TOP > 国内特許検索 > 人の姿勢動作判別装置およびエネルギー消費量算出装置 > 明細書

明細書 :人の姿勢動作判別装置およびエネルギー消費量算出装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5120795号 (P5120795)
公開番号 特開2007-160076 (P2007-160076A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
発明の名称または考案の名称 人の姿勢動作判別装置およびエネルギー消費量算出装置
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
A61B   5/107       (2006.01)
A61B   5/22        (2006.01)
FI A61B 5/10 310A
A61B 5/10 300D
A61B 5/22 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 32
出願番号 特願2006-194381 (P2006-194381)
出願日 平成18年7月14日(2006.7.14)
優先権出願番号 2005330902
優先日 平成17年11月15日(2005.11.15)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年7月10日(2009.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
発明者または考案者 【氏名】杉本 隆夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100062421、【弁理士】、【氏名又は名称】田村 弘明
【識別番号】100068423、【弁理士】、【氏名又は名称】矢葺 知之
【識別番号】100080171、【弁理士】、【氏名又は名称】津波古 繁夫
【識別番号】100139701、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 良幸
審査官 【審査官】門田 宏
参考文献・文献 特開平08-240450(JP,A)
特開平10-113343(JP,A)
特開平08-077481(JP,A)
特開平05-054300(JP,A)
特開2006-198073(JP,A)
特開2004-081632(JP,A)
特開2005-245709(JP,A)
特開2002-200059(JP,A)
特開2003-061935(JP,A)
特開2005-066323(JP,A)
特開2005-034364(JP,A)
特開2002-133555(JP,A)
特開2001-258870(JP,A)
特開2005-237576(JP,A)
特開平11-042220(JP,A)
特開2005-038018(JP,A)
大槻晃義、杉本隆夫,加速度センサを用いた人間の動作・姿勢の計測,日本大学理工学部学術講演会論文集 環境・医療福祉系部会 ,日本,日本大学理工学部,2004年11月17日,pp.298-299
桑野和也、杉本隆夫,3軸加速度計を用いた人間の動作計測 多変量解析による判別関数を用いた動作評価,日本大学理工学部学術講演会論文集 環境・医療福祉系部会,日本,日本大学理工学部,2005年11月16日,pp.412-413
森健太郎、杉本隆夫,3軸加速度計を用いた動作判別 ファジィロジックによる動作の評価,日本大学理工学部学術講演会論文集 環境・医療福祉系部会,日本,日本大学理工学部,2005年11月16日,pp.410-411
飯島庸平、杉本隆夫,3軸加速度計を用いた身体活動量の計測 消費エネルギの算出方法,日本大学理工学部学術講演会論文集 環境・福祉系部会,日本,日本大学理工学部,2005年11月16日,pp.408-409
森健太郎、杉本隆夫,無拘束計測による日常生活における身体活動量の計測 身体活動量と加速度の関係,日本大学理工学部学術講演会論文集 環境・医療福祉系部会,日本,日本大学理工学部,2004年11月17日,pp.300-301
杉本隆夫、小島祐介,加速度センサーを用いた人間の動作・姿勢の計測,日本大学理工学部学術講演会論文集,日本,日本大学理工学部,2002年11月20日,pp.324-325
小嶋祐介、杉本隆夫,変位計を用いた人間の状態計測 人間の状態計測の基本検討,日本大学理工学部学術講演会論文集,日本,日本大学理工学部,2001年11月13日,pp.290-291
調査した分野 A61B 5/00 - 5/22
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて姿勢動作状態を判別する人の姿勢動作判別装置において、
互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、
検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZを演算する手段と、
検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、
演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段を備えることを特徴とする人の姿勢動作判別装置。
【請求項2】
検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXを演算する手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項3】
検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZを演算する手段と、
検出したX方向の加速度GとY方向の加速度GからX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYを演算する手段と、
演算したX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZの各々について所定の閾値と比較することにより、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第3の判別手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項4】
演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第4の判別手段を備えることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項5】
検出したX方向の加速度GからX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、
検出したY方向の加速度Gの周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、
当該周波数解析手段により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値Sを検出する手段と、
検出したZ方向の加速度GからZ方向の運動成分の平均値GMZAVEを演算する手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2が、歩行、階段上昇、階段下降とZ1、Z2の関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項6】
検出したX方向の加速度GからX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、
検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、
当該周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルからY方向とZ方向の基本周波数のパワースペクトル値YMAXとZMAXを演算する手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXを入力として予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第6の判別手段を備えることを特徴とする請求項4に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項7】
さらに、前記周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルから歩行率Rを演算する手段を備え、
前記第6の判別手段が、歩行率Rに対応した予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別することを特徴とする請求項6に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項8】
さらに、加速度検出手段を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力する動作状態入力手段と、
入力された真の動作状態と、入力されたX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXに基づいて、予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を書き換えるメンバーシップ関数学習手段を備えることを特徴とする請求項6または7に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項9】
前記判別手段による判別結果を装置本体の外部に設置した外部機器に送信する無線通信手段を備えることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の人の姿勢動作判別装置。
【請求項10】
人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出装置において、
立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段と、
互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、
検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXおよびX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、
検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZおよびZ方向の運動成分の平均値GMZAVEを演算する手段と、
検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを各々解析する周波数解析手段と、
当該周波数解析手段により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値Sを検出する手段と、
前記周波数解析手段により解析されたX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数を検出するピーク周波数検出手段と、
検出したX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数から歩行率Rを検出する手段と、
検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、
演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段と、
演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第3の判別手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2が、歩行、階段上昇、階段下降とZ1、Z2の関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第4の判別手段と、
