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明細書 :パラメトリックX線を利用したアンギオグラフィーシステム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4774544号 (P4774544)
公開番号 特開2007-195888 (P2007-195888A)
登録日 平成23年7月8日(2011.7.8)
発行日 平成23年9月14日(2011.9.14)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
発明の名称または考案の名称 パラメトリックX線を利用したアンギオグラフィーシステム
国際特許分類 A61B   6/00        (2006.01)
G01N  23/04        (2006.01)
FI A61B 6/00 333
A61B 6/00 331E
A61B 6/00 350S
A61B 6/00 300A
G01N 23/04
請求項の数または発明の数 13
全頁数 17
出願番号 特願2006-021031 (P2006-021031)
出願日 平成18年1月30日(2006.1.30)
審査請求日 平成21年1月29日(2009.1.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 勇
【氏名】早川 恭史
【氏名】早川 建
【氏名】田中 俊成
個別代理人の代理人 【識別番号】100099254、【弁理士】、【氏名又は名称】役 昌明
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
【識別番号】100139675、【弁理士】、【氏名又は名称】役 学
審査官 【審査官】伊藤 昭治
参考文献・文献 特開2000-030892(JP,A)
特開平11-234566(JP,A)
特開平06-308295(JP,A)
特開昭63-246738(JP,A)
特開平10-106460(JP,A)
特開2006-147510(JP,A)
特開2000-23962(JP,A)
佐藤勇 他,パラメトリックX線の今後の展望,第2回日本加速器学会年会・第30回リニアック技術研究会報告集,2005年 7月
早川恭史 他,日大パラメトリックX線源の現状,Proceedings of the 1st Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japanand the 29th Linear Accelerator Meeting in Japan,2004年 8月
早川恭史 他,日大パラメトリックX線発生装置の概要 ,第26回 リニアック技術研究会プロシーディングス,2001年 8月
Y. Hayakawa et al,Simulations to the project of a PXR based X-ray source composed of an electron linac and a double-crystal system,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B,2005年,vol.227, issues 1-2,pp.32 - 40
R.B. Fiorito et al.,Parametric X-ray generation from moderate energy electron beams ,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B,1993年 6月,Volume 79, Issues 1-4,pp.758 - 761
調査した分野 A61B 6/00
G01N 23/04
特許請求の範囲 【請求項1】
造影剤の吸収端エネルギーの波長を跨いだ波長帯のパラメトリックX線ビームを発生して前記吸収端エネルギーより高いエネルギーの高域X線ビームと前記吸収端エネルギーより低いエネルギーの低域X線ビームとを発生するX線ビーム発生手段と、前記高域X線ビームと前記低域X線ビームが重なるように光路を変えるX線ビーム重畳手段と、前記高域X線ビームと前記低域X線ビームを前記造影剤が注入された撮影対象物に照射するための撮影対象物設定手段と、前記撮影対象物を透過した前記高域X線ビームまたは前記低域X線ビームを画像化するために前記撮影対象物の後方に設けたイメージング手段とを具備することを特徴とするアンギオグラフィーシステム。
【請求項2】
前記X線ビーム発生手段は、ほとんど光速の電子ビームを発生する電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを照射して前記パラメトリックX線ビームを発生する第1完全結晶と、前記パラメトリックX線ビームを反射して前記X線ビーム重畳手段に輸送する第2完全結晶とを備え、前記X線ビーム重畳手段は、前記低域X線ビームを反射する第3完全結晶と、前記第3完全結晶で反射された前記低域X線ビームを再度反射する第4完全結晶とを備えたことを特徴とする請求項1記載のアンギオグラフィーシステム。
【請求項3】
前記X線ビーム重畳手段は、前記高域X線ビームまたは前記低域X線ビームを遮断する機械式シャッターを備えたことを特徴とする請求項1記載のアンギオグラフィーシステム。
【請求項4】
前記第2完全結晶は、前記低域X線ビームを対称反射させ、前記高域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であり、前記第4完全結晶は、前記低域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であることを特徴とする請求項2記載のアンギオグラフィーシステム。
【請求項5】
