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明細書 :マイクロスフィアの製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5045874号 (P5045874)
公開番号 特開2007-229543 (P2007-229543A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月10日(2012.10.10)
公開日 平成19年9月13日(2007.9.13)
発明の名称または考案の名称 マイクロスフィアの製造装置
国際特許分類 B01F   5/06        (2006.01)
B01J  19/00        (2006.01)
B01J   2/00        (2006.01)
B01F   3/08        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
FI B01F 5/06
B01J 19/00 N
B01J 2/00 A
B01F 3/08 A
B01J 13/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2006-050728 (P2006-050728)
出願日 平成18年2月27日(2006.2.27)
審査請求日 平成21年2月18日(2009.2.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】中嶋 光敏
【氏名】小林 功
【氏名】植村 邦彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100085257、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 有
【識別番号】100086221、【弁理士】、【氏名又は名称】矢野 裕也
審査官 【審査官】北村 英隆
参考文献・文献 特開2004-059802(JP,A)
特開2005-279458(JP,A)
特開2005-152740(JP,A)
特開2000-084384(JP,A)
特開2004-098225(JP,A)
調査した分野 B01F 3/08,5/06
B01J 2/00,13/00,19/00

特許請求の範囲 【請求項1】
分散相が供給される分散相領域と、連続相が供給される連続相領域と、前記分散相領域と連続相領域とを連通せしめるマイクロチャネルと、前記マイクロチャネルを介して分散相粒子が連続相内に押し出されることで形成されるエマルションを回収するエマルション回収路と、エマルションを構成する分散相粒子を円盤状、偏平板状、棒状若しくは糸状などの非球形に成形する成形部と、エマルションを構成する分散相粒子の少なくとも表面を固化せしめるべくエマルション回収路またはエマルション回収路の下流側に配置される固化手段を備えたマイクロスフィアの製造装置において、
前記成形部はテラス状突条の上に対向面が長尺壁である複数の突部を設けて構成され、前記突部の長尺壁間に前記マイクロチャネルが形成され、前記突部の高さ(h1)と前記突条の高さ(h2)の比(h1/h2)を分散相粒子の形状が非球形となるように設定していることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロスフィアの製造装置において、前記成形部は、前記エマルション回収路に設けられていることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロスフィアの製造装置において、前記固化手段は、冷却装置、加熱装置または光照射装置であることを特徴とするマイクロスフィアの製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工業、医薬或いは化粧品製造等に利用されるエマルション、DDS(ドラッグデリバリーシステム)用のエマルション、マイクロカプセル、イオン交換樹脂、クロマトグラフィー担体、造影剤、マイクロバブルカラムなどとして用いられる液体微粒子や気体微粒子や固体微粒子であるマイクロスフィア(マイクロ液滴やマイクロバブルを含む)の製造装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水相と有機相のように熱力学的には分離している状態が安定状態である二相系を乳化によって準安定な状態であるエマルションとする技術が従来から知られている。
