TOP > 国内特許検索 > KFを含有するチタン酸バリウム系結晶の圧電体 > 明細書

明細書 :KFを含有するチタン酸バリウム系結晶の圧電体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5526422号 (P5526422)
公開番号 特開2007-326768 (P2007-326768A)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成19年12月20日(2007.12.20)
発明の名称または考案の名称 KFを含有するチタン酸バリウム系結晶の圧電体
国際特許分類 C30B   9/12        (2006.01)
C04B  35/462       (2006.01)
H01L  41/18        (2006.01)
H01L  41/187       (2006.01)
FI C30B 9/12
C04B 35/46 J
H01L 41/18 101A
H01L 41/18 101J
請求項の数または発明の数 2
全頁数 9
出願番号 特願2007-122088 (P2007-122088)
出願日 平成19年5月7日(2007.5.7)
優先権出願番号 2006130539
優先日 平成18年5月9日(2006.5.9)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年4月30日(2010.4.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】秋重 幸邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】塩谷 領大
参考文献・文献 特表昭63-503456(JP,A)
特公昭48-043715(JP,B1)
特開昭47-026690(JP,A)
Jean RAVEZ,Crystalline network influence on the variation of T c with the F-O substitution rate in oxyfluorides derived from octahedral-type ferroelectric oxides,Comptes Rendus de L'Academie des Sciences, Serie IIc: Chimie,1999年,(1999),2(7-8),415-419
調査した分野 C30B 9/12
C04B 35/462
H01L 41/18
H01L 41/187
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式が
Ba1-xTiO3-x(ただし、0.0<x<0.13)
として表される組成を有するチタン酸バリウム系結晶の圧電体。
【請求項2】
一般式が
Ba1-xTiO3-x
として表され、
xの範囲が0.0<x<0.13であって、20℃から35℃までの圧電定数d33が200[pC/N]をこえるチタン酸バリウム系結晶の圧電体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、KFを含有するチタン酸バリウム系圧電体に関し、特に、圧電定数d33が大きく、また室温における比誘電率が大きなチタン酸バリウム系素材に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO)は強誘電体として知られている。強誘電体は圧電材料として用いることができるので、電子部品材料として広く利用されている。中でも、セラミック系圧電材料としては、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)がその圧電定数も大きく、最もよく用いられてきている経緯がある。
【0003】

【特許文献1】特許第3751304号公報
【特許文献2】特開2003-104796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PZTは鉛を含むため、環境面への配慮から近年では鉛フリーな圧電材料が求められている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、鉛を含まない新規な強誘電体または圧電定数の大きい新規な圧電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、一般式がBa1-xTiO3-x(ただし、0.0<x<0.13)として表される組成を有するチタン酸バリウム系結晶の圧電体である。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、一般式がBa1-xTiO3-xとして表され、xの範囲が0.0<x<0.13であって、20℃から35℃までの圧電定数d33が200[pC/N]をこえるチタン酸バリウム系結晶の圧電体である。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉛を含まない新規な強誘電体または圧電定数の大きい新規な圧電体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
<製造>
原料の調整をするにあたり、まず、BaCO:TiO=1:2(モル比)を混合し、アルミナるつぼに入れ、800℃で8時間仮焼きしてCOを飛ばした。なお、BaCOは関東化学株式会社製の純度99.9%の試薬を9.8769g(0.05mol)用い、TiOはALDRICH社製の純度99.8%の試薬を8.0060g(0.1mol)用いた。
【0010】
