links between proteins. Nature 402, 23(1999))、DNAチップなどによりどの遺伝子がいつ働いているかという生物学的情報を得ることを目的とした遺伝子発現プロファイルを解析するトランスクリプトミクス(Schena M, et al. Quantitative monitoring of gene expression patterns with a complementary DNA microarray. Science 270, 467(1995))、そして、二次元ゲル電気泳動によるプロテオームの分離と質量分析計による同定(Blackstock W.P., Weir M.P. Proteomics: quantitative and physical mapping of cellular proteins. Trends Biotechnol 3, 121(1999))、蛋白質チップ(Dalton R, Abbott A. Can researchers find recipe for proteins and chips? Nature 402, 6763(1999))による蛋白質発現プロファイルを解析するプロテオミクスなどがある。これらの研究の中でも、ゲノムに対するプロテオーム(蛋白質の総体)の研究であるプロテオミクスが特に注目されている。
蛋白質解析と遺伝子解析との間の大きな違いの1つは、蛋白質の多くが、生体内で複数で関わり合って相互作用しながら機能を果たしていると言う点である。たとえば細胞が外界からホルモンなどの刺激を受けて、レセプターに結合すると、様々な蛋白質が構造を変え、様々な蛋白質と相互作用することで、膜内と細胞質内の一連のシグナル伝達系が動き出し、最終的には核内の転写調節系に及び、特定の遺伝子の発現が制御される。このような様々な蛋白質-蛋白質間及び蛋白質-核酸間などの相互作用のネットワークである遺伝子ネットワークを解析することが、ポストゲノム機能解析の新しい大きな研究テーマとなっている(宮本悦子、柳川弘志(2000)シリーズ・ポストシークエンスのゲノム科学3: プロテオミクス,pp.136-145; 宮本悦子、柳川弘志(2001)蛋白質・核酸・酵素、46(2), pp.138-147)。このようなポストゲノム機能解析によって、蛋白質間及び蛋白質-核酸間などの相互作用ネットワーク解析から重要な生体酵素の発見などによる医薬品の創製などが期待され、医療、食料、エネルギー、環境など多くの分野の産業で優れたネットワーク解析技術が所望されている。
蛋白質間の相互作用を解析する方法としては、免疫沈降(Xiong et al. 1993 Nature 366, 701-704)、GST融合蛋白質によるプルダウン・アッセイ(Kaelin, et al. 1991 Cell 64, 521-532)、TAP法(Guillaume Rigaut, et al., Nature biotechnology 17, 1030(1999))、酵母ツーハイブリッド法(Fields S, Song O. A novel genetic system to detect protein-protein interactions. Nature 340, 245(1989))などが知られている。一方、もともとは進化分子工学のツールとして誕生した「遺伝子(遺伝子型)と蛋白質(表現型)の対応付け」を特徴とする以下に示す方法も、ポストゲノム機能解析における蛋白質間などの相互作用を解析する方法として期待されている(Mendelsohn A.R, Brent R. Protein interaction methods-toward an endgame. Science 284, 1948(1999))。それらは、in vitroウイルス法(Miyamoto-Sato E, et al. The constraction of the virus type assignment molecule in evolutionary molecular engineering. Viva Origino 25, 35(1997); Nemoto N, et al. In vitro virus: Bonding of mRNA bearing puromycin at the 3'-terminal end to the C-terminal end of its encoded protein on the ribosome in vitro. FEBS Lett. 414, 405(1997); WO 98/16636「遺伝子型と表現型の対応付け分子及びその利用」柳川弘志ほか)、STABLE法(Doi N, Yanagawa H. STABLE: protein-DNA fusion system for screening of combinatorial protein libraries in vitro. FEBS Lett. 457, 227(1999)); 特開2001-128690)、ファージディスプレイ法(Smith G.P. Searching for peptide ligands with an epitope library. Science 228, 1315(1985))、リボソーム・ディスプレイ法(Mattheakis, L.C. et al. (1994)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 9022-9026; Mattheakis, L.C. & Dower, W.J. (1995)WO 95/11922)、mRNA-ペプチド対応付け分子(mRNAディスプレイ)法(Roberts R.W., Szostak J.W. (1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297)などである。
免疫沈降法では、基本的に目的蛋白質の抗体がないと検出できない。ライブラリーから網羅的に検出したものなど、目的蛋白質が未知であったり、抗体がない場合には利用は困難である。GST融合蛋白質によるプルダウン・アッセイでは、ベイトをGST融合蛋白質として大腸菌などで大量発現させる手法がとられており、ベイトの準備に手間がかかる。TAP法は、細胞で発現した蛋白質の複合体を網羅的に解析する方法であるが、「遺伝子(遺伝子型)と蛋白質(表現型)の対応付け」が採られていないため、スクリーニングされた蛋白質の複合体解析において、蛋白質そのものを解析する必要があり、また、細胞からの複合体の抽出操作も簡単なものではない。酵母ツーハイブリッド法では、酵母の細胞内で、あらゆる生物種からの2種類の蛋白質間の相互作用を調べることが出来るが、酵母細胞で発現するものに限られる。また、1組づつ解析していく必要があり、一度に網羅的な相互作用の解析を行うことは出来ない。そのために、大規模な総当たり解析が、S. cerevisiae(Ito et al. 2000 Proc Natl Acad Sci USA 97(3), 1143-7; Uetz et al. 2000 Nature 403(6770), 623-7), H. pylori(Rain et al. 2001 Nature 409, 211-215)、そしてC. elegans(Walhout et al. 2000, Science 287(5450), 116-22)で報告されている。一方、進化分子工学のin vitroウイルス法などの手法は「遺伝子(遺伝子型)と蛋白質(表現型)の対応付け」を実現しており、一挙に網羅的に蛋白質間相互作用解析に利用できる可能性がある(宮本悦子、柳川弘志(2000)シリーズ・ポストシークエンスのゲノム科学3: プロテオミクス,pp.136-145; 宮本悦子、柳川弘志(2001)蛋白質・核酸・酵素、46(2), pp.138-147)。しかしながら、ファージディスプレー法、リボソーム・ディスプレイ法では、立体障害による蛋白質間の相互作用の妨げが予想される。すなわち、ファージディスプレー法では、細胞に提示された蛋白質間の相互作用の困難さ、リボソーム・ディスプレイ法では、リボソーム付きの蛋白質間の相互作用の困難さが予想される。一方、in vitroウイルス法、STABLE法などでは、対応付け分子の蛋白質の自由度が大きいことが予想され、蛋白質間や核酸-蛋白質間などの相互作用を網羅的に解析できる可能性がある。
また、蛋白質間の相互作用の検出方法として、無細胞蛋白質合成法により合成した検出用標識を有する蛋白質と分離用修飾を有する蛋白質とを混合するか、無細胞蛋白質合成法により、検出用標識を有する蛋白質と分離用修飾を有する蛋白質とを同一の系内で合成し、蛋白質間の相互作用により形成された蛋白質対を、分離用修飾を利用して分離し、かつ検出用標識を利用して識別する方法が報告されている(特開2001-27633号公報)。
発明の開示
本発明の目的の一つは、in vitro(試験管内)で、蛋白質間、核酸-蛋白質間などの相互作用の解析を、弱い相互作用も含めて高感度でかつ網羅的に行うことである。
本発明の別の目的は、in vitroで、蛋白質間、核酸-蛋白質間などの相互作用の解析を一貫して行うことである。
in vitroウイルス法やSTABLE法では、蛋白質の複合体を網羅的に解析出来る可能性を持っており、特に、蛋白質の直接解析の代わりに遺伝子を解析することができる利点を持つ。in vitroウイルス法やSTABLE法では、cDNAライブラリーの遺伝子群をin vitroで翻訳する際に、遺伝子情報を結合した蛋白質ライブラリー(対応付け分子ライブラリー)を構築し、そこからある蛋白質(ベイト)と相互作用のある蛋白質(プレイ)を網羅的にスクリーニングしようとするものである。プレイの蛋白質は対応付け分子であるため、自らのmRNAあるいはDNA情報をもち、その遺伝子をRT-PCR(逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応)あるいはPCRで増幅し、遺伝子配列を解析できる(宮本悦子、柳川弘志(2000)シリーズ・ポストシークエンスのゲノム科学3: プロテオミクス,pp.136-145; 宮本悦子、柳川弘志(2001)蛋白質・核酸・酵素、46(2), pp.138-147)。このシステムにおいて、もしin vitroで、ある蛋白質(ベイト)と相互作用のある蛋白質(プレイ)の翻訳・発現及び相互作用の複合体形成が可能であれば、GST融合蛋白によるプルダウン法を利用したmRNAディスプレイ法(Philip et al. J. Biol. Chem. 2001 March 30-epub)のように、ベイトの用意を大腸菌などの細胞に依存した別途大量合成する手間がなくなり、一挙に、時間短縮及び応用範囲が広がることになる。また、細胞で発現した蛋白質の複合体を網羅的に解析する方法であるTAP法では、もしin vitroで、ある蛋白質(ベイト)と相互作用のある蛋白質(プレイ)の複合体が形成可能であれば、細胞の種類による蛋白質複合体の抽出法などに制限されることなく、市販のcDNAライブラリーなどを利用できる可能性など、一挙にその応用範囲が広がることになる。もちろん、in vitroで相互作用の複合体が形成可能であれば、GST融合蛋白によるプルダウン法などにも直接利用できることになる。
ここで、一貫してin vitroで蛋白質間あるいは核酸-蛋白質間などの相互作用を網羅的に検出するために解決しなければならない問題のひとつは、in vitroで蛋白質間あるいは核酸-蛋白質間などの相互作用を実現することである。このためには、in vitroでネイティブなフォールディング状態で、蛋白質同士あるいは核酸-蛋白質などが出会うことが必要である。大腸菌で蛋白質ベイトを大量に発現させて精製するような方法では、大腸菌では発現しないベイトもあり、また発現しても精製時にベイトが変性して相互作用する際に効率が悪くなると言う問題がある。もう一つの解決しなければならない問題は、スクリーニングに際して、弱い相互作用も含めて網羅的に相互作用を検出したいが、一方非特異的結合による余計な解析は避けたいという相反する要求を両立する困難さである。in vitroウイルス法やSTABLE法では、元々が進化分子工学でサイクルを回すことによって強い結合を濃縮するシステムであるため、数は少ないが強い相互作用の蛋白質の遺伝子解析が主な目的であったが、ここでは、サイクルはなるべく回さずに、弱い相互作用の蛋白質の解析の可能性も含めたシステムを構築する必要がある。
本発明者等は上記課題を達成すべく鋭意研究の結果、単一の無細胞翻訳系において、ベイトとして用いる蛋白質とプレイとして用いる蛋白質とを同時に翻訳した場合に、それらの複合体を検出できる系を確立するのに成功するとともに、無細胞翻訳系において、物質(ベイト)の存在下で、その物質と相互作用する蛋白質(プレイ)を、翻訳により生成させて、ベイトとプレイとを接触させると、ベイトとプレイとの間の相互作用が一層高感度で検出できることを見出し、本発明を完成した。
特開2001-27633号公報には、相互作用する蛋白質を検出するために、相互作用する蛋白質の両方を同一の系内で合成することが記載されているが、この場合に、一方の蛋白質のみを検出用標識を有する蛋白質として、他方の蛋白質のみを分離用修飾を有する蛋白質として合成する方法(このような方法がなければ、形成された複合体を検出できない)について具体的な記載はなく、また、翻訳後に混合した場合に比べて、同一の系で翻訳したときに相互作用がより高感度で検出できることについて記載も示唆もない。
従って、本発明は、蛋白質であってもよい物質であるベイトとプレイとの間の相互作用の検出、及び、ベイトとそれと相互作用する蛋白質であるプレイとの複合体の形成において、ベイト及びプレイに特定の様式で分離用修飾及び検出用標識を行い、そして、無細胞翻訳系においてベイトの存在下で、プレイを翻訳により生成させることによりベイトとプレイとを接触させることを主な特徴とするものである。
すなわち、本発明は、ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、検出用標識として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳を行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び検出用標識を利用して行われることを特徴とする前記方法(以下、「本発明検出方法」ともいう)を提供する。
本発明検出方法では、ベイトが蛋白質であり、分離用修飾として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、無細胞翻訳系において、ベイトを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳が行われることにより、ベイトが無細胞翻訳系に存在することが好ましい。
本発明検出方法では、プレイが蛋白質の場合には、プレイを融合蛋白質とする代わりに、プレイとプレイをコードするmRNA又はDNAとを会合させる、すなわち、対応付け分子を形成させることによって、検出用標識を有するプレイを得てもよい。従って、本発明は、以下の(1)又は(2)の態様の本発明検出方法を提供する。
(1)ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び翻訳されたプレイと会合したmRNAを利用して行われることを特徴とする前記方法。
この態様では、mRNAが、その3'末端に結合したスペーサー領域と、スペーサー領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを有することにより、翻訳されたプレイが該mRNAと会合することが好ましい。ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなる。スペーサー領域は、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)を主成分としたPEG領域である。mRNAは、好ましくは、その3'末端領域に長さが2~10塩基のポリA配列を有する。
(2)ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞転写翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより、無細胞転写翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させ、複合体の検出は、分離用修飾及び翻訳されたプレイと会合したDNAを利用して行われることを特徴とする前記方法。
この態様では、DNAが、蛋白質とストレプトアビジン又はアビジンとの融合蛋白質をコードし、DNAがビオチンにより標識され、DNA一分子がエマルジョンの一区画に含まれる状態で転写及び翻訳が行われることにより、翻訳されたプレイが該DNAと会合することが好ましい。
本発明検出方法では、ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で前記翻訳を行うことが好ましい。
本発明検出方法では、また、ベイトが完全長蛋白質であることが好ましい。
プレイは、単一のプレイあるいは複数のプレイからなるプレイライブラリーとして提供されることがある。
プレイライブラリーが用いられる場合、プレイをコードするDNAが用いられるときには、このDNAをランダムプライミングcDNAライブラリー、又は、dTプライミングcDNAライブラリーとして提供することができる。また、これらのライブラリーは、プレイが対応付け分子である場合は、スクリーニングの前に、対応付け分子のライブラリーとして(無細胞翻訳とRT-PCRによって、対応付け分子を形成するテンプレートを濃縮したライブラリー)、対応付け分子のランダムプレイミングcDNAライブラリー、又は、対応付け分子のdTプライミングcDNAライブラリーとして提供することが好ましい。