【0003】
一般的な乳化方法としては、非特許文献1に記載されるように、ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー等を用いる方法や超音波等で分散させる方法が知られている。
【0004】
前記した一般的なエマルションの製造方法にあっては、連続相中の分散相粒子(マイクロスフィア)の粒径分布の幅が大きいという欠点がある。そこで、ポリカーボネイトからなる膜を用いて濾過を行う方法(非特許文献2)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)膜を用いて繰り返し濾過を行う方法(非特許文献3)、比較的均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を通して連続相に送り込み比較的均質なエマルションを製造する方法(特許文献1)も提案されている。また、ノズルや多孔板を用いるエマルションの製造方法として、層流滴下法(非特許文献4)も知られている。更に、外側が一定速度で回転する二重円筒の隙間部分に形成される比較的均一な剪断場においてサイズが大きく不均質なエマルションからサイズが小さく比較的均質なエマルションを製造する方法も提案されている(非特許文献5)。
【0005】
ポリカーボネイトからなる膜を用いて濾過を行う方法とPTFE膜を用いて繰り返し濾過を行う方法にあっては、原理的に膜の細孔より大きいものは製造できず、膜の細孔よりも小さいものは分別できないという問題点がある。従って、特に大きいサイズのエマルションを製造する場合には適さない。
【0006】
比較的均一な細孔を持つ多孔質ガラス膜を用いる方法にあっては、膜の平均細孔径が小さい場合には粒径分布が広がらず、比較的均質なエマルションを得ることが出来るが、膜の平均細孔径を大きくすると粒径分布が広がり、均質なエマルションを得ることができない。また、層流滴下法では1000μm以上の粒径となり、分布も広く、均質なエマルションが得られない。更に、二重円筒を用いる方法では、供給されるエマルションが不均一であるために、比較的均一な剪断場をかけても均一なエマルションと呼べる程度に粒径分布を狭くすることは困難である。
【0007】
そこで、本発明者等は連続的に均質なエマルションを製造し得る方法として、特許文献2を提案している。この特許文献2には、分散相と連続相とを仕切る中間プレートに貫通孔を形成し、この貫通孔を介して分散相を連続相中に押し出す際に、前記貫通孔の形状を矩形などの非円形とすることで、連続相中に押し出される分散相の界面に不均一な剪断力を作用させることで、分散相と連続相の界面の状態が不安定になり、界面の剪断が促進され、分散相が分離してマイクロスフィアになるきっかけが容易に得られ、細かく均一な粒径のマイクロスフィアが生成されることが開示されている。
【0008】
また、本発明者等は分散相と連続相との境界部に土手部(突条)を設け、この土手部の上に多数の突部を間隔をあけて形成し、突部間をマイクロチャネルとし、且つマイクロチャネルの幅および高さを1~300μmとし更にマイクロチャネルの幅と高さの比を1:20~20:1にすることでエマルションの粒子サイズを均一とする提案をなしている。
【0009】
更に本発明者らはマイクロチャネルの形状を2段状としたりマイクロチャネルの出口側にテラスを設けることで、分散相粒子の形状を円盤状にして連続相内に押し出すことで、均一な粒径のマイクロスフィアを得る提案を特許文献4に行っている。
【0010】

【特許文献1】特開平2-95433号公報
【特許文献2】特開2002-119841号公報
【特許文献3】特開2005-211857号公報
【特許文献4】特願2004-302529号公報
【非特許文献1】エマルションの化学(朝倉書店:1971)
【非特許文献2】Biochimica et Biophysica Acta, 557(1979) North-Holland Biochemical Press
【非特許文献3】化学工学会第26回秋期大会 講演要旨集:1993
【非特許文献4】化学工学第21巻第4号:1957
【非特許文献5】Langmuir, 4600 (1997) American Chemical Society Publications
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