造影剤の吸収端エネルギーの波長を跨いだ波長帯のパラメトリックX線ビームを発生して前記吸収端エネルギーより高いエネルギーの高域X線ビームと前記吸収端エネルギーより低いエネルギーの低域X線ビームとを発生するX線ビーム発生手段と、前記高域X線ビームと前記低域X線ビームが重なるように光路を変えるX線ビーム重畳手段と、重畳された前記高域X線ビームと前記低域X線ビームとを照射するために前記造影剤が注入された撮影対象物を回転する撮影対象物駆動手段と、前記撮影対象物を透過した前記高域X線ビームを画像化するために前記撮影対象物の後方に設けた第1イメージング手段と、前記撮影対象物を透過した前記低域X線ビームを画像化するために前記撮影対象物の後方に設けた第2イメージング手段とを具備することを特徴とする2色X線CT装置。
【請求項6】
前記X線ビーム発生手段は、ほとんど光速の電子ビームを発生する電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを照射して前記パラメトリックX線ビームを発生する第1完全結晶と、前記パラメトリックX線ビームを反射して前記X線ビーム重畳手段に輸送する第2完全結晶とを備え、前記X線ビーム重畳手段は、前記低域X線ビームを反射する第3完全結晶と、前記第3完全結晶で反射された前記低域X線ビームを再度反射する第4完全結晶とを備えたことを特徴とする請求項5記載の2色X線CT装置。
【請求項7】
前記第2完全結晶は、前記低域X線ビームを対称反射させ、前記高域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であり、前記第4完全結晶は、前記低域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であることを特徴とする請求項6記載の2色X線CT装置。
【請求項8】
高域X線ビームと低域X線ビームとを発生するX線ビーム発生手段と、前記高域X線ビームと前記低域X線ビームが重なるように光路を変えるX線ビーム重畳手段と、前記高域X線ビームと前記低域X線ビームを撮影対象物に照射するための撮影対象物設定手段と、前記撮影対象物を透過したX線ビームを回折させるために前記撮影対象物の後方に設けた回折手段と、前記回折手段で回折されたX線ビームを検出する第1イメージング手段と、前記回折手段を透過したX線ビームを検出する第2イメージング手段とを具備することを特徴とする位相コントラスト撮像システム。
【請求項9】
前記X線ビーム発生手段は、ほとんど光速の電子ビームを発生する電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを照射して前記パラメトリックX線ビームを発生する第1完全結晶と、前記パラメトリックX線ビームを反射して前記X線ビーム重畳手段に輸送する第2完全結晶とを備え、前記X線ビーム重畳手段は、前記低域X線ビームを反射する第3完全結晶と、前記第3完全結晶で反射された前記低域X線ビームを再度反射する第4完全結晶とを備えたことを特徴とする請求項8記載の位相コントラスト撮像システム。
【請求項10】
前記X線ビーム重畳手段は、前記高域X線ビームまたは前記低域X線ビームを遮断する機械式シャッターを備えたことを特徴とする請求項9記載の位相コントラスト撮像システム。
【請求項11】
前記第2完全結晶は、前記低域X線ビームを対称反射させ、前記高域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であり、前記第4完全結晶は、前記低域X線ビームを非対称反射させる完全結晶であることを特徴とする請求項9記載の位相コントラスト撮像システム。
【請求項12】
ほとんど光速の電子ビームを発生する電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを照射してパラメトリックX線ビームを発生する第1完全結晶と、前記パラメトリックX線ビームを照射するために撮影対象物を回転する撮影対象物駆動手段と、前記撮影対象物を透過したパラメトリックX線ビームを反射する第2完全結晶と、前記第2完全結晶で反射されたパラメトリックX線ビームを回折させる第3完全結晶と、前記第3完全結晶で回折されたX線ビームを画像化する第1イメージング手段と、前記第3完全結晶を透過したX線ビームを画像化する第2イメージング手段とを具備することを特徴とする拡大CT装置。
【請求項13】
ほとんど光速の電子ビームを発生する電子ビーム発生装置と、前記電子ビームを照射してパラメトリックX線ビームを発生する第1完全結晶と、撮影対象物に前記パラメトリックX線ビームを照射する撮影対象物設定手段と、前記撮影対象物を透過したパラメトリックX線ビームを反射する第2完全結晶と、前記第2完全結晶で反射されたパラメトリックX線ビームを回折させる角度調節可能な第3完全結晶と、前記第3完全結晶で回折されたX線ビームを画像化する第1イメージング手段と、前記第3完全結晶を透過したX線ビームを画像化する第2イメージング手段とを具備することを特徴とする拡大位相コントラスト撮像システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、パラメトリックX線を利用したアンギオグラフィーシステムに関し、特に、2色のパラメトリックX線により造影剤撮影を行うシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ヨウ素を造影剤とした(心臓)血管造影(アンギオグラフィー)システムとしては、通常のX線管を用いたもの、大型放射光施設でのシンクロトロン放射によるもの、小型電子加速器(リニアック)によるレーザーコンプトン散乱で得られるX線を用いるものがある。
【0003】
