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明細書 :リチウム二次電池正極材料及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5034042号 (P5034042)
公開番号 特開2008-047412 (P2008-047412A)
登録日 平成24年7月13日(2012.7.13)
発行日 平成24年9月26日(2012.9.26)
公開日 平成20年2月28日(2008.2.28)
発明の名称または考案の名称 リチウム二次電池正極材料及びその製造方法
国際特許分類 H01M   4/58        (2010.01)
FI H01M 4/58 101
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2006-221561 (P2006-221561)
出願日 平成18年8月15日(2006.8.15)
審査請求日 平成21年7月31日(2009.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】小松 高行
【氏名】本間 剛
【氏名】紅野 安彦
【氏名】広瀬 景太
個別代理人の代理人 【識別番号】100105647、【弁理士】、【氏名又は名称】小栗 昌平
【識別番号】100105474、【弁理士】、【氏名又は名称】本多 弘徳
【識別番号】100108589、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 利光
審査官 【審査官】山下 裕久
参考文献・文献 特開2007-042618(JP,A)
特開2005-158673(JP,A)
特表2005-514304(JP,A)
特表2006-511907(JP,A)
特開2005-322550(JP,A)
調査した分野 H01M 4/13-587
特許請求の範囲 【請求項1】
ル%表示で、Li10~50%、Fe10~40%、P20~50%、MgO、TiO、V、MnO、Co、NiO、Nb、MoO、WO及び希土類酸化物から選ばれる少なくとも1種0.5~32%の割合となるように各成分の出発原料を混合し、混合物を溶融した後、冷却してリチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスを製造する工程と、
前記リチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスにレーザを照射し、レーザの照射部分にオリビン型結晶を析出させる工程と、
を有するとともに、
リチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスを製造する工程において、下記(A)~(C)の少なくとも1工程を付加して鉄の原子価を+2価に調整することを特徴とするリチウム二次電池正極材料の製造方法。
(A)Fe源として2価の鉄イオンを含む化合物を用いる
(B)混合物を不活性雰囲気中または還元雰囲気中で溶融する
(C)混合物に還元剤を加えて溶融する
【請求項2】
請求項1記載の方法によって得られ、粒子径0.01~500μmで、オリビン型結晶が析出されていることを特徴とするリチウム二次電池正極材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型電子機器や電気自動車等に用いられるリチウム二次電池正極材料を製造するための前駆体ガラス及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記前駆体ガラスを用いてリチウム二次電池用正極材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次イオン電池は、携帯電子端末や電気自動車に不可欠な高容量で軽量な電源としての地位を確立している。このリチウム二次イオン電池の正極材料には、これまでコバルト酸リチウム(LiCoO)やマンガン酸リチウム(LiMnO)等の無機金属酸化物が用いられてきているが、近年の高性能化に伴う消費電力の増大から、リチウム電池の更なる高容量化が要求されている。また、環境保全問題やエネルギー問題の観点から、CoやMn等の環境負荷の大きい材料から、より環境調和型の材料への転換が求められている。また近年、コバルト資源の枯渇問題が注目されており、LiCoOに代わる安価な正極材料への転換が望まれている。
【0003】
近年、コスト・資源等の面で、マンガン系スピネル型、NASICON型及びオリビン型の各LiFePO結晶が注目されており、種々研究・開発が進められている。中でもオリビン型LiFePOはLiCoOに比べて温度安定性に優れ、高温での安全な動作が期待される。また、リン酸を骨格とする構造ゆえに充放電反応による構造劣化に優れている特徴を有する。しかし、リチウムイオン電池の正極材料として要求される事項として伝導度が高いことが要求されるが、LiFePOの伝導度はLiCoOと比べて低いことが報告されている。LiFePOにおけるリチウムの伝導は、第1原理計算より1次元方向であると予測されており(D.Morgan et al.,Electrochem.Solid Sate Lett.7 A30(2004))、伝導度を高めるためには、LiFePO粒子をnmオーダーで緻密化した焼結体を得るか、単結晶のようにLiイオンが伝導する方向に対して結晶の向きを揃える必要がある。
【0004】
しかしながら、上記のNASICON型及びオリビン型の各LiFePO結晶は、固相反応、水熱合成、マイクロ波加熱法により作製されているが((非)特許文献1~3参照)、何れの方法でも配向制御は不可能である。
【0005】

【非特許文献1】A. K. Padhi et al., J. Electrochem. Soc. 144 359(1997).