本発明は、また、本発明検出方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイを選択する選択工程を含む、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法(以下、「本発明スクリーニング方法」ともいう)を提供する。
本発明スクリーニング方法は、選択工程で選択されたプレイを調製する調製工程を含み、調製されたプレイを、検出工程で使用されたベイトの代わりに又はそのベイトと共に用いて、検出工程、選択工程及び調製工程を繰り返すことが好ましい。
本発明スクリーニング方法において、検出工程が、プレイとプレイをコードするmRNAとを会合させる本発明検出方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程である場合には、選択工程のプレイの選択を、相互作用が検出されたプレイをコードするmRNAを選択することにより行うことができる。この場合、選択されたmRNAはそのまま検出工程のmRNAとして用いることができる。従って、本発明スクリーニング方法の一つの態様は、プレイとプレイをコードするmRNAとを会合させる本発明検出方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイをコードするmRNAを選択することによりプレイを選択する選択工程を含み、選択工程で選択されたmRNAを検出工程のmRNAとして用いて検出工程及び選択工程を繰り返す、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法である。
本発明スクリーニング方法において、検出工程が、プレイとプレイをコードするDNAとを会合させる本発明検出方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程である場合には、選択工程のプレイの選択を、相互作用が検出されたプレイをコードするDNAを選択することにより行うことができる。この場合、選択されたDNAはそのまま検出工程のDNAとして用いることができる。従って、本発明スクリーニング方法の別の一つの態様は、プレイとプレイをコードするDNAとを会合させる本発明検出方法によりベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイをコードするDNAを選択することによりプレイを選択する選択工程を含み、選択工程で選択されたDNAを検出工程のDNAとして用いて検出工程及び選択工程を繰り返す、ベイトと相互作用するプレイのスクリーニング方法である。
上記二つの態様においても、ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で検出工程での翻訳を行っても良い。また、ベイトが完全長蛋白質であっても良い。
本発明のスクリーニング方法では、検出工程におけるプレイが、単一のプレイあるいは複数のプレイからなるプレイライブラリーとして提供されることがある。
プレイライブラリーが用いられる場合、検出工程において、プレイをコードするDNAが用いられるときには、このDNAをランダムプライミングcDNAライブラリー、又は、dTプライミングcDNAライブラリーとして提供することができる。また、これらのライブラリーは、プレイが対応付け分子である場合は、スクリーニングの前に、対応付け分子のライブラリーとして(無細胞翻訳とRT-PCRによって、対応付け分子を形成するテンプレートを濃縮したライブラリー)、対応付け分子のランダムプレイミングcDNAライブラリー、又は、対応付け分子のdTプライミングcDNAライブラリーとして提供することが好ましい。
本発明のスクリーニング方法では、選択工程において、複数のプレイが選択されてもよく、これは、プレイライブラリーを用いた場合に特に好ましい。この場合、より網羅的な検出が可能であり、その効果をさらに高めるために、ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で検出工程での翻訳を行うこと、およびベイトが完全長であることがより好ましい。
本発明は、さらに、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、検出用標識として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳を行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法(以下、「本発明形成方法」ともいう)を提供する。
本発明形成方法では、ベイトが蛋白質であり、分離用修飾として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされており、無細胞翻訳系において、ベイトを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳が行われることにより、ベイトが無細胞翻訳系に存在することが好ましい。
本発明形成方法では、プレイが蛋白質の場合には、プレイを融合蛋白質とする代わりに、プレイとプレイをコードするmRNA又はDNAとを会合させる、すなわち、対応付け分子を形成させることによって、検出用標識を有するプレイを得てもよい。従って、本発明は、以下の(1)又は(2)の態様の本発明形成方法を提供する。
(1)ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法。
この態様では、mRNAが、その3'末端に結合したスペーサー領域と、スペーサー領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを有することにより、翻訳されたプレイが該mRNAと会合することが好ましい。ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなる。スペーサー領域は、好ましくは、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域である。
(2)ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の形成方法であって、
プレイは蛋白質であり、ベイトは分離用修飾を有し、
無細胞転写翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより、無細胞転写翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させることを特徴とする前記方法。
この態様では、DNAが、蛋白質とストレプトアビジン又はアビジンとの融合蛋白質をコードし、DNAがビオチンにより標識され、DNA一分子がエマルジョンの一区画に含まれる状態で転写及び翻訳が行われることにより、翻訳されたプレイが該DNAと会合することが好ましい。
ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で検出工程での翻訳を行っても良い。また、ベイトが完全長蛋白質であっても良い。
ベイトと、複数のプレイからなるプレイライブラリーとを接触させることにより、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させる工程が行われることもある。
プレイライブラリーが用いられる場合、プレイをコードするDNAが用いられるときには、このDNAをランダムプライミングcDNAライブラリー、又は、dTプライミングcDNAライブラリーとして提供することができる。また、これらのライブラリーは、プレイが対応付け分子である場合は、スクリーニングの前に、対応付け分子のライブラリーとして(無細胞翻訳とRT-PCRによって、対応付け分子を形成するテンプレートを濃縮したライブラリー)、対応付け分子のランダムプレイミングcDNAライブラリー、又は、対応付け分子のdTプライミングcDNAライブラリーとして提供することが好ましい。
本発明形成方法では、複数のプレイを含む複合体が形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、無細胞共翻訳による複合体の形成の概略を示す。
A: ベイトとプレイが無細胞翻訳系で共に翻訳され相互作用し、無細胞翻訳系において複合体を形成する。プレイは単数(I)であっても複数(II)であっても構わないし、また、無細胞翻訳系での翻訳で得られるポリペプチドそのものであっても、対応付け分子(結合体)であっても構わない。
B: ベイトの共存下、プレイが無細胞翻訳系で翻訳され相互作用し、無細胞翻訳系において複合体を形成する。プレイは単数(I)であっても複数(II)であっても構わないし、また、無細胞翻訳系での翻訳で得られるポリペプチドそのものであっても、対応付け分子(結合体)であっても構わない。
図2は、複合ベイトを用いた場合の無細胞共翻訳による複合体の形成の概略を示す。
複合ベイトを構成する一部のベイトとプレイが無細胞翻訳系で共に翻訳され相互作用し、無細胞翻訳系において複合体を形成する。プレイは、単数(I)であっても複数(II)であっても構わないし、また、無細胞翻訳系での翻訳で得られるポリペプチドそのものであっても、対応付け分子(結合体)であっても構わない。また、複合ベイトは、図に示した無細胞翻訳系で翻訳されたポリペプチドとDNAベイトの組合せに限られず、無細胞翻訳系で翻訳された複数あるいは単独のポリペプチドと、無細胞翻訳系で共存する複数あるいは単独のベイト(たとえば、DNAベイトなど)の組み合わせが挙げられる。
図3は、無細胞共翻訳による複合体のスクリーニング方法の概略を示す。
図1及び2で示したような無細胞共翻訳による複合体形成の工程(1)、その複合体のプレイをスクリーニングする工程(2)、及び、プレイの解析の工程(3)により、無細胞共翻訳とスクリーニングをトータルにin vitroで実現することができる。プレイが対応付け分子でかつ複数であれば、RT-PCRあるいはPCRによってプレイをコードするmRNA又はDNAを再構成することにより再度(1)の工程からスクリーニングを繰り返すことができる。また、得られたプレイを解析後、ベイトとして(1)の工程からスクリーニングを新たに繰り返すことができる。
図4は、無細胞共翻訳をin vitroウイルス法へ応用した例の概略及び結果を示す。
A: 相互作用が既知の蛋白質としてFos及びJunを用いて、Fosをベイトとし、Junをプレイとし、さらに、第二のベイトとしてFos/Junと相互作用するDNAを、また、第二のプレイとしてFos/Junと相互作用しないサイクリンBを混在させた。DNAベイトの存在下、Fos、Jun、及び、サイクリンBが無細胞共翻訳され、in vitroウイルス法に従ってJunとサイクリンBは対応付け分子となり、相互作用による複合体Fos/Jun/DNAを形成する。TAP法に従って二段階のスクリーニングを行い、RT-PCRでプレイを検出した。
B: スクリーニングの一段目(step 1)の溶出液と二段目(step 2)の溶出液について原液(レーン1)、1/100希釈(レーン2)、1/10000希釈(レーン3)をテンプレートとして、ベイトの条件の異なる3つの実験(Fos/DNA(-/-): 両方なし、Fos/DNA(+/-): FosありDNAなし、Fos/DNA(+/+): FosもDNAもあり)について、プレイの共通配列をプライマーとしてRT-PCRを行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す。
C: プレイの共通配列をプライマーとして、スクリーニング後の溶出液について原液(レーン1)、1/100希釈(レーン2)、1/1000希釈(レーン3)、1/10000希釈(レーン4)をテンプレートとして、ベイト無し(I)、別翻訳(FosとJunを別の無細胞翻訳系で翻訳後に混合)(II)、共翻訳(FosとJunを一つの無細胞翻訳系で翻訳)(III)についてRT-PCRを行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す。
図5は、無細胞共翻訳をin vitroウイルス法へ応用した例の概略及び結果を示す。
A: 相互作用が既知の蛋白質としてFos及びJunを用いて、Fosをベイトとし、Junを含むライブラリーをプレイ・ライブラリーとした。第二のベイトとしてFos/Junと相互作用するDNAベイトの存在下、Fos及びライブラリーが無細胞共翻訳され、in vitroウイルス法によりライブラリーは対応付け分子のライブラリーとなり、相互作用の複合体Fos/ライブラリー/DNAを形成する。TAP法に従って二段階のスクリーニングを行い、RT-PCRでプレイを検出した。
B: スクリーニング後の溶出液について原液(レーン1)、1/100希釈(レーン2)、1/10000希釈(レーン3)をテンプレートとして、ベイトの条件の異なる3つの実験(Fos/DNA(-/-): 両方なし、Fos/DNA(+/-): FosありDNAなし、Fos/DNA(+/+): FosもDNAもあり)について、プレイの共通配列をプライマーとしてRT-PCRを行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す。
C: スクリーニング後の溶出液について原液(レーン1)、1/100希釈(レーン2)、1/10000希釈(レーン3)をテンプレートとして、ベイトの条件の異なる2つの実験(Fos/DNA(-/-): 両方なし、Fos/DNA(+/+): FosもDNAもあり)について、jun遺伝子に特異的なプライマーでRT-PCRを行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す。
図6は、無細胞共翻訳をin vitroウイルス法へ応用した例の概略及び結果を示す。
A: 相互作用が既知の蛋白質としてFos及びJunを用いて、ベイトとしてビオチンDNA(Fos/Junと相互作用するDNA配列にビオチンをPCRで導入したもの)を用いて、JunとFosをプレイとした。JunとFosは、蛋白質そのままでも対応付け分子でも構わない。FosとJunの対応付け分子を、ビオチンDNAベイト共存下で無細胞共翻訳した後、ビオチン-アビジンの親和性によりスクリーニングし、RT-PCRでJunとFosを検出した。
B: スクリーニング後のアビジンビーズについて洗浄ビーズ(レーン1)、1/100希釈(レーン2)、1/10000希釈(レーン3)をテンプレートとして、DNAベイト量を0(I),5(II),10(III),20(IV),40(V)pmolと変化させて、プレイの共通配列をプライマーとしてRT-PCRを行い、RT-PCR産物について2%アガロースゲル電気泳動を行った結果を示す。
図7は、無細胞共翻訳をSTABLE法へ応用した例の概略及び結果を示す。
A: 相互作用が既知の蛋白質としてcdc2及びサイクリンBを用いて、ストレプトアビジン融合蛋白質(プレイ)をベイト蛋白質と同一反応系で無細胞共翻訳し、対応付け分子をベイト蛋白質と結合させた。これをIgGビーズで回収し、TEVプロテアーゼでベイト蛋白質を切断することにより、ベイト蛋白質と特異的に結合するストレプトアビジン融合蛋白質をコードするDNAをPCRで確認した。
B: 抗T7及び抗STA抗体によるウエスタンプロット及びPCR産物の2%アガロースゲル電気泳動の結果を示す(それぞれ、anti-T7 tag、anti-STA及びPCR)。スクリーニング後の溶出液を用いて、ベイトなし、ベイトがcdc2、ベイトがサイクリンBである場合について、抗T7及び抗STA抗体によるウエスタンプロットを行った。また、スクリーニング後の溶出液をテンプレートとして、ベイトなし、ベイトがcdc2、ベイトがサイクリンBである場合について、cdc2及びサイクリンBの特異的プライマー、プレイの共通配列のプライマーを用いてPCRを行った。
図8は、本発明の翻訳テンプレート(A)ならびにその構成要素であるコード分子(B)及びスペーサー分子(C)の構成を示す。翻訳テンプレートは、コード分子由来のコード部とスペーサー分子由来のスペーサー部からなる。F1及びF2は蛍光色素を示す。
図9は、C末端修飾された蛋白質(C末端ラベル化蛋白質)(A)、本発明の翻訳テンプレート(B)、及び、修飾剤(C)の構成を示す。
図10は、コード分子の3'末端配列の違いによる翻訳量の比較を示す。c-junの遺伝子配列を有する、異なる12種類の3'末端配列を持つコード分子(A8=A配列)の翻訳量の比較。X配列のバリエーションと必要な条件を示した。詳細は、実施例1参照。
図11は、翻訳テンプレートがPEGスペーサー部を持たない場合及び異なるPEGスペーサー部を持つ場合の翻訳量の比較を示す。
A: c-fosの遺伝子配列を有するA配列もX配列も持たないコード分子(None(mRNA))と,A配列を持つコード分子(A(mRNA))、及びdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(+PEG4000dCdCPuro-Boc,)の翻訳量の比較。詳細は、実施例5参照。
B: c-junの遺伝子配列を有するA配列もX配列も持たないコード分子(None(mRNA)),XA配列を持つコード分子(XA(mRNA))、およびコード分子(XA(mRNA))に(dC)2T(Flu)T(XA+(dC)2T2),dCdCT(Flu)TPEG4000(XA+PEG4000),dCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Boc(XA+PEG4000dCdCPuro-Boc)をライゲーションした翻訳テンプレートの翻訳量の比較。詳細は、実施例5参照。