前記判別手段による判別結果にしたがって適用すべき基礎代謝量または回帰式を選択する回帰式選択手段と、
選択された基礎代謝量または回帰式に基づいて姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出手段を備えることを特徴とするエネルギー消費量算出装置。
【請求項11】
人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出装置において、
立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段と、
互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、
検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXおよびX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、
検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZを演算する手段と、
検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを各々解析する周波数解析手段と、
当該周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルからY方向とZ方向の基本周波数のパワースペクトル値YMAXとZMAXを演算する手段と、
前記周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルから歩行率Rを演算する手段と、
検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、
演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段と、
演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第3の判別手段と、
演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXを入力として歩行率Rに対応した予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段と、
前記判別手段による判別結果にしたがって適用すべき基礎代謝量または回帰式を選択する回帰式選択手段と、
選択された基礎代謝量または回帰式に基づいて姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出手段を備えることを特徴とするエネルギー消費量算出装置。
【請求項12】
さらに、加速度検出手段を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力する動作状態入力手段と、
入力された真の動作状態と、入力されたX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXに基づいて、予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を書き換えるメンバーシップ関数学習手段を備えることを特徴とする請求項11に記載のエネルギー消費量算出装置。
【請求項13】
算出したエネルギー消費量を一定時間毎に順次記憶する消費量記憶手段と、
算出したエネルギー消費量を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
【請求項14】
算出したエネルギー消費量を積算する手段と、
積算したエネルギー消費量を記憶する積算消費量記憶手段と、
積算したエネルギー消費量を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
【請求項15】
立位、座位、臥位における基礎代謝量または走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を入力する回帰式入力手段を備えることを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は人の姿勢動作判別装置に関し、特に人体に装着した3軸加速度センサを用いて、その人が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒のいずれの状態にあるかを判別する人の姿勢動作判別装置に関する。
さらには、本発明はエネルギー消費量算出装置に関し、特に人体に装着した3軸加速度センサを用いて、その人が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるかを判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化が急速に進み、特に高齢者の介護は社会問題化している。要介護者の中には、外出すると行方不明になったり急に倒れたりするおそれがあるため、外出時に付添いの必要な人達がいる。また、現在は介護不要であっても身体の衰え等により自由な行動に自信が持てず、家に引きこもりがちな人達もいる。後者は要介護予備軍といわれ、近い将来に介護負担増につながる人達である。このような人達が一人で外出し自由に行動できるようにして生きる喜びを持たせ、特に後者の人達が再び社会に貢献できるようにすることは社会的な責務である。そのためには、プライバシーを保護しつつ人の動作状態を監視し、危険な状態になったときには直ちに救援に駆けつけることができるシステムを構築する必要がある。
【0003】
このようなシステムは従来から提案されており、人体の腰部に2軸加速度計を装着し、人の体軸方向および前後方向の加速度変化から、その人が立っているか、座っているか、臥しているか、歩行しているか、電車、自動車、自転車に乗車しているか等を判定する技術が示されている(例えば、非特許文献1参照)。また、3軸加速度計を装着して、上下方向、前後方向、横方向の直交3軸の加速度変化から、歩行、走行、立位静止、転倒の各状態を判定する技術が示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、上記文献の技術では人の具体的な動作状態、特に安定状態なのか危険状態なのかを精度よく判定できず、信頼性に問題が残されていた。
【0004】
さらに、我が国における死因の6割以上となる生活習慣病についても迅速な対応が求められている。特に40歳代から50歳代のいわゆる働き盛りの世代においては悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、糖尿病といった生活習慣病対策が重要であるが、これまで我が国における生活習慣病対策としては早期発見、早期治療を目指す二次予防に力が注がれてきた。生活習慣病の多くは無自覚なまま病態が進行し、気がついたときには脳卒中や心筋梗塞などの重篤な症状発作を起こし、その結果生活の質の低下をもたらすことが極めて重大な問題となる。そこで、近年においては生活習慣を変えることで疾病の発症・進行を防止することが期待されており、健康増進・発症予防を目的とする一次予防の考え方が重視されるようになっている。生活習慣の改善とは、家庭における食生活や運動習慣の改善などを意味し、運動習慣については早足歩行などの無理のない運動を毎日の生活習慣としていくことが理想とされている。そして、これを実現するためには身体活動量ないしはエネルギー消費量の正確な把握が欠かせない。
【0005】
日常生活における身体活動量を測定しようとする技術、特に加速度センサを用いた技術については、従来から種々の方法や装置が提案されている。例えば、検出した加速度から被験者の運動質量の力積MVを求め、求めた力積から消費カロリーを計算する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、足が地面に接地する際に発生する加速度の大きさは無視することができないため、加速度センサで検出した加速度を積分することによって得られる速度Vには大きな誤差が含まれる。このため、運動質量の力積MVにも大きな誤差が生じて精度の高いカロリー計算を得ることは期待できない。また、加速度センサにより体動を検出して運動成分を求め、求めた運動成分から消費カロリーを計算する方法が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、この方法では階段昇降の判別が困難である。したがって、運動形態と消費されるエネルギーとの間には密接な関係があるところ、運動形態を正確に判別できない方法では精度の高いカロリー計算を行うことはできない。

【非特許文献1】日本機械学会誌1996Vol.101No.950p14~16
【特許文献1】特開平10-295649号公報
【特許文献2】特開2001-258870号公報
【特許文献3】特開2004-141669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決すべき課題は、人体に装着した3軸加速度センサを用いて、その人が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒のいずれの状態にあるかを正確に判別することができる人の姿勢動作判別装置を提供することである。また、人体に装着した3軸加速度センサを用いて、その人が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるかを正確に判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を正確に算出することができるエネルギー消費量算出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべく本発明者が誠意検討した結果、完成されたものであり、その要旨とするところは以下の通りである。
【0008】
(1)人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて姿勢動作状態を判別する人の姿勢動作判別装置において、互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZを演算する手段と、検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段を備えることを特徴とする人の姿勢動作判別装置。
【0009】
(2)検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXを演算する手段と、演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段を備えることを特徴とする前記(1)に記載の人の姿勢動作判別装置。
(3)検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZを演算する手段と、検出したX方向の加速度GとY方向の加速度GからX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYを演算する手段と、演算したX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZの各々について所定の閾値と比較することにより、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第3の判別手段を備えることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の人の姿勢動作判別装置。
【0010】
(4)演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第4の判別手段を備えることを特徴とする前記(1)~(3)のいずれか1項に記載の人の姿勢動作判別装置。
