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明細書 :醸造酒中の原料植物の判別方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4953058号 (P4953058)
公開番号 特開2007-330230 (P2007-330230A)
登録日 平成24年3月23日(2012.3.23)
発行日 平成24年6月13日(2012.6.13)
公開日 平成19年12月27日(2007.12.27)
発明の名称または考案の名称 醸造酒中の原料植物の判別方法
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/37        (2006.01)
C12Q   1/40        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12N 15/00 A
C12Q 1/37
C12Q 1/40
請求項の数または発明の数 12
全頁数 34
出願番号 特願2006-169336 (P2006-169336)
出願日 平成18年6月19日(2006.6.19)
審査請求日 平成21年6月2日(2009.6.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】大坪 研一
【氏名】原口 和朋
【氏名】鈴木 啓太郎
【氏名】中村 澄子
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】清水 晋治
参考文献・文献 特開2001-008685(JP,A)
国際公開第2004/094634(WO,A1)
Journal of agricultural and food chemistry. 2002, Vol.50, No.21, p.6090-6096
今堀和友、外1名,生化学辞典(第3版),東京化学同人,1998年10月 8日,第3版,p.957(凍結乾燥の項)
新村和則、外3名,イネ品種判別用マルチプレックスPCRプライマーセットの開発,育種学研究,2005年 6月 1日,Vol.7,No.2,p.87-94
Journal of fermentation and bioengineering. 1995, Vol.79, No.5, p.429-432
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII)
医学・薬学予稿集全文データベース
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、エタノール処理を行い、次いでフェノール処理によってタンパク質を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNA、あるいは醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理を行って多糖類を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNAを鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類を判別する、醸造酒原料判別方法。
【請求項2】
醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、エタノール処理を行い、次いでフェノール処理によってタンパク質を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNA、あるいは醸造酒に、耐熱性α-アミラーゼ及びプロテアーゼを作用させてデンプン及びタンパク質を分解した後、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理を行って多糖類を除去し、さらにクロロフォルム/イソアミルアルコール混合溶媒で処理することを含む工程により抽出・精製されたDNAを鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物品種を判別する、醸造酒原料判別方法。
【請求項3】
前記醸造酒が日本酒、ビール又はワインである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記醸造酒を凍結乾燥、気流乾燥又は噴霧乾燥で粉末にする工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記醸造酒を冷風乾燥、冷風減圧乾燥又は減圧遠心乾燥により濃縮して薄膜にする工程を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記DNAの抽出・精製において、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クロロフォルム及びフェノールからなる群から選択される1種類又は2種類以上の有機溶剤を用いて色素成分を除去する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記醸造酒が日本酒である場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、Mitol(配列番号75及び76)、Chlo1(配列番号77及び78)、GluSNP(配列番号79及び80)、BARGBSS(配列番号83及び84)、Ipoamy(配列番号87及び88)、Sugacss(配列番号89及び90)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)及びSBE(配列番号100及び101)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記醸造酒がビールである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、BARGBSS(配列番号83及び84)、MAIZGBSS(配列番号85及び86)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)及びダイズタンパク質グリシニン由来のプライマー(配列番号106及び107)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記醸造酒がワインである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、VITGT(配列番号81及び82)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子由来のプライマー(配列番号102及び103)及びブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来プライマー(配列番号104及び105)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである、請求項3~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記プライマーが、植物由来の反復配列の一部である、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記多型の判別をSNP判別法によって行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類又は品種を判別する醸造酒原料判別方法であって、前記プライマーとして請求項7~9のいずれかに記載のプライマーを使用することを特徴とする方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、醸造酒中の原料植物のDNA判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯や餅など、原料品種のDNA判別技術が開発されつつある(特許文献1、特許文献2、非特許文献3)。米飯の場合、アミラーゼ、プロテアーゼを作用させ(本明細書において「酵素法」という)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)処理、フェノール処理を行ってDNAを抽出・精製し、これを鋳型DNAとしてプライマーを用いてPCRで増幅し、電気泳動して、DNAの多型に基づいて米飯の原料品種を識別する(特許文献1)。餅の場合、餅を凍結乾燥し、粉末にして、前記酵素法、CTAB処理、フェノール処理を行ってDNAを抽出・精製し、これを鋳型DNAとしてプライマーを用いてPCRで増幅し、電気泳動して、DNAの多型に基づいて餅の原料品種を識別する(特許文献2)。
【0003】
日本酒やワインのような醸造酒の場合、品質に対して、製造者の技術や発酵用微生物の種類、あるいは製造条件が大きな影響を与えるが、特に原料植物、すなわち、イネやブドウの品種が強く影響することが知られている。日本酒の場合、山田錦や五百万石などの酒造好適米が知られており、高級酒の多くはこれらの酒造好適米を原料として製造され、包装ラベルに原料米の品種が記載されている場合が多い。包装ラベルに記載されている品種と実際に使用されている品種が同一であるかを確認できれば、高級酒の原料表示の偽造を防止・抑制できる。さらに、酒質と原料植物又は原料品種の関係を調べることができれば、今後の醸造酒の開発や品質改良に役立てることができる。
【0004】
従って、醸造酒に使用されている原料植物の種類又は品種を、醸造酒を試料として識別できる技術が求められている。
【0005】
しかし、日本酒やワイン等の発酵製品については、もともと液状であって水分含量が高く、固形物が少ない上に、製造過程(発酵段階)で微生物によって米のDNAも分解されてしまうため、前記原料植物のDNA品種判別技術の適用が不可能とされてきた。
【0006】
また、遺伝子組み換え植物(GMO)及びその加工品の検知においても、導入遺伝子の配列に基づいて設計されたプライマーを用いるPCRによって導入遺伝子が検出されるが、醤油などの発酵された加工品の場合は、発酵過程におけるDNAの分解及び発酵微生物のDNAの混在のため、遺伝子組み換えの有無の検知が不可能とされてきた。
【0007】
すなわち、流通消費段階で入手可能な醸造酒製品を試料とし、その原料植物の種類又は品種をDNA分析によって判別するためには、発酵工程を経ないために原料植物のDNAが多量に存在する固形の米飯や餅と異なり、発酵中の微生物による分解を受けながら、なお液体中に残存している極微量の原料植物由来のDNAあるいはその断片を、加熱による分解、変性、重合等を起こさない条件で濃縮して、PCRにおけるプライマーが結合(アニーリング)するために必要な濃度にまで上げなければならない。
【0008】