図12は、翻訳テンプレートの翻訳量と安定性を示す。
A: c-junの遺伝子配列を有するXA配列を持つコード分子(●;XA配列)、A配列もX配列も持たないコード分子(□;None配列)、およびコード分子(XA配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(○)の翻訳量のタイムコース。詳細は、実施例5参照。
B: c-junの遺伝子配列を有するコード分子(●;XA配列)と、およびコード分子(XA配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(○)の安定性のタイムコース。詳細は、実施例5参照。
図13は、本発明の翻訳テンプレートが異なるPEGスペーサー部を持つ場合の翻訳量の比較を示す。
A: c-junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列,A配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーションした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによる対応付け分子の形成効率。IVV;対応付け分子、Ligated mRNA;コード部にPEGスペーサー部がライゲーションされた翻訳テンプレート。レーン1~6;RNA添加量が10,25,50,100,200,400nM.詳細は、実施例6参照。
B: c-junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列,A配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro-Bocをライゲーションした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによるフリー蛋白質(Free protein)の合成率(対応付け分子の形成量+フリー蛋白質の合成量=100%)。レーン1~6;RNA添加量が10,25,50,100,200,400nM.詳細は、実施例6参照。
図14~18は、本発明に使用されるPEGスペーサー分子とその合成スキームを示す。
図19は、in vitroウイルス法によるFXAライブラリーからの共翻訳スクリーニング(内在c-junの濃縮)の概略及び結果を示す。
A: ベイトとしてc-fosを用いて、プレイ・ライブラリーであるマウス精巣のFXAライブラリー(mRNAの3'末端領域にポリA配列とその上流にXhoI配列、及び親和タグ配列として抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を含んだ配列をもつライブラリー)と共に無細胞共翻訳スクリーニングを行い、RT-PCRで増幅してライブラリーを作成し、それを再びベイトと共に無細胞共翻訳スクリーニングすることを複数回繰り返すことにより内在c-junを濃縮する系。
B: Aの系を用いた内在c-junの濃縮について、共翻訳スクリーニング後のRT-PCR産物を1%アガロースゲルで電気泳動し、c-junのプローブを用いてサザン・ブロットした結果。M: DIGラベルしてある分子量マーカー(ロシュ・ダイアグノスティック)。
図20は、in vitroウイルス法によるFAテンプレートを用いた共翻訳スクリーニング(添加c-junの濃縮)の概略及び結果を示す。
A: ベイトとしてc-fosを用いて、ネガティブコントロールのサイクリンBテンプレートとc-junテンプレートと共に無細胞共翻訳スクリーニングを行い、RT-PCRで増幅・転写してc-junのFAテンプレート(mRNAの3'末端領域にポリA配列とその上流に、親和タグ配列として抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を含んだ配列をもつテンプレート)を作成し、それを再びベイトと共に無細胞共翻訳スクリーニングすることを複数回繰り返すことによりc-junを濃縮する系。
B: Aの系を用いて、ネガティブコントロールのサイクリンBテンプレートに対してc-junテンプレートを1/10000添加した系で無細胞共翻訳スクリーニングを3回繰り返し、得られたRT-PCR産物について2%アガロースゲル電気泳動を行い、c-junが1サイクルでどれだけ濃縮されるかを確認した。レーン1~5:スクリーニングの溶出液を原液(レーン1)から順に10倍づつ希釈したものをテンプレートとしてRT-PCRを行って得られたサンプルを電気泳動した。
発明を実施するための最良の形態
本発明検出方法は、ベイトと蛋白質であるプレイとの間の相互作用の検出において、ベイト及びプレイに特定の様式で分離用修飾及び検出用標識を行い、そして、無細胞翻訳系においてベイトの存在下で、プレイを翻訳により生成させることによりベイトとプレイとを接触させることを主な特徴とするものである。本明細書においては、無細胞翻訳系においてベイトの存在下で、プレイを翻訳により生成させることによりベイトとプレイとを接触させることを「無細胞共翻訳」ともいう。
本明細書において、ベイト及びプレイの用語は、物質間の相互作用の解析の技術分野で通常に用いられる意味を有する。すなわち、既知の物質である蛋白質や核酸などをベイト(おとり)と呼び、それと相互作用する物質である蛋白質や核酸などをプレイ(獲物)と呼ぶ。但し、本発明では、プレイは蛋白質である。
ここで、ベイトとしては、あらゆる蛋白質(ペプチドを含む)、核酸、抗体、ホルモンなどのリガンド、金属など、あるいは、これらの任意のものから構成される複合体が挙げられ、天然のものでも人工のもののいずれでも構わない。ベイトとしての分子量の制限などは特にない。たとえば蛋白質であれば、機能ドメインあるいは機能ドメインを含む完全長蛋白質などが挙げられる。プレイライブラリーを用いる場合は、完全長蛋白質とすることでより網羅的検出が可能となる。
また、プレイとしては、蛋白質が用いられる。プレイとしての分子量の制限などは特にない。
本発明検出方法は、上述のように、ベイトとプレイとの間の相互作用の検出において、ベイト及びプレイに特定の様式で検出用標識及び分離用修飾を行い、そして、無細胞共翻訳を行うことを主な特徴とするものである。従って、本発明検出方法の構成は、ベイト及びプレイに特定の様式で検出用標識及び分離用修飾を行い、そして、無細胞共翻訳を行うことを除いて、ベイトとプレイとを接触させ、接触により形成された複合体を検出することを含む、ベイトとプレイとの間の相互作用の通常の検出方法と同様でよい。
ベイト及びプレイの分離用修飾及び検出用標識は、複合体の検出に適合したものが適宜選択されるが、無細胞共翻訳において、ベイトとプレイとが共に検出用標識で標識されたり、分離用修飾を受けたりしないように行われる必要がある。そのため、プレイは、検出用標識として使用できる蛋白質との融合蛋白質とされるか、又は、対応付け分子とされ、それに応じて、ベイトは分離用修飾を有するものとされる。
プレイが融合蛋白質とされる場合には、ベイトは分離用修飾を有するようにする。ベイトが蛋白質である場合には、ベイトは、分離用修飾として使用できる蛋白質との融合蛋白質として、無細胞翻訳系において、ベイトを含む融合蛋白質をコードするmRNAの翻訳が行われることにより無細胞翻訳系に存在させることが好ましい。
ベイトが蛋白質の場合の分離用修飾の例としては、蛋白質として、GST蛋白質やTAP法などに用いられているCBP(カルモジュリンビーズとの親和性により分離可能)やプロテインA(IgG-プロテインA親和性により分離可能)、親和性タグとして、各種の抗体タグなどとの融合蛋白質とすることが挙げられる。ベイト自体が分離用修飾として使用できる性質を有する場合には、ベイトをそのまま、分離用修飾を有するベイトとして使用できる。プレイの検出用修飾としては、GEP(Green fluorescent protein)などの蛍光蛋白質との融合蛋白質とすることが挙げられる。
上記の融合蛋白質をコードするmRNAの調製及びこのmRNAの無細胞翻訳系での翻訳は通常の方法に従って行うことができる。mRNAは、無細胞転写翻訳系において、DNAの転写により生成するものであってもよい。
プレイが対応付け分子とされる場合には、ベイトには任意の分離用修飾を施すことができる。ベイトが蛋白質である場合には、上述の分離用修飾の例が挙げられる他、ベイトが核酸やドラッグなどの場合の分離用修飾の例としては、ストレプトアビジンやアビジンと相互作用のあるビオチンなどを利用することが挙げられる。ベイト自体が分離用修飾として使用できる性質を有する場合には、ベイトをそのまま、分離用修飾を有するベイトとして使用できる。
対応付け分子とは、表現型と遺伝子型と対応付ける分子を意味する。対応付け分子は、通常には、遺伝子型を反映する塩基配列を有する核酸を含む遺伝子型分子と、表現形の発現に関与する蛋白質を含む表現型分子とが結合してなる分子である。この蛋白質としてプレイを用いることによりプレイを対応付け分子とすることができる。このような対応付け分子は、無細胞翻訳系において、プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うこと、又は、無細胞転写翻訳系において、プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより形成することができる。従って、この製造の際に、ベイトを存在させることにより、無細胞共翻訳を行うことができる。すなわち、下記(1)又は(2)により無細胞共翻訳を行うことができる。
(1)無細胞翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするmRNAの翻訳を、翻訳されたプレイが該mRNAと会合するように行うことにより、無細胞翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させる。
(2)無細胞転写翻訳系において、前記ベイトの存在下で、前記プレイをコードするDNAの転写及び翻訳を、翻訳されたプレイが該DNAと会合するように行うことにより、無細胞転写翻訳系にプレイを生成させて、ベイトとプレイとを接触させる。
以下、上記(1)及び(2)の態様について説明する。
(1)の態様では、mRNAが、その3'末端に結合したスペーサー領域と、スペーサー領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを有することにより、翻訳されたプレイが該mRNAと会合することが好ましい。このような対応付け分子を用いる相互作用の検出方法としては、in vitroウイルス方法が挙げられる。
mRNAは、好ましくは、転写プロモーター及び翻訳エンハンサーを含む5'非翻訳領域と、5'非翻訳領域の3'側に結合した、プレイをコードするORF領域と、ORF領域の3'側に結合した、ポリA配列を含む3'末端領域を含む核酸である。好ましくは、ポリA配列の5'側に、SNNS(SはGまたはC)配列を含む発現増幅配列(例えば制限酵素XhoIが認識する配列)が更に含まれる。5'末端にCap構造があってもなくても良い。
ポリA配列は、少なくとも2残基以上のdAあるいは/又はrAの混合あるいは単一のポリA連続鎖であり、好ましくは、3残基以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8残基以上のポリA連続鎖である。
翻訳効率に影響する要素としては、転写プロモーターと翻訳エンハンサーからなる5'UTR、及び、ポリA配列を含む3'末端領域の組み合わせがある。3'末端領域のポリA配列の効果は通常には10残基以下で発揮される。5'UTRの転写プロモーターはT7/T3あるいはSP6などが利用でき、特に制限はない。好ましくはSP6であり、特に、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用する場合はSP6を用いることが特に好ましい。翻訳エンハンサーは好ましくはオメガ配列の一部であり、オメガ配列の一部としては、TMVのオメガ配列(Gallie D.R., Walbot V.(1992)Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631-4638)の一部(029)を含んだものが好ましい。
また、翻訳効率に関し、3'末端領域においては、XhoI配列とポリA配列の組み合わせが好ましい。さらに、ORF領域の下流部分、すなわちXhoI配列の上流に親和性タグがついたものとポリA配列の組み合わせが好ましい。親和性タグ配列としては、抗原抗体反応など、タンパク質を検出できるいかなる手段を用いるための配列であればよく、制限はない。好ましくは、抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列又はHis-tag配列である。ポリA配列効果としては、Flag-tag等の親和性タグにXhoI配列がついたものとそこへさらにポリA配列がついたものの翻訳効率が上昇する。ここで、His-tagについては、XhoI配列のない構成でも十分な翻訳効率を示し、有効である。
上記の翻訳効率に関し効果のある構成は、対応付け効率にも有効である。
5'UTRをSP6+029とし、3'末端領域を、例えば、Flag+XhoI+An(n=8)又はHis+An(n=8)とすることで、各長さは、5'UTRで約49bp、3'末端領域で約38bp又は約26bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として組み込める長さである。このため、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、5'UTRと3'末端領域をもったコード領域を簡単に作成できる。コード領域において、翻訳はORF領域を超えてされてもよい。すなわち、ORF領域の末端に終止コドンがなくてもよい。
ペプチドアクセプター領域は、ペプチドのC末端に結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、ピューロマイシン、3'-N-アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3'-N-Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS-アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのPANS-Gly、バリンのPANS-Val、アラニンのPANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS-全アミノ酸が利用できる。また、化学結合として3'-アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3'-N-アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3'-Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS-アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのAANS-Gly、バリンのAANS-Val、アラニンのAANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS-全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、アミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。
ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなることが好ましい。ここで、誘導体とはタンパク質翻訳系においてペプチドのC末端に結合できる誘導体を意味する。ピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシン構造を完全に有しているものに限られず、ピューロマイシン構造の一部が欠落しているものも包含する。ピューロマイシン誘導体の具体例としては、PANS-アミノ酸、AANS-アミノ酸などが挙げられる。
ペプチドアクセプター領域は、ピューロマイシンのみの構成でもかまわないが、5'側に1残基以上のDNAあるいは/又はRNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。配列としては、dC-ピューロマイシン,rC-ピューロマイシンなど、より好ましくはdCdC-ピューロマイシン,rCrC-ピューロマイシン,rCdC-ピューロマイシン,dCrC-ピューロマイシンなどの配列で、アミノアシル-tRNAの3'末端を模倣したCCA配列(Philipps, G.R.(1969)Nature 223, 374-377)が適当である。塩基の種類としては、C>(U又はT)>G>Aの順で好ましい。
スペーサー領域は、好ましくは、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域である。スペーサー領域は、通常には、PEG領域の他に、核酸の3'末端に結合できるドナー領域を含む。
核酸の3'末端に結合できるドナー領域は、通常、1以上のヌクレオチドからなる。ヌクレオチドの数は、通常には1~15、好ましくは1~2である。ヌクレオチドはリボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよい。ドナー領域は修飾物質を有していてもよい。
