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明細書 :太陽エネルギー利用装置の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5331977号 (P5331977)
公開番号 特開2007-333291 (P2007-333291A)
登録日 平成25年8月9日(2013.8.9)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成19年12月27日(2007.12.27)
発明の名称または考案の名称 太陽エネルギー利用装置の製造方法
国際特許分類 F24J   2/50        (2006.01)
C03C  17/23        (2006.01)
C03C  17/42        (2006.01)
H01L  31/042       (2006.01)
FI F24J 2/50 Z
C03C 17/23
C03C 17/42
H01L 31/04 R
請求項の数または発明の数 15
全頁数 19
出願番号 特願2006-165034 (P2006-165034)
出願日 平成18年6月14日(2006.6.14)
審査請求日 平成21年5月23日(2009.5.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
発明者または考案者 【氏名】小川 一文
個別代理人の代理人 【識別番号】100090697、【弁理士】、【氏名又は名称】中前 富士男
【識別番号】100139262、【弁理士】、【氏名又は名称】中嶋 和昭
審査官 【審査官】北村 英隆
参考文献・文献 特開平07-098401(JP,A)
特開平04-239633(JP,A)
特開2003-168606(JP,A)
特開平05-096679(JP,A)
特開2005-206447(JP,A)
特開平10-146920(JP,A)
特開平09-100141(JP,A)
特開平04-132637(JP,A)
国際公開第01/042156(WO,A1)
調査した分野 F24J 2/50
C03C 17/23,17/42
H01L 31/042
特許請求の範囲 【請求項1】
光入射側透明基材の表面が該透明基材の表面に結合固定され、大きさが100nm以下の撥水撥油性の単層の透明微粒子層で覆われている太陽エネルギー利用装置であって、
前記透明微粒子の表面の一部には、一端に第1の官能基を有し、他端で前記透明微粒子の表面に結合した第1の膜化合物が結合しており、
前記透明基材の表面の一部には、一端に前記第1の官能基と反応し共有結合を形成する第2の官能基を有し、他端で前記透明基材の表面に結合した第2の膜化合物が結合しており、
前記透明微粒子は、前記第1の官能基と前記第2の官能基との反応により形成された共有結合によって前記透明基材の表面に結合固定されており、
前記第2の膜化合物が結合固定された前記透明微粒子の表面には、前記第2の官能基と反応し共有結合を形成する第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物が表面に結合固定されていることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項2】
請求項1記載の太陽エネルギー利用装置において、前記透明微粒子が撥水撥油性被膜で覆われていることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項3】
請求項2記載の太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜が前記透明微粒子の表面に共有結合していることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜が-CF基を含むことを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項5】
請求項4記載の太陽エネルギー利用装置において、前記第1及び第2の膜化合物は、Siを介して、それぞれ前記透明微粒子及び前記透明基材の表面に共有結合していることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜、前記第1の膜化合物、及び前記第2の膜化合物のいずれか1つ又は2つ以上が単分子膜であることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の太陽エネルギー利用装置において、前記第1及び第2の官能基の一方がエポキシ基、他方がアミノ基又はイミノ基であることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項8】
光入射側透明基材の表面が該透明基材の表面に結合固定され、大きさが100nm以下の撥水撥油性の単層の透明微粒子層で覆われている太陽エネルギー利用装置であって、
前記透明微粒子は、焼結により前記透明基材の表面に結合固定されており、
前記透明微粒子の表面には、前記透明微粒子の表面官能基と反応し共有結合を形成する第の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物が表面に結合固定されていることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の太陽エネルギー利用装置において、前記透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、又はジルコニアからなる群より選択されるものであることを特徴とする太陽エネルギー利用装置。
【請求項10】
透明微粒子と、一端に第1の官能基を有し、他端に前記透明微粒子の表面基と反応して結合を形成する第1の結合基を有する第1の膜化合物とを反応させ、前記第1の膜化合物が前記第1の結合基を介して表面に結合した反応性透明微粒子を製造する工程Aと、
太陽エネルギー利用装置の透明基材と、一端に前記第1の官能基と反応して共有結合を形成する第2の官能基を有し、他端に前記透明基材の表面基と反応して結合を形成する第2の結合基を有する第2の膜化合物とを反応させ、前記第2の膜化合物が前記第2の結合基を介して表面に結合した反応性透明基材を製造する工程Bと、
前記反応性透明微粒子と前記反応性透明基材とを接触させ、前記第1の官能基と前記第2の官能基との反応により共有結合を形成させて前記反応性透明微粒子を前記透明基材の表面に結合固定させる工程Cと、
前記透明基材の表面に結合固定された透明微粒子と、前記第2の官能基と反応し共有結合を形成する第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物とを反応させ、前記透明微粒子の表面に撥水撥油性被膜を形成する工程Dとを含むことを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