DDS用のマイクロカプセルや微生物・酵素の固定化担体触媒などの用途を考えた場合、球形の微小液滴では、微小液滴の内部に供給された物質が中心部に到達するまで、或いは液滴中心部で生成された物質が微小液滴の外部に排出されるまでに時間がかかること、そのことに起因する物質移動が遅いため、結果として球の表面の触媒効率は高いが,内部では効率が低下してしまうことが問題になっている。
【0012】
微小液滴を非球形化することで前記微小液滴の中心部と界面の間の距離が短縮されるため、微小液滴の内部での物質の拡散・混合・反応が促進される。具体的には、非球形の微小液滴内部における細胞培養、各種化学・生化学反応、非球形のマイクロスフィアからの薬理成分、機能性食品成分の徐放などの用途に有用である。また非球形のマイクロスフィアは、球形のマイクロスフィアと比べて光の反射効率が高くなるために光拡散剤としても有用で、球形のマイクロスフィアと比べて転がりにくいために微小スペース保持剤としての用途も考えられる。しかしながら、このような形状のマイクロスフィアは提供されていない。
【0013】
特許文献1、2、3及び非特許文献1~5に開示される内容は全て球形のマイクロスフィアを作製することを目的としており、その構成も球形のマイクロスフィアしか作製できないものになっている。例えば、特許文献3にあっては突条(土手部)の高さが突部の高さより十分大きく(10倍程度)なっており、これでは球形の分散相粒子しか作製できない。
【0014】
特許文献4にあっては、細孔からスロット状孔に押し出された時点、つまりまた分散相粒子になっていない状態では、分散相は円盤状であるが、スロット状孔から出ると直ちに球形になっている。したがって、結果的には非球形のマイクロスフィアを作製できていない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、特定の条件を満たす成形部を設けることで、連続相内に押し出された分散相粒子が所定時間、その形状を維持するとの知見を得た。
【0016】
上記知見に基づいて本発明をなしたものであり、請求項1に係るマイクロスフィアの製造装置は、分散相が供給される分散相領域と、連続相が供給される連続相領域と、前記分散相領域と連続相領域とを連通せしめるマイクロチャネルと、前記マイクロチャネルを介して分散相粒子が連続相内に押し出されることで形成されるエマルションを回収するエマルション回収路と、エマルションを構成する分散相粒子を円盤状、偏平板状、棒状若しくは糸状に成形する固化手段とを備えている。
【0017】
また、請求項2に係るマイクロスフィアの製造装置は、分散相が供給される分散相領域と、連続相が供給される連続相領域と、前記分散相領域と連続相領域とを連通せしめるマイクロチャネルと、前記マイクロチャネルを介して分散相粒子が連続相内に押し出されることで形成されるエマルションを回収するエマルション回収路と、エマルションを構成する分散相粒子の少なくとも表面を固化せしめるべくエマルション回収路またはエマルション回収路の下流側に配置される固化手段とを備えている。
【0018】
また、請求項3に係るマイクロスフィアの製造装置は請求項1、2の両方の特徴を有し、固化手段と固化手段の双方を備えている。
【0019】
分散相粒子を円盤状、偏平板状、棒状若しくは糸状に成形する手段としては、マイクロチャネルを突条の上に設けられる突部間に形成した構造に限定し、しかも突部の高さ(h1)と前記突条の高さ(h2)の比(h1/h2)を分散相粒子の形状が非球形となるように設定することと、成形部はエマルション回収路に設けることが考えられる。
【0020】
前記固化手段としては冷却装置、加熱装置または光照射装置が考えられ、前記成形部としてはエマルション回収路に設けることが考えられる。
【0021】
また本発明に係るマイクロスフィアの製造方法は、マイクロチャネルを介して分散相と連続相とを接触せしめ、分散相に加える圧力を連続相に加える圧力よりも高くすることで、マイクロチャネルを介して分散相粒子を連続相内に押し出してエマルションを形成し、このエマルションを構成する分散相粒子を円盤状、偏平板状、棒状若しくは糸状に成形し、この形状を維持している間に分散相粒子の少なくとも表面を固化せしめるようにした。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るマイクロスフィアの製造装置および製造方法によれば、用途に応じた形状をしたマイクロスフィアを効率よく生産することができる。したがって、食品工業、医薬(DDS含む)、化粧品、各種マイクロカプセルとしての応用が大幅に拡大する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係るマイクロスフィアの製造装置の断面図、図2はマイクロスフィアの製造装置の基板と透明プレートを下方から見た斜視図、図3(a)はマイクロチャネルの拡大図、(b)はマイクロチャネルの作用を示す拡大図、図4(a)はマイクロチャネルの別実施例を示す図、(b)はマイクロチャネルの作用を示す拡大図、図5は成形部から固化手段に至る流れを説明した図である。
