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明細書 :流動数管理システム、方法、及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4706018号 (P4706018)
公開番号 特開2006-344186 (P2006-344186A)
登録日 平成23年3月25日(2011.3.25)
発行日 平成23年6月22日(2011.6.22)
公開日 平成18年12月21日(2006.12.21)
発明の名称または考案の名称 流動数管理システム、方法、及びプログラム
国際特許分類 G05B  19/418       (2006.01)
G06Q  50/00        (2006.01)
G06Q  30/00        (2006.01)
FI G05B 19/418 Z
G06F 17/60 108
G06F 17/60 320
請求項の数または発明の数 4
全頁数 15
出願番号 特願2005-174134 (P2005-174134)
出願日 平成17年6月14日(2005.6.14)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年2月20日 電気通信大学主催の「平成15年度システム工学科卒業研究論文発表会」において文書をもって発表
特許法第30条第1項適用 平成16年5月21日 社団法人日本経営工学会大会委員会発行の「社団法人日本経営工学会平成16年度春季大会予稿集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成16年6月10日 電気通信大学主催の「第9回 共同研究成果発表会」において文書をもって発表
優先権出願番号 2004175932
2005141940
優先日 平成16年6月14日(2004.6.14)
平成17年5月13日(2005.5.13)
優先権主張国 日本国(JP)
日本国(JP)
審査請求日 平成20年5月22日(2008.5.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】松井 正之
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100120455、【弁理士】、【氏名又は名称】勝 治人
審査官 【審査官】佐藤 彰洋
参考文献・文献 特開2000-117595(JP,A)
特開2003-160228(JP,A)
特開2002-197261(JP,A)
特開昭63-272450(JP,A)
特開2004-227301(JP,A)
特開2001-106310(JP,A)
調査した分野 G05B 19/418
G06Q 30/00
G06Q 50/00
B65G 61/00
H01L 21/02
B62D 65/18
特許請求の範囲 【請求項1】
管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データ(先行データ)とを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出する移動基準在庫量算出手段と、
算出された前記移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図によりシンボリックに判定する移動基準在庫量管理手段と、
前記予測値と前記流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定する投入量算定手段と、
算定された前記投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定する投入量管理手段と、
前記移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは前記投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された前記投入量の累積が前記管理限界線以下になるように改善する投入量改善手段と
を備えることを特徴とする流動数管理システム。
【請求項2】
前記在庫量に関する総ペナルティー費用及び前記流出量に関する総ペナルティー費用は、次期以降の予測値、現在前後の在庫量及び流出量の変動に応じて変位させること
を特徴とする請求項1に記載の流動数管理システム。
【請求項3】
管理対象における流動数を管理するためにコンピュータを、
前記管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データ(先行データ)とを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出する予測値算出手段と、
前記流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出する移動基準在庫量算出手段と、
算出された前記移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図によりシンボリックに判定する移動基準在庫量管理手段と、
前記予測値と前記流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定する投入量算定手段と、
算定された前記投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定する投入量管理手段と、
