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明細書 :ガス拡散組成物の製造方法、ガス拡散組成物、及びガス拡散電極、膜電極接合体、並びにこれを用いた電気化学デバイス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5167532号 (P5167532)
公開番号 特開2008-053089 (P2008-053089A)
登録日 平成25年1月11日(2013.1.11)
発行日 平成25年3月21日(2013.3.21)
公開日 平成20年3月6日(2008.3.6)
発明の名称または考案の名称 ガス拡散組成物の製造方法、ガス拡散組成物、及びガス拡散電極、膜電極接合体、並びにこれを用いた電気化学デバイス
国際特許分類 H01M   4/88        (2006.01)
H01M   4/96        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
C25B  11/04        (2006.01)
C25B  11/12        (2006.01)
C25B   9/10        (2006.01)
FI H01M 4/88 C
H01M 4/96 M
H01M 4/96 B
H01M 8/10
C25B 11/04 Z
C25B 11/12
C25B 11/20
請求項の数または発明の数 14
全頁数 12
出願番号 特願2006-229047 (P2006-229047)
出願日 平成18年8月25日(2006.8.25)
審査請求日 平成21年6月26日(2009.6.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
【氏名】宮武 健治
【氏名】内田 裕之
審査官 【審査官】長谷川 真一
参考文献・文献 国際公開第2006/013995(WO,A1)
特開昭59-209278(JP,A)
特開2000-228204(JP,A)
特開2004-172098(JP,A)
特表2002-543578(JP,A)
特開平06-163056(JP,A)
特表2008-501211(JP,A)
調査した分野 H01M 4/86-4/98
H01M 8/00-8/24
特許請求の範囲 【請求項1】
触媒担持カーボンの一次凝集体を含むガス拡散組成物の製造方法であって、前記一次凝集体を重量平均分子量が5,000以上、かつ芳香族基を含み、イオン化することで電解質になる非電解質の高分子化合物を溶解させた溶液と混合し、一次凝集体表面を前記高分子化合物により被覆し、前記高分子化合物をイオン化剤によりイオン交換基を導入することを特徴とするガス拡散組成物の製造方法。
【請求項2】
前記芳香族基を含む非電解質の高分子化合物は、ポリスチレン、ポリトリフルオロスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、および、それらの架橋体であり、この中から選ばれる単一、または複数種の混合物または共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散組成物の製造方法。
【請求項3】
前記イオン化剤が、クロロ硫酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、または三酸化硫黄/塩基錯体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス拡散組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のガス拡散組成物の製造方法により製造されたことを特徴とするガス拡散組成物。
【請求項5】
前記一次凝集体内部の穴(以下、一次孔)にイオン化された高分子膜(以下、電解質膜)が均一に被覆されていることを特徴とする請求項4に記載のガス拡散組成物。
【請求項6】
前記一次孔の孔径が1nmから100nmであることを特徴とする請求項4又は5に記載のガス拡散組成物。
【請求項7】
前記一次孔に被覆されている電解質膜の膜厚が1~50nmであることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のガス拡散組成物。
【請求項8】
請求項4から7のいずれかに記載のガス拡散組成物を含むことを特徴とするガス拡散電極。
【請求項9】
請求項8に記載のガス拡散電極を含むことを特徴とする膜電極接合体、又は電気化学デバイス。
【請求項10】