ドナー領域の5'末端の配列は、プレイをコードするコード領域とのライゲーション効率を左右する。コード領域とスペーサー領域をライゲーションさせるためには、少なくとも1残基以上を含むことが必要であり、ポリA配列をもつアクセプターに対しては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)あるいは2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。塩基の種類としては、C>(U又はT)>G>Aの順で好ましい。
PEG領域はポリエチレングリコールを主成分とするものである。ここで、主成分とするとは、PEG領域に含まれるヌクレオチドの数の合計が20bp以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が400以上であることを意味する。好ましくは、ヌクレオチドの合計の数が10bp以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が1000以上であることを意味する。
PEG領域のポリエチレングリコールの平均分子量は、通常には、400~30,000、好ましくは1,000~10,000、より好ましくは2,000~8,000である。ここで、ポリエチレングリコールの分子量が約400より低いと、このスペーサー領域を含む遺伝子型分子を対応付け翻訳したときに、対応付け翻訳の後処理が必要となることがあるが(Liu, R., Barrick, E., Szostak, J.W., Roberts, R.W.(2000)Methods in Enzymology, vol. 318,268-293)、分子量1000以上、より好ましくは2000以上のPEGを用いると、対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができるため、翻訳の後処理が必要なくなる。また、ポリエチレングリコールの分子量が増えると、遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、特に分子量1000以上で良好であり、分子量400以下ではDNAスペーサーと性質がそれほどかわらず不安定となることがある。
ポリエチレングリコールを主成分とするスペーサー領域を有することによって、対応付け分子がウサギ網状赤血球のみならず小麦胚芽の無細胞翻訳系でも形成可能となり、両翻訳系での遺伝子型分子の安定性が飛躍的に向上し、翻訳後の処理を施すことが不要となる。
(2)の態様では、DNAが、蛋白質とストレプトアビジン又はアビジンとの融合蛋白質をコードし、DNAがビオチンにより標識され、DNA一分子がエマルジョンの一区画に含まれる状態で転写及び翻訳が行われることにより、翻訳されたプレイが該DNAと会合することが好ましい。このような対応付け分子を用いる相互作用の検出方法としては、STABLE法が挙げられる。
エマルジョンは、通常には、2種の界面活性剤及びミネラルオイルと、無細胞転写翻訳系の反応液を混合して形成されるW/O型のエマルジョンである。W/O型のエマルジョンを形成するには、通常には、界面活性剤のHLB(hydrophile-lipophile balance)値が3.5~6である必要がある。2種の界面活性剤を混合した場合のHLB値は、個々の界面活性剤のHLB値から簡単な計算式で求められる。例えば、Span 85(HLB=1.8及びTween 80(HLB=15.0)を、それぞれ40.2μl及び9.8μlの割合で混合することによりHLB=4.4となる。界面活性剤とミネラルオイルの割合は、通常1:18(容量比)である。また、反応液の割合はエマルジョン全体に対して1~50%(容量比)であり、通常は5%である。界面活性剤とミネラルオイルの混合物に、撹拌しながら、低温で、反応液をいくつかに分けて添加し、混合することによりエマルジョンを形成することができる。転写及び翻訳の反応は、エマルジョンの温度を上げることにより、開始させることができる。
プレイをコードするDNAの調製及びこのDNAの無細胞転写翻訳系での転写及び翻訳は通常の方法に従って行うことができる。
上述のように、ベイト及びプレイに特定の様式で検出用標識及び分離用修飾を行うことにより、無細胞共翻訳により形成された複合体を特異的に検出することができる。
ベイトとプレイの無細胞共翻訳において、無細胞共翻訳を行う無細胞翻訳系(無細胞転写翻訳系を含む)については、大腸菌E. coli、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の系などいずれでも構わない。in vitroウイルス法では、対応付け分子の形成は、大腸菌E. coliではかなり不安定であるが、ウサギ網状赤血球の系(Nemoto N, Miyamoto-Sato E, Yanagawa H.(1997)FEBS Lett. 414, 405; Roberts R.W, Szostak J.W.(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297)では安定であることが確認されており、さらに小麦胚芽の系(特願2000-380562)ではより安定であることが確認されている。STABLE法では、大腸菌E. coli、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の系などいずれでも構わない。
無細胞共翻訳における翻訳又は転写及び翻訳の条件は、用いる無細胞翻訳系に応じて適宜選択される。
無細胞翻訳系に添加するベイトとプレイのテンプレートは、無細胞翻訳系が転写も生じる無細胞転写翻訳系であれば、RNAあるいはDNAのどちらでも構わない。
以下、ベイトとして用いるのに好ましい翻訳テンプレートの例について説明する。
本態様の共翻訳スクリーニングにおけるベイトとして、図8に示すように、蛋白質に翻訳される情報を持つコード部とPEGスペーサー部からなることを特徴とする翻訳テンプレートを利用する。コード部は、蛋白質に翻訳される情報であり、どのような配列でも良いが、好ましくは、コード部の3'末端領域にアクセプター(A配列)を持つ、あるいは、コード部の3'末端領域にアクセプター(A配列)を持ち、かつA配列の5'上流に翻訳増幅配列(X配列)を持つことを特徴とする。コード部のA配列として、短いポリA配列を含む。短いポリA配列とは、通常には2~10塩基のAからなる配列である。X配列として、C(あるいはG)NNC(あるいはG)配列を有する配列、たとえば、XhoI配列を有することを特徴とする。PEGスペーサー部は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、コード部と連結するためのドナー領域、および3'末端にCCA領域を持つ。PEGスペーサー部は、ドナー領域のみ、CCA領域のみでもかまわないが、好ましくは、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域を含む構成をとる。CCA領域は、該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、ペプチド転移反応によって結合する機能を有しないことを特徴とする。PEG領域のポリエチレングリコールの分子量は、500以上であることを特徴とする。また、ドナー領域あるいは/かつCCA領域において、少なくとも1つの機能付与ユニット(F)を含むことを特徴とする。機能付与ユニット(F1あるいは/かつF2)が、該翻訳テンプレートあるいは/かつ該翻訳テンプレートから翻訳された蛋白質を固定化あるいは蛍光ラベル化することを特徴とする。固定化物質としてビオチンなどが考えられ、蛍光性物質として、Fluorescein, Cy5,あるいはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。これらのコード部や翻訳テンプレート、およびそのライブラリー、さらに、リボソーム上で翻訳された蛋白質やそのライブラリーに関するものである。
ベイトの翻訳テンプレート(図8のA)は、コード分子(図8のB)に由来するコード部とPEGスペーサー分子(図8のC)に由来するPEGスペーサー部からなる。本態様では、基本的にはコード部の配列によらず、コード部にPEGスペーサー部を連結(ライゲーション)することでその安定性が向上して翻訳効率を向上出来る。しかしながら、さらにコード部の構成やPEGスペーサー部の種類によって、その翻訳効率をより向上させることが可能である。以下にその詳細を記載する。
本態様のコード部(図8のB)は、5'末端領域、ORF領域、3'末端領域からなり、5'末端にCap構造があってもなくても良い。また、コード部の配列には特に制限はなく、あらゆるベクターやプラスミドに組み込まれたものとしての利用が考えられる。また、コード部の3'末端領域は、A配列としてポリAx8配列、あるいはX配列としてXhoI配列や4塩基以上でSNNS(SはGまたはC)の配列を持つもの、およびA配列とX配列の組み合わせとしてのXA配列がある。A配列、X配列、あるいはXA配列の上流に親和性タグ配列としてFlag-tag配列、からなる構成が考えられる。ここで、親和性タグ配列としてはHA-tagやIgGのプロテインA(zドメイン)などの抗原抗体反応を利用したものやHis-tagなど、蛋白質を検出あるいは精製できるいかなる手段を用いるための配列でもかまわない。ここで、翻訳効率に影響する範囲としては、XA配列の組み合わせが重要であり、X配列のなかで、最初の4塩基が重要であり、SNNSの配列を持つものが好ましい。また、5'末端領域は、転写プロモーターと翻訳エンハンサーからなり、転写プロモーターはT7/T3あるいはSP6などが利用でき、特に制限はないが、小麦の無細胞翻訳系では、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用することが好ましく、プロモーターとしては、SP6を用いることが好ましい。翻訳エンハンサーのオメガ配列の一部(029)は、TMVのオメガ配列(Gallie D.R., Walbot V.(1992)Nucleic Acids Res., vol. 20, 4631-4638)の一部を含んだものである。コード部のORF領域については、DNAあるいは/またはRNAからなるいかなる配列でもよい。遺伝子配列、エキソン配列、イントロン配列、ランダム配列、あるいは、いかなる自然界の配列、人為的配列が可能であり、配列の制限はない。
本態様のPEGスペーサー分子(図8のC)は、CCA領域、PEG領域、ドナー領域からなる。最低限必要な構成は、ドナー領域である。翻訳効率に影響する範囲としては、ドナー領域のみならずPEG領域を持つものが好ましく、さらにアミノ酸との結合能力のないピューロマイシンを持つことが好ましい。PEG領域のポリエチレングリコールの分子量の範囲は、400~30,000で、好ましくは1,000~10,000、より好ましくは2,000~6,000である。また、CCA領域にはピューロマイシンを含む構成と含まない構成が可能であり、ピューロマイシンについては、ピューロマイシン(Puromycin)、3'-N-アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3'-N-Aminoacylpuromycin aminonucleoside, PANS-アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのPANS-Gly、バリンのPANS-Val、アラニンのPANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS-全アミノ酸が利用できる。また、化学結合として3'-アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3'-N-アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3'-Aminoacyladenosine aminonucleoside, AANS-アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのAANS-Gly、バリンのAANS-Val、アラニンのAANS-Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS-全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、アミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。本翻訳テンプレートでは、以上のピューロマイシン誘導体のアミノ基がアミノ酸と結合する能力を欠いたあらゆる物質、およびピューロマイシンを欠いたCCA領域も考えられるが、リボソーム上で蛋白質と結合不能なピューロマイシンを含むことで、より翻訳効率を高められる。その理由は定かではないが、蛋白質と結合不能なピューロマイシンがリボソームを刺激することでターンオーバーが促進される可能性がある。CCA領域(CCA)の5'側に1残基以上のDNAあるいは/またはRNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。塩基の種類としては、C>(U又はT)>G>Aの順で好ましい。配列としては、dC-Puromycin,rC-Puromycinなど、より好ましくはdCdC-Puromycin,rCrC-Puromycin,rCdC-Puromycin, dCrC-Puromycinなどの配列で、アミノアシル-tRNAの3'末端を模倣したCCA配列(Philipps G.R.(1969)Nature 223, 374-377)が適当である。本発明の一態様では、これらのピューロマイシンが何らかの方法でアミノ酸と結合不可能となっている。
本態様のPEGスペーサー部は修飾物質(F1あるいは/かつF2)を有する構成が可能である。このことによって、翻訳テンプレートを回収、精製による再利用、あるいは固定化などのためのタグとして利用することが出来る。少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に修飾物質として、蛍光物質、ビオチン、あるいはHis-tagなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。また、コード部の5'末端領域をSP6+029とし、3'末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、各長さは、5'末端領域で約60bp、3'末端領域で約40bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として設計可能な長さである。これによって新たな効果が生み出された。すなわち、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、本態様の5'末端領域と3'末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、このコード部に、3'UTRの代わりとしてPEGスペーサー部をライゲーションすることで、翻訳効率の高い翻訳テンプレートを得られる。
本態様のPEGスペーサー分子とコード分子のライゲーションは、その方法については、一般的なDNAリガーゼを用いるものや光反応による連結など何でもよく、特に限定されるものではない。RNAリガーゼを用いるライゲーションでは、コード部でライゲーション効率に影響を与える範囲としては3'末端領域のA配列が重要であり、少なくとも2残基以上のdAあるいは/またはrAの混合あるいは単一のポリA連続鎖であり、好ましくは、3残基以上、より好ましくは6から8残基以上のポリA連続鎖である。PEGスペーサー部のドナー領域の5'末端のDNAあるいは/またはRNA配列は、ライゲーション効率を左右する。コード部とPEGスペーサー部を、RNAリガーゼでライゲーションするためには、少なくとも1残基以上を含むことが必要であり、ポリA配列をもつアクセプターに対しては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)あるいは2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。塩基の種類としては、C>(U又はT)>G>Aの順で好ましい。さらに、ライゲーション反応時に、PEG領域と同じ分子量のポリエチレングリコールを添加することが好ましい。
次に、プレイとして用いるのに好ましい翻訳テンプレートの例について説明する。
本態様の共翻訳スクリーニングにおけるプレイとして、図9に示すように、翻訳テンプレートによってC末端修飾された蛋白質(=対応付け分子)を利用する。翻訳テンプレートは、蛋白質に翻訳される情報を持つコード部とPEGスペーサー部からなる。コード部の3'末端にA配列を有し、A配列は、短いポリA配列を含む。PEGスペーサー部は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域において、ポリエチレングリコールの分子量が400以上であることを特徴とする、また、ドナー領域あるいは/かつCCA領域において、少なくとも1つの修飾物質(F1あるいは/かつF2)を含むことを特徴とする。また、CCA領域は、該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、ペプチド転移反応によって結合する機能を有することを特徴とし、代表的にはCCA領域にピューロマイシンを有する。また、修飾物質(F1あるいは/かつF2)が、該翻訳テンプレートあるいは/かつ該翻訳テンプレートから翻訳された蛋白質を固定化あるいは蛍光ラベル化することを特徴とする。固定化物質としてビオチンなどが考えられ、蛍光性物質として、Fluorescein, Cy5,あるいはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。これら、コード部および翻訳テンプレート、およびそのライブラリーが、リボソーム上で翻訳されることにより合成される蛋白質(=対応付け分子)および蛋白質(=対応付け分子)のライブラリーに関するものである。