前記移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは前記投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された前記投入量の累積が前記管理限界線以下になるように改善する投入量改善手段と
して機能させることを特徴とする前記コンピュータが読み取り可能な流動数管理プログラム。
【請求項4】
予測値算出手段が、管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データ(先行データ)とを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出するステップと、
移動基準在庫量算出手段が、前記流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出するステップと、
移動基準在庫量管理手段が、算出された前記移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図によりシンボリックに判定するステップと、
投入量算定手段が、前記予測値と前記流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定するステップと、
投入量管理手段が、算定された前記投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定するステップと、
投入量改善手段が、前記移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは前記投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された前記投入量の累積が前記管理限界線以下になるように改善するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする流動数管理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオンデマンドSCM(サプライチェーンマネージメント)環境下における在庫の適正水準を決定し管理するための流動数管理システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業には、資材を調達し、モノを作り、顧客へ納入する一連の連鎖業務があり、これをサプライチェーンという。顧客が要求するとき(オンデマンド)に製品を届けるためには、このサプライチェーンがうまく機能しなければならない。そのために現在、SCMが脚光を浴び、多くの企業で改革が取り組まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SCMにおける在庫問題は、サプライチェーンにおける最適化の中で、最も厄介で重要なものである。需要と供給のギャップを埋めるため、業務の要所には必ず「在庫」が存在するが、在庫を多く抱えることは、それだけ多額の資金を眠らせることになり、経営効率を下げる結果となる。
【0004】
しかし、やみくもに在庫を減らそうとすることの弊害も多い。在庫には様々な変動を吸収するバッファとしての機能があり、これを無視して手持ち在庫をいきなりゼロにするようなことをすると、現場が混乱し、かえってトータルの在庫量を増やす結果にもなる。
【0005】
つまり、在庫の適正水準をきめ細かく設定し、きちんと管理することが在庫削減の近道である。そして、欠品を起こさずに必要最小限の在庫を持つためには、在庫の適正量をリアルタイムに求める技術が必要とされる。
【0006】
本発明は、以上のような問題を鑑みてなされたものであり、在庫変動をリアルタイムに検出し、在庫の適正水準を決定し管理するための流動数管理システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る流動数管理システムは、管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データとを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出する予測値算出手段と、前記流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出する移動基準在庫量算出手段と、算出された前記移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図(例えば累積和管理図)によりシンボリックに(例えばVマスク法で)判定する移動基準在庫量管理手段と、前記予測値と前記流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定する投入量算定手段と、算定された前記投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定する投入量管理手段と、前記移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは前記投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された前記投入量の累積が前記管理限界線以下になるように改善する投入量改善手段とを備えること特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る流動数管理プログラムは、コンピュータが読み取り可能な流動数管理プログラムであって、前記管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データとを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出する予測値算出手段と、前記流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出する移動基準在庫量算出手段と、算出された前記移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図(例えば累積和管理図)によりシンボリックに(例えばVマスク法で)判定する移動基準在庫量管理手段と、前記予測値と前記流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定する投入量算定手段と、算定された前記投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定する投入量管理手段と、前記移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは前記投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された前記投入量の累積が前記管理限界線以下になるように改善する投入量改善手段として、前記コンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、在庫変動をリアルタイムに検出し、在庫の適正水準を決定し管理するための流動数管理システム、プログラム及び方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
流動数管理はもともと生産工程を対象に考えられており(文献1参照)、静的である。サプライチェーンの各段階においても流入出関係があり、同様な流動数問題が発生する。
【0011】
SCMにおける流動数管理問題は、流動数管理式(文献1参照)において以下のように書き直すことができる。サプライチェーンの各段階が基準在庫量を保有し、式1で表される当期投入量に従って供給(流入)し、各段階の在庫を管理する方法である。
【0012】
当期投入量=当期流出量+基準在庫量-前期在庫量 (1)
【0013】
本実施形態における流動数管理システムでは、さらに先見適応制御の考えを導入して、基準在庫量を可変化し、式1を以下のように次期投入量に発展させて考える。
次期投入量=次期流出量+移動基準在庫量-当期在庫量 (2)
【0014】
そのとき、流動数管理問題は、移動基準在庫を移動インディケータとしていかに管理して次期投入量を求め、流動数(在庫)を最小化することである。そのための基本ロジックは、移動基準在庫量を当期在庫量に近づけて、次期流出量が次期投入量となることである。このために、移動基準在庫量と次期投入量の策定に「新聞売り子問題」(文献4、文献5参照)を適用し、管理図法の管理限界線で継続的にチェックしてアクション(投入量の決定)をとる。
【0015】
本実施形態では、流動数図表(文献2、文献3参照)上で、新聞売り子問題により設定された移動基準在庫量(インディケータ)を、管理図法の管理限界線(累積和管理図(文献6参照)のVマスク法、流動数図法の管理限界線)で継続的にチェックして、アクション(投入量の決定)を行う。
【0016】
以下、図1~図18を参照しながら、本発明の実施形態について詳しく説明する。尚、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の参照符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0017】
[流動数管理システムの構成]
図1は本実施形態による流動数管理システムの機能構成例を示しており、図2は図1に示した流動数管理システムのハードウェア構成例を示している。また、図3は流動数管理システムによる流動数管理方法の処理手順例(基本ロジック例)を示している。
【0018】
図1に示すように、流動数管理システムは、流動数図表生成手段11、予測値算出手段12、移動基準在庫量算出手段13、移動基準在庫量管理手段14、投入量算定手段15、投入量管理手段16、投入量改善手段17、投入量決定手段18、利益化手段19などの機能を備えている。
【0019】
予測値算出手段12は、管理対象における流入量データと流出量データと確定注文データ(先行データ)とを時間に対応するデータとして取得し、次期の確定注文量と今期の確定注文量と今期の流出量とから次期流出量の予測値を算出する。移動基準在庫量算出手段13は、流入量データと流出量データを基に各期の在庫量を求め、在庫量に関する総ペナルティー費用が最小となる移動基準在庫量を算出する。移動基準在庫量管理手段14は、移動基準在庫量算出手段13により算出された移動基準在庫量が管理状態にあるか否かを管理図(例えば累積和管理図)によりシンボリックに(例えばVマスク法で)判定する。投入量算定手段15は、予測値と流出量データの累積とから、流出量に関する総ペナルティー費用が最小となる次期流出量を求め、求めた次期流出量を次期の投入量として算定する。投入量管理手段16は、算定された投入量が管理状態にあるか否かを流動数図表の管理限界線により判定する。投入量改善手段17は、移動基準在庫量管理手段による判定結果あるいは投入量管理手段による判定結果に基づいて、算定された投入量の累積が管理限界線以下になるように改善する。
