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明細書 :手術補助器具

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4734651号 (P4734651)
公開番号 特開2007-260385 (P2007-260385A)
登録日 平成23年5月13日(2011.5.13)
発行日 平成23年7月27日(2011.7.27)
公開日 平成19年10月11日(2007.10.11)
発明の名称または考案の名称 手術補助器具
国際特許分類 A61B  17/00        (2006.01)
A61B  17/11        (2006.01)
FI A61B 17/00 320
A61B 17/11
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2006-303439 (P2006-303439)
出願日 平成18年11月9日(2006.11.9)
優先権出願番号 2006058353
優先日 平成18年3月3日(2006.3.3)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年11月7日(2009.11.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】野瀬 清孝
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】沖田 孝裕
参考文献・文献 米国特許出願公開第2002/0068948(US,A1)
特表2001-511684(JP,A)
調査した分野 A61B 17/00
A61B 17/11
特許請求の範囲 【請求項1】
尿失禁手術用補助器具であって、穿刺用針を挿通する針固定シースと、該挿通された穿刺用針をさらに所定位置にて挿通可能とする目標シースと、前記針固定シースと目標シースとを離間して保持する保持とからなり、前記針固定シースと目標シースは前記穿刺針と同じ曲率にて形成され、前記保持具によって前記穿刺針と同じ立体曲面上に各々離間して配置されていることを特徴とする手術補助器具。
【請求項2】
前記針固定シースと目標シースは中空の筒状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の手術補助器具。
【請求項3】
前記針固定シースと目標シースは前記穿刺針を挿通可能な溝部を有していることを特徴とする請求項1記載の手術補助器具。
【請求項4】
尿失禁手術用補助器具であって、穿刺針を保持する柄部に着脱可能に装着する接続部と、該接続部に前記穿刺針と離間し平行して取り付けられ、回動可能とされた保持具と、該保持具の先端に設けられ前記穿刺針を緩挿可能な目的シースとからなる手術補助器具。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、女性の尿失禁を治療する手術TOT(Trans Obturator Tape)における穿刺針に使用する手術補助器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
女性の尿失禁は、そのほとんどが腹圧性尿失禁とされている。この腹圧性尿失禁の女性は笑ったり、咳、くしゃみ及び標準的な運動などの通常の日常的な活動及び移動中に尿失禁する。
【0003】
腹圧性尿失禁は尿道及び恥骨に結合する組織または靭帯の機能的な欠陥によって引き起こされ、その共通する要因としては、骨盤内の筋肉の反復性の緊張、出産、骨盤内の筋肉の緊張の喪失、及びアストロゲンの喪失がある。この腹圧性尿失禁に対する外科的治療法としては、TVT(Tension-free Vaginal Tape)手術が主流とされ、恥骨尿道靭帯という恥骨の両側と尿道の下を通る靭帯を想定し、ポリプロピレン繊維からなるテープを用いU字型に補強するものであるが、このテープを送達するためには膣を通して下腹部にいたる2つの比較的太く長寸の先端が尖ったシャフトを使用する必要があり、このシャフトを挿入する際には手探りによる作業となり膀胱、血管、筋肉、及び神経などの骨盤内の構造を損傷する虞があった。また、これらの損傷を防止するために膀胱鏡による視覚化を繰り返し行なう必要があり、手術に長時間を必要とするという欠点を有していた。
【0004】
この問題点の対策として各種の提案がなされているが、いまだ根本的な解決手段とはなっていない(例えば特許文献1参照。)。
