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明細書 :金属イオン応答性蛍光発色タンパク質

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5181170号 (P5181170)
公開番号 特開2008-067613 (P2008-067613A)
登録日 平成25年1月25日(2013.1.25)
発行日 平成25年4月10日(2013.4.10)
公開日 平成20年3月27日(2008.3.27)
発明の名称または考案の名称 金属イオン応答性蛍光発色タンパク質
国際特許分類 C07K  19/00        (2006.01)
C07K  14/00        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C07K 19/00 ZNA
C07K 14/00
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 11
出願番号 特願2006-247008 (P2006-247008)
出願日 平成18年9月12日(2006.9.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年3月13日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第86春季年会-講演予稿集II」第889頁2G4-52に発表
審査請求日 平成21年9月4日(2009.9.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】田中 俊樹
【氏名】水野 稔久
【氏名】村尾 香織
審査官 【審査官】北村 悠美子
参考文献・文献 Proc. Natl. Acad. Sci.,1999年,Vol.96,p.11241-11246
Proc. Natl. Acad. Sci.,2001年,Vol.98,p.3197-3202
J. Am. Chem. Soc.,1998年,Vol.120,p.13008-13015
FEBS Letters,1999年,Vol.457,p.283-289
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
N末端からC末端方向に以下のアミノ酸配列(1)から(8)を順番に有するタンパク質からなる金属イオン応答性蛍光発色タンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち40番目から67番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(1)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち68番目から87番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(2)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち88番目から115番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(3)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち116番目から119番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(4)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から167番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(5)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち168番目から172番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(6)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち173番目から363番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(7)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち364番目から370番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(8)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち371番目から398番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(9)である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質
(1)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。
(2)リンカーを構成するアミノ酸配列。
(3)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。
(4)リンカーを構成するアミノ酸配列。
(5)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えてn+1番目からC末。
端までのアミノ酸配列。
(6)リンカーを構成するアミノ酸配列。
(7)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えて1番目からn番目までのアミノ酸配列。
(8)リンカーを構成するアミノ酸配列。
(9)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属イオン応答性蛍光発色タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
金属イオンは生体内(細胞内)において重要な役割を果たしている。これは、細胞内におけるスーパーオキシドジスムターゼに代表されるほとんどの酸化酵素において、反応中心の補因子として用いられている事からも明らかである。しかしながら一方で、必要以上の金属イオン濃度は毒として働くことも知られており、細胞内のそれぞれのオルガネラ膜における金属イオン膜透過性は、厳密に制御されている。大腸菌細胞膜におけるニッケルイオン(Ni2+)膜輸送タンパク質として知られるNikABCDEは、ニッケルイオン濃度に依存したDNA結合リプレッッサータンパク質であるNikRによりその発現量が制御されている事が知られている。
【0003】
