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明細書 :AGEを認識する分子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5093711号 (P5093711)
公開番号 特開2007-254397 (P2007-254397A)
登録日 平成24年9月28日(2012.9.28)
発行日 平成24年12月12日(2012.12.12)
公開日 平成19年10月4日(2007.10.4)
発明の名称または考案の名称 AGEを認識する分子
国際特許分類 C07K  14/705       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12P  21/02        (2006.01)
C07K  17/00        (2006.01)
C07K  19/00        (2006.01)
G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/566       (2006.01)
G01N  27/62        (2006.01)
G01N   5/02        (2006.01)
FI C07K 14/705 ZNA
C12N 15/00 A
C12P 21/02 C
C07K 17/00
C07K 19/00
G01N 33/53 D
G01N 33/543 595
G01N 33/53 U
G01N 33/566
G01N 27/62 V
G01N 5/02 A
請求項の数または発明の数 10
全頁数 32
出願番号 特願2006-081807 (P2006-081807)
出願日 平成18年3月23日(2006.3.23)
審査請求日 平成21年2月2日(2009.2.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】町田 幸子
【氏名】熊野 みゆき
【氏名】榊原 祥清
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】北田 祐介
参考文献・文献 特開2004-125785(JP,A)
国際公開第2005/054460(WO,A1)
国際公開第2005/033307(WO,A1)
特表2005-514915(JP,A)
特開2005-145907(JP,A)
J First Mil Med Univ., 2005年, 第25巻, 769-773ページ
J Immunol Methods., 2004年, 第284巻, 165-175ページ
Database DDBJ/EMBL/GenBank[online], Accession No.NP_418404, <http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/16131807?sat=11&satkey=3799729>, 02-DEC-2005 uploaded, STREAKER, ED. et al., [retrieved on 30-Jun-2011], Definition:biotin--protein ligase [Escherichia coli K12].
Protein Expr Purif., 2005年, 第44巻, 130-135ページ
Appl Environ Microbiol., 2005年, 第71巻, 8974-8977ページ
World J Gastroenterol., 2005年, 第11巻, 1077-1082ページ
調査した分野 C07K 14/705
C12N 15/00-15/90
G01N 33/53
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
Science Direct
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
糖鎖修飾されていない、レセプター由来の配列およびビオチン化配列を含むポリペプチドであって、該ポリペプチドは、AGEと結合し、ここで、該レセプター由来の配列は、以下:
(a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列;および、
(b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択され、
ここで、該ビオチン化配列は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列からなるビオチンリガーゼによってビオチン化される、配列番号4に記載されるアミノ酸配列であり、
ここで、該ビオチン化配列は、該レセプター由来の配列のC末端側に連結され、
ここで、該ポリペプチドは、以下の工程:
(1’)該ポリペプチドをコードする遺伝子、および、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるビオチンリガーゼをコードする遺伝子を含有する細菌宿主細胞を提供する工程;ならびに
(2’)該ポリペプチドおよび該ビオチンリガーゼが発現する条件下で、ビオチンを含む培地を用いて、該細宿主細胞を培養する工程、
を包含する、方法によって製造される、ポリペプチド。
【請求項2】
前記レセプター由来の配列が配列番号2に記載されるアミノ酸配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記細菌宿主細胞が、ジスルフィド還元系に変異を有する細胞であって、ここで、該ジスルフィド還元系に変異を有する細胞が:
(i)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;
(ii)グルタチオンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;ならびに
(iii)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子およびグルタチオンリダクターゼ遺伝子の両方を欠損するE.coli、
からなる群から選択される、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
糖鎖修飾されていない、レセプター由来の配列およびビオチン化配列を含むポリペプチドを産生する方法であって、
該ポリペプチドは、AGEと結合し、ここで、該レセプター由来の配列は、以下:
(a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列;および、
(b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択され、
ここで、該ビオチン化配列は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列からなるビオチンリガーゼによってビオチン化される、配列番号4に記載されるアミノ酸配列からなり、
ここで、該ビオチン化配列は、該レセプター由来の配列のC末端側に連結され、
ここで、該方法は、以下:
(1)該ポリペプチドをコードする遺伝子、および、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるビオチンリガーゼをコードする遺伝子を含む細菌宿主細胞を提供する工程;ならびに
(2)該ポリペプチドおよび該ビオチンリガーゼが発現する条件下で、ビオチンを含む培地を用いて、該細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項5】
前記ポリペプチドをコードする遺伝子がT7プロモーターと作動可能に連結している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌宿主細胞が、ジスルフィド還元系に変異を有する細胞であって、ここで、該ジスルフィド還元系に変異を有する細胞が:
(i)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;
(ii)グルタチオンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;ならびに
(iii)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子およびグルタチオンリダクターゼ遺伝子の両方を欠損するE.coli、
からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞培養工程が15℃~37℃で行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドが、ビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相に固定化された、受容体チップ。
【請求項9】
表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、または質量分析計による検出に適合する、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチドがビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相に固定化された、受容体チップ。
【請求項10】
以下の工程を包含する、受容体チップの作製方法:
(1)請求項1~2のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする遺伝子、および、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるビオチンリガーゼをコードする遺伝子を含む細菌宿主細胞を提供する工程;
(2)該ポリペプチドおよび該ビオチンリガーゼが発現する条件下で、ビオチンを含む培地を用いて、該細胞を培養する工程;
(3)該培養した細胞から、該ポリペプチドを単離する工程、ならびに
(4)該単離したポリペプチドを、固相に固定化する工程
を包含する、方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、AGEを認識する分子、ならびに、そのような分子の製造方法、および、そのようなキットを含むAGE検出のためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖尿病患者数は増加の一途を辿っている。それに伴い、糖尿病血管障害に罹患する患者人口も増加の一途を辿っいる。糖尿病患者の生活の質「QOL: Quality of Life」を損ねる元凶は血管合併症であり、全身の様々な組織傷害がそれによって起こるからである。これら全身での組織障害の中でも、眼、神経、および腎臓の障害は、それぞれ、糖尿病性網膜症、神経症、腎症(あわせて、三大合併症)とよばれ、特に、糖尿病において特徴的な疾患である。網膜症は、最終的には失明に至る疾患である。現在、後天性の失明原因の第1位が糖尿病によるものであり、日本においては年間約3000人の糖尿病患者が失明している。腎症は最終的には腎不全に至り、透析療法が必要となる、透析導入原疾患の第1位であり、年間約1000人が透析導入されている現状にある。現在では、このような合併症患者数が急激に増加し続けていることが、社会問題化しており、また、医学経済的にみても、これら合併症は、早期に解決すべき課題となっている。従って、これら合併症を早期に確実に検出する方法が求められている。
【0003】
糖尿病状態で加速的に生成が亢進する物質としては、後期糖化反応生成物(AGE: Advanced Glycation End Product)が公知である。従って、AGEを高感度で検出する方法/キットを提供することによって、糖尿病血管障害の早期診断が可能となる。AGEの特異的受容体としては、RAGE(Receptor for AGE)が公知であり、AGE-RAGEの、糖尿病血管障害の発生・進展における役割が注目され、多くの研究が行われてきている。(例えば、非特許文献1)