触媒が担持されたカーボン(以下、触媒担持カーボン)の一次凝集体を含むガス拡散層及び/又は触媒層を備えたガス拡散電極であって、前記一次凝集体を重量平均分子量が5,000以上、かつ芳香族基を含み、イオン化することで電解質になる非電解質の高分子化合物を溶解させた溶液と混合し、一次凝集体表面を前記高分子化合物により被覆した後に、イオン化剤を用いて前記非電解質の高分子化合物にイオン交換基を導入することを特徴とするガス拡散電極の製造方法。
【請求項11】
前記イオン化剤が、クロロ硫酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、または三酸化硫黄/塩基錯体であることを特徴とする請求項10に記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項12】
イオン化後の高分子化合物により被覆された膜厚が1~50nmであることを特徴とする請求項10から11のいずれかに記載のガス拡散電極の製造方法。
【請求項13】
請求項10から12のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とするガス拡散電極。
【請求項14】
請求項10又は13に記載のガス拡散電極を備えたことを特徴とする膜電極接合体、又は電気化学デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス拡散組成物の製造方法、ガス拡散組成物に関する。また、上記ガス拡散組成物を含むガス拡散電極、及び上記ガス拡散電極を備えた膜電極接合体、電気化学デバイス(電流の通過に伴う化学変化や、逆に電流を発生させるのに使われる化学反応を取り扱う装置、以下、電気化学デバイス)に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(以下、PEFC)は、水素と酸素の化学反応エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電気化学デバイスにひとつであり、温室ガスや有害物質を発生しないクリーンな次世代エネルギー源として有望視されている。PEFCはプロトンのみを透過するイオン交換膜を電解質に用い、燃料に水素、酸化剤に空気中の酸素を供給して次式の化学反応により電気エネルギーを得る。
アノード:H → 2H + 2e
カソード:2H +1/2O + 2e → H
【0003】
一般に燃料電池の電極構造は、カーボンブラック等のカーボン担体上に白金等の金属触媒微粒子を担持させ、この担体粒子をナフィオン(デュポン社の登録商標)等のイオン伝導性高分子化合物と混合しガス拡散組成物を作成し、このガス拡散組成物を集電体及びイオン交換膜とともに積層し、これらをホットプレスにより一体化することにより、カソード用集電体/カソードガス拡散電極/高分子固体電解質(イオン交換膜)/アノードガス拡散電極/アノード用集電体の5層サンドイッチ構造となっている。
【0004】
燃料電池の性能を向上させるためには、電極触媒の高性能化が重要課題である。金属触媒担持カーボンは、一般に凝集体を形成しており、これ以上分離することのできない最小の凝集体(以下、一次凝集体という)から成り、かかる一次凝集体には一次凝集体の内部の穴(以下、一次孔(100nm以下の細孔))と一次凝集体間の穴(以下、二次孔(数十nm以上の細孔))が存在する。
これらの細孔中に存在する触媒により、アノード電極、カソード電極において電気化学反応が起こるが、この反応を効率よく行わせるには、ガスを効率よく触媒に供給するとともに、反応により生じたイオンをイオン交換膜に効率よく通過させるガス拡散電極の微細構造制御が必要となる。ここで、ガス拡散電極の触媒微粒子の約80%は一次孔中に存在しており、一次孔の内壁に均一かつ薄膜の電解質薄膜を形成させることが、燃料電池の電極性能を決める重要な要因となる。
【0005】
従来、触媒担持カーボンを高分子電解質薄膜で被覆する方法としては、高分子電解質化合物と触媒担持カーボンを溶液中で混合する方法、コロイド吸着法、スプレードライ法、スプレーコート法、など様々な方法がある(下記特許文献1から7)。
また、高分子電解質化合物と白金イオンを含むガス拡散組成物をカーボンブラック上に付着させた後に、白金イオンを還元する方法も提案されている(下記特許文献8から10)。しかし、高分子電解質化合物は高極性溶媒(アルコール、アミド系、水等)にのみ溶解するため、溶液中でのイオン解離が起こり分子サイズが大きくなる。この結果、一次孔中へ充分に被覆させることが難しい。このため、上記いずれの方法によっても、全触媒の20%程度しか反応に寄与することができていない。図1(a)は上述した従来方法で作成した場合のガス拡散組成物の様子を模式的に示した図である。図1(a)に示すように一次孔の内壁にはイオン化された高分子(イオン導電性高分子)が被覆されていない。