パラメトリックX線放射(PXR: parametric X-ray radiation)は、相対論的な高エネルギー電子ビームを結晶に照射することによって発生するX線放射現象であり、単色性、X線エネルギー(波長)選択性、指向性といった特徴を持つ。PXRは、シンクロトロン放射に比べると弱い放射現象であるが、10MeV~100MeV程度の電子ビームによってX線領域の放射を得ることができるため、中規模以下の加速器によるエネルギー(波長)可変単色X線源の候補として関心を持たれてきた。基礎研究の段階より、応用としてアンギオグラフィー(心臓血管造影)が挙げられてはいた。しかしながら、基礎研究では弱い放射の観測が主であり、X線イメージ撮影を試みるケースは稀であった。
【0004】
本発明者らは、自由電子レーザー用の125MeV電子線形加速器を利用して、PXRによる実用的な線源を開発した。図7に示すように、同じ結晶を用いた2結晶システムによる対称反射を利用して、固定されたビームポートから、エネルギー可変なX線を取り出す。非常に高精度にX線のエネルギーを制御することができる。比較的均一で広い照射野を持つX線ビームである。点線源的であり、指向性も高いため、イメージングに適した線源となっている。
【0005】
2結晶システムで得られるPXRビームには、X線のエネルギー分布に関して、非常に有用な特性を持つ。図7に示すように、逆格子ベクトルgを持つ結晶に、相対論的な電子(速度v)を、ブラッグ角θでもって入射する。PXRも他の相対論的な粒子からの放射現象と同様、放出方向は大体、1/γのオーダーの角度広がりを持つ。
1/γ=√(1-β2)
β=|v|/c* (c*は、結晶媒質中の光速)
【0006】
vとgで作られる平面で考えると、電子に対して角度φで放出されるPXRのエネルギー(h/2π)ωは、以下の式で表される。
(h/2π)ω=(h/2π)c*|g|sinθ/(1-βcosφ) (1)
φ=2θとなるとき、(h/2π)ωは、通常のブラッグ回折のエネルギー(h/2π)ωBと、β≒1の近似のもとでは一致する。
(h/2π)ωB=(h/2π)c*|g|/2sinθ
【0007】
ここで、図7に示すように、φ=2θより微小な角度△θだけずれた場合を考える。式(1)を角度φで微分すると、次のようになる。
d((h/2π)ω)/dφ=-(h/2π)c*|g|βsinθsinφ/(1-βcosφ)2
=(h/2π)ω(-βsinφ)/(1-βcosφ) (2)
△θだけずれたことによるPXRエネルギーの変化は、次のように近似できる。
(h/2π)ω'=(h/2π)ωB+Δ(h/2π)ω
=(h/2π)ωB+(d((h/2π)ω)/dφ)△θ
≒(h/2π)ωB(1-((βsin2φ)/(1-βcos2θ))△θ)
≒(h/2π)ωB(1-△θ/tanθ) (3)
【0008】
電子ビームが良く収束され、ターゲット結晶と観測点の距離Lが十分大きい場合には、φ=2θとなるブラッグ条件を満たす点を原点とした水平方向の位置xを用いて、△θ≒x/Lと近似できるので、次のようになる。
(h/2π)ω'≒ (h/2π)ωB(1-x/Ltanθ) (4)
エネルギーシフトは、水平方向の位置xにほぼ比例する。図8は、電子エネルギー100MeV、ブラッグ角8.422°、L=7.2mの場合のエネルギー分布の例である。
【0009】
ちなみに、式(1)は、βにのみ依存し、γには直接的には依存していないので、100MeV程度の十分に相対論的な電子の場合は、電子エネルギーが多少変化しても、PXRのエネルギー分布には影響しない。ただし、カバーする角度範囲は変化する。低エネルギーの場合は、角度幅が広く、カバーするエネルギー範囲も広い。高エネルギーの場合は、角度幅とエネルギー範囲は狭い。
【0010】
また、結晶への入射の際の電子ビームの角度発散の影響は、図9に示すようなケースを考えると、ブラッグ角自体が△θだけずれることになる。ブラッグ条件を満たす放出方向も、△θだけシフトする。この場合は、ブラッグエネルギー(h/2π)ωBの微小変化量を評価することとなる。△θだけずれた時のブラッグエネルギー(h/2π)ω"は、次のようになる。
(h/2π)ω"≒(h/2π)ωB+(d((h/2π)ωB)/dφ)△θ
=(h/2π)ωB+(h/2π)c*|g|cosθ/(2sin2θ)
=(h/2π)ωB(1-△θ/tanθ)
≒(h/2π)ωB(1-x/(Ltanθ) (5)
【0011】
式(3)、式(4)と比べると、電子ビームに多少の角度発散があっても、Lが十分に大きければ、同じ点に到達するX線のエネルギーは、一次近似の範囲では等しいことになる。つまり、PXRのエネルギー分布に関して言えば、ターゲット結晶上の電子ビームスポットサイズと有効な結晶の厚みによってエネルギー分解能が決まることになる。
【0012】
完全結晶によるPXRの回折について説明する。実際には、ターゲットである第1結晶も、反射板である第2結晶もともに、シリコン完全結晶の(111)面を用いている。ここでさらに、シリコン完全結晶の同じ面を第3結晶として用いて回折を試みる場合を考える。図10に、その概略図を示す。ここでは、(+,-,+)と呼ばれる平行な結晶配置を考えることにする。
【0013】
完全結晶の場合、回折幅は非常に狭く、大体0.001°程度であり、X線のエネルギー幅でいうと、数eV程度のオーダーである。PXRの放射の角度広がりは1/γのオーダーであるから、100MeVの電子の場合、1/γ~5mrad~0.3°である。また、図8に示したような場合では、1keVくらいのエネルギー幅を持つことになる。このため一見すると、完全結晶を用いると、ごく一部のX線しか回折しないように思える。しかしながら、先の議論を応用すると、ブラッグ条件より角度△θだけずれた方向に放出されたX線は、第3結晶に(θ+△θ)で入射することになる。式(3)と式(5)の議論から、この方向のPXRのエネルギーと、ブラッグ角(θ+△θ)でのブラッグエネルギーは、一次近似の範囲では等しくなるので、ブラッグ回折が起こることが期待できる。これは△θの符号に依らず成立するので、この(+,-,+)配置では、結晶全面にわたってブラッグ回折が生じることになる。図10のようなブラッグ配置とよばれる完全結晶での回折では、反射率はほぼ100%になるため、効率の良いX線の反射が期待できる。実際、この特性を実験的に確認している。