しかしながら、RAGEを高発現する細胞は、後期の糖尿病患者の細胞でありそのため、天然の供給源は、限られている。AGEを検出する物質(センサー)としてRAGEを用いる場合には、RAGEを組換え発現する必要がある。
【0004】
RAGEは糖鎖修飾された分子であり、AGE以外に、アンフォテリンにも結合することが公知である。レセプター分子の糖鎖修飾によって、そのレセプター分子の表面の形状が変化することから、一般的に、天然の状態で糖鎖修飾されているレセプターとリガンドとの結合には、レセプターの糖鎖部分が重要であると考えられている。RAGEとアンフォテリンとの結合の場合も、RAGEのN-グリカンが結合に重要であることが報告されている(例えば、非特許文献2)。そのため、RAGEの組換え発現には、真核生物宿主細胞を用いることが必須であると考えられていた。
【0005】
その一方で、真核生物細胞を宿主として用いた場合には、原核生物細胞と比較して、操作がより煩雑であり、また、細胞の増殖に多大な費用および時間が必要とされるという欠点もある。
【0006】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。

【非特許文献1】山本 靖彦、外4名、「AGE-RAGE系を標的とした糖尿病血管障害抑制の可能性」、日薬理誌、日本薬理学会、2003年、121、49~56
【非特許文献2】GeethaSrikrishna、外6名、N-Glycans on the receptor for advanced glycation end productsinfluence amphoterin binding and neurite outgrowth、Journal of Neurochemistry、InternationalSociety for Neurochemistry、2002、80、998-1008
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
RAGEまたはそのホモログを組換え発現させて、AGEと高い特異性で結合する分子を、簡便かつ大量に提供すること、およびそのような分子の調製方法を提供すること、ならびに、そのような分子を含むAGE検出のための受容体チップおよびキットを提供することが、本願発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来からの予測に反して、大腸菌を宿主細胞として用いた場合に、高い特異性でAGEに結合するRAGE分子およびRAGE分子のフラグメントを組換え発現することができた。さらに、特定の配列を特異的にビオチン化する細菌細胞を宿主細胞として用い、ビオチン化される配列を含む組換えRAGEを発現することによって、ビオチン化組換えRAGEを産生し、アビジンまたはストレプトアビジンを固定化した固相に組換えRAGEを固定化することによって、簡便に、高感度AGE検出用チップを生成することができた。さらに、ジスルフィド還元系に変異を有する変異宿主細胞を用いること、および/または、宿主大腸菌を低温で培養することによって、組換え発現タンパク質による封入体の形成が抑制され、その結果、リフォールディングが不要な簡便な組換え高発現系を開発し、本発明を完成した。
【0009】
したがって、本発明は、以下を提供する。
【0010】
(項目1) 糖鎖修飾されていない、レセプター由来の配列およびビオチン化配列を含むポリペプチドであって、該ポリペプチドは、AGEと結合し、ここで、該レセプター由来の配列は、以下:
(a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントの配列;
(c)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を参照配列として、マトリクスとしてBLOSUM-62を使用し、フィルターとしてLow-complexityのみを使用するBlast解析を行った場合に、E値が1e-20以下であるポリペプチドのアミノ酸配列;
(d)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;ならびに、
(g)配列番号1に記載される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択され、
ここで、ビオチン化配列は、配列番号7に記載されるアミノ酸配列によってビオチン化され、以下:
(i)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、配列番号6に記載されるアミノ酸配列、アミノ酸配列KIG、アミノ酸配列KI、アミノ酸配列KIA、アミノ酸配列KIE、アミノ酸配列KLG、または、アミノ酸配列KVG
(j)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントの配列;
(k)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を参照配列として、マトリクスとしてBLOSUM-62を使用し、フィルターとしてLow-complexityのみを使用するBlast解析を行った場合に、E値が1e-20以下であるポリペプチドのアミノ酸配列;
(l)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(m)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(n)配列番号3に記載されるアミノ酸配列、配列番号4に記載されるアミノ酸配列、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、または、配列番号6に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択される、ポリペプチド。
【0011】
(項目2) 細菌宿主細胞によって組換え発現されたポリペプチドである、請求項1に記載のポリペプチド。
【0012】
(項目3) 前記細菌宿主細胞が、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを発現する、請求項2に記載のポリペプチド。
【0013】
(項目4) 前記レセプター由来の配列が配列番号2に記載されるアミノ酸配列であり、前記ビオチン化配列が配列番号4に記載されるアミノ酸配列である、請求項1に記載のポリペプチド。
【0014】
(項目5) 前記細菌宿主細胞が、ジスルフィド還元系に変異を有する細胞である、請求項2に記載のポリペプチド。
【0015】
(項目6) 前記ジスルフィド還元系に変異を有する細胞が:
(i)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;
(ii)グルタチオンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;ならびに
(iii)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子およびグルタチオンリダクターゼ遺伝子の両方を欠損するE.coli、
からなる群から選択される、請求項5に記載のポリペプチド。
【0016】
(項目7) 請求項1に記載のポリペプチドを産生する方法であって、該方法は、以下:
(1)請求項1に記載のポリペプチドをコードする遺伝子を含む細菌宿主細胞を提供する工程;および
(2)該ポリペプチドが発現する条件下で、ビオチンを含む培地を用いて、該細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
【0017】
(項目8) 前記細菌宿主細胞が、配列番号7に記載のポリペプチドをコードする遺伝子を含有する、請求項7に記載の方法。
【0018】
(項目9) 前記請求項1に記載のポリペプチドをコードする遺伝子がT7プロモーターと作動可能に連結している、請求項7に記載の方法。
【0019】
(項目10) 前記細菌宿主細胞が、ジスルフィド還元系に変異を有する細胞である、請求項7に記載の方法。
【0020】
(項目11) 前記ジスルフィド還元系に変異を有する細胞が:
(i)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;
(ii)グルタチオンリダクターゼ遺伝子を欠損するE.coli;ならびに
(iii)チオレドキシンリダクターゼ遺伝子およびグルタチオンリダクターゼ遺伝子の両方を欠損するE.coli、
からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【0021】
(項目12) 前記細胞培養工程が15℃~37℃で行われる、請求項7に記載の方法。
【0022】
(項目13) 請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドが、ビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相に固定化された、受容体チップ。
【0023】
(項目14) 表面プラズモン共鳴、水晶発振子マイクロバランス、または質量分析計による検出に適合する、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドがビオチンと特異的に結合し得る因子を介して固相に固定化された、受容体チップ。
【0024】
(項目15) 以下の工程を包含する、受容体チップの作製方法:
(1)請求項1~6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする遺伝子を含む細菌宿主細胞を提供する工程;
(2)該ポリペプチドが発現する条件下で、ビオチンを含む培地を用いて、該細胞を培養する工程;
(3)該培養した細胞から、該ポリペプチドを単離する工程、および
(4)該単離したポリペプチドを、固相に固定化する工程
を包含する、方法。
【0025】
さらに本発明は、RAGE由来のポリペプチド、またはRAGE由来のポリペプチドが固相に固定された受容体チップを用いることを特徴とする分子間相互作用解析法によるAGEの検出方法を提供する。
【0026】
また本発明は、RAGEのリガンド認識に関係する領域をビオチン化タンパク質として細胞もしくは試験管内で発現させた後、発現させたビオチン化タンパク質をアビジンまたはストレプトアビジンを介して方向性を保って固相上に固定化し、当該固定化タンパク質を用いることを特徴とする分子間相互作用解析法によるAGEの検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明に従って、RAGE由来ポリペプチドを組換え発現させて、糖鎖修飾がされていないにも関わらず、AGEと高い特異性で結合するポリペプチドを、簡便かつ大量に提供することが可能となった。また、本発明に従って、RAGE由来ポリペプチドを用いるAGE検出のための受容体チップを提供することが可能となった。さらに、本発明に従って、これらポリペプチドおよび受容体チップを製造する簡便な方法を提供することが可能になった。
【0028】
さらに、本発明に従って、糖尿病血管障害の診断方法、および、診断するための受容体チップを簡便かつ安価に提供することが可能となった。
【0029】
さらに、RAGEは、糖尿病血管障害以外の疾患において特異的に発現するタンパク質、例えば、アルツハイマー症などと関連のあるβアミロイド、ならびに種々の疾患(例えば、神経疾患、癌、および炎症)に関連したマーカーを認識し得るため、神経性疾患、癌、炎症など多くの病態の検出および早期診断に利用可能である。従って、本発明のタンパク質、受容体チップ、およびキットは、糖尿病血管障害のみならず、神経性疾患、癌、炎症など多くの病態の検出および早期診断に利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の実施の形態)