【請求項11】
請求項10記載の太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記工程A~Dのいずれか1つ又は2つ以上の後において、余分な化学吸着液を洗浄除去することを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記第3の結合基がトリクロロシランであり、前記工程Dにおいて、前記撥水撥油性化合物と前記透明微粒子との反応はシラノール縮合触媒の存在下で行われることを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の太陽エネルギー利用装置の製造方法において、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は複数の助触媒を前記シラノール縮合触媒と共に用いることを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記透明基材がガラスであり、前記工程Cの後、酸素を含む雰囲気下で前記透明微粒子が結合固定された透明基材を焼結して有機物を全て除去し、前記透明微粒子を前記透明基材上に直接固定させる工程Eを更に含み、前記工程Dにおいて、前記第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物の代わりに、前記透明微粒子の表面官能基と反応し共有結合を形成する第4の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物を用いることを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14記載の太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記焼結を400℃以上かつ前記透明基材及び前記透明微粒子の溶融温度未満の温度で行うことを特徴とする太陽エネルギー利用装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性があり、高性能な離水性(滑水性ともいう)があり、かつ入射光の表面反射低減効果があり、撥水撥油性の透明微粒子が光入射側透明基材の表面に形成された太陽電池、太陽熱温水器、温室等の太陽エネルギー利用装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、屋外に設置された太陽電池の発電効率や太陽熱温水器、温室等の集熱効率が、大気中の粉塵や雨による汚れにより経年劣化することはよく知られている。
一方、フッ化炭素基含有クロロシラン系の吸着剤と非水系の有機溶媒よりなる化学吸着液を用い、液相で化学吸着して単分子膜状の撥水撥油防汚性の化学吸着膜単分子膜を形成できることは、すでによく知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような溶液中での単分子膜の製造原理は、基材表面のヒドロキシル基等の活性水素とクロロシラン系の吸着剤のクロロシリル基との脱塩酸反応を用いて単分子膜を形成することにある。
【0004】

【特許文献1】特開平4-132637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の単分子膜は吸着剤と基材表面との化学結合を用いているため、ある程度の耐摩耗性や撥水撥油防汚機能を持っているが、太陽電池や太陽熱温水器用の防汚膜としては、耐候性能や離水性能、防汚性能が不足しているという課題があった。また、被膜が極薄のため入射光の表面反射低減効果も大きくは期待できないという課題があった。
【0006】
本発明は、高耐久、高離水性でかつ撥水撥油防汚性能が要求される太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置において、耐摩耗性能と高離水性能、防汚性能の向上と共に入射光の表面反射低減効果により、太陽電池の発電効率や太陽熱温水器、温室等の集熱効率の向上と、汚れによる経時劣化を防止する太陽エネルギー利用装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として提供される第1の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、光入射側透明基材の表面が該透明基材の表面に結合固定され、大きさが100nm以下の撥水撥油性の単層の透明微粒子で覆われている太陽エネルギー利用装置であって、前記透明微粒子の表面の一部には、一端に第1の官能基を有し、他端で前記透明微粒子の表面に結合した第1の膜化合物が結合しており、前記透明基材の表面の一部には、一端に前記第1の官能基と反応し共有結合を形成する第2の官能基を有し、他端で前記透明基材の表面に結合した第2の膜化合物が結合しており、前記透明微粒子は、前記第1の官能基と前記第2の官能基との反応により形成された共有結合によって前記透明基材の表面に結合固定されており、前記第2の膜化合物が結合固定された前記透明微粒子の表面には、前記第2の官能基と反応し共有結合を形成する第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物が表面に結合固定されていることを特徴とする。
【0008】
第2の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第1の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記透明微粒子が撥水撥油性被膜で覆われていることを特徴とする。
【0009】
第3の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第2の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜が前記透明微粒子の表面に共有結合していることを特徴とする。
【0010】
第4の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第2又は第3の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜が-CF基を含むことを特徴とする。
【0011】
(削除)
【0012】
の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記第1及び第2の膜化合物は、Siを介して、それぞれ前記透明微粒子及び前記透明基材の表面に共有結合していることを特徴とする。
【0013】
の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第4又は第5の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記撥水撥油性被膜、前記第1の膜化合物、及び前記第2の膜化合物のいずれか1つ又は2つ以上が単分子膜であることを特徴とする。
