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明細書 :溶液プラズマ反応装置及び該装置を使用したナノ材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5286517号 (P5286517)
公開番号 特開2008-071656 (P2008-071656A)
登録日 平成25年6月14日(2013.6.14)
発行日 平成25年9月11日(2013.9.11)
公開日 平成20年3月27日(2008.3.27)
発明の名称または考案の名称 溶液プラズマ反応装置及び該装置を使用したナノ材料の製造方法
国際特許分類 H05H   1/24        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
B22F   9/02        (2006.01)
B22F   9/24        (2006.01)
B22F   9/14        (2006.01)
FI H05H 1/24
B82B 3/00
B22F 9/02 Z
B22F 9/24 Z
B22F 9/14 Z
請求項の数または発明の数 12
全頁数 11
出願番号 特願2006-250221 (P2006-250221)
出願日 平成18年9月15日(2006.9.15)
審査請求日 平成21年7月25日(2009.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】新原 ▲皓▼一
【氏名】中山 忠親
【氏名】江 偉華
【氏名】末松 久幸
【氏名】鈴木 常生
個別代理人の代理人 【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
審査官 【審査官】山口 敦司
参考文献・文献 特開2006-202662(JP,A)
特開2005-191018(JP,A)
特開2000-093967(JP,A)
特開平07-130493(JP,A)
特開2004-306029(JP,A)
特開2005-108600(JP,A)
特開2006-087965(JP,A)
調査した分野 H05H 1/24
B22F 9/02
B22F 9/14
B22F 9/24
B82B 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
原料化合物を溶媒に溶解又は分散させた反応液を収容する溶液反応槽、及び前記溶液反応槽内にプラズマ発生電極を装置の垂直方向に移動可能に設けた溶液プラズマ反応装置において、前記プラズマ発生電極を下端部にプラズマ化されたガスの出口を有するガス導入管及びその周囲に配置した高周波電源に接続する柱状の電極部により構成すると共に、前記プラズマ発生電極の中心部において前記ガス導入管の周囲に冷却媒体導入部及び空洞部を設け、前記空洞部には高周波電源から高周波を印加する高周波入力端子を設置したことを特徴とする溶液プラズマ反応装置。
【請求項2】
さらに、溶液反応槽内に他のエネルギー発生源を設けたことを特徴とする請求項1に記載の溶液プラズマ反応装置。
【請求項3】
他のエネルギー発生源が超音波発生源であることを特徴とする請求項2に記載の溶液プラズマ反応装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載された溶液プラズマ反応装置内で、原料化合物を溶媒に溶解又は分散した反応液にガス導入管からガスのプラズマを導入することを特徴とするナノ材料の製造方法。
【請求項5】
前記反応液が、有機金属錯体、金属アルコキシド及び金属塩から選択された少なくとも1種の化合物を、水、油、アルコールから選択された溶媒に溶解又は分散した反応液であることを特徴とする請求項4に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項6】
前記ガス導入管から導入されるガスが、水蒸気、水素、アンモニア、ヘリウム、アルゴン、窒素、酸素、炭化水素から選択された少なくとも1種のガスであることを特徴とする請求項4又は5に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項7】
溶液プラズマ反応装置のプラズマ発生電極を反応液中に浸漬させた状態で反応液にガスのプラズマを導入することを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
【請求項8】
溶液プラズマ反応装置のプラズマ発生電極を反応液の液面から上方に離間した状態で反応液にガスのプラズマを導入することを特徴とする請求項4~6のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
【請求項9】
前記反応液にプラズマとともに他のエネルギーを照射することを特徴とする請求項4~8のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