【0014】
現在のアンギオグラフィー(心臓血管造影法)では、一般的にヨウ素を血管造影剤として用いている。造影剤を用いない方法としては、大型放射光を用いる位相コントラスト法が研究されているが、X線源や測定精度に対する要求が非常にシビアである。一般への普及を考えると、当面は造影剤を用いる現在の手法の延長上での高度化が実際的である。ヨウ素を造影剤とする場合、ヨウ素のK吸収端エネルギー(33.17keV)以上のエネルギーのX線に対する吸収コントラストを測定することになる。
【0015】
PXRの場合、X線ビームの中心でのエネルギーの値を、造影剤の吸収端に厳密に合わせてやれば、それを境として、吸収端以下のエネルギーを持つX線ビームと、吸収端以上のエネルギーのX線ビームを、同時に得ることができる。図11は、PXRの中心エネルギーを銅のK吸収端(8.981KeV)にした時の透過X線画像である。銅フォイルによる吸収は、吸収端を境に急激に変化しており、X線のエネルギーが精度よく制御されている様子がうかがえる。
【0016】
2結晶システムによるPXR発生装置は公知である。これを応用してマルチビームライン化するアイデアは「小型可変エネルギー単色コヒーレントマルチX線発生装置」として、本出願人により特許出願(特許文献2)している。PXRのアンギオグラフィーへの応用も公知である。アンギオグラフィーへの応用自体は、PXRの基礎研究の動機の一つとして早くから挙げられていた。PXRの完全結晶による回折特性は、非常にユニークな特性であるが、これ自体は物理現象そのものであり、公知である。既に、学会・研究会などの発表で触れている。非対称結晶反射による単色X線ビーム拡大は、大型放射光施設においては一般的に行われている。
【0017】
パルス性は、高周波加速器一般の特性であるので、造影剤の投入の同期も含め、加速器ベースの線源ならば、心拍同期撮影は自明のことである。造影剤の吸収端を跨いだ2色CTのアイデア自体は、レーザーコンプトンX線源の開発においても取り上げられている。X線位相コントラスト法によるイメージングは、1995年頃より精力的に研究されており、特に、マンモグラフィーへの応用が重視されている。
【0018】
特許文献1には、2色X線を発生させる放射線源が開示されている。制動放射X線である。特許文献2には、小型可変エネルギー単色コヒーレントマルチX線発生装置が開示されている。2結晶システムによるPXR発生装置を応用してマルチビームライン化したものである。非特許文献1には、ヨウ素の吸収端を挟む2色X線で、心臓の造影剤撮影をする方法が開示されている。非特許文献2には、レーザーコンプトン散乱X線で、屈折コントラスト画像を撮影する方法が開示されている。
【0019】

【特許文献1】特開平10-106460号公報
【特許文献2】特願2004-339792号明細書
【非特許文献1】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・" http://detserv1.dl.ac.uk/herald/xray_review_angiography.htm
【非特許文献2】Sakai, T. Nakajyo, et. al., 「レーザーコンプトン散乱X線の発生とX線によるイメージング」 Proceedings of the 2nd Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan and the 29th Linear Accelerator Meeting in Japan., Tosu, Japan, 2005, p. 108, (in Japanese).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、従来のアンギオグラフィーシステムでは、次のような問題がある。特性X線を利用しているものでは、造影剤の吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを発生できず、鮮明な画像を撮影できない。レーザーコンプトン散乱で得られるX線のコヒーレンシーは低く、屈折によるエッジ強調程度が限界である。
【0021】
通常の制動X線を使うX線管の場合、スペクトルが連続で、ヨウ素の吸収端によるコントラストが付きにくい。特性X線を用いるには、陽極としてランタンやセリウムが必要となり、扱いにくい。吸収端をはさんだX線エネルギーの2色切替えは容易にはできない。また、指向性が無いため、X線をビーム状にすると弱くなってしまう。
【0022】
シンクロトロン放射の場合は、単色性と指向性に優れている。しかし、分光結晶の角度でX線エネルギーを制御しているので、2色を瞬時に切り替えることや、2色を同時に発生させるのは難しい。また、ヨウ素吸収端エネルギーをシンクロトロン放射で得るには、5GeVクラスの巨大なシンクロトロンが必要となる。X線のパルス特性は、シンクロトロンの周回で決まってしまうため、心拍に同期させるのは困難である。
【0023】
レーザーコンプトン散乱の場合、リニアックベースであるので、心拍同期は可能である。しかし、十分な強度を得るには、レーザーを周回リングに蓄積帯させるなどの対応が必要である。加速器だけでなく、レーザーの同期も考慮する必要がある。また、2色のX線を切り替えるためには、2種類のレーザーを用意して切り替えることになるので、安定性への配慮が必要となる。また、2色のX線ビームをクロスさせて、同時に照射・測定するような状態を実現するのは難しい。
【0024】
