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明細書 :CNT配列材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4544530号 (P4544530)
公開番号 特開2007-069282 (P2007-069282A)
登録日 平成22年7月9日(2010.7.9)
発行日 平成22年9月15日(2010.9.15)
公開日 平成19年3月22日(2007.3.22)
発明の名称または考案の名称 CNT配列材料の製造方法
国際特許分類 B82B   3/00        (2006.01)
FI B82B 3/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2005-256890 (P2005-256890)
出願日 平成17年9月5日(2005.9.5)
審査請求日 平成18年9月28日(2006.9.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】502147465
【氏名又は名称】ジャパンスーパーコンダクタテクノロジー株式会社
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】米村 弘明
【氏名】山本 裕一
【氏名】山田 淳
【氏名】谷本 能文
【氏名】藤原 好恒
個別代理人の代理人 【識別番号】100089196、【弁理士】、【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226、【弁理士】、【氏名又は名称】須原 誠
審査官 【審査官】小林 紀史
参考文献・文献 特開2002-346996(JP,A)
特開2004-189548(JP,A)
特表2005-521563(JP,A)
調査した分野 B82B 1/00 - 3/00
JST7580(JDreamII)
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボンナノチューブを所定の長さに調整する長さ調整工程と、
前記長さ調整工程で調整されたカーボンナノチューブを溶媒に混合して前記カーボンナノチューブの分散した溶液を得る混合工程と、
前記混合工程で得られた溶液の適量を基板に滴下し、前記カーボンナノチューブが無重力状態となるように磁場を印加しつつ、基板に滴下した前記溶液中の溶媒を蒸発させて、前記カーボンナノチューブを収束配列させる工程とを有していることを特徴とするCNT配列材料の製造方法。
【請求項2】
前記混合工程が、前記溶液中から凝集した前記カーボンナノチューブを取り除く工程をさらに含んでいることを特徴とする請求項1記載のCNT配列材料の製造方法。
【請求項3】
前記基板が、鉛直方向に印加された前記磁場に対して0~90°に傾けて設置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のCNT配列材料の製造方法。
【請求項4】
記長さ調整工程が1μm以上の長さのカーボンナノチューブに選別する工程を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のCNT配列材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な複合材料などに用いることができるCNT配列材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、繊維状材料を配列した材料が開発され、様々な用途に用いられている。例えば、繊維状材料を配列した材料の一つとして、カーボンナノチューブ(以下、CNTと記載することがある)がある。このCNTの特徴である高アスペクト比を活かすために、磁場を用いて、その配列を制御する方法や装置、これらの方法や装置を用いて配列されたCNTの成形体などが開示されている(例えば下記特許文献1~3参照)。
【0003】

【特許文献1】特開2004-234865号公報
【特許文献2】特開2002-273741号公報
【特許文献3】特開2004-255600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献のそれぞれのものは、ほぼ磁場方向に沿ってしかCNTを配列できず、強度が低かったりするなどの問題点があり、用途が限られていた。また、他の繊維状材料においても同様の問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、用途が広範なCNT配列材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明に係る繊維状材料の配列材料の製造方法は、繊維状材料を所定の長さに調整する長さ調整工程と、前記長さ調整工程で調整された繊維状材料を溶媒に混合して前記繊維状材料の分散した溶液を得る混合工程と、前記混合工程で得られた溶液の適量を基板に滴下し、前記繊維状材料が無重力状態となるように磁場を印加しつつ、基板に滴下した前記溶液中の溶媒を蒸発させて、前記繊維状材料を収束配列させる工程とを有していることを特徴とする。なお、混合工程においては、繊維状材料が均一に分散していることが好ましい。