【請求項10】
他のエネルギーが超音波であることを特徴とする請求項9に記載のナノ材料の製造方法。
【請求項11】
ナノ材料が、平均粒径1nm~10μmの微粒子であることを特徴とする請求項4~10のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
【請求項12】
反応液中に配置した基材の表面に平均粒径1nm~10μmの微粒子からなる被膜を形成することを特徴とする請求項4~10のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊な形状を有する高周波電極を使用し、溶液中に熱、電界、ラジカル種、紫外線の複合化したプラズマ状態を発生する装置、および、このプラズマ状態によって原料化合物を溶媒に溶解又は分散した反応液からナノ材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電源ならびに電極構造の開発の進展に伴い、大気圧あるいはそれ近傍における高圧ガス雰囲気および、水溶液などの溶液中においてプラズマあるいは放電を発生させる技術が盛んに提唱されている。気相中でのこれら現象を大気圧プラズマ、液相中でのこれら現象は溶液プラズマと呼ばれている。しかし、それらの多くは高電圧な直流を利用したいわゆるコロナ放電あるいは、ナノ~ミクロ秒程度のパルス幅を有するパルス電源によるストリーマー放電を利用したものである。それらは、簡単な構造を有する有機物質(例えばメタン、一酸化窒素など)の分解や、低融点の有機化合物の表面構造の破壊などによる表面処理などに応用されている。
【0003】
大気圧プラズマによる表面洗浄の例としては、平行平板電極への直流の印加による放電現象による低融点の有機物の分解と、フローされたガスによる吹き飛ばし効果の相乗効果による表面洗浄が提案されている(特許文献1参照)。しかし、一般にこれらの放電現象においては、主としてプラズマのエネルギー密度が低いことに起因し、簡単な分解反応しか起こすことが出来ない。このように、直流またはパルス電源を利用した大気圧プラズマあるいは溶液プラズマにおいては、その応用範囲は主として物質の分解を基本とした現象の利用にとどまっている。

【特許文献1】特開2006-159009号公報
【0004】
一方、材料自体に関しては、近年、工業技術の発展に伴い、フラーレン、金属ナノ粒子又は薄膜、無機ナノ粒子又は薄膜と呼ばれる、直径1nm~1μm程度の微粒子又はこれが堆積することで形成せられた粒子状または膜状物質の製造が可能となっている。特に、これらの中で結晶粒径が10nm未満の物質はシングルナノレベル材料と呼ばれており、二次電子放出材料、発光体、吸熱体、触媒、エネルギー貯蔵、電池の電極、分離分級のためのフィルター又は吸着物質などとして広範な適用が試みられている。これらの多くは、その表面を他の材料で修飾することができれば大幅な機能の向上を図ることができる。ところが、このような微細な構造を有する材料の製造は、核形成とその成長過程を厳密に制御せしめる必要があるため、極めて困難であることが知られている。
【0005】
例えば、金属塩を水に溶解させ、これを乾燥、仮焼又は還元雰囲気中での焼成を経ることにより、1~10nm程度の微粒子を製造できることが知られている。ところが、このような溶液法においては溶液の濃度が高まるにつれ、形成した核の密度ならびにそのサイズが大きくなるため、最終的に得られる粒子が大きくなる。したがって、一般的にはシングルナノレベル材料を得るためには、金属濃度としてo.o1mol/l 以下程度の極めて希薄な溶液中での製造が必要である。このため、溶液法においてシングルナノレベル材料を得るためには、大量の溶媒が必要となり、装置もスケールアップせざるを得ない。また、場合によってはpH調整剤や還元剤などを添加する必要があるが、一般的にこれらの添加剤は人体に有害な場合が多いため、溶液をそのまま排水することは出来ない。これらのことが本質的には安価な手法であるはずの溶液法のコストを上昇させてしまうことにつながっている。
【0006】
また、気相法と称して、金属を減圧下で蒸発することにより、シングルナノレベル材料を作製する試みも多数報告されている。加熱の方法などにより様々な材料系の製造が報告されているが、これらの何れもが、真空装置などを必要とするため、大量の製造を行うためには高額な装置を必要としている。このことが、気相法のコストを大幅に向上させてしまうことにつながっている。
溶液法により安価にシングルナノレベル材料を製造するための試みとして、シングルナノレベルのシリカ粒子を製造するための溶液法が提案されているが(特許文献2参照)、この場合には、アルカリ調整剤としてアンモニアを添加する必要があるため、廃液をそのまま排水することは出来ない。
また、気相法により安価にシングルナノレベル材料を製造するための試みとしては、レーザーアブレーション法を用いたナノ粒子製造の例があるが(特許文献3参照)、反応容器内を不活性ガス、または酸素、オゾン、水蒸気、アンモニア雰囲気にするために真空装置を要するため、高価な装置が必要となる問題がある。
