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明細書 :高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体およびその製造方法と中間体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3888914号 (P3888914)
公開番号 特開2002-338534 (P2002-338534A)
登録日 平成18年12月8日(2006.12.8)
発行日 平成19年3月7日(2007.3.7)
公開日 平成14年11月27日(2002.11.27)
発明の名称または考案の名称 高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体およびその製造方法と中間体
国際特許分類 C07C 229/08        (2006.01)
C07C 227/18        (2006.01)
C07C 231/02        (2006.01)
C07C 233/47        (2006.01)
C07C 237/12        (2006.01)
C07B  41/12        (2006.01)
FI C07C 229/08
C07C 227/18
C07C 231/02
C07C 233/47
C07C 237/12
C07B 41/12
請求項の数または発明の数 5
全頁数 13
出願番号 特願2002-063985 (P2002-063985)
出願日 平成14年3月8日(2002.3.8)
優先権出願番号 2001071420
優先日 平成13年3月14日(2001.3.14)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成15年6月23日(2003.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000173924
【氏名又は名称】財団法人野口研究所
発明者または考案者 【氏名】三浦 剛
【氏名】稲津 敏行
審査官 【審査官】冨永 保
参考文献・文献 Synthetic Communications,(1992),22(11),p.1547-54
調査した分野 CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式[I]
【化1】
JP0003888914B2_000011t.gif
(式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rは水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で表されることを特徴とする高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体。
【請求項2】
RfがC817、Rが水素、メチル基、エチル基のいずれか、Xがカルボニル基、lが2、mが3、nが2、pが0~2の整数であることを特徴とする請求項1記載の高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体。
【請求項3】
アミノ酸エステルに、塩基存在下、下記式[III]
【化2】
JP0003888914B2_000012t.gif
(式中、Yはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、またはフッ素を除くハロゲンのいずれかを、Rfは炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、nは1または2を表す。)で表されるパーフルオロアルキル誘導体を反応させ次いで塩基存在下、再度式[III]で表されるパーフルオロアルキル誘導体と反応させるか、もしくは下記式[IV]
【化3】
JP0003888914B2_000013t.gif
(式中、Rfは炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、nは1または2を表す。)で表されるパーフルオロアルキルカルボン酸、または式[V]
【化4】
JP0003888914B2_000014t.gif
(式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~3の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示されるカルボン酸と縮合させる工程からなることを特徴とする式[I]
【化5】
JP0003888914B2_000015t.gif
(式中、Rfは炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の式[I](式中、Rfは炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で表される、高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体からカルボン酸へ誘導する工程からなる、高度にフッ素化されたカルボン酸の製造方法。
【請求項5】
式[VII]
【化6】
JP0003888914B2_000016t.gif
