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明細書 :木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及び製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4798477号 (P4798477)
公開番号 特開2006-063310 (P2006-063310A)
登録日 平成23年8月12日(2011.8.12)
発行日 平成23年10月19日(2011.10.19)
公開日 平成18年3月9日(2006.3.9)
発明の名称または考案の名称 木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及び製造装置
国際特許分類 C10G   1/00        (2006.01)
B09B   3/00        (2006.01)
C10L   1/00        (2006.01)
FI C10G 1/00 ZABC
C10G 1/00 H
B09B 3/00 304Z
B09B 3/00 Z
B09B 3/00 302Z
C10L 1/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 11
出願番号 特願2005-061837 (P2005-061837)
出願日 平成17年3月7日(2005.3.7)
優先権出願番号 2004218062
優先日 平成16年7月27日(2004.7.27)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年3月7日(2008.3.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】平野 勝巳
【氏名】菅野 元行
【氏名】真下 清
【氏名】阿部 真悟
【氏名】金子 晴美
【氏名】高木 裕和
個別代理人の代理人 【識別番号】110000774、【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
【識別番号】100090941、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清也
【識別番号】100076244、【弁理士】、【氏名又は名称】藤野 清規
【識別番号】100113837、【弁理士】、【氏名又は名称】吉見 京子
【識別番号】100133905、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 良夫
【識別番号】100127421、【弁理士】、【氏名又は名称】後藤 さなえ
審査官 【審査官】牟田 博一
参考文献・文献 特開2004-010629(JP,A)
特開平09-029202(JP,A)
阿部 真悟 外7名,木質バイオマスの直接液化反応機構,日本エネルギー学会大会講演要旨集,2003年,12th,pp.176-177
調査した分野 C10G 1/00
B09B 3/00
C10L 1/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)木質バイオマスからなる供試材を常圧沸点300℃以上の重油留分である有機溶媒と混合し、熱分解が行われる温度及び圧力で液化処理する工程と、
(B)(A)の工程により生じた該供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由来の液体燃料を得る分離工程と
を含むことを特徴とする木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項2】
上記木質バイオマス由来の液体燃料の一部を自家溶媒として循環使用することで、木質バイオマスを継続して液化することを特徴とする請求項1に記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項3】
上記液化工程(A)において、用いる有機溶媒が該供試材の1重量倍以上10重量倍以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項4】
供試材に用いる木質バイオマスが木質系産業廃棄物である請求項1~のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項5】
供試材の水分含有率が10重量%以下である請求項1~のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項6】
供試材に用いる木質バイオマスを破砕処理する工程をさらに含む請求項1~のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項7】
上記液化工程(A)において、加熱温度を250℃~400℃に調整することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項8】