このように、シングルナノレベル材料の製造方法に関しては、コスト面や有害廃棄物発生の問題が存在している。

【特許文献2】特開2004-315300号公報
【特許文献3】特開2006-075979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、高周波電源を用いた溶液プラズマを利用することにより、低コストで有害廃棄物の発生を防止しながらナノ材料を効率良く製造する方法及びその装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、ガス導入管及びその周囲に配置した高周波電源に接続する柱状の電極部からなるプラズマ発生電極を採用することによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は次の1~12の構成を採用するものである。
1.原料化合物を溶媒に溶解又は分散させた反応液を収容する溶液反応槽、及び前記溶液反応槽内にプラズマ発生電極を装置の垂直方向に移動可能に設けた溶液プラズマ反応装置において、前記プラズマ発生電極を下端部にプラズマ化されたガスの出口を有するガス導入管及びその周囲に配置した高周波電源に接続する柱状の電極部により構成すると共に、前記プラズマ発生電極の中心部において前記ガス導入管の周囲に冷却媒体導入部及び空洞部を設け、前記空洞部には高周波電源から高周波を印加する高周波入力端子を設置したことを特徴とする溶液プラズマ反応装置。
2.さらに、溶液反応槽内に他のエネルギー発生源を設けたことを特徴とする1に記載の溶液プラズマ反応装置。
3.他のエネルギー発生源が超音波発生源であることを特徴とする2に記載の溶液プラズマ反応装置。
4.1~3のいずれかに記載された溶液プラズマ反応装置内で、原料化合物を溶媒に溶解又は分散した反応液にガス導入管からガスのプラズマを導入することを特徴とするナノ材料の製造方法。
5.前記反応液が、有機金属錯体、金属アルコキシド及び金属塩から選択された少なくとも1種の化合物を、水、油、アルコールから選択された溶媒に溶解又は分散した反応液であることを特徴とする4に記載のナノ材料の製造方法。
6.前記ガス導入管から導入されるガスが、水蒸気、水素、アンモニア、ヘリウム、アルゴン、窒素、酸素、炭化水素から選択された少なくとも1種のガスであることを特徴とする4又は5に記載のナノ材料の製造方法。
7.溶液プラズマ反応装置のプラズマ発生電極を反応液中に浸漬させた状態で反応液にガスのプラズマを導入することを特徴とする4~6のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
8.溶液プラズマ反応装置のプラズマ発生電極を反応液の液面から上方に離間した状態で反応液にガスのプラズマを導入することを特徴とする4~6のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
9.前記反応液にプラズマとともに他のエネルギーを照射することを特徴とする4~8のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
10.他のエネルギーが超音波であることを特徴とする9に記載のナノ材料の製造方法。
11.ナノ材料が、平均粒径1nm~10μmの微粒子であることを特徴とする4~10のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。
12.反応液中に配置した基材の表面に平均粒径1nm~10μmの微粒子からなる被膜を形成することを特徴とする4~10のいずれかに記載のナノ材料の製造方法。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
(1)本発明の装置では、高周波電源を用い、特異な電極構造を有するプラズマ発生電極を用いることで高いエネルギー密度から成るプラズマを発生させ、これを反応液中へ導入することにより溶液プラズマを効率良く発生させることができる。その際に、プラズマ発生電極の位置を垂直方向に移動させることにより、高いエネルギーを有するプラズマを直接又は離して反応液に導入することが出来る。
また、電極の中心部に冷却媒体導入部を設けたことによって、電極の加熱による損傷を防止することが出来る。さらに、装置の構成が簡単で低コスト化に寄与するほか、装置の自由度が高くなり、他のエネルギー照射源(レーザー、外部加熱、超音波、マイクロ波など)との併用が容易となる。
(2)本発明の製造方法においては、その反応はプラズマから供給される放電、電磁波、熱、ラジカル、紫外線などによって完了するため、通常の溶液法で必要なpH調整剤や酸化剤、還元剤などが不要である。このために廃液の処理が容易となり、クリーンな方法となっている。