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0031】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義を列挙する。
【0032】
本明細書において使用される用語「受容体」とは、1個以上のリガンドと可逆的、かつ特異的に複合体化する1個以上の結合ドメインを備える生物学的な構造であって、ここで、この複合体化は生物学的な構造を有する。受容体は、完全に細胞の外部(細胞外の受容体)、細胞膜の中(しかし、受容体の部分を細胞外部の環境および細胞質ゾルに向けている)、または完全に細胞の中(細胞内の受容体)に存在し得る。これらはまた、細胞と独立的に機能し得る。細胞膜中の受容体は、細胞を、その境界の外部の空間と連絡(例えば、シグナル伝達)させ、そして細胞の内側および外側への分子およびイオンの輸送において機能させることを可能とする。本明細書において使用する場合、受容体は、受容体全長であっても、受容体のフラグメントであってもよい。
【0033】
受容体フラグメントを用いる場合には、受容体タンパク質のリガンド認識に関係する部位を用いる。受容体タンパク質のリガンド認識に関係する部位は、以下のように同定することができる。ホモロジーやドメイン検索により相同性や機能上の類似点の高いタンパク質の構造からリガンド認識領域を推定することができる。例えば、同一のリガンドに特異的に結合する、異なる受容体分子のアミノ酸配列をBLASTのデフォルトパラメータを用いて算出した場合、50%以上、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上の相同性を示す領域が、リガンド認識領域として推定される。好ましくは、マトリクスとしてBLOSUM-62を使用し、フィルターとしてLow-complexityのみを使用する。
【0034】
例えば、配列番号2のフラグメントのアミノ酸配列;配列番号2のアミノ酸配列に1つの保存的置換を有するアミノ酸配列;配列番号2のアミノ酸配列に1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列;ならびに、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドもまた、本発明のRAGE由来ポリペプチドとして利用可能である。
【0035】
さらに欠損変異やアミノ酸置換などを導入した変異受容体をコードする遺伝子を動物細胞などに一過性発現させ、その機能に必須の領域を決定することも、当業者は容易になし得る。
【0036】
好ましくは、上記条件でBLAST検索を行い、配列番号2に記載されるアミノ酸を参照配列とした場合、E値が、1e-20以下、1e-25以下、1e-30以下、1e-35以下、1e-40以下、1e-45以下、1e-50以下または1e-55以下であり、かつ、少なくとも200アミノ酸残基、少なくとも250アミノ酸残基、少なくとも300アミノ酸残基、少なくとも350アミノ酸残基、少なくとも400アミノ酸残基、少なくとも450アミノ酸残基を有するポリペプチドも、本明細書のRAGE由来ポリペプチドに包含される。
【0037】
本明細書において使用される用語「リガンド」とは、特異的な受容体または受容体のファミリーに対する結合パートナーである。リガンドは、受容体に対する内因性のリガンドであるか、またはその代わりに、薬剤、薬剤候補、もしくは薬理学的手段のような受容体に対する合成リガンドであり得る。本発明において代表的なリガンドは、AGEである。
【0038】
本明細書において使用する場合、「AGE」とは、後期糖化反応生成物(advanced glycation end products)の略称であり、非酵素的に糖化を受けたタンパク質、脂質などの総称である。グルコースなどの還元糖は、タンパク質やアミノ酸のアミノ基と非酵素的に反応し(可逆的な反応であり前期反応と呼ばれる)、糖化産物を形成する(シッフ塩基やアマドリ転移化合物)。さらに縮合、開裂、架橋形成などの不可逆的な反応を経てAGEを形成する。AGEは上述の過程を経て生成された構造物の総称であり、生体に存在するAGE構造としてはカルボキシメチルリジン(CML)、カルボキエチルリジン(CEL)、ペントシジン、ピラリン、イミダゾリン、メチルグリオキサール、クロスリンなどがが挙げられるが、これに限定されない。血漿中に存在するアルブミン、イムノグロブリン、オボアルブミンなどが上記の糖化を受けた産物もAGEであり、AGEとして実験系に汎用されている。血糖コントロールの指標として用いられているヘモグロビンA1cはアマドリ転移化合物であるが、AGEに包含される。また、任意のタンパク質も、AGEに変換可能である。例えば、AGEに包含されるCMLアルブミンおよびCELアルブミンは、いずれもアルブミンが糖化を受けたAGEである。
【0039】
本明細書において使用される用語「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされ得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。
【0040】
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」を含む。「誘導体オリゴヌクレオチド」または「誘導体ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’-O-メチル-リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’-O-プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’-メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。用語「核酸」はまた、本明細書において、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。
【0041】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0042】
本明細書において使用する場合、「ストリンジェントな条件」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明の配列番号1に記載の核酸配列を有する核酸をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法等を用いることにより、そのような核酸を得ることができる。具体的には、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC(saline-sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1~38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A Practical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)等の実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。
【0043】
本明細書中では、「レセプター由来の配列」とは、レセプターポリペプチドのアミノ酸配列およびこのアミノ酸配列をコードする核酸配列、ならびにレセプターポリペプチドのアミノ酸配列/核酸配列を改変することによって得られる配列であって、レセプター自体のリガンド結合能を保持する配列をいう。レセプター由来の配列としては、例えば、RAGE由来の核酸配列/アミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されない。本明細書において、RAGE配列を改変することによって得られるポリペプチドであって、リガンドであるAGEに対する結合能を保持するポリペプチドを、RAGEの「ホモログ」という。RAGE由来の配列としては、代表的には、AGEに対する結合する能力を有するポリペプチドの発現に使用可能な配列であり、かつ:
(a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントの配列;
(c)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を参照配列として、マトリクスとしてBLOSUM-62を使用し、フィルターとしてLow-complexityのみを使用するBlast解析を行った場合に、E値が1e-20以下であるポリペプチドのアミノ酸配列;
(d)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;ならびに、
(g)配列番号1に記載される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択される配列、あるいは、これらアミノ酸配列をコードする核酸配列が挙げられるが、これに限定されない。。
【0044】
本明細書では塩基配列の同一性の比較および相同性の算出は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
【0045】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。
【0046】
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL-異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ-カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ-ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ-フルオロフェニルアラニン、3-アミノ-2-ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD-フェニルアラニンが挙げられる。「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2-メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0047】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0048】
本明細書中において、「対応する」アミノ酸とは、あるタンパク質分子またはポリペプチド分子において、比較の基準となるタンパク質またはポリペプチドにおける所定のアミノ酸と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸をいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。
【0049】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体ヌクレオチド」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0050】
本明細書において、「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1~n-1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において使用する場合、好ましくは、受容体「フラグメント」は、全長受容体が特異的に結合し得るリガンドに特異的に結合する。RAGE由来ポリペプチドの好ましいフラグメントは、AGEに対する結合能を有するポリペプチドフラグメントである。
