TOP > 国内特許検索 > 多周波帯対応電波吸収体 > 明細書

明細書 :多周波帯対応電波吸収体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4889180号 (P4889180)
公開番号 特開2004-140194 (P2004-140194A)
登録日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成16年5月13日(2004.5.13)
発明の名称または考案の名称 多周波帯対応電波吸収体
国際特許分類 H05K   9/00        (2006.01)
H01Q  17/00        (2006.01)
FI H05K 9/00 M
H01Q 17/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願2002-303579 (P2002-303579)
出願日 平成14年10月17日(2002.10.17)
審判番号 不服 2010-012350(P2010-012350/J1)
審査請求日 平成17年8月3日(2005.8.3)
審判請求日 平成22年6月8日(2010.6.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】岡野 好伸
【氏名】佐藤 烈士
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
参考文献・文献 特開平10-275997(JP,A)
特開2002-76671(JP,A)
調査した分野 H01Q17/00
H05K9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
導電体から構成された第1の膜と、
抵抗体から構成された第2の膜と、
前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置され、方形の導体膜から構成された第3の膜と、
を備え、
前記第3の膜は、第1の膜から所定距離離れた位置にマトリクス状に配置された複数の方形の導体膜、又は、前記第1の膜から所定距離離れた位置に配置され、複数の開口が形成された方形の導体膜から構成され
前記所定距離は、第1周波数の電磁波と、該第1周波数よりも高い第2周波数の電磁波と、の双方の位相が、前記第2の膜から入射されて前記第1の膜で反射して前記第2の膜に戻ってくるまでに略360°変化して、該第1周波数の電磁波と該第2周波数の電磁波との双方が吸収されるように定められている、ことを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
前記第3の膜は、前記第1の膜と第2の膜との間に配置された方形の導体膜の層を複数層備えることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
【請求項3】
前記第1の膜と第3の膜及び第3の膜と第2の膜との間に配置された誘電体、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電波吸収体。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁波の反射を抑制しつつ、外部空間への電磁波漏洩を遮断すべく特定の電磁波を吸収する電波吸収体に関し、特に、複数の周波数の電磁波の吸収に優れた電波吸収体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
オフィスや工場等において、情報交換に無線LAN(Local Area Network)が使用されている。しかし、無線LANを単純に導入しただけでは、電磁波が外部に漏れて機密情報が外部に漏洩したり、電磁波がオフィスや工場の壁・天井等で反射することにより、空間内に反射波が減衰せずに残存して、通信環境を悪化させ、符号誤り率が高くなったり、情報伝達レートが低下したりする場合がある。
【0003】
上記問題点に対応するために、無線通信に使用する特定の周波数の電磁波を吸収する1/4λ型電波吸収体が開発されている。
図11に示すように、1/4λ型電波吸収体31は、金属箔33と抵抗被膜35に1/4λ(λは吸収対象電磁波の波長)の間隔DBを置いて対向して配置された電気抵抗体を塗布したフィルムまたは布(以下、抵抗被膜と呼ぶ。)35とから構成されている。
【0004】
