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明細書 :位置測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5200228号 (P5200228)
公開番号 特開2008-051564 (P2008-051564A)
登録日 平成25年2月22日(2013.2.22)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
公開日 平成20年3月6日(2008.3.6)
発明の名称または考案の名称 位置測定装置
国際特許分類 G01S  11/14        (2006.01)
G01S   5/30        (2006.01)
FI G01S 11/14
G01S 5/30
請求項の数または発明の数 1
全頁数 13
出願番号 特願2006-225931 (P2006-225931)
出願日 平成18年8月22日(2006.8.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2006年7月20日 日経BP社発行の「高速電力線通信のすべて」に発表
審査請求日 平成21年8月10日(2009.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】都築 伸二
個別代理人の代理人 【識別番号】100119367、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 理
審査官 【審査官】神谷 健一
参考文献・文献 特開2003-279651(JP,A)
特開平06-133474(JP,A)
特開2005-346587(JP,A)
武市直之、今岡通博、都築伸二、山田芳郎,可聴音DS-CDMによる高精度位置検出法の検討,平成17 年度電気関係学会四国支部連合大会,日本,2005年,p.88
調査した分野 G01S 11/00-11/16
G01S 5/00- 5/30
特許請求の範囲 【請求項1】
移動体に設けられたマイク部と、複数のスピーカ部と、それぞれのスピーカ部に異なる可聴域のM系列音源データを供給する音源データ供給装置と、同期信号発生装置を有し、マイク部より送信される同期信号要求信号に対応して同期信号を音源データ供給装置からマイク部とスピーカ部へ電力線を介して送信し、スピーカからマイクへの音の伝達時間によって移動体の位置を測定し、音源データ供給装置からマイク部への同期信号の送信を行う電力線アンテナが音源データ供給装置に設けられており、この電力線アンテナが送信に使用する送信波長の1/2またはその整数倍の長さのシールドを音源データ供給装置の動力線に設けることによって構成されている位置測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、可聴音を使用して移動体の位置を測定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭内を活動領域とするロボット(ホームロボット) の研究がさかんに行われている。ホームロボットは人間の生活空間で活動できるようにするため、高度な障害物回避能力や柔軟な軌道計画能力が求められる。これらを実現するためにはロボットが自身の位置を高精度(数cmオーダと考えている) に把握する必要がある。
【0003】
超音波を用いた手法の代表的なシステムはアクティブバット(Active bat)と呼ばれるものであり、40kHz の超音波信号を用いて3cm 程度の精度を実用化している(非特許文献1)。 しかし、超音波は直進性が強く家庭内のように多数の障害物や強い環境ノイズが存在する環境においては反射波の飛行時間を測定してしまうため精度が劣化する。その対策として多数の受信器を天井に設置する必要があり、本発明の目的には沿わない。一方、可聴音を使った位置検出では障害物があっても回折波を利用できるので精度低下の程度が少なくなる。また、回折するので隠れ端末となりにくく、かつ配置するセンサ(スピーカ)も少数ですむ可能性が高い。また、音速を343m/s とすると10kHz で標本化すれば理想的には3.43cm の分解能で検出できることになりRF 信号を用いるよりも安価なハードウェアで高精度検出を実現できる。反面、回折により測距した場合は結果として真の座標とは異なる位置が検出されてしまうため、検出結果を検定する必要があるという問題点がある。 Girod は障害物や環境ノイズによる精度劣化に対して可聴音をスペクトル拡散することを提案している(非特許文献2)。 しかし、測定範囲は1 次元にとどまっており、障害物を含む環境についてのコメントはあるものの測定結果は示されていない。
また、音波の飛行時間を測定するためには音波が送信された時間を受信器が正確に知る必要がある(同期問題と呼ぶ)。本発明は非特許文献2の Girodのシステムと同様に同期信号を電波で送信するものの、家庭内をくまなく電波をカバーするためには、多数の送信アンテナを設置する必要があった。
【0004】
そこで、本発明者は、可聴域のM系列音源データを使用して2次元の位置測定を行うことを提案した(非特許文献3)。

【非特許文献1】Nissanka B. Priyantha, Anit Chakraborty, and Hari Balakrishnan,The Cricket Location-Support System, 6th ACM International Conference on Mobile Computing and Networking (ACM MOBICOM), Boston, MA,pp.32≡43, August 2000.