【0051】
本発明のポリペプチドを製造する方法としては、例えば、そのポリペプチドを産生する原核生物である細菌を培養し、細菌中に組換え受容体タンパク質を封入体として蓄積させ、その宿主細菌を破壊することによって、そのポリペプチドを得る方法を用いてもよい。
【0052】
本発明において使用するビオチン化配列としては、例えば、「MKLKVTVNGTAYDVDVDVDKSHENPMGTILFGGGTGGAPAPAAGGAGAGKAGEGEIPAPLAGTVSKILVKEGDTVKAGQTVLVLEAMKMETEINAPTDGKVEKVLVKERDAVQGGQGLIKIGDLEL」(配列番号3)が挙げられる。アミノ酸配列「GLNDIFEAQKIEWHE」(配列番号4)もまたビオチン化モチーフとして利用可能である。これら配列において、実際にビオチン化を受けるK(リジン)残基以外に変異を導入しても、ビオチン化活性に大きな影響はないので、リジン残基以外を置換した配列もまた、ビオチン化モチーフとして使用することができる。また、実際にビオチン化を受けるKを含んだ「KIG,KI,KIA,KIE,KIGDP(配列番号5),KLWSI(配列番号6),KLG,KVG」などをC末側に付加することによるビオチン化も可能である。さらに、これら配列のフラグメントのアミノ酸配列;これら配列に1つの保存的置換を有するアミノ酸配列;これら配列に1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列;ならびに、これら配列に少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドもまた、本発明のビオチン化配列として利用可能である。
【0053】
デフォルトパラメーターを用い、これらの配列を参照配列として用いて、E値が、1e-20以下、1e-25以下、1e-30以下、1e-35以下、1e-40以下、1e-45以下、1e-50以下または1e-55以下であり、かつ、少なくとも200アミノ酸残基、少なくとも250アミノ酸残基、少なくとも300アミノ酸残基、少なくとも350アミノ酸残基、少なくとも400アミノ酸残基、少なくとも450アミノ酸残基を有するポリペプチドも、本明細書のビオチン化配列に包含される。本発明のビオチン化配列は、配列番号7に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドによってビオチン化される。
【0054】
なお、エンドプロテイナーゼであるFactorXaの認識配列「IEGR」(配列番号8)、エンテロキナーゼの認識配列「DDDDK」(配列番号9)、またはトロンビンの認識配列「LVPRGS」(配列番号10)などをこれらビオチン化モチーフと発現されるRAGE配列/RAGE由来配列との間に挿入し、FactorXaまたはエンテロキナーゼによる切断によりRAGE由来配列を精製することも可能である。例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドを発現する場合、これらビオチン化モチーフと配列番号2のアミノ酸配列との間にアミノ酸配列「IEGR」を挿入し、RAGE由来ポリペプチドのみの精製をすることも可能である。
【0055】
「形質転換体」とは、宿主細胞を形質転換することによって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれ、本明細書においてそれらの形態をすべて包含するが、特定の文脈において特定の形態を指し得る。
【0056】
形質転換体を得るための宿主細菌細胞は、生理活性を保持するポリペプチドを発現するものであれば、特に限定されず、従来から遺伝子操作において利用される各種の宿主細菌細胞を用いることができる。原核細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、バチルス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属等に属する原核細胞、例えば、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia
coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli
HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli NY49、Escherichia coli BL21(DE3)、Escherichia coli BL21(DE3)pLysS、Escherichia coli HMS174(DE3)、Escherichia coli HMS174(DE3)pLysS、Serratia ficaria、Serratia fonticola、Serratia liquefaciens、Serratia marcescens、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefaciens、Brevibacterium ammmoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticumATCC14066、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium
glutamicum ATCC14067、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas sp.D-0110などが例示される。
【0057】
RAGE遺伝子の発現にT7プロモーターを用いる場合は、好ましくは、T7 RNAポリメラーゼが宿主細胞ゲノム中に組み込まれたλDE3溶原菌を用いる。λDE3溶原菌としては、例えば、AD494(DE3)、AD494(DE3)pLysS、BL21(DE3)、BL21(DE3)pLysS、BL21(DE3)pLysE、BL21(DE3)placI、BL21 trxB(DE3)、BL21 trxB(DE3)pLysS、BLR(DE3)、BLR(DE3)pLysS、B834(DE3)、B834(DE3)pLysS、HMS174(DE3)、HMS174(DE3)pLysS、HMS174(DE3)pLysE、Origami(DE3)、Origami(DE3)pLysS、Origami B(DE3)、Origmi B(DE3)pLysS、Rosetta(DE3)、Rosetta(DE3)pLysS、Roseetta-gami(DE3)、Rosetta-gami(DE3)pLysS、RosettaBlue(DE3)、RosettaBlue(DE3)pLysS、Tuner(DE3)、およびTuner(DE3)pLysSが挙げられるが、これに限定されない。Novagen社、Madison,WI,USA
RAGE遺伝子の発現にT7プロモーターを用いる場合、T7 RNAの天然のインヒビターであるT7 リゾチウムを欠損する宿主細胞株を用いることが、好ましい。このような宿主細胞としては、例えば、AD494(DE3)、BL21(DE3)、BL21(DE3)placI、BL21 trxB(DE3)、BLR(DE3)、B834(DE3)、HMS174(DE3)、Origami(DE3)、Origami B(DE3)、Rosetta(DE3)、Roseetta-gami(DE3)、RosettaBlue(DE3)、およびTuner(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USA)が挙げられるが、これに限定されない。
【0058】
上記を考慮すると、本発明において使用するのに好ましい宿主細菌細胞は、例えば、Origami(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USAである。
【0059】
本発明において得られた細胞に由来するポリペプチドは、天然型のポリペプチドと実質的に同一の作用を有する限り、アミノ酸配列中の1以上のアミノ酸が置換、付加および/または欠失していてもよい。
【0060】
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、リガンド分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0061】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105-132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5))である。
【0062】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、リガンド結合能において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4、554、101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);およびトリプトファン(-3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0063】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0064】
本明細書において、「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。オルソログは、分子系統樹の推定に有用であることから、オルソログもまた、本発明において有用であり得る。
【0065】
「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0066】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1~10個、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0067】
このような核酸は、周知のPCR法により得ることができ、化学的に合成することもできる。これらの方法に、例えば、部位特異的変位誘発法、ハイブリダイゼーション法などを組み合わせてもよい。
【0068】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、AGEとの結合能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0069】
高分子構造(例えば、ポリペプチド構造)は種々のレベルの構成に関して記述され得る。この構成の一般的な議論については、例えば、Albertsら、Molecular Biology of the Cell(第3版、1994)、ならびに、CantorおよびSchimmel、Biophysical Chemistry Part
I:The Conformation of Biological Macromolecules(1980)を参照。「一次構造」とは、特定のペプチドのアミノ酸配列をいう。「二次構造」とは、ポリペプチド内の局所的に配置された三次元構造をいう。これらの構造はドメインとして一般に公知である。ドメインは、ポリペプチドの緻密単位を形成し、そして代表的には50~350アミノ酸長であるそのポリペプチドの部分である。代表的なドメインは、βシート(βストランドなど)およびα-ヘリックスのストレッチ(stretch)のような、部分から作られる。「三次構造」とは、ポリペプチドモノマーの完全な三次元構造をいう。「四次構造」とは、独立した三次単位の非共有的会合により形成される三次元構造をいう。異方性に関する用語は、エネルギー分野において知られる用語と同様に使用される。