上記液化工程(A)において、圧力を大気圧以上15気圧未満に調整することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかの製造方法に使用する木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置であって、
(A)該供試材に有機溶媒を混合する混合槽と、
(B)該混合物を熱分解が生じる温度で加熱処理する液化工程を行う反応槽と、
(C)加熱により生じた上記供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由来の液体燃料を得る分離工程を行う分離槽と、
(D)木質バイオマス由来の液体燃料の一部を自家溶媒として、上記混合層に循環する循環経路と
を具備する木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置。
【請求項10】
木質バイオマスを破砕処理して、該木質バイオマス由来の供試材を得る破砕工程を行う破砕槽を具備する請求項に記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及び製造装置に関するものである

【背景技術】
【0002】
バイオマスは、水や二酸化炭素等の無機物が太陽エネルギーを用いて光合成により生物
体等の有機物に変換されたものとして定義される。これらのバイオマスは、枯死後再び生
物化学的に無機物に分解されるため持続的にリサイクルすることが可能で、カーボンニュ
ートラルの炭化水素資源であることから、環境調和型エネルギー資源として注目されてい
る。しかし、木質バイオマスとして知られる建築廃材や梱包材、間伐材や製材屑は、多量
に排出されているにも関わらず、一部が燃料チップ等として利用される以外は主に焼却処
分され、ほとんどリサイクルされていないのが現状である。
【0003】
木質バイオマスをエネルギー資源としてリサイクルするにあたり、木質バイオマスは高
含水率で単位発熱量が低く、不均質な固体であるためハンドリング性が悪いという問題が
ある。また木質バイオマスを高温高圧で反応させ、ガス化して水素を回収する方法や、長
時間発酵させてアルコールを製造する方法が研究されているが、小規模な事業所、工場等
ではこれらの水素やアルコールを燃料として利用できず有用性が低いという問題がある。
【0004】
木質バイオマスが排出される小規模な事業所、工場では、小規模で温和な運転条件の装
置を用いて、排出された木質バイオマスをエネルギー資源としてリサイクルし、必要量の
燃料を製造し、エネルギー自給型工場を構築することが望ましい。このためには、木質バ
イオマスから灯油・軽油~重油留分を得る直接液化法が最適である。従来の直接液化法と
しては、水を溶媒とし、アルカリを触媒とし、300℃約100気圧という高圧な反応条
件下で行う方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような液化方法は高
圧となることから危険性が高く、またマレイン酸等の有機酸が副産物として得られるとい
う問題があった。そこで、温和な反応条件で、安全性が高く、簡便な工程で効率的に灯油
・軽油~重油留分が得られるエネルギー変換技術の開発が望まれている。

【非特許文献1】美濃輪 智朗,日エネ誌,78,252,1999
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、安全性が高く、簡便で効率的な木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及
び製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、溶媒として水ではな
く有機溶媒を用いることにより、温和な反応条件で効率的に灯油・軽油~重油留分が得ら
れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の有機溶媒を用いる直接液化法は、低圧で温和な反応条件を可能にするとともに
、有機酸が副産物として製造されず、非常にクリーンな方法である。また、得られた液体
燃料を自家溶媒として循環使用することにより、さらに効率的に反応を継続できるという
利点がある。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0008】
(1)(A)木質バイオマスからなる供試材を有機溶媒と混合し、熱分解が行われる温度
及び圧力で液化する工程と、
(B)(A)の工程により生じた該供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由
来の液体燃料を得る分離工程と
を含むことを特徴とする木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
(2)上記木質バイオマス由来の液体燃料の一部を自家溶媒として循環使用することで、
木質バイオマスを継続して液化することを特徴とする請求項1に記載の木質バイオマス由
来の液体燃料の製造方法。
(3)上記液化工程(A)において、用いる有機溶媒が該供試材の1重量倍以上10重量