【0020】
また、流動数管理システムは、図2に示すように、例えばPC等のコンピュータシステムにより実現され、入力部31、制御部32、表示部33、外部インタフェース部34、記憶部35などを備えている。入力部31は例えばキーボードやポインティングデバイス、ディスクドライブ等の入力手段であり、流入・流出データ21や確定注文データ22などをデータ入力や、アプリケーションプログラム41の実行指示等に用いられる。表示部33はディスプレイやプリンタ等の表示手段であり、アプリケーションプログラム41の実行結果や中間処理結果等の表示に用いられる。外部インタフェース部34は他の装置やシステムと接続するためのインタフェースを提供する。記憶部35には、各種アプリケーションプログラム41やアプリケーションデータ42などが記憶される。尚、図1に例示する各機能をコンピュータシステムに実現させるためのプログラム、あるいは図3に例示する各処理をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムを、アプリケーションプログラム41として記憶部35に記憶させ、制御部32に実行させることができる。
【0021】
流動数管理システムは、図3に示す処理を実行するにあたって、まずロジック内で用いる数値(項数r、係数β1、β2、β3、期間数n、カウンタiなど)の初期設定処理を実行する(ステップS01)。
【0022】
[流動数図表生成]
図4に示すように、例えば管理対象とする倉庫のt期における流入量、流出量、在庫量をそれぞれ、(工場から)製品Aが倉庫に流入した量(It)、製品Aが倉庫から(市場に)流出した量(Ot)、製品Aが倉庫に保管されている量(Lt)とする。確定注文量(Xt)は製品Aの需要情報である。
【0023】
流動数図表は、図5に例示するように、縦軸に累積流量、横軸に時間をとった平面に流入累積線と流出累積線とを描いたグラフである。2つの累積線で囲まれた領域を縦に見ると流れの対象(製品A)が管理対象(倉庫)内にその時点で滞留している量つまり流動数(在庫量)が読み取れ、横に見ると対象が管理対象内に留まっている時間(リードタイム)が読み取れる。
【0024】
流動数図表生成手段11は、流入・流出データ21及び確定注文データ22を入力し(ステップS02)、流れの対象(製品A)の流動数図表データを生成する(ステップS03)。流動数図表生成手段11により生成される流動数図表データの例を図6に示す。流入量、流出量、確定注文量の各データは20余週分であり、確定注文は見込需要情報(予測)である。図6に示す例では、2つの大きなズレがあり、問題が発生している。
【0025】
簡単のために、流れの対象(製品A)の流出(状態)は制御できないものとして、流入量を制御することによって流動数/所有日数(管理項目)を最小化することを考える。流入量の決定には確定注文量が利用できるが、短サイクルの製品では実際の実需要量(流入量)と大きなズレが発生する。
【0026】
[予測値の算出]
予測値算出手段12は、流動数図表生成手段11により生成された流動数図表データを用いて、確定注文データ22の値を、より実需要量に沿った予測値となるように確定注文量を加工する(ステップS04)。
【0027】
リードタイム1週(以降、LT1週)のときのt期における予測値Ft+1 は、式3により算出できる。尚、LT1週とは、製品Aを発注してから倉庫に届くまでの時間を表す。
【0028】
Ft+1 = Xt+1 + α(Ot - Xt) + (1 - α)Et-1 (3)
(但し、0 < α ≦1)
但し、Et はt期の誤差であり、式4により求められる。
【0029】
Et = α(Ot - Xt) + α(1-α)(Ot-1 - Xt-1)
+ α(1 - α)(Ot-1 - Xt-1) + … + α(1 - α)t-1(O1 - X1) (4)
【0030】
一方、リードタイムがn週のときの予測値Ft+n は、式5により算出できる。
【0031】
Ft+n = Xt+n + α(Ot - Xt) + (1 - α)Et-1 (5)
(但し、0 < α ≦1)
【0032】
また、図7に例示するような誤差面積により、各αの値における予測値の評価を行う。誤差面積とは累積予測値と累積流出量との間の面積を指す。
【0033】
予測値算出手段12により算出された予測値は、流動数図表データとともに移動基準在庫量算出手段13及び投入量算定手段15に送られる。
【0034】
[移動基準在庫量の算出]
オンデマンドに需要適応するために、移動基準在庫量算出手段13は、インディケータとして基準在庫量N を図8のようにNt と可変化し、新聞売り子問題を適用して求める(ステップS05)。
【0035】
新聞売り子問題は「新聞スタンドで毎日売る新聞を何部仕入れるのが最適か」という問題である。売れ残りの新聞が多いと損失を招き、仕入れが少なすぎると儲け損なう。毎日の売れ行きも確率的に変動するから、売れ残り損失と品切れ損失とを合わせた機会損失を最小にして利益を最大にするという形で最適な仕入れ数を求める。
【0036】
新聞売り子問題を本在庫管理に応用するに当たって、ペナルティー費用を導入する。総ペナルティー費用C(Nt)は、t期の在庫量をLt、t期の基準在庫量をNt として次式6で与えられる。
【0037】
C(Nt) = β1Nt + β2(Nt - Lt)+ + β3(Lt - Nt)+ (6)