また、米飯や餅と異なり、醸造酒の場合には、発酵過程を経るために、標的とするDNA以外に、麹菌や酵母の菌体あるいはその残さが共存しており、また、原料の成分である澱粉、タンパク質、脂質、細胞壁なども発酵過程で分解され、成分間反応なども進行し、きわめて複雑な組成を有しており、糖質、蛋白質、脂質等の混在物から試料のDNAを分離精製して良質のDNAを得るには、前記酵素法を更に工夫することが求められる。
【0009】
また、醸造酒の場合は、既報における米飯や餅の場合と異なり、麹菌、酵母、ホップ、ブドウ果皮などの共存により、ポリフェノール等の色素成分を多く含んでいる。さらに、原料の加熱殺菌、発酵及び「火入れ」等の発酵停止処理等により、メイラード反応を始めとする成分間反応が起こり、黄色や赤褐色の色素成分が増加する。ポリフェノールやメラノイジン等の色素成分は、その多くが酵素阻害作用を持っており、PCRを阻害する。
【0010】
また、分離精製した原料植物由来のDNAあるいはその断片をPCRで増幅し、その多型によって原料植物又は品種を判別するためには、混在する麹菌や酵母などのDNAは増幅しないで、植物由来のDNAのみが増幅するようなプライマーが必要である。部分分解されているDNA断片を鋳型とした場合でも、原料植物同士の品種判別が可能な増幅DNAが得られるように、植物遺伝子特有のプライマーの中でも特に好適なプライマーを選定することが必要である。
【0011】
更に、原料植物由来のDNAあるいはその断片がPCRの鋳型として利用可能となり、DNAの増幅に好適なプライマーが共存した状態で、識別可能なDNA多型が現れるためには、PCRが順調に終了するための好適な反応条件を設定しなければならない。
【0012】
前記のような多くの技術的な困難が伴うとともに、前記米飯及び餅の原料品種のDNA判別技術を醸造酒にそのまま適用できないため、醸造酒のみを試料として、その原料植物の種類又は品種を判別することは、当業者が想起しなかったことであるし、また解決すべき多くの課題を抱えていた。
【0013】

【特許文献1】特許第3048149号公報
【特許文献2】特開2002-306173号公報
【非特許文献1】中村澄子ら、日本農芸化学会誌、2004年、78巻10号、p.984-993
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、流通消費段階で入手可能な醸造酒製品を試料とし、その原料植物の種類又は品種をDNA分析によって判別する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記問題について鋭意検討した結果、醸造酒に僅かに残存する原料植物由来のDNAあるいはその断片を高濃度に得るため、また高濃度にする過程で更にDNA分解や変性が起こらないように、非加熱濃縮により醸造酒を粉末又は薄膜にする方法を見出した。
【0016】
また、試料から良質のDNAを抽出するには、耐熱性アミラーゼ、プロテアーゼK処理の直後にフェノール処理等を反復することにより、残存タンパク質を徹底的に除去できることを見出した。
【0017】
さらに、酵素法で澱粉及びタンパク質を分解除去した後に、CTAB法等による抽出・精製法を組み合わせた場合、醸造酒を原料として、高品質のPCR用鋳型DNAを高収率で抽出精製できることを見出した。
【0018】
醸造酒に含まれる色素成分については、醸造酒から鋳型DNAを抽出精製するに際し、有機溶剤を用いて除去できることを見出した。
【0019】
さらに、鋳型DNAを増幅するためのPCRにおいて、微生物由来のDNAを増幅しないように、PCRに用いるプライマーとして、植物遺伝子由来のプライマーを使用することを見出した。
【0020】
即ち、本発明は、要約すると、以下の特徴を有する。
【0021】
本発明は、第一の態様において、醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類を判別する。
【0022】
第二の態様において、醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型とし、植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行い、増幅DNAの多型に基づいて原料植物品種を判別する。
【0023】
別の実施形態において、前記醸造酒が日本酒、ビール又はワインである。
【0024】
別の実施形態において、前記醸造酒を凍結乾燥、気流乾燥又は噴霧乾燥で粉末にする工程を更に含む。
【0025】
別の実施形態において、前記醸造酒を冷風乾燥、冷風減圧乾燥又は減圧遠心乾燥により濃縮して薄膜にする工程を更に含む。
【0026】
別の実施形態において、前記DNAの抽出・精製において、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クロロフォルム及びフェノールからなる群から選択される1種類又は2種類以上の有機溶剤を用いて色素成分を除去する。
【0027】
別の実施形態において、前記醸造酒に、耐熱性デンプン分解酵素及び/又はタンパク質分解酵素を作用させてデンプン及び/又はタンパク質を分解し、前記鋳型DNAを抽出・精製する。
【0028】
別の実施形態において、前記醸造酒が日本酒である場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、Mitol(配列番号75及び76)、Chlo1(配列番号77及び78)、GluSNP(配列番号79及び80)、BARGBSS(配列番号83及び84)、Ipoamy(配列番号87及び88)、Sugacss(配列番号89及び90)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)及びSBE(配列番号100及び101)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである。
【0029】
別の実施形態において、前記醸造酒がビールである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、BARGBSS(配列番号83及び84)、MAIZGBSS(配列番号85及び86)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)及びダイズタンパク質グリシニン由来のプライマー(配列番号106及び107)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである。
【0030】
別の実施形態において、前記醸造酒がワインである場合に、前記プライマーがA6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、VITGT(配列番号81及び82)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子由来のプライマー(配列番号102及び103)及びブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来プライマー(配列番号104及び105)からなる群から選択される1種類又は2種類以上のプライマーである。
【0031】
別の実施形態において、前記プライマーが、植物由来の反復配列の一部である。
【0032】
別の実施形態において、前記多型の判別をSNP判別法によって行う。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、日本酒、ワイン、ビール等の醸造酒の試料のみからその原料植物の種類を判別することが可能となり、表示と内容物原料の異同を科学的に判定することが可能となる。
また、醸造酒を試料とし、その原料植物の品種が判別されるため、醸造酒の原料表示の偽装が防止される。
更に、醸造酒の酒質と原料植物との関係が明確になり、良質の原料植物を選定することにより、酒質の向上が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明における醸造酒とは、植物種子や果実を原料に、酵母などの微生物によってアルコール発酵を行うことによって製造されたアルコール飲料を指す。醸造酒には、以下のものに限定されないが、例えば日本酒、ビール、ワイン、老酒、リンゴ酒などが含まれる。
【0035】
日本酒は、米に麹菌を加えて「もと」を作り、これに酵母を中心とする酒母と塩と水を添加しながら澱粉の糖化と糖のアルコールへの変換を並行させて進行させる並行複発酵によって製造される醸造酒を指す。調味とコスト削減のために、醸造用アルコールを添加する場合もある。
【0036】
ビールは、オオムギの麦芽、水、ホップを主原料にし、副材料にスターチや米などを加えて発酵した酒を指す。
ワインは、ブドウ果実を酵母によってアルコール発酵させた酒を指す。
【0037】
本発明における微生物とは、ワインにおけるワイン酵母、日本酒における麹菌や酵母、ビールにおけるビール酵母など、糖質をアルコールに変換する発酵を行う微生物を指し、例としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、サッカロミセス・ロウクシ(Saccharomyces rouxii)、 アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・カワチ(Aspergilluskawachii)、アスペルギルス・ウサミ(Aspergillus usamii)などを挙げることができる。
【0038】
本発明における原料植物とは、酵母、麹菌などの発酵微生物に糖質原料を提供してアルコール生成の原料となる植物を指す。原料植物には、以下のものに限定されず、例えばイネ、オオムギ、ブドウ、コムギ、トウモロコシ、リンゴ、ホップなどが含まれる。
【0039】
本発明における植物遺伝子由来のDNAとは、イネやブドウなどのDNAに特有で、麹菌や酵母のような微生物には含まれないDNAを指し、例としては、澱粉合成酵素、植物タンパク質に関連する遺伝子のDNAや、糖転移酵素のDNA、植物DNA中の反復配列、特にミコトンドリアや葉緑体のDNAにおける反復配列等を挙げることができる。
【0040】
以下に、本発明の醸造酒原料判別方法について詳細に説明する。
【0041】
本発明の醸造酒原料判別方法は、(A)醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型DNAを調製する工程、(B)植物遺伝子由来のプライマー共存下でPCRを行う工程、(C)増幅DNAの多型に基づいて原料植物の種類又は品種を判別する工程、を含む。
【0042】
以下、各工程について説明する。
(A)醸造酒からDNAを抽出・精製して鋳型DNAを調製する工程
(a)醸造酒の濃縮
日本酒、ビール、ワインなどの醸造酒は、その大部分が水であり、日本酒では約82~84%、ビールでは88~93%、ワインでは87~89%、紹興酒(老酒)では約79%が水であり、固形物含量はきわめて低い(5訂日本食品標準成分表、科学技術庁資源調査会、平成12年)。しかも、製造過程で麹菌や酵母菌のDNA分解酵素によって原料植物や種子中のDNAの大部分が分解されてしまうため、PCRにおけるプライマーが結合(アニーリング)するために必要な濃度の鋳型DNAを得るためには、DNAの変性や分解を起こさない条件下での濃縮工程が必要となる。