続いて、仮焼きにより得られたBaTiO+TiOの混合物にKFをフラックスとしてチタン酸バリウム系結晶を成長させた。すなわち、フラックス法による結晶成長を試みた。なお、BaTiO+TiO:KF=1:10(モル比)とした。BaTiO+TiOは9.3918g(Ba換算で0.03mol)用い、KFは、メルク株式会社製の純度99%の試薬を17.43g(0.3mol)用いた。
【0011】
結晶成長に際しては、ふた付き白金るつぼを用い、室温から2時間かけて616℃まで、その後4時間かけて1073℃まで温度を上昇させ、1073℃を4時間維持し、その後2時間かけて976℃まで冷却し、その後8時間かけて796℃まで冷却した。その後制御を解除し、るつぼを室温まで自然冷却した。
【0012】
るつぼの中から、固まったフッ化カリウムと、結晶化しなかったチタン酸バリウムを洗い流し、単結晶を取り出した。単結晶の大きさは数ミリ程度であった。
【0013】
以上は、BaCO:TiO=1:2、すなわち、BaCO+(1+α)TiOと表現するとα=1.0の場合であるが、この表記に従って、α=0.3,0.5,0.7,1.2として原料を配合し、同様な方法で結晶を得た。
【0014】
<評価:組成>
得られた単結晶を、EPMA定量分析したところ、α=1.0のときBa0.890.10TiO2.880.13であり、融剤のKFがBaTiOに約0.1mol取り込まれた結晶であることが確認できた。また、粉末XRD解析をおこなったところ、BaTiO結晶であれば2θが45°付近で二つに分かれるピークが一つであるなど若干の相違が見られるものの、得られた結晶は基本的にBaTiO結晶に極めて近似した構造であることも確認できた(図1参照)。これらの結果から、得られた結晶は、BaTiOのBの一部がKに置換され、電荷の関係からKと等量のOがFに置換された結晶であるといえる。すなわち、この結晶は、一般式をBa1-xTiO3-xとして表すことのできるチタン酸バリウム系結晶である。上記の製造工程を経れば、x=0.1のチタン酸バリウムBa0.90.1TiO2.90.1を得ることができる。なお、以降ではこの一般式で表される結晶を適宜新結晶と称することとする。
【0015】
α=0.5と0.7についてのEPMA定量分析結果もあわせて表1に示す。
【表1】
JP0005526422B2_000002t.gif
表1より、KF濃度xはαの値の約1/10であることが確認できる。
【0016】
次に、新結晶の物性を評価した。
<評価:誘電率>
新結晶の自然面である(100)面に銀ペーストを塗り、比誘電率ε’の温度依存を測定した。数kHz以上では圧電共振が現れるため、300Hzの低周波における比誘電率を測定した。なお、あわせて誘電損失tanδも測定した。図2は、新結晶の比誘電率ε’および誘電損失tanδの測定結果を示したグラフである。なお、図示は省略するが、周波数が30Hz、または、100Hzにおいても、ほぼ同一の曲線が得られた。
【0017】
新結晶の比誘電率ε’は、室温近くの約35℃で12000近くのピーク値を有することがわかった。また、-53℃、-10℃でも同様のピーク値(相転移点)が観測された。BaTiOの相転移点が130℃、-5℃、-90℃であるため、KおよびFの混入により新結晶の高温の相転移点Tcは約100℃低下し、低温の相転移点は約40℃上昇したことが確認できた。なお、新結晶の誘電損失tanδは1%程度であり、良好な強誘電体であることも確認できた。
【0018】
同様に、α=0.3,0.5,1.2についても比誘電率ε’を測定した。結果を図3に示す。図示したように、誘電曲線のTcはαが大きくなるにつれ徐々に低温側にシフトしていくが、Tcにおける比誘電率ε’はいったん小さくなりα=1.0(x=0.10)あたりで急激に上昇し、その後再び小さくなっていくことがわかった。
【0019】
図4は、比誘電率の逆数プロットである。常誘電相ではCurie-Weiss則ε’=C/(T-T)が成り立つ(ここでCはCurie-Weiss定数、Tは常誘電Curie温度である)。一般に、一次転移の場合にはT<Tcであり、二次転移ではT=Tcとなる。図4の結果が明確に示すように、α=0.3,0.5の場合、TはTcより20℃~30℃低く、一次転移の特徴を表している。一方、α=1.0では、T=Tcとなり、二次転移の性質を示すようになる。さらにα=1.2では、転移のブロード化が起きており、ε’=C/(T-Tに近似していくことから二次転移からさらに散漫相転移に移行していくことがわかった。以上から、α=1.0近傍(x=0.1近傍)での急激な誘電率の上昇は、転移の次数が一次から二次に変化する臨界点近傍での誘電率の振る舞いを反映したものとして理解できることが確認できた。
【0020】
次に、各周波数における比誘電率の温度依存性を測定した結果を図5に示す。周波数は、10Hz,10Hz,10Hzである。なお、図5は図3と異なり温度を℃で表記している。また、測定点を各周波数で7点としているので、図3のように精細な曲線とはなっていないが、大きな周波数依存性は特に認められなかった。
【0021】
また、常誘電相(T>Tc)と強誘電相(T<Tc)における比誘電率の周波数依存性を測定した。結果を図6および図7に示す。各温度域で、ほぼフラットであることが確認できた。なお、f=10Hzでプロットの様子が異なっているが、測定装置であるLCRメータをHP4284AからHP4285Aに切り替えているためである。
【0022】
<評価:圧電定数d33
新結晶の圧電定数d33をd33メータにより測定した。測定装置は、IACAS製
XJ-6B d33/d31 Materを用いた。なお、測定用試料に400V~500Vの電圧を印加した状態で、試料を100℃から冷却して分極処理をおこなった。測定結果を図8に示した。グラフからわかるように、新結晶の室温における圧電定数は、d33=300pC/Nであった。この値は、BaTiOの室温における値の約6倍であり、PZTの室温における値の200pC/Nよりも大きい。すなわち、新結晶は極めて有望な圧電特性を有することが確認できた。なお、35℃までの測定結果を図9に示す。温度が高くなると若干圧電定数が小さくややばらつきも見られるものの、d33>200pC/Nであり依然として大きな値であることが確認できた。