但し、β1 は基準在庫量Nt へのコスト係数(適正在庫)、β2 は基準在庫量Nt を下回ったときにかけるコスト係数(過少在庫)、β3 は基準在庫量Nt を上回ったときにかけるコスト係数(過剰在庫)である。(Nt - Lt)は基準在庫量Nt を下回った量、(Lt - Nt)は基準在庫量Nt を上回った量である。また、右肩の+は式内の負の値をゼロとすることを表し、例えば、(a)+ = max(a, 0) である。
【0038】
最適な基準在庫値Nt* を求めるためには、式6の期待値が最小となれば良いので、係数β1、β2、β3 を任意に決めることで、Σf(Lt)を決定することができる。ここで、Σf(Lt)とは流動数の頻度の累積であると考え、基準在庫値Nt*が最小となるときのΣf(Lt)は、(β3 - β1) / (β2 + β3) に等しくなるように決定される。
【0039】
ここで、いくつかの週で区切って、過去のデータのみを参照して各週毎の移動基準在庫値を求める方法を考える。
【0040】
図9は、係数β1=5、β2=250、β3=200 とし、移動平均の期間数を3週(r=3)として過去のデータのみにより移動基準在庫量を求めた結果を例示している。もちろん、予測在庫データも利用可能である。
【0041】
実際にΣf(Lt) を用い、累積在庫量から移動基準在庫量を算出する方法を以下に示す。在庫量に新聞売り子問題を適用した場合は、図10に例示する在庫量の累積から基準在庫量を決定する。この場合、次式7により基準在庫量が決定される。
【0042】
Σf(Lt) = (β3 - β1) / (β2 + β3) (7)
【0043】
仮に、β3 (基準在庫量を上回ったときにかけるペナルティー)を大きくすると、在庫量が基準在庫量を上回らないように基準在庫量を大きくしようとする。β3 を大きくすれば、右辺の値は大きくなる。β3 が大きくなれば基準在庫量も大きくならなければいけないので、右辺は分布の下からとり、式7となる。
ところで上記式7の新聞売り子問題では、従来からペナルティー係数βの効果的な決め方が問題となっていた。一方、一般的に商品の需要パターンというのは期間(例えば、季節ごと)に応じて変動するものである。そこでこの期間変動に追従してペナルティー係数βから基準在庫量Nを決定することで在庫量を自動的に管理する方法(ロジック)を提案する。
【数1】
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本実施の形態においては、新聞売り子問題を本在庫管理に応用するにあたり、ペナルティー費用を導入した式6を用いたが、評価式はこれに限られるものではない。即ち、次に示す代替式を適用しても本実施の形態を実施することができる。
つまり、リトルの公式と流動数分析から、在庫量(L)の数量の世界と所要時間(W)の時間世界には互いに対応関係が成り立つことから、本管理方法(ロジック)をWで展開することが可能である。そこで式6を下記式6-1に置き換えて、本実施の形態を実施することができる。
C(Tt) = β1Tt + β2(Tt - Wt)+ + β3(Wt - Tt)+ (6-1)
これは、特に生産のように遅れを生じるプロセスを持つ場合には有効と考えられる。
【0044】
[移動基準在庫量管理]
在庫の変動をリアルタイムで管理する方法として、品質管理の分野で用いられている累積和管理図のためのVマスク法が有効である。シフト的な変化を検知する能力に長けた累積和管理図を管理状態の有無を確かめるために用いる。打点した点がVマスクと呼ばれる線の範囲内にあれば、その工程は管理状態であり、Vマスクの範囲外にあれば、この工程は管理状態にないという。管理状態(つまり、今の需要変動は予定の範囲内)にないと判断すると、それに対して何らかのアクションをとる必要がある。需要変動は、瞬間的に大きな値を示すこともあるが、基本的には傾向変動となって現れる。それは平均以上の上昇が続く場合もあるし、また、平均を下回る減少が連続的に発生する場合もある。それを認知するためにも品質管理で使われている累積和管理図が有効である。これは傾向線からV字のマスクをかけて目標値からのブレが有意か否かを判断する。
【0045】
移動基準在庫量管理手段14は、移動基準在庫量算出手段13により設定された移動基準在庫量Nt を、累積和管理図のVマスク法でチェックする。移動基準在庫量管理手段13は、V字型の管理限界線(Vカット)を累積和管理図内に設け(ステップS06)、このVカットにより形成されるVマスクからのブレが有意なものか否かを判定する。
【0046】
移動基準在庫量管理手段14は、累積和管理図内にプロットした過去のすべての点がVマスク内に入っていれば管理内、入っていなければ管理外と判定する(ステップS07)。
【0047】
ステップS07の判定の結果、管理内と判定された場合は、ステップS11の処理に進む。具逆に、管理外と判定された場合は、今回の処理がK回目(但しKは適宜変更可能な所定の閾値)の処理であれば、係数β1、β2、β3の値を変更して、ステップS04に戻る。
【0048】
需要適応のために、係数β1、β2、β3 を、次週の予測値、現在の在庫値、これまでの流出量(過去の流出量)の変動を加味しながら変化させたインディケータを求めた。実際値とインディケータの管理状態の有無を、図11(実際値の3期目のマスク)、図12(インディケータの13期目のマスク)に例示する。
【0049】
図11及び図12に例示したように、インディケータは前半部分では改善効果がみられるものの、後半部分において基準との大きなズレがみられる。この後半部分のズレを解消するために、以降に示すようにの管理限界線を用いた改善を行う(詳細は後述)。