【0043】
そこで、醸造酒に僅かに残存する原料植物由来のDNAあるいはその断片を高濃度に得るために、醸造酒を乾燥、例えば、凍結乾燥、気流乾燥、噴霧乾燥のうちの何れかの方法を用いて粉末形態にする。
【0044】
凍結乾燥とは、凍結した試料溶液を、例えば約0.133Pa(0.1Torr)以下の高真空下で減圧し、水を昇華させることによって固体のまま乾燥させる方法である。例えばEyela製FD-1等の凍結乾燥機を使用できる。
【0045】
気流乾燥とは、気流粉砕とは、空気の高速流による圧力変動で試料を高周波振動させ、自己粉砕させる方法である。
【0046】
噴霧乾燥とは、試料溶液を高温気流中に噴霧することによって表面積を増大させ、短時間で乾固させる方法である。
【0047】
あるいは、醸造酒を冷風乾燥、冷風減圧乾燥、減圧遠心乾燥のうちの何れかの方法で濃縮して薄膜にしてもよい。
【0048】
冷風乾燥とは、試料を加熱することなく、常温の風を送ることで試料を蒸発乾固させる方法である。
【0049】
冷風減圧乾燥とは、冷風乾燥の際に、水流ポンプや真空ポンプを用いて減圧することによって試料の乾固を促進する方法である。
【0050】
減圧遠心乾燥とは、減圧乾燥において、試料を静置するのではなく、遠心分離機による遠心分離操作を加えることで試料の乾固を促進する方法である。
【0051】
これらの乾燥法によれば、試料醸造酒の品温を上昇させることなく水分を除去して粉末化又は薄膜化できるので、醸造酒に残存する極微量の鋳型DNAの品質を損なうことなく、かつ、加熱によるメラノイジン等の褐変物質の生成を抑制するので好適であり、しかも極めて高い濃縮効率で抽出することが可能になる。特に、凍結乾燥の場合には、凍結した醸造酒試料から、昇華によって水分を除去するため、濃縮粉末化工程におけるDNAの変性が起こらないので最も好適である。
【0052】
(b)酵素による処理
前記(a)で濃縮した醸造酒を、まず、デンプン分解酵素(アミラーゼ)で酵素処理する。酵素は、1種又は2種以上を組合わせて使用する。この処理によってデンプン成分を低分子化することができる。
【0053】
アミラーゼは、原核生物由来又は真核生物由来のいずれでもよく、例えばα-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ等が挙げられる。本発明においては、これらのいずれも使用することができるが、耐熱性アミラーゼが好ましく、至適温度が60℃以上のアミラーゼ、例えばバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)由来のα-アミラーゼが特に好ましい。これは、反応温度を高くでき、反応時間を短縮でき、反応収率を高めたり、他の酵素反応、例えば混在するDNA分解酵素を阻害し、DNA分解を抑制することができるからである。
【0054】
通常のアミラーゼを使用する場合、例えば、100~1000U/mgのアミラーゼを0.1~5mg/mlの水溶液にし、粉末状醸造酒に適切な緩衝液(例えば0.1Mトリス塩酸緩衝液)を加えた試料1容に対して、0.005~0.1容、好ましくは0.01~0.05容の割合で添加する。反応温度30~45℃で10分間以上、好ましくは30~120分間反応させて、デンプンを分解する。
【0055】
本発明の場合、醸造酒固形物に含まれる澱粉及び澱粉分解物の除去が、良質の鋳型DNAを調製する上で、きわめて重要である。従って、例えばバチルス・リケニホルミス由来のα-アミラーゼのような耐熱性α-アミラーゼの使用が好適であり、例えば、60~85℃で同様に反応させることができる。これによって混在DNA分解酵素の活性を阻害し、良質の鋳型DNAを調製することが可能となる。
【0056】
さらに、醸造酒固形物から良質の鋳型DNAを抽出・精製するためには、従来の米飯あるいは餅からの鋳型DNA抽出法(酵素法)を改良し、まず、耐熱性アミラーゼの使用濃度を、例えば餅加工品の場合の約3倍とすることが好ましい。これによって発酵過程を経た醸造酒固形物からでもDNAの抽出が改善される。反応温度は例えば60~85℃であるが、より好ましくは80℃が好適である。これにより、混在DNA分解酵素がより強く阻害されるとともに、アミラーゼによる澱粉分解が促進される。反応時間は15分間では不十分な場合があり、好ましくは30分間以上である。ただし、10時間以上反応を続けても、澱粉分解量はあまり増加せず、かえってDNAの加熱変性を促進することがある。
【0057】
次に、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で酵素処理する。酵素は、1種又は2種以上を組合わせて使用する。この処理によってタンパク質成分を低分子化することができる。
【0058】
プロテアーゼには、例えば細菌、酵母、真菌などの微生物由来のプロテアーゼ、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼなどの原核・真核生物由来のプロテアーゼが挙げられる。微生物由来のプロテアーゼの例は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)由来のズブチリシン、リゾムコール・プシルス(Rhizomucor pusillus)由来の凝乳酵素などである。植物由来のプロテアーゼの例は、パパイン、ブロメライン、フィシンである。動物由来のプロテアーゼの例は、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、キモシン、カテプシンである。本発明においては、これらのいずれも使用することができるが、界面活性剤存在下でも高い活性を有する、トリチラチウム・アルブム(Tritirachium album)由来のプロテアーゼ(商品名プロテアーゼK、ワーシントン・バイオケミカル社製)を使用することが好ましい。ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、アガロース、アクリルアミド等の存在下でも活性を発現する利点がある。プロテアーゼを反応させることにより、醸造酒試料中のDNA抽出を妨害するタンパク質を分解除去できる上に、タンパク質であるDNA分解酵素もプロテアーゼにより分解され、DNAの分解を防止することができる。
【0059】
プロテアーゼを使用する場合、例えば、10~1000U/mgのプロテアーゼを5~50mg/mlの水溶液にし、試料1容に対して、0.001~0.1容、好ましくは0.02~0.05容の割合で添加し、20~60℃で10分間以上、好ましくは30~120分間反応させて、タンパク質を分解する。タンパク質の可溶化や酵素作用の効率向上のため、SDS等の界面活性剤や、トリス塩酸緩衝液等のpH安定剤を併用してもよい。
【0060】
(c)DNAの抽出・精製
DNA抽出は、前記(b)酵素による処理に続くフェノール抽出法、フェノール・クロロフォルム抽出法、CTAB法等により行うことができる。例えば、前記アミラーゼとプロテアーゼで処理した試料を遠心分離した上清にエチルアルコール等を加え、遠心分離等の固-液分離を行い、分解産物を上清画分として除去し、DNAを沈殿画分として得る。沈殿画分をエチレンジアミン四酢酸(EDTA)存在下のトリス緩衝液で溶解し、フェノール又はフェノール・クロロフォルム・イソアミルアルコール混合溶液(PCI溶液)等の有機溶媒で処理することにより、タンパク質や脂質等の不純物を除去する。醸造酒を試料とする場合には、このフェノール処理やPCI処理を繰り返すことによって、混在物を徹底的に除くことが好ましい。
【0061】
醸造酒から鋳型DNAを抽出精製するに際し、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソアミルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルフォキシド、クロロフォルム及びフェノールからなる有機溶剤の群の1種類あるいは2種類以上の有機溶剤を用いて色素成分を除去することが好適である。この工程を加えることにより、PCRで重要な役割を果たすDNAポリメラーゼ等の酵素活性が色素成分によって阻害されることが激減し、植物の種類や品種を判別するための増幅DNAが多く得られることになる。
【0062】
酵素法に続いてCTAB法を用いる場合には、例えば、あらかじめ65℃に加温しておいた2×CTAB液(2%のCTAB 100mMトリス塩酸、pH8、1.4M NaCl、20mM EDTA)中に前記プロテアーゼ処理液を移し、例えば65℃で1時間インキュベーションの後、室温まで冷まし、クロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え、ローテーターで20分間混合する。次いで、10000rpmで10分間遠心分離を行った上層を新しいチューブに移し、クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え20分間混合する。次いで、10000rpmで10分間遠心分離を行った上層液を新しいチューブに移す。この液に、2-プロパノールを加え静かに混和した後、15000rpmで5分間遠心を行い、上澄みを取り除き、70%エタノールを加え、チューブ内壁を洗浄する。5分間遠心し、上澄みを取り除き、減圧乾燥を行う。乾燥の後、50μlのTEバッファーを加え、55℃の恒温槽につけ、完全にペレットを溶解させる。
【0063】
前記のように、酵素法に続いてフェノール法、CTAB法等を加えるという手法により、澱粉及びその分解物、タンパク質及びその分解物、脂質及びその分解物をほとんど含まない状態でDNAを精製することができる。
【0064】
(B)植物遺伝子由来プライマーによるPCR
前記(A)で得られた鋳型DNAを用い、PCRでDNAを増幅する。PCRとは、Polymerase Chain Reactionの略称であり、2本鎖のDNAを96℃程度の高温で変性させてそれぞれ1本の鎖に分離し(変性工程)、次いでプライマーを添加して該1本鎖DNAに結合させ(アニーリング工程)、次いでDNAポリメラーゼによって該1本鎖DNAを鋳型にして該結合部からDNAを伸長させ(伸長工程)、これらの変性、アニーリング、伸長の3工程をn回反復することにより、最初のDNAの分子数を、プライマーの結合部に挟まれた分子長の2個に増幅する反応を指す。PCRの反応条件は、例えば変性工程で約90~98℃、約15秒~5分、アニーリング工程で約36~65℃、約30秒~10分、伸長工程で約65~75℃、約30秒~10分を、約30~50回サイクル行えばよいが、標的DNAに応じて変更することができる。また、例えば、10~50ngの鋳型DNA、0.5~10ngのプライマー、0.5~5UのDNAポリメラーゼ、50~500μMのデオキシリボヌクレオチド3リン酸混合液(dNTP)、1~5μMの塩化マグネシウム及び10~50mMのトリス塩酸緩衝液(pH8)を使用する。DNA増幅装置としては市販品を使用することができ、例えばPC-700(アステック(株)社製)、サーマルサイクラーMP(宝酒造(株)製)、サーマルサイクラー ダイス(タカラバイオ(株)製)、GeneAmp PCR System 9700(AppliedBiosystems(株)製)等を使用することができる。