【0014】
の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第~第の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記第1及び第2の官能基の一方がエポキシ基、他方がアミノ基又はイミノ基であることを特徴とする。
【0015】
第8の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、光入射側透明基材の表面が該透明基材の表面に結合固定され、大きさが100nm以下の撥水撥油性の単層の透明微粒子層で覆われている太陽エネルギー利用装置であって、前記透明微粒子は、焼結により前記透明基材の表面に結合固定されており、前記透明微粒子の表面には、前記透明微粒子の表面官能基と反応し共有結合を形成する第の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物が表面に結合固定されていることを特徴とする。
【0017】
の発明に係る太陽エネルギー利用装置は、第1~第の発明に係る太陽エネルギー利用装置において、前記透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、又はジルコニアからなる群より選択されるものであることを特徴とする。
【0018】
(削除)
【0019】
第10の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、透明微粒子と、一端に第1の官能基を有し、他端に前記透明微粒子の表面基と反応して結合を形成する第1の結合基を有する第1の膜化合物とを反応させ、前記第1の膜化合物が前記第1の結合基を介して表面に結合した反応性透明微粒子を製造する工程Aと、太陽エネルギー利用装置の透明基材と、一端に前記第1の官能基と反応して共有結合を形成する第2の官能基を有し、他端に前記透明基材の表面基と反応して結合を形成する第2の結合基を有する第2の膜化合物とを反応させ、前記第2の膜化合物が前記第2の結合基を介して表面に結合した反応性透明基材を製造する工程Bと、前記反応性透明微粒子と前記反応性透明基材とを接触させ、前記第1の官能基と前記第2の官能基との反応により共有結合を形成させて前記反応性透明微粒子を前記透明基材の表面に結合固定させる工程Cと、前記透明基材の表面に結合固定された透明微粒子と、前記第2の官能基と反応し共有結合を形成する第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物とを反応させ、前記透明微粒子の表面に撥水撥油性被膜を形成する工程Dとを含むことを特徴とする。
【0020】
11の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、第10の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記工程A~Dのいずれか1つ又は2つ以上の後において、余分な化学吸着液を洗浄除去することを特徴とする。
【0021】
12の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、第10又は第11の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記第3の結合基がトリクロロシランであり、前記工程Dにおいて、前記撥水撥油性化合物と前記透明微粒子との反応はシラノール縮合触媒の存在下で行われることを特徴とする。
【0022】
13の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、第12の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法において、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は複数の助触媒を前記シラノール縮合触媒と共に用いることを特徴とする。
【0023】
第14の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、第10~第13の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記透明基材がガラスであり、前記工程Cの後、酸素を含む雰囲気下で前記透明微粒子が結合固定された透明基材を焼結して有機物を全て除去し、前記透明微粒子を前記透明基材上に直接固定させる工程Eを更に含み、前記工程Dにおいて、前記第3の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物の代わりに、前記透明微粒子の表面官能基と反応し共有結合を形成する第4の結合基を一端に、撥水撥油性基を他端に有する撥水撥油性化合物を用いることを特徴とする。
【0024】
15の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法は、第14の発明に係る太陽エネルギー利用装置の製造方法において、前記焼結を400℃以上かつ前記透明基材及び前記透明微粒子の溶融温度未満の温度で行うことを特徴とする。
【0025】
ここで、光入射側透明基材の表面がその表面に結合固定された撥水撥油性の透明微粒子で覆われていることにより、透明基材の耐候性及び防汚性を向上することが可能になる。
【0026】
また、撥水撥油性被膜で覆われた透明微粒子を前記撥水撥油性の透明微粒子として用いることにより、シリカ、アルミナ等の安価で耐磨耗性等に優れた原料を用いて撥水撥油性の透明微粒子を簡便に製造することが可能になる点で都合がよい。
【0027】
前記撥水撥油性被膜が透明微粒子表面に共有結合していると、撥水撥油性被膜が直接透明基材に接触することがないので、透明基材がガラスの場合でも、耐雨性(耐候性)を向上させる上で都合がよい。
【0028】
前記撥水撥油性被膜が-CF基を含むと、撥水撥油防汚機能を付与する上でも都合がよい。
【0029】
前記透明微粒子は、前記第1の官能基と第2の官能基との反応により形成された共有結合によって前記光入射側透明基材表面に共有結合で固定することにより、耐久性と防汚性、離水性を同時に向上させる上で都合がよい。
【0030】
前記第1及び第2の膜化合物が、Siを介してそれぞれ前記透明微粒子及び前記透明基材の表面に共有結合していると、前記透明基材表面の耐候性を更に向上させることができて都合がよい。
【0031】
前記撥水撥油性被膜、前記第1の膜化合物、及び前記第2の膜化合物のいずれか1つ又は2つ以上が単分子膜であると、光透過率を損なうことがないので都合がよい。
【0032】