【0007】
上記構成によれば、強度が高ものを作製が可能で用途が広範な繊維状材料の配列材料の製造方法を提供できる。
【0008】
本発明に係る繊維状材料の配列材料の製造方法は、前記混合工程が、前記溶液中から凝集した前記繊維状材料を取り除く工程をさらに含んでいることが好ましい。これにより、意図した構成に配列することが困難となっている凝集した繊維状材料を予め取り除くので、より精度よく配列した繊維状材料の配列材料を製造できる。
【0009】
本発明に係る繊維状材料の配列材料の製造方法は、前記基板が、鉛直方向に印加された前記磁場に対して0~90°に傾けて設置されていることが好ましい。これにより、磁場方向に繊維状材料の長軸方向を磁場と平行に配向しながら、複数の繊維状材料が略平行に連なった束となって繊維状材料束を形成し、その繊維状材料束が磁場の向きと平行になった後、複数の繊維状材料束が折り重なるように配置できる。その結果として、強度が高ものを作製が可能で用途が広範な繊維状材料の配列材料を容易に製造できる。なお、磁場と基板との角度が90°である場合が最も強度が高ものを作製が可能で用途が広範な繊維状材料の配列材料を容易に製造できる。
【0010】
本発明に係る繊維状材料の配列材料の製造方法は、前記繊維状材料がCNTであり、前記長さ調整工程が1μm以上の長さのCNTに選別する工程を含むことが好ましい。これにより、強度が高く、熱伝導性、導電性にも優れものを作製が可能で用途が広範なCNTの配列材料を製造できる。
【0011】
本発明に係る繊維状材料の配列材料は、複数の繊維状材料が略平行に連なった束となって繊維状材料束を形成し、さらに複数の繊維状材料束が折り重なって網状薄膜組織を形成していることを特徴とする。別の観点から、本発明に係る繊維状材料の配列材料は、複数の繊維状材料が略平行に連なった束となって繊維状材料束を形成し、さらに複数の繊維状材料束が折り重なって、孔を複数有する薄膜状組織を形成していることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、強度が高ものを作製が可能で用途が広範な繊維状材料の配列材料を提供できる。
【0013】
本発明に係る繊維状材料の配列材料は、前記繊維状材料がカーボンナノチューブであることが好ましい。これにより、強度が高く、熱伝導性、導電性にも優れものを作製が可能で用途が広範なCNTの配列材料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るCNT配列材料の実施形態について説明する。まず、CNT配列材料の製造方法について説明する。
【0015】
まず、単層CNTを切断し、クロマトグラフィーやメンブランフィルターなどによるろ過によって1~10μmの長さのものに選別する。この選別されたCNTを水などの溶媒に混合し、溶液を作製する。このとき、遠心分離やメンブランフィルターなどによるろ過を行って、溶液中において凝集したCNTを取り除いておくことが好ましい。次に、この溶液の適量を基板に滴下した後、滴下した溶液中のCNTが無重力状態あるいはほぼ無重力状態となるように、例えば、超電導磁石装置などの強磁場を発生できる磁場印加装置内の所定位置に設置し、磁場を印加しつつ、基板に滴下した溶液中の溶媒を蒸発させる。このような方法により、本実施形態に係るCNT配列材料を得ることができる。
【0016】
上述の方法で得られたCNT配列材料は、薄膜状のものであり、複数のCNTがほぼ平行に束となって束状CNTを複数形成し、これらの束状CNTが網状組織を構成するように配列されてなるものである。言い換えれば、このCNT配列材料は、多孔質薄膜であるともいえる。
【0017】
本実施形態に係るCNT配列材料は、強度が高く、熱伝導性、導電性にも優れており、大面積のものを作製が可能で用途が広範なCNT配列材料を提供できる。なお、このCNT配列材料は、さらに水素などの気体の吸着能を有する。
【実施例】
【0018】
次に、本発明に係るCNT配列材料の実施例について説明する。まず、本実施例のCNT配列材料の製造方法を説明する。原料には、単層CNTを用いた。以下、工程順に説明していく。
【0019】
〔CNTの切断〕
0.01163gの単層CNTを、HSO:HNO=3:1=30mL:10mLとなる混酸に加え、超音波照射切断した。超音波照射した時間・周波数は、25kHzで15分である。これに蒸留水を約100ml加え、0.2μmのフィルターでろ過した。ろ過した後、得られた切断CNT粉末をNaOH水溶液で中性になるまで洗浄した。