【非特許文献2】K. Dokko et al., Chem. Lett. 35 338(2006).
【非特許文献3】M. Higuchi et al., J. Power Sources 119-121 258(2003).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、配向性が高く、イオン導電性に優れるLiFePO結晶系のリチウム二次電池正極材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は下記を提供する。
(1)ル%表示で、Li10~50%、Fe10~40%、P20~50%、MgO、TiO、V、MnO、Co、NiO、Nb、MoO、WO及び希土類酸化物から選ばれる少なくとも1種0.5~32%の割合となるように各成分の出発原料を混合し、混合物を溶融した後、冷却してリチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスを製造する工程と、
前記リチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスにレーザを照射し、レーザの照射部分にオリビン型結晶を析出させる工程と、
を有するとともに、
リチウム二次電池正極材料用前駆体ガラスを製造する工程において、下記(A)~(C)の少なくとも1工程を付加して鉄の原子価を+2価に調整することを特徴とするリチウム二次電池正極材料の製造方法。
(A)Fe源として2価の鉄イオンを含む化合物を用いる
(B)混合物を不活性雰囲気中または還元雰囲気中で溶融する
(C)混合物に還元剤を加えて溶融する
(2)上記(1)記載の方法によって得られ、粒子径0.01~500μmで、オリビン型結晶が析出されていることを特徴とするリチウム二次電池正極材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、配向性が高く、イオン導電性に優れるLiFePO結晶系のリチウム二次電池正極材料を、簡便な方法により効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0010】
本発明では先ず、モル%表示(以下、単に「%」で表示)で、LiOが10~50%、Feが10~40%、Pが20~50%、MgO、TiO、V、MnO、Co、NiO、Nb、MoO、WO及び希土類酸化物から選ばれる少なくとも1種が0.5~32%の割合となるように、各成分の出発原料を混合する。各成分の出発原料には制限はないが、LiO源としてはLiCO、Fe源としてはFe(II)C、P源としてはNHPOが好適である。また、その他の上記金属酸化物及び希土類酸化物は、それぞれ酸化物の状態で直接混合することができる。
【0011】
また、上記の混合物には、ガラス形性能を更に向上させるために、B、GeO、SiO、Ga、MoO、WO、Biを電気伝導特性、放充電特性に影響を与えない程度であれば添加することも好ましい。但し、出発原料にMoO、WOを用いる場合は、MoO、WO以外を添加する。
【0012】
そして、上記の混合物を溶融、冷却することでガラス体が得られる。本発明では、このガラス体を、後述するようにレーザ照射して結晶化させてリチウム二次電池の正極材料とする。そこで、このガラス体をリチウム二次電池正極材料用前駆体ガラス(以下、単に「前駆体ガラス」)と呼ぶ。
【0013】
次いで、上記の前駆体ガラスを成型加工した後、レーザ照射によりオリビン型を析出させて結晶化させることで本発明のリチウム二次電池正極材料が得られる。これらの結晶化ガラスは、リチウム鉄リン酸塩ガラスをベースとし、鉄サイトを、前駆体ガラスを作製する際に添加した原料に由来するMg、Ti、V、Mn、Co、Ni、Nb、Mo、W、希土類で置換した構造を持ち、オリビン型結晶はLiFePOの鉄サイトを置換したものである。
【0014】