【0065】
ここで、PCRに使用するプライマーの調製について説明する。
プライマーとは、前記PCR反応で用いるDNA断片を指し、1本鎖DNAに、DNAを構成する塩基であるAはTと、GはCとのみ結合するという相補性の法則により、プライマー断片は、その塩基配列と相補性のある塩基配列部分にのみ結合し、そこからDNAの伸長が始まるため、PCRで増幅するDNAの分子の長さは、使用するプライマーと相補性のある部分で決定されることになり、増幅したDNAの分子長を電気泳動で比較することにより、プライマー結合部分の塩基配列の植物の種間又は品種間の異同を検出することができる。本発明で使用するプライマーは、種間又は品種間の識別性の現れる塩基配列を増幅させることができる一対の植物遺伝子由来のプライマーであり、前記醸造酒より得られるDNAからPCRを行って得られる、種間又は品種間に識別のある塩基配列を基に設計される。
【0066】
プライマーを得るためのPCRにおいては、任意のランダムプライマーを用いる。ランダムプライマーとは、醸造酒試料から抽出したDNAを鋳型DNAとしてPCR法で増幅する際に、変性して1本鎖に分かれたDNAに相補的に結合して2本鎖構造を形成し、鋳型DNA複製の開始点となるプライマーを指す。通常は10~20量体のヌクレオチドであり、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)及びシトシン(C)を無作為の配列に結合させた合成プライマーのことである。本発明において、ランダムプライマーとしては、通常用いられているものを選択すればよく、例えばオペロン社から市販されている10量体ランダムプライマーや、和光純薬社から市販されているDNAオリゴマーセット(12量体)等を挙げることができる。
【0067】
続いて、PCRで得られた増幅DNAの電気泳動を行う。これは、増幅産物のうち、目的とするプライマーを設計するための基となる、種間又は品種間の識別性の現れる塩基配列であることを示すバンドを検出するためである。ここで、電気泳動とは、PCR法によって増幅されたDNAが、アガロースゲルやポリアクリルアミドゲルの中を直流電荷に引かれて移動する際に、DNAの分子量の差によって分離され、これを臭化エチジウムで染色し、紫外線照射等を行うことによりバンドパターンとして増幅DNAの相違を検出する操作をいう。
【0068】
このようにして検出された品種間の識別性の現れたバンドから、次のようにして一対のプライマーを作製する。すなわち、当該識別性の現れたバンドを前記ゲルから切り出してDNAを抽出して回収し、これを大腸菌に組み込んで増殖させる。次いで、アルカリミニプレップ法等でプラスミドを抽出し、これを鋳型DNAとしてPCR法で増殖し、DNA自動シークエンサーにより塩基配列を決定する。
【0069】
決定された塩基配列から、プライマーの設計を行う。先のランダムプライマーによるPCR法において、鋳型である醸造酒試料由来のDNAのうちランダムプライマーが結合した部位は、当該ランダムプライマーと同一あるいは相補的な(相同な)配列を有している筈である。つまり、この鋳型DNAから切り出して抽出した種間又は品種識別性の高いDNA塩基配列(これがPCRにおけるプライマーの母体となる)は、両端にランダムプライマーと同一あるいは相同な配列を有していることになる。したがって、この識別性の高いDNA塩基配列のフォワード側及びリバース側のそれぞれから、適当な配列と長さを有する、醸造酒試料中の原料植物の種類又は品種判定に有用なプライマーを設計することができる。
【0070】
あるいは、プライマー配列は次のように決定することもできる。例えばイネ、オオムギ、ブドウ、トウモロコシ、ダイズなどの植物、好ましくは植物種子の遺伝子に関するDNAマイクロアレイを作製又は入手し、醸造酒からの標識DNAサンプルとアレイ上の公知の遺伝子とのハイブリダイゼーションによって、特定の遺伝子をスクリーニングする。GenBankなどの配列データベースから該遺伝子の塩基配列を入手し、この配列に基づいてプライマー配列を決定する。また同一植物の種間又は品種間の識別可能な配列を決定するために、前記のようにスクリーニングされた遺伝子の塩基配列について、配列データベースから入手した植物の種類又は品種ごとの該配列のアラインメントを作製し、差異のある配列部分を選び、これに基づいてプライマー配列を決定してもよい。
【0071】
前記のようにランダムプライマーを用いてプライマーの設計を行う場合、又はDNAマイクロアレイ、配列データベースを用いてプライマーの設計を行う場合、醸造酒に含まれる微生物(麹菌、酵母など)の遺伝子と相補的にならないように設計する。あるいは設計後、微生物の遺伝子と相補的でないことをPCR等で確認する。
【0072】
また、本発明においては、植物由来の反復配列、例えば縦列反復配列(VNTR, variable number of tandem repeat)又はマイクロサテライト由来のプライマーを用いてもよく、例えば、反復配列を含むゲノム構造を持つミトコンドリアや葉緑体のDNA由来のプライマーを使用してもよい。
【0073】
ミトコンドリアDNAは、核DNAと異なり、輪状の構造であり、細胞当たりのDNA数も多く、塩基置換速度が核DNAより速く、母性遺伝という核DNAとは異なる遺伝様式をとる。従って、ヒトミトコンドリアDNAの制御領域(Dループ)における配列多型解析は、人類進化の研究や法医学的な個人識別の有力な手段となっている。
【0074】
本発明で用いられるミトコンドリア遺伝子の例として、例えば、ミトコンドリアチトクローム遺伝子、ミトコンドリアタンパク質合成遺伝子、ミトコンドリアヒートショックタンパク質遺伝子、ミトコンドリア転写因子、ミトコンドリアリボソーマルタンパク質遺伝子、ミトコンドリアDループ配列、ミトコンドリア分子シャペロン遺伝子、アポトーシス誘導因子、FZOタンパク質遺伝子及びミトコンドリア反復配列が挙げられる。
【0075】
葉緑体DNAは、植物特有の光合成器官である葉緑体に含まれるDNAであり、これを用いることによって、醸造酒に含まれる酵母由来のDNAや麹菌由来のDNAの共存による識別阻害を排除しながら、醸造酒原料植物の判別を行うことが可能となる。
本発明で用いられる葉緑体DNAの例として、葉緑体に含まれる反復配列等が挙げられる。
【0076】
反復配列とは、DNAにおいて構成塩基であるA、T、G、Cの一定の配列が繰り返し出現する部分を指し、これらの反復配列がDNA中に散在している場合と一カ所に集中している場合があり、後者のうち、一カ所で縦につながっている反復配列は縦列反復配列(VNTR)と呼ばれ、その反復数に個人差があるために個人識別に利用されてきた。
【0077】
マイクロサテライトとは、縦列反復配列のうちの1つに分類され、2~5塩基対の反復単位が数個から数十個反復した配列であり、多型マーカーとしても利用されている。本発明においては、縦列反復配列及びマイクロサテライトを特に区別しない。
【0078】
本発明においては、前述の反復配列のうちから、原料植物に特有の反復配列を選抜してPCR用プライマーとして使用することにより、麹菌や酵母に由来するDNAによる識別妨害を排除して原料植物の識別を行うことができ、例としては、イネにおけるミトコンドリア反復配列、オオムギやブドウにおけるマイクロサテライト反復配列などを挙げることができる。
【0079】
縦列反復配列及びマイクロサテライト由来のプライマーは前記方法と同様にして調製できる。
更に、本発明では、一塩基多型(SNP, single nucleotide polymorphism)検出プライマーを使用してもよい。
SNPとは、DNAの塩基配列における1塩基の置換による相違を指し、個人の耐病性やアルコール代謝特性等の原因となる場合がある。
【0080】
植物遺伝子におけるSNPはきわめて出現頻度が高く、これに基づく個体識別はきわめて有望とされており、前述の植物遺伝子中のSNPに着目することにより、麹菌や酵母に由来するDNAとは区別しながら醸造酒の識別を行うことが可能になる。また、SNPは近縁品種間にも存在するので、効率よく正確に品種判別でき、例としては、グルテリン遺伝子等のSNPを挙げることができる。
【0081】
本発明においては、例えば、原料植物に存在するSNPの部位を含むようにプライマーを設計して、前記方法と同様にして調製すればよい。試験対象の品種がそのSNPを有していれば、PCRによりDNAが増幅される。
【0082】
本発明におけるプライマーは、完全に又はほとんど相補的な配列を有していることが望ましい。また、プライマーのサイズは、好ましくは10~50塩基、より好ましくは15~30塩基の範囲内である。プライマーを選定することにより、PCR法においては、品種識別に有用な識別バンドとなる塩基配列部分のみに選択的に結合することになる。
【0083】
本発明者らは、前記PCRを行った結果、植物の種間又は品種間に識別性の現れる数種のバンドを得、これらのバンドに由来する種々のプライマーを得た。
【0084】
醸造酒が日本酒である場合に使用するプライマーの例として、A6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、Mitol(配列番号75及び76)、Chlo1(配列番号77及び78)、GluSNP(配列番号79及び80)、BARGBSS(配列番号83及び84)、Ipoamy(配列番号87及び88)、Sugacss(配列番号89及び90)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)及びSBE(配列番号100及び101)が挙げられる。
【0085】
前記醸造酒がビールである場合に使用するプライマーの例として、A6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、BARGBSS(配列番号83及び84)、MAIZGBSS(配列番号85及び86)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)及びダイズタンパク質グリシニン由来のプライマー(配列番号106及び107)が挙げられる。
【0086】
