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明細書 :人の歩行速度の計測方法および装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4524379号 (P4524379)
公開番号 特開2006-145240 (P2006-145240A)
登録日 平成22年6月11日(2010.6.11)
発行日 平成22年8月18日(2010.8.18)
公開日 平成18年6月8日(2006.6.8)
発明の名称または考案の名称 人の歩行速度の計測方法および装置
国際特許分類 G01P   3/50        (2006.01)
FI G01P 3/50 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2004-332026 (P2004-332026)
出願日 平成16年11月16日(2004.11.16)
審査請求日 平成19年11月13日(2007.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】杉本 隆夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100062421、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弘明
【識別番号】100068423、【弁理士】、【氏名又は名称】矢葺 知之
【識別番号】100080171、【弁理士】、【氏名又は名称】津波古 繁夫
審査官 【審査官】大谷 純
参考文献・文献 特開2004-069468(JP,A)
特開2004-261555(JP,A)
特開昭62-229075(JP,A)
調査した分野 G01P 3/00- 3/80
G01C 22/00
G01D 5/12
特許請求の範囲 【請求項1】
両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から、両脚の交差する速度を演算して人の歩行速度を計測する方法において、事前にその人の交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線、ならびに磁界発生手段を固定して磁界検出手段を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしたときに得られる測定系の強度分布を求めておき、実際に磁界発生手段と磁界検出手段を装着してその人の歩行速度を計測する段階においては、歩行に伴い検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから交差速度を演算するとともに、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを特徴とする人の歩行速度の計測方法。

【請求項2】
前記磁界発生手段が、磁界の方向を磁界検出手段の有効感度方向に向けた送信コイルであり、前記送信コイルに交流電圧を印加して交流磁場を発生させ、対向する受信コイルで前記交流磁場を検出することを特徴とする請求項1に記載の人の歩行速度の計測方法。

【請求項3】
両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から、両脚の交差する速度を演算して人の歩行速度を計測する装置において、事前にその人の交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線、ならびに磁界発生手段を固定して磁界検出手段を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしたときに得られる測定系の強度分布を求めておき、実際に磁界発生手段と磁界検出手段を装着してその人の歩行速度を計測する段階においては、歩行に伴い検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから交差速度を演算するとともに、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを特徴とする人の歩行速度の計測装置。

【請求項4】
前記磁界発生手段が、磁界の方向を磁界検出手段の有効感度方向に向けた送信コイルであり、前記送信コイルに交流電圧を印加して交流磁場を発生させ、対向する受信コイルで前記交流磁場を検出することを特徴とする請求項3に記載の人の歩行速度の計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、人の歩行速度を計測する方法および装置、特に、両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段たる送信コイルを、もう片方に磁界を検出する受信コイルを各々が対向するように装着し、歩行時に検出される磁界の強度を測定することにより、時々刻々と変化する歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することのできる人の歩行速度の計測方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている人の歩行速度を計測する方法としては、万歩計(登録商標)に歩幅を入力し、カウントされた歩数と入力した歩幅の積を演算して歩行距離を求め、これを歩行時間で除算するか、あるいは歩行距離が既知である場合には、それに要した時間で除算して求める方法があるが、いずれの方法においても時々刻々と変化する人の歩行速度を直接的に計測することはできなかった。同様に、時々刻々と変化する人の歩行速度をリアルタイムで計測することはできなかった。
また、近年においては、両脚の片方に磁界発生手段を、もう片方に前記磁界発生手段からの磁界を検出する検出手段を装着して、当該検出データに基づいて両脚が交差するときの交差速度を演算し、人の歩行速度を計測する装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、当該文献においては、時々刻々と変化する歩行速度を計測することができるとしているが、両脚の交差速度と人の歩行速度とはまったく別の速度であるにも拘らず、両者を同一のものと捉えているように記載されている。したがって、当該文献において記載されている事項は交差速度の導出方法に留まり、歩行速度の導出方法については実質的に開示されていない。