【非特許文献2】Lewis Girod, Development and Characterization of an Acoustic Rangefinder, Tech. rep. TR-00-728, Information Sciences Institute (ISI), the University of Southern California(USC), March 2000.
【非特許文献3】武市直之、都築伸二、今岡通博、山田芳郎、 “可聴音DS-CDMによる高精度位置検出法の検討”、平成17 年度電気関係学会四国支部連合大会,pp.88,2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1および非特許文献2の発明では、障害物のある場所において、移動体の位置を2次元測定することができない。この発明は、簡易な構成により、移動体の位置を高精度で測定することができる技術を提供することを目的とする。回折により測距した場合は結果として真の座標とは異なる位置が検出されてしまうため、検出結果を検定する方法を明らかにする。電波による同期信号の送信範囲を簡易に拡大する方法を明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を解決するために、本発明の位置測定装置は、移動体に設けられたマイク部と、複数のスピーカ部と、それぞれのスピーカ部に異なる可聴域のM系列音源データを供給する音源データ供給装置と、同期信号発生装置を有し、マイク部より送信される同期信号要求信号に対応して同期信号を同期信号発生装置からマイク部および音源データ供給装置を経由してスピーカ部へ電力線を介して送信し、スピーカからマイクへの音の飛行時間差によって移動体の位置を測定するものである。
誤差の検定については、可聴外高周波域での自己相関ピーク誤差の分散の程度を測定する方法および、同期受信エネルギーを測定する方法を検討した。
【0007】
さらに、上記の構成に加えて、同期信号発生装置からマイク部への同期信号の送信を行う電力線アンテナが同期信号発生装置に設けられており、この電力線アンテナが送信に使用する送信波長の1/2またはその整数倍の長さのシールドを同期信号発生装置の電力線に設けることによって構成する。さらにLC共振回路を同期信号発生装置に設けることにより、シールド付電力線の実際の長さを送信波長の1/2またはその整数倍になるように電気長を調整できるようにしてもよい。


【発明の効果】
【0008】
以上、この発明の位置測定装置は、簡単な構成でありながら高い精度で移動体の位置を測定でき、比較的小型の障害物のある場所でも使用できるという効果を有する。測定結果を検定することにより比較的大型の障害物がある場合は測定結果に大きな誤差を有していることを検知できるという効果を有する。また既設の電力線をアンテナにすることにより同期信号の到達範囲を容易に広げることができる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明を実施するための最良の形態について図面に基づいて説明する。図1は1次元位置測定の原理を示す説明図、図2は2次元位置測定の原理を示す説明図である。
【0010】
1次元位置測定では、図1に示すように、測定システムはスピーカ1、およびマイク2をそれぞれ接続した2 台のWindows(登録商標)をOSとする PC(PC1, PC2) で構成されている。ここで使用した機器について具体的に説明する。PC 用サウンドカード3はCreative 社製SoundBlaster Live! Value、スピーカはAdvent 社製S4997、マイクはAudio-Technica 社製AT-VD3 であり、いずれも廉価なものを用いた。音波の入出力用A/D 変換、D/A 変換は標本化周波数48 kHz、標本化ビット16 bit で行った。音源データとしてchip-rate 8kHz の1023chip M 系列を複数用意し、それぞれ100 Hz ~ 8kHz のBPF に通したものをスピーカから出力した。BPF の低域遮断周波数およびchip-rate は、使用したマイクの周波数特性(80Hz~13kHz) を考慮した値である。用意するM系列の数は(使用するスピーカの数+1) 個である. なお、同時にスピーカから出力してもそれぞれが識別できるような、つまり良好な相互相関特性を有する系列であればM 系列以外のものも適用できる。2 次元以上の測定では、複数のスピーカから同時に異なるM 系列を出力し1 つのマイクでそれらの音波を同時に受信するため、本システムは同期型DS-CDM(Direct-Sequence Code Division Multiplex) の一種といえる。
【0011】
図1に示したように1次元の測定は2 種類のM 系列をPC1(パソコン4)のサウンドカード3から同時にステレオ出力し、トリガ音は電気信号のままPC2(パソコン5) のステレオ端子入力の片側へ直接入力する. 距離lm離したところに設置したマイクにて録音した音の自己相関ピーク位置と、トリガ音の自己相関ピーク位置を比較することにより、音波の飛行時間tf を求める. 音速をvs = 331:5+0:61C (C:室温[℃]) とすると測定伝搬距離lm は式(1) にて算出できる.