ーザ照射は、前駆体ガラス中の金属イオンの光吸収帯に発振波長を持つレーザであれば特にレーザの種類に限定されることなく行うことができる。また、連続発振のレーザを用いることで、空間的にレーザ照射位置を移動させ、線状の結晶化パターンが形成可能である。例えば、波長1064nmのYAGレーザを用い、レーザ光の照射パワーが0.1mW~1W/cmの範囲内で、レーザビームの移動速度を0.1~2000μm/sの範囲内で線状に移動させながらレーザ照射することが好ましい。また、レーザ照射中の雰囲気は不活性雰囲気であると更に好ましい。更に、レーザ照射は、ガラス表面以外にも、ガラス内部の任意の位置(深度)に焦点を合わせることで、内部に結晶化パターンを形成することができる。
【0015】
上記において、オリビン型LiFePO中の鉄の原子価は+2であるため、前駆体ガラスを作製する際に下記(A)~(C)の少なくとも1工程を付加して鉄の原子価を+2に調整する。
(A)出発原料の鉄源原料としてシュウ酸鉄等の2価の鉄イオンを含む化合物を用いる
(B)出発原料にグルコース、鉄粉等の還元剤を0.1-10質量%の割合で添加する
(C)還元雰囲気中で溶融する
【0016】
また、作製した前駆体ガラスを水素、アンモニア、一酸化炭素等の還元雰囲気中にてガラス転移点近傍で熱処理し、その後に結晶化温度近傍で熱処理してもよい。
【実施例】
【0018】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
【0019】
(実施例1)
得られるガラスの組成として33%LiO-28%Fe-5%Nb-33%Pとなるように、原料であるLiCO、NHPO、Fe(II)C、Nbをそれぞれ秤量し、蓋付アルミナ坩堝中に入れ、窒素雰囲気中300℃にて熱処理することで揮発成分(アンモニア、炭酸ガス)を除去した。その後電気炉中で1200℃、10分間の条件で溶融し、融液を鉄板上に流し出し、プレス急冷することにより前駆体ガラスを作製した。
【0020】
作製した前駆体ガラスを10mm×10mm×1mmに成型加工し、結晶化温度近傍である550~580℃に設定した電気炉中で1時間熱処理を行いLiFe0.85Nb0.15POを析出させた。図1にLiFe0.85Nb0.15POのバルク・粉末X線回折パターン(b)、(c)を、上記の前駆体ガラスのX線回折パターン(a)とともに示す。(a)のハローパターンから前駆体ガラスは均一(非晶質体)であることが分かる。これに対し、(b)、(c)に示すハローパターンでは非晶質特有のハローパターンが消滅して結晶特有の回折パターンを示しており、Nbが固溶したLiFePOの回折パターンと一致している。また、(c)のバルク試料のX線回折パターンでは(011)、(012)方向への配向が確認された。
【0023】
そして、実施例1で作製した前駆体ガラスを10mm×10mm×1mmに成型・鏡面研磨加工し、波長1.06μmの連続発振型YAGレーザを10倍対物レンズにてガラス表面に集光し、出力50mW/cmにて照射しながら、100μm/sの速度で集光位置を移動させ、複数条の平行な線状パターンを形成した。レーザ照射部分を撮影した顕微鏡写真を図に示すが、照射部のみ結晶化(図中の白色部)されていた。この結晶化部分は、実施例1で作製されたLiFe0.85Nb0.15PO単一相であった。
【0025】
また、実施例1で作製した各前駆体ガラスについて、室温25℃において複素インピーダンス法にて伝導度を測定したところ、概ね10-6Scm-1以下であった。これに対し、同じく実施例1で作製したLiFe0.85Nb0.15POの伝導度は5.6×10-5Scm-1であり、導電性が向上していた。
【0026】
上記の実施例では、Nbを含む構成についてのみ示したが、Mg、Ti、V、Mn、Co、Ni、Mo、Wまたは希土類を含む構成についても、出発原料のNbに変えてそれぞれの酸化物を用いればよく、当業者であれば容易に実施可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1で作製した前駆体ガラスのX線回折パターン(a)、LiFe0.8Nb0.15PO粉末X線回折パターン(b)及びバルクX線回折パターン(c)である。
【図2】実施例で得られた結晶化パターンを示す電子顕微鏡写真である。
図面
【図1】
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【図2】
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