【0024】
尚、図1に示す装置は請求項3に相当する装置であり、図1に示す装置から成形部を省いた装置が請求項1に相当する装置であり、図1に示す装置から固化手段を省いた装置が請求項1に相当する装置である。
【0025】
エマルションの製造装置は、ケース1内に透明プレート、基板および蓋体をシールリングを介して組み付けて構成される。ケース1は下半体1aと上半体1bとからなり、下半体1aに形成された凹部2に、ガラス板やプラスチック板などの透明板からなるプレート3を入れ、この上にシリコンや樹脂などの基板4、シールリング5および蓋体6を入れ、この上から上半体1bを下半体1aに螺着することでエマルションの製造装置が組み立てられる。尚、プレート3を透明板としたのは、CCDカメラ30で内部を観察できるようにするためである。
【0026】
蓋体6は、中央に分散相の供給流路7を形成し、蓋体6の中央から外れた場所に連続相の供給流路8およびエマルションの回収流路9を形成している。また、基板4と蓋体6の間にシールリング10を設置し、分散相の供給流路7と連続相の供給流路8ならびに回収流路9を隔離している。
【0027】
前記分散相の供給流路7にはポンプP1によって分散相タンク11から分散相が供給され、前記連続相の供給流路8にはポンプP2によって連続相タンク12から連続相が供給され、前記回収流路9内のエマルションはポンプP3によって回収タンク13に送られる。
【0028】
また、基板4の中央には分散相の供給口14が形成され、基板4の透明プレート3と対向する面には前記分散相の供給口14を囲むように、基板の周囲に突条15が形成され、この突条15の上に突部16を一定間隔で多数形成し、これらの突部16、16の間をマイクロチャネル17(小孔)とし、このマイクロチャネル17を介して分散相と連続相が接触する。
【0029】
前記マイクロチャネル17の出口の外側には、図3(a)にも示すように、透明プレート3との間でスロット孔を形成するテラス部(突条)18が形成されている。この実施例ではマイクロチャネル17とスロット孔とで2段状孔とすることで、図3(b)にも示すように、マイクロチャネル17から連続相内に押し出される分散相が円盤状になるようにしている。即ち、マイクロチャネルとスロット孔とで成形部19を構成している。
【0030】
ここで、マイクロチャネル17とスロット孔との境界部が分散相と連続相の境界面となっている状態から、分散相に作用する圧力が高くなると、マイクロチャネル14からスロット孔内に分散相が扁平な円盤状に拡がる。そして、この円盤状に拡がった分散相が連続相に入ると分散相と連続相との界面に不均一な剪断力が作用し、容易に分散相が分離する。
【0031】
因みに、分散相を連続相に押し出す個所の開口形状が円形または円形に近い形状であると、開口から押し出される分散相の界面に垂直方向の力が均一に作用するため、開口から分散相が分離するきっかけが得られない。
【0032】
またどのような条件でも連続相に押し出される分散相粒子の形状が円盤状をなすわけではなく、マイクロチャネル17を画成する突部16の高さ(h1)とテラス部(突条)18の高さ(h2)の比(h1/h2)を分散相粒子の形状が非球形となるように設定する必要がある。具体的にはh1/h2≧1/5とするのが好ましい。
更に分散相粒子の形状を円盤状などの非球形とするには、分散相および連続相の粘度、表面張力或いは添加する界面活性剤等を適切に選定する。因みに分散相および連続相の粘度が近似すると分散相は形状を維持しやすい。
【0033】
図4(a)に示す成形部16はテラス部を設ける代わりに、マイクロチャネル17の形状を幅広形状とし、図4(b)に示すように、マイクロチャネル17によって分散相粒子の形状を円盤状に成形するようにしている。
【0034】