本発明の目的は、上記従来の問題を解決して、アンギオグラフィーシステムにおいて、造影剤の吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを発生して鮮明な画像を撮影することである。すなわち、K吸収端を僅かに超えるエネルギーのX線による像と、K吸収端より僅かに低いエネルギーのX線による像を、同条件で撮像して比較することにより、血管のみコントラストを上げて、造影剤のみの鮮明な画像を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記の課題を解決するために、本発明では、アンギオグラフィーシステムを、造影剤の吸収端エネルギーの波長を跨いだ波長帯のパラメトリックX線ビームを発生して吸収端エネルギーより高いエネルギーの高域X線ビームと吸収端エネルギーより低いエネルギーの低域X線ビームとを発生するX線ビーム発生手段と、高域X線ビームと低域X線ビームが重なるように光路を変えるX線ビーム重畳手段と、高域X線ビームと低域X線ビームを造影剤が注入された撮影対象物に照射するための撮影対象物設定手段と、撮影対象物を透過した高域X線ビームまたは低域X線ビームを画像化するために撮影対象物の後方に設けたイメージング手段とを具備する構成とした。
【発明の効果】
【0026】
上記のように構成したことにより、アンギオグラフィーシステムにおいて、造影剤のK吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを小型の装置で発生して、造影剤のみの鮮明な画像を撮影できる。シンクロトロン放射に比べてシステムを大幅に小型化できる。
【0027】
また、電子加速器(リニアック)と完全結晶を用いた2結晶システムの組み合わせで発生するパラメトリックX線のエネルギー分布の特性を有効利用し、吸収端より低エネルギー側のX線のみ完全結晶で効率良く2回反射し、軌道を高エネルギー側のX線ビームに重畳し、途中の経路にX線シャッターを設置することにより、吸収端を跨いだ2色X線の切替えが可能となり、同時照射もできる。
【0028】
2本のX線ビームの角度がついてクロスする成分のみを使用し、それぞれ独立に測定すれば、2色同時照射CTとして用いることができる。患者の心拍に、リニアックの電子ビームパルスと造影剤の注入を同期させることにより、X線照射量と造影剤の使用量を最小限に抑えて心臓血管などの静止画取得が可能となる。
【0029】
パラメトリッX線放射を用いて同時に発生する2色X線ビームには相関があるため、一方を患者に照射しながら、他方を強度などのモニター用にすることが可能である。また、原理的にパラメトリックX線放射は連続波長可変性を持つため、ヨウ素以外の元素をターゲットとすることも可能である。
【0030】
指向性の良い単色X線を用いるため、位置分解能に優れ、造影剤の吸収端の効果により、血管を高コントラストで撮像できる。また、高コントラスト撮像への寄与の少ない高エネルギーのX線・γ線の被爆を抑制できる。X線源としてリニアックを用いるので、X線パルスの発生の自由度が高く、容易に患者の心拍に同期させることができる。しかも、マイクロ秒程度での精度でタイミング調整することは容易であるため、高速な画像取得システムとの組み合わせにより、血流の流速を評価することも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1~図6を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0032】
本発明の実施例1は、PXRの完全結晶による回折特性を利用して造影剤のK吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにし、2色のX線ビームをそれぞれ撮影対象物に照射してイメージ化するアンギオグラフィーシステムである。
【0033】
図1は、本発明の実施例1におけるアンギオグラフィーシステムの概念図である。図1において、電子ビーム1は、線形加速器で発生した光速に近い電子線である。第1シリコン単結晶2は、電子ビームを照射して、造影剤のK吸収端エネルギーの波長を跨いだ波長帯のパラメトリックX線ビームを発生するシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3は、パラメトリックX線ビームを反射して輸送するシリコンの完全結晶である。第3シリコン単結晶4と第4シリコン単結晶5は、高域X線ビームと低域X線ビームの光路がほぼ重なるようにするために、低域X線ビームを反射するシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3~第4シリコン単結晶5は、完全結晶でない結晶でも動作するが、結晶の不完全性はX線ビームの輸送効率の低下やX線画像の品質低下の原因となる。完全結晶とは、ほとんど結晶欠陥の無い単結晶という意味である。2色のX線ビームとは、中心波長が異なり、狭い波長範囲で連続するスペクトルをもつ2つのX線ビームのことである。
【0034】
サンプル6は、造影剤が注入された撮影対象物体あるいは人体である。高域X線ビームと低域X線ビームを照射するために、撮影対象物設定手段で位置決めされる。イメージングデバイス7は、X線を検知して画像信号にする装置である。シャッター8は、全X線ビームを止める手段である。シャッター9は、低エネルギー側のX線ビームを止める手段である。シャッター10は、高エネルギー側のX線ビームを止める手段である。
【0035】
図2は、X線エネルギー範囲を示す表である。図3は、非対称反射を利用したX線ビーム拡大の概念図である。図3において、電子ビーム1は、線形加速器で発生した光速に近い電子線である。第1シリコン単結晶2は、PXR発生用のシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3は、低域X線ビームを対称反射させ、高域X線ビームを非対称反射させるシリコンの完全結晶である。第3シリコン単結晶4は、対称反射用のシリコンの完全結晶である。第4シリコン単結晶5は、低域X線ビームを非対称反射させるシリコンの完全結晶である
【0036】