倍以下であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の木質バイオマス由来の液
体燃料の製造方法。
(4)上記液化工程(A)において、用いる有機溶媒が常圧沸点300℃以上の重油留分
であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液
体燃料の製造方法。
(5)供試材に用いる木質バイオマスが木質系産業廃棄物である上記(1)~(4)のい
ずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
(6)供試材の水分含有率が10重量%以下である上記(1)~(5)のいずれかに記載
の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
(7)供試材に用いる木質バイオマスを破砕処理する工程をさらに含む上記(1)~(6
)のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法。
(8)上記液化工程(A)において、加熱温度を250℃~400℃に調整することを特
徴とする上記(1)~(7)のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方
法。
(9)上記液化工程(A)において、圧力を大気圧以上15気圧未満に調整することを特
徴とする上記(1)~(8)のいずれかに記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方
法。
(10)(A)該供試材に有機溶媒を混合する混合槽と、
(B)該混合物を熱分解が生じる温度で加熱処理する液化工程を行う反応槽と、
(C)加熱により生じた上記供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由来の
液体燃料を得る分離工程を行う分離槽と、
(D)木質バイオマス由来の液体燃料の一部を自家溶媒として、上記混合層に循
環する循環経路とを具備する木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置。
(11)木質バイオマスを破砕処理して、該木質バイオマス由来の供試材を得る破砕工程
を行う破砕槽を具備する上記(10)に記載の木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置

【発明の効果】
【0009】
本発明の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及び製造装置は、低圧で温和な反応
条件で灯油・軽油~重油留分を得ることができる。さらに得られた液体燃料を自家溶媒と
して循環使用することで、効率的に液化を継続できる。この利点を生かし、小規模なエネ
ルギー自給型工場等の構築に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の木質バイオマスには、草、廃木材、間伐材、大鋸屑、燃料チップ等が含まれ、
トマトやトウモロコシ等の農作物収穫後の廃木等も挙げることができる。スギ等の建築廃
材も用いることができ、建築用の塩化ビニル等を含む壁紙、石膏、セメント、塗料、接着
剤、防腐剤などの不純物が付着したものでも良い。いずれの木質バイオマスも本発明の原
料として用いることができるが、特に乾燥して水分含量が低いものが好ましい。
【0011】
本発明の木質バイオマスは、有機溶剤を含むスラリーとして該装置中を移送できるよう
に、あらかじめタワーミル(日本アイリッヒ株式会社製 NE010等)等で粉砕したも
のを用いることができる。粉砕した試料は、さらに乾燥したものが望ましく、水分含有量
が10重量%以下の供試材を用いることができる。
【0012】
本発明では木質バイオマスを液化する液化溶媒として有機溶媒が用いられる。本発明の
有機溶媒としてはアントラセン、ナフタレン、テトラリン等を用いることができ、液化に
より生成した液体燃料のうち灯油・軽油等の必要な留分を除いた重油留分等の一部を自家
溶媒として用いることもできる。本発明で自家溶媒とは、木質バイオマスから生成した液
体燃料またはその一部の意味で用いる。自家溶媒は、原料との親和性が高く、液体燃料の
収率を高めることができる。さらに、自家溶媒の循環使用によって、外部からの有機溶媒
の添加がなくても、液体燃料を繰り返し合成することができるようになる。液化工程の最
初に加える有機溶媒は、いずれの有機溶媒でも良いが、常圧沸点が300℃以上の重油留
分が好ましく、例えばアントラセン等が挙げられる。
【0013】
本発明は液化溶媒として沸点が高い有機溶媒や自家溶媒を用いることにより、主に熱分
解反応によって液化が行われ、液化工程でも低圧が保たれる。さらに液化溶媒として水を
用いない為、有機酸類を含まない質の高い液体燃料が得られ、一酸化炭素、二酸化炭素等
の大気中に排出できる無機ガスのみが生成されるため、安全性が高い。一方で、従来から
知られている水を液化溶媒として用いた方法では、熱分解と加水分解により液化が行われ