上記一例において、細胞の特定部位に特定の濃度で金属イオンが存在している点が重要である。従って、細胞内の特定部位における金属イオンの存否確認をすること及び/又はその金属イオンの濃度を検知することは、生体機能の解明しいては医薬品の開発等に重要である。ゆえに、それら目的を達成し得る生体分析資材が求められている。
【0004】
以下に生体内(細胞内)における金属イオンの分析に関する文献を示す。
【0005】
文献1及び2には、亜鉛イオンを特異的に捕捉して蛍光を発する亜鉛蛍光プローブである有機低分子が記載されている。文献1及び2は、亜鉛イオンを特異的に捕捉することができ、捕捉後の錯体の蛍光強度に優れ、長波長の励起光で蛍光測定を行なうことにより細胞障害を回避することができる亜鉛蛍光プローブとして利用可能な化合物を提供することを課題としている。
【0006】
また、細胞内の特定部位における金属イオン(カルシウムイオン)の分析に関する文献として文献3がある。文献3には、好中球細胞内のカルシウムイオンの濃度変化をもたらす複数の経路を同定し、かつ各経路におけるカルシウムイオンの濃度変化を個別に測定する方法が記載されている。文献3は、3種類の経路を、カルシウムイオンキレート剤(EGTA)を細胞外液に添加することと、細胞内カルシウムイオンチャネルの機能を特異的に阻害する化合物(TMB-8)で細胞を処理することとを使い分けることにより、選択的に1つのカルシウムイオン動員経路を機能させ、各経路でのカルシウムイオン濃度変化を個別に測定し定量することを可能とするとしている。
【0007】
文献4には、カルシウムイオンの量に依存した蛍光を発することができる蛍光タンパク質が記載されている。文献4は、色が異なる2種の緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用した蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の利用により、常温(特に37℃)においてカルシウムイオン濃度を定量化するための指示薬として使用できる蛍光タンパク質を提供することを課題としている。

【特許文献1】再表01/062755
【特許文献2】特開2000-239272
【特許文献3】特開2000-338045
【特許文献4】特開2002-253261
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
文献1及び2は、細胞障害を回避し亜鉛イオンを測定(定量的及び定性的測定)するとしているが、生体分子でない有機低分子を添加するため細胞への負荷が懸念される。また、プローブである有機低分子を細胞内において局在化させ、場所選択的に使用することは開示されていない。さらに、亜鉛イオンのみを特異的に捕捉する構成であり、他の金属イオンの捕捉については開示されていない。
【0009】
文献3は、好中球細胞内のカルシウムイオンの濃度変化をもたらす複数の経路のカルシウムイオンの濃度変化を測定する方法であるが、カルシウムイオンのみを特異的に捕捉する構成であり、他の金属イオンの捕捉については開示されていない。また、文献3における構成は、好中球細胞内のカルシウムイオンの濃度変化をもたらす細胞外カルシウムイオンチャネルといった経路における濃度変化を測定するものであり、細胞の他の部位における測定は開示されていない。
【0010】
文献4は、カルシウムイオン濃度を定量化するとしているが、カルシウムイオンのみを特異的に捕捉する構成であり、他の金属イオンの捕捉については開示されていない。また、蛍光タンパク質を細胞内において局在化させ、場所選択的に使用することは開示されていない。さらに、色が異なる2種の緑色蛍光タンパク質(GFP)を使用することにより、カルシウムイオンの存在を色の変化で識別できるが、色の変化が可逆的であるために、測定機器が感知できないような短時間における一時的な濃度の増加又は減少(一過的な濃度変化)の感知に課題を残す。
【0011】
ゆえに、細胞への負荷が少なく、細胞内において局在化させることにより場所選択的な使用が可能であり、種々の金属イオン(銅イオン、亜鉛イオン、ニッケルイオン等)の濃度を感知でき、一過的な濃度変化を感知しうる金属イオン応答性物質が求められる。本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明は、金属イオン応答性部位と、蛍光発色部位とを含み、金属イオン応答性部位に金属イオンが結合することにより蛍光発色部位が蛍光発色する特徴を有する金属イオン応答性蛍光発色タンパク質であって、以下の(1)及び(2)に示す金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。(1)金属イオン応答性部位がヘリックスバンドル構造をとる複数個の両親媒性ペプチドからなり、該両親媒性ペプチドを構成する疎水場アミノ酸のうち1又は2以上が金属配位性アミノ酸である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。(2)蛍光発色部位がサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。
【0013】
上記発明は、金属イオンを捕捉し蛍光発色することにより、金属イオンの在否及び/又は濃度を識別、分析可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。上記発明における構成を以下に説明する。金属イオンの存在下において、本発明の金属イオン応答性部位を構成する複数個の両親媒性ペプチドにおける疎水場アミノ酸のうちの1又は2以上の金属配位性アミノ酸に金属イオンが結合し、該複数個の両親媒性ペプチドが凝集してヘッリクスバンドル構造を呈する。そして、サーキュラーパーミュテーションにより分割され色が消失していた蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質が、上記両親媒性ペプチドの凝集により、距離的に再結合可能な位置に存在して再結合することにより発色し、金属イオンの存在を示すこと及び/又は金属イオンの濃度を測定することとなる。特定濃度以上の金属イオンの存在により蛍光発色タンパク質の再結合が可能な構成であることから、金属イオンの濃度分析が可能な構成である。
【0014】
