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明細書 :電波吸収体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4948810号 (P4948810)
公開番号 特開2007-087980 (P2007-087980A)
登録日 平成24年3月16日(2012.3.16)
発行日 平成24年6月6日(2012.6.6)
公開日 平成19年4月5日(2007.4.5)
発明の名称または考案の名称 電波吸収体
国際特許分類 H05K   9/00        (2006.01)
E04B   1/92        (2006.01)
FI H05K 9/00 M
E04B 1/92
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2005-271217 (P2005-271217)
出願日 平成17年9月16日(2005.9.16)
審査請求日 平成20年9月3日(2008.9.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
発明者または考案者 【氏名】岡野 好伸
【氏名】安井 裕史
個別代理人の代理人 【識別番号】100095407、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 満
審査官 【審査官】遠藤 邦喜
参考文献・文献 特開2004-140194(JP,A)
特開2000-031684(JP,A)
特開2002-026570(JP,A)
特開2005-012204(JP,A)
特開2002-314284(JP,A)
特開2002-076681(JP,A)
実開昭63-090897(JP,U)
特開2006-179671(JP,A)
特開2004-319788(JP,A)
調査した分野 H05K 9/00
E04B 1/92
特許請求の範囲 【請求項1】
導電体から構成された反射膜と、
抵抗体から構成され、前記反射膜から所定の距離離れた位置に配置され、前記反射膜に対峙する吸収膜と、
導電体で構成され、前記吸収膜の前記反射膜と対向する面に付着されたパッチ素材と、を備え
前記パッチ素材は、複数であり、前記面にマトリクス状に配置され、
前記パッチ素材と前記反射膜との間は、比誘電率が1~1.2の誘電体で充填されている、
ことを特徴とする電波吸収体。
【請求項2】
前記複数のパッチ素材には、サイズ或いは形状の異なる複数種のパッチ素材が含まれていることを特徴とする請求項に記載の電波吸収体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電波吸収体に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィス等において、情報交換に無線通信が使用されている。しかし、無線通信の電磁波がオフィス等の壁・天井で反射することにより、空間内に反射波が減衰せずに残存して、通信環境を悪化させ、符号誤り率が高くなったり、情報伝達レートが低下したりする場合がある。
【0003】
上記問題点に対応するために、1/4λ型電波吸収体や、特許文献1に示された多周波帯対応電波吸収体が開発されている。

【特許文献1】特開2004-140194号公報
【0004】
1/4λ型電波吸収体は、無線通信で使用する電磁波を吸収するものであり、金属箔と、その金属に1/4λ(λは吸収対象電磁波の波長)の間隔を置いて対向した抵抗膜で構成されている。抵抗膜は、電気抵抗体を塗布したフィルムまたは布で形成されている。
【0005】
特許文献1の多周波帯対応電波吸収体は、図7に示すように、方形の導体箔13と、導体箔13に対向して配置された方形の抵抗被膜15と、導体箔13と抵抗被膜15の間に配置された導体層17とを備えている。
抵抗皮膜15は、導体箔13とほぼ等しいサイズで、金属の酸化物を塗布したフィルム又は布等から構成される。導体層17は、複数の導体膜17aがマトリクス状に配置させて構成される。各導体膜17aは、導体箔13と同様、電波の完全反射体から構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1/4λ型電波吸収体では、特定の周波数帯域について、反射損失を増加させることができる。特許文献1の多周波帯対応電波吸収体では、中心周波数の異なる複数の帯域の反射損失を増加させることができる。
【0007】