【0005】

【特許文献1】特表2004-509685号公報
【0006】
そこで、現在上記TVT手術に替わる新たな手術法としてTOT(Trans Obturator Tape)手術が提案されている。この手術法は、下記の工程により構成される。
【0007】
(1)麻酔を行なった後左右一対の閉鎖孔皮膚と膣前壁を切開する。(膣前壁は指が入るくらいの皮下トンネルをほる。)
(2)専用の穿刺針を閉鎖孔から穿刺し、恥骨の裏を通して膣前壁に出す。(この際指を皮下トンネルに入れ、穿刺針を誘導する。)
(3)穿刺針を膣前壁から膣に誘導させた後、穿刺針の先端部の溝にテープをかけ、穿刺針を皮膚外に引抜いてテープを閉鎖孔より引き出す。
(4)以上の操作を、他方の閉鎖孔側にも行い同様にテープを引き出す。
(5)閉鎖孔から引き出したテープの張力を微調整した後、皮膚、膣を縫合し手術終了。
尚、上記の手術法は閉鎖孔から膣に針を出す(アウトサイドイン)方法を示しており、逆に膣から閉鎖孔に出す(インサイドアウト)方法も同様な工程から実施される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のTOT手術の場合、専用の穿刺針(例えば螺旋状の針)を使用して盲目的に穿刺するものであり、従来のTVTと比較し針を通す距離が短く安全であるとされるが、未熟な執刀医の場合穿刺ルートが正確に把握できず、膀胱、血管、腸管などを損傷し、重篤な合併症を起こす危険がある。
【0009】
しかも、穿刺している針がどこを通過しているか執刀医以外には分りにくく、技術指導が困難であり、針を正確に穿刺する技術を習得するためには長時間を要するという問題点もある。
【0010】
上記の問題点に鑑み本発明者は、鋭意研究の結果尿失禁手術TOTにおいて穿刺針を正確に穿刺し、誘導を可能とする手術補助器具を提供するにいたった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため本発明の手術補助器具は、穿刺用針を挿通する針固定シースと、該挿通された穿刺用針をさらに所定位置にて挿通可能とする目標シースと、前記針固定シースと目標シースとを離間して保持する保持とからなり、前記針固定シースと目標シースは前記穿刺針と同じ曲率にて形成され、前記保持具によって前記穿刺針と同じ立体曲面上に各々離間して配置されていることを第1の特徴とする。
【0013】
そして、前記針固定シースと目標シースは中空の筒状に形成されていることを第の特徴とする。
【0014】
しかも、前記針固定シースと目標シースは前記穿刺針を挿通可能な溝部を有していることを第の特徴とする。
【0015】
さらに、穿刺針を保持する柄部に着脱可能に装着する接続部と、該接続部に前記穿刺針と離間し平行して取り付けられ、回動可能とされた保持具と、該保持具の先端に設けられ前記穿刺針を緩挿可能な目的シースとからなることを第4の特徴とする。
【0016】
本発明に係る手術補助器具によれば、既存のTOT用の穿刺針であればいずれの形状にも対応が可能であり、例えば同心円状のものや螺旋状のものであってもよく、材質は金属、プラスチック等が適宜選択される。尚、本発明においてシースは筒状のものに限定されず、前記穿刺針を保持して誘導できる形状(例えば溝部を有する筒体や、クリップで挟める形状等)であってもかまわない。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る手術補助器具によれば、穿刺用針を挿通する針固定シースと目標シースとが、保持部によって離間して保持されて構成されているため、穿刺針が常に一定のコースに沿って進行するため、未熟な執刀医であっても正確な穿刺ができ膀胱、血管、腸管などを損傷することなく、重篤な合併症を起こす危険もないという優れた効果を有する。
【0018】
また、前記針固定シースと目標シースは中空の筒状に形成されるか、或いは前記穿刺針を挿通可能な溝部を有しており、穿刺針は必ず前記固定シースから目標シースへと正確に移動するため、この手術補助器具を使用する手術方法によって執刀医以外でも針の通過位置が確認できるため技術指導がし易く、また技術の習得が短時間で可能であるという効果を有する。
【0019】
そして、柄部を持つ穿刺針であっても、この柄部に目的シースが設けられた保持具が回動可能に接続されるため、穿刺針と手術補助器具とが夫々回動の自由度が高くなり、穿刺作業がし易いという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が本実施例に限定されないことは言うまでもない。