(式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示される高度にフッ素化されたアシル基を水酸基の保護基として使用する方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体に関する。医薬や食品添加物、化粧品、液晶、電子材料、高分子材料モノマー、機能性材料、医療材料などのファインケミカルズの製造には有機合成化学の果たす役割が極めて高い。従来の有機合成の概念を越える技術としてフルオラス合成が提案され、その発展が望まれている。これはパーフルオロカーボンが有機溶媒や水に溶解せず、三者が互いに分液できることに着目し、高度にフッ素化した誘導体のみをパーフルオロカーボン層に抽出させ、化合物の精製を容易にかつ安全に行うという方法である。例えば化合物Aと化合物Bを反応させる工程に先立ち、高度にフッ素化されたカルボン酸(高度にフッ素化された基の導入試剤)を化合物Aと反応させ、高度にフッ素化された基を化合物Aの特定の官能基例えばアミノ基へ導入する。そののちに主反応である、当該反応生成物と化合物Bとの反応が行われる。これは化合物Aのもう一つの官能基、例えばカルボキシル基と化合物Bの、例えばアミノ基との反応である。このようにして得られた反応生成物は高度のフッ素含有率を有する為、この反応系にパーフルオロカーボン(溶媒)を加えると、この反応生成物は容易にパーフルオロカーボン層に移行するので、この特性を利用した操作により、分離が極めて容易となる。しかる後、主反応に先立ち付加しておいた高度にフッ素化された基を加水分解等により当該反応生成物からはずし、目的とする反応生成物を、純度高く、効率良く得ることができる。一方、フッ素原子の特性を利用し、材料表面を高度にフッ素化することで撥水性、潤滑性などを付与できることが期待できる。しかし、いずれの場合にも高度にフッ素化する方法として、高度にフッ素化された基を導入する試剤が必要となる。
【0002】
【従来の技術】
医薬や食品添加物等の分野において、この魅力あるフルオラス合成の手法を用いた有機合成の種々の試みが為されてきたが、いまだ成果が得られていない。それは、上記した予め化合物Aに反応させる、高度にフッ素化された基を導入する試剤に、当該フルオラス合成を成功させるものが無いことによる。高度にフッ素化されたカルボン酸として、(Rf)3Si-C64-CO-OH 〔Rf:C1021(CH2)-、 C613(CH2)-〕(Journal of Organic Chemistry誌、62巻、2917頁、1997年参照)等があるが、いずれも、これらを当該フルオラス合成に高度にフッ素化された基を導入する試剤として用いる時、当該試剤と上記した化合物Aに付加する反応が困難であり、加えて当該試剤をもって付加した高度にフッ素化された基を、主反応の後に加水分解等により当該反応生成物からはずす操作が困難であるため、汎用性の高いフルオラス合成に利用できなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、かかる従来の問題に対応することである。即ち、フルオラス合成において上記した試剤を、化合物Aに付加する反応が困難であり、加えて付加した高度にフッ素化された基を、当該反応生成物からはずす操作が困難であるため、当該フルオラス合成に利用できなかった問題を解決することである。この課題は、上記した、当該反応生成物の反応系からの高い分離能を実現するものであり、また、有機化学反応でよく利用される、その単位プロセスで反応に係わらない官能基を保護する高度にフッ素化された保護基を実現するものである。また一つの本発明の課題は、高分子材料や天然素材の特異な表面修飾剤を、そして特異なフルオラス有機プロトン酸触媒を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明化合物を創出するとともに、本発明化合物を構成するメチレン基に、フルオラス合成における高度にフッ素化された基の導入と除去という上記した従来の問題を解決する効果があることを見出し、加えて充分なフッ素原子の導入にも成功し、本発明を完成させたのである。すなわち、本発明は、式[I](式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rは水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で表されることを特徴とする高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体とその製造法である。
【化8】
JP0003888914B2_000002t.gif【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
まず、中間体の製造法を説明する。
【0007】
式[II]
【化9】
JP0003888914B2_000003t.gif(式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基を、lは1~3の整数を、mは2または3を表す。)で表される中間体は、有機溶媒中、塩基存在下、アミノ酸エステルと、式[III]
【化10】
JP0003888914B2_000004t.gif(式中、Yはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、またはフッ素を除くハロゲンのいずれかを、Rfはパーフルオロアルキル基を、nは整数を表す。)で表されるパーフルオロアルキル誘導体とを反応させ製造する。
【0008】
原料となるアミノ酸エステルとしては、周知のアミノ酸エステルを用いることができる。アミノ酸としては、グリシン、L-アラニン、D-アラニン、β-アラニン、3-アミノプロピオン酸等のアミノカルボン酸を挙げることができる。エステル部分には、周知のカルボン酸の保護基を用いることができる。たとえば、メチルエステル、エチルエステル、第三ブチルエステルなどのアルキルエステル体、ベンジルエステル、p-メトキシベンジルエステル、p-ニトロベンジルエステルなどのアラルキルエステル体、フェニルエステル、ナフチルエステル、フェナシルエステルなどの芳香族エステルを挙げることができる。
【0009】
もう一方の原料となる式[III](式中、Yはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、またはフッ素を除くハロゲンのいずれかを、Rfはパーフルオロアルキル基を、nは整数を表す。)で表されるパーフルオロアルキル誘導体は周知の誘導体を使用できる。
【0010】
アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基としては周知のスルホニルオキシ基を使用できる。たとえば、p-トルエンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などのスルホニルオキシ基を挙げることができる。また、フッ素を除くハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素など周知のハロゲンを挙げることができる。
【0011】
パーフルオロアルキル基としては周知のパーフルオロアルキル基を用いることができる。たとえば、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロテトラデシル基などを挙げることができる。さらに、分岐構造や立体異性体の有無などを問わないことは言うまでもない。フッ素原子の導入率を高めるにはパーフルオロアルキル基は長鎖の方が有効である。しかし、通常取り扱いや入手の容易さを考慮し、炭素数3から16の範囲の誘導体を使用する。好ましくは炭素数5~10の範囲の誘導体である。
【0012】
パーフルオロアルキル基に結合しているメチレン鎖は何ら制限はなく、通常炭素数1~8のメチレン鎖である。特に、炭素数1~4のメチレン鎖が好ましい。
【0013】
有機溶媒としては、周知の溶媒を使用できる。ジクロロメタン、クロロホルム、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、エーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロカーボン(たとえば、フロリナートTMFC72)などを挙げることができる。また、これらの混合物や含水物、あるいは、不均一系での反応ができることは言うまでもない。
【0014】
塩基としては、何ら制限はない。たとえば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DBUなどの有機塩基、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基あるいは、ブチルリチウム、フェニルリチウムなどの有機金属化合物を挙げることができる。
【0015】
用いる両原料、塩基の当量数にも何ら制限はない。いずれか1成分か2成分を過剰に用いることもできる。アミノ酸エステルに1当量~15当量の範囲の塩基と式[III](式中、Yはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、またはフッ素を除くハロゲンのいずれかを、Rfはパーフルオロアルキル基を、nは整数を表す。)で表されるパーフルオロアルキル誘導体を用いる。通常、直接本発明化合物である高度にフッ素化されたカルボン酸のエステル誘導体と中間体の混合物として得られる。両者は、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどの通常の精製手段で容易に分離することができる。両者の生成比は個々の誘導体によって異なるとともに当量数に依存している。従って、中間体を優先的に製造することも、後述する本発明化合物である高度にフッ素化されたカルボン酸のエステル誘導体を優先的に製造することも可能であることは言うまでもない。
【0016】
反応時間、反応温度にも何ら制限はない。いずれも個々の誘導体によって異なり、また、塩基や溶媒によっても異なるが、通常、室温から溶媒の沸点までの範囲で、1時間から7日間の範囲である。
【0017】
次に中間体から本発明化合物である高度にフッ素化されたカルボン酸およびカルボン酸誘導体の製造法について述べる。
【0018】
有機溶媒中、塩基存在下、上記中間体に前述した式[III](式中、Yはアルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、またはフッ素を除くハロゲンのいずれかを、Rfはパーフルオロアルキル基を、nは整数を表す。)で示されるパーフルオロアルキル誘導体を反応させるか、もしくは式[IV]
【化11】
JP0003888914B2_000005t.gif(式中、Rfはパーフルオロアルキル基を、nは整数を表す。)で表されるパーフルオロアルキルカルボン酸、または式[V]
【化12】
JP0003888914B2_000006t.gif(式中、Rfはパーフルオロアルキル基を、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、l、m、n、pは整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示される高度にフッ素化されたカルボン酸を縮合させ、式[VI]
【化13】
JP0003888914B2_000007t.gif(式中、Rfはパーフルオロアルキル基を、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれかを、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、l、m、n、pは整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で表されるより高度にフッ素化させたカルボン酸誘導体(エステル体)を得たのち、エステル部分を常法に従いカルボン酸に変換し、高度にフッ素化されたカルボン酸を製造する。式[I](式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Rは水素、アルキル基、アラルキル基、アリール基のいずれか、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示される本発明化合物である高度にフッ素化されたカルボン酸およびカルボン酸誘導体は上記の方法で製造できる。
【0019】