前記醸造酒がワインである場合に使用するプライマーの例として、A6(配列番号1及び2)、A7(配列番号3及び4)、A65(配列番号5及び6)、B1(配列番号7及び8)、G28(配列番号9及び10)、B43(配列番号11及び12)、E30(配列番号13及び14)、F6(配列番号15及び16)、F30(配列番号17及び18)、G4(配列番号19及び20)、J6(配列番号21及び22)、BL3(配列番号23及び24)、M11(配列番号25及び26)、Zein(配列番号27及び28)、P5(配列番号29及び30)、S13(配列番号31及び32)、M2CG(配列番号33及び34)、T16(配列番号35及び36)、WK9(配列番号37及び38)、P3(配列番号39及び40)、SS1(配列番号41及び42)、SS2(配列番号43及び44)、SS2-2(配列番号45及び46)、GBSS(配列番号47及び48)、DB(配列番号49及び50)、Pro10(配列番号51及び52)、Pro13(配列番号53及び54)、Glu(配列番号55及び56)、Mochi(配列番号57及び58)、BL3-3(配列番号59及び60)、BL1(配列番号61及び62)、BL2(配列番号63及び64)、BL4(配列番号65及び66)、BL4-2(配列番号67及び68)、BL65(配列番号69及び70)、BL81(配列番号71及び72)、BL6(配列番号73及び74)、VITGT(配列番号81及び82)、B7(配列番号91及び92)、G22(配列番号93及び94)、SBE(配列番号100及び101)、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子由来のプライマー(配列番号102及び103)及びブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来プライマー(配列番号104及び105)が挙げられる。
【0087】
例えば、イネ由来のA6等、オオムギ由来のBARGBSS、トウモロコシ由来のMAIZGBSS等、ブドウ由来のVITGT、ダイズのグリシニン由来のプライマーを用いれば、それぞれ、イネ、オオムギ、トウモロコシ、ブドウ、ダイズを原料に含んでいるかどうかが判別できる。
【0088】
なお、前記例示のプライマーにおいて、配列番号1~94までは、奇数の配列番号がフォワードプライマー、偶数の配列番号がリバースプライマーであり、配列番号100からは、偶数がフォワードプライマー、奇数がリバースプライマーである。
【0089】
前記プライマーから適切な物を選定し、PCR法に使用する。プライマーは1つだけ使用してもよいが、2つ以上同時に使用することもでき(マルチプレックスPCR法)、PCR及び電気泳動の回数を減少でき、簡易迅速、かつ高精度に、原料植物又は品種を判別することができる。なお、前記PCR用プライマーは市販されているものもある(タカラバイオ社、和光純薬社、オペロン社、エスペックオリゴサービス社など)。
【0090】
マルチプレックスPCR法を効率よく進めるためには、使用するプライマーそれぞれの融解温度及び該融解温度を考慮したPCRのアニーリング温度の調整が必要である。ここで、融解温度(Tm)とは、DNAの2本鎖がそれぞれの1本鎖に分離して、2本鎖と1本鎖が1:1の割合で存在する温度をいう。一般に、PCRのアニーリング温度は、通常、使用するプライマーのTm付近が適している。本発明においては、プライマーの併用に際し、Tmの類似したプライマー同士を選択して混合し、かつTmに近い適正なアニーリング温度を選定することにより、各プライマーを単独で使用した場合に得られる識別バンドを1回あるいは少数回のPCRで得ることができる。
【0091】
具体的には、使用するプライマーのTmの平均値と、各プライマーのTmとの差が15℃以内で、かつPCRのアニーリング温度もその範囲とすることが好ましい。アニーリング温度が36℃よりも低い温度でPCRを行うと、本来識別バンドが現れない品種にも識別バンドが現れて識別が困難となる恐れがあるため、好ましくない。一方、80℃よりも高い温度で伸長工程を行うと、本来出現すべき識別バンドが出現しなくなるので、不適当である。
【0092】
(C)増幅DNAの多型に基づく原料植物の種類又は品種の判別
多型性とは、同一種内の正常な個体間に形質や形態について多様性が存在することをいう。本発明では、増幅DNAの多型に基づく原料品種又は原料植物品種の判別は、電気泳動で検出されるPCR増幅DNAの分子量を比較することにより行う。前述したプライマーを用いてPCRで増幅したDNAを電気泳動すると、DNAはその分子量に応じて泳動されバンドを形成するので、その分子量又はバンド形成位置で比較して、植物の種間又は品種間の異同を特定する。複数のプライマーを用いて複数のバンドを形成させると、植物の種類又は品種によって異なるバンドパターンが観察される。
【0093】
増幅DNAの多型の具体的な解析方法としては、アガロースゲル電気泳動法やアクリルアミドゲル電気泳動法等の常法が挙げられる。すなわち、PCR終了後に、アガロースゲル電気泳動法やアクリルアミドゲル電気泳動法等を用いて分子量分布による分離を行い、泳動終了後にゲルを臭化エチジウム染色する。その後、染色したゲルに紫外線を照射し、それによって現れる各DNAバンドパターン(泳動像)を写真撮影する。次に、該泳動写真に示される各試料のバンドパターンを、予め品種の判明している試料のバンドパターンとの異同を比較することにより、原料米がどの品種であるかを判別することができる。また、ある植物が醸造酒に原料として使われているか否かは、その原料植物由来のプライマーにより増幅されたDNAのバンドの有無で判別できる。更に、最近使用されるようになってきた定量PCRのように、PCRと同時並行して、蛍光プライマーや蛍光色素と結合したモノマーを蛍光検出器によって定量、比較することによって、植物の種類又は品種の判別をすることも可能である。
【0094】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の範囲は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0095】
(市販吟醸酒及び酒造好適米のPCRによる比較)
酒造好適米である山田錦、八反、兵庫夢錦、雄町の籾試料をケット科学研究所製の試験用籾摺り器で籾摺りし、ケット科学研究所製の試験用精米機(パーレスト)を用いて精米歩留まり90%の精米試料を得た。この精米試料をイワタニ製のミルサー(IFM-100)を用いて粉砕し、粉末試料とした。精米粉末試料0.4gを2×CTAB0.6mLに滅菌水0.2mLを加えた水溶液により、65℃で30分間抽出し、同液に等量のクロロフォルム-イソアミルアルコールを加えローテーターで15分間精製した。ついで遠心して得られた上清に、同量のクロロフォルム-イソアミルアルコールと10%CTAB液を加え再び精製し、遠心後の上清に約2.5倍容の沈殿用緩衝液を加え-80℃で5分間冷却し、沈殿を生成させた。遠心で沈殿を回収し、1M NaClを含むTEに溶解し、等量のイソプロピルアルコールを添加した。転倒混和した後、遠心し沈殿をTEに溶解して55℃で30分間RNase処理を行った。これに等量の中性フェノールを加え精製し、遠心後得た上清に0.2MのNaClと2.5倍容の冷エタノールを加えてDNAを沈殿させ、70%エタノールで洗浄後TEに溶解し鋳型DNAとした。
【0096】
日本酒(市販の純米吟醸酒、精米歩合55%)25mlをアイラ製FD-1を用いて凍結乾燥した粉末の0.2gに、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を300μL加え、Bacilluslichenformis由来の耐熱性α-アミラーゼ(シグマ製、790U/mg固体、1mg/ml)を100μL加え、80℃で1時間反応させ、澱粉を分解した。次いで、プロテアーゼK(Tritirachiumalbum由来、ワーシントン・バイオケミカル社製20mg/mL)100μLに10%SDS 30μLを加え、55℃で1時間反応させ、タンパク質を分解した。これを遠心分離した上清に冷却エチルアルコールを加え、氷上で15分間沈殿を形成させた。これを遠心分離した沈殿を300μLのTE(EDTAを含むトリス塩酸緩衝液)に溶解し、RNAse処理の後、等量のフェノールで3回、タンパク質の分離除去を繰り返した後、クロロフォルム/イソアミルアルコールで精製し、エチルアルコールで沈殿させて鋳型用精製DNAを調製した。日本酒からの鋳型DNAの調製方法を図1に示す。
【0097】
前記のようにして精米及び酒から調製した鋳型DNAを用いてPCR法によるDNAの増幅を行った。すなわち、滅菌水10.8μL、Taq Polymerase(5U/μL)0.2μL、反応用緩衝液2.0μL、25mMのMgCl2.0μL、鋳型DNA(400ng/μL)1μL、dNTPs 2μLを混合して調製し、プライマーセット(配列番号37及び38のプライマーWK9、配列番号11及び12のプライマーB43、配列番号25及び26のプライマーM11、配列番号93及び94のプライマーG22、タカラバイオ製、5pmol/μL)2μLを加えて液量を20μLとし、PCRを行った。PCR条件は、変性を96℃で1分間、アニーリングを62℃で1分間、伸長を72℃で2分間行い、これを40回反復した。
【0098】
PCR及び電気泳動を行った結果を図2に示す。
図2に示すように、酒造好適米及び酒から本発明の方法によって抽出精製したDNAを鋳型として行ったPCRで増幅DNAの多型が現れ、試験に用いた市販吟醸酒の原料米には、八反や雄町ではなく、山田錦か兵庫夢錦が使用されていることが明らかになった。
【0099】
なお、比較のために、本発明の方法ではなく、市販のDNA簡易抽出キット(タカラバイオ製、DNA抽出キット、製品コード9098)を用いて抽出・精製したDNAの場合は、原料米の方は図2と同じ結果が得られたが、日本酒からの方は増幅DNAバンドを得ることができず、原料米と比較することが不可能であった。
【実施例2】
【0100】
(前処理)
醸造酒5gを加熱乾燥(アドバンテック製加熱乾燥機FC-610により、135℃で3時間乾燥)、冷風乾燥(前記加熱乾燥機により20℃で48時間)、冷風減圧乾燥(アイラ製ロータリーエバポレーターを使用し、窒素気流を吹き込みながら水流ポンプで減圧乾燥)、減圧遠心乾燥(アイラ製遠心エバポレーターCVE200Dを用いて30℃で24時間減圧乾燥)の4種類の乾燥方法により濃縮乾燥して薄膜にした。乾燥した薄膜0.2gに、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を300μL加え、Bacilluslichenformis 由来の耐熱性α-アミラーゼ(シグマ製、790U/mg固体、1mg/ml)を100μL加え、80℃で1時間反応させ、澱粉を分解した。次いで、プロテアーゼK(Tritirachiumalbum由来、ワーシントン・バイオケミカル社製20mg/mL)100μLに10%SDS 30μLを加え、55℃で1時間反応させ、タンパク質を分解した。これを遠心分離した上清に冷却エチルアルコールを加え、氷上で15分間沈殿を形成させた。これを遠心分離した沈殿を300μLのTE(EDTAを含むトリス塩酸緩衝液)に溶解し、RNAse処理の後、等量のフェノールで3回、タンパク質の分離除去を繰り返した後、クロロフォルム/イソアミルアルコールで精製し、エチルアルコールで沈殿させて鋳型用精製DNAを調製した。これらの鋳型DNA1μLを試料とし、実施例1と同様にしてPCRを行った。その結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