(5)検出したX方向の加速度GからX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、検出したY方向の加速度Gの周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、当該周波数解析手段により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値Sを検出する手段と、検出したZ方向の加速度GからZ方向の運動成分の平均値GMZAVEを演算する手段と、演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2が、歩行、階段上昇、階段下降とZ1、Z2の関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段を備えることを特徴とする前記(4)に記載の人の姿勢動作判別装置。
【0011】
(6)検出したX方向の加速度GからX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを解析する周波数解析手段と、当該周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルからY方向とZ方向の基本周波数のパワースペクトル値YMAXとZMAXを演算する手段と、演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXを入力として予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第6の判別手段を備えることを特徴とする前記(4)に記載の人の姿勢動作判別装置。
【0012】
(7)さらに、前記周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルから歩行率Rを演算する手段を備え、前記第6の判別手段が、歩行率Rに対応した予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別することを特徴とする前記(6)に記載の人の姿勢動作判別装置。
(8)さらに、加速度検出手段を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力する動作状態入力手段と、入力された真の動作状態と、入力されたX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXに基づいて、予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を書き換えるメンバーシップ関数学習手段を備えることを特徴とする前記(6)または(7)に記載の人の姿勢動作判別装置。
【0013】
(9)前記判別手段による判別結果を装置本体の外部に設置した外部機器に送信する無線通信手段を備えることを特徴とする前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の人の姿勢動作判別装置。
【0014】
(10)人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出装置において、立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段と、互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXおよびX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZおよびZ方向の運動成分の平均値GMZAVEを演算する手段と、検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを各々解析する周波数解析手段と、当該周波数解析手段により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値Sを検出する手段と、前記周波数解析手段により解析されたX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数を検出するピーク周波数検出手段と、検出したX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数から歩行率Rを検出する手段と、検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段と、演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段と、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第3の判別手段と、演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2が、歩行、階段上昇、階段下降とZ1、Z2の関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第4の判別手段と、前記判別手段による判別結果にしたがって適用すべき基礎代謝量または回帰式を選択する回帰式選択手段と、選択された基礎代謝量または回帰式に基づいて姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出手段を備えることを特徴とするエネルギー消費量算出装置。
【0015】
(11)人体にX方向が前後、Y方向が左右、Z方向が上下となるように装着した加速度検出手段を用いて立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別し、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出装置において、立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段と、互いに直交するX方向の加速度G、Y方向の加速度GおよびZ方向の加速度Gを検出する加速度検出手段と、検出したX方向の加速度GからX方向の姿勢成分GSXおよびX方向の運動成分の平均値GMXAVEを演算する手段と、検出したZ方向の加速度GからZ方向の姿勢成分GSZを演算する手段と、検出した3方向の加速度の周波数スペクトルを各々解析する周波数解析手段と、当該周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルからY方向とZ方向の基本周波数のパワースペクトル値YMAXとZMAXを演算する手段と、前記周波数解析手段により解析された3方向のパワースペクトルから歩行率Rを演算する手段と、検出した3方向の加速度から3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを演算する手段と、演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別し、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別し、これにより立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段と、演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZが、立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図のどの領域に位置するかにより、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段と、演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより、走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第3の判別手段と、演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXを入力として歩行率Rに対応した予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いて予め定めたファジィルールに従うファジィ推論を行い、各ルールのメンバーシップ関数の論理和の重心をとることにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段と、前記判別手段による判別結果にしたがって適用すべき基礎代謝量または回帰式を選択する回帰式選択手段と、選択された基礎代謝量または回帰式に基づいて姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出手段を備えることを特徴とするエネルギー消費量算出装置。
【0016】
(12)さらに、加速度検出手段を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力する動作状態入力手段と、入力された真の動作状態と、入力されたX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXに基づいて、予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を書き換えるメンバーシップ関数学習手段を備えることを特徴とする前記(11)に記載のエネルギー消費量算出装置。
【0017】
(13)算出したエネルギー消費量を一定時間毎に順次記憶する消費量記憶手段と、算出したエネルギー消費量を表示する表示手段を備えることを特徴とする前記(10)~(12)のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
(14)算出したエネルギー消費量を積算する手段と、積算したエネルギー消費量を記憶する積算消費量記憶手段と、積算したエネルギー消費量を表示する表示手段を備えることを特徴とする前記(10)~(13)のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
(15)立位、座位、臥位における基礎代謝量または走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を入力する回帰式入力手段を備えることを特徴とする前記(10)~(14)のいずれか1項に記載のエネルギー消費量算出装置。
【発明の効果】
【0018】
(A)第1の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(B)第1の判別手段と第2の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(C)第1の判別手段と第3の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、転倒以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(D)第1の判別手段と第2の判別手段と第3の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、転倒状態にあるのか、転倒以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0019】
(E)第1の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(F)第1の判別手段と第2の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(G)第1の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(H)第1の判別手段と第2の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0020】