プレイは、翻訳テンプレートを用いた翻訳によって合成された、翻訳テンプレートでC末端修飾された蛋白質(図9のA;対応付け分子)であり、翻訳テンプレート(図9のB)と、PEGによってC末端修飾された蛋白質(図9のC)の構成に特徴を持つ。以下詳細に記述する。
翻訳テンプレート(図9のB)のPEGスペーサー部は、ピューロマイシンがアミノ酸と連結できることを特徴とする以外は上記のベイトとして用いるのに好ましい翻訳テンプレートと同様である。また、コード部も上記のベイトとして用いるのに好ましい翻訳テンプレートと同様であるが、特に、対応付けに適した構成としては、3'末端領域をA配列にすることが重要であり、トータル蛋白の対応付けの効率が著しく向上してフリー蛋白質の量が激減する。ここでも、コード部の5'末端領域をSP6+029とし、3'末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+An(n=8)とすることで、各長さは、5'末端領域で約60bp、3'末端領域で約40bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として設計できる長さである。これによって、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、本態様の5'末端領域と3'末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、PEGスペーサー部をライゲーションすることで、対応付け効率の高い翻訳テンプレートが得られる。
本態様のPEGによってC末端修飾された蛋白質(図9のC)は、蛋白質の相互作用検出などにおいて、コード部を利用しない場合、たとえば、FCCS測定、蛍光リーダー、プロテインチップなどに応用する場合は、RNase Aなどで意図的に切断してもよい。切断することによって、コード部の妨害による蛋白質間相互作用の検出の困難性が解消出来る。また、単独の対応付け分子をプレートやビーズやスライドガラスに固定することも可能である。
無細胞共翻訳を、図1を参照して説明する。図1に示すように、ベイトの存在下でプレイがin vitroで翻訳される。図1のA及びBに示されるように、ベイトが蛋白質であって、無細胞翻訳系でプレイと同時に翻訳される場合と、ベイトが、核酸やホルモンなどであって、無細胞翻訳系に添加される場合がある。図1に示すように、プレイは融合蛋白質又は対応付け分子とされる。
複合体は、ベイトと一つのプレイが結合して形成されること(I)の他に、ベイトに結合したプレイにさらに別のプレイが結合することにより形成されること(II)もある。
本発明検出方法によれば、in vitroで複合体の形成を行うことができるので、一貫してin vitroで蛋白質間あるいは核酸-蛋白質間などの相互作用を検出できる。
ベイトが蛋白質である場合は、ベイトとしては、目的蛋白質との相互作用のための機能ドメインのみの蛋白質、機能ドメインを含む蛋白質、あるいは完全長蛋白質などが挙げられる。ここで、完全長蛋白質を用いることは、複数の機能ドメインを有することが一般に予測されるため、さらに網羅的にプレイを検出可能となることから、好ましい。完全長蛋白質は、単独で完全長の蛋白質でもよいし、完全長の蛋白質を再構成する複数のベイトの集まりでもよい。
ベイトは、図2に示したように、複合体であってもよく、これを「複合ベイト」と呼ぶ。複合体にすることによって、より非特異的な吸着を減らすことができ、かつ完全長蛋白質と同様の効果として、より網羅的にプレイを検出することが可能となる。
以上のように、無細胞共翻訳で考えられる複合体としては、単独のベイトと単独のプレイの複合体、複合ベイトとプレイの複合体、ベイトと複数のプレイの複合体、及び、複合ベイトと複数のプレイの複合体が可能である。従って、本発明検出法により検出可能な相互作用は、ベイトとプレイとの間の直接の相互作用だけでなく、複合体を形成するための間接的な相互作用をも包含するものである。
本発明における無細胞共翻訳で最も重要なことは、蛋白質がネイティブな状態でフォールディングしており、翻訳されたての変性していない状態であり、相互作用するべきベイトとプレイあるいはベイトとベイトやプレイとプレイが無細胞翻訳系に共存しており、速やかに相互作用できると言うことと考えられる。このことは、別々に翻訳して翻訳直後に混合して共存させるよりも、共に翻訳したものの方が優れた結果が得られたこと(図5のC参照)により支持される。すなわち、in vitroで翻訳された蛋白質がネイティブなフォールディング状態で、蛋白質あるいは核酸などと出会うことができるため、速やかに相互作用による複合体の形成が可能となったためと思われる。
従来の相互作用の検出法では、ベイトを大腸菌で大量に発現精製する必要があった。例えば、TAP法などでベイトとプレイの相互作用を細胞で発現させる場合は、最低一ヶ月の準備が必要であった。また、GST融合蛋白によるプルダウン法を採用しているmRNAディスプレイ法では、ベイトを大腸菌などで大量に発現させて精製するため、最低2~3週間かかり、大腸菌で発現しないものはベイトに出来ないなどの問題があり、さらに、プレイと相互作用させるにはプレイの50~100倍の量のベイトを添加する必要があった。無細胞共翻訳では、無細胞翻訳系において、ほぼ同量のmRNAあるいはDNAテンプレートを添加すればよいだけとなり、ベイトを細胞で発現させる必要は全くなくなり作業時間の大幅な短縮が行える。さらに、複合ベイトや完全長蛋白質によって、ベイトとプレイの相互作用をより強化し特異的なものとし、非特異的な結合の検出を回避することができる。また、複合ベイトによって、その第二のベイトと相互作用するより多くのプレイを網羅的に解析できる。
これまで、一貫してin vitroで相互作用による複合体形成とスクリーニングを実現するシステムは存在しなかったが、以上の本発明検出法によって、ベイトも含めて完全にin vitroで翻訳とスクリーニングを行って、蛋白質間あるいは蛋白質-核酸間の相互作用を非特異的な検出を回避しかつ網羅的に検出可能なシステムを構築できる。従って、本発明は、本発明検出方法を利用したスクリーニング方法も提供する。
本発明スクリーニング法は、ベイトとプレイが無細胞共翻訳を通して相互作用して複合体を形成し、複合体のスクリーニングによってベイトと相互作用するプレイを解析することを特長とする。従って、本発明スクリーニング方法は、本発明検出方法により、ベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程を含む他は、ベイトとプレイとの間の相互作用を検出する検出工程、及び、相互作用が検出されたプレイを選択する選択工程を含む、ベイトと相互作用するプレイの通常のスクリーニング方法と同様でよい。
本発明スクリーニング方法は、選択工程で選択されたプレイを調製する調製工程をさらに含み、調製されたプレイを、検出工程で使用されたベイトの代わりに又はそのベイトと共に用いて、検出工程、選択工程及び調製工程を繰り返すことが好ましい。この態様は、例えば、図3に示すように、1)プレイ及びベイトが相互作用を形成する無細胞翻訳系における無細胞共翻訳の工程、2)ベイトと相互作用しているプレイを検出するスクリーニングの工程、3)プレイを分析及び解析する工程、及び4) 3)で分析及び解析されたプレイを新たな次のベイトとし、1)から繰り返す工程から構成される。1)及び2)の工程が検出工程及び選択工程に相当し、3)の工程が調製工程に相当する。すなわち、検出工程のうちの、ベイトとプレイを接触させる工程が無細胞共翻訳の工程に相当し、検出工程のうちの複合体の検出及び選択工程がスクリーニングの工程に相当する。
本発明スクリーニング法では、選択工程で選択されたプレイを再度検出工程に付してもよい。
本発明スクリーニング法では、ベイトと複数のプレイの集団であるプレイ・ライブラリーとの無細胞共翻訳を行い、スクリーニングの工程において、2つ以上のプレイが検出されてもよい。
図2に示すように、複合ベイトとプレイが共存し、相互作用によって複合ベイトとプレイの複合体を形成する場合がある。この無細胞共翻訳で、プレイ・ライブラリーの複数のプレイがベイトと共存し、相互作用によってベイトと複数のプレイの複合体を形成することによって、スクリーニングにおいて、一挙に網羅的な相互作用する複数のプレイを検出できる。また、ベイトが完全長蛋白質であることによって、完全長蛋白質は一般に相互作用の機能ドメインを複数含むので、より多くのプレイを網羅的に検出可能となる。
さらに、図2に示すように、複合ベイトと相互作用する複数のプレイの複合体を形成することによって、複合ベイトと相互作用する複数のプレイを検出でき、また、第二のベイトがベイトとプレイの相互作用の補強剤となり、より特異的な相互作用が実現されることによって、網羅的検出における非特異的検出の回避が可能となる。in vitroウイルス法やSTABLE法など進化分子工学的手法では、プレイは対応付け分子(fusion)となる。プレイ・ライブラリーや複数のプレイを用いた場合の複合体の形成では、プレイは直接ベイトと相互作用する場合としない場合がある。
複合体のスクリーニングにより得られた複合体が対応付け分子である場合には、図3に示すように、複合体を形成するプレイをRT-PCRあるいはPCRにより検出し、さらに、PCR産物をプレイとして再スクリーニングする(プレイの再構築)、あるいは、PCR産物から解析したプレイを新たな次のベイトとしてスクリーニングしてもよい。ここで、PCR産物から再スクリーニングする、あるいは、PCR産物から解析したプレイを新たな次のベイトとしてスクリーニングする方法は、in vitroウイルス法やSTABLE法など進化分子工学的手法においてのみ可能であり、プルダウン法、TAP法など蛋白質を直接解析する方法ではできない。
対応付け分子を用いた場合には、スクリーニングの後、RT-PCRあるいはPCRによって蛋白質プレイの遺伝子配列を知ることが出来る。図1及び2に示すように、ここでの蛋白質プレイとは、ベイトと相互作用しているプレイあるいはそのプレイと相互作用しているプレイなどであり、ベイトと相互作用しているすべての複数のプレイが網羅的に解析できる。さらにプレイの再スクリーニングが必要な場合は、RT-PCRあるいはPCRの産物であるDNAテンプレートを転写し、同じサイクルを繰り返す。また、RT-PCRあるいはPCRとそれに続くシークエンスによってプレイが定まった場合は、その蛋白質プレイはベイトとして使えるようになる。はじめのベイトに対して相互作用するプレイが複数個見つかれば、複合ベイトを形成することが出来るようになり、さらにより多くのプレイを検出することが出来るようになる。
無細胞共翻訳を用いると、プルダウン法やTAP法においても一貫してin vitroで蛋白質間相互作用を検出できることになるが、TAP法では対応付け分子を形成していないので、プレイの解析において直接的に蛋白質を解析しなければならない。そこで、プルダウン法やTAP法をスクリーニングの方法としてin vitroウイルス法やSTABLE法に応用すれば、対応付け分子を形成しているので、RT-PCRあるいはPCRによって、相互作用するプレイの解析においてその遺伝子配列を簡単に検出することが出来る。さらに、無細胞共翻訳を用いると、in vitroウイルス法やSTABLE法において、一貫してin vitroで蛋白質間相互作用を検出できることになる。また、プレイの数が莫大な場合は、サイクルを回すことで再スクリーニングによりプレイを絞り込むことが可能である。また、解析されたプレイは、次の解析では、ベイトとして使うことができ、ベイトの数が増えれば、ベイトの複合化が進み、さらなるプレイが検出されることにつながる。このように、プレイをベイトとして次のサイクルで使用することは、対応付け分子を用いるin vitroウイルス法やSTABLE法などでのみ簡単に実現できる。しかしながら、mRNAディスプレイなどの方法では、新しいベイトのGST融合蛋白を大腸菌で大量合成と精製が必要であり、ベイトの用意に時間がかかり困難である。無細胞共翻訳によれば、その必要もなく簡単にサイクルを回すことが出来る。
無細胞共翻訳後の複合体のスクリーニングにおいて、無細胞共翻訳によって出来た複合体を壊すことなくプレイを網羅的にスクリーニングできることが好ましい。このために、親和性タグなどによってベイトに固定化の仕組みを持たせ、ベイトと相互作用するプレイを検出してもよい。その固定化の仕組みは、いかなるものでも構わない。たとえば、既存のTAP法などのように、IgG-プロテインA親和性やカルモジュリンビーズを用いた2段階のスクリーニングを行う方法、あるいはプルダウン法のように、ストレプトアビジンあるいはアビジン-ビオチン親和性、GST-tag、Flag-tag,T7-tag,His-tagなどを利用した一段階あるいは二段階のスクリーニングを行う方法が挙げられる。
プレイ・ライブラリーとしては、cDNAライブラリー(ランダムプライミング・ライブラリー、dTプライミング・ライブラリー)、ランダム・ライブラリー、ペプチド・ライブラリー、ホルモン・ライブラリー、抗体・ライブラリー、リガンド・ライブラリー、医薬化合物ライブラリーなどが挙げられ、いかなるライブラリーでも構わない。たとえば、プレイ・ライブラリーとしてランダムプライミング・cDNAライブラリーを用いた場合、このライブラリーには完全長プレイは望めないが、機能ドメインを含むプレイは期待できる。このようなライブラリーは、特に、複合ベイトや完全長蛋白質との組み合わせによるスクリーニングに用いると、プレイの網羅的検出に有効となる。
ランダムプライミングライブラリーの例としては、マルチクローニングサイト(MCS)の5'側に、転写プロモーターとしてSP6のRNAポリメラーゼのプロモーター(SP6)と、翻訳エンハンサーとしてタバコモザイクウイルスのTMVオメガ配列の一部(029)とを含んだ5'非翻訳(UTR)領域を持ち、かつMCSの3'側に親和タグ配列として、抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を、MCSに組み込まれた挿入配列から発現した蛋白質のC末端にFlag-tagが付加されるように含む3'末端を持つベクターのMCSに、ランダムプライミングで得られたcDNAが組み込まれたものが挙げられる。
上記の本発明検出方法は、ベイトとプレイとを接触させ複合体を形成させる工程を含んでいる。従って、この工程に準じて、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとの複合体を形成させる方法が提供される。
本発明形成方法は、ベイトとベイトと相互作用する蛋白質であるプレイとの複合体の形成において、ベイト及びプレイに特定の様式で検出用標識及び分離用修飾を行い、そして、無細胞共翻訳を行うことを主な特徴とするものである。従って、本発明形成方法の構成は、ベイト及びプレイに特定の様式で検出用標識及び分離用修飾を行い、そして、無細胞共翻訳を行うことを除いて、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させることを含む、ベイトとプレイとの複合体の通常の形成方法と同様でよい。ベイト及びプレイの特定の様式での検出用標識及び分離用修飾ならびに無細胞共翻訳については、本発明検出方法に関し説明した通りでよい。
本発明形成方法では、相互作用が既知のベイトとプレイとの間の複合体だけでなく、ベイトと、複数のプレイからなるプレイライブラリーとを接触させることにより、ベイトとそのベイトと相互作用するプレイとを接触させる工程を行うことによって、相互作用が未知の要素を含む複合体を形成することもできる。
実施例
以下、具体的に本発明の実施例を記述するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。
実施例1 in vitroウイルス法への応用1
本発明の無細胞共翻訳を、対応付け分子を用いる相互作用の検出方法であるin vitroウイルス法(Nemoto N, Miyamoto-Sato E, Yanagawa H.(1997)FEBS Lett. 414, 405; Roberts R.W, Szostak J.W.(1997)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94, 12297)に応用すると次のようになる。▲1▼プレイ・ライブラリーとしてcDNAライブラリーの形成。▲2▼cDNAライブラリーの対応付け分子の形成。▲3▼プレイとベイトの無細胞共翻訳による複合体の形成。▲4▼複合体のスクリーニング。▲5▼ベイトと相互作用のあるプレイのmRNAのRT-PCRによる増幅及びコードする蛋白質の配列の決定。