る。水は沸点が低く、高温の液化工程で水蒸気となる為、高圧の原因となる。さらに加水
分解により生成した有機酸類を含む質の低い液体燃料が得られるという問題があった。
【0014】
本発明の供試材と有機溶媒の混合割合としては、スラリーとして該装置中を移送できる
程度の流動性があれば良く、1:1~1:10などの割合が好ましい。液化工程は電磁誘
導攪拌式オートクレーブ(鈴木理化学製作所製 SUS316)等の高温高圧の耐圧器中
で実施することができる。供試材と有機溶媒の混合物を耐圧器中に挿入して密閉し、窒素
ガスまたは水素ガスで置換し、さらにこのガスを0.1~3.0MPaまで充填して初圧
を設定した後、外部電気炉(鈴木理化学製作所製等)等で所定温度(250℃~400℃
)に加熱し、昇温から所定温度まで内容物に対して水平攪拌を行い、所定温度に到達後直
ちに常温まで空冷することで液化工程を実施することができる。本発明の液化工程の条件
は、反応温度が250℃~400℃であれば良く、特に収率が高い350℃~400℃が
好ましい。また、反応圧力は15気圧未満が好ましい。
【0015】
本発明の木質バイオマス由来の液体燃料の製造は、温度及び圧力、溶媒量等の反応条件
によって適宜実施することができる。本発明の対象である自給型エネルギー工場等の構築
においては、必要なエネルギーを得る石油の2重量倍以上の木質バイオマスを用い、連続
装置で必要量の液体燃料を得ることができる。さらに得られた残渣は難分解性のリグニン
が軽度に分解した成分が主であるため、供試材として再度液化工程のサイクルに加えるか
、石油製品の原材料とすることができる。また、液化工程によって生成されるガスは一酸
化炭素や二酸化炭素が主成分である為、そのまま廃棄することができる。本発明により得
られた木質バイオマス由来の液体燃料は、ガソリン、石油、灯油等の油として、石油製品
の原材料として利用できる。
【0016】
本発明の木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置は、(A)木質バイオマスを破砕処
理して、該木質バイオマス由来の供試材を得る破砕工程を行う破砕槽と、(B)該供試材
に有機溶媒を混合する混合槽と、(C)該混合物を熱分解が生じる温度で加熱処理する液
化工程を行う反応槽と、(D)加熱により生じた上記供試材の分解物を分離して、木質バ
イオマス由来の液体燃料を得る分離工程を行う分離槽と、(E)木質バイオマス由来の液
体燃料の一部を自家溶媒として、上記混合槽に循環する循環経路とを具備する製造装置で
あれば良く、市販のタワーミル(日本アイリッヒ株式会社製 NE010等)、電磁誘導
攪拌式オートクレーブ(鈴木理化学製作所製 SUS316)等の高温高圧の耐圧器等を
組み合わせることもできる。また、本発明によれば、圧力が15気圧未満で液化処理する
工程を実施できることから、高級材料を使うことなく装置材料上有利に製造装置を得るこ
とができる。
【0017】
以下、本発明の詳細を実施例にて示すが本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0018】
木質バイオマス由来の液体燃料の製造
スギ200gと、直径6mmの鉄球約10kgを粉砕媒体としてタワーミル(日本アイ
リッヒ株式会社製 NE010)に装入し、回転数500rpmで1時間大気下乾式粉砕
した。得られたスギの粉砕試料を110℃で3時間減圧乾燥してそれぞれ供試材とした。
上記で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0gを混合
し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガスで置換
した。窒素ガスを0.1MPaまで充填して初圧を設定した後、内容物を外部電気炉(鈴
木理化学製作所製)で300℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から300℃に達す
るまで内容物に対して水平攪拌を行い、300℃に到達後直ちに室温まで空冷した。反応
後、生成ガス(Gas)はテドラーバッグに全量捕集し、ガスクロマトグラフィー(島津
製作所製 GC-9A)にて組成割合が既知の混合標準ガス(日本酸素株式会社製)を用
い絶対検量線法によって定量することで、組成分析を行った。内容物はアセトンに可溶な
フラクション(以下、ASまたはWIAS:液体燃料と略す)とアセトンに不溶なフラク
ション(以下、AIまたはWIAI:残渣と略す)に分別した。なお、水以外の沸点成分
が生成しない場合はこのように分離することができるが、水と同等の沸点成分が生成した
場合には、アセトン抽出の前に、蒸留後同留分を静置することによって油水分離(水抽出
,WIとも示す)を行うこともできる。供試材あたりの各生成物収率を算出して、さらに
、AS、AIの元素分析をJIS-M-8812に準拠した灰分率の測定及びJIS-M
-8813に準拠した炭素、水素、窒素含有率の測定によって行い、反応前後の元素組成
差から水収率(H2O)を算出した。なお、本発明における水収率とは、供試材の水素及