1/4λ型電波吸収体31が電磁波を吸収する原理を図12を参照して説明する。抵抗被膜35に入射した波長λの電磁波(イ)は、抵抗皮膜35を透過し、金属箔33に達するまでに位相が90°変化する。電磁波(イ)は金属箔33に反射されて、位相が反転する。従って、この時点で電磁波(イ)は、抵抗被膜35を通過したときと比較して、90°+180°=270°の位相変化を起している。金属箔33で反射された入射電磁波(イ)は抵抗被膜35の位置まで戻る間にさらに90°位相が変化する。従って、電磁波(イ)と後から入射した電磁波(ア)との位相差は360°となり先の入射波(イ)と後の入射波(ア)とは同一位相関係となる。結果として、電磁波(ア)と(イ)とは互いに強め合い、電磁波の強度は抵抗被膜35の位置で最大値を得る。すると、電磁波のエネルギーは効率的に抵抗被膜35に吸収され、最終的に熱に変わり、電磁波の反射が解消される。
【0005】
図13には、金属箔33と抵抗被膜35との間隔DBを16mmとした場合の1/4λ型電波吸収体31の周波数と反射損失との評価の結果を示す。図13の縦軸の「Reflection loss」は入射電界強度に対する反射電界強度の割合を示し、「Reflection loss」=20×(常用対数)×(入射電界強度/反射電界強度)として計算されている。また、横軸は入射電磁波の周波数を示す。
【0006】
従来の1/4λ型電波吸収体31では、図11が示すように、特定の波長の電磁波しか吸収できない(特許文献1参照)。
【0007】
現在では、2.4GHz帯(λ=125mm)と5.2GHz帯(λ=57.7mm)との複数の周波数帯が無線LAN通信に利用されている。従来の1/4λ型電波吸収体31は、このような環境下では、どちらか一方の周波数帯の電波を吸収することしかできず、周波数別に複数の吸収体を用意しなければならない。しかしながら、電磁波の周波数別に1/4λ型電波吸収体31を製造・配置することは煩雑で、また、コスト的にも不利である。
【0008】
また、電波吸収体の構造を複雑にすれば、複数の周波数に対応することも可能であるが、構造が複雑化し、大型化し、製造が困難となり、さらに、製造コストも高くなってしまう。
【0009】
【特許文献1】
特開平5-114813公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は上記従来の欠点を解決するためになされたもので、単体で多周波帯に対応可能な電波吸収体を提供することを目的とする。
また、この発明は、簡単な構造で小型でありながら、複数周波帯の電磁波を吸収可能な電波吸収体を提供することを他の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、導電体から構成された第1の膜と、抵抗体から構成された第2の膜と、前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置され、方形の導体膜から構成された第3の膜と、を備え、前記第3の膜は、第1の膜から所定距離離れた位置にマトリクス状に配置された複数の方形の導体膜、又は、前記第1の膜から所定距離離れた位置に配置され、複数の開口が形成された方形の導体膜から構成され、前記所定距離は、第1周波数の電磁波と、該第1周波数よりも高い第2周波数の電磁波と、の双方の位相が、前記第2の膜から入射されて前記第1の膜で反射して前記第2の膜に戻ってくるまでに略360°変化して、該第1周波数の電磁波と該第2周波数の電磁波との双方が吸収されるように定められている、ことを特徴とする電波吸収体である。
【0013】
また、前記第3の膜は、前記第1の膜と第2の膜との間に配置された方形の導体の層を複数層備えてもよい。
【0014】
前記第1の膜と第3の膜及び第3の膜と第2の膜との間に配置された誘電体、を備えてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る電波吸収体について図面を参照して説明する。
本実施の形態の電波吸収体11は、図1に示すように分解斜視図で、図2に側面図で示すように、ほぼ方形の導体箔13と、導体箔13に対向して配置された方形の抵抗被膜15と、導体箔13と抵抗被膜15の間に配置された導体層17と、これらの間を充填する樹脂19(図2)と、これら全体を被覆する保護層(図示せず)とより構成される。
【0016】
導体箔13は、電波の完全反射体である銅、アルミニウム又はそれらの合金等の金属の方形の膜から形成され、例えば、縦横30cmから1m、厚さ100μm~1mmに形成される。
【0017】
抵抗皮膜15は、導体箔13とほぼ等しいサイズで、導体箔13から16mm離れた位置に配置され、導電率が5S/mの膜から構成される。抵抗被膜15は、例えば、電気抵抗体であるマンガニン等のCu合金膜、貴金属合金膜、炭素膜、あるいは、Pt・Au・Pb等の貴金属塩又はSnO等の金属の酸化物等を塗布したフィルム又は布、から構成される。
【0018】