概略を図4を参照して説明する。図4のAに示すように、相互作用が既知の蛋白質としてFos及びJunを用いて、Fosをベイトとし、Junをプレイとし、さらに、第二のベイトとしてFos/Junと相互作用するDNAを、また、第二のプレイとしてFos/Junと相互作用しないサイクリンBを混在させた。全てが混在した系(Fos、Jun、サイクリンB、DNA; 図4のB, Fos/DNA(+/+))、あるいはDNAのない系(Fos、Jun、サイクリンB; 図4のB, Fos/DNA(+/-))、あるいはプレイのみの系(Jun、サイクリンB; 図4のB, Fos/DNA(-/-))である無細胞翻訳系で共翻訳を行い、Fos/Jun相互作用による複合体を形成せしめた。この実施例では、プレイは全て対応付け分子である。これをIgGビーズで回収、TEVプロテアーゼでベイトを切断し、さらにカルモジュリンビーズで回収し、EGTAで溶出する二段階スクリーニングによりベイトと特異的に結合するプレイであるJunをRT-PCRで検出した(図4のB)。また、共翻訳(ベイトとプレイを共存させて翻訳)した系と別翻訳(ベイトとプレイを別々に翻訳後に混合)した系について比較した(図4のC)。以下、方法と結果を具体的に説明する。
方法:
ベイトとしてのFosについては、pCMV-FosCBPzzベクター(配列番号1)をテンプレートとし、PCR(プライマー5'SP6(029)T7-FosCBPzz(配列番号2)と3'FosCBPzz(配列番号3)、PCRプログラムCYCB1(表1参照))によってDNAテンプレートを準備した。pCMV-FosCBPzzベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)に、マウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc-FOS(118-211)を組み込み、さらにTAP法に従ってカルモジュリン結合ペプチド(CBP)及びプロテインAのzz領域を組み込んで作成した。プレイとしてのJunについては、pUC-Junベクター(配列番号4)から二回のPCR(一回目は、pUC-Junベクターをテンプレートとして、プライマー5'T7Jun(配列番号5)と3'JunFlag-A(配列番号6)を用い、二回目は、一回目のPCRプロダクトをテンプレートとして、プライマー5'SP6(0-29)T7(配列番号7)と3'FlagA(配列番号8)を用いた。PCRプログラムV-2あるいはV-TP(表1参照))によってDNAテンプレートを準備した。pUC-Junベクターは、市販のベクターpUC(Takara)に、マウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc-Jun(179-335)を組み込んで作成した。さらに、第二のプレイとしてのサイクリンBについては、pCMVzzCBPcB1ベクター(配列番号9)をテンプレートとし、PCR(プライマー5'SP6(029)cB1(配列番号10)と3'(646)FlagA(配列番号11)、PCRプログラムCYCB1(表1参照))によってDNAテンプレートを準備した。pCMVzzCBPcB1ベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)に、完全長サイクリンB遺伝子(東大、岡山博士より恵与)を組み込み、さらにTAP法に従ってカルモジュリン結合ペプチド(CBP)及びプロテインAのzz領域を組み込んで作成した。
それらのDNAテンプレートについてRiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)を用いて転写(37℃,2h)を行い、各mRNAテンプレートを準備した。Jun及びサイクリンBのmRNAの3'末端と、3'末端にピューロマイシンをもつスペーサー(p(dC)2pT(フルオレセイン)-(CH2CH2O)n-p(dC)2ピューロマイシン(n=36~57))の5'末端とを連結し、JunとサイクリンBのin vitroウイルスのRNAテンプレートをそれぞれ作成した。さらに、DNAベイトは、Fos/Junの結合配列を含むDNA-Fos/Junをテンプレートとし、PCR(プライマー5'DNA(配列番号13)と3'DNA(配列番号15)、PCRプログラムV-2(表1参照))によって準備した。
FosのmRNAテンプレート(10pmol)、JunとサイクリンBのin vitroウイルスのRNAテンプレート(それぞれ2pmol及び5pmol)、そしてDNAベイト(1.5μg)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において共翻訳(26℃,60min)した。50μlの翻訳反応液に対し、IgG結合バッファー50μlを添加し計100μl(無細胞共翻訳サンプル)とした。その後、TAP法に従って以下のようにスクリーニングした。IgGアガロース(Sigma)をIgG結合バッファーで2回洗浄し、これに無細胞共翻訳サンプル(100μl)を加え、4℃で2時間回転攪拌した。結合バッファーで3回、TEV切断バッファーで1回洗浄し、IgGアガロースに結合したベイト/プレイ複合体をTEVプロテアーゼ(GIBCO-BRL)で切断した(16℃、2時間)。切断後遠心し、上清100μlを回収し、うち10μlをRT-PCR用に採取した。さらに、残りの上清90μlに、300μlカルモジュリン結合バッファーと0.3μl 1M CaCl2、さらに、500μlカルモジュリン結合バッファーで2回洗浄した50μlカルモジュリンビーズを加えて4℃で1時間回転攪拌した。遠心後、1000μlカルモジュリン結合バッファーで3回洗浄した。50μlカルモジュリン溶出バッファーを加えて、氷上で1~2分放置し、遠心後、上清(溶出液)50μlを回収した。うち20μlをRT-PCR用に採取した。また、ベイトの有無の条件を変えて同様の共翻訳及びスクリーニングを行った。
採取した一段目(step 1)の溶出液と二段目(step 2)の溶出液及びその希釈液をテンプレートとして、プレイの共通配列に基づくプライマーを用いてRT-PCR(プライマー5'029-F3と3'Flag-R3、プログラムRT-30(表1参照))を行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った。結果を図4のBに示す。図中、レーン1は原液、レーン2は1/100希釈、レーン3は1/10000希釈である。また、Fos/DNAの欄は、-/-: 両方なし、+/-: FosありDNAなし、+/+: FosもDNAもあり、を示す。
また、以下の三つの翻訳反応液を調製した。
(I)ベイト無し
JunとサイクリンBのin vitroウイルスのRNAテンプレート(それぞれ2pmol及び5pmol)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において共翻訳(26℃,60min)した。
(II)別翻訳(FosとJunを別の無細胞翻訳系で翻訳後に混合)
ベイトFosのmRNAテンプレート(10pmol)及びDNAベイト(1.5μg)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において翻訳(26℃,60min)した。同様に、JunとサイクリンBのRNAテンプレート(それぞれ2pmol及び5pmol)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において翻訳(26℃,60min)した。これら二つの翻訳系を混合した(別翻訳)。
(III)共翻訳(FosとJunを一つの無細胞翻訳系で翻訳)
FosのmRNAテンプレート(10pmol)、JunとサイクリンBのin vitroウイルスのRNAテンプレート(それぞれ2pmol及び5pmol)、そしてDNAベイト(1.5μg)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において共翻訳(26℃,60min)した(共翻訳)。
上記の三つの翻訳反応液を用いて、上記と同様にそれぞれスクリーニングし、ベイト無し、別翻訳及び共翻訳の各場合のスクリーニング後の溶出液及びその希釈液をテンプレートとして、プレイの共通配列に基づくプライマーを用いてRT-PCR(プライマー5'029-F3と3'Flag-R3、プログラムRT-30(表1参照))を行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った。結果を図4のCに示す。図中、レーン1は原液、レーン2は1/100希釈、レーン3は1/1000希釈、レーン4は1/1000希釈である。また、I、II及びIIIは、それぞれ、ベイト無し、別翻訳及び共翻訳を示す。
結果:
図4のBに示すRT-PCRの結果から、Fosと相互作用しないサイクリンBに比べてJunはスクリーニングの一段目で10~100倍、二段目で1000~10000倍濃縮されていることが分かる。また、スクリーニングにおいて、DNAベイトが存在すると、よりJunが選択的に回収されることがわかった(図4のB,Fos/DNA(+/-),(+/+))。このことから、無細胞共翻訳によってFos/JunあるいはFos/Jun/DNAの複合体が形成され、FosをベイトとしたスクリーニングによりプレイであるJunが検出できることを確認できた。また、無細胞共翻訳の効果について調べた実験では、図4のCに示すように、ベイトとプレイを共翻訳(ベイトとプレイを共存させて翻訳)した場合、別翻訳(ベイトとプレイを別々に翻訳した後混合)した場合に比較して、Junの選択的検出が顕著であることが分かった(図4のC,I-ベイトなし,II-別翻訳,III-共翻訳)。
mRNAディスプレイ法(Philip et al., J. Biol. Chem. 2001 March 30-epub)では、プルダウン法を採用しているため、大腸菌で発現精製が必要だが、本発明の無細胞共翻訳では、本実施例のように無細胞翻訳系で簡単にベイトを用意できる。
実施例2 in vitroウイルス法への応用2
in vitroウイルス法への応用において、プレイとしてプレイライブラリーを用いた例を示す。
プレイ・ライブラリーは、ランダムプライミング法によりマウス(Testis)のmRNAから作成したcDNAをin vitroウイルス用のベクターpET-029/T7(EcoRI)FH(配列番号18)へ組み込んで、ランダムプライミングcDNAライブラリーを作成した。このライブラリーにはc-junが含まれていることを予め確認した。pET-029/T7(EcoRI)FHは、転写プロモーターにSP6のRNAポリメラーゼのプロモーター(SP6)を含み、翻訳エンハンサーとしてタバコモザイクウイルスのTMVオメガ配列の一部(029;配列番号29)を含んだ5'UTR領域を含み、かつ3'末端領域のポリA配列の上流にXhoI配列、さらに親和タグ配列として抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を含んだ配列をもち、市販のベクターpET(Stratagene)にSP6、029、T7タグ(T7-tag)、EcoRIサイト、及び、Flagタグを含む配列を組み込んで作成したものである。
概略を図5を参照して説明する。Fosをベイトとし、ランダムプライミングcDNAライブラリーをプレイとし、さらに、第二のベイトとしてFos/Junと相互作用するDNAを混在させた。全てが混在した系(Fos、ライブラリー、DNA; 図5のB, Fos/DNA(+/+))、あるいはDNAが存在しない系(Fos、ライブラリー; 図5のB, Fos/DNA(+/-))、あるいはライブラリーのみの系(ライブラリーのみでFosなし; 図5のB, Fos/DNA(-/-))である無細胞翻訳系で共翻訳を行い、Fos/ライブラリー相互作用による複合体を形成せしめた。本実施例では、実施例1同様、プレイは全て対応付け分子である。これをIgGビーズで回収し、TEVプロテアーゼでベイトを切断し、さらにカルモジュリンビーズで回収し、EGTAで溶出する二段階スクリーニングによりベイトと特異的に結合するプレイを実施例1同様にRT-PCRで検出し(図5のB)、さらに、c-jun特異的な配列でRT-PCRし、ライブラリーのJunが濃縮されていることを確認した(図5のC)。以下、方法と結果を具体的に説明する。
方法:
Gubler&Hoffman法(Gubler&Hoffman 1983 Gene 25, 263)に基づいてcDNAを作成した。マウス(Testis)のpoly(A)+RNA(Clontech)、及び、ランダムプライマー(Promega)を用いて、cDNA Synthesis Kit(Promega)によって、一本鎖cDNAを合成する。E. coli RNaseHでRNAにニックを入れて分解後、E. coli DNAポリメラーゼIとE. coli DNAリガーゼによってRNA鎖をDNA鎖に置き換え、二本鎖cDNAを合成した。T4 DNAポリメラーゼにより、末端平滑化を行い、EcoRI-NotI-BamHIアダプター(Takara)を連結した。5'末端を燐酸化し、スピンカラム(Clontech, S-400)で低分子量DNAを除去した。ベクターpET-029/T7(EcoRI)FH(EcoRI切断、BAP処理)と連結し、連結産物を精製し、エレクトロポーレーション法によりE.coli DH5a(Takara)に導入し形質転換して、インサート効率60%、サイズ2x106のインディペンデントクローンのライブラリーを得た。このライブラリーをプレイ・ライブラリーとして、ライブラリーのDNAテンプレートをPCR(プライマー5'SP6-L(配列番号19)と3'Flag-L(配列番号20)、プログラムV-2(表1参照))によって用意した。実施例2と同様に、転写し、3'末端にピューロマイシンをもつスペーサーと連結した。
上記のように作成したランダムプライミング法によるcDNAライブラリーに由来するmRNA(12μg)をRNAテンプレートの代わりに用いた以外は、実施例1と同様に共翻訳及びスクリーニングを行った。また、ベイトの有無の条件を変えて同様の共翻訳及びスクリーニングを行った。
スクリーニング後の溶出液及びその希釈液をテンプレートとして、プレイの共通配列に基づくプライマーを用いてRT-PCR(プライマー5'029-F3(配列番号16)と3'Flag-R3(配列番号17)、プログラムRT-30(表1参照))を行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った。結果を図5のBに示す、図中、レーン1は原液、レーン2は1/100希釈、レーン3は1/10000希釈である。また、Fos/DNAの欄は、-/-: 両方なし、+/- FosありDNAなし、+/+): FosもDNAもあり、を示す。
さらに、スクリーニング後の溶出液及びその希釈液をテンプレートとして、jun遺伝子に特異的なプライマーを用いてRT-PCR(プライマー5'Jun(DB2)(配列番号21)と3'Jun(Leu)(配列番号22)、プログラムRT-30(表1参照))を行い、RT-PCR産物について1%アガロースゲル電気泳動を行った。結果を図5のCに示す。図中、レーン1は原液、レーン2は1/100希釈、レーン3は1/10000希釈である。また、Fos/DNAの欄は、-/-: 両方なし、+/+: FosもDNAもあり、を示す。
結果:
図5のBに示す結果から、ベイト無し(Fos/DNA(-/-))、Fosのみ(Fos/DNA(+/-))、Fos/DNA複合ベイト(Fos/DNA(+/+))を比較すると、ベイトがあるとライブラリーから、スミアながらより多くの遺伝子が検出されていることが確認できた。さらに、図5のCに示す結果から、c-jun特異的な配列でのRT-PCRによってJunが濃縮されていることが確認できた(図5のC, Fos/DNA(+/+), レーン1)。さらに、RT-PCR産物のクローニングによってJunの配列を確認した。以上から、ライブラリーからも同様にJunが濃縮されることが明らかとなった。
実施例3 in vitroウイルス法への応用3
現在、DNA結合因子や転写制御因子の解析としては、ゲルシフト法、DNaseIフットプリント法、サウスウエスタン法、表面プラズモン共鳴法などが行われているが、本発明の無細胞共翻訳とin vitroウイルス法を組み合わせ、スクリーニングの際に、ベイトをDNAとすることによって、ライブラリーからDNA結合因子や転写制御因子を網羅的に検出可能である。本実施例では、ビオチンDNAベイトによる蛋白質間相互作用の検出の例を示す。
概略を図6を参照して説明する。図6のAに示すように、実施例1と基本的には同様であるが、ここでは、ベイトとしてビオチンDNA(Fos/Junと相互作用するDNA配列にビチオンをPCRで導入したもの)を用いて、JunとFosをプレイとした。ここでは、FosとJunの対応付け分子、ビオチンDNAを混在させた系において、DNAベイト量を0(I),5(II),10(III),20(IV),40(V)pmolと変化させた無細胞翻訳系で共翻訳を行い、Fos/Jun/DNA相互作用による複合体を形成させた。ここで、実施例1同様、プレイは全て対応付け分子である。これをアビジンビーズで回収する1段階スクリーニングによりベイトと特異的に結合するプレイであるFos、JunをRT-PCRで検出した(図6のB)。
方法:
ベイトとしてのビオチンDNAは、5'プライマーにビオチンが結合しているものを用いた他は、実施例1のDNAベイトと同様にPCR(テンプレートDNA-Fos/Jun、プライマー5'DNA(bio)(配列番号14)と3'DNA(配列番号15)、プログラムV-2(表1参照))によって準備した。プレイとしてのJunのin vitroウイルスは、実施例1と同様に準備した。プレイとしてのFosのin vitroウイルスは、pCMV-FosCBPzzベクター(配列番号1)からPCR(プライマー5'SP6(029)Fos(配列番号23)と3'FosFlagA(配列番号24)、プログラムV-2(表1参照))によって得たDNAテンプレートを用いて、さらにPCR(プライマー5'SP6(029/F.H)(配列番号25)と3'FosFlag[X]A(配列番号26)、プログラムV-2(表1参照))によって準備し、転写し、3'末端にピューロマイシンをもつスペーサー(p(dC)2pT(フルオレセイン)-(CH2CH2O)n-p(dC)2ピューロマイシン(n=36~57))と連結した。