前記第1及び第2の官能基の一方がエポキシ基であり、他方がアミノ基又はイミノ基である場合には、これらの反応により形成される共有結合は、安定で機械的強度や耐候性の点でも優れており、反応時に揮発成分を生じないため反応に伴う収縮等の問題を生じない。そのため、透明基材表面の耐候性及び光学的性質がさらに改善される点で都合がよい。
【0033】
また、前記撥水撥油性透明微粒子が、焼結により直接前記透明基材表面に焼結固定されていると、更に耐久性を向上させる上で都合がよい。
【0034】
前記焼結により直接透明基材表面に固定された透明微粒子が、前記透明基材の表面を1層のみで覆っている場合には、入射光の散乱等を抑制することができるので、入射光の利用効率が向上する点で都合がよい。
【0035】
前記透明微粒子が透光性のシリカ、アルミナ、あるいはジルコニアであると、耐水性や耐摩耗性能を向上できて都合がよい。
【0036】
前記透明微粒子の大きさが100nm以下であると、有効な光の透過率を損なうことがないので都合がよい。
【0037】
透明微粒子と、一端に第1の官能基を有し、他端に前記透明微粒子の表面基と反応して結合を形成する第1の結合基を有する第1の膜化合物とを反応させ、前記第1の膜化合物が前記第1の結合基を介して表面に結合した反応性透明微粒子を製造する工程Aと、太陽エネルギー利用装置の透明基材と、一端に前記第1の官能基と反応して共有結合を形成する第2の官能基を有し、他端に前記透明基材の表面基と反応して結合を形成する第2の結合基を有する第2の膜化合物とを反応させ、前記第2の膜化合物が前記第2の結合基を介して表面に結合した反応性透明基材を製造する工程Bと、前記反応性透明微粒子と前記反応性透明基材とを接触させ、前記第1の官能基と前記第2の官能基との反応により共有結合を形成させて前記反応性透明微粒子を前記透明基材の表面に結合固定させる工程Cと、前記透明基材の表面に結合固定された透明微粒子と、一端に前記透明微粒子の表面と反応し共有結合する第3の結合基を有する撥水撥油性化合物とを反応させ、前記透明微粒子の表面に撥水撥油性被膜を形成する工程Dとを含む太陽エネルギー利用装置の製造方法に関する発明により、耐摩耗性、離水性能、防汚性能、及び入射光の利用効率が向上した太陽エネルギー利用装置を安価かつ簡便に製造することが可能になる。
【0038】
また、前記工程A~Dのいずれか1つ又は2つ以上の後において、余分な化学吸着液を洗浄除去することにより、前記透明基材と前記透明微粒子との間に介在する有機物の量を最少限にとどめることができるため、耐候性を向上する上で都合がよい。また、焼成により有機物を除去する上でも都合がよい。
【0039】
前記第3の結合基をトリクロロシランとし、前記工程Dにおいて、前記撥水撥油性化合物と前記透明微粒子との反応をシラノール縮合触媒の存在下で行わせることにより、前記撥水撥油性被膜の機械的強度が向上すると共に、反応を短時間で行うことが可能になるため都合がよい。
【0040】
ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は複数の助触媒を前記シラノール縮合触媒と共に用いることにより、前記撥水撥油性被膜の製造時間を短縮できて都合がよい。
【0041】
膜化合物の間に形成された共有結合を介して前記反応性透明微粒子を前記透明基材の表面に結合固定させる工程の後、酸素を含む雰囲気下で焼結して有機物を全て除去し透明基材と透明微粒子を直接固定させる工程を行えば、一層、耐候性や耐摩耗性能を向上できて都合がよい。
【0042】
また、焼結を400℃以上透明基材及び透明微粒子の融点未満の温度で行うことにより、緻密な膜が得られるため、耐候性や耐摩耗性能をより一層向上させることができて都合がよい。
【発明の効果】
【0043】
以上説明したとおり、本発明によれば、高耐久、高離水性でかつ撥水撥油防汚性能が要求される太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置において、入射光の表面反射の低減と耐摩耗性や高離水性、防汚性を向上させることにより、太陽電池の発電効率の向上や太陽熱温水器の集熱効率の向上と汚れによる経時劣化防止を同時に達成でき、発電効率を長期にわたり維持できる太陽電池や集熱効率を長期にわたり維持できる太陽熱温水器を提供できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
より具体的には、本発明は、一端に例えば、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、又はヒドロキシル基等の第1の官能基及び他端にトリアルコキシシリル基等の第1の結合基を有する第1の膜化合物、シラノール縮合触媒、及び非水系の有機溶媒を含む第1の化学吸着液に、透光性のシリカ、アルミナ、又はジルコニア等よりなる透明微粒子を接触させ、透明微粒子の表面基と第1の結合基が反応して結合し、第1の官能基を有する反応性透明微粒子を製造する工程(工程A)と、一端に前記第1の官能基と反応して共有結合を形成する第2の官能基(例えば、第1の官能基がエポキシ基である場合にはアミノ基又はイミノ基等であり、第1の官能基がイソシアネート基である場合には、アミノ基又はヒドロキシル基等である)及び他端にトリアルコキシシリル基等の第2の結合基を有する第2の膜化合物、シラノール縮合触媒、及び非水系の有機溶媒を含む第2の化学吸着液に、太陽電池又は太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置に用いられる光入射側透明基材の表面を接触させ、透明基材の表面基と第2の結合基が反応して結合し、第2の官能基を有する反応性透明基材を製造する工程(工程B)と、反応性透明微粒子と反応性透明基材とを接触させ、加熱等により第1の官能基と第2の官能基とを反応させることにより共有結合を形成させて前記反応性透明基材の表面に前記反応性透明微粒子を結合固定させる工程(工程C)と、一端にトリクロロシリル基又はトリアルコキシシリル基等の第2の官能基と反応し共有結合を形成する第3の結合基を有し、他端にフッ化炭素基等の撥水撥油性基を有する撥水撥油性化合物、シラノール縮合触媒及び非水系の有機溶媒を含む第3の化学吸着液と、前記表面に透明微粒子を結合固定させた透明基材の表面を接触させて、透明微粒子の表面に第3の結合基を共有結合させて前記透明微粒子の表面に撥水撥油性被膜を形成する工程(工程D)とを含む方法により製造される、光入射側透明基材の表面がこの表面に結合固定された撥水撥油性の単層の透明微粒子層で覆われていることを特徴とする太陽エネルギー利用装置を提供することを要旨とする。
【0045】
したがって、本発明には、高耐久、高離水性でかつ撥水撥油防汚性能が要求される太陽電池や太陽熱温水器において、耐摩耗性能と高離水性能、防汚性能の向上と共に入射光の表面反射低減効果により、発電効率や集熱効率の向上と、汚れによる劣化を防止できる太陽電池や太陽熱温水器を提供できる作用がある。
【0046】
以下、本発明の詳細について実施例を用いて説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら制限されるものではない。