しかしながら、室内無線通信おけるマルチパスによるフェージング対策として使用する電波吸収体では、電波暗室に用いる電波吸収体ほどの電波吸収特性を持つ必要がない。また、室内で利用される無線通信の帯域が増える方向にある。さらに、将来的に、UWB(Ultra Wide Band)を利用する無線通信も盛んになることが想定される。こういった室内環境やUWB等の周波数帯域の点から、電波吸収体に要求される特性を検討すると、反射損失のピークは、10dB程度の低いレベルでよいが、広帯域の電波を吸収する必要がある。比帯域幅としては100パーセント程度あればよい。
【0008】
このような広帯域の電波吸収体は、1/4λ型電波吸収体では実現できない。特許文献1の多周波帯対応電波吸収体で広帯域の電波吸収体を実現しようとすると、導体層17の数を増やして、各導体層17にサイズの異なる導体膜17aをマトリクス状に配置する必要がある。ところが、異なるサイズの導体膜17aを規則的マトリクス状に配置することは困難であり、実用的でなかった。
【0009】
そこで、本発明は、広帯域の電波を吸収することができ、かつ実用的な電波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の観点に係る電波吸収体は、
導電体から構成された反射膜と、
抵抗体から構成され、前記反射膜から所定の距離離れた位置に配置され、前記反射膜に対峙する吸収膜と、
導電体で構成され、前記吸収膜の前記反射膜と対向する面に付着されたパッチ素材と、を備え
前記パッチ素材は、複数であり、前記面にマトリクス状に配置され、
前記パッチ素材と前記反射膜との間は、比誘電率が1~1.2の誘電体で充填されている、
ことを特徴とする。
【0012】
また、前記複数のパッチ素材には、サイズ或いは形状の異なる複数種のパッチ素材が含まれていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、パッチ素材が吸収膜に付着されているので、吸収膜が電波エネルギーの吸収体となると共に、パッチ素材で得られる電波吸収特性のQ値を下げるように機能する。これにより、広帯域の電波を吸収することができ、かつ実用的な電波吸収体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電波吸収体を示す斜視図であり、図2は、図1の電波吸収体の断面図である。
この電波吸収体は、方形の導体箔20と、導体箔20に対峙して配置された方形の抵抗被膜21と、抵抗被膜21の導体箔20に対向する面に付着されたパッチ素材22と、導体箔20と抵抗被膜21及びパッチ素材22との間を充填する樹脂23と、これら全体を被覆するカバー(図示せず)とにより構成される。
導体箔20は、電波の反射膜であり、電波の完全反射体である銅、アルミニウム又はそれらの合金等の金属の膜から形成され、例えば、縦横30cmから1m、厚さ100μm~1mmに形成される。
【0016】
抵抗被膜21は、電波を減衰させる吸収膜であり、導体箔20とほぼ等しいサイズで、導体箔20から例えば4mm離れた位置に配置され、厚みが10mmの膜から構成されている。抵抗被膜21は、炭素粉を混入した発砲フォーム等で形成され、その導電率は、炭素含有率によって例えば0.5S/mに調整されている。抵抗被膜21の比誘電率は2~3程度である。
【0017】
パッチ素材22は、例えば一辺の長さが150mmの正方形の外形を有している。パッチ素材22は、導体箔20と同様、電波の完全反射体である銅、アルミニウム又それらの合金等の金属から構成され、抵抗被膜21に付着されて導体箔20に対向している。複数のパッチ素材22がマトリクス状に抵抗被膜21に付着されている。
【0018】
樹脂23は、例えば、比誘電率が1~1.2程度であり、発砲スチロール等で形成されている。
【0019】
次に、この電波吸収体の製造方法を図3(a)~(c)を参照して説明する。
まず、厚さ10mmに形成された抵抗被膜21を用意する。
抵抗被膜21の一主面に、裁断されたパッチ素材22を導電性接着剤を用いて接着する(図3(a))。このとき、パッチ素材22の配置がマトリクス状になるようにしてパッチ素材22を抵抗被膜21に接着する。
【0020】
導電性接着剤が乾燥してパッチ素材22が抵抗被膜21に固定された後、誘電率が1~1.2程度で厚みが3mmの発砲スチロール板を樹脂23として、抵抗被膜21の一主面に非導電性の接着剤で付着させる(図3(b))。
【0021】
非導電性の接着剤が乾燥して、樹脂23が抵抗被膜21に固定された後、樹脂23の抵抗被膜21が接着されていない面に、厚みが100μm~1mmの導体箔20を任意の接着剤で接着させる(図3(c))。以上で電波吸収体が製造される。
【0022】