【0050】
[投入量の算定]
投入量算定手段15は、流動数図表データと予測値算出手段12により算出された予測値をもとに投入量を算定する(ステップS11)。
【0051】
ここで、t期における予測値Ft+1 を用いて、先に在庫量に適用した新聞売り子問題を流出量にも適用し、投入量という新たな次期のインディケータを決定する
まず、係数β1=5、β2=200、β3=200 とし、t期にt期までの累積流出数、(t+1)期に(t+1)期までの累積流出数を入れて、(t+2)期に予測値算出手段12により算出される予測値を入れる。そこで求めた移動平均を(t+2)期までの平均累積流入量とする。
【0052】
次に、(t+1)期に(t+1)期までの累積流出数、(t+2)期に(t+2)期までの累積流出数を入れて、(t+3)期に予測値算出手段12により算出される予測値を入れる。そこで求めた移動平均を(t+3)期の平均累積流入量とし、(t+2)期の平均累積流入量を引いたものを(t+3)期の新流入量(投入量)とする。
【0053】
このようにして求めた投入量の算定結果を図13に例示する。但し、「~1期」及び「~2期」には、流出データのない期間が含まれているため、予測値を適用し、それをそのまま新流入量とした。
【0054】
投入量に関して新聞売り子問題を適用する場合、新流入量と図14から、算定投入量を決める場合は次式8による。
【0055】
Σf(Lt) = 1 - (β3 - β1) / (β2 + β3) (8)
【0056】
仮に、β3 (基準在庫量を上回ったときにかけるペナルティー)を大きくすると、在庫量が基準在庫量を上回らないように在庫量を小さく、つまり求める新流入量を小さくしようとする。β3 を大きくすれば、右辺の値は大きくなる。β3 が大きくなれば新流入量は小さくならなければいけないので、右辺は分布の上からとり、式8となる。
【0057】
[投入量管理と改善]
次期投入量を管理するため、投入量管理手段16は、流動数図表に新たに上方管理限界線を設定する(ステップS12)。上方管理限界線は累積流入量の上限を示すものであり、流入量の上限を設け過剰流入を防ぐ役割がある。
【0058】
本実施例において、リードタイム1週の次期の上方限界線=今期の累積流出量+基準在庫量+次期の予測値として設定した例を、図15に示す。
【0059】
投入量改善手段17は、図16(a)に例示するように次期の累積流入量が上方管理限界線を超えるとき、図16(b)に例示するように次期の累積流入量を上方管理限界線以下に制限し、それを新累積流入量とする。もし、次期の累積流入量が上方管理限界線を超えていなければ、その流入量を採用する。
【0060】
投入量決定手段18は、移動基準在庫量管理14による判定の結果、基準在庫値が管理限界内にあるとき、且つ、投入量管理手段16による判定の結果、次期の累積流入量が管理限界内にあるときは、投入量算定手段15により算定された投入量を次期投入量として決定する。移動基準在庫量管理13による判定の結果、基準在庫値が管理限界外にあるときと、投入量管理手段16による判定の結果、次期の累積流入量が管理限界外にあるときの両方またはいずれか一方を満たすときは、投入量改善手段17により改善された値を次期投入量として決定する(ステップS13~S14)。
【0061】
図17は、投入量算定手段15によって新聞売り子問題により求めた投入量(投入量1)を、投入量改善手段17によって管理限界内に改善された改善量(投入量2)の改善効果を示している。図6と比較して、改善効果が大きいことがわかる。
【0062】
また、本実施形態においては、インディケータに関し、係数β1、β2、β3 を、次週の予測値、現在の在庫値、これまでの流出量の変動を加味しながら変化させて求めた。そのインディケータを用いたときの在庫量の変動比較を図18に示す。
【0063】
[利益化]
利益化手段19は、投入量の改善効果を利益面から検証する(ステップS15)。
【0064】
t期における割合[在庫が占有している容量/倉庫全体の容量]を稼働率ρt、割合[空き容量/倉庫全体の容量]を遊休率1-ρt とすると、そのときの費用ECt は、次式9により算出される(文献7、文献8参照)。
【0065】
ECt = α1・Lt + α3 + (α23t (9)
但し、α1 は在庫保管費用係数(円/個)、α2 は稼働費用係数(円)、α3 は遊休費用係数(円)である。
【0066】
また、t期の利得ERt(円)は、製品を1個流通させたときの利得をP(円)、t期の需給スピードをdt とすると、次式10により算出できる。
【0067】
ERt = P/dt (10)
【0068】
このとき、i期の利益ENi(円)は、次式11により算出できる。
【0069】
ENi = P/dt - α1・Lt + α3 + (α23t (11)
式11より、利益ENi は、稼働率ρt の関数である。利益ENi を最大化するρt* が存在すると、最適在庫が得られ、ペア戦略図法が展開できる。また、そのリアルタイムな監視が可能となる。
【0070】
図3のフローチャートに戻って、以上のようにしてステップS04~S15の処理が完了すると、期間数nとカウンタiとを比較し、i>nの場合、すなわち全ての期間の処理が完了していれば、処理結果を表示部33に出力して(ステップS18)、処理を終了する。逆に、i≦nの場合、すなわち未処理の期間が残っていれば、カウンタiに1を加算して(ステップS17)、ステップS04へ戻り、次の期間の処理に移る。
【0071】