【0047】
なお、本発明に関する太陽電池や太陽熱温水器等の太陽エネルギー利用装置において、耐摩耗性能と高離水性能、防汚性能の向上と共に入射光の表面反射低減効果により、発電効率や集熱効率の向上と、汚れによる劣化を防止するという機能の付与方法は、原理的には同じであるので、代表例として以下太陽電池の光入射側透明基材がガラスの場合を取り上げて説明する。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
まず、太陽電池の光入射側透明基材としてガラス製の透明基材1を用意し、よく洗浄して乾燥した。次に、機能部位に反応性の第2の官能基、例えば、エポキシ基を一端に含み他端に第2の結合基の一例であるアルコキシシリル基を含む第2の膜化合物、例えば、下記の式(1)に示す膜化合物が99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチルスズジアセチルアセトナートが1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に合計1重量%程度の濃度(好ましい膜化合物の濃度は、0.5~3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0049】
【化1】
JP0005331977B2_000002t.gif

【0050】
この吸着液を前記透明基材1表面に塗布し、普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、前記ガラス製の透明基材1の表面にはヒドロキシル基(表面基)2が多数含まれているので(図1(a))、前記膜化合物の-Si(OCH)基と前記ヒドロキシル基2がシラノール縮合触媒の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記の式(2)に示したような結合を形成し、透明基材表面全面に亘り表面と化学結合したエポキシ基を含む単分子膜3が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。(なお、透明基材がアクリルやポリカーボネート樹脂の場合、あらかじめ表面をコロナ処理やプラズマ処理、あるいは酸化剤等で処理して親水性にしておけば、同様の方法で被膜を形成できた。)
【0051】
【化2】
JP0005331977B2_000003t.gif

【0052】
その後、クロロホルム等の塩素系溶媒で洗浄すると、表面に反応性のエポキシ基を表面に有する単分子膜3で被われた透明基材(反応性透明基材)4を製造できた(図1(b))。
【0053】
なお、洗浄せずに空気中に取り出し放置すると、溶媒が蒸発し透明基材表面に残った膜化合物が透明基材表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記膜化合物よりなる極薄のポリマー膜が形成された。なお、この被膜でも、反応性はほとんど変わらなかった。特に、酸素を含む雰囲気中で焼結して有機物を除去する場合には、全く問題なかった。
【0054】
一方、平均粒径が100nm程度(100nm以下が好ましい)のアルミナ微粒子(透明微粒子の一例)5を用意し、よく乾燥した。次に、機能部位にエポキシ基と反応する第1の官能基の一例であるアミノ基(-NH)又はイミノ基(=NH)を含み、他端に第1の結合基の一例であるアルコキシシリル基を含む第1の膜化合物、例えば、末端にアミノ基を含む下記の式(3)に示す膜化合物が99重量%、シラノール縮合触媒の代わりに有機酸である酢酸を1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーンとジメチルホルムアミドを同量混合した溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン50%とジメチルホルムアミド50%の溶液に合計1重量%程度の濃度(好ましい膜化合物の濃度は、0.5~3%程度)になるように溶かして化学吸着液を調製した。
【0055】
【化3】
JP0005331977B2_000004t.gif

【0056】
この吸着液に前記無水のアルミナ微粒子5を混入撹拌して普通の空気中で(相対湿度45%)で2時間程度反応させた。このとき、アルミナ微粒子5の表面にはヒドロキシル基(表面基)6が多数含まれているので(図2(a))、第1の膜化合物の-Si(OCH)基と前記ヒドロキシル基が酢酸の存在下で脱アルコール(この場合は、脱CHOH)反応し、下記式(4)に示したような結合を形成し、微粒子表面全面に亘り表面と化学結合したアミノ基7を含む単分子膜8が約1ナノメートル程度の膜厚で形成される。
【0057】
【化4】
JP0005331977B2_000005t.gif

【0058】
その後、クロロホルム等の塩素系溶媒を添加して撹拌洗浄すると、反応性透明微粒子の一例である、表面にアミノ基7を有する単分子膜8で被われたアルミナ微粒子9を形成できた(図2(b))。
なお、ここで、アミノ基を含む膜化合物を使用する場合には、アミノ基がスズ系の触媒と反応し沈殿が生成するので、酢酸等の有機酸を用いる方が好ましい。また、アミノ基以外に、ピロール誘導体や、イミダゾール誘導体等のイミノ基を含む物質が利用できた。更に、ケチミン誘導体を用いて単分子膜を形成後、ケチミン残基の加水分解によっても、容易にアミノ基を導入することができた。
【0059】
なお、この処理により形成された単分子膜8は、反応性透明基材4の場合と同様に、ナノメートルレベルの膜厚で極めて薄いため、アルミナ微粒子の粒子径を損なうことはなかった。
また、洗浄せずに空気中に取り出すと、反応性はほぼ変わらないが、溶媒が蒸発し粒子表面に残った膜化合物が粒子表面で空気中の水分と反応して、粒子表面に前記化学吸着剤よりなる極薄のポリマー膜が形成されたアルミナ微粒子が得られた。
【0060】
次に、前記エポキシ基を有する単分子膜3で被われた透明基材4の表面に、前記アミノ基7を有する単分子膜8で被われたアルミナ微粒子9をエタノールに分散させて塗布し、エタノールを蒸発させた後、100℃程度で30分程度加熱すると、下記の式(5)に示したような反応でエポキシ基とアミノ基が付加反応して透明基材4とアルミナ微粒子5が2つの単分子膜を介して結合固定した。
【0061】
【化5】
JP0005331977B2_000006t.gif

【0062】
その後、更にクロロホルム等の有機溶媒で洗浄すると、余分な未反応のアミノ基を有する単分子膜で被われたアルミナ微粒子が除去され、透明基材1表面とアルミナ微粒子5が前記2つの単分子膜3、8を介して1層のみ共有結合した太陽電池用の透明基材10が得られた(図3(a))。
【0063】