【特許文献1】特開2004-69468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決すべき課題は、交差速度と歩行速度との関係を明らかにし、時々刻々と変化する人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することのできる人の歩行速度の計測方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、まず、数十名の被験者にトレッドミルを使用して歩行運動を行わせたときの撮像画像を映像解析することによって、人が歩行するときの体の部位の動き、特に脚の動きや歩行速度を計測する実験を数多く行った結果、以下の知見を得た。
(A)映像解析によって算出した両脚が交差するときの速度と、トレッドミルが示す歩行速度との間には密接な相関関係があること。例えば、図1は3名の被験者(身長が160~183cm)にそれぞれトレッドミルを用いて時速1~4.5kmの歩行運動を行わせたときの両脚が交差する速度とトレッドミルが示した歩行速度をプロットし、これらの関係について最小二乗法による回帰直線を求めたものであり、この図からも交差速度と歩行速度との間には密接な相関関係があることがわかる。なお、交差速度については、撮像したビデオ画像をコマ送り再生することによって、右脚のつま先が左脚つま先の後方15cmから前方15cmに到るまでに要した時間、すなわち右脚が30cm移動するのに要した時間を測定し、これに基づいて算出している。
【0005】
(B)また、図1においては、前記したように右脚のつま先が左脚つま先の後方15cmから前方15cmに到るまでの区間における交差速度と歩行速度との関係を例示したが、前記した相関関係が成立するのはこの範囲に限定されるものではなく、右脚のつま先が左脚つま先の後方20cmから前方20cmに到るまでの区間においては、前記した相関関係が成立すること。
(C)さらに、図1に示すように相関速度と歩行速度との関係を示す回帰直線は被験者ごとに異なること。
(D)以上のように個人差はあるものの、同一人ならば交差速度と歩行速度との間には密接な相関関係があるので、歩行に伴って時々刻々と変化する交差速度を求めることができれば、これをあらかじめ求めておいた回帰直線に入力することにより、時々刻々と変化する人の歩行速度をリアルタイムで計測することができること。
【0006】
次に、本発明者は、交差速度を求める方法について種々の検討を行った結果、両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から交差速度を演算することができるという知見を得た。その原理は以下の通りである。
(E)図2(a)に示すように磁界発生手段を固定して、磁界検出手段を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしていくと、図2(b)に示す測定系の強度分布が得られるが、本発明は、事前に測定系の強度分布を求めておき、実際に両脚の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着して歩行したときに検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから、進行方向における両脚間の距離ひいては交差速度を演算するものである。例えば、図3(a)については、当該測定系において磁界検出手段の出力Voutが47Vになるということは、コイル間の距離Xが±15cmを意味することから、図3(a)に示した時間Tにおいて片方の脚がもう片方の脚の後方15cmから前方15cmに移動したことを示している。すなわち、所定の計時手段によって30cm移動するのに要した時間Tを測定することにより、当該区間における両脚の交差速度(=30cm/T)を演算することができる。また、図3(b)または(c)については磁界検出手段の出力Voutがピーク値になるということはコイル間の距離Xが0cmを意味することから、図3(b)に示した時間Tにおいて片方の脚が15cm移動して両脚が揃ったことを示している。同様に、図3(c)に示した時間Tにおいて両脚が揃った状態から片方の脚が15cm移動したことを示している。すなわち、所定の計時手段によって15cm移動するのに要した時間Tを測定することにより、当該区間における両脚の交差速度(=15cm/T)を演算することができる。
【0007】
上記の知見に基づき、本発明者は、従来技術では実現不可能であった時々刻々と変化する歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することのできる人の歩行速度の計測方法および装置に想到した。その要旨とするところは以下の通りである。
【0008】
(1)両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から、両脚の交差する速度を演算して人の歩行速度を計測する方法において、事前にその人の交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線、ならびに磁界発生手段を固定して磁界検出手段を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしたときに得られる測定系の強度分布を求めておき、実際に磁界発生手段と磁界検出手段を装着してその人の歩行速度を計測する段階においては、歩行に伴い検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから交差速度を演算するとともに、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを特徴とする人の歩行速度の計測方法。
【0009】
(2)前記磁界発生手段が、磁界の方向を磁界検出手段の有効感度方向に向けた送信コイルであり、前記送信コイルに交流電圧を印加して交流磁場を発生させ、対向する受信コイルで前記交流磁場を検出することを特徴とする前記(1)に記載の人の歩行速度の計測方法。
【0010】