び酸素重量と、各生成物の水素及び酸素重量の合計との差分を水と仮定して算出したもの
である。結果を実施例2、比較例1、比較例2ともに表1に示す。
【実施例2】
【0019】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0g
を混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガス
で置換した。窒素ガスを3.0MPaまで充填し、以降は実施例1と同様に液化反応及び
組成分析を行った。
【比較例1】
【0020】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと溶媒として有機溶媒のアントラセンを用
いる代わりに純水60.0gを用い、触媒として水酸化ナトリウムを5wt%添加して混
合した。混合物は、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を
窒素ガスで置換した。窒素ガスを0.1MPaまで充填し、以降は実施例1と同様に液化
反応及び組成分析を行った。
【比較例2】
【0021】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと溶媒として有機溶媒のアントラセンを用
いる代わりに純水60.0gを用い、触媒として水酸化ナトリウムを5wt%添加して混
合した。混合物は、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を
窒素ガスで置換した。窒素ガスを3.0MPaまで充填し、以降は実施例1と同様に液化
反応及び組成分析を行った。
【0022】
【表1】
JP0004798477B2_000002t.gif
【0023】
結果
実施例1、2及び比較例1、2におけるスギの溶媒種と初圧による液体燃料収率を図1
に示した。図1より、実施例1、2のように有機溶媒を用いた場合、反応最大圧力が0.
9MPa、約6.0MPaと低いにも関わらず液体燃料の収率が高いことが示された。有
機溶媒を用いた場合、初圧が0.1MPaの場合は3.0MPaの場合と比較してAI収
率が上昇してGas、H2O 収率が低下するが、AS収率は大きく変化しないことが確
認された。従って、本発明の有機溶媒を用いた場合では、初圧が0.1MPaという低圧
でも十分に液体燃料を得ることができた。一方で比較例1、2において、純粋を溶媒に用
いた場合では、有機溶媒に用いた場合と比較して反応最大圧力は9.0、13.1MPa
と高いにもかかわらず、ASの収率が20%以上低かった。
【実施例3】
【0024】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0g
を混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガス
で置換した。窒素ガスを0.1MPaまで充填して初圧を設定した後、内容物を外部電気
炉(鈴木理化学製作所製)で250℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から250℃
に達するまで内容物に対して水平攪拌を行い、250℃に到達後直ちに室温まで空冷した
。反応後、実施例1と同様に分離工程及び組成分析を行った。結果を実施例4~6ととも
に表2に示す。
【実施例4】
【0025】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0g
を混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガス
で置換した。窒素ガスを0.1MPaまで充填して初圧を設定した後、内容物を外部電気
炉(鈴木理化学製作所製)で300℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から300℃
に達するまで内容物に対して水平攪拌を行い、300℃に到達後直ちに室温まで空冷した
。反応後、実施例1と同様に分離工程及び組成分析を行った。
【実施例5】
【0026】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0g
を混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガス
で置換した。窒素ガスを0.1MPaまで充填し、初圧を設定した後、内容物を外部電気
炉(鈴木理化学製作所製)で350℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から350℃
に達するまで内容物に対して水平攪拌を行い、350℃に到達後直ちに室温まで空冷した
。反応後、実施例1と同様に分離工程及び組成分析を行った。
【実施例6】
【0027】
実施例1で得られたスギの供試材10.0gと有機溶媒としてアントラセン60.0g
を混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガス
で置換した。窒素ガスを0.1MPaまで充填して初圧を設定した後、内容物を外部電気