lm = tf × vs + α (1)
ここでトリガ音の伝搬遅延時間は空気中を飛行する測距音に比べて十分小さいとしている。 また、α はオフセット値でありスピーカとマイクの電気的な遅延時間に相当する距離である。 図2ではl = 100 cm の地点でα を較正した。なお、本例では音源点および集音点を目視で定めているためl の設置精度は1cm以下である。測定を行ったマイクの設置位置はl = 10 ~ 240cm の範囲である。
【0012】
図2に2 次元で測定する場合の方法を示す。 測距用M 系列をp(t); q(t)、スピーカA、B(それぞれ符号1a、1b)からの出力振幅係数をa; b とするとスピーカA、B から出力される測距用系列音はそれぞれpA(t) = a × p(t); qB(t) = b × q(t) となる。またトリガ用M 系列はr(t)、受信後の各系列をpA’ (t); qB’ (t); r’ (t) とする。BPF の周波数特性は図1と同じである。
【0013】
図2のように2m 間隔をあけて配置したスピーカA,B から1周期時間Tm のM 系列pA(t); qB(t); r(t) を同時に出力する(図3)。pA(t); qB(t) の自己相関ピーク位置とr(t) の自己相関ピーク位置の差から各スピーカからの音波飛行時間tfA; tfB を求め、式(1) に代入して各スピーカからの測定伝搬距離lmA; lmBを求めた。その後、既知の各スピーカの位置とlmA; lmB により測定座標(xm; ym) を求めた。測定に先立ち(x, y) = (100cm, 100cm) の地点でα の値を較正し(x, y) の設置精度は0011段落に示したのと同様にそれぞれ1cm 以下、x = 0~200[cm], y = 10~220[cm] の範囲を10cm 間隔で測定した。
【0014】
図1に比べて図2ではスピーカを1つ追加したことに加え、PC1,PC2 をEthernet(登録商標)によって接続している。遠近問題対策として送信電力制御の必要があり、PC2 で求めた出力振幅係数a; b をPC1 へフィードバックするためEthernet 接続している。出力振幅係数をk (k = a またはb)、pA(t); qB(t) の自己相関ピーク値をRadj(j)(j =A またはB)、受信信号の自己相関ピーク値をRrcv(j) とすると、k は次式で表される。
【数1】
JP0005200228B2_000002t.gif

【0015】
障害物を含む場合(以下ケース2 と呼ぶ) の測定精度を調べる試験を以下のように行った。測定結果の信頼度を検定するために以下の2 つの方法を実施した。
【0016】
可聴音は障害物が存在しても回折により音波がマイクに到達するが、周波数の増加に伴い回折しにくくなる。この性質を利用して信頼度の検定ができないかについて調査した。使用するM 系列のchip-rate を可聴域よりも高くし、その可聴外帯域をn 分割したものと可聴外全高周波域を合わせたm = (n + 1) 個の帯域毎に自己相関ピーク位置Dh(i; j) を求める(i = 1, 2, ・・・, m; j =A またはB)。スピーカj から出力される系列の可聴域を含めた全帯域を使用して求めた自己相関ピーク位置をDall(j) とすると次式にてDall(j) と可聴外域での自己相関ピーク位置との誤差の分散vj を算出できる。
【数2】
JP0005200228B2_000003t.gif
つまり式(3) から算出されるスピーカA,B の自己相関ピーク位置誤差の分散をそれぞれvA; vB とする。
【0017】
前述の指標の実現方法を図4に示す。障害物として図のように(x; y) = (100cm; 100cm) の場所に半径9cm,高さ81cm の円柱(人間の足の太さに相当する) と、(x, y) =(150cm, 150cm) から(x, y) = (201cm, 150cm) にかけて幅51cm, 高さ81cm, 奥行き0.8cm の板を配置した。なお、図中のzoneA,B,C は障害物による誤差が増加することが予想される範囲である。
ケース1 と同様にスピーカ、およびマイクを2 台のパソコンWindowsPC(PC1, PC2) にそれぞれ接続した。ただし可聴外高周波音の再生・録音に対応できるよう使用機器を変更した。再生側PC用サウンドカードはCreative 社製Sound Blaster Audigy4Digital Audio を使用した。 このカードは標本化周波数96 kHz時10Hz~46kHz の信号に対する動作が保証されている。録音側PC 用オーディオキャプチャボックスはRoland 社製EDIROLUA-25 である。 このボックスは標本化周波数96 kHz 時20Hz~40kHz の信号に対する動作が保証されている。スピーカはSony 社製SRS-88 を使用した。マイクはBEHRINGER 社製SINGLE-DIAPHRAGM CONDENSER MICROPHONE B-5 (無指向性) を使用した。このマイクは20Hz~20kHz の信号に対する動作が保証されている。音波の入出力用A/D 変換, D/A 変換は標本化周波数96 kHz、標本化ビット16 bit で行った。