上記のように構成された本発明の実施例1におけるアンギオグラフィーシステムの機能と動作を説明する。PXRビームの性質をアンギオグラフィーに応用することを考えると、シンプルには、撮像対象を、造影剤のK吸収端のX線ビーム位置をまたいで移動させればよい。しかしながら、撮像対象が患者であることを考えると、X線ビームの光路を同じにして、撮像対象固定のまま同条件で撮像できるほうが望ましい。高感度のイメージング装置を用いる必要を考えれば、測定系の固定という点でも望ましい。
【0037】
そこで、完全結晶による回折を用いたX線ビームのマージを考えると、図1に示すようになる。効率よく反射できるのは、(+,-,+,・・・)という並びになっている場合であるから、図1に示すように、造影剤のK吸収端より低エネルギーのX線のみを、第3と第4の結晶で反射させることとなる。途中の経路に何らかのX線シャッターを挿入してやれば、照射するX線のエネルギーを、ヨウ素のK吸収端をまたいで簡単に切り替えることができる。
【0038】
このジオメトリーの場合、2つのX線ビームのサンプル6への入射角度が少し異なっているが、これは数mrad程度であるので、イメージングデバイス7をサンプル6(患者)に密着した場合には、それほど深刻な影響はないし、理論的に補正することも困難ではない。また、PXRの特性に起因する水平方向にわたるエネルギーシフトによって、透過率が変化してしまう。このエネルギーシフトは、数eVのオーダーの分解能でコントロールされているものであるから、この影響を理論的に補正することは比較的容易である。
【0039】
100MeVクラスの電子線形加速器(リニアック)を用いて、図1で示したPXRアンギオグラフィーシステムを実現した場合の特徴を以下に列挙する。
(1)(切り替え可能2色ビーム)ヨウ素K吸収端を境として、高エネルギーのX線ビームと低エネルギーのX線ビームを簡単に切り替えられる。同時照射も可能である。
(2)(単色性)それぞれのX線ビームは、角度(水平位置)に依存してエネルギー分散を持つが、数keV程度の範囲に収まっている。特性X線の単色性とは異なり、波長範囲に幅があるが、ここではこれを単色X線とよぶことにする。
(3)X線エネルギーがコントロールされているので、インジウム~ヨウ素あたりの元素をベースとした液晶が開発されれば、これをX線シャッターとして、1ms程度かそれ以下の時間で、高速にX線ビームを切り替えられる。
(4)電子エネルギーによるが、加速器ベースの単色X線源としては、比較的照射野が広い。
(5)点光源的な線源であり、X線の指向性も良い。高エネルギーバックグラウンドが少ないため、それによる2次粒子の影響がほとんど無く、非常に位置分解能の良いX線イメージが取得できる。
(6)リニアックベースであるので、パルスX線源となる。したがって、X線照射および造影剤の注入を、患者の心拍に同期することが可能となる。撮像にかかる実時間は増えるかもしれないが、最低限の照射量と造影剤で、一定位置の血管像が撮影可能となる。
【0040】
レーザーコンプトンX線源との比較において、有利な点と不利な点を挙げる。有利な点は、以下の通りである。
(1)2色X線ビームが同時に発生可能である。
(2)従って、機械的なシャッターで安定に切り替えられる。
(3)不安定性対策を含め、大強度レーザーに掛かる金銭的、時間的コストは不要である。
(4)X線エネルギー分解能やイメージの位置分解能といった質的な点では、X線の発生原理的に優れている。
(5)X線ビームラインを電子ビームラインと平行にずらして設置できるので、高エネルギーのバックグラウンドを遮蔽しやすい。
【0041】
不利な点は、以下の通りである。
(1)加速器に関しては、100MeVクラスのエネルギーで高性能なものが要求される。
(2)X線強度に関しては、加速器のビーム電流に支配され、レーザーコンプトン散乱におけるレーザーの大強度化のようなアプローチは取れない。
(3)50keV以上のX線の発生は、レーザーコンプトン散乱の場合はそれほど問題ないが、PXRの場合はブラッグ角が小さくなるため、ジオメトリーに制約が生じる。
【0042】
次に、図2の表を参照しながら、ヨウ素のK吸収端(33.17keV)をターゲットとする場合に必要なジオメトリーの数値的な見積を説明する。使用する結晶として理想的なのはダイアモンドの完全結晶である。質のよい大面積のダイアモンド結晶を入手するのは困難なので、シリコン完全結晶で考える。使用する結晶面は、PXRの発生強度を考慮して、(111)と(220)を候補とする。PXRビームの放射円錐の半径は、およそ1.3/γ程度であり、一様に近い空間分布が得られる。結晶面(111)と(220)についてBragg角を求める。電子エネルギー100MeVと200MeVについて、放射円錐の角度(半径)と、式(3)で見積もられるX線エネルギー範囲を、図2の表にまとめて示す。基本的な傾向としては、電子エネルギーが高い方が、X線エネルギーに関しては幅が狭く、扱いやすい。その反面、ビームの広がりが小さいため、広い照射野を得るには距離が必要となる。また、(220)面は、PXRの発生強度は弱くなるが、ブラッグ角が大きく電子ビームラインとの分離がし易く、使用する結晶サイズも小さくて済むという利点がある。
【0043】
ここでさらに、電子エネルギー100MeVの場合について、図1における電子ビームラインと、PXRビームラインの軸間隔D1を、50mmと仮定したときのジオメトリーを考える。L1は417.15mmとなり、第2結晶のサイズとしては、少なくとも長さ84mm必要となる。最終的な照射野(D2)として、幅100mmを得るには、L1+L2=0.1m/6.6mrad=15.15m必要となる。第3、第4結晶の位置は、入手可能な結晶サイズや、放射線遮蔽の都合によって決められることとなる。
【0044】
次に、図3を参照しながら、非対称反射によるコンパクト化について説明する。PXRアンキオグラフィーでは、X線ビームの輸送に、すべて完全結晶の対称反射を用いている。扱いやすい反面、X線ビームの拡大には10m以上の距離が要求される。広いX線エネルギー範囲をカバーするには、対称反射のみ用いるほうが扱いやすい。しかし、アンギオグラフィーの場合は、エネルギーを大きく変える必要が無いので、非対称結晶反射を導入しても問題がない。