炉(鈴木理化学製作所製)で400℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から400℃
に達するまで内容物に対して水平攪拌を行い、400℃に到達後直ちに室温まで空冷した
。反応後、実施例1と同様に分離工程及び組成分析を行った。
【0028】
【表2】
JP0004798477B2_000003t.gif

【0029】
結果
実施例5~6におけるスギの反応温度による液体燃料収率を図2に示した。図2より、
反応温度の上昇に伴って、AI収率が低下してAS、Gas、H2O 収率が上昇するこ
とが確認された。350℃におけるAS収集率は約50wt%と、最大であり、350℃
以上では大きく変化しなかった。
【実施例7】
【0030】
木質バイオマス由来液体燃料の製造装置
木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置を製造した。この液体燃料の製造装置は以下
(A)~(E)または(B)~(E)のプロセスを含む。該プロセスを含む木質バイオマ
ス由来の液体燃料の製造装置のフローを図3に示した。
(A)木質バイオマスを平均粒径が300μm以下となるまで破砕処理して、該木質バイ
オマス由来の供試材を得る破砕工程を行う破砕槽と、
(B)該供試材に有機溶媒を混合する混合槽と、
(C)該混合物を熱分解が生じる温度(250~400℃)で加熱処理する液化工程を行
う反応槽と、
(D)加熱により生じた上記供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由来の液体燃料
を得る分離工程を行う分離槽と、
(E)木質バイオマス由来の液体燃料の一部を自家溶媒として、上記第2領域に循環する
循環経路とを具備する。
【0031】
[参考例]
参考例として、木質バイオマスからなる供試材を古紙製紙廃水と混合し、熱分解及び加水分解が行われる温度及び圧力で液化処理する工程と、この工程により生じた該供試材の分解物を分離して、木質バイオマス由来の液体燃料を得る分離工程とを含むことを特徴とする木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法を示した。この場合の比較例として古紙製紙廃水の代わりに純水又は水酸化ナトリウム水溶液を溶媒として用いた。
実施例1と同様の方法で得たユーカリの供試材5.0gと溶媒として古紙製紙廃水(水分99.2 wt%,灰分0.4wt%,有機物0.4wt%,pH9.5)、純水又は水酸化ナトリウム水溶液(pH9.5)のいずれか30.0gを混合し、内容積200mlの電磁誘導撹拌式オートクレーブに密閉して内部を窒素ガスで置換した。窒素ガスを2.0MPaまで充填して初圧を設定した後、内容物を外部電気炉(鈴木理化学製作所製)で150~350℃まで加熱して液化反応を行った。昇温から150~350℃に達するまで内容物に対して水平攪拌を行い、150~350℃に到達後直ちに室温まで空冷した。反応後、実施例1と同様に分離工程及び組成分析を行った。
【0032】
反応温度を300℃とした場合の、ユーカリの溶媒種による液体燃料収率を図4に示した。図4より、古紙製紙廃水を用いた場合は、純水を用いた場合と比べてAI収率が低下し、AS収率が上昇することが確認された。さらに、水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合と同程度又はそれ以上にAI収率が高いことが確認された。
【0033】
生成物のFT-IRスペクトルにおいて、純水溶媒の反応では、温度の上昇とともに、WS中のカルボン酸の減少とWIAI中のエステル結合の増加が確認されたことから、-COOH基と-OH基が重縮合を起こしたため、残渣が増加したものと考えられた。
一方、古紙製紙廃水と水酸化ナトリウム水溶液溶媒の反応ではWS中にカルボン酸が確認されたことから、アルカリ成分によりカルボン酸が中和されることによって重縮合が抑制されたために、残渣の生成が抑制されたものと考えられた。
従って、本発明の古紙製紙廃水に含まれるアルカリ成分は、水酸化ナトリウム同様にアルカリ触媒としての効果があることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の木質バイオマス由来の液体燃料の製造方法及び製造装置は、低圧で温和な反応条件で液体燃料を得ることができる。さらに得られた液体燃料の一部を自家溶媒として循環使用することで、効率的に液化を継続できる、小規模なエネルギー自給型工場等の構築に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】スギの溶媒種と初圧による液体燃料収率を示した図である(実施例1、2 比較例1、2)。
【図2】反応温度による液体燃料収率を示した図である(実施例3~6)。
【図3】木質バイオマス由来の液体燃料の製造装置のフローを示した図である(実施例7)。
【図4】、ユーカリの溶媒種による液体燃料収率を示した図である(参考例)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3