【0018】
測定に先立ちこれらのオーディオ機器の伝達特性を測定した。スピーカ単体でテスト信号発生ソフトWaveGeneを用いて20Hz ~ 48kHz まで一定振幅でスイープさせた音波を10cm離れた地点で録音したものをスペクトラムアナライザソフトWaveSpectra を用いて伝達特性の測定を行った。図5に測定結果を示す。図中の上方がスイープ音の伝達特性、下方が実験室の環境ノイズレベルである。 図から35kHz 付近まで再生録音が可能であることがわかる。この結果から使用するM 系列のchip-rate は可聴外高周波域を含むよう32 kHz とした。なお系列長は1023chip でケース1 と同じである。
【0019】
α の較正は(x, y) = (100cm, 100cm) にて障害物のない状態で行い、較正後に円柱を設置した. 測定した平面は2×2m2 で、その平面上を10cm 間隔でlmA, lmB の測定を行い、(xm, ym)を算出した。ただし、y = 0cm の線分上はマイクの感度が悪いため除いた。
また、図4 のBPF1,2,3 はいずれも窓関数法によるFIR フィルタ(ハミング窓, タップ数51) を使用した。BPF1 およびBPF2 の周波数特性は100Hz~32kHz である。 一方、可聴外高周波域音波の自己相関ピーク位置検出を行うための周波数分割はBPF3 にて表1 のようにn = 11 分割し、さらに全可聴外高周波域を加えたm = 12(= n + 1) として式(3) からvj を算出した。
使用したサウンドカード出力データ系列の構成を図6,7 に示す. 測定手順を次に示す。
【0020】
手順1(送信電力制御)
図6に示すように3 チャンネル同時に音波を出力し、式(1) に従って出力振幅係数a, b を求め、再度音波を出力し受信エネルギーが一定のレベルになるまで繰り返す。
【0021】
手順2(距離測定)
手順1(送信電力制御)が終了すると式(1) により各スピーカからの測定伝搬距離lmA, lmB を算出し、(xm, ym) を求める。
【0022】
(同期受信)
距離測定で求めた各スピーカからの到達時間tfA, tfB に従い、系列sA(t) , sB(t) をマイクの場所で同時に受信させるため図7のように出力時間を調整し、手順3a、手順3b を行う。
【0023】
手順3a(可聴外高周波域での自己相関ピーク誤差の分散)
pA(t) , qB(t) , p0A(t) , q0B(t) を表1 に従い分割し、各スピーカ毎について式(3) より自己相関ピーク誤差の分散を求める。
【表1】
JP0005200228B2_000004t.gif

【0024】
手順3b(音波の同期受信エネルギー)
式(4) からsA(t) , sB(t) の同期受信エネルギーErj(x, y) を求める。なお、手順1,2,3ではsA(t) , sB(t) は使用しないが簡単のためスピーカから出力した。同じく手順3b ではpA(t) , qB(t)は使用しないが出力した。
【0025】
測定結果について説明する。
座標誤差ev、および座標を求めるために使用した距測データの誤差
A=|lA-lmA|,eB=|lB-lmB|
の分布を図8 から図10 に示す. なお、障害物があるため測定不可能な点は×印で示している。
図8では障害物により生じている誤差がzone1 で最大3.6cm、zone2 で最大4.6cm, zone3 で最大164cm となった。図9では障害物により生じている誤差がzone4 において最大4.6cm、zone5 において最大162cm となった。 図10 では障害物により生じている誤差がzone6 において最大4.6cm, zone7 において最大162cm となった。
図8から図10において最大誤差発生点はいずれも板状の障害物の背面すぐの(x, y) = (190cm, 150cm) であった。また、板状の障害物の背後のzone3,5,7 では7~164cm まで誤差が分布しており、障害物への影響が大きいことがわかる。 一方、円柱影響下のzoneA,B(図4) に対応するzone1,2,4,6 の誤差は、図3と同程度の誤差の範囲に収ったことがわかる。従ってこの試験の障害物の場合は、zoneC(図4) に対応するzone3,5,7 の測定結果の信頼度が低いことを検出する必要がある。以下にその結果を示す。