次に、図1の電波吸収体の特性について説明する。
図1の電波吸収体の特性を評価するために、図4(a)に示すAパターンのサンプルと、図4(b)に示すBパターンのサンプルと、図4(c)に示すCパターンのサンプルについて、電波の吸収量を調べた。
【0023】
Aパターンのサンプルは、本実施形態の電波吸収体と対比するための参考例であり、導体箔20に直接、抵抗被膜21を接着し、抵抗被膜21の内部にパッチ素材22を埋め込んだものである。抵抗被膜21の厚さは、10mmであり、抵抗被膜21の導電率は0.53s/mであり、抵抗被膜21の比誘電率は2.54である。パッチ素材22は、導体箔20からの距離が3mmとなる位置に埋め込まれ、導体箔20に対向している。
【0024】
Bパターンのサンプルは、本実施形態の電波吸収体を模擬したものであり、導体箔20に対して厚み3mmの樹脂23を介してパッチ素材22及び抵抗被膜21が対向している。樹脂23の比誘電率は、1~1.2程度である。抵抗被膜21の厚みは10mmであり、抵抗被膜21の導電率は0.53s/mである。抵抗被膜21の比誘電率は2.54である。
【0025】
Cパターンのサンプルは、本実施形態の電波吸収体と対比するための参考例であり、導体箔20上に、厚みが3mmの樹脂23aを配置し、その樹脂23aの上に、パッチ素材22を付着させている。そして、パッチ素材22のうえに、厚みが3mmの樹脂23bを配置し、樹脂23bの上に抵抗被膜21を配置している。樹脂23a,23bの比誘電率は1~1.2程度である。抵抗被膜21の厚みは10mmであり、導電率は0.53s/mである。抵抗被膜21の比誘電率は2.54である。
【0026】
Aパターン、Bパターン及びCパターンのサンプルの抵抗被膜21側から電波を入射し、反射損失を測定すると、図5のようになる。
【0027】
Aパターンのサンプルでは、6.8GHz近辺を中心周波数とする吸収量のピークが得られるが、吸収量が10dBを超える周波数帯域は狭い。比帯域幅は、50%程度である。
【0028】
Cパターンのサンプルでは、6.3GHz近辺を中心周波数とする吸収量のピークと10.6GHz近傍を中心周波数とする2つの吸収量のピークが得られる。しかしながら、Cパターンのサンプルでは吸収量が10dBを超える周波数帯域は狭く、不十分である。比帯域幅は、50%程度である。
【0029】
Bパターンのサンプルでは、6GHz近傍に吸収量のピークがあるが、その周波数における吸収量は、15dBと低い。しかしながら、吸収量が10dBを超える帯域は、A,Cパターンのサンプルに比べて遙かに広くなっている。比帯域幅は93%である。
【0030】
したがって、パッチ素材22が抵抗被膜21に付着されているので、抵抗被膜21が電波エネルギーの吸収体となると共に、パッチ素材22で得られる電波吸収特性のQ値を下げるように機能するものと推定とされる。
【0031】
以上のように、本実施形態の電波吸収体は、広帯域の電波を吸収することができ、かつ実用的な電波吸収体を提供することができる。
【0032】
尚、本発明は、条規実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。その変形例としては、例えば次のようなものがある。
(1)導体箔20と抵抗被膜21との間隔は、吸収対象の周波数帯域及び樹脂23の誘電率等に応じて任意に変更可能である。同様に、パッチ素材22のサイズは、吸収対象となる周波数帯や希望する吸収特性等に応じて適宜変更可能である。
【0033】
(2)図6(a),(b)は、変形例を示す図であり、抵抗被膜21が示されている。
抵抗被膜21にマトリクス状に配置されるパッチ素材22の形状は、方形ばかりでなく、任意の形状ものが選択でき、例えば図6(a)のように、三角形でもよく、図6(b)のように円形でもよく、さらに、これらを組み合わせてもよい。
【0034】
(3) 各パッチ素材22は、導体のメッシュで構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る電波吸収体の斜視図である。
【図2】図1の電波吸収体の断面図である。
【図3】電波吸収体の製造方法の説明図である。
【図4】サンプルの説明図である。
【図5】各サンプルの吸収量の測定結果を示す図である。
【図6】パッチ素材の変形例を示す図である。
【図7】従来の電波吸収体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
20 導体箔
21 抵抗被膜
22 パッチ素材
23 樹脂
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6