そして、通常の気相法で必須とされている真空装置を必要とせず、また加熱温度による制約あるいは材料選択性の厳しい条件に拘束されることもなく、実質的にあらゆる原料からのシングルナノレベル材料を製造することが可能である。
また、溶液中でのプロセスであり、例えば水中においては本質的に温度は100度以下となるため、成膜に使用する基材として幅広い材質や形状を有するものを選択することが可能となる。従って、金属材料はもとより、エンジニアリングプラスチック、セラミックス誘電材料又は圧電材料、半導体材料、触媒等の製造にも適用できる。
以上のように、本発明は簡単な工程により低コストでシングルナノレベルの結晶粒子からなる金属、合金又は無機化合物の調製を可能とするものであり、電気電子分野から農業分野までの種々の産業界、医療分野あるいは各種の生活環境に幅広く応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
図1及び図2は、本発明の溶液プラズマ反応装置の一例を示す断面模式図である。この反応装置は、溶液反応槽1及び該反応槽1内に配置されるプラズマ発生電極2を具備するもので、プラズマ発生電極2は、中心部に配置したガス導入管3及びその周囲に配置した円柱状の電極部4により構成される。プラズマ発生電極2は、プラズマ発生により高温に加熱されるため、電極部4の中心には冷却媒体導入部5が設置されており、空冷もしくは水冷等により冷却可能となっている。また、電極部4には高周波電源(図示せず)から高周波を印加する高周波入力端子6が、電極部4の外側から電極部4の中心部の空洞9に達するように設けられている。
反応液8を収容した反応槽1内には、プラズマとともに照射する他のエネルギー発生源として、超音波発生装置7が設置されている。なお、この超音波発生装置7は、省略することもできる。
【0011】
このプラズマ発生電極2は、図1にみられるように電極2の下端部を反応液8中に浸漬させた状態と、図2にみられるように電極2の下端部を反応液8の液面から離間させた状態との間で、駆動装置(図示せず)により垂直方向に移動可能となるように構成されている。
図1の状態で、ガス導入管3からガスを導入しながら、プラズマ発生電極2に高周波入力端子6から高周波を印加すると、ガス導入管3から入ったガスが高周波入力端子6から導入された電場によりプラズマ化し、このプラズマが反応槽1内の反応液8に導入され、反応液の一部が直接プラズマ化して溶液プラズマを形成する。これをダイレクト溶液プラズマと呼ぶ。ダイレクト溶液プラズマでは、放電、ラジカル、熱の効果を直接かつ効果的に反応液に伝えることが出来る。
【0012】
一方、図2の状態でプラズマ発生電極2に高周波を印加すると、反応液8は入力された高周波では直接プラズマ化せず、導入されたガスによるプラズマを介して間接的にプラズマ化する。これをリモート溶液プラズマと呼ぶ。この際、プラズマ発生電極2の下端部と反応液表面との距離は、通常は0.1mm~5cm程度、好ましくは0.1mm~1cm程度である。リモート溶液プラズマでは、電極や治具に触れないことから反応液の純度を保つことが出来る。
【0013】
また、高周波入力端子6と電極2の下端部までの長さLをギャップ長と呼ぶ(図2参照)。このギャップ長Lは、1mm程度~10cm程度の範囲で適宜選択することができるが、通常は1cm~5cm程度とすることが好ましい。
ギャップ長Lが10cmを超えると、効率的にプラズマが溶液に伝播しなくなる。また、Lが1mm以下では、高周波の漏れ電場が急激に大きくなるため、周辺に電磁波シールドが必要となり実用上問題が生じる。
【0014】
プラズマ発生電極2を構成する各部材の材質や寸法は、金属、セラミックス等通常用いられる材料を使用して任意に選択することが出来る。例えば、電極部4としてはアルミニウム、真鍮等の熱伝導性の良い金属類が好適に用いられ、高周波入力端子6としてはステンレス等の剛性の高い金属類を使用することができる。そして、ガス導入管3としては石英、アルミナ等の耐熱性セラミックスが好適に用いられ、その直径としては、通常は100μm~50cm程度とすることが好ましい。
また、入力する高周波には反応液を効率的にプラズマ化するために、最適な高周波出力と周波数がある。これらは、ガス導入管3の直径、導入するガス種と流量及び、溶媒の種類と量に応じて選択されるが、出力としては1W~10kW程度、好ましくは100W~6kWで程度あり、その周波数は1kHz~100GHz程度、好ましくは20MHz~10GHz程度である。また、プラズマ発生電極の電界密度は1×10V/m以上、特に1×10~1×10V/m程度とすることが好ましい。
【0015】
つぎに、本発明の溶液プラズマ製造装置を使用して、ナノ材料を製造する方法について説明する。
ナノ材料の原料となる好ましい反応液としては、各種の有機金属錯体、金属アルコキシド及び金属塩等から選択された、金属を含有する少なくとも1種の化合物を、水、油(例えば、ケロシン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系油)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール等の脂肪族アルコール)から選択された溶媒に溶解又は分散したものを使用することができる。