【0006】
一次孔への被覆を増やすために、触媒に対して高分子電解質化合物の混合割合を多くするとイオン伝導性の向上が見られ、触媒の利用率は向上する。しかし一方で、気体の拡散性が悪くなってしまうため、高電流密度で燃料電池を運転することができなくなる。

【特許文献1】特許3275652
【特許文献2】特開2002-373665
【特許文献3】米国特許第4185131
【特許文献4】米国特許第4233181
【特許文献5】米国特許第3943006
【特許文献6】米国特許第3259839
【特許文献7】米国特許第4185131
【特許文献8】特許3049267
【特許文献9】特許3395356
【特許文献10】特開2003-036858
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明の目的は、触媒担持カーボンが形成する一次凝集体の一次孔の内壁に均一に高分子電解質薄膜が被覆されたガス拡散組成物の製造方法を提供すること、この方法を利用したガス拡散組成物、及び上記ガス拡散組成物を利用したガス拡散電極、それを用いた膜電極接合体、電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、触媒担持カーボンを非電解質の高分子化合物で被覆した後に、イオン化剤を用いて非電解質の高分子化合物被膜をイオン化することにより、カーボン担体の一次孔に均一に高分子電解質薄膜が被覆されたガス拡散組成物を作成できることを見出した。
このガス拡散組成物を用いたガス拡散電極は触媒の利用率が高くガスの拡散性に優れ、これを用いた電気化学デバイスは優れた性能を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、一次凝集体を含むガス拡散組成物の製造方法であって、前記一次凝集体を非電解質の高分子化合物で被覆し、前記非電解質の高分子化合物をイオン化剤によりイオン化することを特徴とする。
【0010】
このように、非電解質である低極性の高分子化合物を用いることによって、粘度や界面張力が小さな溶媒を使用することができる。そのため、低粘性の高分子化合物溶液を得ることができ、高分子化合物を触媒担持カーボンの一次孔にまで侵入させることができる。このようにして一次孔の内壁に均一な非電解質の高分子薄膜を形成した後、イオン化剤によりイオン化することで、一次孔の内壁に電解質高分子薄膜を被膜することができる。非電解質の高分子薄膜のイオン化は、低粘性溶液や気体を用いることができるため、細孔中でも効率よく行うことができる。
【0011】
この結果、100nm以下の一次孔内部に存在する触媒粒子上にイオンとガスの供給が充分に行われることとなり、高い触媒利用率を得ることができる。
【0012】
前記一次凝集体は触媒坦持カーボンであることは好ましい。また、前記イオン化剤が、クロロ硫酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、または三酸化硫黄/塩基錯体であることは好ましい。これらのイオン化剤を用いることにより、細孔中に被覆した高分子薄膜に好適にスルホン酸基を導入することができる。
【0013】
また、非電解質の高分子化合物が芳香族基を有することは好ましい。芳香族基を有することによって、スルホン酸化やホスホン酸化などのイオン化反応を容易に行うことができるためである。また、従来から汎用されているパーフルオロ系の高分子電解質を用いず、芳香族基を含む炭化水素系の高分子化合物をイオン化する方法であることから、低コストで製造することが可能になる。なお、非電解質の高分子化合物の重量平均分子量が5000以上であることは好ましい。重量平均分子量が5000以上であることによって強靭な薄膜形成が容易になるためである。
【0014】
本発明は上述したガス拡散組成物を含むガス拡散電極であることを特徴とする。本発明のガス拡散電極は、触媒利用率とガスの拡散性のいずれにも優れた性能を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス拡散電極は、その細孔内部に高分子電解質薄膜が均一に被覆された構造を持ち、高い触媒利用率と優れたガス拡散性能を持つ。これを用いた燃料電池は、優れた特性を示す。
【0016】
本発明によれば、触媒担持カーボンの一次凝集体の内壁に均一に高分子電解質薄膜が被覆されたガス拡散電極を作成することができる。このガス拡散電極は触媒の利用率が高くガスの拡散性に優れている。これを用いた電気化学デバイスはで優れた性能を示すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のガス拡散組成物の製造方法、ガス拡散組成物、およびこれを用いたガス拡散電極の実施形態について詳細に説明する。