【0070】
本発明において利用され得る一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、 Wiley、 New York、 NY;Sambrook
Jら (1987) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
【0071】
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、細菌宿主細胞において自律複製が可能である、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0072】
「発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーターおよび、選択マーカーを含み得る。発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細菌細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0073】
「組換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核宿主細胞において自立複製が可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
【0074】
原核細胞に対する「組換えベクター」としては、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもRoche Molecular Biochemicalsより市販)、pKK233-2(Pharmacia)、pSE280(Invitrogen)、pGEMEX-1(Promega)、pQE-8(QIAGEN)、pKYP10(特開昭58-110600)、pKYP200(Agric.Biol.Chem.,48,669(1984))、pLSA1(Agric.Biol.Chem.,53,277(1989))、pGEL1(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985))、pBluescript II SK+(Stratagene)、pBluescript II SK(-)(Stratagene)、pTrs30(FERM BP-5407)、pTrs32(FERM BP-5408)、pGHA2(FERM BP-400)、pGKA2(FERM B-6798)、pTerm2(特開平3-22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pEG400[J.Bacteriol.,172,2392(1990)]、pGEX(Pharmacia)、pETシステム(Novagen)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus(Invitrogen)、pMAL-c2(New England Biolabs)、pUC19[Gene,33,103(1985)]、pSTV28(宝酒造)、pUC118(宝酒造)、pPA1(特開昭63-233798)、Pinpoint Xa(Promega社製)、PAN,PAC(avidity社製)などが例示される。
【0075】
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。代表的なプロモーターとしては、T7プロモーターが挙げられるがこれに限定されない。
【0076】
本明細書において使用される「固相」とは、抗体のような分子が固定され得る平面状の支持体をいう。本発明において表面プラズモン共鳴の原理を用いて検出する場合、固相は、金、銀またはアルミニウムを含む金属薄膜を片面に持つガラス基板の基材であることが好ましい。本発明において水晶発振子マイクロバランスの原理を用いて検出する場合は、周波数変換素子(例えば水晶発振子、表面弾性波素子)を固相として用い、直接受容体を結合させる。水晶板の片面はシリコーンで被覆し、もう一方の面は金電極を施したものを固相として用いる。
【0077】
本明細書において使用される「基板」とは、本発明のチップまたはアレイが構築される材料(好ましくは固体)をいう。したがって、基板は固相の概念に包含される。基板の材料としては、共有結合かまたは非共有結合のいずれかで、本発明において使用される生体分子に結合する特性を有するかまたはそのような特性を有するように誘導体化され得る、任意の固体材料が挙げられる。
【0078】
固相および基板として使用するためのそのような材料としては、固体表面を形成し得る任意の材料が使用され得るが、例えば、ガラス、シリカ、シリコーン、セラミック、二酸化珪素、プラスチック、金属(合金も含まれる)、天然および合成のポリマー(例えば、ポリスチレン、セルロース、キトサン、デキストラン、およびナイロン)以下が挙げられるがそれらに限定されない。基板は、複数の異なる材料の層から形成されていてもよい。例えば、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素などの無機絶縁材料を使用できる。また、ポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコーン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン等の有機材料を用いることができる。本発明においてはまた、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、PVDF膜など、ブロッティングに使用される膜を用いることもできる。高密度のものを解析する場合は、ガラスなど硬度のあるものを材料として使用することが好ましい。基板として好ましい材質は、測定機器などの種々のパラメータによって変動し、当業者は、上述のような種々の材料から適切なものを適宜選択することができる。
【0079】
本明細書において「チップ」または「マイクロチップ」は、互換可能に用いられ、多様の機能をもち、システムの一部となる超小型集積回路をいう。本明細書において、ビオチン化受容体を固定化した固相を、受容体チップおよび/または受容体マイクロチップと呼ぶ。
【0080】
本明細書において「アレイ」とは、1以上(例えば、1000以上)の受容体が整列されて配置されたパターンまたはパターンを有する基板(例えば、チップ)そのものをいう。アレイの中で、小さな基板(例えば、10×10mm上など)上にパターン化されているものはマイクロアレイというが、本明細書では、マイクロアレイとアレイとは互換可能に使用される。従って、上述の基板より大きなものにパターン化されたものでもマイクロアレイと呼ぶことがある。例えば、アレイはそれ自身固相表面または膜に固定されている所望の受容体のセットで構成される。アレイは好ましくは同一のまたは異なる受容体を少なくとも10個、より好ましくは少なくとも10個、およびさらに好ましくは少なくとも10個、さらにより好ましくは少なくとも10個を含む。これらの受容体は、好ましくは表面が125×80mm、より好ましくは10×10mm上に配置される。形式としては、96ウェルマイクロタイタープレート、384ウェルマイクロタイタープレートなどのマイクロタイタープレートの大きさのものから、スライドグラス程度の大きさのものが企図される。固定される受容体は、1種類であっても複数種類であってもよい。そのような種類の数は、1個~スポット数までの任意の数であり得る。例えば、約10種類、約100種類、約500種類、約1000種類の受容体が固定され得る。
【0081】
基板のような固相表面または膜には、上述のように任意の数の生体分子(例えば、受容体)が配置され得るが、通常、基板1つあたり、10個の生体分子まで、他の実施形態において10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、10個の生体分子まで、または10個の生体分子までの個の生体分子が配置され得るが、10個の生体分子を超える生体分子が配置されていてもよい。これらの場合において、基板の大きさはより小さいことが好ましい。特に、生体分子である受容体のスポットの大きさは、単一の生体分子のサイズと同じ小さくあり得る(これは、1-2nmの桁であり得る)。最小限の基板の面積は、いくつかの場合において基板上の生体分子の数によって決定される。本発明では、細胞と特異的に結合する因子は、通常、0.01mm~10mmのスポット状に共有結合あるいは物理的相互作用によって配列固定されている。
【0082】
アレイ上には、生体分子の「スポット」が配置され得る。本明細書において「スポット」とは、生体分子の一定の集合をいう。本明細書において「スポッティング」とは、ある生体分子のスポットをある基板または固相に作製することをいう。スポッティングはどのような方法でも行うことができ、例えば、ピペッティングなどによって達成され得、あるいは自動装置で行うこともでき、そのような方法は当該分野において周知である。本明細書において、生体分子は、受容体、受容体のフラグメント、または受容体の改変体である。
【0083】
本明細書において使用される用語「アドレス」とは、基板上のユニークな位置をいい、他のユニークな位置から弁別可能であり得るものをいう。アドレスは、そのアドレスを伴うスポットとの関連づけに適切であり、そしてすべての各々のアドレスにおける存在物が他のアドレスにおける存在物から識別され得る(例えば、光学的)、任意の形状を採り得る。アドレスを定める形は、例えば、円状、楕円状、正方形、長方形であり得るか、または不規則な形であり得る。したがって、「アドレス」は、抽象的な概念を示し、「スポット」は具体的な概念を示すために使用され得るが、両者を区別する必要がない場合、本明細書においては、「アドレス」と「スポット」とは互換的に使用され得る。
【0084】
各々のアドレスを定める大きさは、とりわけ、その基板の大きさ、特定の基板上のアドレスの数、分析物の量および/または利用可能な試薬、微粒子の大きさおよびそのアレイが使用される任意の方法のために必要な解像度の程度に依存する。大きさは、例えば、1-2nmから数cmの範囲であり得るが、そのアレイの適用に一致した任意の大きさが可能である。
【0085】
アドレスを定める空間配置および形状は、そのマイクロアレイが使用される特定の適用に適合するように設計される。アドレスは、密に配置され得、広汎に分散され得るか、または特定の型の分析物に適切な所望のパターンへとサブグループ化され得る。
【0086】
マイクロアレイについては、秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」、M.F.Templin,et al.,Protein microarray technology、Drug Discovery Today、7(15)、815-822(2002)に広く概説されている。
【0087】
マイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19-23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
【0088】
微細加工については、例えば、Campbell,S.A.(1996).The Science and Engineering of Microelectronic Fabrication,Oxford University Press;Zaut,P.V.(1996).Micromicroarray Fabrication:a Practical Guide to Semiconductor Processing,Semiconductor Services;Madou,M.J.(1997).Fundamentals of Microfabrication,CRC1 5 Press;Rai-Choudhury,P.(1997).Handbook of Microlithography,Micromachining,& Microfabrication:Microlithographyなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0089】