JP0004953058B2_000002t.gif

【実施例3】
【0102】
醸造酒5gを加熱乾燥(アドバンテック製加熱乾燥機FC-610により、105℃で18時間乾燥)後に粉砕、凍結乾燥、噴霧乾燥からなる乾燥方法の3種類の方法で粉末にする工程を用い、得られた0.2gに、0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH 8.0)を300μL加え、Bacilluslichenformis 由来の耐熱性α-アミラーゼ(シグマ製、790U/mg固体、1mg/ml)を100μL加え、80℃で1時間反応させ、澱粉を分解した。次いで、プロテアーゼK(Tritirachiumalbum由来、ワーシントン・バイオケミカル社製20mg/mL)100μLに10%SDS 30μLを加え、55℃で1時間反応させ、タンパク質を分解した。これを遠心分離した上清に冷却エチルアルコールを加え、氷上で15分間沈殿を形成させた。これを遠心分離した沈殿を300μLのTE(EDTAを含むトリス塩酸緩衝液)に溶解し、RNAse処理の後、等量のフェノールで3回、タンパク質の分離除去を繰り返した後、クロロフォルム/イソアミルアルコールで精製し、エチルアルコールで沈殿させて鋳型用精製DNAを調製した。これらの鋳型DNA1μLを試料とし、実施例1と同様にしてPCRを行った。その結果を表2に示す。加熱乾燥では試料が褐変化し、PCR後にも増幅DNAは出現しなかった。一方、凍結乾燥、噴霧乾燥の場合は、PCR後に増幅DNAが出現した。特に、凍結乾燥の場合には、凍結した醸造酒試料から、昇華によって水分を除去するため、濃縮粉末化工程におけるDNAの変性が起こらないので最も好適な結果が得られた。
【0103】
【表2】
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【0104】
実施例2及び実施例3の4種類の鋳型DNA(加熱乾燥、遠心減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥)を用いてプライマーA65(配列番号5、6)共存下で、実施例1と同様にしてPCRを行った。アニーリング温度は42℃とした。PCR後の電気泳動結果を図3に示す。図3から明らかなように、加熱乾燥の場合は増幅DNAが全く出現しなかった。他の3種類の調製方法の場合にはPCRによる増幅DNAの出現が見られた。
【実施例4】
【0105】
(好適プライマーの探索)
酒造好適米である山田錦、五百万石、八反、兵庫夢錦、雄町の原料米(籾)を試料とし、実施例1と同じ方法でDNAを抽出・精製して鋳型DNAとし、米品種判別用の各種のプライマーを共存させてPCRを行った。その結果を図4に示す。図4に示すように、米品種判別用のプライマーであるS13(配列番号31及び32)及びF30(配列番号17及び18)をプライマーとして用いた場合に酒造好適米同士を識別することが可能であった。
【実施例5】
【0106】
(好適プライマーの探索)
酒造好適米である山田錦、八反、兵庫夢錦、雄町の原料米(籾)を試料とし、実施例1と同じ方法でDNAを抽出・精製して鋳型DNAとし、米品種判別用のプライマーを共存させてPCRを行った。その結果を図5に示す。
【0107】
図5に示すように、稲のいもち病抵抗性遺伝子関連プライマーであるBL3(配列番号23及び24)及びA65(配列番号5及び6)をプライマーとして用いた場合に酒造好適米同士を識別することが可能であった。一方、酵母から抽出した鋳型DNAの場合は、これらのプライマーによる増幅DNAが出現しなかった。
【実施例6】
【0108】
(酒造好適米の相互識別)
酒造好適米である山田錦、五百万石、雄町、兵庫夢錦、八反の原料米(籾)を試料とし、実施例1と同じ方法でDNAを抽出・精製して鋳型DNAとし、米品種判別用のプライマー(配列番号37及び38のプライマーWK9、配列番号11及び12のプライマーB43、配列番号25及び26のプライマーM11、配列番号93及び94のプライマーG22、配列番号31及び32のS13、配列番号5及び6のA65)を共存させてPCRを行った。その結果を図6及び表3に示す。
【0109】
【表3】
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【0110】
表3に示すように、6種類の増幅DNAバンドの有無により、酒造好適米の相互識別が可能になった。
【実施例7】
【0111】
(酒を試料とする原料米の識別例)
渡船、山田錦、五百万石を原料米とする日本酒を試料とし、実施例1と同じ方法で鋳型DNAの抽出・精製及びPCRを行った。プライマーは、配列番号37及び38のプライマーWK9、配列番号11及び12のプライマーB43、配列番号25及び26のプライマーM11、配列番号93及び94のプライマーG22を用いた。酒造好適米である渡船で製造した酒から鋳型DNAを抽出精製するに際し、2種類の方法を用いた。すなわち、(1)は特許第3048149号の方法であり、すなわち、凍結乾燥粉末20mgをマイクロチューブにとり、トリス塩酸緩衝液(100mM、pH8.0、100mMNaCl)300μLを加え、次いで、実施例1と同じ耐熱性アミラーゼを5μL添加し、60℃で1時間反応させた後、Tritirachiumalbum由来のプロテアーゼKを5μL添加し、37℃で2時間反応させた後、-20℃のエチルアルコール1mLを添加し、-20℃で15分間静置した後、遠心分離して得た沈殿を300μLのTE溶液に溶解し、フェノール400μLを加え、回転攪拌機で30分間DNAを抽出し、遠心分離して上清を採取し、等量のPCIを加え、30分間抽出し、遠心分離上清に5MNaClを6mL添加し、次いで冷却エチルアルコール400μLを加え、遠心分離した沈殿を70%エチルアルコールで2回洗浄し、最後の沈殿を40μLの10倍希釈TE溶液に溶解して鋳型DNAとし、(2)の方法は、実施例1で説明した本発明例の方法である。その結果を図7に示す。
【0112】
図7に示すように、渡船を原料米に用いた場合にG22による増幅DNAバンドが出現し、山田錦及び五百万石では出現しないことから、渡船を原料とする日本酒と山田錦あるいは五百万石を原料とする日本酒との識別が可能になった。また、レーン1に示す渡船は、特許第3048149号の方法で抽出精製したDNAを鋳型に用いた例であり、この場合は増幅DNAバンドが全く出現しなかった。
【実施例8】
【0113】
(酒を試料とする原料米の識別例)
五百万石、山田錦、雄町を原料とする酒を試料とし、実施例1で示す方法で鋳型DNAの抽出・精製及びPCRを行った。プライマーは、配列番号11及び12のB43を用いた。その結果を図8に示す。
【0114】
図8に示すように、五百万石を原料米に用いた場合に低分子の特有の増幅DNAバンドが出現し、山田錦及び雄町では出現しなかった。また、B43による増幅DNAバンドは五百万石と山田錦にのみ出現し、雄町では出現しないことから、五百万石を原料とする日本酒と山田錦及び雄町を原料とする日本酒との相互識別が可能になった。
【実施例9】
【0115】
(原料米及び酒を試料とする識別例)
山田錦、五百万石、雄町及びコシヒカリの原料米及び酒を試料とし、実施例1と同じ方法で米及び酒から鋳型DNAを抽出し、PCRを行った。その結果を図9に示す。
【0116】
図9に示すように、山田錦、五百万石、雄町及びコシヒカリの酒から得られるB43による増幅バンドはそれぞれ異なっており、相互に識別することが可能であった。また増幅したDNAバンドは、それぞれの原料米の増幅DNAバンドに含まれていた。
【実施例10】
【0117】
(ビールにおけるトウモロコシ使用の有無の判別)
市販のビール2種(サッポロ黒ラベル(商標)及びサッポロエビスビール(商標))を凍結乾燥し、図1と同様の方法でPCRの鋳型DNAを調製し、トウモロコシの主要タンパク質であるゼイン(Zein)の遺伝子由来のプライマー(配列番号27及び28)共存下でPCRを行い、電気泳動によって、増幅DNAの比較を行った。その結果を図10に示す。
【0118】
図10に示すように、黒ラベルではゼイン由来のDNAの増幅が認められたが、エビスビールでは認められなかった。これはそれぞれのビールの原料表示と一致する結果であった。
【実施例11】
【0119】
(ビールにおけるトウモロコシ使用の有無の判別)
市販のキリン発泡酒及びビール(キリン一番絞り(商標))、トウモロコシ(スイートコーン)を試料とし、実施例8と同様にDNAを抽出し、トウモロコシの澱粉粒結合型澱粉合成酵素(GBSS)由来のプライマー(配列番号85及び86)共存下でPCRを行い、電気泳動によって増幅DNAの比較を行った。その結果を図11に示す。
【0120】
図11に示すように、キリン一番絞りではトウモロコシGBSS由来の増幅DNAが認められ、原料にトウモロコシを加えていることが確かめられた。これは表示と一致していた。
【実施例12】
【0121】
(ワインの原料品種判別)
ブドウの種子2種類(グロスコールマン、レッドグローブ)から実施例1と同じ方法でDNAを抽出して鋳型とした。これらの鋳型DNAにヴィティスグルコシルトランスフェラーゼ(Vitis Glucosyltransferase)遺伝子由来のプライマー(VITGT、配列番号81、82)を共存させてPCRを行い、電気泳動によって増幅DNAの比較を行った結果を図12に示す。
【0122】
図12に示すように、ブドウ品種グロスコールマンとレッドグローブの品種をVitis Glucosyltransferase遺伝子由来のプライマーによるPCRで識別出来ることが示された。
【実施例13】
【0123】
(ミトコンドリアDNA由来プライマーによる微生物DNAと米との判別)
麹菌(Aspergillus oryzae)、酵母(Saccharomyces cerevisiae)及び酒米(雄町)を試料とし、実施例1と同様にして鋳型DNAを調製した。PCR条件は、鋳型DNAを20ng使用し、アニーリング温度を38℃とし、配列番号75及び76に示すミトコンドリアDNA反復配列(SSR)由来のプライマー(Mitol)を各0.8μl使用した以外は実施例1と同じ装置、方法で行った。結果を図13に示す。
【0124】
図13に示されるように、麹菌では増幅DNAバンドが全く出現しなかった。酒米の場合は300bp付近の低分子領域に明瞭な増幅DNAが出現した。酵母では米とは全く異なる1kbp付近の高分子領域に増幅バンドが出現した。このことから、ミトコンドリアDNAの反復配列由来のプライマーは、醸造酒の発酵用微生物由来のDNAとは区別して原料植物の種類を判別するためのPCR用プライマーとしてきわめて有用であることが示された。