【0045】
非対称反射を利用したX線ビーム拡大法の概念図を、図3に示す。第2結晶において、高エネルギー側を非対称反射にして、X線ビ-ムを拡大してしまう。低エネルギー側については、早くに拡大してしまうと、第3、第4結晶サイズが問題になるので、対称反射にする。低エネルギー側は、最後の第4結晶で非対称反射を導入して、X線ビームを拡大する。この非対称反射の導入によって、対称反射のみに比べて半分程度の距離で、必要なX線ビームサイズが得られる。
【0046】
このアンギオグラフィーシステムは、PXRを用いて2つの単色X線ビームを発生させる点で、従来の医療用加速器を用いた制動放射によるものとは一線を画するものである。K吸収端を僅かに超えるエネルギーのX線による像と、K吸収端より僅かに低いエネルギーのX線による像を、同条件で撮像して比較することにより、血管のみコントラストを上げて、造影剤のみの鮮明な画像を得ることができる。X線の強度やクォリティは、加速器の性能に全面的に依存するため、小型高性能加速器の開発が重要となる。
【0047】
上記のように、本発明の実施例1では、アンギオグラフィーシステムを、PXRの完全結晶による回折特性を利用して造影剤の吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにし、2色のX線ビームをそれぞれ撮影対象物に照射してイメージ化する構成としたので、造影剤のみの鮮明な画像を撮影できる。
【実施例2】
【0048】
本発明の実施例2は、PXRの完全結晶による回折特性を利用して造影剤のK吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにして撮影対象物に同時照射し、それぞれイメージ化する2色X線CT撮像システムである。
【0049】
図4は、本発明の実施例2における2色CT撮像システムの概念図である。2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにするところまでの基本的な構成は、実施例1と同じである。2色のX線ビームによるCT画像を同時に撮影する構成が、実施例1と異なる。図4において、電子ビーム1は、線形加速器で発生した光速に近い電子線である。第1シリコン単結晶2は、PXR発生用のシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3と第3シリコン単結晶4と第4シリコン単結晶5は、実施例1と同様のシリコンの完全結晶である。サンプル6は、撮影対象物体あるいは人体である。イメージングデバイス7は、X線を検知して画像信号にする装置である。
【0050】
上記のように構成された本発明の実施例2における2色CT撮像システムの機能と動作を説明する。PXRビームの広がりと、それを保存したまま回折できる性質を積極的に利用したものである。元のPXRビームの両端が、回折によるビームマージによってクロスすることになる。そのため、造影剤のK吸収端を跨いだ2色のX線ビームを、同時に照射して測定することが可能となる。ただし、照射野は小さくなる。CTの場合は、サンプル6(患者)を回転させる必要がある。心拍との同期測定を、高低エネルギー同時に行えるメリットを有する。高エネルギー側の透過X線と、低エネルギー側の透過X線とを、別々のイメージングデバイス7で画像データとする。それぞれの差分をとることで、造影剤のみの画像が得られる。実施例1と同様に、非対称反射を利用することもできる。
【0051】
上記のように、本発明の実施例2では、2色X線CT撮像システムを、PXRの完全結晶による回折特性を利用して造影剤のK吸収端エネルギーを跨いだ2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにして撮影対象物に同時照射し、それぞれイメージ化する構成としたので、造影剤のみの鮮明な立体画像を撮影できる。
【実施例3】
【0052】
本発明の実施例3は、PXRの完全結晶による回折特性を利用して2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにして撮影対象物に照射し、撮影対象物の後方で回折されたX線ビームと透過X線ビームをそれぞれイメージ化する位相コントラスト撮像システムである。
【0053】
図5は、本発明の実施例3における位相コントラスト撮像システムの概念図である。2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにするところまでの基本的な構成は、実施例1と同じである。2色のX線ビームによる位相コントラスト画像を撮影する構成が、実施例1と異なる。図5において、電子ビーム1は、線形加速器で発生した光速に近い電子線である。第1シリコン単結晶2は、PXR発生用のシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3と第3シリコン単結晶4と第4シリコン単結晶5は、実施例1と同様のシリコンの完全結晶である。サンプル6は、撮影対象物体あるいは人体である。イメージングデバイス7は、X線を検知して画像信号にする装置である。シャッター8は、全X線ビームを止める手段である。シャッター9は、低エネルギー側のX線ビームを止める手段である。シャッター10は、高エネルギー側のX線ビームを止める手段である。第5シリコン単結晶11は、アナライザーとしてのシリコンの完全結晶である。
【0054】
上記のように構成された本発明の実施例3における位相コントラスト撮像システムの機能と動作を説明する。PXRはコヒーレンシーに優れたX線源であるので、位相コントラストイメージングへの転用が容易である。図5に示すように、サンプル6(患者)の後方に、アナライザー結晶(第5シリコン単結晶11)を設置する。アナライザー結晶は、線源に用いているのと同じ完全結晶であり、結晶サイズを考慮すると、結晶面としてはラウエケースを用いるのが現実的である。アナライザー結晶により、試料によって生じたX線の屈折(位相変化)を、高感度で検出できる。簡単な方法としては、一方のX線ビームを用いて、アナライザー結晶による回折像と透過像を比較することにより、試料の構造情報を得ることができる。