このような化合物としては、有機金属錯体、金属アルコキシド及び金属塩の少なくとも1種を用いることが好ましい。これらの化合物は、分解温度が通常は20℃~1000℃程度、特に20~350℃の範囲にあるものを用いるのが適当である。これらのうち、蒸気圧が高く、分解温度が低い化合物をより好ましく使用することができる。また、これら化合物の溶解性が低い場合は分散性を高めるために処理中に溶液を撹拌する。
【0016】
有機金属錯体としては限定的ではないが、特にβジケトン類が好ましい。とりわけ、アセチルアセトナト配位子(acac)、ジピバロイルメタナト配位子(DPM)、ジイソブチルメタナト配位子(DIBM)、2,2,6,6-テトラメチル-3,5-オクタンジオナト配位子(TMOD)及び6-エチル-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオナト配位子(EDMOD)の少なくとも1種の配位子を有する錯体を好適に用いることができる。より具体的には、Pd(acac)、Pt(acac)、Ni(acac)、Fe(acac)、Sn(acac)、In(acac)、Cu(acac)、Mg(DPM)、La(DPM)、Zr(DPM)、Ti(DPM)(O-iso-C等が挙げられる。
【0017】
金属アルコキシドとしては、例えばSi(OC、Sb(OCH、Ti(OC、Zr(O-iso-C、Al(O-iso-C等を挙げることができる。
また、金属塩としては、塩化物、臭化物などの金属ハロゲン化物を好適に用いることが出来る。より具体的には、塩化鉄、塩化白金、塩化ニッケル、HAuCl4, K2PtCl4, Na2PdCl4等を挙げることができる。
これらの中でも、生成物中に残渣が残らないという点で、有機金属錯体を用いるのが好ましい。
【0018】
上記化合物中の金属の種類としては特に制限されず、触媒特性、発光特性、その他の各種の所望の性能に応じて適宜選択することができる。例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、鉄、アルミニウム、マグネシウム等が例示される。これらは1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。2種以上を用いる場合は、合金又は金属間化合物からなるナノ粒子又は被膜を形成することも可能である。この場合、互いに金属種のみ異なる第2相供給源を2種以上用いても良いし、あるいは互いに金属種及び有機部位の双方が異なる第2相供給源を2種以上使用しても良い。
使用する化合物の純度は特に限定されないが、97%以上の純度をもつものが好ましく利用される。これらの化合物の反応液中の濃度は適宜選択することができるが、通常は0.01~40重量%程度、好ましくは0.1~20重量%程度である。
【0019】
これらの化合物を含有する反応液からナノ材料を製造するには、はじめに、反応液8を本発明の溶液プラズマ反応装置の溶液反応槽1内に収容する。ついで、ガス導入管3から、水蒸気、水素、アンモニア、ヘリウム、アルゴン、窒素、酸素、炭化水素から選択された少なくとも1種のガスを20mL/分~50L/分程度、好ましくは100mL/分~5L/分程度導入し、高周波入力端子6から高周波を印加してプラズマを発生させ、これを溶液反応槽1に導入することで溶液プラズマを形成させる。
【0020】
この溶液プラズマによって、反応液中の金属原料が分解、還元又は加熱されることにより凝集し、粒子径が1nm~10μm程度の粒子が形成される。このようなナノ粒子の構造は透過型電子顕微鏡などにより容易に確認することが出来る。
ナノ粒子からなる被膜を形成するには、反応液中に例えば板状体のような基材を配置し、溶液プラズマを発生させることによって、基材表面にナノ粒子からなる被膜を形成することができる。
【0021】
本発明によれば、反応液がダイレクト溶液プラズマまたはリモート溶液プラズマに晒されることによって、プラズマにより発生する放電、水素ラジカルを初めとした活性種、熱、紫外線などの効果により原料化合物が単に分解されるだけでなく、更に還元析出するとともに、溶液と反応することによって、金属、合金或いは無機化合物を含有するナノ粒子又は被膜が形成される。
【0022】
本発明では、反応液中にダイレクト溶液プラズマ又はリモート溶液プラズマを形成するものであるため、反応の自由度が高くなる。特に、リモート溶液プラズマにおいては、反応液部の構成の自由度が高く、例えば図1、2にみられるように、超音波等の他のエネルギーを同時に印加することが可能となる。このエネルギーの種類としては、熱、光(赤外線、紫外線、レーザーを含む)、超音波、電磁場(マイクロ波、テラヘルツ波を含む)などの何れもが利用可能である。特に、超音波を照射した際には、得られた粒子の分散性が向上するので好ましい。この超音波の周波数としては、10kHz~1MHzのものを用いることが出来るが、分散を目的とした場合には20~100kHzが好ましい。また、この際の超音波発生方法としては、ホーン式、ランジュバン振動子式などが挙げられるが、溶液タンクの形状に併せて適宜利用すればよい。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