【実施例14】
【0125】
(ミトコンドリアDNAプライマーによる酒の判別例)
3種類の酒(B:五百万石、AとCは酒米品種名が非表示)を試料とし、実施例1と同様にして鋳型DNAを調製した。PCR条件は、鋳型DNAを20ng使用し、アニーリング温度を38℃とし、配列番号75及び76に示すミトコンドリアDNA反復配列(SSR)由来のプライマー(Mito1)を各0.8μl使用した以外は実施例1と同じ装置、方法で行った。結果を図14に示す。
【0126】
図14に示されるように、酒米AとCの酒から調製した鋳型DNAの場合は増幅DNAバンドが全く出現しなかった。酒米B(五百万石)の場合は300bp付近の低分子領域に明瞭な増幅DNAが出現した。このことから、ミトコンドリアDNAの反復配列由来のプライマーは、醸造酒の原料米の種類を判別するためのPCR用プライマーとしてきわめて有用であることが示された。
【実施例15】
【0127】
(葉緑体DNA由来の反復配列プライマーによる実施例)
3種類の酒(雄町、五百万石、山田錦)及び麹菌(Aspergillus oryzae)を試料とし、実施例1と同様にして鋳型DNAを調製した。PCR条件は、鋳型DNAを20ng使用し、アニーリング温度を38℃とし、配列番号77及び78に示す葉緑体DNA反復配列(SSR)由来のプライマー(Chlo1)を各0.8μl使用した以外は実施例1と同じ装置、方法で行った。結果を図15に示す。
【0128】
図15に示されるように、酒米から調製した鋳型DNAの場合は増幅DNAバンドが400bp付近の低分子領域に明瞭に出現した。一方、麹菌から調製した鋳型DNAの場合には、増幅DNAバンドが全く出現しなかった。このことから、葉緑体DNAの反復配列由来のプライマーは、醸造酒中に残存する麹菌の鋳型DNAの影響を受けずに醸造酒原料米を判別するためのPCR用プライマーとしてきわめて有用であることが示された。
【実施例16】
【0129】
(SNPによるプライマー開発の実施例)
Washidaらの報告(H.Washida, C.-Y. Wu,A. Suzuki,U. Yamanouchi,T.Akihara, K. Harada and F.Takaiwa:Plant Molecular Biology, 40巻, 1-12,1999)しているグルテリン遺伝子の調節遺伝子内M7(tgcaaagt)から構造遺伝子620bpまでを一次プライマーとし、9種類の試料米のDNAを鋳型とするPCRを行い、増幅したDNAをクローニングして塩基配列を決定した。その配列を図16に示す(図16では、61~180及び241~300の塩基配列を省略)(配列番号95:LGC-1、配列番号96:IR2061、配列番号97:カサラス、配列番号98:WITA 7、夢十色)。図16に示す塩基配列から試料米の差異を示す一塩基置換(SNP)を見出した。すなわち、朝の光やコシヒカリではAGTTTTである塩基配列が、IR2061や夢十色ではTGTTTTとなっていた。このSNPに基づいて、配列番号79及び80のプライマーを設計した。
【実施例17】
【0130】
(SNPプライマーによる識別の実施例)
世界の各地の試料米から、実施例1で述べた方法により、鋳型DNAを抽出精製し、実施例14で設計したSNPプライマー(配列番号79及び80に示すグルテリンSNP(GluSNP))共存下でPCRを行った。PCRに用いた装置及び条件は実施例1と同様であり、鋳型DNA使用量は1μl(濃度400ng/μl)とし、プライマー使用量はフォワード(配列番号79)、リバース(配列番号80)ともに0.6μl(濃度5 pmol/μl)とし、アニーリング温度は50℃とした。PCR後の電気泳動結果を図17に示す。図17から明らかなように、一塩基多型(SNP)に基づいて試料米の品種判別が可能であり、醸造酒の原料米の品種判別用プライマーとしての有用性が示された。
【実施例18】
【0131】
(微生物と識別性のある植物DNA特有のプライマー開発の実施例)
酵母、糸状菌からのクロモソーマルDNAの抽出を以下のようにして行った。(1)糸状菌の培地として、酵母エキス(Difco) 5g/l、トリプトン 10g/l、NaCl 5g/l (pH 6.0)、(2)酵母用の培地として、酵母エキス5g/l、トリプトン5g/l、シュークロース 5g/l、(pH7.0)をそれぞれ調製し、綿栓つき試験管に10mlずつ分注し、オートクレーブで滅菌した。
【0132】
菌株は、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所の微生物バンクから取得し、Aspergillus oryzae (NFRI 1130)を30℃で40時間培養、Saccharomycescerevisiae (NFRI 3069)を30℃で22時間培養した。これらの培養液約9mlを遠心(微量遠心チューブ 8,000 rpm 10分)し、菌体を回収した。
【0133】
これらの菌体に、Isoplant(nippon gene) solutionI 1.8ml を加え、ボルテックスし、solutionII (Lysisbuffer) 0.9 ml を加えてボルテックスした後、50℃で15分間加熱し、3M酢酸ナトリウム0.9mlを加え、氷上で15分間静置した。次いで、8,000rpm で10分間遠心し、水層を回収した。これを微量遠心チューブに移し12,000rpmで10分間遠心し、上清を回収した。この上清0.3mlにエタノール0.6mlを加え、-20℃に一晩置き、翌日、12000rpm で15分間遠心し、得られた沈殿を70%エタノールで洗浄したのち、0.45mlのTEbuffer に溶解し、3M酢酸ナトリウムを50ul加え、イソプロパノール0.8mlを加え、-20℃で1時間静置した。次いで、12,000rpmで15分間遠心し、沈殿を70%エタノールで1回洗浄し、得られたDNAの沈殿を0.2mlのTEbuffer に溶解し、鋳型DNAとした。
【0134】
実施例1と同様の方法で酒米(山田錦、五百万石、雄町)からも鋳型DNAを調製した。これらの鋳型DNAを用い、各種のランダムプライマー共存下で、タカラバイオ製サーマルサイクラーダイスを用いてPCRを行った。アニーリング温度は36℃とした。その電気泳動の結果を図18に示す。
【0135】
図18に示すように、A65、BL4-2、B7、A7、BL81、G22、B43、G4の各プライマーの場合に、麹菌や酵母とは異なる増幅DNAが得られ、これらのDNAをゲルから切り出してクローニングすることにより、植物特有のSTSプライマーを設計することが可能になった。これらのプライマーの配列を配列番号5及び6、配列番号67及び68、配列番号91及び92、配列番号3及び4、配列番号71及び72、配列番号93及び94、配列番号11及び12、配列番号19及び20に示す。
【実施例19】
【0136】
(赤ワインからの鋳型DNA調製とそれを用いたPCRの実施例)
市販の赤ワイン(明治屋輸入の平成17年産ボージョレヌーボー、JJM ボージョレーVオスピスリヨン、Domaine des HospicesDivils de Lyon)、白ワイン(シャブリ)及びビール(サッポロビール製黒ラベル(商標))をアイラ製FD-1を用いて凍結乾燥した粉末試料0.2gを0.1M NaClを含むトリス塩酸緩衝液(pH8)400μlに溶解し、Bacilluslichenformis 由来の耐熱性αーアミラーゼ(シグマ製、790U/mg固体、1mg/ml)を100μL加え、80℃で2時間反応させ、澱粉を分解した。次いで、プロテアーゼK(Tritirachiumalbum由来、ワーシントン・バイオケミカル社製20 mg/mL)100μLに10%SDS 30μLを加え、55℃で1時間反応させ、タンパク質を分解した。これを遠心分離した上清に冷却エチルアルコールを加え、氷上で15分間沈殿を形成させた。この遠心分離と70%エチルアルコールによる洗浄を3回繰り返し、赤色の色素を除去した。これを遠心分離した沈殿を300μLのTE(EDTAを含むトリス塩酸緩衝液)に溶解し、RNAse処理の後、等量のフェノールで3回、タンパク質の分離除去を繰り返した後、クロロフォルム/イソアミルアルコールで精製し、エチルアルコールで沈殿させて鋳型用精製DNAを調製した。赤ワインから抽出・精製した鋳型DNAのスペクトルを図19に示す。タンパク質等の共存成分が減少し、260nmのDNAのピークが明瞭に現れている。これらの鋳型DNAに配列番号75及び76(ミトコンドリア由来の反復配列、Mito1)、配列番号77及び78(葉緑体由来の反復配列、Chlo1)のプライマーを共存させ、アニーリング温度を36℃にしてAppliedBiosystems社製GeneAmp PCR System9700を用いてPCRを行い、電気泳動によって増幅DNAの比較を行った結果を図20に示す。図20に示すように白ワインのみ増幅バンドが出現しなかったが、赤ワイン及びビールでは増幅DNAバンドが明瞭に出現した。
【0137】
なお、70%エチルアルコールによる3回の洗浄及びフェノールによる3回の蛋白質の除去を行わずに鋳型DNAを調製した場合には、PCRでDNAが増幅しなかった。
【実施例20】
【0138】
(米の識別用プライマーの増加)
実施例1と同様の方法で各種の原料米からPCR用の鋳型DNAを抽出精製し、各種のプライマーを用いて識別性を調べた。その結果、配列番号1及び2に示すプライマーA6、
配列番号7及び8に示すプライマーB1、配列番号9及び10に示すプライマーG28、配列番号13及び14に示すプライマーE30、配列番号15及び16に示すプライマーF6、配列番号21及び22に示すプライマーJ6、配列番号29及び30に示すプライマーP5、配列番号33及び34に示すプライマーM2CG、配列番号35及び36に示すプライマーT16、配列番号39及び40に示すプライマーP3、配列番号41及び42に示すプライマーSS1、配列番号43及び44に示すプライマーSS2、配列番号45及び46に示すプライマーSS2-2、配列番号49及び50に示すプライマーDB、配列番号51及び52に示すプライマーPro10、配列番号53及び54に示すプライマーPro13、配列番号57及び58に示すプライマーMochi、配列番号61及び62に示すプライマーBL1、配列番号63及び64に示すプライマーBL2、配列番号69及び70に示すプライマーBL65、配列番号73及び74に示すプライマーBL6、配列番号83及び84に示すプライマー(オオムギ由来)BARGBSS、配列番号87及び88に示すプライマーIpoamy、配列番号89及び90に示すプライマーSugacssにおいて、表4に示すように、各種の原料米の品種の識別が可能であった。BARGBSSは、例えば試料となる日本酒にオオムギが使用されているか否かを判別するのに用いることができる。
【0139】
【表4】
JP0004953058B2_000005t.gif

【実施例21】
【0140】
(プライマーA7によるPCR増幅DNAの配列の比較)