検知可能な金属イオンの例としては、銅イオン(Cu2+)、亜鉛イオン(Zn2+)、ニッケルイオン(Ni2+)がある。また、両親媒性ペプチドとは、α-ヘリックス構造をとるペプチドであって、該両親媒性ペプチドを構成するアミノ酸を選択することにより疎水場と親水場とを形成させたペプチドである。疎水場を構成するアミノ酸を疎水場アミノ酸、親水場を構成するアミノ酸を親水場アミノ酸という。ヘリックスバンドル構造とは、複数個のα-ヘリックス構造をとるペプチドが、該ペプチド間におけるアミノ酸の特異的な結合により、束なってできる構造である。複数個の両親媒性ペプチドとは、金属イオン応答性部位において両親媒性ペプチドを2個以上含むことをいい、好ましくは3個含むこととする。金属配位性アミノ酸の例としては、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン等があり、捕捉する金属イオンの種類によって、上記両親媒性ペプチドにおける金属配位性アミノ酸の種類、数及び場所を選択する。また、金属イオン応答性部位を構成する複数個の両親媒性ペプチドが、同じアミノ酸配列である場合と、異なるアミノ酸配列である場合とに限定されない。サーキュラーパーミュテーションとは元来のタンパク質のC末端とN末端とを適当な短いペプチド(リンカー)で結合させ、代わりに適当な部位で切開し新たにN末端、C末端を作成した変異体を作成することである。蛍光発色タンパク質にサーキュラーパーミュテーションを施すことにより元来のタンパク質の構造が崩れ蛍光が消失する。このサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質を再結合させると蛍光を発する。蛍光発色タンパク質の例としては、緑色蛍光タンパク質(GFP)がある。サーキュラーパーミュテーションを施した緑色蛍光タンパク質をcpGFPと記す。また、本発明は細胞輸送マーカーと共に発現させることが可能な構成であることにより、場所選択的な使用が可能な構成である。
【0015】
請求項1に記載の発明は、N末端からC末端方向に以下のアミノ酸配列(1)から(8)を順番に有するタンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち40番目から67番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(1)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち68番目から87番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(2)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち88番目から115番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(3)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち116番目から119番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(4)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から167番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(5)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち168番目から172番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(6)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち173番目から363番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(7)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち364番目から370番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(8)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち371番目から398番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(9)である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。(1)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。(2)リンカーを構成するアミノ酸配列。(3)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。(4)リンカーを構成するアミノ酸配列。(5)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えてn+1番目からC末端までのアミノ酸配列。(6)リンカーを構成するアミノ酸配列。(7)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えて1番目からn番目までのアミノ酸配列。(8)リンカーを構成するアミノ酸配列。(9)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。
【0016】
請求項1は、金属イオンを捕捉し蛍光発色することにより、金属イオンの在否及び/又は濃度を識別、分析可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を達成しうること、及び金属イオンを捕捉し蛍光発色することにより、金属イオンの在否及び/又は濃度を識別、分析可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を達成しうるアミノ酸配列を開示することを意図する。請求項1は、3個の両親媒性ペプチドを有する構成であり、3個の両親媒性ペプチドが金属イオンの存在下において凝集してヘリックスバンドル構造を呈する。リンカーとは、4から20個程度のアミノ酸配列をいい、アミノ酸の種類、数の選択は本発明の目的を達成する上で重要である。請求項1に記載のアミノ酸配列(5)から(7)のアミノ酸配列は蛍光発色部位を構成するサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質のアミノ酸配列に該当する。
【0017】
配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち40番目から67番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(1)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち68番目から87番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(2)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち88番目から115番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(3)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち116番目から119番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(4)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