【0020】
〔CNTの長さによる選別〕
サイズ排除クロマトグラフィーとしてSepadexG-50を使用した。まず、上記切断したCNTを蒸留水10mlによく分散させた。すると、黒~灰色の溶液となったので、うまく上澄み液だけを取り出して、クロマトグラフィーをおこなった。なお、クロマトグラフィーによって分離を行った溶出液で先に溶出してくる溶液を試料1(CNTの平均長さ0.7μm)、後に溶出してくる溶液を試料2(CNTの平均長さ1.2μm)とする。
【0021】
〔磁場印加しながら基板上での乾燥〕
試料1、2をそれぞれマイカ基板(原子間力顕微鏡(AFM)用)にそれぞれ滴下し、図1(a)に示す超電導磁石装置の磁場発生領域内において磁場を印加しつつ(図1(b)参照)溶媒を乾燥させながら、それぞれの基板についてCNTの配向を行った。
【0022】
なお、図1(a)の超電導磁石装置の概略図において、1は超電導磁石の内筒、2a、3a、4aは基板、2b、3b、4bは基板2a、3a、4aをそれぞれ載せるための載置台、5は載置台2b、3b、4bを固定支持するための非磁性の支持棒である。また、本実施例で用いられる超電導磁石装置は、中心軸が鉛直方向である超電導コイルを用いたものであり、この超電導コイルの内部に内筒1が同心で設置されている。また、図示しないが、この超電導コイルは、一般的な超電導磁石装置に用いられるクライオスタット内において、液体ヘリウムなどで冷却され、励磁されている。また、試料1、2は、図1(a)の超電導磁石装置の概略図において、それぞれ上位置(無重力状態)、中心位置(磁場強度が最大(15T)となっている状態)、下位置(2Gの過重力状態)の各位置に載置して、CNTの配向を行なった。
【0023】
次に、試料1、2におけるCNTの配向結果について説明する。図2は試料1の上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。図3、4、5、及び6は図2の上位置の左端、左から2番目、右から2番目、及び右端に示したAFM写真である。は、(a)が試料1の上位置において配向されたCNTのAFM写真であり、(b)が(a)に記載された線におけるCNTの断面高さの情報を示すグラフである。図は試料2の上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真を示す。図9、10、11、及び12は図8の上位置の左端、左から2番目、右から2番目、及び右端に示したAFM写真である。13は、(a)が試料2の上位置において配向されたCNTのAFM写真であり、(b)が(a)に記載された線におけるCNTの断面高さの情報を示すグラフである。
【0024】
<試料1の結果>
図2~6に示すように、無重力状態である上位置の試料1のCNTは、複数のCNTがほぼ平行に束となって束状CNTを複数形成し、これらの束状CNTが網状組織を構成するように、折り重なって配列されたCNT配列材料を形成していることがわかる。これに対し、中心位置や下位置の試料1のCNTは、配列した組織を構成しているとはいい難いものであった。また、図に示すように、無重力状態である上位置で形成されたCNT配列材料のCNTの高さは、±5nm以下であることから、複数本の単層CNTが束なったものであると考えられる。なお、図(a)中の逆三角と図(b)中の逆三角とが対応している。また、図(a)は図2の上位置の右端の写真と同部分のものを示している。
【0025】
<試料2の結果>
8~12に示すように、無重力状態である上位置の試料2のCNTは、複数のCNTがほぼ平行に束となって束状CNTを複数形成し、これらの束状CNTが網状組織を構成するように、折り重なって配列されたCNT配列材料を形成していることがわかる。これに対し、中心位置や下位置の試料2のCNTは、配列した組織を構成しているとはいい難いものであった。また、図13に示すように、無重力状態である上位置で形成されたCNT配列材料のCNTの高さは、±8nm以下であるので、複数本の単層CNTが束なったものであると考えられる。なお、図13(a)中の逆三角と図13(b)中の逆三角とが対応している。また、図13(a)は図の上位置の右端の写真と同部分のものを示している。
【0026】
<まとめ>
試料1、2の結果を比較すると、切断したCNTの長さが1μmを超えると、高度な配列組織化が可能なことがわかる。
【0027】