【0018】
本発明では触媒担持カーボンとして市販品を含む既知のものを用いることができる。例えば、カーボンブラック、活性炭、無定形炭素等のカーボン担体に、触媒微粒子が高分散に担持されているものである。カーボン担体の比表面積や表面官能基の種類や量は特に限定しない。触媒の種類、担持量、粒径、分布は特に限定しないが、カーボン担体上で凝集せず安定に分散していることが好ましい。
【0019】
また、金属イオンを含む触媒前駆体を触媒が担持されていないカーボン担体上に析出させた後、化学的、熱的、または電気化学的な還元、あるいは光還元などによって触媒が担持したカーボンを得ることもできる。この場合、触媒前駆体の析出や還元は、高分子化合物の被覆やイオン化の前、後、あるいは同時に行うことができる。
【0020】
非電解質の高分子化合物の種類は特に限定されないが、薄膜状態でイオン化剤と反応し容易にイオン化できることが望ましい。有機高分子、無機高分子いずれでも構わないが、特に、イオン化の容易さの観点から芳香族基を含むことが好ましい。例えば、ポリスチレン、ポリトリフルオロスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリフェニレン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、および、それらの架橋体、などを挙げることができる。
【0021】
尚、これら非電解質の高分子化合物は、単一の種類であってもよく、いくつかの種類の混合物または共重合体(ブロック共重合体、交互共重合体、あるいはランダム共重合体)であってもよい。
【0022】
非電解質の高分子化合物の分子量は特に限定しないが、細孔中で安定な薄膜を形成するために重量平均分子量が5000以上であることが好ましい。
【0023】
非電解質の高分子化合物を溶解させる溶媒としては、特に限定しないが、粘性や界面張力が小さい溶媒で、しかも低沸点であることが好ましい。例えば、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、などの炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロフルオロメタン、1、1、2-トリクロロ-1、2、2-トリフルオロエタン、などのハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、などのエーテル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、などのケトン溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジノン、などの含窒素溶媒;二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、などの含硫黄溶媒、などが挙げられる。尚、非電解質の高分子化合物が液体である場合には、溶媒を使用しなくてもよい。
【0024】
なお、これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。溶媒の比率については特に制限はないが、通常固形分濃度が2~90重量%程度の範囲であることが好ましい。
【0025】
非電解質の高分子化合物の溶液と触媒を担持したカーボン担体を混合する方法は、磁気攪拌、機械攪拌、振動攪拌、超音波攪拌、ボールミリング、など公知の方法を用いることができ、充分な混合が可能であれば特に限定されない。また、必要に応じて、加熱、加圧、脱泡、脱気、などを行ってもよい。
【0026】
また、本発明の目的を損なわない範囲内で、補強剤、柔軟剤、分散剤、安定化剤、界面活性化剤、充填剤、などの他の任意成分を添加することができる。
【0027】
この非電解質の高分子化合物と触媒担持カーボンを含む混合物を、公知の方法で乾燥することにより、非電解質の高分子化合物を薄膜被覆した触媒担持カーボンを得ることができる。乾燥方法としては特に限定されず、必要に応じて、減圧、加熱をしながら行うことができる。特に、スプレードライやロータリーキルンを用いると、非電解質の高分子化合物をカーボン細孔中に均一、短時間に被膜することができる。薄膜形成後、必要があれば加熱してアニーリング処理を行ってもよい。
【0028】
カーボン担体上に被覆した非電解質の高分子化合物薄膜をイオン化する方法は特に限定されず、公知のイオン化剤を用いることができる。特に反応の容易さの点から、クロロ硫酸、硫酸、発煙硫酸、三酸化硫黄、または三酸化硫黄/塩基錯体、が好ましく用いられる。
【0029】