図1は本発明に係る手術補助器具を示す斜視図、図2は図1の平面図、図3は穿刺針を挿通した状態を示す説明図、図4はアウトサイドイン方法による使用説明図、図5はインサイドアウト方法による使用説明図、図6は螺旋状の穿刺針による使用説明図、図7は本発明に係る手術補助器具の他の実施例を示す斜視図、図8は図6の他の実施例を示す斜視図、図9は図8の手術補助器具を使用した穿刺状態を示す説明図である。
【実施例1】
【0021】
図1、2に示すように本発明の手術補助器具1は、プラスチック製の中空筒状に成形された針固定シース2と目標シース3と、プラスチック製の保持部4とから構成され、針固定シース2と目標シース3は夫々後述する穿刺針6の曲率と同じ円弧形状の曲率を有すると共に、穿刺針6の直径と略同径若しくはやや大きい径からなる孔部5を有している。そして保持部4は、図3に示すように円形の穿刺針6が針固定シース2を挿通して目標シース3に至り挿通可能となるように穿刺針6と同じ円弧形状に針固定シース2と目標シース3を離間して配置し保持している。尚、針固定シース2、目標シース3、保持具4の素材は夫々プラスチックに限定されず金属等であってもかまわず、作業に必要な強度を有するものであればかまわない。
【0022】
上記の構成からなる手術補助器具1を使用してTOT手術を行なうと、針固定シース2に挿入された穿刺針6は一旦針固定シース2を貫通した後目標シース3に確実に挿通する。これにより執刀医は正確に穿刺針を穿刺できる。また図示してはいないが、穿刺針6に予めメモリを形成しておけば穿刺針6の穿刺長さも把握可能となり、手術補助器具1を使用する尿失禁手術TOTの技術指導及び習得に役立つ。
【0023】
尚、本実施例においては針固定シース2と目標シース3は夫々中空に形成されているが、穿刺針6を挿通可能に保持する溝部が形成されたものであってもかまわない。
【実施例2】
【0024】
図7は図1の手術補助器具1の他の実施例を示しており、手術補助器具11はクリップ16を有する針固定シース12と、目標シース13と、保持部14とから構成され前記穿刺針6と同じ曲率に形成されており、針固定シース12の一端は開閉可能とされている。クリップ16を指で摘み針固定シース12の一端を開くと、穿刺針6を挟み針固定シース12内を挿通可能に保持することができ、前記実施例と同様に孔部15を通して穿刺針6が目標シース13に誘導可能とされる。
【0025】
上記構成の手術補助器具11を使用すれば、穿刺針6を針固定シース12の孔部15に挿通させることなく、クリップ16によって穿刺針6を挟むことで容易に針固定シース12内に誘導することができ、TOT手術の際の作業性が向上する。尚、本実施例の手術補助器具をTVT手術用穿刺針の大きさに合わせて加工することによって、上記TOT手術用穿刺針と同様に穿刺針を誘導することが可能となり、作業性が大幅に改善できる。
【実施例3】
【0026】
次に、螺旋状の穿刺針を使用する他の実施例を説明する。
図6は螺旋状の穿刺針26を使った手術補助器具21の使用説明図であり、手術補助器具21は針固定シース22と目標シース23と保持具24とからなり、針固定シース22と目標シース23は螺旋状の穿刺針26が孔部25を挿通し、穿刺針26と同じ曲率で形成されている。さらに保持具24は針固定シース22と目標シース23を穿刺針26の螺旋形状に対応した立体曲面上に配置して保持している。尚、針固定シース22、目標シース23、保持具24の素材は上記手術補助器具1と同様プラスチック、金属等が使用される。
【0027】
この構成からなる手術補助器具21を使用してすれば、上記手術補助器具1と同様に穿刺針26は針固定シース22の孔部25を挿通して目標シース23へと確実に導かれるため、執刀医は正確に穿刺針を穿刺できる。
【実施例4】
【0028】
次に、柄部を有する穿刺針に使用する他の実施例を説明する。
図8は、柄部32を有する穿刺針33に使用する手術補助器具31を示しており、柄部32に着脱自在に取付け可能な接続部34と、穿刺針33と離間して接続部34に回動自在に取付けられた保持具35と、保持具35に連設し穿刺針33の先端部37を緩挿可能な目的シース36から構成されている。尚、使用される材料は上記他の実施例と同様にプラスチック、金属等が使用される。
【0029】