から167番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(5)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち168番目から172番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(6)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち173番目から363番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(7)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち364番目から370番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(8)に該当し、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち371番目から398番目までのアミノ酸配列は請求項1に記載のアミノ酸配列(9)に該当する。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、請求項1に記載のアミノ酸配列(7)は、蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えて1番目から190番目までのアミノ酸配列に該当し、アミノ酸配列(5)は、蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えて191番目から238番目のC末端までのアミノ酸配列に該当する。
【0018】
発明は、金属イオン応答性部位を構成する複数個の両親媒性ペプチドがGlu Ile Glu Ala His Glu Gln His Glu Ala Ile Glu Gln Glu Ile Glu Ala His Glu Gln Glu His Glu Ala Ile Glu Glnで表されるアミノ酸配列のペプチドと、Ile Glu Ala Ile Lys Gln Lys Ile Glu Ala Ile Lys Gln Lys Trp Glu Ala His Lys Gln Lys His Glu Ala Ile Lys Gln Lysで表されるペプチドと、Lys Ile Glu Ala His Glu Gln Lys His Glu Ala Ile Glu Gln Lys Ile Glu Ala His Glu Gln Lys His Glu Ala Ile Glu Glnで表されるペプチドとである金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。
【0019】
上記発明の構成は、ペプチドが両親媒性のα-ヘリックス構造をとること、複数個の両親媒性ペプチドが凝集することによりヘリックスバンドル構造をとること、及び該両親媒性ペプチドを構成する疎水場アミノ酸のうち特定の箇所が金属配位性アミノ酸であるヒスチジン(His)であることを意図する。この構成により金属イオン(銅イオン)を補足することができる。
【0020】
発明は、蛍光発色部位を構成するサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から363番目までのアミノ酸配列の蛋白質である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。
【0021】
上記発明の構成は、元来の238個のアミノ酸から成る緑色蛍光発色タンパク質の、N末端から数えて190番目のアミノ酸と191番目のアミノ酸との結合を切断し、元来の緑色蛍光タンパク質のC末端とN末端とをリンカーで結合させ作成した変異体を示すものである。
【0022】
削除
【0023】
削除
【0024】
削除
【0025】
削除
【0026】
また、本発明の金属イオン応答性蛍光発色タンパク質をコードするDNAを有する組み換えベクターが考えられる。さらに、上記DNA又は組み換えベクターを有する形質転換体が考えられる。また、本発明を利用した指示薬、キットが考えられる。
【0027】
また、金属イオン応答性部位と、蛍光発色部位と、細胞輸送マーカーとを含み、細胞内の特定部位において金属イオン応答性部位に金属イオンが結合することにより蛍光発色部位が蛍光発色する特徴を有する金属イオン応答性蛍光発色タンパク質であって、以下の(1)及び(2)に示す金属イオン応答性蛍光発色タンパク質が考えられる。(1)金属イオン応答性部位がヘリックスバンドル構造をとる複数個の両親媒性ペプチドであり、該両親媒性ペプチドを構成する疎水場アミノ酸のうち1又は2以上が金属配位性アミノ酸である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。(2)蛍光発色部位がサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。
【0028】
ここで、細胞輸送マーカーとは、細胞内の特定部位(細胞小器官)に結合する特定のアミノ酸配列である。細胞輸送マーカーが存在することにより、本発明である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を細胞の特定部位に局在化させ、場所選択的に使用することができる。
【発明の効果】
【0029】
発明は、金属イオン応答性部位と、蛍光発色部位とを含み、金属イオン応答性部位に金属イオンが結合することにより蛍光発色部位が蛍光発色する特徴を有する金属イオン応答性蛍光発色タンパク質であって、以下の(1)及び(2)に示す金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。(1)金属イオン応答性部位がヘリックスバンドル構造をとる複数個の両親媒性ペプチドからなり、該両親媒性ペプチドを構成する疎水場アミノ酸のうち1又は2以上が金属配位性アミノ酸である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。(2)蛍光発色部位がサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質。
【0030】
上記発明は、金属イオンを検知し蛍光発色することにより、金属イオンの存在及び/又は濃度を認知可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を提供することを特徴とする。本発明は生細胞への添加を細胞に対して負荷をかけずに行うことができ生体機能の解明しいては医薬品の開発等に有用である。また、不可逆的な無色から蛍光発色の変化を検知するため蛍光細胞内等の金属イオンの一過的な濃度変化(測定機器が感知できないような短時間における一時的な濃度の増加又は減少)等を検知可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を提供する。さらに、細胞輸送マーカーと共に発現させることが可能な構成であることより、細胞内において局在化させ、場所選択的な使用が可能な構成である。