本イオン化反応は、溶媒の非存在下においても行い得るが、溶媒の存在下でも行うことができる。この溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、などの炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロフルオロメタン、1、1、2-トリクロロ-1、2、2-トリフルオロエタン、などのハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、などのエーテル溶媒;ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、などの含窒素溶媒、などが挙げられる。このほか一般に求電子反応などに使用される溶媒も、適宜に選択して好適に使用できる。
【0030】
なお、これらの溶媒は、1種単独で用いても2種以上混合して用いてもよい。イオン化剤の濃度は、用いる反応原料の種類やその使用割合および目的とするイオン官能基の導入量によって著しく異なり、特に制限されない。また、電解質化試剤が液体や気体である場合には、溶媒を使用しなくてもよい。
【0031】
イオン化反応における溶媒の比率については特に制限はないが、通常固形分濃度が2~90重量%程度の範囲であることが好ましい。
【0032】
反応時間は用いる反応原料の種類やその使用割合、反応温度、溶媒の条件によって著しく異なるが、通常、0.1~500時間程度であり、好ましくは2~80時間である。
【0033】
本反応系を構成するに当たって、高分子薄膜被服触媒担持カーボンと、イオン化剤、溶剤、などの配合の順序、方法については特に制限はなく、それぞれを同時にあるいは種々の順序、様式で、段階的に配合することも可能である。
【0034】
本反応の温度は用いる反応原料の種類やその使用割合および目的とするイオン官能基の導入量によって著しく異なり、特に制限されないが、一般的には、-50~150℃であり、好ましくは0~80℃である。
【0035】
反応圧力は特に制限はなく、必要に応じて加圧・減圧してもよい。通常、常圧もしくは反応系の自圧で好適に行うことが出来る。もっとも、必要により、電解質化反応に支障のない希釈ガスなどとの混合ガスを用いて加圧下に行うこともできる。
【0036】
このようにしてイオン化した高分子化合物薄膜の厚さは特に制限されないが、一般的には、カーボン担体の一次孔(100nm程度)以下であり、好ましくは、1~50nmである。高分子電解質薄膜の厚さがこれより薄いとプロトンの供給が不十分となり、これより厚いとガスの供給が不十分となる。図1(b)は本発明により一次孔の内部まで高分子電解質膜が均一に被覆された様子を模式的に示した図である。
【0037】
本発明のガス拡散電極は、上述した方法で得られたガス拡散組成物を導電性多孔質体(カーボン不織布やカーボンペーパーやそれらを撥水化処理したガス拡散層)に塗布または含浸することにより、ガス拡散電極とすることができる。この導電性多孔質体への塗布または含浸の代わりに電解質膜に直接に塗布し、これにガス拡散電極を圧着して膜電極接合体を形成しても良い。
【0038】
上記のガス拡散電極または導電性多孔質体の2枚とイオン伝導性の高分子電解質膜または上述のガス拡散組成物を塗布した電解質膜を接合させた膜電極接合体を形成し、これに接触させたセパレータを通して反応ガスを供給することによって単電池が得られる。本発明の電気化学デバイスは、イオン伝導性の高分子電解質膜や接合させる方法については特に制限はなく、公知のものを用いることができる。この膜電極接合体の片側に燃料、反対側に酸化剤を供給することによって燃料電池とすることができる。
【0039】
燃料電池の両側は、燃料や酸化剤ガスの供給と集電の機能を有するセパレータで挟持された構造を持つ。セパレータは一般的に用いられている材質、形態のものが使用できる。セパレータには流路が形成され、その流路には反応ガスを供給するためのガス供給装置が接続されると同時に、反応しなかった反応ガスおよび発生した水を除去する手段とが接続される。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。
(実施例1)
図2は非電解質の高分子化合物(芳香族ポリエーテル)を被覆した触媒坦持カーボンの作成フローチャートである。公知の方法により合成した芳香族ポリエーテル(Macromolecules, 38, 7121-7126 (2005))0.70gを80mLのN,N-ジメチルアセトアミド/テトラヒドロフラン混合溶媒(体積比で1/9)に溶解し、これに2.00gの白金担持カーボン(田中貴金属工業Tec10E50E)を加えた。この混合物を遊星ボールミルにより60分間粉砕混合し、スプレードライヤーを用いて乾燥することにより、芳香族ポリエーテル被覆白金担持カーボンを得た。
【0041】