【0055】
位相コントラスト法の利点は、アンギオグラフィーとしては造影剤の投与が不要あるいは非常に低濃度にできる点である。また、位相コントラスト法は、透過率の高い比較的高エネルギーのX線を用いて、軽元素の微小変化を知ることが可能であるので、乳癌健診(マンモグラフィー)に適している。吸収線量が少ないため、健診による発癌リスクの低減が期待できる。また、このPXRによる2色X線ビームの特色として、入射角度が僅かに異なるために、2色ビーム同時にBragg回折を生じさせることが可能である。したがって、ある種の干渉計として機能することが期待でき、より高感度に位相変化を検出できる可能性がある。PXRによる位相コントラスト撮像システムは、他の方法と比較して非常に有利である。
【0056】
上記のように、本発明の実施例3では、位相コントラスト撮像システムを、PXRの完全結晶による回折特性を利用して2色のX線ビームを同時に発生し、2色のX線ビームの光路がほぼ重なるようにして撮影対象物に照射し、撮影対象物の後方で回折されたX線ビームと透過X線ビームをそれぞれイメージ化する構成としたので、屈折イメージング(位相コントラストイメージング)により、わずかな造影剤を使うのみで、造影剤のみの鮮明な画像を撮影できる。また、そのままマンモグラフィーにも利用可能である。
【実施例4】
【0057】
本発明の実施例4は、電子ビームを照射してパラメトリックX線ビームを発生し、撮影対象物を回転させてパラメトリックX線ビームを照射し、撮影対象物を透過したX線ビームを反射して拡大し、反射されたX線ビームを回折させ、回折X線ビームと透過X線ビームをそれぞれイメージ化する拡大CT装置である。
【0058】
図6は、本発明の実施例4における拡大CT装置の概念図である。図6において、電子ビーム1は、線形加速器で発生した光速に近い電子線である。第1シリコン単結晶2は、PXR発生用のシリコンの完全結晶である。第2シリコン単結晶3は、撮影対象物体を透過したパラメトリックX線ビームを反射するシリコンの完全結晶である。第3シリコン単結晶4は、アナライザーとしてのシリコンの完全結晶である。サンプル6は、撮影対象物体あるいは人体である。イメージングデバイス7は、X線を検知して画像信号にする装置である。
【0059】
上記のように構成された本発明の実施例4における拡大CT装置の機能と動作を説明する。PXRビームを発生した直後の細いX線ビームで、サンプル6を照射する。この透過ビームを第2シリコン単結晶3で反射して拡大する。1mm程度のサンプル6から数cmの像を得ることができる。PXRの回折特性により、発散(拡大)ビームを第3シリコン単結晶4の対称反射でアナライズすることができる。
【0060】
また、パラメトリックX線ビームを、固定したサンプル6に照射し、サンプル6を透過したX線ビームを第2シリコン単結晶3で反射し、第2シリコン単結晶3で反射されたX線ビームを、角度調節可能なアナライザー結晶(第3シリコン単結晶4)で対称反射し、アナライザー結晶で反射されたX線ビームと透過したX線ビームをイメージ化することで、拡大した位相コントラスト像を撮影することもできる。サンプル6のエッジにおける屈折のみでなく、サンプル6内部における屈折率の変化部による屈折を、アナライザー結晶の角度により選択的に検出することができる。また、干渉計を構成することで、高感度に位相変化を検出することが可能となる。
【0061】
上記のように、本発明の実施例4では、拡大CT装置を、電子ビームを照射してパラメトリックX線ビームを発生し、撮影対象物を回転させてパラメトリックX線ビームを照射し、撮影対象物を透過したX線ビームを反射して拡大し、反射されたX線ビームを回折させ、回折X線ビームと透過X線ビームをそれぞれイメージ化する構成としたので、微小な試料の拡大立体画像が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のアンギオグラフィーシステムは、造影剤のみの鮮明な画像を撮影するシステムとして最適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1におけるアンギオグラフィーシステムの概念図である。
【図2】本発明の実施例1におけるアンギオグラフィーシステムのX線エネルギー範囲を示す表である。
【図3】本発明の実施例1におけるアンギオグラフィーシステムで用いる非対称反射を利用したX線ビーム拡大法の概念図である。
【図4】本発明の実施例2における2色CT撮像システムの概念図である。
【図5】本発明の実施例3における位相コントラスト撮像システムの概念図である。
【図6】本発明の実施例4における拡大CT装置の概念図である。
【図7】従来の2結晶システムによる対称反射を利用したエネルギー可変なPXRビームの取出方法の説明図である。
【図8】電子エネルギーが100MeVで、ブラッグ角が8.422°で、L=7.2mの場合のエネルギー分布を示すグラフである。
【図9】結晶への入射の際の電子ビームの角度発散の影響を説明する図である。
【図10】シリコン完全結晶の同じ面を用いて第1~第3結晶で回折を行う方法を示す概略図である。
【図11】PXRの中心エネルギーを銅のK吸収端のエネルギー(8.981KeV)にした時の画像である。
【符号の説明】
【0064】
1 電子ビーム
2 第1シリコン単結晶
3 第2シリコン単結晶
4 第3シリコン単結晶
5 第4シリコン単結晶
6 サンプル
7 イメージングデバイス
8 シャッター
9 シャッター
10 シャッター
11 第5シリコン単結晶
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10