ビオチンDNAベイト(0~40pmol(0~3μg)の所定量)、Jun及びFosのin vitroウイルスのRNAテンプレート(それぞれ5 pmol及び5 pmol)を、50μlの小麦の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))において共翻訳(26℃, 60min)した。
50μlの翻訳反応液に対し、磁性アビジンビーズ(500μg)を加え、室温で30分インキュベートし、アビジン結合バッファー(10mM Tris-Cl pH8.0, 150mM NaCl, 0.1% NP40, 0.5mM EDTA, 1mM DTT)で3回洗浄し、500μgのアビジンビーズを得た。
洗浄したビーズ及びその希釈液をテンプレートとして、プレイの共通配列に基づくプライマーを用いてRT-PCR (プライマー5'029-F3(配列番号16)と3'Flag-R3(配列番号17)、プログラムRT-30(表1参照))を行い、RT-PCR産物について2%アガロースゲル電気泳動を行った。結果を図6のBに示す。図中、レーン1は洗浄ビーズ、レーン2は1/100希釈、レーン3は1/10000希釈を示す。また、I、II、III及びIVは、それぞれ、0,5,10,20,40pmolのDNAベイト量を示す。
結果:
図6のBに示す結果から、ビオチンDNAベイト量を増やしていくと、JunとFosが検出されてくることがわかる。特に、20 pmol(1.5μg)以上で効果が顕著である。
以上より、Jun/Fos/DNAの複合体が無細胞翻訳系で形成されたこと、及び一つのベイトに対して、複数のプレイが同時に検出できることが示された。ライブラリーから一挙に網羅的にプレイを検出するときなどは、この効果がより期待できるであろう。
実施例4 STABLE法への応用
STABLE法(Streptavidin-Biotin Linkage in Emulsion; Doi, N and Yanagawa, H. (1999)FEBS Lett. 457, 227-230)は次の5つのステップからなる。▲1▼ストレプトアビジンと融合した蛋白質を発現させるためのcDNAライブラリーの作成。これを鋳型としてPCRを行い、ビオチンラベルしたcDNAの増幅。▲2▼cDNA1分子を一つのエマルジョン区画に閉じ込め、それがコードする蛋白質を合成。▲3▼cDNAとそれに対応した蛋白質が結合(対応付け)。▲4▼エマルジョンを壊し、ベイトを固定した樹脂にcDNA-蛋白質を吸着。▲5▼吸着したcDNA-蛋白質をテンプレートにPCRを行い、コードする蛋白質の配列を決定。以上のステップを繰り返すことにより、目的のcDNAを濃縮する。
概略を図7を参照して説明する。相互作用が既知の蛋白質の組合せとしてcdc2及びサイクリンBを用いた。プレイ蛋白質はストレプトアビジン融合蛋白質として翻訳されるようにした。同一反応系で共翻訳することにより、対応付け分子とベイト蛋白質との複合体の形成が期待できる。複合体をIgGビーズで回収、TEVプロテアーゼでベイト蛋白質を切断することにより、ベイト蛋白質と特異的に結合するストレプトアビジン融合蛋白質、及びこれをコードするDNAが濃縮できているかどうかをPCRで確認した(図7のA)。以下、方法と結果を具体的に説明する。
方法:
ベイト蛋白質に対する鋳型DNAはラベルされていないものを用いた。一方ストレプトアビジン融合蛋白質に対する鋳型DNAは、5'及び3'側にビオチン及びフルオレセインでラベルされたものを用いた。
ベイト蛋白質(cdc2、サイクリンB、又はルシフェラーゼ)の鋳型DNA(225ng)と、プレイ蛋白質(cdc2、サイクリンB、又はルシフェラーゼ)を含むストレプトアビジン融合蛋白質の鋳型DNA(225ng)とをウサギ網状赤血球の無細胞転写翻訳系(TNT(商標)T7 Quick Coupled Transcription/Translation System(Promega))に添加して50μlとし転写翻訳反応液を作成した。本実施例は、相互作用が既知の蛋白質を用いたモデル実験であるため、転写翻訳反応液をエマルジョンとすることを省略して、30℃で90分間インキュベートした(共翻訳)。45μlの翻訳反応液に対し、結合バッファー(10mM Tris-Cl, pH8.0, 150mM NaCl, 0.1% NP40)54μl、プロテアーゼインヒビターカクテル(Sigma)1μlを添加し計100μl(無細胞共翻訳サンプル)とした。
IgGアガロース(Sigma)を結合バッファーで2回洗浄し、これに無細胞共翻訳サンプル(100μl)を加え、4℃で2時間撹拌した。結合バッファーで3回、TEV切断バッファーで1回洗浄、IgGアガロースに結合したベイト/プレイ複合体をTEVプロテアーゼ(GIBCO-BRL)で切断した(16℃、2時間)。切断後遠心し、上清(溶出液)50μlを回収した。
溶出液を2×サンプルバッファーと混合し、40μlを1.3%アガロースゲルで電気泳動し、抗T7タグ及び抗STA抗体によるウエスタンブロットを行った。結果を、図7のBに示す(上及び中)。また、スクリーニング後の溶出液をテンプレートとして、5'側及び3'側ともプレイの共通配列に基づくプライマーを用いてPCRを行った。PCRの条件は、1μlを200μlのTEバッファー(10mM Tris-Cl, pH7.4, 1mM EDTA)に懸濁、これをPCRの鋳型DNAとし、用いたプライマーの塩基配列は5'-AAGCCGTCCGCCGCCTCCAT-3'(配列番号27)及び5'-GGATCTCCATTCGCCATTCA-3'(配列番号28)であり、95℃で1min加熱後、98℃20秒、55℃1分、72℃4分のサイクルを30回の条件で行った。PCR産物は、1.5%アガロースゲルで電気泳動した。結果を、図7のBに示す(下)。
結果:
ストレプトアビジン融合蛋白質をベイト蛋白質と結合させ、TEVプロテアーゼにより切断、溶出画分を泳動した結果、ベイトをcdc2とした場合サイクリンBが回収され、ベイトをサイクリンBとした際にはcdc2が回収された。これにより対応付け分子が選択的に回収されることが示された(図7のB)。ベイトと相互作用した蛋白質をコードするDNAが、PCRにより優位に増幅された(図7のB)。
JP0003706942B2_000002t.gif実施例5 ベイトの作成とその翻訳
コード分子は、マウス由来のc-junまたはc-fos(Gentz R, Rauscher FJ 3d, Abate C, Curran T(1989)Science 243:1695-9; Neuberg M, Schuermann M, Hunter JB, Muller R(1989)Nature 338:589-90)の組み込まれているプラスミド(c-junは、pEU-T7JunFlag(配列番号30);c-fosは、pCMVFosCBPzz(配列番号31))からPCRで作成した。PCRのプライマーとしては、c-junでは5'UTR領域について1種類(プライマー;5'SP6-029(配列番号32))と3'末端領域については13種類(プライマー;3'A8=A(配列番号35)、3'X(CTCGAG)(配列番号36)、3'X(CTCGAG)A8=XA(配列番号37)、3'X(CTCGCC)A8(配列番号38)、3'X(CTCG)A8(配列番号39)、3'X(CTC)A8(配列番号40)、3'X(CTCT)A8(配列番号41)、3'X(TTCG)A8(配列番号42)、3'X(GTCC)A8(配列番号43)、3'X(CATG)A8(配列番号44)、3'X(CTCC)A8(配列番号45)、3'X( )A8(配列番号46)、3'none(配列番号34))、c-fosでは5'UTR領域についてい1種類(プライマー;5'T7(0')-bait(配列番号33))と3'末端領域については2種類(プライマー;3'baitFosD(配列番号37),3'baitFosDA(配列番号38))を用い、計15種類のDNAテンプレートを調製し、QIAquick PCR Purification Kits(QIAGEN)で精製した。これらのDNAテンプレートを、RiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)をもちいて転写(37℃, 2h)し、合成したmRNAをRNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、mRNAテンプレート(コード分子)を得た。
まず、得られたmRNAテンプレートを翻訳テンプレートとして用いて、翻訳を行った。翻訳テンプレート2 pmolを用いて、Wheat Germ Extract(Promega)の10μlの系で翻訳(26℃, 60min)を行い、翻訳と同時に、修飾剤として240 pmolのFluor-dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto-Sato, E., Nemoto, N., Kobayashi, K., and Yanagawa, H. (2000)Nucleic Acids Res. 28: 1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H.(1999)FEBS Lett., 462: 43-46)を行い、15%SDS-PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(フルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で測定した。その結果をまとめたグラフを図10に示す。
図10から、ポリA配列(A配列)よりSNNS配列(X配列)を有する場合に、さらにSNNS-ポリA配列(XA配列)を有する場合に、翻訳量が増加することが示された。このことから、XA配列を持つ翻訳テンプレートは、一般的な翻訳やC末端ラベル化により好ましいといえる。また、X配列を変えたときの翻訳結果から、X配列がA配列と組み合わさって効果を現すには、最低4塩基からなることが必要であり、第一番目と第四番目の塩基はCかGであることが要求され、SNNS(SはCまたはG)の構成が必要であることが示された。
さらに、mRNAテンプレートの3'側にPEGスペーサー分子(下記製造例1~4参照)をライゲーションした翻訳テンプレートを作成した。ここでは、T4 RNAリガーゼ(宝酒造)をもちいて、PEGスペーサー部((dC)2(T)2, PEG4000, PEG4000Puro-Boc)と、コード分子(Jun-X(CTCGAG)A8=Jun-XA(プライマー3'X(CTCGAG)A8=XAを用いて得られたもの))またはコード分子(Fos-D(-A)または3'baitFos-DA(+A)(プライマー3'baitFosDまたは3'baitFosDAを用いて得られたもの))とのライゲーション(15℃, 20h)を行い、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、8M尿素4%PAGEで電気泳動し、エチレンブロマイド(EtBr)で染色し、バンドの蛍光(EtBrとフルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で検出した。ライゲーションした2 pmolの翻訳テンプレートを用いて、Wheat Germ Extract(Promega)あるいは、PROTEIOS(Toyobo)を用いて、10μlの系で翻訳(26℃; 1, 3, 6, 20hr)を行い、翻訳と同時に、修飾剤として240 pmolのFluor-dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto-Sato, E., Nemoto, N., Kobayashi, K., and Yanagawa, H.(2000)Nucleic Acids Res. 28:1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H.(1999)FEBS Lett., 462: 43-46)を行い、15%SDS-PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(Fluorescein)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で測定した。RNAの安定性実験は、PEGスペーサー部の蛍光を用いて、RNAの残量をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で測定した。対照としてライゲーションしていない翻訳テンプレートを用いて同様の手順を行った。それらの結果をまとめたグラフを図11および図12に示す。
図11から、コード部の配列は基本的にはどのような配列でもPEGスペーサー部をライゲーションすることで翻訳量が増加することが示された(図11のA)。また、XA配列を持つコード部をもつ翻訳テンプレート(XA)では、XA配列もPEGスペーサー部も持たないコード分子(None)に比べて、翻訳量が約3~4倍増加していることが示された。また、XA配列を持つコード部では、PEG4000Puro-Bocの構成が最も翻訳量が増加することが示された(図11のB)。よって、一般的な翻訳やC末端ラベル化を行う場合にはPEGスペーサー部がライゲーションされたXA配列を持つ翻訳テンプレートを用いることが適しているといえる。図12から、XA配列を持つコード分子(●; XA)、XA配列を持たないコード分子(□; None)は3時間で翻訳量は飽和に達したが、PEG4000Puro-Bocをもつ翻訳テンプレート(○; XA+PEG400Puro-Boc)は、6時間でも翻訳の増加が見られた(図12のa)。また、その翻訳量は、6時間で比較すると、PEG400Puro-Bocをもつ翻訳テンプレート(○)は、XA配列を持つコード分子(●; XA)の約2倍、XA配列を持たないコード分子(□; None)の約4倍であった(図12のA)。コード分子と、PEGスペーサー部をもつ翻訳テンプレートとの安定性を比較すると、コード分子(●;XA)は、そのmRNAが1時間で50%減るのに対して、PEGスペーサー部をもつ翻訳テンプレート(○)は、13時間でようやく50%減ることから、PEGスペーサー部をもつコード分子(○)の安定性が非常によいことがわかる(図12のB)。以上から、翻訳テンプレート(○)の翻訳量が増加したのは、ライゲーションされたPEG4000Puro-Bocによる安定性向上が原因と考えられる。
実施例6 プレイの作成
コード分子(mRNAテンプレート)にPEGスペーサー分子(下記製造例1~4参照)をライゲーションしたものを翻訳テンプレートとして用いた。ここでは、実施例5で得たコード分子のmRNAテンプレート(Jun-XA, Jun-A)とPEGスペーサー部(PEG2000Puro)を実施例5と同様の方法でライゲーションした。ライゲーションしたmRNAテンプレートを小麦胚芽の無細胞翻訳系としてWheat Germ Extract(Promega)をもちいて、実施例1と同様の方法で翻訳し、対応付け分子を8M尿素10%SDS-PAGEで電気泳動し、蛍光(フルオレセイン)によってマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で検出した。また、フリー蛋白質の量は、翻訳と同時に、修飾剤としてFluor-dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto-Sato, E., Nemoto, N., Kobayashi, K., and Yanagawa, H.(2000)Nucleic Acids Res. 28:1176-1182; Nemoto, N., Miyamoto-Sato, E. and Yanagawa, H.(1999)FEBS Lett, 462:43-46)を行い、8MUrea10%SDS-PAGEおよび15%SDS-PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(フルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio-Rad)で測定し、あわせて、T7-tagによる抗体を用いたウエスタンブロットで総蛋白量を決定した。それらの結果をまとめたグラフを図13に示す。
図13から、対応付け分子は、XA配列を持つコード部とA配列を持つコード部について比較すると、添加するRNA量を変化させたときの対応付け効率は両方とも70%でほとんど変わらないことが示された(図13のA)。しかしながら、添加したRNAテンプレートから合成された蛋白質総量(フリー蛋白質+対応付け分子=100%)に対する対応付け効率については、添加するRNA量を変化させたとき、A配列を持つコード部の場合は90%(フリー蛋白質10%)を超える高い効率を示すことが示された(図13のB)。一方、XA配列を持つコード部の場合は、フリー蛋白質の生成割合が高い(図13のB)。よって、プレイとして対応付け分子を用いる場合にはXA配列よりも配列を持つコード部が適しているといえる。
製造例1 PEGスペーサー分子(11)の合成