図3は非電解質の高分子化合物被覆触媒坦持カーボンのイオン化フローチャートである。上述した方法で得た芳香族ポリエーテル被覆白金担持カーボン0.5gを24mLのヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒(体積比で1/2)に加え、超音波浸透器で5分間分散させた。この混合物に、15mLの0.8Mクロロ硫酸溶液(溶媒は、ヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒(体積比で1/2))を加え、30℃で24時間反応させた。反応終了後、固形物をろ過し、ヘキサンと純水で洗浄し、乾燥することにより、スルホン酸化芳香族ポリエーテル被覆白金担持カーボンを得た。
【0042】
(実施例2)
市販のポリスルホン(Aldrich社製)0.50gを50mLのN,N-ジメチルアセトアミド/クロロホルム混合溶媒(体積比で1/9)に溶解し、これに2.00gの白金担持カーボン(田中貴金属工業Tec10E50E)を加えた。この混合物を遊星ボールミルにより60分間粉砕混合し、スプレードライヤーを用いて乾燥することにより、ポリスルホン被覆白金担持カーボンを得た。
【0043】
このポリスルホン被覆白金担持カーボン0.5gを24mLのヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒(体積比で1/2)に加え、超音波浸透器で5分間分散させた。この混合物に、15mLの0.8Mクロロ硫酸溶液(溶媒は、ヘキサン/ジクロロメタン混合溶媒(体積比で1/2))を加え、30℃で24時間反応させた。反応終了後、固形物をろ過し、ヘキサンと純水で洗浄し、乾燥することにより、スルホン酸化ポリスルホン被覆白金担持カーボンを得た。
【0044】
(比較例1)
市販の5wt%Nafion溶液(du Pont社製、低級アルコール/水混合溶液)14gと2.00gの白金担持カーボン(田中貴金属工業Tec10E50E)を混合した。この混合物を遊星ボールミルにより60分間粉砕混合し、スプレードライヤーを用いて乾燥することにより、Nafion被覆白金担持カーボンを得た。
【0045】
(一次孔への高分子電解質の充填率)
試験例1、2、および比較例1の試料の細孔分布を水銀ポロシメトリー法により解析し、出発物質(白金担持カーボン)と比較することにより、一次孔への充填率を算出した。
【0046】
(膜/電極接合体の作製)
実施例1、2、および比較例1の試料0.7gに水3mLと2-プロパノール3mLを加え、遊星ボールミルにより60分間粉砕混合した。この混合物を撥水化カーボンペーパー表面に形成したガス拡散層(面積10cm)上に塗布し、80℃で2時間乾燥した。これを冷間プレス(10kg/cm、10秒)した後、1N硝酸エタノール溶液400mL中に浸漬し、12時間攪拌した。この酸処理工程を2回繰り返した後、エタノールで洗浄、80℃で2時間乾燥してガス拡散電極を得た。得られたガス拡散電極2枚でNafion112膜(du Pont社製、面積10cm)を挟みこんでホットプレス(120℃、10kg/cm、10秒)し、膜/電極接合体を得た。
【0047】
(燃料電池試験)
上述のようにして得られた膜/電極接合体を反応ガス供給溝付きの2枚のセパレータで挟持して、燃料電池単セルを作成した。片側(アノード側)に乾燥水素を200mL/min、反対側(カソード側)に乾燥酸素を100mL/minで供給して80℃で測定した。触媒利用率は、カソード電位が900mVの時の比活性で評価した。
【0048】
(結果)
【0049】
【表1】
JP0005167532B2_000002t.gif

【0050】
表1から明らかなように、本発明による実施例1および2の電極触媒は、比較例1の試料に比べ、カーボン担体細孔への高い充填率を示した。さらに、本発明による実施例1および2のガス拡散電極を用いた燃料電池は、比較例1を用いた燃料電池と比較して、高い性能(高い触媒利用率、高い電流密度)を有している。
【0051】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、燃料電池や電気化学セル、および電気化学センサなどのデバイスのガス拡散電極として好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】一次凝集体を含むガス拡散組成物の様子を模式的に示した図である。
【図2】非電解質の高分子化合物を被覆した触媒坦持カーボンの作成フローチャートである。
【図3】非電解質の高分子化合物被覆触媒坦持カーボンのイオン化フローチャートである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2