【0031】
請求項1に記載の発明は、N末端からC末端方向に以下のアミノ酸配列(1)から(8)を順番に有するタンパク質からなる金属イオン応答性蛍光発色タンパク質であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち40番目から67番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(1)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち68番目から87番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(2)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち88番目から115番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(3)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち116番目から119番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(4)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から167番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(5)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち168番目から172番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(6)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち173番目から363番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(7)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち364番目から370番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(8)であり、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち371番目から398番目までのアミノ酸配列がアミノ酸配列(9)である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。(1)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。(2)リンカーを構成するアミノ酸配列。(3)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。(4)リンカーを構成するアミノ酸配列。(5)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えてn+1番目からC末端までのアミノ酸配列。(6)リンカーを構成するアミノ酸配列。(7)蛍光発色部位を構成する蛍光発色タンパク質のN末端から数えて1番目からn番目までのアミノ酸配列。(8)リンカーを構成するアミノ酸配列。(9)金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドのアミノ酸配列。
【0032】
請求項1は、金属イオンを検知し蛍光発色することにより、金属イオンの存在及び/又は濃度を認知可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を提供することを特徴とする。本発明は生細胞への添加を細胞に対して負荷をかけずに行うことができ生体機能の解明しいては医薬品の開発等に有用である。また、不可逆的な無色から蛍光発色の変化を検知するため蛍光細胞内等の金属イオンの一過的な濃度変化(測定機器が感知できないような短時間における一時的な濃度の増加又は減少)等を検知可能な金属イオン応答性蛍光発色タンパク質を提供する。さらに、細胞輸送マーカーと共に発現させることが可能な構成であることより、細胞内において局在化させ、場所選択的な使用が可能な構成である。
【0033】
発明は、金属イオン応答性部位を構成する複数個の両親媒性ペプチドがGlu Ile Glu Ala His Glu Gln His Glu Ala Ile Glu Gln Glu Ile Glu Ala His Glu Gln Glu His Glu Ala Ile Glu Glnで表されるアミノ酸配列のペプチドと、Ile Glu Ala Ile Lys Gln Lys Ile Glu Ala Ile Lys Gln Lys Trp Glu Ala His Lys Gln Lys His Glu Ala Ile Lys Gln Lysで表されるペプチドと、Lys Ile Glu Ala His Glu Gln Lys His Glu Ala Ile Glu Gln Lys Ile Glu Ala His Glu Gln Lys His Glu Ala Ile Glu Glnで表されるペプチドとである金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。
【0034】
この構成により金属イオン(銅イオン)を捕捉することができる。
【0035】
発明は、蛍光発色部位を構成するサーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち120番目から363番目までのアミノ酸配列の蛋白質である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質である。
【0036】
上記発明の構成により、本発明の使用において、サーキュラーパーミュテーションをかけた蛍光発色タンパク質が再結合し発色することにより金属イオンの存在を示すこと及び/又は金属イオンの濃度を測定することを可能とする。
【0037】
削除
【0038】
削除
【0039】
削除
【0040】
削除
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質の生産の一例を以下に説明する。本発明は、金属イオン応答性蛍光発色タンパク質をコードする遺伝子を作成し、これを発現用ベクターに導入し、さらにこれを大腸菌に導入して、細胞内で発現誘導を行うことにより作成する。
【0042】