【0026】
(可聴外高周波域での自己相関ピーク位置誤差の分散)
図11,12 に可聴外高周波域での自己相関ピーク位置誤差の分散vA, vB を示す。スピーカA からの障害物による誤差分散vA の分布(図11) はzone8 で最大2.15e+04cm2、 zone9で最大2.04e+03cm2 となった。最大誤差分散点はzone8 の板状の障害物の裏(x, y) = (190cm, 150cm) であり、図8と一致した。スピーカB からの障害物による誤差vB の分散分布(図12) はzone10 で最大1.76e+03cm2, zone11 で最大3.20e+03cm2, zone12 で最大2.08e+03cm2 となった。 最大誤差分散点はzone11 の(x, y) = (190cm, 160cm) であり、図8と一致した。
【0027】
従って図8 で誤差が大きかったzone3 に対応するzone8,11は測定結果の信頼性が低いことを検出できることがわかる。 図8 のzone1 に対応して図12のzone10 が検出できたが円柱周辺のzone2 は検出できなかった。可聴音と可聴外高周波域の回折が同程度であるため障害物による精度低下を検出できなかったと考えられる。しかし、元々zone2 は図3 と同程度の誤差の範囲であるため、ここでは図12で検出できなかったことを許容した。 一方、障害物の存在しないzone9,12 においても誤差分散が高い点が多数存在している。 これはマイク-スピーカの指向性により可聴外高周波成分のSNR(Signal to Noize Ratio) が低下したためと考えられるが、次に述べる方法と併用すれば除外できる。
【0028】
(同期受信エネルギー)
図13 に同期受信エネルギーEr と誤差ev との関係を示す。図から受信エネルギーEr と誤差ev に相関があることがわかる。図14に同期受信エネルギーの分布を示す. 板状の障害物の裏であるzone13 において障害物によって受信エネルギーが著しく低下していることがわかる。最低点は(x, y) = (190cm, 150cm)で図8と一致した. 図3と同程度の誤差かどうかの判断のための閾値をev = 5cm としたときに、図13にてev >= 5cm となる最大のEr は0.40 であった。
Er < 0.4 かつev > 5 であるarea1 の測定点はzone13 の内に存在しており、障害物による精度低下を検出できている.Er < 0.4 かつev < 5 のarea2 ではEr が低いにも関わらずev が小さい。これは障害物がなくても測定距離が伸びるに従い受信エネルギーが低下する傾向にあるためであると考えられる。0026段落において示したスピーカ-マイク間の指向性の影響(zone9,12) は図14で観測されなかった。 従って、可聴外高周波域における自己相関ピーク位置誤差と同期受信エネルギー低下の両方が発生しているzone の信頼性が低いと言える。
【0029】
つぎに、電力線を用いて同期信号の授受を行う方法について説明する。
図15は、電力線アンテナを有する位置測定装置を示す説明図である。非特許文献2の Girodのシステムと同様に可聴音と電波を用いる。ただし、同期信号発生装置から出力される同期信号(図中のM-seq.(0))のうち移動体への通知はGirodのシステムと同様に電波を用いるものの、電波の輻射方法が通常のアンテナではなく、電力線をアンテナとして使用する点が異なる。またGirodのシステムでは同期信号発生装置と音源データ供給装置は一体であるが本発明では分離することが可能であり、同期信号(図中のM-seq.(0))の音源データ供給装置への通知は電力線を経由するコモンモード信号として行う点が異なる。
図2の例ではベースバンド信号であるM-seq.(0)は、PC(2)のマルチチャンネルサウンドカードから直接出力されているが、図15では角速度ωcの搬送波でASK(Amplitude Shift Keying。On-Off Keying (OOK)とも呼ばれる)変調される。変調された信号は、LCL(Longitudinal Conversion Loss)プローブ相当の回路を経由してコモンモード信号として電力線に注入されるため、電力線から輻射される。ここでL(コイル)C(コンデンサ)で構成されるアンテナチューナはACコードの電気長が搬送波の半波長になるように調整するために用いられている。本例では搬送波周波数fc (= ωc/2π) が 25MHzの場合について試験を行っており、ACコードの長さは2mである。 LCLプローブ相当の回路は、コモンモードとディファレンシャルモードとのモードアイソレータとして用いられている.