マイクロアレイの作製には、マイクロコンタクトプリンティング法、光リソグラフィー法などの種々の方法を用いることが可能であるが、望ましくは、アルカンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用する方法である。この場合、まず、片面に金薄膜を蒸着したガラス基板に、メチル基、フルオロメチル基のような疎水性官能基をもつアルカンチオールの単分子膜を形成させる。この単分子膜に、直径数μmから1mm程度の多数の光透過性スポットを配列させたフォトマスクを重ね、紫外線を照射する。これによって、照射部のアルカンチオールをスポット状に分解除去することができる。スポット内に導入された反応性官能基を使ってストレプトアビジン、アビジンなどのビオチンと特異的に結合するタンパク質を固定化する。最後に受容体タンパク質のビオチン化部位を介して受容体タンパク質を固定化することにより、化学的処理を経ずに穏やかな条件下で方向性を保った状態での、受容体タンパク質の固定化が完了する。例えば、カルボキシル基含有スポットの場合には、カルボキシル基をN-ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性エステルに変換し、アビジンやストレプトアビジンなどを固定化させた後、微量の生体分子含有溶液を各スポットに滴下することで、固定化を行うことができる。スポット周囲に形成させた疎水性の単分子膜は、溶液の拡散を抑えるために有効である。スポット周囲のバックグラウンド領域と分析物との非特異的な相互作用を抑えるため、ウシ血清アルブミンのような不活性タンパク質、ポリエチレングリコールのような親水性高分子でブロッキングを行う。
【0090】
DNAマイクロアレイ、プロテインチップなどを使った分析技術の進歩を見ても明らかなように、マイクロアレイは、一枚の基板上で多数の検体に対してハイスループット分析が可能であるため、きわめて有効な分析手段である。本発明は、このようなマイクロアレイの考え方を、多種類の生体分子-細胞間相互作用を迅速に計測するために応用する。この場合、きわめて多くの検体を同時に分析したり、分析に必要な生体分子および細胞の量をできる限り少なくするためには、マイクロアレイの集積化が重要である。しかし一方で、マイクロアレイ上の細胞に関する情報を取得する場合、ある程度以上の細胞数からなる集団を対象とした測定を行わない限り、誤差の大きいデータしか得ることができない。このような観点から、マイクロアレイを構成する各スポットの大きさは、少なくとも数十~数千個程度の細胞が相互作用することのできる大きさであることが望ましく、例えば、円形のスポットの場合、その直径はおおよそ数μmから1mm程度である。
【0091】
マイクロアレイの作製には、マイクロコンタクトプリンティング法、光リソグラフィー法などの種々の方法を用いることが可能であるが、望ましくは、アルカンチオール単分子膜のマイクロパターン化表面を利用する方法である。
【0092】
本明細書において使用される用語「生体分子」とは、生体に関連する分子をいう。本明細書において「生体」とは、生物学的な有機体をいい、動物、植物、菌類、ウイルスなどを含むがそれらに限定されない。生体分子は、生体から抽出される分子を包含するが、それに限定されず、生体に影響を与え得る分子であれば生体分子の定義に入る。そのような生体分子には、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルライブラリ化合物など)、これらの複合分子などが包含されるがそれらに限定されない。本明細書において好ましい生体分子は、受容体および受容体フラグメント、ならびにそれらのリガンドである。
【0093】
本明細書において使用される場合、「ビオチンと特異的に結合する因子」とは、ビオチンと特異的に結合し得る任意の因子をいう。ビオチンと特異的に結合する因子とビオチンとの結合は、可逆的であっても、不可逆的であってもよい。ビオチンと特異的に結合する因子としては、アビジン、およびストレプトアビジン、ならびにこれらの改変体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
表面プラズモン共鳴(SPR)は、金属表面に生じた表面プラズモン(弾性波)と、全反射した電磁波によって発生するエバネッセント波(光波)との間で起こる相互作用である。プラズモン波とエバネッセント波の波数と波動ベクトルが近似的に一致する条件を与える光の入射角θにおいて共鳴が起こり、エバネッセント波が表面プラズモンの励起に使われるため反射光強度が低下する。表面プラズモン共鳴を得るためには、高屈折率媒体からなるプリズムを配置し(Kretschmann配置)、レーザー光およびLED光を入射する方法がとられる。ここで、プリズムとは反対側の金属表面に接触する媒体の誘電率の変化によって、プラズモン波の波数が変化する。すなわち、金属表面上に物質が接近することによって、表面プラズモン共鳴を与える光の入射角がシフトする。このことを利用して、金属表面の物質による被覆をセンシングすることが可能となる。この測定法は、表面鉛直方向の分解能に優れており(0.1nmのオーダー)、表面に存在する物質量をng~pg/cmのオーダーでリアルタイムに観測することが可能である。また、水媒体中で測定できることもタンパク質のような生体分子の挙動を調べる上で大きな利点である。これを利用した測定装置が生体分子間相互作用測定装置として開発され、タンパク質およびDNAなどの相互作用の分析に応用されている。
【0095】
水晶発振子マイクロバランスは、周波数変換素子の電極上に化学的に結合対の一方を結合・固定化し、その周波数変換素子を水中に浸漬し、その結合対と対応する結合対との特異的に結合により生じる質量変化に伴う周波数変換素子の周波数変化を測定して、結合の有無を検出するものである(例えば、特開平6-94591)。この周波数変換素子としては、例えば水晶発振子、表面弾性波素子(SAW)などが挙げられる。
【0096】
本発明の受容体チップはまた、質量分析計のための質量分析チップとしても使用され得る。一般的に、質量分光測定による分析は、レーザービームを含む、レーザーなどの高エネルギー源を用いた少量のサンプルの気化およびイオン化を伴っている。物質はレーザービームによって、質量分析チップ先端の表面からガスあるいは気相に気化され、このプロセス中に、個々の分子の一部は陽子を取り込んで、イオン化される。これら正の電荷にイオン化された分子は、次に、短い高圧電界で加速され、高真空度チェンバーに導かれ(ドリフト)、その先で、感度の高い検出装置の表面に衝突する。飛行時間はイオン化された分子の質量の関数であるから、イオン化と衝突との間に経過する時間は、その分子の質量の判定に用いることができ、その分子質量は、次に特定の質量の既知の分子が存在しているかどうかの判定に用いることができる(飛行時間質量分光測定(TOF))。また、イオン化されたサンプルに含まれる特定の質量/電荷数(m/Z)のイオンだけが安定な振動状態になることを利用して、直流成分と高周波の交流成分の電圧を加えることにより、特定の質量/電荷数(m/Z)を有するイオンのみを通過させる質量フィルターを用いて(必要であれば、フラグメントイオンを生成させて)、サンプル(またはサンプルのフラグメントイオン)の質量/電荷数(m/Z)を検出することもできる(タンデム質量分析法)。
【0097】
気相イオンの生成方法としては、粒子のサンプルへの衝撃から得られる脱着/イオン化法などがある。この方法には、高速原子衝撃法(FAB-揮発性マトリクスに懸濁したサンプルに中性粒子(neutral)を衝撃する)、二次イオン質量分析法(SIMS-keV
一次イオンが表面に衝撃して二次イオンを発生する)、液体SIMS(LSIMS-一次種がイオンであることを除いてFABと同様)、プラズマ脱着質量分析法(MeV一次イオンを用いることを除いてSIMSと同様)、大量クラスタ衝撃法(MCI-大きいクラスタの一次イオンを用いてSIMSと同様)、レーザ脱着/イオン化法(LDI-レーザ光を用いて、表面から種を脱着/イオン化する)、マトリクス補助型レーザ脱着/イオン化法(MALDI-脱着およびイオン化の事象を補助することができるマトリクスから種を脱着/イオン化することを除いてLDIと同様)などがある。代表的な質量分析法としては、レーザー脱着/イオン化、飛行時間質量分光測定(TOF)を用いる方法が挙げられる。
【0098】
質量分析計において、受容体のような親和性結合を行う分子を結合した質量分析チップを用いる測定方法は、例えば以下のように、特表平9-501489に開示される:
受容体を固定化した質量分析チップ面を、前記分析対象物分子(例えば、リガンドを含む混合物)の源にさらし、前記分析対象物分子が結合するようにするステップと;前記分析対象物分子が結合している質量分析チップ先端を、飛行時間質量分光測定器の一方の端に置き、真空および電場を与えて分光測定器内に加速電位を作るステップと;前記先端より前記分析対象物分子のイオンを脱着させるために、分光測定器内の、誘導された質量分析チップ先端面に結合している分析対象物の少なくとも一部分を、1つあるいはそれ以上のレーザーパルスを用いて、打つステップと;前記質量分光測定器内で、飛行時間によってイオンの質量を検出するステップと;このように検出された質量を表示するステップとから成る、方法。この方法において、質量分析チップに結合した分子(例えば、受容体に特異的に結合するリガンド)のイオンの質量を検出することができる。
【0099】
上記の方法において、レーザー脱着/イオン化、飛行時間質量分光測定法により、分析対象物分子の質量を測定することが可能であり、この方法においては、分析対象物の脱着およびイオン化を容易にするために、前記分析対象物と一緒にエネルギー吸収物質(例えば、シナピン酸、シンナムアミド、シンナミル臭化物、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、およびα-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸)を用いることができる。
【0100】
質量分析計において、受容体のような親和性結合を行う分子を固定化した質量分析チップを用いるさらなる測定方法は、特表平11-512518に開示される。この開示される方法においては、一般にヒドロゲル、およびさらに詳細には、カルボキシメチル化デキストランなどの多糖のヒドロゲルを有する支持体表面に受容体のような親和性結合分子をチップに固定化し、その分析物(例えば、リガンド)をその支持体と接触させた後、親和性結合分子に結合した分析物の有無およびその質量等について解析する。
【0101】
本明細書において使用するAGEの受容体としては、RAGEおよびその改変体であRAGE由来の配列が挙げられるが、これに限定されない。RAGE由来の配列とは、RAGE自体の核酸/アミ酸配列のみならず、RAGE自体の核酸/アミノ酸配列を改変した配列をも包含する。RAGE由来の配列としては、代表的には、AGEに結合する能力を有するポリペプチドの発現に使用可能な配列であり、かつ:
(a)配列番号2に記載されるアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質のフラグメントの配列;
(c)配列番号2に記載されるアミノ酸配列を参照配列として、マトリクスとしてBLOSUM-62を使用し、フィルターとしてLow-complexityのみを使用するBlast解析を行った場合に、E値が1e-20以下であるポリペプチドのアミノ酸配列;