導体層17は、一辺の長さが150mmの正方形の複数の導体膜17aが、導体箔13から3mmの位置に、相互に20mmの間隔でマトリクス状に配置させて構成される。各導体膜17aは、導体箔13と同様、電波の完全反射体である銅、アルミニウム又それらの合金等の金属から構成される。
【0019】
樹脂19は、導体箔13と導体層17の間及び導体層17と抵抗皮膜15との間に充填された、例えば、誘電率が1.1~1.3の、発泡スチロール等の樹脂から構成される。
【0020】
図示せぬ保護層は、プラスチック等の樹脂から構成され、電波吸収体11全体をカバー・保護する。電波吸収体11は、縦横30cm~1m、厚さ18~22mm程度の方形板状に構成されている。
【0021】
次に、この電波吸収体の製造方法を図3(a)~(c)を参照して説明する。
まず、厚さ3mmで、誘電率が1.1~1.3の発泡スチロール板19aを用意する。図3(a)に示すように、発泡スチロール板19aの一主面に、この発泡スチロール板19aとほぼ同一サイズの導体箔13を接着する。次に、発泡スチロール板19aの他主面に、図3(b)に示すように、一辺が150mmの正方形の導体膜17aを20mmの間隔で配置・接着する。
【0022】
一方で、発泡スチロール板19aとほぼ同一のサイズ・材質で、厚さが13mmの発泡スチロール板19bを用意する。このスチロール板19bの一主面に、この抵抗被膜15を接着する。
【0023】
次に、発泡スチロール板19aの他主面と発泡スチロール板19bの他主面とを、図3(c)に示すように接着する。
その後、必要に応じて、全体を樹脂などで構成された保護膜でカバーする。
【0024】
上記構成の電波吸収体11の電波吸収特性を図4に示す。
この特性は、抵抗被膜15側から、電波吸収体11に垂直に2~6GHzの電磁波を照射し、各周波数における「Reflection loss」を測定して得られたものである。さらに、図4には、比較のため、図11に示した従来の1/4λ型電波吸収体31の「Reflection loss」も示す。
【0025】
図4に示す特性から明らかなように、従来の1/4λ型電波吸収体31では特定の1つの周波数帯の電磁波においてのみ反射波抑圧特性を発揮しているが、この実施形態の電波吸収体11は、2.4GHz帯と5.2GHz帯の2つの周波帯の電磁波において良好な反射波抑圧特性を発揮している。
【0026】
従って、この実施形態の電波吸収体11は、単体で、無線LANに割り当てられている周波数帯である2.4GHz帯と5.2GHz帯との2周波帯に対応可能である。
【0027】
この点を原理的に説明すると、従来の1/4λ型電波吸収体31を電磁波の視点から捉えた等価的な電気回路は図5のようになる。図5の等価的な電気回路(等価回路)は、端子aと端子bとに接続された抵抗R35と、端子aに接続されたインピーダンスZと、端子bに接続されたインピーダンスZとから構成されており、また、インピーダンスZ同士は互いに接続されている。抵抗Rは、抵抗被膜35と等価であり、インピーダンスZは、導体箔33での入射電界の位相を90°遅らせるインピーダンスである。
【0028】
これに対し、本実施の形態にかかる電波吸収体11の等価回路は図6に示すように、図5の等価回路のインピーダンスZの他にインピーダンスZを追加したものとして表される。図6の等価的な電気回路(等価回路)は、端子aと端子bとに接続された抵抗R13と、端子aに接続されたインピーダンスZと、インピーダンスZに接続されたインピーダンスZと、端子bに接続されたインピーダンスZと、インピーダンスZに接続されたインピーダンスZとから構成されており、また、インピーダンスZ同士は互いに接続されている。抵抗Rは、抵抗被膜15と等価であり、インピーダンスZは、導体箔13での入射電界の位相を90°遅らせるインピーダンスであり、インピーダンスZは、導体箔13と導体層17とによって形成されるインピーダンスである。
【0029】
入射周波数が5.2GHzの場合、図6の等価回路は、インピーダンスZがインピーダンスZに比べて無視できるほど小さくなるため、図5の等価回路とほぼ等しくなる。よって、入射周波数に関して電波吸収体11は、図4に示すように、従来の1/4λ型電波吸収体31と同様の傾向を示し、5.2GHz帯の入射周波数の電磁波を効果的に吸収することができる。
【0030】
一方、入射周波数が2.4GHzの場合、導体箔13と抵抗被膜15との間隔は1/4λより短いため、インピーダンスZのみでは、入射電界の位相を360°変化させることはできない。しかし、この場合、インピーダンスZがインピーダンスZを補完し、これらの合成インピーダンスZ(=Z+Z)全体として入射電界の位相を360°変化させることができる。よって、電波吸収体11は、図4に示すように、2.4GHz帯の入射周波数の電磁波をも効果的に吸収することができる。