シールド付きACコードは3芯であり(ホット、コールド、グランド)電力線アンテナのフィーダ線として機能している。コモンモード信号はシールド線内を伝搬し、電力線(図15ではVVF (Vinyl insulation and Vinyl sheath Flat)ケーブル。国内の屋内配線材として最もよく用いられている)との接続点が給電点に相当する。図2と比べて図4では同期信号の送信方法が異なるものの、電気的に送信しており、音速に比べて十分高速であるため、測距精度に差はない。
【0030】
全長14.6mの2芯VVFケーブル(芯線直径1.6mm)を試験室の天井に配線しその伝達関数の測定結果を図16に示す。図中の線1は“ACコード込みコモンモード“であり、図15のアンテナチューナで25MHzに共振するように調整したACコードが送信側に挿入された場合である。
コモンモードの伝達関数は一般に制御不能であるため、従来積極的に通信手段として用いられることはなかった。しかし、図15に示したようなシールド付きACコードを用いれば所望周波数帯で低損失通信が可能となることがわかる。
本発明の電力線アンテナの励振状態を図17に示す。電力線はVVF(2芯、10m)とVCT-SB(2芯shielded vinyl cabtire cable、1.25mm2, 70m)の2種類である。シールド付きACコードの長さは2mであるので、給電点は図中のl = 2mの点である。ACコードに接続される電力線に関わらず、ACコードは常に搬送波の半波長で共振したアンテナエレメントとして機能している様子が分かる。一方給電点の右手側である電力線は線材によって電気長は変わるものの、アンテナエレメントとして機能している様子がわかる。
【0031】
(電力線アンテナの輻射特性)
電力線アンテナのカバーエリアを従来のアンテナと比較するための測定法を図18に、その結果を図19に示す。
図19(a)は、図18(a)のようにしてコモンモード信号を2芯VVFケーブルに注入し、VVFケーブルに沿って距離x離れた地点での電界強度である。ただし、xが変わっても最寄のVVFケーブルとの距離は常に190cmとしている。一方、従来のアンテナの場合は、図10(b)に示すように、電波は1つのループアンテナから放射されるものとし、距離x離れた場所の電界強度を測定した。ここで、E(f, x)を 距離x [m]での周波数fの電界強度とし、E(f, 1)との相対強度 Hr(f, x) を次式のように定義した。
r(f,x)=E(f,x)/E(f,1) (4)
この相対強度を図19に示している. 両者ともxが大きくなるにつれて相対強度は徐々に小さくなるものの、電力線アンテナのほうがその程度がより小さいことがわかる。これは、コモンモード信号がVVFケーブルを伝搬する際の損失のほうが図(b)のように空気中を伝搬する場合の損失よりも小さいためである。したがって、電力線が多数配線されている室内では電力線アンテナのほうが従来のアンテナよりもそのカバーエリアを広くできる可能性が高いといえる。
【0032】
電力線通信(PLC) モデムを内蔵し、最寄りの電源コンセントに差し込むと、聞きたい音源データが再生されるスピーカをPLC スピーカと呼ぶことにする。近年DVD やディジタル放送受像機の普及により5.1ch サラウンドが家庭でも手軽に楽しめるようになってきており、サラウンドスピーカのワイヤレス化のニーズは高い。また、携帯ディジタル音楽プレーヤーに保存しているコンテンツを最寄りのスピーカで聞きたいといったニーズもある。これらのニーズにPLC スピーカは有用である。
図15ではすべてのスピーカはPC(1)に電線で接続されているが、本発明ではPLCスピーカでも実施できる。このPLC スピーカの使用を前提にした上記測位システムのイメージを図20 に示す。