(d)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(e)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;
(f)配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して、少なくとも1つの保存的置換、および、1または数個の置換、付加、欠失を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドのアミノ酸配列;ならびに、
(g)配列番号1に記載される核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸にコードされるポリペプチドのアミノ酸配列;
からなる群から選択される配列、あるいは、これらアミノ酸配列をコードする核酸配列が挙げられるが、これに限定されない。
【0102】
(AGE結合能を有するポリペプチドの発現)
大腸菌などの細菌宿主細胞を用いて、外来タンパク質を多量に発現すると、封入体を形成する場合が多い。封入体は、ポリペプチドの折り畳みが異常であり、そのため、ポリペプチドが本来有する機能を失っている場合が多い。そこで、(1)封入体を形成しない(または少量のみの封入体を形成する)宿主細菌細胞の使用、(2)封入体を形成しない条件での宿主細菌細胞の培養、(3)形成された封入体のリフォールディング、または、(4)これら(1)~(3)の組合せを用いる必要がある。これら各々について、限定されることはないが、例えば、以下のように実施することが可能である。
【0103】
(1.封入体形成を抑制する宿主細菌細胞の使用)
一般的に、封入体は、組換えポリペプチド内での適切なジスルフィド結合が形成されずに、ポリペプチドの可溶性が低下することによって形成される場合が多い。そこで、細菌宿主細胞においてジスルフィド結合の形成を促進し、可溶性タンパク質としての発現の可能性を高める変異株を宿主として使用することによって、封入体の形成が抑制される。ジスルフィド結合の形成を促進する変異株としては、チオレドキシンリダクターゼ遺伝子、および/またはグルタチオンリダクターゼ遺伝子を欠損する細菌が挙げられるが、これに限定されない。E.coliのチオレドキシンリダクターゼ遺伝子としては、trxBが公知であり、グルタチオンリダクターゼ遺伝子としてはgorが公知である。従って、ジスルフィド還元系に変異を有するE.coliとしては、(i)trxB変異株、(2)gor変異株、および(3)trxB gor変異株が挙げられるが、これに限定されない。trxB変異を有するが、gor変異を有さないE.coli株としては、例えば、AD494(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USA)株が挙げられるが、これに限定されない。trxB変異およびgor変異の両方を有するE.coli株としては、例えば、Origami(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USA)、OrigamiB(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USA)、Roseetta-gami(DE3)(Novagen社、Madison,WI,USA)株が挙げられるが、これに限定されない。
【0104】
(2.低温での組換え細菌の培養)
一般的に、細菌を低温で培養することによって、封入体の形成を抑制することが可能である。宿主細胞がE.coliの場合、E.coliの最適培養温度が通常37℃であるのに対して、封入体形成を抑制するのに十分低い培養温度は、約15~30℃、好ましくは約20~25℃、より好ましくは約25℃である。従って、このような低温で宿主細菌細胞を培養することによって、封入体形成を抑制することが可能である。
【0105】
(3.受容体チップの調製)
上記のように封入体形成を抑制する条件下で生成したRAGEは、正しい高次構造にフォールディングし、リガンド認識能を有しているので、そのまま、アビジンもしくはストレプトアビジン等を介して方向性を保った状態でチップ、キュベット等の固相上に固定し、これをセンサー(すなわち、受容体チップ)として使用することが可能である。
【実施例】
【0106】
(実施例1:組換え宿主細胞の培養)
宿主細菌細胞としてOrigami(DE3)を用いた。図1に記載のように、目的RAGE遺伝子クローニングサイトとして、5’側はNdeI,3’側にはXhoI(BamHI,SmaI,HindIIIもまた使用可能)を使用する。その結果、目的タンパク質のC末側にビオチンリガーゼによって認識されるビオチン化アミノ酸配列が付加される。RAGEの場合、N末側が細胞外領域でありAGEの認識に必須な領域であるため、チップ化などに際してC末側で固定化が可能なように、C末側にビオチン化アミノ酸配列を付加した。この手順を用いて、配列番号1のアミノ酸配列のC末端側にビオチン化アミノ酸配列「GLNDIFEAQKIEWHE」(配列番号4)をコードする核酸配列を連結し、T7プロモーターの制御下に配置したプラスミドを作製した。用いたプラスミドのクローニング部位を図1に示す。図1中、「FXa」は第Xa因子の切断部位を示し、「rbs」はリボゾーム結合部位を示す。このプラスミドと、ビオチンリガーゼ遺伝子を発現するプラスミド(ColE1系であるpETベクターと不和合性グループが異なるため同一細胞内で安定に共存しうるp15A系プラスミドであるpACベクターにビオチンリガーゼ遺伝子を挿入したプラスミド)の両方を用いて宿主細菌細胞を形質転換した。この形質転換した宿主細胞の培養に使用した培地は、50μg/mlアンピシリン、34μg/mlクロラムフェニコール、15μg/mlカナマイシン、12.5μg/mlテトラサイクリンを添加した、改変LB培地(0.5% NaCl、0.5%酵母エキス、1%トリプトン)である。
【0107】
25℃で一晩培養した前培養液を、5%の最終濃度になるように培地に添加し、25℃で攪拌培養した。なお、本培養への添加量を5%以上にして、誘導開始までの培養時間を短縮することも可能である。また、前培養を37℃で行なった場合、添加量が5%を越えると可溶性として得られる割合が減少した。
【0108】
培養後に、A600での吸光度が0.5~0.7に達した段階で、1mM IPTG、50μM d-biotin(D型[(+)-cis-ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-チエノ-(3,4)-イミダゾール-4-吉草酸)](いずれも最終濃度)を添加し、目的タンパク質の誘導とビオチン化を開始し、さらに18時間攪拌培養をすることにより、目的とするタンパク質を可溶性ビオチン化タンパク質として発現させることができた。
【0109】
なお、培養温度37℃では、目的タンパク質は、100%近く不溶性となるが、培養温度を25℃に下げることにより、発現した目的タンパク質の内、80%程度を可溶性タンパク質として発現させることが可能であった。全細胞抽出物と各画分のSDS-PAGEの結果を図2Aに示す。図2中、「-」は誘導前の全細胞抽出物、「+」は誘導後の全細胞抽出物、「S」誘導後の全細胞抽出物中の可溶性画分、「P」誘導後の全細胞抽出物中の不溶性画分、「Ni」可溶性画分のNiアガロースカラム溶出画分、「Mu」ストレプトアビジンムテインマトリックスカラム(Roche,Basel,SWITZERLAND)からの溶出画分を示す。一方、培養温度を30℃に下げた場合は、封入体形成の抑制の程度は、少なかった(図2B)。
【0110】
(実施例2:培養液よりのRAGEの調製)
菌体を収菌後、溶解緩衝液(50mM NaHPO、150mM NaCl、10mM イミダゾール、pH 8.0)に懸濁し、超音波破砕した後、遠心した上清を租溶解液(可溶性画分)とした。N末端に存在するHisタグを利用しNiアガロースカラムに結合させ、FPLCシステムによるイミダゾール濃度勾配により溶出を行なった。可溶性ビオチン化RAGEを含む画分を回収し溶解緩衝液にて透析後、AviTag(C末)(「GLNDIFEAQKIEWHE」(配列番号4))を利用しストレプトアビジン ムテイン マトリックス(Roche社製)カラムに結合させた。10mM d-biotinにて溶出することにより精製可溶性ビオチン化RAGEを得た。1L当りの培養から、最終的に数mgの精製可溶性ビオチン化RAGEを得ることが可能であった。
【0111】
(実施例3:組換えRAGEのAGE結合能)
実施例2に従って調製した組換えRAGEのAGE結合能を確認した。
【0112】
(1:AGEの調製)
AGEとしては、糖化BSAを用いた。糖化BSAは、以下の手順によって調製した。
【0113】
糖化BSAとしては、実施例中ではフルクトースにより糖化したBSAを使用(グルコース、リボースなどによる糖化処理をした糖化BSAも類似の手法で準備)した。
【0114】
エタノール殺菌した薬匙を使用し、ガンマー線滅菌済みの50ml コニカルチューブ中へ4.51gのフルクトース(Sigma社製, St. Louis, MO, USA)を計量した。20 mlの滅菌1M リン酸緩衝液(pH 7.4)を加え、キャップをした後、ボルテックスによりフルクトースを完全に溶解させた。次に8.3mlの30%BSA溶液(BSAはSigma社製, St. Louis, MO, USA)を添加し、転倒混和により穏やかに溶液を混合した。最後に21mlの滅菌蒸留水を添加し、最終濃度50mg/ml BSA, 500mM フルクトース / 400mM リン酸緩衝液(pH7.4)の溶液とした。この溶液(Fruc 500 BSA)を0.22μmのフィルターにより無菌ろ過した後、遮光条件下において37℃で6もしくは12週間反応させた(実験に使用したのは12週間反応させたもの)。毎週、少量の反応液を無菌的に採取し、pHを確認した。pHに変化が認められる場合は、滅菌水で調製した10N NaOHを添加し、pHを常に7.4に保つようにした。糖化反応の進行の検証と糖化BSAの特性解析用の試料として1週間目、6週間目に5mlの反応産物を無菌的に採取し、-80℃にて凍結保存した。12週目に糖化反応を終了させるために、未反応のフルクトースを透析により除去した。透析は、オートクレーブ滅菌したPBS(1mM KH2PO4, 10mM Na2HPO4, 137 mM NaCl, 2.7mM KCL, pH 7.4)に対して4℃で行なった。透析後の試料は可能な限り無菌的に扱い、0.22μmのフィルターにより無菌ろ過した後、冷蔵保存した。1週目、6週目の糖化BSAも溶解後同様の透析処理により未反応のフルクトースを除去し、0.22μmのフィルターにより無菌ろ過した後、冷蔵保存し、1,6,12週目の各試料に関して、糖化反応の進行とAGEとしての特性を評価し、12週目のものを糖化BSA(AGE-BSA)として使用した。
【0115】
コントロール用の糖化処理を受けていないBSAとして、フルクトースを添加しない条件下で全く同様の処理をしたBSAを使用した。
【0116】
糖化BSAは、励起波長が335nmであり、放出波長が420nmである蛍光特性を有する。
【0117】
(2:AGE結合能の測定)