(I)第1の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(J)第1の判別手段と第2の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(K)第1の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(L)第1の判別手段と第2の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(M)前記した第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、その人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができるが、第5の判別手段に代えて、予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行う第6の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、さらに高い確度でその人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを判別することができる。
(N)さらに、歩行率Rを自己検出する本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、歩行率Rに対応した予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことができるので、その人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
(O)さらに、メンバーシップ関数学習手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置によれば、加速度検出手段を装着した人に最適なメンバーシップ関数を容易に作成することができるので、さらに高い確度で歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを判別することができる。
【0021】
(P)本発明に係るエネルギー消費量算出装置によれば、その人が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるかを正確に判別することができるので、当該姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を正確に算出することができる。
(Q)さらに歩行、階段上昇、階段下降の判別にファジィ推論を用いる本発明に係るエネルギー消費量算出装置によれば、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの動作状態にあるのかを高い確度で判別することができるので、各動作状態に応じたエネルギー消費量をさらに正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図1~図29を参照して、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1は加速度検出手段10である3軸加速度センサ11の装着位置と軸方向を説明するための模式図である。本発明においては、図1に示すようにX軸方向が前後、Y軸方向が左右、Z軸方向が上下となるように3軸加速度センサ11を被験者に装着する。3軸加速度センサ11は、動作の起点となり、動作や姿勢の変化に対して最も変化の見られる腰部に装着することが望ましい。さらに望ましくは前腸骨棘下部に装着することが望ましい。また、直立静止(立位)時にX軸の加速度が0G、Y軸が0G、Z軸が1Gとなるように角度補正することが望ましい。
【0023】
図2は本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の判別方法を示すフローチャートの一例である。この例においては、第1の判別手段40により立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する。そして、姿勢状態と判別したときは第2の判別手段41へ、動作状態と判別したときは第3の判別手段42に移行する。
第2の判別手段41においては立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別し、第3の判別手段42においては走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別する。そして、第3の判別手段42において通常動作と判別したときは第4の判別手段43に移行する。
第4の段別手段43においては走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別し、走行以外の動作状態と判別したときは第5の判別手段44に移行し、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
【0024】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第1の判別手段40について説明する。当該第1の判別手段40においては、図2に示すようにZ方向の姿勢成分GSZと3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する。
Z方向の姿勢成分GSZは、加速度検出手段10により検出したZ方向の加速度Gから下記の(1)式により演算した値であり、検出したZ方向の加速度Gと演算結果であるZ方向の姿勢成分GSZとの関係を図3に示す。
なお、本発明においては、図4に示すように100Hzのサンプリング周波数でX方向の加速度G(i)、Y方向の加速度G(i)およびZ方向の加速度G(i)を検出するとともに、これを所定の加速度データ記憶手段20に記憶し、記憶した加速度データ512個分に対して姿勢動作判別に用いるデータを導き出すための演算処理を加速度演算手段30により行うが、サンプリング周波数およびデータ長Nはこれに限定されるものではない。
【0025】
【数1】
JP0005120795B2_000002t.gif


【0026】
3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEは、加速度検出手段10により検出した3方向の加速度から下記の(2)、(3)式により演算した値である。
【0027】
【数2】
JP0005120795B2_000003t.gif

【0028】
立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別するためにZ方向の姿勢成分GSZと3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを用いる理由について説明する。
図5は各姿勢動作とZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図である。演算したZ方向の姿勢成分GSZと所定の閾値を比較することにより臥位とそれ以外の姿勢動作状態とを判別できることがわかる。また、図6は各姿勢動作と3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEの関係を示す分布図である。演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより立位、座位からなる姿勢状態とそれ以外の動作状態とを判別できることがわかる。
【0029】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第2の判別手段41について説明する。当該第2の判別手段41においては、図2に示すようにX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZから立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから下記の(4)式により演算した値であり、Z方向の姿勢成分GSZは、加速度検出手段10により検出したZ方向の加速度Gから前記(1)式により演算した値である。
【0030】
【数3】
JP0005120795B2_000004t.gif

【0031】
立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別するためにX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZを用いる理由について説明する。
図7は立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図である。演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZをプロットし、どの領域に位置するかにより立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別できることがわかる。
【0032】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第3の判別手段42について説明する。当該第3の判別手段42においては、図2に示すようにX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZから走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別する。
X方向とY方向の加速度の合成加速度GXYは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度GとY方向の加速度Gから下記の(5)式により演算した値であり、Z方向の姿勢成分の変化量ΔGSZは前記(1)式により演算したGSZの所定時間における変化量である。
【0033】
【数4】
JP0005120795B2_000005t.gif

【0034】
走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別するためにX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZを用いる理由について説明する。
図8は各動作とX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYの関係を示す分布図である。合成加速度GXYのみでは転倒をそれ以外の動作状態と判別できないことがわかる。しかし、転倒時、より詳細には転倒の瞬間におけるZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZは、走行等の動作状態と比較すると明らかに大きいので、X方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZを用いることにより、転倒とそれ以外の動作状態を判別することとした。
【0035】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第4の判別手段43について説明する。当該第4の判別手段43においては、図2に示すように3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する。
3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEは、加速度検出手段10により検出した3方向の加速度から前記(2)、(3)式により演算した値である。
【0036】
走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別するために3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを用いる理由について説明する。
前記したように図6は各姿勢動作と3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEの関係を示す分布図である。演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEと所定の閾値を比較することにより走行とそれ以外の動作状態とを判別できることがわかる。
【0037】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第5の判別手段44について説明する。当該第5の判別手段44においては、図2に示すようにX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2から歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから前記(4)式により演算した値である。