ここで、後工程の太陽電池製造において、膜化合物が熱分解するおそれのある350℃以上の高温処理を必要とする場合には、空気中で例えば600℃(基材の軟化温度に応じて400℃以上かつ透明基材及び透明微粒子の溶融温度未満の範囲で適宜調節される)で30分間焼結を行い、有機化合物である膜化合物が全て分解除去された、アルミナ微粒子5が透明基材1表面に1層直接結合固定された透明基材10aを製造しておくことが、膜化合物の熱分解による透明基材の着色等の問題を回避する上で好ましい(図3(b))。
なお、後工程の太陽電池製造工程に、250℃以下で行える印刷法等を用いる場合には、この焼結工程は必ずしも必要ではなく、透明基材1の表面とアルミナ微粒子5が前記2つの単分子膜3、8を介して1層のみ共有結合した透明基材10を用いればよい(図3(a))。
【0064】
次に、図4に示すように、この透明基材10aの光入射11側と反対側方向の面にスパッタ蒸着法で透明電極12になるITOを蒸着製膜し、プラズマCVD法を用いて公知の方法でn型アモルファスシリコン層13とp型アモルファスシリコン層14を順に形成し、更にその上に反射膜を兼ねたアルミニウムのバック電極15を蒸着形成して太陽電池層を作成した。ここで、アモルファスシリコンの製膜温度やアルミニウム電極の蒸着温度は、通常450℃以下なので、太陽電池製作工程で微粒子を結合固定した前記透明基材10aが破壊されることはなかった。
【0065】
最後に、撥水撥油性を有するフッ化炭素基及び第の結合基の一例であるクロロシリル基を含む撥水撥油性化合物、例えばCF(CF27(CH22SiCl3を1重量%程度の濃度で非水系溶媒(例えば、脱水したノナン)に溶かして調製した化学吸着液(以下吸着液という)を、乾燥雰囲気中(相対湿度30%以下が好ましかった)で透明基材10aの光入射面側表面に塗布し反応させると、透明基材1表面のアルミナ微粒子5は多数のヒドロキシル基(-OH)で被われているので、前記撥水撥油性化合物のクロロシリル基(SiCl)基と前記アルミナ微粒子5表面のヒドロキシル基との間で脱塩酸反応が生じ、アルミナ微粒子5の表面全面に亘り、下記の式(6)に示す結合が生成する。その後、フロン系の溶媒で洗浄すると、撥水撥油性被膜の一例である撥水撥油防汚性単分子膜16で被われた、入射面側の表面がナノレベルで凸凹な太陽電池17を製造できた。(図4)
【0066】
【化6】
JP0005331977B2_000007t.gif

【0067】
この単分子膜の膜厚は、たかだか1nm程度であるため、アルミナ微粒子により形成された透明基材表面の50nm程度の凸凹はほとんど損なわれることがなかった。また、この凸凹の効果により、この太陽電池17の光入射面の透明基材の見かけ上の水滴接触角は、160度程度となり、超撥水超離水が実現できた。
【0068】
ちなみに、この撥水撥油性化合物を用いて平坦な基材表面に単分子膜を形成すると、臨界表面エネルギーは6~7mN/mになり、最大水滴接触角は115度程度であった。
すなわち、本発明の方法で作製した透明基材表面は、格段に表面エネルギーが小さくなり(平均3mN/m以下)、離水性能や防汚性能が極めて高い表面を実現できた。
【0069】
更に、アルミナ微粒子は、ガラスよりも硬度が高く、アルカリ成分の含有量もほとんどなく、しかも透明基材表面に、直接又は膜化合物間に形成された共有結合を介して結合固定されているため、直接透明ガラス基材表面にCF(CF27(CH22SiCl3を用いて作成された単分子膜に比べて耐摩耗性能や耐水性能が高く、耐候性を大幅に向上できた。
【0070】
また、得られた被膜の厚さは微粒子を含めてもトータルで100nm程度であるため、透明性が損なわれることもなかった。
更に、この撥水撥油性透明微粒子膜はナノ粒子の付着密度を制御することで表面屈折率を1.3~1.5の範囲で自由に制御できたので、光入射面の表面反射を極小にすることができた。
【0071】
(実施例2)
一方、実施例1において、焼結せずに同様の方法でCF(CF27(CH22SiCl3を含む吸着溶液を透明基材表面に塗布し反応させると、2つの単分子膜を介して1層のみ共有結合した透明基材4表面のアルミナ微粒子5は多数のアミノ基(第2の官能基)7で被われているので(図3(a))、前記化学吸着剤のクロロシリル基(SiCl)基(第3の結合基の一例)と前記アルミナ微粒子表面のアミノ基(-NH)との間で脱塩酸反応が生じ、表面全面に亘り、下記の式(7)に示す結合が生成される。その後、フロン系の溶媒で洗浄し、光入射面が前記撥水撥油性化合物よりなる撥水撥油防汚性単分子膜(撥水撥油性被膜の一例)16aで被われた、表面がナノレベルで凸凹な透明基材を製造した後、裏面に印刷法を用いて銀ペースト櫛形電極12a、n型半導体層13aとp型半導体層14aを順に形成し、更にその上に反射膜を兼ねたアルミニウムのバック電極15を蒸着形成して太陽電池層を形成すると、撥水撥油防汚性単分子膜16aで被われ、かつ入射面側の表面がナノレベルで凸凹な太陽電池17aを製造できた(図5)。
【0072】
【化7】
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【0073】
なお、実施例1及び2において、撥水撥油防汚性単分子膜16、16a形成の際、洗浄せずに空気中に取り出すと、溶媒が蒸発し透明基材表面に残った撥水撥油性化合物が表面で空気中の水分と反応して、膜厚が数十nmの撥水撥油防汚性のポリマー膜が形成された。
この被膜でも、ある程度表面凸凹は維持されていたため、耐摩耗性能と高離水性能、防汚性能と共に表面反射低減性能はほとんど変わらなかった。
【0074】
(実施例3)
実施例1及び2と同様に、太陽電池の透明基材表面にアルミナ微粒子が1層のみ焼結により直接結合固定された透明基材10a、あるいはアルミナ微粒子が膜化合物間に形成された共有結合を介して1層のみ結合固定された透明基材10を製造し、その裏面に太陽電池層12~15、あるいは12a~15aを製造した後、一端にフッ化炭素基(-CF)を含み他端にアルコキシシリル基を含む撥水撥油性化合物、例えば、CF(CF27(CH22Si(OCH)3で示す撥水撥油性化合物を99重量%、シラノール縮合触媒として、例えば、ジブチルスズジアセチルアセトナートを1重量%となるようそれぞれ秤量し、シリコーン溶媒、例えば、ヘキサメチルジシロキサン溶媒に1重量%程度の濃度(好ましい撥水撥油性化合物の濃度は、0.5~3%程度)に溶かして化学吸着液を調製し、透明基材の光入射面にアルミナ微粒子が1層のみ共有結合した太陽電池を漬浸し2時間程度反応させた後、余分な吸着剤を洗浄除去すると、アルコキシシリル基は、アミノ基と脱アルコール反応して、実施例1及び2と同様に表面反射が少なく撥水性、離水性、耐光性に優れた太陽電池を製造できた。
【0075】
(実施例4)
一方、実施例1及び2とは反対に、透明基材表面にアミノ基を有する単分子膜を形成し、アルミナ微粒子表面にエポキシ基を有する単分子膜を形成し、式(5)に示した反応により透明基材表面にアルミナ微粒子を1層結合固定させ、焼結した後、あるいはそのままで最後にCF(CF27(CH22SiCl3を反応させても実施例1及び2と同レベルの表面反射が少なく撥水性、離水性、耐光性に優れた太陽電池を製造できた。