PEGスペーサー分子(11)は、図14に示す試薬を用い、図15に示す方法で合成した。図14中アミダイト試薬(1~5)はグレンリサーチ社(アメリカ合衆国、バージニア州)より購入した。平均分子量1000、2000、3000のPEGは日本油脂(東京都渋谷区)より購入した。平均分子量4000のPEGはフルカ社(スイス)より購入した。それらを原料にしてアミダイト試薬(6)を、Jaschkeらが報告した方法(Jaschke, A. et al.(1993)Tetrahedron Lett. 34: 301-304)を用い合成した。図14中10はIkedaらが報告した方法(Ikeda, S. et al.(1998)Tetrahedron Lett. 39: 5975-5978)で合成した。なお、図14中DMTrは4,4'-ジメトキシトリチル基を、図15中Fmocは9-フルオレンメトキシカルボニル基を示す。
10(400mg, ピューロマイシン 10μmol含有)に対し、以下のA~Dの処理を所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
A.3%トリクロロ酢酸-塩化メチレン溶液を1mL加え室温で3分間放置後、塩化メチレン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
B.ヌクレオチドアミダイト30μmol、0.457Mテトラゾール-無水アセトニトリル溶液100μL、および無水アセトニトリル1mLを加え、室温で15分間振盪する。アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
C.50mMヨウ素溶液(テトラヒドロフラン-ピリジン-水=75:20:5)1mLを加え室温で3分間放置後、ピリジン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水ピリジン5mLで5回洗浄する。
D.10%無水酢酸-ピリジン溶液1mLおよび触媒量の4,4-ジメチルアミノピリジンを加え室温で20分間放置後、ピリジン5mLで5回、塩化メチレン5mLで5回洗浄する。
上記の処理をし所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された10に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間振盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS-A SH-343-5,溶離液10-60%アセトニトリル-0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、PEGスペーサー分子(11)を得た。得られたPEGスペーサー分子(11)の構造及び収率を以下に示す。
p(dCp)2PEG(1000)p(dCp)2Puro
収率8.7%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(1000)pdCpPuro
収率62%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(1000)p(dCp)2Puro
収率14%
p(dCp)2PEG(2000)p(dCp)2Puro
収率7%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(2000)pdCpPuro
収率30%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro
収率27%
p(dCp)2T(Bio)pPEG(2000)pdCpPuro
収率9%
p(dCp)2T(Bio)pPEG(2000)p(dCp)2Puro
収率8%
p(dCp)2T(Bio)pT(Fl)pPEG(2000)pdCpPuro
収率2%
p(dCp)2T(Bio)pT(Fl)pPEG(2000)p(dCp)2Puro
収率8%
p(dCp)2PEG(3000)pdCpPuro
収率2%
p(dCp)2PEG(3000)p(dCp)2Puro
収率22%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(3000)pdCpPuro
収率29%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(3000)p(dCp)2Puro
収率23%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(4000)pdCpPuro
収率16%
p(dCp)2T(Fl)pPEG(4000)p(dCp)2Puro
収率17%
製造例2 PEGスペーサー分子(14)の合成
PEGスペーサー分子(14)は、図14に示す試薬を用い、図15及び図16に示す方法で合成した。図14中、ローダミングリーン(RhodG)活性エステル(7)はモレキュラプローブ社(アメリカ合衆国、オレゴン州)より、Cy5活性エステル(8)およびCy3活性エステル(9)はアマシャムファルマシアバイオテク社(イギリス、バッキンガムシャー)より、購入した。図16中、12はIkedaらが報告した方法(Ikeda, S. et al.(1998)Tetrahedron Lett. 39: 5975-5978)を応用し合成した。なお、図14中、Bocはtert-ブトキシカルボニル基を示す。
12(400mg, ピューロマイシン 10μmol含有)に対し、PEGスペーサー分子(11)の合成の場合と同様のA~Dの処理を所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
上記の処理を行ない、所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された12に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間震盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS-A SH-343-5, 溶離液:10-60%アセトニトリル-0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、13を得た。13を30%アセトニトリル-水0.1mLに溶かし、7,8または9を10μmol、および1M炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.3)を10μL加え室温で2時間放置した。反応液を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮した。残査を60%トリフルオロ酢酸-水1mLにて室温で30分処理後、濃縮乾固した。残査を濃アンモニア水1mLにて室温で15分処理後、濃縮乾固した。残査を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮し、PEGスペーサー分子(14)を得た。なお、図17中、RhodGは図14中7の、Cy5は図14中8の、Cy3は図14中9の、蛍光色素残基部をそれぞれ示す。得られたPEGスペーサー分子(14)の構造及び収率を以下に示す。
p(dCp)2T(Bio)pT(RhodG)pPEG(2000)p(dCp)2Puro
収率11%
p(dCp)2T(Bio)pT(Cy5)pPEG(2000)p(dCp)2Puro
収率8%
p(dCp)2T(Bio)pT(RhodG)pPEG(4000)p(dCp)2Puro
収率12%
p(dCp)2T(Bio)pT(Cy5)pPEG(4000)p(dCp)2Puro
収率10%
p(dCp)2T(Cy3)pPEG(4000)p(dCp)2Puro
収率9%
製造例3 Boc保護PEGスペーサー分子(15)の合成
図18に示したように、12(400mg, ピューロマイシン 10μmol含有)より、PEGスペーサー部(11)と同じ方法を用いてBoc保護PEGスペーサー部(15)を合成した。得られたBoc保護PEGスペーサー分子(15)の構造と収率を以下に示す。
p(dCp)2T(Fl)pPEG(4000)p(dCp)2Puro(Boc)
収率41%
製造例4 ピューロマイシン非含有PEGスペーサー分子(16)の合成
Jaschkeらが報告した方法(Jaschke, A. et al.(1993)Tetrahedron Lett. 34: 301-304)に従い合成した。得られたピューロマイシン非含有PEGスペーサー分子(16)の構造と収率を以下に示す。
p(dCp)2T(Fl)pTpPEG(4000)
収率55%
実施例7 in vitroウイルス法によるFXAライブラリーからの蛋白質間相互作用の検出
通常、ライブラリーからベイト蛋白質と相互作用する遺伝子群を濃縮する場合、所望の遺伝子の存在量が少ない場合は、無細胞共翻訳スクリーニングを何サイクルか繰り返す必要がある。また、このようにスクリーニングを何サイクルか繰り返して所望の遺伝子を濃縮出来ることが、対応付け分子を用いた場合の利点となる。本実施例は、ベイトとしてc-fosを用いて、マウス精巣のFXAライブラリー(mRNAの3'末端領域のポリA配列とその上流にXhoI配列、および親和タグ配列として抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を含んだ配列をもつライブラリー)と共に無細胞共翻訳スクリーニングを行い、RT-PCRで増幅してライブラリーを作成し、それを再びベイトと共に無細胞共翻訳スクリーニングすることを複数回繰り返すことにより内在c-junを濃縮する実施例である(図19のA)。
方法:
各テンプレートの準備、マウス精巣のライブラリーの準備方法、無細胞共翻訳スクリーニング方法、スクリーニング後のRT-PCRについては、全て実施例3に従った。無細胞共翻訳スクリーニングを4サイクル繰り返し、それらの各サイクルのRT-PCR結果を1%アガロースゲル電気泳動後にサザン・ブロットすることで、内在c-junの濃縮を解析した。サザン・ブロットの方法は、DIG DNA標識および検出キット(ロシュ・ダイアグノスティック)を用いて行った。具体的には以下の通りであった。c-juh遺伝子のDNA結合領域とロイシンジッパー領域を含む390bpフラグメント3μgを100℃、10分加熱後、急冷し1本鎖DNAに変性させた。キット付属のDIGラベルされたランダムプライマー(配列:NNNNNN(N=A,T,G,C))を添加した後、キット付属のクレノウフラグメントを添加して37℃で一晩反応させた。エタノール沈殿させ、50μl TEバッファー(10mM Tris-HCl pH8.0/1mM EDTA)に溶解した。1%のアガロースゲル(SIGMA; Type II agarose)を用意して、DIGラベルしてある分子量マーカー(ロシュ・ダイアグノスティック)と各サイクル毎のRT-PCR産物を泳動し、電気泳動終了後アガロースゲルを0.5N NaOH/1.5M NaClで20分処理することで2本鎖DNAを1本鎖DNAに変性させた。さらに、1M Tris-HCl pH8.0/1.5M NaClで5分処理することによりアガロースゲルのpHを調節した。次に、ワットマン3MMろ紙、アガロースゲル、ナイロンメンブレン(ロシュ・ダイアグノスティック)、ワットマン3MMろ紙、ペーパータオル、及び、厚さ1cmのアクリル板を積み重ね、1~2kgの重しをのせ、一番下のろ紙を端部を20X SSC溶液(3M NaCl, 0.3M クエン酸ナトリウム, pH7.0)に浸し、アガロースゲルのDNAをナイロンメンブレンに一晩かけてトランスファーする。ナイロンメンブレンに移ったDNAをUVで架橋することによりメンブレン上に固定し、風乾した。DIG Easy Hyb(ロシュ・ダイアグノスティック)を用いて42℃で1時間、プレハイブリダイゼーションを行った。DIG Easy Hybに1で作成したプローブを最終濃度が14~15ng/mlになるように加えたハイブリダイゼーション溶液で一晩42℃でハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション終了後、室温で2X SSC/0.1% SDSで2回洗浄、60℃で0.1X SSC/0.1% SDSで2回洗浄した。室温でバッファー1(0.1Mマレイン酸/0.15M NaCl/0.3% Tween 20)で1回、バッファー2(1%ブロッキング剤/0.1Mマレイン酸/0.15M NaCl)で1回洗浄した。酵素標識抗体(抗ジゴシキゲニン、アルカリフォスファターゼ)を含むバッファー2で処理後、バッファー1で2回洗浄した。検出溶液(100mM Tris-HCl pH9.5/100mM NaCl/50mM MgCl2)で処理後、発色溶液(検出溶液にNBT/BCIPを加えたもの)に交換し、冷暗所で静地して発色反応を行い、バンドを検出した(図19のB)。
結果:
図19のBから、マウス精巣のFXAライブラリーにおいて、無細胞共翻訳スクリーニングを繰り返すにつれて、内在c-junの濃縮がより進んでいることが確認された。濃縮は3~4回目でほぼ飽和している。このことから、ここでは、ライブラリーから所望の遺伝子(ここではc-jun)を3~4回無細胞共翻訳スクリーニングを繰り返すことによって濃縮されることが確認できた。
実施例8 in vitroウイルス法によるFAテンプレートによる蛋白質間相互作用の検出
本実施例は、ベイトとしてc-fosを用いて、ネガティブコントロールのサイクリンBテンプレートとc-junテンプレートと共に無細胞共翻訳スクリーニングを行い、RT-PCRで増幅・転写してc-junのFAテンプレート(mRNAの3'末端領域のポリA配列とその上流に、親和タグ配列として抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag-tag配列を含んだ配列をもつテンプレート)を作成し、それを再びベイトと共に無細胞共翻訳スクリーニングすることを複数回繰り返すことによりc-junを濃縮する(図20のA)。ここでは、サイクリンBテンプレートに対してc-junテンプレートを1/10000添加した系で無細胞共翻訳スクリーニングを3回繰り返し、c-junが1サイクルでどの程度濃縮されるかを確認した。
方法:
各テンプレートの準備、無細胞共翻訳スクリーニング方法については、全て実施例3に従った。但し、スクリーニング後のRT-PCRについては、FAテンプレートとするために、プライマーとして、5'029-F3(配列番号16)と3'Flag1A-R(配列番号49)を用いた。無細胞共翻訳スクリーニングを3サイクル繰り返し、各サイクルのRT-PCR結果を1%アガロースゲル電気泳動し、c-junの濃縮を確認した(図20のB)。
結果:
図20のBから、FAテンプレートc-junは、3サイクルで少なくとも109倍濃縮されていることがわかった。よって、103/サイクルの濃縮率が確認できた。一般的な濃縮率は最高でも102/サイクルであることから、このような高濃縮率は、濃縮を邪魔するであろう遊離の蛋白質が、FAライブラリーではより少ない(実施例6および図13参照)ことに起因すると考えられる。よって、ここでは、共翻訳スクリーニングにおける、FAテンプレート効果が示された。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、ベイトの共存下でプレイを無細胞翻訳系での翻訳により生成させることで、翻訳と相互作用の工程をカップリングし、蛋白質とそれに相互作用する物質との間の相互作用による複合体を選択的に形成させることができる。この複合体の形成を検出することにより、相互作用を高感度でかつ網羅的に検出できる。また、弱い相互作用による複合体を得ることができる。
さらに、ベイト及びプレイのいずれか又は両方と相互作用する物質の存在下で翻訳を行うこと、あるいはベイトが完全長であることにより、より一層選択的で網羅的にプレイを解析できるシステムが実現する。また、ベイトが蛋白質である場合は、無細胞共翻訳となり、従来のようにベイトを別途、大腸菌などで大量発現・精製して準備する必要が無くなり、作業時間の大幅な短縮が行える。
【配列表】
JP0003706942B2_000003t.gifJP0003706942B2_000004t.gifJP0003706942B2_000005t.gifJP0003706942B2_000006t.gifJP0003706942B2_000007t.gifJP0003706942B2_000008t.gifJP0003706942B2_000009t.gifJP0003706942B2_000010t.gifJP0003706942B2_000011t.gifJP0003706942B2_000012t.gifJP0003706942B2_000013t.gifJP0003706942B2_000014t.gifJP0003706942B2_000015t.gifJP0003706942B2_000016t.gifJP0003706942B2_000017t.gifJP0003706942B2_000018t.gifJP0003706942B2_000019t.gifJP0003706942B2_000020t.gifJP0003706942B2_000021t.gifJP0003706942B2_000022t.gifJP0003706942B2_000023t.gifJP0003706942B2_000024t.gifJP0003706942B2_000025t.gifJP0003706942B2_000026t.gifJP0003706942B2_000027t.gif
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
6
【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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