X方向の運動成分の平均値GMXAVEは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから下記の(6)、(7)式により演算した値である。
【0038】
【数5】
JP0005120795B2_000006t.gif

【0039】
Z方向の運動成分の平均値GMZAVEは、加速度検出手段10により検出したZ方向の加速度Gから下記の(8)、(9)式により演算した値である。
【0040】
【数6】
JP0005120795B2_000007t.gif


【0041】
ピークパワー値Sは、加速度検出手段10により検出したY方向の加速度Gの周波数解析を行い、当該周波数解析により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値である。なお、当該周波数解析には高速フーリエ変換(FFT)を行うのが望ましい。また、本発明においては512ポイントでFFT解析している。
【0042】
次に、演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sを要素とする2つの判別関数Z1、Z2を下記の(10)、(11)式により演算する。
【0043】
【数7】
JP0005120795B2_000008t.gif

【0044】
歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別するために、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値S、さらには、これらを要素とする判別関数Z1、Z2を用いる理由について説明する。
【0045】
図9は歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の運動成分の平均値GMXAVEと歩行率との関係を示す分布図である。歩行時のプロット領域が階段上昇および階段下降のプロット領域よりも高い位置にあり、X方向の運動成分の平均値GMXAVEが歩行と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0046】
図10は歩行、階段上昇、階段下降時におけるZ方向の運動成分の平均値GMZAVEと歩行率との関係を示す分布図である。階段下降時のプロット領域が歩行および階段上昇のプロット領域よりも高い位置にあり、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEが階段下降と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0047】
図11は歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSXと歩行率との関係を示す分布図であり、図12は別の被験者について行ったときの分布図である。また、図13は歩行、階段上昇、階段下降時におけるピークパワー値Sと歩行率との関係を示す分布図であり、図14は別の被験者について行ったときの分布図である。歩行、階段上昇および階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSXには個人差があり、階段上昇と他の動作状態を判別するための判別要素としてX方向の姿勢成分GSXのみを利用するには判定精度に問題が生じるが、判別要素にピークパワー値Sを併用することにより判定精度を向上できることがわかる。
【0048】
これらの技術的知見から本発明者は、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別するための判別要素として、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sを採用したのである。また、より判別しやすくするためにこれらを要素とする判別関数Z1、Z2を採用したのである。図15は、被験者10人が歩行、階段上昇および階段下降したときの判別関数Z1とZ2をプロットした分布図である。この例においては、下記の(12)、(13)式により判別関数Z1、Z2を演算しているが、これらの係数は演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sを用いて多変量解析法により算出したものである。なお、この例における判定精度は歩行時で99%、階段上昇時で98%、階段下降時で99.8%である。したがって、予め被験者の歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sを演算しておき、これらのデータを用いて多変量解析を行い、各判別要素の係数を算出しておくことにより、判定精度をより向上させることができる。よって、これらの係数を入力する係数入力手段50およびこれらを記憶する係数記憶手段51を備えることが望ましい。
【0049】
【数8】
JP0005120795B2_000009t.gif

【0050】
図16は本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の構成の一例を示す構成図である。加速度データ記憶手段20としては、検出した加速度テータを記憶できるものであれば特に限定されるものではないが、RAMやハードディスクを用いることが望ましい。判別結果を記憶する判別結果記憶手段60や係数記憶手段51についても同様である。また、加速度演算手段30としてはCPUを用いることができるし、ソフトウェアで実現することもできる。
【0051】
以上説明したように、(1)演算したZ方向の姿勢成分GSZと3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降、転倒からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する第1の判別手段40と、(2)演算したX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZから立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する第2の判別手段41と、(3)演算したX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYおよびZ方向の姿勢成分の変化量ΔGSZから走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる通常動作と転倒からなる危険動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第3の判別手段42と、(4)演算した3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する第4の判別手段43と、(5)演算したX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果から歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段44を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、加速度検出手段を装着した人(被験者)が立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降および転倒のいずれの状態にあるかを高い確度で判別することができる。
【0052】
次に、本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の別の実施形態について説明する。図20は本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の別の判別方法を示すフローチャートの一例である。図28は本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の構成の別の一例を示す構成図である。この例においては、前記した第5の判別手段44に代えて、ファジィ推論を行う第6の判別手段45を備えることにより、その人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを判別する。
【0053】
本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第6の判別手段45について説明する。当該第6の判別手段45においては、図20に示すようにX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXを入力として予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことにより歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから前記(4)式により演算した値である。
X方向の運動成分の平均値GMXAVEは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから前記(6)、(7)式により演算した値である。
パワースペクトル値YMAXは、図21に示すように、加速度検出手段10により検出した3方向の加速度の周波数解析を行い、当該周波数解析により解析された3方向のパワースペクトルから演算したY方向の基本周波数のパワースペクトル値である。
パワースペクトル値ZMAXは、図21に示すように、加速度検出手段10により検出した3方向の加速度の周波数解析を行い、当該周波数解析により解析された3方向のパワースペクトルから演算したZ方向の基本周波数のパワースペクトル値である。
なお、当該周波数解析には高速フーリエ変換(FFT)を行うのが望ましい。また、本発明においては512ポイントでFFT解析している。また、基本周波数の抽出方法としては特に限定されるものではないが、図21に示すように少なくとも歩行、階段上昇、階段下降の通常動作状態においては、X方向の基本周波数とZ方向の基本周波数とがほぼ一致し(一方の基本周波数が片方の基本周波数の整数倍にならない程度)、これらの基本周波数の1/2とY方向の基本周波数とがほぼ一致することから、これらの関係を利用して基本周波数を抽出することができる。
【0054】
次に、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXをファジィ推論の入力とする理由について説明する。
X方向の姿勢成分GSXについて説明する。前記したように図11は歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSXと歩行率との関係を示す分布図で、図12は別の被験者について行ったときの分布図である。これらの分布図からは個人差が見受けられるものの、X方向の姿勢成分GSXが大きければ、階段上昇と他の動作状態を判別するための判別要素として、また、X方向の姿勢成分GSXが小さければ、階段下降と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0055】
X方向の運動成分の平均値GMXAVEについて説明する。前記したように図9は歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の運動成分の平均値GMXAVEと歩行率との関係を示す分布図である。この分布図からは歩行時のプロット領域が階段上昇および階段下降のプロット領域よりも高い位置にあり、X方向の運動成分の平均値GMXAVEが歩行と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0056】
パワースペクトル値YMAXについて説明する。図22は歩行、階段上昇、階段下降時におけるパワースペクトル値YMAXと歩行率との関係を示す分布図である。この分布図からは階段上昇時のプロット領域が歩行時および階段下降時のプロット領域よりも高い位置にあり、パワースペクトル値YMAXが階段上昇と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0057】