各種の酒造好適米(山田錦、五百万石、雄町、美山錦)の原料表示のある日本酒を凍結乾燥して粉末試料とし、実施例1に記述した酵素法によって鋳型DNAを抽出・精製した。
【0141】
この鋳型DNAに、プライマーA7(配列番号3及び4)を共存させて実施例1と同様にしてPCRを行い、電気泳動によって増幅DNAを検出した。その結果を図21に示す。図21で検出された美山錦の増幅DNAをゲルから切り出して大腸菌に組み込み、塩基配列を決定した。その結果を図22に示す(配列番号99)。図22に示すように、増幅したDNAは、酒造原料米からプライマーA7共存下のPCRによって増幅したDNAと配列が全く同じであった。このことから、本発明の方法により、適正プライマー共存下で、酒から抽出・精製した鋳型DNAを原料とするPCRによって、酒造好適米特有のDNAを増幅して他種の原料米と識別出来ることが明らかになった。
【実施例22】
【0142】
(ビール原料に含まれる米の検出例)
市販のビール5種類(A、B、C、D、E)をアイラ製凍結乾燥機(FD51)を用いて粉末化した。この粉末試料のうち、A、B、C、Dの4種類は実施例1と同じ酵素法によって鋳型DNAを抽出・精製した。試料DおよびEの2種類について、酵素法に続いて、CTAB法により多糖類を除去して精製度を高めた。すなわち、あらかじめ65℃に加温しておいた2×CTAB液(2%のCTAB 100mMトリス塩酸、pH8、1.4M NaCl、20mM EDTA)中に前記プロテアーゼ処理液を移し、65℃で1時間インキュベーションの後、室温まで冷却し、クロロフォルム/イソアミルアルコール(24:1)を加え、ローテーターで20分間混合した。次いで、10000rpmで10分間遠心分離を行って得た上層を新しいチューブに移し、クロロフォルム/イソアミルアルコールを加え20分間混合した。次いで、10000rpmで10分間遠心分離を行って得た上層液を新しいチューブに移し、この液に、2-プロパノールを加えて静かに混和した後、15000rpmで5分間遠心を行い、上澄みを取り除き、70%エタノールを加え、チューブ内壁を洗浄した。次いで、5分間遠心分離した後、上澄みを取り除き、減圧乾燥を行った。乾燥の後、50μlのTEバッファーを加え、55℃の恒温槽につけ、完全にペレットを溶解させ、鋳型水溶液とした。このように、酵素法に続いてCTAB法を加えるという手法により、澱粉及びその分解物、タンパク質及びその分解物、脂質及びその分解物をほとんど含まない状態でDNAを精製することができた。
【0143】
原料中の米を検出するプライマーとして、DB(配列番号49および50)を用いた。PCR条件は、鋳型DNAは600ng、プライマー濃度は5pMを各12μl使用し、アニーリング温度は38℃とした。
【0144】
PCR後の電気泳動結果を図23に示す。
図23に示すように、ビールの場合、酵素法に続いて、CTAB法を組み合わせて鋳型DNAの精製度を高めることにより、PCRによる識別DNAの増幅が良好となり、原料中の少量の米を検出することが可能となった。BおよびDのみが米の使用を表示していた。Bの場合は、米が使用されているにもかかわらず、酵素法のみで鋳型DNAを調製したため、PCRでの検出ができなかった。一方、Dの場合は、酵素法のみの場合は、Bと同様に検出出来なかったが、酵素法にCTAB法を組み合わせることで米の使用を検出することが可能となった。
【実施例23】
【0145】
4種類の市販の日本酒凍結乾燥粉末から酵素法でPCR用鋳型DNAを調製した。実施例18と同じ麹菌および酵母の鋳型DNAと合わせて6種類の鋳型DNAについて、プライマーSBE(配列番号100および101、5pMを0.5μl添加)共存下でPCRを行った。アニーリング温度は36℃とした。PCR産物をアガロースゲル電気泳動にかけた結果を図24に示す。図24に示すように、麹菌および酵母とは異なる、日本酒に共通の増幅バンドが出現した。このゲルから増幅バンドDNAを切り出し、ガラスビーズ法で精製し、大腸菌に組み込んで増幅させた後、塩基配列を決定した。その塩基配列は、米の澱粉合成に関係する、アミロペクチン枝作り酵素と99.6%の高い相同性を示した。
【実施例24】
【0146】
(酵素・CTAB2段階法によるワインからの鋳型DNAの調製)
赤ワイン3種類および白ワイン3種類を凍結乾燥して粉末試料とした。これに実施例1と同様に酵素法を適用して鋳型DNAを抽出・精製した。さらに、これらの鋳型DNA溶液にCTAB法を追加して鋳型DNAの精製を繰り返した。エタノール添加時のDNAの析出状況及び遠心分離後のDNA沈殿を図25に示す。図25に示されるように、酵素法に続いてCTAB法による精製を行うことにより、赤ワインからも色素の除去された良質の鋳型DNAが調製可能となった。
【実施例25】
【0147】
(ワインを試料とする原料ブドウの識別例)
実施例24で調製した酵素法のみ及び酵素・CTAB2段階法によって調製したDNAを鋳型とし、プライマーとして、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子由来のプライマー(配列番号102及び103)およびブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来プライマー(配列番号104及び105)を共存させてPCRを行った。アニーリング温度は36℃とした。PCR後の電気泳動結果を図26に示す。
【0148】
図26に示すように、ワインの場合は、ポリフェノール等の夾雑物が多いため、酵素法のみでは良質のPCR用鋳型DNAが得られず、PCR後に増幅DNAが出現しなかった(図26、B-1及びB-2)。一方、酵素法にCTAB法を組み合わせた2段階法によって調製したDNAを鋳型とすることで、初めて良好なPCR結果が得られ、ブドウミトコンドリアチトクローム遺伝子やブドウショ糖結合タンパク質遺伝子由来のプライマーによって原料ブドウの判別が可能となった(図26、A-1及びA-2)。
【実施例26】
【0149】
市販の6種類のビールを凍結乾燥して粉末試料とし、酵素・CTAB2段階法によって鋳型DNAを抽出・精製した。プライマーとして、ダイズタンパク質グリシニン由来のプライマー(配列番号106及び107)あるいはトウモロコシ澱粉合成酵素(GBSS)由来のプライマー(配列番号85及び86)を使用してPCRを行った。アニーリング温度は42℃とした。PCR後の電気泳動結果を図27に示す。図27Aに示すように、試料No3、4及び6においてダイズの使用が検出され、試料No5のみがトウモロコシ不使用が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明は、醸造酒のみを試料としてその原料植物の種類あるいは品種の判別を可能にするので、表示の偽装防止に有用であり、検査機関や量販店等で産業的に利用される可能性が高い。
【0151】
また、本発明により、醸造原料植物と醸造酒の酒質との関係が明らかになる可能性が高いので、稲やブドウ等の育種関係の試験研究分野や生産農家及びその団体等において、長期間にわたって醸造酒の品質向上を目的として産業的に利用される可能性がきわめて高い。
【0152】
さらに、本発明は、酒造企業にとっても、原料植物の品種特性と酒質との関係を示す指標を得る手段となるので、原料の選定や他社製品の原料調査、消費者の嗜好と醸造原料との関係の把握などに活用することが可能であり、本発明の実用面の利点が大きいので、産業的に利用される可能性がきわめて高い。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】日本酒からの鋳型DNAの調製方法を示す。
【図2】原料米及び日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図3】各種乾燥後醸造酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図4】原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図5】原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図6】原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図7】日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図8】日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図9】原料米及び日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図10】ビールを試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図11】ビール等を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図12】ブドウの種を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図13】微生物及び原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図14】日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図15】日本酒及び麹菌を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図16】米の各品種の塩基配列を示す。
【図17】原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図18】微生物及び原料米を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図19】赤ワインのDNAのスペクトルのグラフを示す。
【図20】ワイン及びビールを試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図21】日本酒を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図22】日本酒から得られたDNAの塩基配列を示す。
【図23】ビールを試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図24】日本酒及び微生物を試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図25】酵素・CTAB2段階法による赤ワイン及び白ワインからの鋳型DNAの調製を示す。
【図26】ワインを試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
【図27】ビールを試料として増幅したDNAの電気泳動像を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25
【図27】
26