【0076】
(実施例5)
更に、実施例4と同様に、透明基材表面にアミノ基を有する単分子膜を形成し、アルミナ微粒子表面にエポキシ基を有する単分子膜を形成し、同じ反応で透明基材表面にアルミナ微粒子を1層固着させ、焼結した後、あるいはそのままで最後に実施例3と同様の方法でCF(CF27(CH22Si(OCH)3を反応させても実施例1及び2と同レベルの表面反射が少なく撥水性、離水性、耐光性に優れた太陽電池を製造できた。
【0077】
なお、上記実施例1~5では、反応性基を含む膜化合物として式(1)及び式(3)に示した物質を用いたが、上記のもの以外にも、下記(1)~(16)に示した化合物が利用できた。
(1) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OCH)3
(2) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OCH)3
(3) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OCH)3
(4) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OCH)3
(5) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OCH)3
(6) (CHOCH)CH2O(CH2)Si(OC)3
(7) (CHOCH)CH2O(CH2)11Si(OC)3
(8) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OC)3
(9) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OC)3
(10) (CHCHOCH(CHCH)(CH2)Si(OC)3
(11) H2N(CH2)Si(OCH)3
(12) H2N(CH2)Si(OCH)3
(13) H2N(CH2)Si(OCH)3
(14) H2N(CH2)Si(OC)3
(15) H2N(CH2)Si(OC)3
(16) H2N(CH2)Si(OC)3
ここで、(CHOCH)-基は、下記式(8)で表される官能基を表し、(CHCHOCH(CHCH)-基は、下記式(9)で表される官能基を表す。
【0078】
【化8】
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【0079】
【化9】
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【0080】
また、上記実施例1、2、及び4では、光入射面における撥水撥油層の形成にフッ化炭素系の撥水撥油性化合物としてCF3(CF27(CH22SiCl3を用いたが、上記のもの以外にも、炭化水素系を含めて下記(21)~(26)に示したトリクロロシランが利用できた。
(21) CF3CH2O(CH2)15SiCl3
(22) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15SiCl3
(23) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(24) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9SiCl3
(25) CF3COO(CH2)15SiCl3
(26) CF3(CF2)5(CH2)2SiCl3
【0081】
更にまた、上記実施例3及び5では、フッ化炭素系撥水撥油性化合物としてCF3(CF27(CH22Si(OCH)3を用いたが、上記のもの以外にも、下記(31)~(42)に示した化合物や平均分子量が2000~5000程度の有機含フッ素ポリエーテルトリアルコキシシランが利用できた。
(31) CF3CH2O(CH2)15Si(OCH)3
(32) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OCH)3
(33) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(34) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OCH)3
(35) CF3COO(CH2)15Si(OCH)3
(36) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH)3
(37) CF3CH2O(CH2)15Si(OC)3
(38) CF3(CH2)Si(CH3)2(CH2)15Si(OC)3
(39) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(40) CF3(CF2)(CH2)2Si(CH3)2(CH2)9Si(OC)3
(41) CF3COO(CH2)15Si(OC)3
(42) CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC)3
【0082】
なお、実施例1~5において、シラノール縮合触媒には、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート類が利用可能である。更に具体的には、酢酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2-エチルヘキセン酸鉄、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレート、テトラブチルチタネート、テトラノニルチタネート、ビス(アセチルアセトニル)ジ-プロピルチタネート、及びTiO等の金属酸化物を用いることが可能であった。
また、膜形成溶液の溶媒としては、膜化合物又は撥水撥油性化合物における結合基がアルコキシシラン系、クロロシラン系何れの場合も、水を含まない有機塩素系溶媒、炭化水素系溶媒、あるいはフッ化炭素系溶媒やシリコーン系溶媒、あるいはそれらの混合物を用いることが可能であった。なお、洗浄を行わず、溶媒を蒸発させて粒子濃度を上げようとする場合には、溶媒の沸点は50~250℃程度がよい。
【0083】
具体的に使用可能な溶媒は、結合基がクロロシラン系の場合は、非水系の石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、ノナン、デカン、灯油、ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。
更に、結合基がアルコキシシラン系の場合でかつ溶媒を蒸発させて被膜を形成する場合には、前記溶媒に加え、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、あるいはそれら混合物が使用できた。
【0084】