式[III]で示されるパーフルオロアルキル誘導体、式[IV]で示されるパーフルオロアルキルカルボン酸のパーフルオロアルキル基としては、何ら制限はなく、前述のパーフルオロアルキル基を使用できる。
【0020】
メチレン鎖の長さnも何ら制限はなく、通常炭素数1~8のメチレン鎖である。特に、炭素数1~4のメチレン鎖が好ましい。
【0021】
アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基、フッ素を除くハロゲンについても前述と同様、何ら制限はない。
【0022】
式[III]で示されるパーフルオロアルキル誘導体を反応させる際の、有機溶媒、塩基についても、何ら制限はなく、具体的には、中間体の製造について述べた例と同じである。また、一度中間体を単離した後に反応させることも、前述したように二段階の反応を一挙に行うこともできることは言うまでもない。
【0023】
式[IV]あるいは式[V](式中、Rfはパーフルオロアルキル基を、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、l、m、n、pは整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示されるパーフルオロアルキルカルボン酸を、式[II]で示される中間体と反応させる方法についても何ら制限はない。反応させるパーフルオロカルボン酸を予め、酸ハロゲン化物、混合酸無水物、対称酸無水物、活性エステルに変換させて反応させる方法や、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)などの縮合試薬と直接反応させる方法が挙げられる。いずれの誘導体も周知の誘導体を利用できる。具体的には、酸塩化物、酸臭化物、ピバル酸混合酸無水物、ペンタフルオロフェニルエステル、p-ニトロフェニルエステル、コハク酸イミドエステルなど周知の誘導体を例示できる。また、縮合試薬としては前述のDCC、PyBOPTM(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)等を挙げることができる。上記の工程を繰り返すことにより、より高度にフッ素化されたカルボン酸を製造できる。繰り返し回数にも制限はないが、実質的には式[I]で示したpの値は0~4までが好ましく、さらに好ましくは0~2である。
【0024】
以上のようにして得られる本発明化合物である高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体(エステル体)は通常の方法でカルボン酸へ変換できる。具体的には、エステルの種類に依存する。たとえば、メチルエステル、エチルエステルなどの場合には、水酸化ナトリウム水溶液を用いる方法などアルカリ加水分解で、第三ブチルエステルの場合にはトリフルオロ酢酸などの酸分解で、ベンジルエステルなどの場合には接触水素化分解で行うことができる。
【0025】
こうして得られた本発明化合物であるカルボン酸誘導体はフルオラス合成に於ける目的化合物あるいは材料表面のアミノ基や官能基に高度にフッ素化されたアシル型保護基として導入できる。その導入は通常のアシル化の方法が適用できることは言うまでもない。本アシル基が導入された化合物はパーフルオロカーボン層へ抽出されやすくなり、精製操作が容易になる。式[I]で示される高度にフッ素化されたカルボン酸誘導体におけるpの値は本発明の大きな特徴であり、この価は、主反応生成物の分離能と、高度にフッ素化されたカルボン酸を産業界に供するその容易性とのバランスから定められる。特に、式[I]で示したpが0の誘導体でパーフルオロカーボン層への抽出効率が低い場合にはpが1または2の誘導体が有効である。また、水酸基に導入した本アシル基は、常法に従いナトリウムメトキシドや水酸化ナトリウムなどの塩基性条件下に容易に除去できる。従って、式[VII]
【化14】
JP0003888914B2_000008t.gif(式中、Rfは、炭素数5~10のパーフルオロアルキル基を、Xはカルボニル基あるいはメチレン基を、lは1~3の整数を、mは2または3を、nは1または2、pは0~4の整数を表し、Rf、X、m、nはその表示各位において同一である必要はない。)で示される高度にフッ素化されたアシル基を水酸基の保護基として使用する方法により、特にフルオラス合成における新規な保護基として実用性が高い。また、アミノ基に導入した本アシル基は塩酸や硫酸などの酸性条件下除去可能である。しかも、脱保護された後に本発明化合物もしくはその誘導体はパーフルオロカーボン層へ容易に抽出されるため、回収、再利用ができ、環境に優しい製造システムを確立できる。また、種々の材料表面にある水酸基、アミノ基などの官能基と反応させ、アシル型表面修飾基として導入すれば、撥水性、潤滑性の付与など表面特性改善などに応用できるなどその用途は極めて広い。この場合、式[I]で示したpの値が大きい方が有利になることは自明である。加えて、本発明化合物のみをフルオラス有機プロトン酸触媒として利用できることも言うまでもない。
【0026】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、その要旨を超えない限り、何ら制限を受けるものではない。
【0027】
【実施例1】