また、上述のように、導体箔13と抵抗被膜15との間隔が1/4λより短くても吸収効果を得ることができることから、従来の2.4GHz帯対応の1/4λ型電波吸収体よりも薄型に形成することができる。
【0031】
従って、この電波吸収体11を、無線LANを使用している室内の壁面、床、天井の全面又は一部に配置することにより、使用されている周波数帯にかかわらず、電磁波の反射を抑え、良好な通信環境を維持できる。しかも、外部への電磁波の漏洩も防止できる。また、構成が非常に簡単・軽量で、厚さも比較的薄く形成することができる。
【0032】
なお、この発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。上記の実施形態において示した数値、吸収対象の周波数帯域2.4GHz帯と5.2GHz帯とは一例であり、任意に変更可能である。さらに、導体箔13と抵抗被膜15との間隔16mm、導体箔13と導体層17との間隔3mmなどは、吸収対象の周波数帯域及び樹脂19の誘電率等に応じて任意に変更可能である。同様に、導体層17を構成する導体膜17aのサイズ150mm×150mmや、その間隔20mmも、吸収対象となる周波数帯や希望する吸収特性等に応じて適宜変更可能である。また、導体膜17aの形状は方形に限定されず、図7(a)~(b)に示すように、三角形、円形等であってもよい。
【0033】
また、導体層17を複数の導体層から構成するのではなく、導電性のメッシュから構成されてもよい。例えば、図8(a)~(c)に示すように、方形、三角形、円形等の開口が形成されたメッシュ(網)状の1枚の導体膜から導体層17を形成してもよい。
【0034】
さらに、本発明は、2つの電波吸収帯域を備える電磁波吸収体に限定されるものではなく、3以上の吸収周波帯を備えるものにも対応可能である。この場合には、例えば、図9(a)、(b)に断面で示すように、導体箔13と抵抗被膜15の間に、減衰対象の周波数の数と周波数に応じて、導体層17を複数層配置すればよい。電波吸収体の中間層に挿入する導体層17のサイズや配置位置を選択することにより、様々な周波帯を吸収帯域とすることが可能である。例えば、導体箔13と抵抗被膜15との間にn層の導体層17を配置すれば、n+1周波帯に対応可能な電波吸収体を実現することができる。
【0035】
また、図10に示すように、電波吸収体11上に、形状やサイズの異なる導体層17を配置することにより、多数の周波数の電磁波を吸収できるようにしてもよい。
【0036】
上記実施の形態では、樹脂19として発砲スチール版を使用する例を示したが、樹脂19の材質は任意である。誘電率の高い材質を使用すれば、電波吸収体をさらに薄くすることが可能である、例えば、樹脂19として、チタン酸バリウム、ロシェル塩又はジルコン酸鉛等の高誘電体を混入したプラスチップ樹脂などを使用すれば、厚さ数mmの電波吸収体11も製造可能である。
【0037】
なお、これまで特に説明はしなかったが、本発明の電波吸収体に吸収される電磁波は、垂直偏波、水平偏波、円偏波いずれの電磁波でもよい。このため、本発明の電波吸収体は、無線LANから放出される垂直偏波や水平偏波の電磁波のみならず、BS(Broadcasting Satellite)放送等から放出される円偏波の電磁波にも適用可能である。
【0038】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば多周波帯に対応可能な電波吸収体の実現が可能となる。また、簡単な構造であるため工業化するに当たり大変有利である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態にかかる電波吸収体の分解斜視図である。
【図2】図1に示す電波吸収体の側面から見た断面図である。
【図3】(a)~(c)は、図1及び図2に示す構成の電波吸収体の製造方法を説明するための工程図である。
【図4】実施の形態に係る電波吸収体の特性と従来の電波吸収体の特性とを対比して示す図である。
【図5】従来の電波吸収体の等価回路図である。
【図6】実施の形態に係る電波吸収体の等価回路図である。
【図7】図1及び図2に示す導体層の変形例を示す図である。
【図8】導体層をメッシュから構成した変形例を示す図である。
【図9】導体層を多層構造とした変形例を示す図である。
【図10】導体層の構造を領域で異なるように形成した変形例を示す図である。
【図11】従来の1/4λ型電波吸収体の分解斜視図である。
【図12】従来の1/4λ型電波吸収体が電磁波を吸収する原理を説明するための図である。
【図13】従来の1/4λ型電波吸収体の特性図である。
【符号の説明】
11 電波吸収体
13 導体箔
15 抵抗被膜
17 導体層
19 樹脂
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12