(3)両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段を、もう片方に磁界検出手段を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から、両脚の交差する速度を演算して人の歩行速度を計測する装置において、事前にその人の交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線、ならびに磁界発生手段を固定して磁界検出手段を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしたときに得られる測定系の強度分布を求めておき、実際に磁界発生手段と磁界検出手段を装着してその人の歩行速度を計測する段階においては、歩行に伴い検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから交差速度を演算するとともに、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを特徴とする人の歩行速度の計測装置。
【0011】
(4)前記磁界発生手段が、磁界の方向を磁界検出手段の有効感度方向に向けた送信コイルであり、前記送信コイルに交流電圧を印加して交流磁場を発生させ、対向する受信コイルで前記交流磁場を検出することを特徴とする前記(3)に記載の人の歩行速度の計測装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来技術では実現不可能であった時々刻々と変化する歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することができる。このため、本発明に係る計測方法および装置をマラソンに代表される陸上競技のトレーニングに適用すれば、自己の歩行速度または走行速度を間接的方法によらず競技者自らが確認することができるので、効率的なトレーニングを行うことができる。
【0013】
また、近年においては健康維持のため、あるいはリハビリのためにウォーキングを行う者が増加しているが、このような場合においては運動者個々人の身体能力に応じた歩行速度で歩行することが必要となるところ、本発明によれば、運動者自らが自己の歩行速度を確認することができるので、安全かつ効率的なリハビリを行うことができる。
【0014】
さらには、心臓病患者の心機能の診断やリハビリ効果の判定のために、日常生活における運動量を無拘束で求める研究が盛んに行われているところ、本発明によれば時々刻々と変化する人の歩行速度をリアルタイムで計測することができるので、これらの分野で応用されることが期待される。特に、歩行による消費エネルギーの推定精度を向上させることが期待される。
【0015】
なお、磁石を用いて直流磁場を生成する場合、生成できる磁場強度には限界があるので、地磁気や地下鉄等からのノイズを受け易く、しかもこのような磁場をシールドすることは一般に困難である。したがって、交流磁場を用いる本発明は耐ノイズ性において従来技術と比較した有利な効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1~図4を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。図1は本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、歩行速度と交差速度との関係を示す図である。図2も本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、(a)は測定系の強度分布を事前に求めるための測定図、(b)は得られた測定系の強度分布を示す図である。図3も本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、(a)~(c)は交差速度の演算方法を示す例である。図4は本発明に係る歩行速度の検出装置の一例を示すブロック図である。
【0017】
本発明は、両脚(履物を含む)の片方に磁界発生手段1を、もう片方に磁界検出手段4を装着し、人が歩行するときに検出される磁界の強度から、両脚の交差する速度を演算して人の歩行速度を計測するものであり、(1)事前にその人の交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線、ならびに(2)磁界発生手段1を固定して磁界検出手段4を磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしたときに得られる測定系の強度分布を求めておき、実際に磁界発生手段1と磁界検出手段4を装着してその人の歩行速度を計測する段階においては、(3)歩行に伴い検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから交差速度を演算するとともに、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを可能とするものである。
以下、(1)事前に交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線を求める方法、(2)おなじく事前に測定系の強度分布を求める方法、および(3)これら事前に求めた回帰直線や測定系の強度分布を利用して人の歩行速度を計測する方法について順を追って説明する。
【0018】
交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線を求める方法については特に限定されるものではないが、交差速度および歩行速度については基本的に人が歩行運動をすることによって得られるため、前記したように被験者がトレッドミルを使用して歩行運動するときの映像を撮像し、撮像した画像から交差速度を、また、トレッドミルの速度指示値から歩行速度を得ることが望ましい。
なお、この方法によれば、撮像したビデオ画像をコマ送り再生したときの脚の移動距離を測定することによって交差速度を容易に求めることができる。例えば、図1は右脚のつま先に注目して、これが左脚つま先の後方15cmから前方15cmに到るまでに要した時間、すなわち右脚が30cm移動するのに要した時間Tを測定することによって交差速度(=30cm/T)を算出したものである。なお、図1においては、両脚のつま先に注目して交差速度を算出したが、これは実際に磁界発生手段1と磁界検出手段4を装着してその人の歩行速度を計測する段階において、その人の両脚の片方のつま先の部分に磁界発生手段1を、もう片方のつま先の部分に磁界検出手段4を装着して、歩行速度を計測する測定系であったためである。したがって、事前に交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線を求める段階においては、実際に磁界発生手段1や磁界検出手段4を装着する部分に注目して、交差速度を求めることが望ましい。
また、交差速度と歩行速度との関係を示す回帰直線については、最小二乗法による方法が望ましい。
【0019】