β-アラニン エチルエステル塩酸塩 (0.71 g, 4.64 mmol) と式[III](但し、RfはC817を、Yはp-トルエンスルホニルオキシ基を、nは2を示す。)で表されるパーフルオロ化合物 (6.02 g, 9.74 mmol) のプロピオニトリル (100 mL) 溶液に炭酸カリウム (3.84 g, 27.8 mmol) を加え、4日間加熱還流した。冷後、反応液を水中に加え、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : AcOEt = 8 : 1 ~ AcOEt)にて精製し、式[II](但し、RfはC817を、Rはエチル基、lは2を、mは3を示す。)で表される中間体(無色油状):1H-NMR (CDCl3):δ 1.27 (3H, t, J= 7.3 Hz), 1.77 (2H, m), 2.16 (2H, m), 2.50 (2H, t, J= 6.3 Hz), 2.70 (2H, t, J=6.8 Hz), 2.88 (2H, t, J=6.3 Hz), 4.15 (2H, q, J=7.3 Hz)を1.39 g(52 %)、および 式[I](但し、RfはC817を、Rはエチル基を、Xはメチレン基を、lは2を、mは3を、nは2、pは0を示す。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸のエチルエステル誘導体(無色油状):1H-NMR (CDCl3):δ 1.24 (3H, t, J= 7.1 Hz), 1.73 (4H, m), 2.11 (4H, m), 2.40 (2H, t, J= 6.6 Hz), 2.48 (4H, t, J=6.1 Hz), 2.76 (2H, t, J=6.6 Hz), 4.12 (2H, q, J=7.1 Hz) を1.34 g(28 %)得た。
【0028】
【実施例2】
実施例1で得た高度にフッ素化されたカルボン酸のエチルエステル誘導体(1.34 g, 1.29 mmol) のジオキサン (20 mL) 溶液に1M NaOH (10 mL) を加え、70 ℃で3時間撹拌した。冷後、2M HCl を加え、反応液の pH を3に調整し、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、目的とする式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはメチレン基を、lは2を、mは3を、nは2、pは0を示す。)で 表される高度にフッ素化されたカルボン酸(白色粉末):1H-NMR (CDCl3-CD3OD = 1 : 1):δ 2.01 (4H, m), 2.28 (4H, m), 2.70 (2H, t, J= 6.3 Hz), 3.04 (4H, t, J=7.9 Hz), 3.24 (2H, t, J=6.3 Hz)を1.22 g(94 %) 得た。
【0029】
【実施例3】
実施例1で調製した中間体 (0.74g, 1.29mmol) と式[IV](但し、RfはC817を、nは2を示す。)で表されるパーフルオロアルキルカルボン酸誘導体(0.74g, 1.29mmol)の無水ジクロロメタン (20 mL) 溶液にトリエチルアミン (0.54 mL, 3.86 mmol) と PyBOP (0.80g, 1.54 mmol) を順次加え、室温で3時間撹拌した。反応液に5% クエン酸溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : AcOEt = 4 : 1)にて精製し、式[I](但し、RfはC817を、Rはエチル基、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは0を示す。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸のエチルエステル誘導体(式[VIII]で示されるBfp-OHのエチルエステル)(無色油状):1H-NMR (CDCl3):δ 1.27 (3H, m), 1.87 (2H, m), 2.10 (2H, m), 2.61 (6H, m), 3.45 (2H, m), 3.64 (2H, m), 4.16 (2H, m)、 MALDI-TOF-MS: Calcd for C27H19F34NO3 (M+): 1051.1, Found: 1051. を1.27 g(93 %)得た。この高度にフッ素化されたカルボン酸エチルエステル(式[VIII]で示されるBfp-OHのエチルエステル) (1.26 g, 1.20 mmol) のジオキサン (20 mL) 溶液に1M NaOH (10 mL) を加え、70 ℃ で4時間撹拌した。冷後、2M HCl を加え、反応液の pH を3に調整し、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、高度にフッ素化されたカルボン酸(式[VIII]で示されるBfp-OH)(白色粉末):1H-NMR (CDCl3-CD3OD = 5 : 3)δ: 1.92 (2H, m), 2.15 (2H, m), 2.65 (6H, m), 3.49 (2H, m), 3.66 (2H, m). MALDI-TOF-MS: Calcd for C25H15F34NO3 (M+): 1023.1, Found: 1022.6. (1.21 g, 98 %) を得た。
【0030】
【実施例4】
【化15】
JP0003888914B2_000009t.gif化合物1 (1.05 g, 1.03 mmol) と式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは0を示す。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸 (式[VIII]で示されるBfp-OH)(124 mg, 0.29 mmol)の無水ジクロロメタン (10 mL) 溶液に4-ジメチルアミノピリジン (139 mg, 1.14 mmol)とDCC (353 mg, 1.71 mmol)を順次加え、室温で2時間撹拌した。反応液をトルエン (30 mL) と パーフルオロカーボン(フロリナートTMFC-72 )(30 mL) で分配抽出し、FC-72層を減圧濃縮して当該アシル基で水酸基を保護された式[VIII]の化合物2 (836 mg, 85 %) を得た。
【0031】
【実施例5】