パワースペクトル値ZMAXについて説明する。図23は歩行、階段上昇、階段下降時におけるパワースペクトル値ZMAXと歩行率との関係を示す分布図である。この分布図からは階段下降時のプロット領域が歩行時および階段上昇時のプロット領域よりも高い位置にあり、パワースペクトル値ZMAXが階段下降と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できることがわかる。
【0058】
これらの技術的知見から、(1)X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXに関するメンバーシップ関数を図24(a)~(d)に示すように予め作成しておき、(2)さらには以下に示すファジィルール1~3を予め作成しておき、(3)人体に装着した加速度検出手段10から時々刻々と検出される3方向の加速度データに対し前記した所定の演算を行うことにより得られるX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXを入力として予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことにより、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別するのが、第6の判別手段45である。次に、ファジィルールについて説明する。
【0059】
ルール1: if GSX=大 and YMAX=大 then 階段上昇
ルール2: if GMXAVE=大 then 歩行
ルール3: if GSX=小 and ZMAX=大 then 階段上昇
【0060】
ルール1では図24(a)のメンバーシップ関数が使用され、演算されたX方向の姿勢成分GSXを適用して適合度が算出され、および図24(c)のメンバーシップ関数が使用され、演算されたパワースペクトル値YMAXを適用して適合度が算出され、これらの適合度のAND(論理積)による適合度が算出される。
同様に、ルール2では図24(b)のメンバーシップ関数が使用され、演算されたX方向の運動成分の平均値GMXAVEを適用して適合度が算出される。
同様に、ルール3では図24(a)のメンバーシップ関数が使用され、演算されたX方向の姿勢成分GSXを適用して適合度が算出され、および図24(d)のメンバーシップ関数が使用され、演算されたパワースペクトル値ZMAXを適用して適合度が算出され、これらの適合度のAND(論理積)による適合度が算出される。
【0061】
そして、各ルールにおける適合度が算出されると、各ルールのメンバーシップ関数の論理和(重ね合わせ)の重心をとることにより歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかが判別される。なお、脱ファジィ化の手法としては特に限定されるものではなく、例えば、Max-Min法を用いることができる。
【0062】
メンバーシップ関数の作成方法としては特に限定されるものではなく、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXそれぞれの度数分布から作成することが望ましく、Mandani法を用いることができる。そして、作成したメンバーシップ関数は、メンバーシップ関数記憶手段73に記憶しておく。なお、図24(a)~(d)に示したメンバーシップ関数は度数分布から作成したものであり、具体的には、歩行率100step/minで歩行、階段上昇、階段下降したときのそれぞれの度数分布から作成している。
【0063】
図25は、ファジィ推論を用いた第6の判別手段45の判定精度を示すグラフであり、試験条件は以下の通りである。
(1)被験者:24名
(2)被験者の動作条件:指定した歩行率60~130step/min(10step/minきざみ)で歩行、階段上昇、階段下降の各動作
(3)使用したファジィルール:ルール1~3
(4)使用したメンバーシップ関数:図24(a)~(d)に示したメンバーシップ関数
【0064】
前記したように使用したメンバーシップ関数は、歩行率100step/minで歩行、階段上昇、階段下降したときのそれぞれの度数分布から作成したメンバーシップ関数であるが、被験者が歩行率60~130step/min(10step/minきざみ)で歩行、階段上昇、階段下降しても、約80%以上の精度で各動作状態を判別できることを確認することができた。
【0065】
そこで、本発明者はさらなる判別精度の向上を目指し、人体に装着した加速度検出手段10から時々刻々と検出される加速度を用いて当該人の歩行率Rを自動的に検出し、自動検出した歩行率Rに対応した予め定めたメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことにより歩行、階段上昇、階段下降の判別精度を向上させる判別方法に想到した。
【0066】
歩行率Rの検出については、検出したX方向の加速度とZ方向の加速度の周波数スペクトルを周波数解析手段33を用いて各々周波数解析(FFT解析)し、解析されたX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数を検出し、両者の周波数を比較し、より低いほうのピーク周波数を選択することにより歩行率Rを検出することができる。後述する表1は、当該方法を採用した場合の判定精度を示したものである。表1より高い精度で歩行、階段上昇、階段下降時における歩行率を検出できることがわかる。
【0067】
当該周波数解析には周波数解析手段33を用いた高速フーリエ変換(FFT)を行うのが望ましい。また、本発明においては512ポイントでFFT解析している。また、ピーク周波数の抽出方法としては特に限定されるものではないが、図21に示すように少なくとも歩行、階段上昇、階段下降の通常動作状態においては、X方向の基本周波数とZ方向の基本周波数とがほぼ一致し(一方の基本周波数が片方の基本周波数の整数倍にならない程度)、これらの基本周波数の1/2とY方向の基本周波数とがほぼ一致することから、これらの関係を利用してピーク周波数を抽出することができる。これは、人体に装着した加速度検出手段10から時々刻々と検出される加速度データにノイズが多く、周波数解析しても本来の周波数、すなわち歩行率を示す周波数においてピークが現われない場合に有効である。
【0068】
以上は、(1)X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXを入力としてファジィ推論を行うことにより歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別することができる第6の判別手段45の基本原理、ならびに(2)人体に装着した加速度検出手段から時々刻々と検出される加速度を用いて当該人の歩行率Rを自動的に検出し、自動検出した歩行率Rに対応したメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことによって、より判定精度を向上できることを説明したが、判定精度を向上させる方法はこれに限定されるものではない。
【0069】
例えば、第6の判別手段45と同じく歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する第5の判別手段44においては、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEを用いた。これは、歩行、階段上昇、階段下降時におけるZ方向の運動成分の平均値GMZAVEと歩行率Rとの関係を示す図10に示すように、階段下降時のプロット領域が歩行および階段上昇のプロット領域よりも高い位置にあり、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEが階段下降と他の動作状態を判別するための判別要素として利用できるという技術的知見に基づいたものである。したがって、ファジィ推論を行う第6の判別手段45においても、前記したファジィルール1~3に以下に示すルールを追加することにより判定精度を向上させることができる。なお、図24(e)にGMZAVEのメンバーシップ関数の一例を示す。
ルール4: if GMZAVE=大 then 階段下降
【0070】
さらには、パワースペクトル値YMAXを正規化することによっても判定精度を向上させることができる。図26(a)は、正規化する前の歩行、階段上昇、階段下降におけるパワースペクトル値YMAXを、図26(b)は正規化後のパワースペクトル値YMAXを示す模式図である。図26(a)に示すように特定(マイナー)の人のパワースペクトル値YMAXは平均的な人のパワースペクトル値YMAXよりも値が低く、しかも歩行、階段上昇、階段下降における分布が重なるため、このままではファジィ推論を行っても判定精度に限界がある。しかし、下記の(14)式により正規化を行えば、歩行、階段上昇、階段下降におけるパワースペクトル値YMAXは図26(b)に示すようになり、これら動作の判定精度向上が期待できる。なお、(14)式におけるBは各動作ごとのパワースペクトル値YMAXの平均値である。したがって、前記したファジィルール1~3に以下に示すルールを追加することにより判定精度を向上させることができる。なお、図24(f)に正規化したYMAX、すなわちCのメンバーシップ関数の一例を示す。
ルール5: if C=大 then 階段上昇
【0071】
【数9】
JP0005120795B2_000010t.gif

【0072】
以上は、度数分布等に基づいて予め定めたメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行う方法であるが、姿勢動作判別装置1にメンバーシップ関数の学習能力(機能)を持たせることにより、さらに判定精度を向上させることができる。図16に示すように本発明に係る姿勢動作判別装置1には、時々刻々と変化する加速度データが入力され、それに伴い加速度演算手段30であるGSX演算手段31等において演算値GSX等が演算され、当該演算値GSX等を用いて各姿勢動作が判別される。したがって、加速度検出手段10を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力することにより、入力された真の動作状態と、そのときのGSX等の演算値との関係を対応づけることができる。すなわち、加速度検出手段10を装着した人(被験者)のその人特有の歩行、階段上昇、階段下降におけるGSX等の演算値を把握できる。例えば、GSX等の演算値がある特定の範囲ならば、学習によりその人が歩行状態にあると判定できるのである。
【0073】
メンバーシップ関数の学習能力(機能)はこれを利用したものであり、加速度検出手段10を装着した人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを入力する動作状態入力手段71と、入力された真の動作状態と、入力されたX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびZMAXに基づいて、メンバーシップ記憶手段73に記憶された予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を書き換えるメンバーシップ関数学習手段72を備えることにより当該学習機能を実現することができる。これにより、メンバーシップ関数学習能力を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、加速度検出手段10を装着した人に最適なメンバーシップ関数を容易に作成することができるので、さらに高い確度で歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを判別することができる。なお、前記したとおり、メンバーシップ関数はこれに限定されるものではなく、前記したGMZAVEやC等のメンバーシップ関数を追加して用いることができる。
【0074】