また、フッ化炭素系溶媒には、フロン系溶媒や、フロリナート(米国3M社製)、アフルード(旭硝子株式会社製)等がある。なお、これらは1種単独で用いてもよいし、良く混ざるものなら2種以上を組み合わせてもよい。更に、クロロホルム等有機塩素系の溶媒を添加してもよい。
【0085】
一方、上述のシラノール縮合触媒の代わりに、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物の1つ又は2つ以上を用いた場合、同じ濃度でも処理時間を半分~2/3程度まで短縮できた。
【0086】
更に、シラノール縮合触媒と、ケチミン化合物、有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、及びアミノアルキルアルコキシシラン化合物のいずれか1つ又は2つ以上を混合(1:9~9:1範囲で使用可能だが、通常1:1前後が好ましい。)して用いると、処理時間を更に数倍早くでき、製膜時間を数分の一まで短縮できる。
【0087】
例えば、シラノール触媒であるジブチルスズオキサイドをケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を1時間程度にまで短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
更に、シラノール触媒を、ケチミン化合物であるジャパンエポキシレジン社のH3と、シラノール触媒であるジブチルスズビスアセチルアセトネートの混合物(混合比は1:1)に置き換え、その他の条件は同一にしてみたが、反応時間を20分程度に短縮できた他は、ほぼ同様の結果が得られた。
【0089】
したがって、以上の結果から、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物がシラノール縮合触媒より活性が高いことが明らかとなった。
【0090】
更にまた、ケチミン化合物や有機酸、アルジミン化合物、エナミン化合物、オキサゾリジン化合物、アミノアルキルアルコキシシラン化合物からなる群より選択される1又は複数を、助触媒としてシラノール縮合触媒と共に用いると、更に活性が高くなることが確認された。
【0091】
なお、ここで、利用できるケチミン化合物は特に限定されるものではないが、例えば、2,5,8-トリアザ-1,8-ノナジエン、3,11-ジメチル-4,7,10-トリアザ-3,10-トリデカジエン、2,10-ジメチル-3,6,9-トリアザ-2,9-ウンデカジエン、2,4,12,14-テトラメチル-5,8,11-トリアザ-4,11-ペンタデカジエン、2,4,15,17-テトラメチル-5,8,11,14-テトラアザ-4,14-オクタデカジエン、2,4,20,22-テトラメチル-5,12,19-トリアザ-4,19-トリエイコサジエン等がある。
【0092】
更にまた、利用できる有機酸としても特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、あるいは酢酸、プロピオン酸、酪酸、マロン酸等があり、ほぼ同様の効果があった。
【0093】
また、上記5つの実施例では、アルミナ微粒子を例として説明したが、本発明は、表面に活性水素、すなわちヒドロキシル基の水素やアミノ基あるいはイミノ基の水素等を含んだ微粒子であれば、どのような微粒子にでも適用可能であった。
【0094】
具体的には、ガラスより堅い透明微粒子として、アルミナ以外に、シリカやジルコニア等が適用可能であることは言うまでもない。
【0095】
(実施例6)
実施例1で作成した太陽電池の透明基材と同様の条件で作成し、水滴接触角が160度程度(実用上、水滴接触角が150度以上であれば同様の効果が得られた。)のガラス板を太陽熱温水器に装着し実用化試験を行うと、空気中の粉塵や雨水による汚れもほとんど付着せず、普通のガラスを装着した場合に比べて平均6%程度集熱効率を向上できた。また、集熱効率の経時劣化も、普通のガラスを装着した場合に比べて、数十分の一まで低減できた。
【0096】
以上の実験結果は、本発明の太陽電池や太陽熱温水器がきわめて耐久性が高く高効率であることを示している。
【0097】
なお、以上の実施例では、太陽電池や太陽熱温水器の用途について開示したが、本発明の応用は、これら用途に限定されるものではなく、太陽エネルギーを利用する機器、例えば温室等にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の実施例1において、透明基材表面にエポキシ基を含む単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は、反応前の透明基材表面の説明図、(b)は、エポキシ基を含む単分子膜が形成された後の説明図である。
【図2】本発明の実施例1においてアルミナ微粒子表面にアミノ基を含む単分子膜を形成する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は、反応前のアルミナ微粒子表面の説明図、(b)は、アミノ基を含む単分子膜が形成された後の説明図である。
【図3】本発明の実施例1において透明基材表面にアルミナ微粒子を結合する工程を説明するために分子レベルまで拡大した概念図であり、(a)は、透明基材表面とアルミナ微粒子が2つの単分子膜を介して結合した説明図、(b)は、更に焼結して、2つの単分子膜を分解除去し、アルミナ微粒子を直接透明基材表面に結合固定した説明図である。
【図4】本発明の実施例1において作成された太陽電池であり、焼結により透明基材表面にアルミナ微粒子が直接結合固定され、更にアモルファス型太陽電池層が形成された後、光入射側表面に全面に亘わたり撥水性の単分子膜が形成された状態を説明するために分子レベルまで拡大した断面概念図である。
【図5】本発明の実施例2において作成された太陽電池であり、透明基材表面にアルミナ微粒子が2つの単分子膜を介して結合固定され、光入射側表面に全面に亘わたり撥水性の単分子膜が形成された後、更に印刷法で太陽電池層が形成された状態を説明するために分子レベルまで拡大した断面概念図である。
【符号の説明】
【0099】
1:太陽電池の透明基材、2:ヒドロキシル基、3:エポキシ基を含む単分子膜、4:エポキシ基を含む単分子膜で被われた透明基材、5:アルミナ微粒子、6:ヒドロキシル基、7:アミノ基、8:アミノ基を含む単分子膜、9:アミノ基を含む単分子膜で被われたアルミナ微粒子、10:アルミナ微粒子が2つの単分子膜を介して1層のみ共有結合した透明基材、10a:アルミナ微粒子が1層直接結合固定された透明基材、11:光入射、12:ITO透明電極、12a:銀ペースト櫛型電極、13:n型アモルファスシリコン層、13a:n型半導体層、14:p型アモルファスシリコン層、14a:p型半導体層、15:Al蒸着バック電極、16、16a:撥水撥油防汚性単分子膜、17、17a:表面が凸凹の撥水性単分子膜で覆われた太陽電池
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4