化合物3 (43 mg, 12.1 mmol) のエーテル (2 mL) とメタノール (2 mL) 混合溶液に5.2 M NaOMe (20 μL) を加え、室温で1時間撹拌し脱保護した。アンバーライト(IR-120; H+ form) を加えて中和し、ろ過した。ろ液の減圧濃縮残渣をFC-72 (10 mL) と メタノール (10 mL) で分配抽出し、メタノール層を減圧濃縮して式[IX]で示される化合物4 (4.1 mg, 95 %) を得た。一方、FC-72層を減圧濃縮して式[I](但し、RfはC817を、Rはメチル基を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは0を示す。)で表される式[IX]の化合物5(Bfp-OMe) (35 mg, 92 %) を得た。
【化16】
JP0003888914B2_000010t.gif【0032】
【実施例6】
式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはカルボニル基を、lは2を,mは3,nは2、pは0を示す。)で示される高度にフッ素化されたカルボン酸 (0.74g, 1.29mmol) と式[II](但し、RfはC817を、lは2を,mは3を示す。)で表される中間体(10.0g, 9.8mmol)の無水ジクロロメタン (300 mL) 溶液にトリエチルアミン (4.1 mL, 29.3 mmol) と PyBOP (6.1g, 11.7 mmol) を順次加え、室温で3時間撹拌した。反応液に5% クエン酸溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : AcOEt = 3 : 2) にて精製し、式[I](但し、RfはC817を、Rはエチル基を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは1を示す。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸のエチルエステル(無色油状):1H-NMR (CDCl3):δ 1.26 (3H, t, J = 7.1 Hz), 1.87 (4H, m), 2.08 (4H, m), 2.58 (6H, m), 2.73 (2H, m), 3.45 (4H, m), 3.63 (4H, m), 4.14 (2H, q, J = 7.1 Hz). MALDI-TOF-MS: Calcd for C41H30F51N2O4 (M+H+): 1583.1, Found: 1581.6. を1.21 g(78 %)得た。得られた高度にフッ素化されたカルボン酸エチルエステル (5.20 g, 3.29 mmol) のジオキサン (70 mL) 溶液に1M NaOH (35 mL) を加え、50 ℃ で3時間撹拌した。冷後、2M HCl を加え、反応液の pH を3に調整し、酢酸エチル-EtOC4F9(1:2)の混合溶媒で3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは1を示す。)で示される高度にフッ素化されたカルボン酸(白色粉末)MALDI-TOF-MS: Calcd for C39H26F51N2O4 (M+H+): 1555.1, Found: 1553.2. (4.94 g, 97 %) を得た。
【0033】
【実施例7】
実施例6で得た式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは1を示す。)で示される高度にフッ素化されたカルボン酸 (0.76 g, 0.49 mmol) と式[II](但し、RfはC817を、lは2を,mは3を示す。)で表される中間体(0.28 g, 0.49 mmol)の無水ジクロロメタン (30 mL) 溶液にトリエチルアミン (0.2 mL, 1.47 mmol) と PyBOP (0.31 g, 0.59 mmol) を順次加え、室温で18時間撹拌した。反応液に5% クエン酸溶液を加え、酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (hexane : AcOEt = 1 : 1) にて精製し、式[I](但し、RfはC817を、Rはエチル基を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは2を示す。)で表される高度にフッ素化されたカルボン酸のエチルエステル(無色油状):1H-NMR (CDCl3):δ 1.26 (3H, m), 1.86 (6H, m), 2.09 (6H, m), 2.59 (6H, m), 2.73 (4H, m), 3.45 (6H, m), 3.65 (6H, m), 4.14 (2H, m). MALDI-TOF-MS: Calcd for C55H40F68N3O5 (M+H+): 2114.2, Found: 2112.2. を 0.52 g(50 %)得た。得られた高度にフッ素化されたカルボン酸エチルエステル(388 mg, 0.16 mmol)のジオキサン(3.5 mL)溶液に1M NaOH (1.8 mL) を加え、70 ℃ で3時間撹拌した。冷後、2M HCl を加え、反応液の pH を3に調整し、EtOC4F9で3回抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去し、式[I](但し、RfはC817を、Rは水素を、Xはカルボニル基を、lは2を、mは3を、nは2、pは2を示す。)で示される高度にフッ素化されたカルボン酸(白色粉末)MALDI-TOF-MS: Calcd for C53H35F68N3NaO5 (M+Na+): 2108.1, Found: 2106.9. (226 mg, 75 %)を得た。
【0034】
【発明の効果】
本発明化合物を用いるフルオラス合成が、医薬や食品添加物、化粧品、液晶、電子材料、高分子材料モノマー、機能性材料、医療材料などのファインケミカルズの製造、ペプチド、糖鎖、核酸などの複雑な天然物やそのアナローグの製造を容易にすることは確実である。また、フルオラスプロトン酸触媒や材料表面の改質剤などとしても利用可能であり、本発明化合物の工業的価値や波及効果は極めて大である。