1.5mlの遠心用チューブに粗精製sRAGE溶液(Lysis buffer:10mM イミダゾール、100mM NaHPO, 150mM NaCl;タンパク濃度は、2.5~5mg/ml)300μlを分注した。次に20μlのストレプトアビジン-ムテインマトリックス50%スラリーを添加し、室温で回転混和により10分間反応させた。スイングローターにより500g×5 分間の遠心処理を行い、上清を除去し、sRAGEが固定化されたストレプトアビジン-ムテインマトリックス(SA-Mutein)を沈澱画分として回収した。300μlのLysis bufferを添加し、転倒混和、遠心処理によるsRAGE固定化SA-Muteinの回収を2回繰り返すことにより、非特異的にSA-Muteinに吸着しているタンパク質などを除去した。続いて、300μlのAGE-BSA(12週間糖化処理を行なったAGE-BSA、4mg/ml)を添加し、室温で回転混和により1時間反応させた。上述の遠心処理によりAGE-BSA-sRAGE-SA-Mutein複合体が回収された。この複合体を0.05%tween 20を含むPBS(1mM KHPO, 10mM NaHPO, 137 mM NaCl, 2.7mM KCL, pH 7.4)を300μl添加し、転倒混和、遠心処理を2回繰り返す洗浄の作業を行ない、非特異的に吸着していた分子を除去した。最終的に回収されたAGE-BAS-sRAGE- SA-Mutein複合体を200μlのPBSに懸濁した後、96ウェルの無蛍光のマイクロタイタープレートに添加し、335nmで励起し、420nmの吸収波長で蛍光強度を測定した。コントロールとしてFruc-500-BSAの代わりにフルクトース非存在下で糖化処理区と同条件で37℃に放置したBSAを使用した。独立した3回の測定を行なった結果を以下の表に記す。
【0118】
【表1】
JP0005093711B2_000002t.gif
上記の結果から、組換え発現したRAGEは、糖化BSAに対する特異的認識能を有していることが明らかとなった。また、従来RAGEのNグルカンを除去した場合に、リガンドに対する特異的結合能が顕著に減少したことを考慮すると、糖鎖修飾されていない細菌細胞宿主を用いて発現した上記RAGEの特異的認識能は、予想外に高いものであると評価できる
(実施例4:ドットブロット分析)
(実験条件)0.22μmのポアサイズのニトロセルロース膜上に1μlのリガンド溶液(20ng~8μgの濃度勾配)を直接スポットすることにより吸着させた。リガンド溶液としては12週間反応のAGE-BSA、フルクトース非存在下で調製したBSA(コントロール)を用いた。スポットを完全に乾燥させた後、タンパク質の結合していない部分をブロックするため、ブロッキング緩衝液:5% スキムミルクを含むTBS-T(0.1% Tween 20, 20 mM Tris, 150mM NaCl, pH 8.0)中で、室温で1時間反応させた。続いて10μg/mlもしくは1μg/mlの濃度のhsRAGE、コントロールとして10μg/ml(いずれも最終濃度)BSAを含むTBS-T中で室温にて1時間反応させた。反応後のニトロセルロース膜をTBS-T中にて15分間振とうする洗浄の過程、さらに同様の洗浄を1.5分で3回繰り返し、非特異的な結合を除去した。続いて室温にて1時間、一次抗体との反応を行なった。抗体は、抗RAGE抗体ウサギIgG(Santa Crua Biotechnology, Santa Cruz, CA, USA )をTBS-Tにて1:1000に希釈して使用した。反応後の膜をTBS-Tにて上記同様に洗浄した。次に二次抗体との反応を行なった。抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識した抗ウサギIgG抗体(Bio Rad, Hercules, CA, USA)をTBS-Tにて1:1000に希釈して使用した。室温で1時間振とう反応させた後、上述の洗浄の過程を経て、最後の検出の段階に進んだ。検出はECL(Amersham Bioscience, Uppsala, Sweden )キットにより、X線フィルムへの露光により、各ドットに由来する発光を可視化した。
【0119】
結果を図3に示す。コントロールは、sRAGEを添加しなかった対照実験である。図3のブロッティングの結果で確認できる黒い点が、sRAGEが膜上のリガンドを認識し、結合したことを意味する。リガンドの濃度が同一の場合、ドットの濃さと反応の強さは比例関係にある。また、sRAGEは、アンフォテリン(RSD、MN、USA)にも結合することが確認された。
【0120】
sRAGEがAGE-BSAのみと反応し、コントロールのBSAとは反応していないことから、大腸菌を宿主として調製したsRAGEが、天然型RAGE同様の特異的なAGE認識能を有していることが分る。
【0121】
またその結合能であるが、AGE-BSAの濃度勾配から10μg/mlのsRAGE溶液を使用した場合、0.02μg/ドットで十分検出可能、0.004μg/ドットが検出限界に近いと推定される。1ドットが1μlであることから、検出限界は4μg/ml(約600nM)と計算される。細胞上に発現している糖鎖付加のなされた天然型RAGEによるAGEの認識によって引き起こされる細胞の種々の機能変化を引き起こすAGEの濃度として、50μg/mlが使用されている(J.Biol.Chem., 274, 31740-31749, 1999)。実験系と評価基準の違いから厳密な比較とはいえないが、大腸菌で発現させたsRAGEが予想に反して、天然型RAGEに匹敵するAGE認識能を有していることを示唆している。
【0122】
(実施例5:受容体チップの作製)
AGEなどを検出するセンサーとして使用する目的で、表面プラズモン共鳴により検出が可能な機器のセンサー部位へビオチン化RAGEを固定化し、実際のリガンドの結合を検討する。表面プラズモン共鳴装置としては、BIACORE杜製のBIACORE、並びに株式会社日立ハイテクノロジーズ製のIAsysを使用する。
【0123】
(1)再構成ビオチン化細胞外領域をBIACOREのストレプトアビジンセンサーチップ上に、リガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化する。これをBIACORE本体に挿入後、AGE(例えば、糖化BSA)との結合を測定する。表面プラズモン共鳴の原理を利用した機器の場合、リガンドの結合をレゾナンスユニット:RUの増加として検出することになる。
【0124】
(2)再構成ビオチン化受容体をIAsysのビオチンキュベット上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化する。これをIAsys本体に挿入後、AGE(例えば、糖化BSA)との結合を測定する。
【0125】
(実施例6:BIACOREを用いた受容体チップの性能評価)
リフォールディングにより得られたsRAGEをBIACOREのセンサーチップSA上に固定化した。実施例3に従って調製された、異なった濃度のフルクトースにより糖化処理を行なったAGE-BSAをインジェクションした。その結合と解離を測定したセンサーグラムを図4に示す。0秒でAGE-BSAを添加し、180秒後に緩衝液による洗浄を開始した。流速を20μl/分とした。sRAGEを固定化していないフローセルをリファレンスセルとし、リファレンスセルの値との差を応答(RU)として示した。図4中、応答(RU)値の大きい順に、128μg/ml、64μg/ml、32μg/ml、16μg/ml、8μg/ml、4μg/mlの糖化処理AGE-BSAを用いたセンサーグラムの結果が示されている。
【0126】
精製したsRAGEをBIACOREのセンサーチップSA上に固定化し、。実施例3に従って調製された、異なった濃度のフルクトースにより糖化処理を行なったAGE-BSAをインジェクションし、その結合と解離を測定したセンサーグラム。0秒でAGE-BSAを添加し、180秒後に緩衝液による洗浄を開始した。流速は、20μl/分とした。sRAGEを固定化していないフローセルをリファレンスセルとし、リファレンスセルの値との差を応答(RU)として示した。図5中、応答(RU)値の大きい順に、128μg/ml、64μg/ml、32μg/ml、16μg/ml、8μg/ml、4μg/mlの糖化処理AGE-BSAを用いたセンサーグラムの結果が示されている
反応速度論的解析は、BIACOREの解析ソフトBIAevaluation 3.0によった。解析は、センサーグラムを非線形最小二乗法により直接curve fitting させ解析する非線形解析(Non linear fitting)によった。さらに非線形解析の内、結合相と解離相のグラフに対して同時にカーブフィッティングする同時解析(Simulteneous fitting)により、結合速度定数と解離速度定数を算出した。さらに、フィッティングに際して、RAGEとAGE-BSAの結合反応様式のモデルとして、1対1の反応を前提とした 1:1ラングミュア結合(langumuir binding)を採用した。
【0127】
その結果得られた、結合定数K(M)=e-7~e-8であり、細胞上に発現している天然RAGEのK(M)=e-7(J.Biol.Chem.,267,14987-14997,14998-15004,1992)と同等以上の結合能を有することが示された。また、細胞アッセイにより算出した天然RAGEの125I標識AGEに対するKdは、100nM以上と報告されている(J.Biol.Chem.,267,14987-14997,14998-15004,1992)。この報告と比較しても大腸菌を宿主として調製された本発明のsRAGEは、天然のRAGEと同程度の十分な結合能を有していることが示されている。
【0128】
使用したモデルの正しさやFittingの良好さの指標となり得るChiは、2以下であり、20以下で良好とされることから、Fitingは良好であると判断された。
【0129】
(実施例7:水晶発振子マイクロバランスへの応用)
RAGEポリペプチドまたはそのホモログを、AGEなどを検出するセンサーとして使用する目的で、水晶発振子マイクロバランスにより検出が可能な機器のセンサー部位へ各ビオチン化タンパク質を固定化し、実際のリガンドの結合を測定する。装置としては、Intium社製のAffinixQを使用する。
【0130】
再構成ビオチン化受容体を水晶発振子上に、ストレプトアビジンを介してリガンド認識に関わる部分が外側を向くように固定化する。これを装置に挿入後、AGE(例えば、糖化BSA)との結合を測定する。水晶発振の原理を利用した機器の場合、リガンドが結合すると、重量負荷が増加するため、振動数(Hz)の減少として検出される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のポリペプチド、ポリペプチドを含むチップを用いることによって、糖尿病血管障害についての高感度な診断方法、および、予防効果評価手法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】図1は、ビオチン化RAGEの発現に使用したベクター(pET16-aviTag)のクローニング部位を示す図である。
【図2】図2Aおよび2Bは、RAGEポリペプチドを、それぞれ、25℃および30℃で発現した結果である。
【図3】図3は、sRAGEを用いたドットブロットの結果である。
【図4】図4は、sRAGEをセンサーチップに固定化して製造した受容体チップを用いた結合実験の結果である。応答(RU)値の大きい順に、128μg/ml、64μg/ml、32μg/ml、16μg/ml、8μg/ml、4μg/mlの糖化処理AGE-BSAを用いたセンサーグラムの結果が示されている。

【配列表フリ-テキスト】
【0133】
配列番号1 RAGEタンパク質の細胞外領域の核酸配列
配列番号2 RAGEタンパク質の細胞外領域のアミノ酸配列
配列番号3 ビオチン化モチーフのアミノ酸配列
配列番号4 ビオチン化モチーフのアミノ酸配列
配列番号5 ビオチン化モチーフのアミノ酸配列
配列番号6 ビオチン化モチーフのアミノ酸配列
配列番号7 ビオチンリガーゼのアミノ酸配列
配列番号8 FactorXaの認識配列
配列番号9 エンテロキナーゼの認識配列
配列番号10 トロンビンの認識配列
配列番号11 pET16-aviTagのクローニング部位
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3