また前記円盤状をなす分散相粒子を含むエマルションは、プレート3と蓋体6下面との間の回収流路20を介して蓋体6に形成した回収流路9に入る。そして、この実施例にあっては回収流路20に臨む下半体1aの内側面に固化手段としての光照射装置21を配置している。
【0035】
光照射装置21によって回収流路20内を流れるエマルション中の分散相粒子に光を照射すると、図5に示すように、光重合によって分散相粒子の表面は固化し、円盤状の形状を維持したままのマイクロスフィア22が得られる。尚、図5では円盤状のマイクロスフィア22を上から見ているためは円形をしている。
【0036】
前記固化手段としては光照射装置に限らず、加熱装置等でもよい。また固化手段を設ける箇所は、なるべく最初にエマルションが生成されるマイクロチャネルに近い箇所が好ましいが、分散相粒子がある程度の時間その形状を維持できる場合には、更に下流側、場合によってはポンプP3よりも下流側に設けてもよい。
【0037】
図6は別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図、図7は図6の要部拡大図、図8は成形部から固化手段に至る流れを説明した図である。
【0038】
図6に示すマイクロスフィアの製造装置を改良したものであり、この実施例にあっては、エマルションの回収流路20内に成形部19を設けている。この成形部19は図7に示すように、複数の長尺壁部19aを一定間隔で並列に配置して長尺壁部19a間を流路19bとしている。
【0039】
図8に示すように、前記流路19bの幅は分散相粒子の直径よりも小さく設定され、分散相粒子はこの流路19bを通過することで、棒状若しくは糸状に成形される。
【0040】
図9はマイクロスフィアの製造装置の別実施例を示す断面図、図10(a)は別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図、(b)は裏面図である。尚、図1に示した装置の部材と同一の部材については同一の番号を付して説明を省略する。
【0041】
この実施例は、連続相の供給流路8に対し直交方向から分散相の供給流路7を合流せしめ、合流箇所に突部16とマイクロチャネル17からなる成形部19を設けている。この実施例にあっては成形部19で分散相粒子を円盤状に成形する。固化装置に関しては例えば透明プレートの外側に光照射装置21を配置する。
【0042】
図11(a)は別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図、(b)は裏面図である。この実施例にあってはエマルションの回収流路20内に成形部19を設けている。この成形部19は前記同様、長尺壁部19aと路19bからなり、分散相粒子はこの流路19bを通過することで、棒状若しくは糸状に成形される。
【0043】
以下に、具体的な実施例について説明する。
(実施例1:エマルションの製造)
図1及び図2に示した基板を使用し、分散相として大豆油を使用し、連続相として1.0 wt%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween20)水溶液を使用し、連続相の流速を0mm/sとしてエマルションの製造を試みた。
マイクロチャネルのサイズを高さ5.0μm、幅32.2μm、長さ199μmで突状の高さを4.8μmとした場合、分散相の駆動圧力が3.6kPaになった時に図12(a)に示すように均一なサイズの円盤状の微小液滴が生成され、平均円盤径は24.5μmで前記微小液滴の高さは9.8μmであった。
また、マイクロチャネルのサイズを高さ1.9μm、幅10.2μm、長さ39.8μmで突状の高さを2.7μmとした場合、分散相の駆動圧力が7.2kPaになった時に図12(b)に示すように均一な数ミクロンのサイズの円盤状の微小液滴が生成され、平均円盤径は9.0μmで前記微小液滴の高さは4.6μmであった。
【0044】
(実施例2:エマルションの製造)
図1及び図2に示した基板を使用し、シリコーンオイル(粘度4.6、48、485mPas)を使用し、連続相として1.0 wt%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)水溶液を使用し、分散相の駆動圧力を3.2、4.2、6.7kPa、連続相の流速を0mm/sとしてエマルションの製造を試みた。本実施例におけるマイクロチャネルのサイズは高さ5.0μm、幅32.2μm、長さ199μmで突状の高さは4.8μmであった。