次に、磁場と基板の傾きとの関係によって、CNTの配向がどのように変化するか上記試料2を用いて検証した。具体的には、図14に示すように、基板6を傾斜板7に設置し、載置台8と支持棒9とを用いて外部磁場に対して基板6を所定角度(θ=90°、60°、45°)傾斜させ、図1の場合と同様に上、中心、下位置において、それぞれの鉛直方向の磁場内におけるCNTの配向状態を調べた。このとき、磁場のポイントがずれないように適宜調整し、上記試料1、2の場合の配列方法と同様にしてCNT配列材料を得た。その結果を図15、19、23に示す。また、図16、17、及び18に図15の上位置の左端、左から2番目、及び右端のAFM写真を示す。図20、21、及び22に図19の上位置の左端、左から2番目、及び右端のAFM写真を示す。図24、25、及び26に図23の上位置の左端、左から2番目、及び右端のAFM写真を示す。
【0028】
15~26を見ると、どの場合も上位置での基板において、CNTが配向していることがわかる。また、角度θが磁場に対して大きくなるにつれて(図231915の順に)、CNTが高度に配列組織化されていることがわかる。
【0029】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。本発明の代表として、上記ではCNTについて詳述したが、グラスファイバー、金属ファイバー、半導体ファイバー、セラミックスファイバー、炭素ファイバー、生体物質(DNA、ポリペプチド、タンパク質)、高分子などもCNTと同様にして高度な配列組織化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、導電性複合材料(帯電防止材、静電放電材、導電性プラスチックなど)や、強度向上複合材料(防弾製品など)の作製に適用できる。また、燃料電池や太陽電池、熱伝導性複合材料(電子部品用パッケージなど)、電子デバイス(電子材料配線など)にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)が本発明に係る実施例に用いる超電導磁石装置と基板などとの関係を示す概略図、(b)が(a)で示した超電導磁石装置の磁場発生領域内における磁場強度の分布を示すグラフである。
【図2】試料1の上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。
【図3】図2の上位置の左端に示したAFM写真である。
【図4】図2の上位置の左から2番目に示したAFM写真である。
【図5】図2の上位置の右から2番目に示したAFM写真である。
【図6】図2の上位置の右端に示したAFM写真である。
【図7】(a)が試料1の上位置において配向されたCNTのAFM写真であり、(b)が(a)に記載された線におけるCNTの断面高さの情報を示すグラフである。
【図8】試料2の上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。
【図9】図8の上位置の左端に示したAFM写真である。
【図10】図8の上位置の左から2番目に示したAFM写真である。
【図11】図8の上位置の右から2番目に示したAFM写真である。
【図12】図8の上位置の右端に示したAFM写真である。
【図13】(a)が試料2の上位置において配向されたCNTのAFM写真であり、(b)が(a)に記載された線におけるCNTの断面高さの情報を示すグラフである。
【図14】磁場と基板の傾きとの関係によって、CNTの配向がどのように変化するかを検証するために使用した実験装置の概略図である。
【図15】図14の装置でθ=90°として、上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。
【図16】図15の上位置の左端に示したAFM写真である。
【図17】図15の上位置の左から2番目に示したAFM写真である。
【図18】図15の上位置の右端に示したAFM写真である。
【図19】図14の装置でθ=60°として、上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。
【図20】図19の上位置の左端に示したAFM写真である。
【図21】図19の上位置の左から2番目に示したAFM写真である。
【図22】図19の上位置の右端に示したAFM写真である。
【図23】図14の装置でθ=45°として、上位置、中心位置、下位置において配向されたCNTのAFM写真である。
【図24】図23の上位置の左端に示したAFM写真である。
【図25】図23の上位置の左から2番目に示したAFM写真である。
【図26】図23の上位置の右端に示したAFM写真である。
【符号の説明】
【0032】
1 内筒
2a、3a、4a、6 基板
2b、3b、4b、8 載置台
5、9 支持棒
7 傾斜板
図面
【図1】
0
【図14】
1
【図2】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
8
【図9】
9
【図10】
10
【図11】
11
【図12】
12
【図13】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25