動作状態入力手段71としては特に限定されるものではなく、電気的あるいは機械的に歩行、階段上昇、階段下降のいずれの動作状態にあるのかを入力できるものであれば形式は問わない。また、メンバーシップ記憶手段73、メンバーシップ関数学習手段72についても特に限定されるものではなく、例えば、RAMやハードディスクを用いることができる。メンバーシップ関数学習手段72におけるメンバーシップ関数の書き換えについてはCPUを用いることができるし、ソフトウェアで実現することもできる。
【0075】
なお、本発明に係る人の姿勢動作判別装置1における判別手段の構成例は、上記したものに限定されるものではない。
例えば、第1の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
また、第1の判別手段と第2の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
さらに、第1の判別手段と第3の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、転倒以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
あるいは、第1の判別手段と第2の判別手段と第3の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、転倒状態にあるのか、転倒以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0076】
また、第1の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
さらには、第1の判別手段と第2の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
あるいは、第1の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
そして、第1の判別手段と第2の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行状態にあるのか、走行以外の通常動作状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0077】
また、第1の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
さらには、第1の判別手段と第2の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
あるいは、第1の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段と第5の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0078】
同様に、第1の判別手段と第4の判別手段と第6の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
さらには、第1の判別手段と第2の判別手段と第4の判別手段と第6の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が立位、座位、臥位のいずれの状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
あるいは、第1の判別手段と第3の判別手段と第4の判別手段と第6の判別手段を備える本発明に係る人の姿勢動作判別装置1によれば、その人が姿勢状態にあるのか、転倒状態にあるのか、走行、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを高い確度で判別することができる。
【0079】
また、前記判別手段による判別結果を装置本体の外部に設置した外部機器に送信する無線通信手段70を備えることが望ましい。これにより、高齢者などの弱者が一人で外出するなど安心して自由に行動することができる。また、いざというときには迅速な救援活動を実施することも可能となる。したがって要介護者にも生きる喜びが与えられ、ひきこもりがちな要介護予備軍には社会的貢献の機会をもたらすことができ、さらには介護者の負担をも著しく軽減することができる。
【0080】
次に、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101について説明する。本発明に係るエネルギー消費量算出装置は、第一段階として立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別し、第二段階として判別した姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出する。
図17は第一段階である姿勢動作の判別方法を示すフローチャートの一例であり、図19は本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の構成の一例を示す構成図である。この例においては、第1の判別手段140により立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する。そして、姿勢状態と判別したときは第2の判別手段141へ、動作状態と判別したときは第3の判別手段142に移行する。
第2の判別手段141においては立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別し、第3の判別手段142においては走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別し、走行以外の動作状態と判別したときは第4の判別手段143に移行し、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
【0081】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の第1の判別手段140について説明する。当該第1の判別手段においては、図17に示すようにZ方向の姿勢成分GSZと3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別する。
Z方向の姿勢成分GSZは、加速度検出手段により検出したZ方向の加速度Gから前記(1)式により演算した値である。また、3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEは、加速度検出手段により検出した3方向の加速度から前記(2)、(3)式により演算した値である。
なお、立位、座位、臥位からなる姿勢状態と走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる動作状態のいずれの状態にあるかを判別するためにZ方向の姿勢成分GSZと3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを用いる理由およびその原理については本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第1の判別手段40と同じである。
【0082】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の第2の判別手段141について説明する。当該第2の判別手段においては、図17に示すようにX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZから立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段により検出したX方向の加速度Gから前記(4)式により演算した値であり、Z方向の姿勢成分GSZは、加速度検出手段により検出したZ方向の加速度Gから前記(1)式により演算した値である。
なお、立位、座位、臥位のいずれの姿勢状態にあるかを判別するためにX方向の姿勢成分GSXとZ方向の姿勢成分GSZを用いる理由およびその原理については本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第2の判別手段41と同じである。
【0083】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の第3の判別手段142について説明する。当該第3の判別手段においては、図17に示すように3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEから走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別する。
3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEは、加速度検出手段により検出した3方向の加速度から前記(2)、(3)式により演算した値である。
なお、走行とそれ以外の通常動作のいずれの動作状態にあるかを判別するために3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEを用いる理由およびその原理については本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第4の判別手段43と同じである。
【0084】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の第4の判別手段143について説明する。当該第4の判別手段においては、図17に示すようにX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値Sの各々に予め定めた所定の係数を乗じて和を採った演算結果Z1、Z2から歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段により検出したX方向の加速度Gから前記(4)式により演算した値である。また、X方向の運動成分の平均値GMXAVEは、加速度検出手段により検出したX方向の加速度Gから前記(6)、(7)式により演算した値である。Z方向の運動成分の平均値GMZAVEは、加速度検出手段により検出したZ方向の加速度Gから前記(8)、(9)式により演算した値である。また、ピークパワー値Sは、加速度検出手段により検出したY方向の加速度Gの周波数解析を行い、当該周波数解析により解析されたY方向の加速度の周波数スペクトルのピークパワー値である。
なお、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別するために、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、Z方向の運動成分の平均値GMZAVEおよびピークパワー値S、さらには、これらを要素とする判別関数Z1、Z2を用いる理由およびその原理については本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第5の判別手段44と同じである。したがって、本発明に係るエネルギー消費量算出装置においても、各判別要素の係数を入力する係数入力手段150およびこれらを記憶する係数記憶手段151を備えることが望ましい。
【0085】
次に、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の別の実施形態について説明する。図27は本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の別の判別方法を示すフローチャートの一例であり、図29は本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の構成の別の一例を示す構成図である。この例においては、前記した第4の判別手段143に代えて、ファジィ推論を行う第5の判別手段144を備えることにより、その人が歩行、階段上昇、階段下降のいずれの状態にあるのかを判別する。
【0086】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の第5の判別手段144について説明する。当該第5の判別手段においては、図27に示すようにX方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXを入力として予め定めた各動作状態のメンバーシップ関数を用いてファジィ推論を行うことにより歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別する。