以上説明したように、移動基準在庫量と次期投入量の策定に新聞売り子問題を適用し、移動基準在庫量、次期投入量をそれぞれ、累積和管理図のVマスク法、流動数図表の上方管理限界線により継続的にチェックし、アクション(投入量の決定)をとるようにしている。従って、在庫の適正水準をきめ細かく設定することができ、また、在庫保管費用や倉庫業務費用等を最小化することができる。
尚、式7-aに示した需要率λを用いたロジック(式7-c)の場合は、更に、在庫品の品切れ回数と総在庫量を削減する効果を得ることができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の色々な形で実施することができる。
【0073】
例えば、本実施形態では、倉庫等における部品や製品の流動数管理をモデルに説明したが、これに限定されず、流動するモノの管理・分析に広く適用できる。例えば、電力の需給管理等に適用しても良いし、水や食料等の需給管理等に適用しても良い。
【0074】
このように、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0075】
[文献1] 日本経営工学会編、「生産管理用語辞典」、日本規格協会、p.464、2002年
[文献2] 中村善太郎、「流動数分析の仕事の改善での活用」、日本経営工学会誌、Vol.36、No.2、pp.93-100、1985年
[文献3] 臼杵潤、北岡正敏、松井正之、「流動数管理問題と灰色理論モデルについて」、電気通信大学紀要14巻1号、pp.13-20、2001年
[文献4] 加藤豊、小沢正典、「ORの基礎 AHPから最適化まで」実教出版社、1988年
[文献5] Week, j.K., “Optimizing Planned Lead times and Delivery Dates
”, 21st Annual conference Proceedings, APICS, pp.177-188, 1979
[文献6] 渡辺治夫、小幡英二、向井田健一、「逐次検定による逐次抜取検査と累積和管理図」、室蘭工業大学紀要、第50号、pp.71-82、2000年
[文献7] 特開平2002-49449号公報
[文献8] 特開平2002-197261号公報
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態による流動数管理システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
【図2】本実施形態による流動数管理システムのハードウェア構成例を示す概略ブロック図である。
【図3】図3は流動数管理システムによる流動数管理方法の処理手順例(基本ロジック例)を示すフォローチャートである。
【図4】本実施形態の管理対象における流入量、流出量、在庫量、確定注文量を示す図。
【図5】流入量の累積量と流出量の累積量とを流動数図法化した模式図である。
【図6】本実施形態の管理対象における流入量の累積量と流出量の累積量及び確定注文量の累積量を流動数図法化した一例である。
【図7】予測値(次期流出量)の算出に用いる変数αの値を評価するための誤差面積の一例である。
【図8】基準在庫量と実在庫量とペナルティー費用との関係を示す図である。
【図9】係数β1=5、β2=250、β3=200 とし、期間数を3週として過去のデータのみにより基準在庫量を求めた結果を例示する図である。
【図10】新聞売り子問題を適用して基準在庫量を算出する際の累積在庫量を例示する図である。
【図11】実在庫量の管理状態を累積和管理図のVマスク(3期目のVマスク)により示した例を示す図である。
【図12】インディケータの管理状態を累積和管理図のVマスク(13期目のVマスク)により示した例を示す図である。
【図13】係数β1=5、β2=250、β3=200 とし、期間数を3週として過去のデータのみにより投入量を求めた結果を例示する図である。
【図14】新聞売り子問題を適用して投入量を算出する際の累積流出量を例示する図である。
【図15】流動数図表における上方管理限界線の算出方法を説明するための図である。
【図16】上方管理限界線による累積流入量の改善方法を説明するための図である。
【図17】上方管理限界線により改善された投入量の改善効果を例示する図である。
【図18】次期の予測値、現在の在庫量、これまでの流出量の変動を加味して求めたインディケータを用いたときの在庫量の変動比較を例示する図である。
【符号の説明】
【0077】
11…流動数図表生成手段
12…予測値算出手段
13…移動基準在庫量算出手段
14…移動基準在庫量管理手段
15…投入量算定手段
16…投入量管理手段
17…投入量改善手段
18…投入量決定手段
19…利益化手段
21…流入・流出データ
22…確定注文データ
31…入力部
32…制御部
33…表示部
34…外部インタフェース部
35…記憶部
41…アプリケーションプログラム
42…アプリケーションデータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
10
【図12】
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【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
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【図18】
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