(1)金属イオン応答性蛍光発色タンパク質をコードする遺伝子、及びこの遺伝子の導入された発現用ベクターDNAの構築を説明する。これらは、cpGFP(サーキュラーパーミュテーションを施した緑色蛍光タンパク質)をコードする遺伝子と金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドをコードする遺伝子を含む。
【0043】
cpGFPの遺伝子は、GFPuv(商品名、Clontech社)の遺伝子(元来のGFPをコードする遺伝子)をもとに3回のPCRにより構築した。まず、制限酵素PstIの認識配列を含む順方向プライマーと、ペプチドリンカーGGSGGを含む逆方向プライマーを用いて、3‘側のDNAを増幅した。次にペプチドリンカーGGSGGを含む順方向プライマーと、制限酵素XhoIの認識配列を含む逆方向プライマーにより5’側のDNAを増幅した。最後に、最初のPCR断片及び次のPCR断片の混合物を鋳型として、制限酵素PstI及びXhoIの認識配列を含有するプライマーによりcpGFPの完全な遺伝子DNAを増幅した。制限酵素処理したこの遺伝子DNAをpRSET(ベクターDNAの商品名、Invitrogen社)のPstI/XhoI部位にインフレームで導入し、cpGFP/pRSET(cpGFP遺伝子の導入されたpRSET)を得た。
【0044】
金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドをコードする遺伝子は、cpGFPのN末端側は、互いに相補な配列を持つ合計7本のプライマーをPCRにより融合増幅を行う事により、5‘側に制限酵素NcoI、3’側に制限酵素PstIの認識配列を持つものものを得た。一方でcpGFPのC末端側は、互いに相補な配列を持つ合計4本のプライマーをPCRにより融合増幅を行う事により、5‘側に制限酵素XhoI、3’側に制限酵素HindIIIの認識配列を持つものを得た。これらの金属イオン応答性部位を構成する両親媒性ペプチドをコードする遺伝子はそれぞれ制限酵素処理を行った後cpGFP/pRSETにNcoI、PstIあるいはXhoI、HindIIIを用いてインフレームで導入し、金属イオン応答性蛍光発色タンパク質をコードする遺伝子の導入された発現用ベクターIZAH-cpGFP-IZBH/pRSETを得た。
(2)上記発現用ベクターIZAH-cpGFP-IZBH/pRSETの大腸菌への導入、及び細胞内での発現誘導に関して説明する。
【0045】
大腸菌BL21(DE3)株にIZAH-cpGFP-IZBH/pRSETを導入し、LB培地中で一晩培養をかけ、その後新たなLB培地に食菌後、OD(濁度の指標)=0.6まで37℃で培養し、1μMになるようにIsopropyl-thiogalactopyranoside (IPTG)を添加後25℃で16時間培養を行うことにより、大腸菌内での金属イオン応答性蛍光発色タンパク質の生産を行った。本発明では、銅イオン(Cu2+)存在下において大腸菌中でのタンパク質生産を行う。具体的には、上記におけるIPTGを添加するのと同時に、培地に所定の濃度(0-500μM)の銅イオンを添加し、同様に25℃で16時間培養することにより行った。菌体の蛍光発光挙動は、紫外線照射下の蛍光発光の観察により行った。
【実施例】
【0046】
本発明である金属イオン応答性蛍光発色タンパク質について、上記一例により生産したものの評価及び使用の一例を以下に説明する。
【0047】
(1)図面における図1に大腸菌BL21(DE3)株にIZAH-cpGFP-IZBH/pRSETを導入し、25℃16時間LB培地で蛋白発現誘導を行った場合の15%SDSアクリルアミド電気泳動による、大腸菌内タンパク質の分析結果を示す。左レーンより、分子量マーカー、IPTG発現誘導しない場合の大腸菌菌体内の蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での可溶性蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での不溶性蛋白質成分、さらにこれをCu2+イオン500μM存在下で行った場合のIPTG発現誘導しない場合の大腸菌菌体内の蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での可溶性蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での不溶性蛋白質成分である。これより、IPTG発現誘導後3時間後において目的分子量のところに、IZAH-cpGFP-IZBH成分となるバンドが観測された事より、IZAH-cpGFP-IZBHの発現が確認された。バンドの濃さより、大腸菌内での金属イオン濃度分析に必要な量の蛋白質が存在している事も分かった。このことは本発明の使用において重要である。また、不溶性画分ではなく可溶性画分にバンドが見られた事より、IZAH-cpGFP-IZBHは可溶な状態で発現されている事も確認された。この可溶であることは、本発明における蛍光発色部位を構成するcpGFPの発光に必要な条件である。また、500μMCu2+イオン存在下においても、Cu2+イオン非存在下と発現量が変わらない事より、この濃度以下のCu2+イオンの存在が大腸菌に対して毒性を示してはいないことも示している。
【0048】
(2)培養液中に金属イオン(銅イオン)を共存させて発現させたときの金属イオン応答性蛍光発色タンパク質の発色を説明する。図面における図2に、大腸菌BL21(DE3)株にIZAH-cpGFP-IZBH/pRSETを形質転換後、25℃16時間LB培地で蛋白発現誘導を行ったものを集菌後、この菌体を水中に分散した状態での蛍光発光の様子を示した。これより、明らかにCu2+イオン存在下において発現誘導を行った大腸菌菌体のみに蛍光発色が観測された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】SDS電気泳動により蛋白質の発現量の確認(左レーンより、分子量マーカー、IPTG発現誘導しない場合の大腸菌菌体内の蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での可溶性蛋白質成分、IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での不溶性蛋白質成分、500μMCu2+イオン存在下で行った場合のIPTG発現誘導しない場合の大腸菌菌体内の蛋白質成分、500μMCu2+イオン存在下IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での可溶性蛋白質成分、500μMCu2+イオン存在下IPTG発現誘導後16時間後の大腸菌菌体内での不溶性蛋白質成分)
【図2】500μMCu2+イオン存在下の培地で培養した場合の大腸菌菌体の蛍光発光(左より、金属イオン非存在下、Cu2+イオン存在下)
図面
【図1】
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【図2】
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