X方向の姿勢成分GSXは、加速度検出手段10により検出したX方向の加速度Gから前記(4)式により演算した値である。
X方向の運動成分の平均値GMXAVEは、加速度検出手段110により検出したX方向の加速度Gから前記(6)、(7)式により演算した値である。
パワースペクトル値YMAXは、図21に示すように、加速度検出手段110により検出した3方向の加速度の周波数解析を行い、当該周波数解析により解析された3方向のパワースペクトルから演算したY方向の基本周波数のパワースペクトル値である。
パワースペクトル値ZMAXは、図21に示すように、加速度検出手段110により検出した3方向の加速度の周波数解析を行い、当該周波数解析により解析された3方向のパワースペクトルから演算したZ方向の基本周波数のパワースペクトル値である。
【0087】
なお、歩行、階段上昇、階段下降のいずれの通常動作状態にあるかを判別するために、X方向の姿勢成分GSX、X方向の運動成分の平均値GMXAVE、パワースペクトル値YMAXおよびパワースペクトル値ZMAXを用いる理由およびその原理については本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第6の判別手段45で説明した内容と同じである。
また、ファジィ推論全般に関して、例えば、使用するファジィルール、使用するメンバーシップ関数およびその作成方法、メンバーシップ学習機能等についても、本発明に係る人の姿勢動作判別装置1の第6の判別手段45で説明した内容と同じである。
【0088】
本発明に係るエネルギー消費量算出装置101は、立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段180と、前記判別手段による判別結果にしたがって適用すべき基礎代謝量または回帰式を選択する回帰式選択手段181と、選択された基礎代謝量または回帰式に基づいて姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を算出するエネルギー消費量算出手段182を備えるので、これについて説明する。
【0089】
図18は歩行、階段上昇、階段下降時における分時酸素摂取量VO2と歩行率との関係を示す分布図である。分時酸素摂取量VO2と歩行率との間には密接な相関関係が成立し、この関係を回帰式により表せることがわかる。また、歩行率を検出することができれば、前記回帰式により分時酸素摂取量VO2を算出できることがわかる。なお、図18の縦軸は分時酸素摂取量VO2であるが、採気した吸気ガスから酸素濃度、二酸化炭素濃度およびガス量を求め、吸気中の酸素量と呼気中の酸素量を求め、分時酸素摂取量VO2と二酸化炭素産出量を求め、呼吸交換比を求め、酸素1リットル当たりに生ずる熱量Kを求め、分時酸素摂取量VO2(l/min)と熱量K(kcal)の積を演算することにより、エネルギー消費量Q(kcal/min)を求めることができる。
【0090】
歩行率Rの検出については、検出したX方向の加速度とZ方向の加速度の周波数スペクトルを各々周波数解析(FFT解析)し、解析されたX方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数とZ方向の加速度の周波数スペクトルのピーク周波数を検出し、両者の周波数を比較し、より低いほうのピーク周波数を選択することにより歩行率を検出することができる。表1は、当該方法を採用した場合の判定精度を示したものである。表1より高い精度で歩行、階段上昇、階段下降時における歩行率を検出できることがわかる。
【0091】
【表1】
JP0005120795B2_000011t.gif

【0092】
図19は本発明に係るエネルギー消費量算出装置101の構成の一例を示す構成図である。加速度データ記憶手段120としては、検出した加速度テータを記憶できるものであれば特に限定されるものではないが、RAMやハードディスクを用いることが望ましい。判別結果を記憶する判別結果記憶手段160や係数記憶手段151、さらには立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を記憶する回帰式記憶手段180についても同様である。また、加速度演算手段130としてはCPUを用いることができるし、ソフトウェアで実現することもできる。
【0093】
したがって、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101によれば、前記判別手段により立位、座位、臥位、走行、歩行、階段上昇、階段下降からなる姿勢動作状態を判別することができ、さらには各動作時における歩行率についても検出することができるので、回帰式記憶手段180に記憶させた立位、座位、臥位における基礎代謝量および走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式に基づいて、各姿勢動作状態に応じたエネルギー消費量を高い精度で算出することができる。
【0094】
また、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101は、算出したエネルギー消費量を一定時間毎に順次記憶する消費量記憶手段183と、算出したエネルギー消費量を表示する消費量表示手段184を備えることが望ましい。これにより、リアルタイムでエネルギー消費量を確認することができる。なお、消費量表示手段184としては特に限定されるものではないが、携帯性から液晶を用いた表示装置を用いるのが望ましい。
【0095】
また、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101は、算出したエネルギー消費量を積算する消費量積算手段185と、積算したエネルギー消費量を記憶する積算消費量記憶手段186と、積算したエネルギー消費量を表示する積算消費量表示手段187を備えることが望ましい。これにより、リアルタイムでエネルギー消費積算量を確認することができる。なお、消費量表示手段187としても特に限定されるものではないが、携帯性から液晶を用いた表示装置を用いるのが望ましい。
【0096】
また、本発明に係るエネルギー消費量算出装置101は、立位、座位、臥位における基礎代謝量または走行、歩行、階段上昇、階段下降における歩行率とエネルギー消費量との相関関係を示す回帰式を入力する回帰式入力手段179を備えることが望ましい。基礎代謝量または運動に伴うエネルギー消費量には個人差があるため、回帰式入力手段を備えることにより、より精度の高いエネルギー消費量を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】3軸加速度センサの装着位置と軸方向を説明するための模式図である。
【図2】本発明に係る人の姿勢動作判別装置の判別方法を示すフローチャートの一例である。
【図3】加速度波形の姿勢成分と運動成分を説明するための模式図である。
【図4】加速度データの演算処理方法を説明するための模式図である。
【図5】各姿勢動作とZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図である。
【図6】各姿勢動作と3方向の加速度の合成加速度の運動成分の平均値GMXYZAVEの関係を示す分布図である。
【図7】立位、座位、臥位とX方向の姿勢成分GSXおよびZ方向の姿勢成分GSZの関係を示す分布図である。
【図8】各動作とX方向とY方向の加速度の合成加速度GXYの関係を示す分布図である。
【図9】歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の運動成分の平均値GMXAVEと歩行率との関係を示す分布図である。
【図10】歩行、階段上昇、階段下降時におけるZ方向の運動成分の平均値GMZAVEと歩行率との関係を示す分布図である。
【図11】歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSXと歩行率との関係を示す分布図の一例である。
【図12】歩行、階段上昇、階段下降時におけるX方向の姿勢成分GSXと歩行率との関係を示す分布図の他の例である。
【図13】歩行、階段上昇、階段下降時におけるピークパワー値Sと歩行率との関係を示す分布図の一例である。
【図14】歩行、階段上昇、階段下降時におけるピークパワー値Sと歩行率との関係を示す分布図の他の例である。
【図15】判別関数Z1とZ2をプロットした分布図である。
【図16】本発明に係る人の姿勢動作判別装置の構成の一例を示す構成図である。
【図17】本発明に係るエネルギー消費量算出装置の姿勢動作判別方法を示すフローチャートの一例である。
【図18】分時酸素摂取量VO2と歩行率との関係を示す分布図である。
【図19】本発明に係るエネルギー消費量算出装置の構成の一例を示す構成図である。
【図20】本発明に係る人の姿勢動作判別装置の別の判別方法を示すフローチャートの一例である。
【図21】パワースペクトル値YMAXとZMAXを説明するための模式図である。
【図22】歩行、階段上昇、階段下降時におけるパワースペクトル値YMAXと歩行率との関係を示す分布図である。
【図23】歩行、階段上昇、階段下降時におけるパワースペクトル値ZMAXと歩行率との関係を示す分布図である。
【図24】メンバーシップ関数の一例を示すための模式図である。
【図25】ファジィ推論を用いた第6の判別手段45の判定精度を示すグラフである。
【図26】パワースペクトル値YMAXの正規化を説明するための模式図である。
【図27】本発明に係るエネルギー消費量算出装置の別の判別方法を示すフローチャートの一例である。
【図28】本発明に係る人の姿勢動作判別装置の構成の別の一例を示す構成図である。
【図29】本発明に係るエネルギー消費量算出装置の構成の別の一例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0098】
1 姿勢動作判別装置
10 加速度検出手段 11 3軸加速度センサ
12 A/Dコンバータ 20 加速度データ記憶手段
30 加速度演算手段 31 GSX演算手段
32 GMXAVE演算手段 33 周波数解析手段
34 S検出手段 35 GSZ演算手段
36 ΔGSZ演算手段 37 GMZAVE演算手段
38 GXY演算手段 39 GMXYZAVE演算手段
40 第1の判別手段 41 第2の判別手段
42 第3の判別手段 43 第4の判別手段
44 第5の判別手段 45 第6の判別手段
50 係数入力手段 51 係数記憶手段
60 判別結果記憶手段 70 無線通信手段
71 動作状態入力手段 72 メンバーシップ関数学習手段
73 メンバーシップ関数記憶手段 74 YMAX演算手段
75 ZMAX演算手段 76 歩行率演算手段

101 エネルギー消費量算出装置
110 加速度検出手段 111 3軸加速度センサ
112 A/Dコンバータ 120 加速度データ記憶手段
130 加速度演算手段 131 GSX演算手段
132 GMXAVE演算手段 133 周波数解析手段
134 S検出手段 135 GSZ演算手段
137 GMZAVE演算手段 139 GMXYZAVE演算手段
140 第1の判別手段 141 第2の判別手段
142 第3の判別手段 143 第4の判別手段
144 第5の判別手段
150 係数入力手段 151 係数記憶手段
160 判別結果記憶手段 170 無線通信手段
171 動作状態入力手段 172 メンバーシップ関数学習手段
173 メンバーシップ関数記憶手段 174 YMAX演算手段
175 ZMAX演算手段 176 歩行率演算手段
179 回帰式入力手段
180 回帰式記憶手段 181 回帰式選択手段
182 エネルギー消費量算出手段 183 消費量記憶手段
184 消費量表示手段 185 消費量積算手段
186 積算消費量記憶手段 187 積算消費量表示手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26
【図28】
27
【図29】
28