この構成からなる手術補助器具31を使用する場合には、穿刺針33の柄部32に手術補助具31の接続部34を嵌合して固定する。この際、手術補助具31の保持具35が穿刺針33の先端部37の接線に対して垂直方向となる位置に配置して固定する。この取付け方によって目的シース36は保持具35を中心として回動自在となると共に、穿刺針33の先端部37の向きが進行方向と一致し、穿刺針33の穿刺が円滑となると共に、穿刺針33の先端部37は目標シース36へと確実に導かれるため、執刀医は正確に穿刺針33を穿刺できる。
【0030】
以上の構成の手術補助器具1、11、21、31を使用してTOT手術を行なえば、未熟な執刀医であっても穿刺ルートを正確に把握することができ、膀胱、血管、腸管などを損傷することなく、重篤な合併症を併発する虞もない。しかも、穿刺している穿刺針がどこを通過しているかが執刀医以外でも分りやすいため、技術指導も容易であり、穿刺針を正確に穿刺する技術を短時間で習得できる。
【0031】
次に、図4、5に従って本発明による手術補助器具を用いたTOT手術について説明する。尚、手術補助器具は上記した円弧形状のものを使用した。またTOT手術の前工程と後工程に関しては上述しており、穿刺針を穿刺する工程のみ説明する。
【0032】
図4は、閉鎖孔から膣に針を出す(アウトサイドイン)方法を示し、図5は膣から閉鎖孔に出す(インサイドアウト)方法を示している。まず図4に示すように、穿刺針6を針固定シース2に入れ、穿刺針6の先端部7を閉鎖孔の切開部位に少しあてる。次に目標シース3を膣の皮下トンネルに入れる。穿刺針6を針固定シース2内で進めて穿刺すると、穿刺針6は恥骨の裏を通して膣前壁に出て膣の皮下トンネル内の目標シース3に確実に入る。
【0033】
次に図5に示すように、穿刺針6を針固定シース2に入れ、針固定シース2と一体に膣の皮下トンネル内に入れる。次いで目標シース3を閉鎖孔の切開部位にあてる。そして穿刺針6を針固定シース2内で進めて穿刺すると、穿刺針6は恥骨の裏を通して閉鎖孔の切開部位に達し、目標シース3に確実に入る。
【0034】
さらに、図9によって本発明の穿刺針の柄部に取り付ける手術補助器具31を使用したTOT手術について説明する。図9(a)は手術補助器具31を膣切開部に挿入して穿刺針33を閉鎖孔より挿入する状態を示し、図9(b)は穿刺針33を回動させて先端部37を手術補助器具の目的シース36へ緩挿する状態を示している。図に示すように、まず手術補助器具31の目的シース36を膣切開部に差込み、穿刺針33を閉鎖孔から挿入する。次に閉鎖孔から挿入した穿刺針33の先端部37を穿刺針33を回動させながら穿刺を行ない、目的シース36へと誘導する。この操作によって、穿刺針33の先端部37は確実に目的シース36へと導かれて緩挿するため、執刀医は正確に穿刺針33を穿刺できる。
【0035】
以上、本発明の手術補助器具によれば、上記の何れの方法であっても穿刺針を確実に穿刺することができる。すなわち上記手術補助器具を使用することによって、未熟な執刀医であっても正確に穿刺ルートを把握して穿刺針の穿刺が可能であり、膀胱、血管、腸管などを損傷することなく、重篤な合併症を併発する虞もない。しかも執刀医以外でも穿刺針の位置を把握することが可能であり、尿失禁手術TOTを安全に施行することができると共に、尿失禁手術TOTの技術指導や技術習得が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る手術補助器具を示す斜視図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】穿刺針を挿通した状態を示す説明図である。
【図4】アウトサイドイン方法による使用説明図である。
【図5】インサイドアウト方法による使用説明図である。
【図6】螺旋状の穿刺針による使用説明図である。
【図7】本発明に係る手術補助器具の他の実施例を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る手術補助器具の他の実施例を示す斜視図である。
【図9】柄付き穿刺針による使用説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1、11、21、31 手術補助器具
2、12、22 針固定シース
3、13、23、36 目標シース
4、14、24 保持具
5、15、25 孔部
6、26、33 穿刺針
7、37 先端部
16 クリップ
32 柄部
34 接続部
35 保持具
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8