(実施例1)
図2に示される溶液プラズマ反応装置を使用し、プラズマ発生電極2に2.45GHz、最大出力6kWからなる高周波電源を接続した。その際に、ギャップ長Lを3cmとし、電極2の下端部と液面との距離は1mmに固定した。また、プラズマ発生ガスとしてヘリウム(純度99.99%)を使用した。反応液8としては、溶媒として水(50mL)を使用し、金属供給源としてテトラクロロ金酸(HAuCl4)を0.5mM/Lとなるよう秤量した後、水と混合し、十分に撹拌することで水溶液を調製し溶液反応槽1にセットした。
この反応液に対して、ヘリウム流量1L/分にて出力500Wで高周波を印加し、得られたヘリウムのプラズマを反応液8内に導入して、10分間保持した。
【0024】
得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に透過型電子顕微鏡により観察した結果を図3に示す。図3に示すように、平均粒径7nmの金粒子からなるナノ材料が得られていることが確認された。また、テトラクロロ金酸(HAuCl4)の濃度を増すことにより、その粒径は若干大きくなることが明らかとなった。
【0025】
(実施例2)
図2に示される溶液プラズマ反応装置を使用し、プラズマ発生電極2に2.45GHz、最大出力6kWからなる高周波電源を接続した。その際に、ギャップ長Lを3cmとし、電極2の下端部と液面との距離は1mmに固定した。この例では、ランジュバン振動子式で周波数40kHz、出力90Wの超音波発生装置7を反応槽1内に設置して、超音波照射を行った。
また、プラズマ発生ガスとしてヘリウム(純度99.99%)を使用した。反応液8としては、溶媒として水(50mL)を使用し、金属供給源として、テトラクロロ金酸を0.5mM/Lとなるよう秤量した後、溶媒である水と混合し、十分に撹拌することで水溶液を調製し溶液反応槽1にセットした。この反応液8に対して、ヘリウム流量1L/分にて出力500Wで高周波を印加し、得られたヘリウムのプラズマを反応液内に導入して、超音波を同時に照射しながら10分間保持した。得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に透過型電子顕微鏡により観察した結果を図4に示す。図4に示すように、平均粒径7nmの金粒子からなるナノ材料が得られていることが確認された。この例では、粒子が凝集している実施例1とは異なり、ほぼ単分散状態の粒子が得られていることが確認された。
【0026】
(実施例3)
実施例2において、金属供給源としてテトラクロロ 白金(II)酸カリウム(K2PtCl4)を用いた以外は、実施例2と同様にして溶液プラズマ反応を行った。得られた溶液をコロジオン膜に滴下し、乾燥後に透過型電子顕微鏡により観察した結果を図5に示す。図5に示すように、平均粒径6nmからなる白金粒子からなるナノ材料が得られていることが確認された。この例でも、実施例2と同様に、ほぼ単分散状態の粒子が得られていることが確認された。
【0027】
実施例2及び3で得られたナノ材料を、1nm以下の分解能を有する透過型電子顕微鏡で観察しても、金、もしくは白金粒子以外の不純物は確認されず、超音波を併用する本発明の方法が極めて清浄なナノ材料の製造方法であることを確認した。
上記の通り、本発明の新規な電極構造を有する溶液プラズマ発生装置を用いることによって、真空系のような制約の多い手段を必要とせずに、しかも溶液中への汚染等のおそれや材料選択についての制限を受けずに、簡便な工程によって、微細な形態を有するナノ材料を低コストで効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の溶液プラズマ反応装置の1つの使用状態を示す模式図である。
【図2】本発明の溶液プラズマ反応装置の他の使用状態を示す模式図である。
【図3】実施例1により得られた金粒子の透過型電子顕微鏡像である。
【図4】実施例2により得られた金粒子の透過型電子顕微鏡像である。
【図5】実施例3により得られた白金粒子の透過型電子顕微鏡像である。
【符号の説明】
【0029】
1 溶液反応槽
2 プラズマ発生電極
3 ガス導入管
4 電極部
5 冷却媒体導入部
6 高周波入力端子
7 超音波発生装置
8 反応液
9 空洞
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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