図13に示すように、分散相粘度により円盤状の微小液滴(高さ9.8μm)のサイズを調整可能であった。分散相粘度4.6mPasのシリコーンオイルを用いて生成された前記微小液滴のサイズが一番大きく、分散相粘度が大きくなるに従って前記微小液滴のサイズは小さくなった。
【0045】
(実施例3:エマルションの製造)
図1及び図2に示した基板を使用し、分散相として大豆油を使用し、連続相として1.0 wt%SDS水溶液を使用し、分散相の駆動圧力を5.2kPa、連続相の流速を7.1mm/sとしてエマルションの製造を試みた。本実施例におけるマイクロチャネルのサイズは高さ3.8μm、幅4.9μm、長さ200μm、テラスのサイズは高さ3.8μm、長さ23.5μm、突状の高さは4.0μmであった。
図14に示すように、マイクロチャネルを通過した分散相がテラス状で円盤状に広がりながらテラス出口に到達した後、連続相中へ均一なサイズの円盤状の微小液滴として生成され、平均円盤径は14.5μm、前記微小液滴の高さは7.8μmであった。
【0046】
(実施例4:エマルション中の微小液滴の変形)
図6及び図7に示した基板を使用し、分散相として大豆油を使用し、連続相として1.0 wt%SDS水溶液を使用し、分散相の駆動圧力を5.1kPa、連続相の流速を7.1mm/sとしてエマルションの製造ならびにエマルション中の微小液滴の変形を試みた。本実施例における微小液滴の生成に関するマイクロチャネルのサイズは高さ3.8μm、幅4.9μm、長さ200μm、テラスのサイズは高さ3.8μm、長さ23.5μm、突状の高さは4.0μmであり、連続相の流路に形成したマイクロチャネルのサイズは高さ7.8μm、幅8.0μm、長さ20mmであった。
図15(a)に示すように、液滴生成用の前記マイクロチャネルを介して製造された円盤状の微小液滴が、図15(b)に示すように液滴変形用の前記マイクロチャネルに進入すると均一なサイズの棒状または糸状の微小液滴へと変形し、平均長さは24.1μm、幅は8.0μm、前記微小液滴の高さは7.8μmであった。
【0047】
(実施例5:マイクロスフィアの製造)
図9及び図10に示した装置を使用し、分散相としてトリパルミチン(融点58℃)を使用し、連続相として1.0 wt%Tween20水溶液を使用し、分散相の駆動圧力を3.3kPa、連続相の流速を7.1mm/sとし、固化装置が作用する領域の温度を50℃に設定し、その他の部分は65℃に設定して脂質マイクロスフィアの製造を試みた。本実施例において、マイクロチャネルのサイズは高さ3.8μm、幅4.9μm、長さ200μm、テラスのサイズは高さ3.8μm、長さ23.5μm、突状の高さは4.0μmであった。
まず分散相が前記マイクロチャネルから連続相中へ円盤状の微小液滴として生成された後、図16に示されるように、前記固化装置の作用により連続相の流路内で均一なサイズの円盤状の脂質マイクロスフィアが製造され、平均円盤径は16.8μm、前記マイクロスフィアの高さは7.8μmであった。
【0048】
(実施例6:マイクロスフィアの製造)
図11に示した装置を使用し、分散相としてトリパルミチン(融点58℃)を使用し、連続相として1.0 wt%Tween20水溶液を使用し、分散相の駆動圧力を2.2kP、連続相の流速を2.8mm/sとし、固化装置が作用する領域の温度を50℃に設定し、その他の部分は65℃に設定して脂質マイクロスフィアの製造を試みた。本実施例における微小液滴の生成に関するマイクロチャネルのサイズは高さ7.9μm、幅5.0μm、長さ200μm、テラスのサイズは高さ7.9μm、長さ22.3μm、突状の高さは12.0μmであり、連続相の流路に形成したマイクロチャネルのサイズは高さ19.9μm、幅8.0μm、長さ20mmであった。
液滴生成用の前記マイクロチャネルを介して製造された円盤状の微小液滴が液滴変形用の前記マイクロチャネルに進入すると棒状乃至糸状の微小液滴へと変形した。そして、前記棒状乃至糸状の微小液滴を前記固化装置の作用により固化することで、図15に示されている均一なサイズの栓状の脂質マイクロスフィアが製造され、平均長さは36.8μm、幅は8.0μm、前記マイクロスフィアの高さは19.9μmであった。
【0049】
本発明は上述のエマルションとマイクロスフィアの製造に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々のエマルション、マイクロスフィア(固体微粒子・ゲル微粒子・多孔質微粒子・マイクロカプセル)として多くの用途に利用可能であり、これらを本発明の範囲から除外するものではない。その一例を以下に述べる。