さらに、図1に示すように相関速度と歩行速度との関係を示す回帰直線は被験者ごとに異なるので、その人固有の回帰直線を求めておくことが望ましい。なお、図1は、被験者にトレッドミルを用いて時速1~4.5kmの歩行運動を行わせたときの両脚が交差する速度とトレッドミルの速度指示値が示した歩行速度をプロットし、これらの関係について最小二乗法による回帰直線を求めたものであるが、歩行速度の範囲についてはこの範囲に限定されるものではなく、想定される範囲、例えば、被験者が時速10kmで歩行または走行することが想定される場合には、当該想定される範囲における相関速度と歩行速度との関係を示すデータを取得し、取得したデータに基づいて回帰直線を求めておくことが望ましい。
【0020】
事前に測定系の強度分布を求める方法についても特に限定されるものではなく、使用する磁界発生手段1と磁界検出手段4を所定の位置に配置した場合に、当該磁界検出手段4はこれこれの強度を出力するという特性が明確になってさえすればよい。例えば、図2(a)は測定系の強度分布を求めるための測定図であるが、これは送信コイル3と受信コイル5を磁界方向に15cm離した状態で、コイル間の距離Xを磁界と垂直方向であって両脚に装着したときに進行方向となる方向にシフトしていったときに得られる測定系の強度分布を計測するものである。図2(b)はその結果をプロットしたものであり、この測定系ではコイル間の距離Xが±15cmで約47V、コイル間の距離Xが0cmで約55Vの強度を出力するという特性が判る。換言すると、当該測定系を被験者の両脚に装着して歩行させたとき、約47Vの出力を得たという情報から、その瞬間の両脚間の距離が15cmであるという情報を得ることができる。なお、送信コイル3と受信コイル5を磁界方向に15cm離した理由は、被験者が歩行運動するときの両脚間の距離が15cmであったことに基づく。したがって、両脚間の距離等、被験者個々人の歩行特性に基づいて測定系の強度分布を求めることが望ましい。
【0021】
すなわち、本発明は、事前に測定系の強度分布を求めておき、実際に両脚の片方に磁界発生手段1を、もう片方に磁界検出手段4を装着して歩行したときに検出される磁界の強度と事前に求めた測定系の強度分布とから、進行方向における両脚間の距離ひいては交差速度を演算し、演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力することによって、時々刻々と変化するその人の歩行速度を直接かつリアルタイムで計測することを可能とするものである。
例えば、図3(a)については、当該測定系において磁界検出手段4の出力Voutが47Vになるということは、コイル間の距離Xが±15cmを意味することから、図3(a)に示した時間Tにおいて片方の脚がもう片方の脚の後方15cmから前方15cmに移動したことを示している。すなわち、所定の計時手段によって30cm移動するのに要した時間Tを測定することにより、当該区間における両脚の交差速度(=30cm/T)を演算することができる。したがって、当該演算した交差速度を事前に求めたその人固有の回帰直線に入力すれば、その人の歩行速度を計測することができる。
【0022】
また、図3(b)または(c)については磁界検出手段4の出力Voutがピーク値になるということはコイル間の距離Xが0cmを意味することから、図3(b)に示した時間Tにおいて片方の脚が15cm移動して両脚が揃った状態を示し、同様に、図3(c)に示した時間Tにおいて両脚が揃った状態から片方の脚が15cm移動したことを示している。すなわち、所定の計時手段によって15cm移動するのに要した時間Tを測定することにより、当該区間における両脚の交差速度(=15cm/T)を演算することができる。
【0023】
なお、所定の計時手段としては特に限定されるものではなく、図3(a)~(c)に示した時間T、すなわち、測定系の出力Voutが所定の検出しきい値を越えている時間、あるいは、所定の検出しきい値とピーク間の時間を計測できるものであればよい。例えば、図4のブロック図に示すように、クロック発振器により所定の周波数のパルスを発生させておき、測定系の出力Voutが所定の検出しきい値を越えている期間内に発生したパルスをカウントすることにより、当該時間Tを計測することができる。
【0024】
実際に磁界発生手段1と磁界検出手段4を装着してその人の歩行速度を計測するに際しては、測定精度を向上させるために、生成する磁界の向きが磁界検出手段4の有効感度方向に向くように磁界発生手段1を装着することが望ましい。
また、磁界発生手段1に磁石を用いて直流磁場を生成する場合、生成できる磁場強度には限界があるので、地磁気や地下鉄等からのノイズを受け易く、しかもこのような磁場をシールドすることは一般に困難であるため、交流磁場を用いることが望ましい。すなわち、磁界発生手段1としては、図4に示すように発振器2と送信コイル3により構成することが望ましい。この場合、送信コイル3は特に限定されるものではないが、脚あるいは履物への装着性の観点から、コイルの直径については20~100mmのものが望ましい。
磁界検出手段4としては、特に限定されるものではなく、前記方法により発生した交流磁場を検出できるものであればよい。例えば、図4に示すように受信コイル5とアンプ6によって構成してもよいし、ホール素子とアンプ6によって構成してもよい。なお、図1~図4に示した送信コイル3および受信コイル5は、直径が36mm、軸方向の長さが6mm、100巻きのコイルを使用している。また、同じく図1~図4に示した発振器2の周波数は100KHz、受信コイル5の出力を増幅するアンプ6の増幅度は60dBの設定をしている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、歩行速度と交差速度との関係を示す図である。
【図2】本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、(a)は測定系の強度分布を事前に求めるための測定図、(b)は得られた測定系の強度分布を示す図である。
【図3】本発明に係る測定原理の1つを説明する図であり、(a)~(c)は交差速度の演算方法を示す例である。
【図4】本発明に係る歩行速度の検出装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0026】
1 磁界発生手段
2 発振器
3 送信コイル
4 磁界検出手段
5 受信コイル
6 アンプ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3