【0023】
<評価:DEヒステリシスループ測定>
新結晶には、Tc=35℃以下において、強誘電体特有のDE履歴曲線が観測されたので、新結晶の残留分極Prと抗電界Ecとを測定した。図10は、新結晶の残留分極Prと抗電界Ecのそれぞれの温度依存を測定した結果を示したグラフである。
【0024】
<評価:TcのK濃度依存>
図11は、新結晶Ba1-xTiO3-xのKの濃度xを0~0.12付近までふったときの転移温度とK濃度の関係を表した相図である。得られたチタン酸バリウム系結晶は、立方晶、正方晶、斜方晶、菱面体晶と逐次転移をするが、その相転移温度はほぼKF濃度に比例して連続的に変化する。高温から二つの転移温度は減少傾向であり、最後の転移温度は増加傾向であることがわかった。したがって、x=0.16~0.17付近でピンチングが起こることが示唆された。なお、KFの置換量を変化させるために、原料中のTi量や融剤KFの量を相対的に変化させて先に示したのと同様な方法により結晶を作成した。なお、それぞれの結晶についてはEPMA定量分析してxを決定している。
【0025】
なお、製造方法の観点からは、次のように表現できる。
<製造方法1>
Baに対するTiのモル比が大きくなるように原料を調製し、仮焼きにより実質的にBaOとTiOのみからなる混合物を生成し、これに、KFを融剤としたフラックス法により請求項1または2に記載の結晶を得ることを特徴とする圧電体製造方法である。ここで原料はたとえば、BaCOのような化合物であってもよく、仮焼きにより余分な化合物が含まれなくなるのであれば特に限定されない。実質的にとは、仮焼きにより余分な化合物が含まれなくなることをいう。
【0026】
<製造方法2>
Baに対するTiのモル比が大きくなるように原料を配合する原料配合工程と、KFを融剤としたフラックス法によりBaTiO結晶を成長させようとする結晶成長工程と、を含み、Baの一部がKに置換され、また、Oの一部がFに置換された結晶を得ることを特徴とする圧電体製造方法である。換言すれば、BaよりもTiのモル比が大きくなるように原料を配合し、KFを融剤としたフラックス法によりBaTiO結晶を成長させようとして、Baの一部がKに置換され、また、Oの一部がFに置換されたチタン酸バリウム系結晶を得ることを特徴とする圧電体製造方法である。
【0027】
なお、Baに対するTiのモル比とは、原料として元素単体を用いるという意味ではなく、それぞれ化合物中に存在するBaとTiのモル比をいう。また、Baの一部がKに置換され、また、Oの一部がFに置換され、とは、Kの置換量とFの置換量が実測結果として同量であることを厳密に求めることを意図するものではなく、たとえばEPMAにより分析した場合、必ずしもKの置換量とFの置換量が同一でなくともよいものも含むことを意味する。
【0028】
<製造方法3>
製造方法1または2に記載の圧電体製造方法において、原料にBaTiを用いたこと、または、BaTiOとTiOとを用いたことを特徴とする圧電体製造方法である。すなわち、製造方法3では、BaTiO結晶を得るには、チタンの含有量が相対的に多いことを意味している。
【0029】
<製造方法4>
製造方法1または2に記載の圧電体製造方法において、TiOとBaOとを、そのモル比がTiO/BaO>1となるようにして原料を調整したことを特徴とする圧電体製造方法である。すなわち、製造方法4では、BaTiO結晶を得るには、チタンの含有量が相対的に多いことを意味している。
【0030】
この他、上記圧電体は、一般式がBa1-xTiO3-xとして表され、一次から二次へ相転移が移行するx=0.1近傍の組成である圧電体である、とも表現できる。ここで、相転移があると種々の物性が変化するが、たとえば、キュリーワイス則による誘電率の二次転移を挙げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、圧電定数d33の値が常温でPZTより高く、鉛フリーであるので、コンデンサー材料としてはもとより、広く圧電材料として、インクジェットプリンタのプリンタヘッド、液晶画面のバックライト用の圧電トランスなどにも適用可能である。すなわち、本発明である物質または本発明である製造方法により得られる物質は、強誘電体としても圧電体(または圧電材料)としても使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】新結晶のX線回折パターンを示したグラフである。
【図2】新結晶の比誘電率ε’および誘電損失tanδの温度依存性を示したグラフである。
【図3】αを変えたときの比誘電率の温度依存性を示した図である。
【図4】比誘電率の逆数プロットである
【図5】各周波数における比誘電率の温度依存性を測定した結果を示した図である。
【図6】常誘電相(T>Tc)における比誘電率の周波数依存性を測定した結果を示した図である。
【図7】強誘電相(T<Tc)における比誘電率の周波数依存性を測定した結果を示した図である。
【図8】新結晶の圧電定数d33の室温付近の値を測定したグラフである。
【図9】新結晶の圧電定数d33の室温付近の値を測定したグラフである。
【図10】新結晶の残留分極Prと抗電界Ecのそれぞれの温度依存を測定した結果を示したグラフである。
【図11】新結晶のxを0~0.12付近までふったときの転移温度とK濃度の関係を表した相図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10