【0050】
(クロマトグラフィー担体の製造)
界面活性剤を含むトルエンに高純度ケイ酸ソーダを本発明方法により均一分散せしめた。この分散液(エマルション)に炭酸ガスを吹き込んでゲル化し、次いで固液分離し、塩酸に固体部分(微粒子)を浸漬し、蒸留水で洗浄後脱水し、180℃で乾燥せしめ、550℃で焼成し界面活性剤を除去し、次いで塩酸に浸漬し、水洗浄して高純度シリカ微粒子を得た。
この後、ODS(ジメチルオクタデシルモノクロロシラン)微粒子を調整するために、前記高純度シリカ微粒子にトルエン中でODSを加え、反応させることでODSシリカ微粒子を得た。
【0051】
また上記の他に、重合トナー、顔料、導電性スペーサ、メタリック塗料、環境浄化用微粒子、難燃剤、触媒、蓄熱剤、抗菌剤、フェロモン、食用油、生理活性物質、酵素、アルミフレーク、マイカ、肥料、生分解性マイクロカプセルの製造にも本発明は適用される。
【0052】
例えば、マイクロカプセル中に相変化物質を分散した熱媒体にあっては、相変化物質の大きな潜熱によって少量の熱媒体で大量の熱を輸送することができる。特に相変化物質をマイクロカプセル中に閉じ込めることにより流動性を確保できる。
マイクロカプセル熱媒体は新しい熱媒体であり、普通の液体に比べて伝熱特性に優れている。この特性は原子力発電プラントの排熱など、比較的低温の未利用熱を利用するのに有効である。
【0053】
マイクロカプセルを用いて更にシート或いはフィルム化することも可能である。例えば、数μmの大きさのマイクロカプセル内に香り成分を封じ込め、これをテレホンカードなどにオフセット印刷する。すると、印刷面を擦ることでカプセルが壊れ、芳香が漂う機能性インクに本発明を応用することもできる。
マイクロカプセルとしては上記の他に、薬品のカプセル化、電気泳動ディスプレイ等への応用も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るマイクロスフィアの製造装置の断面図
【図2】マイクロスフィアの製造装置の基板と透明プレートを下方から見た斜視図
【図3】(a)はマイクロチャネルの拡大図、(b)はマイクロチャネルの作用を示す拡大図
【図4】(a)はマイクロチャネルの別実施例を示す図、(b)はマイクロチャネルの作用を示す拡大図
【図5】成形部から固化手段に至る流れを説明した図
【図6】別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図
【図7】図6の要部拡大図
【図8】成形部から固化手段に至る流れを説明した図
【図9】マイクロスフィアの製造装置の別実施例を示す断面図
【図10】(a)は別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図、(b)は裏面図
【図11】(a)は別実施例に係るマイクロスフィアの製造装置の基板の表面図、(b)は裏面図本発明に係るマイクロスフィアの製造装置の断面図
【図12】(a)、(b)は実施例1で円盤状の微小液滴が生成される様子を示す写真。
【図13】分散相の粘度と生成された微小液滴の平均円盤径の関係を示すグラフ。
【図14】実施例3で円盤状の微小液滴が生成される様子を示す写真。
【図15】(a)、(b)は実施例4で生成された微小液滴が変形する前後の様子を示す写真。
【図16】実施例5で生成された円盤状の脂質マイクロスフィアを示す写真。
【図17】実施例6で得られた栓状の脂質マイクロスフィアを示す写真。
【符号の説明】
【0055】
1…ケース、1a、1b…ケース半体、2…凹部、3…プレート、4…基板、5…シールリング、6…蓋体、7…分散相の供給流路、8…連続相の供給流路、9…エマルションの回収流路、10…シールリング、11…分散相タンク、12…連続相タンク、13…回収タンク、14…分散相の供給口、15…突条、16…突部、17…マイクロチャネル(小孔)、18…テラス部、19…成形部、19a…長尺壁部、19b…流路、20…エマルションの回収流路、21…固化手段としての光照射装置、22…マイクロスフィア、30…CCDカメラ、P1、P2、P3…ポンプ、h1…突部の高さ、h2…突条の高さ。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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