通常は上記のように音楽ストリーミング用としてスピーカを用いるのであるが、測位を行うときはその要求に応じて、測位用のM系列信号を重畳してスピーカから出力する。PLCスピーカには、音源データ供給装置を内蔵する。ここで重要なのがスピーカ及びマイクの同期である。同期ずれによる誤差を5cm 以内にするためには、デバイス間を145μsec (= 5cm/vs、vsは音速) 以下で同期する必要がある。この値を、LAN でよく用いられているCSMA 型のプロトコルで保証することは困難である。そこで提案するのが、商用周波数に各デバイスを同期させる方法である。CEPCA技術仕様によれば、商用電源の負荷によってゼロクロス点は変位するが、1 軒あたりの変位は最大でも100μsec 以下であるとされており、同期ずれによる誤差を5cm以内にするための手段として有効である。
図15で示した変調したM系列 (0)がコモンモード信号として電力線を通じて伝送される。その伝送途中で電波として空中にも輻射されマイクに同期信号として伝わり、マイク側で復調されタイムスタンプ音として録音される。電力線を通じて伝送されたM系列 (0)信号が各スピーカに内蔵する音源データ供給装置に到着したら、スピーカから計測用のM系列(1)(2)が出力される。移動体に内臓したマイクは到着したM系列(1)(2)音も録音する。M系列 (0)信号到着からスピーカ出力までの遅延時間は固定時間tdで表記するとする。
M系列(0)音を録音してからM系列(1)および(2)音を録音するまでの遅延時間t_1およびt_2との差t_1 ≡ td およびt_2 ≡ tdが、スピーカからマイクまでの音の飛行時間であり、既知の音速からそれぞれの飛行距離が算出できる。スピーカの位置が既知であれば、マイクの位置も求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】1次元位置測定の原理を示す説明図である。
【図2】は2次元位置測定の原理を示す説明図である。
【図3】サウンドカードの出力データ系列を示す説明図である。
【図4】2次元位置測定装置を示す説明図である。
【図5】オーディオ機器の伝達特性と環境ノイズを示すグラフである。
【図6】サウンドカードの出力データ系列を示す説明図であり、同期測定時を示す。
【図7】サウンドカードの出力データ系列を示す説明図であり、送信電力制御、距離測定時を示す。
【図8】2次元位置測定座標誤差ベクトルを示すグラフである。
【図9】測定距離誤差を示すグラフである(スピーカA)。
【図10】測定距離誤差を示すグラフである(スピーカB)。
【図11】可聴外高周波域での自己相関ピーク位置誤差分散の分布を示すグラフである(スピーカA)。
【図12】可聴外高周波域での自己相関ピーク位置誤差分散の分布を示すグラフである(スピーカB)。
【図13】同期時の系列s(t) の受信エネルギーEr と誤差ベクトルev の関係示すグラフである。
【図14】同期時の系列s(t) の受信エネルギー分布を示すグラフである。
【図15】電力線アンテナを有する位置測定装置を示す説明図である。
【図16】2芯VVFケーブルの伝達関数の測定結果を示すグラフである。
【図17】電力線アンテナの励振状態を示すグラフである。
【図18】電力線アンテナのカバーエリアの測定法を示す説明図である。
【図19】電力線アンテナのカバーエリアの測定結果を示すグラフである。
【図20】PLC スピーカを含む記測位システムを示す概念図である。
【図21】PLC スピーカを含む記測位システムの同期を示すチャート図である。
【符号の説明】
【0034】
1.スピーカ
2.マイク
3.サウンドカード
4,5.パソコン

図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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