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明細書 :製氷装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5135576号 (P5135576)
公開番号 特開2008-089251 (P2008-089251A)
登録日 平成24年11月22日(2012.11.22)
発行日 平成25年2月6日(2013.2.6)
公開日 平成20年4月17日(2008.4.17)
発明の名称または考案の名称 製氷装置
国際特許分類 F25C   1/18        (2006.01)
F25B  21/02        (2006.01)
FI F25C 1/18 A
F25B 21/02 Q
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2006-271669 (P2006-271669)
出願日 平成18年10月3日(2006.10.3)
審査請求日 平成21年9月25日(2009.9.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】上村 靖司
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100119312、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 栄松
審査官 【審査官】武内 俊之
参考文献・文献 特開昭58-164974(JP,A)
特開昭64-063767(JP,A)
特開2002-139268(JP,A)
特開平08-054164(JP,A)
特開平05-332652(JP,A)
特開2002-213848(JP,A)
特開2004-003754(JP,A)
特開2000-121218(JP,A)
特開昭60-062539(JP,A)
特開昭63-006370(JP,A)
調査した分野 F25C 1/18
F25B 21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
上部に開口部を有する容器と、前記開口部を覆う真空槽と、前記真空槽の上に設けられたペルチェ素子と、前記容器の内部と連通する緩衝容器とを備え、前記容器の上縁に載置された前記真空槽の下板に接するまで充填された前記容器内の水を単結晶氷に氷結させることを特徴とする製氷装置。
【請求項2】
前記ペルチェ素子の上に放熱体を取り付けたことを特徴とする請求項記載の製氷装置。
【請求項3】
前記容器が内容器と外容器とを有し、前記内容器と外容器との間の空隙を真空にした断熱容器からなることを特徴とする請求項1または2記載の製氷装置。
【請求項4】
前記真空槽と前記容器の周囲が真空断熱材で覆われていることを特徴とする請求項1または2記載の製氷装置。
【請求項5】
前記真空槽内の真空度が略0.01気圧であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の製氷装置。
【請求項6】
少なくとも1以上の温度検出器を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の製氷装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の固化方法、製氷方法および製氷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
常温で液体である物質が固化した物、例えば水が氷結した氷は、一般家庭において広く普及している冷凍冷蔵庫によって簡単に入手することができる。しかし、一般家庭で普及している冷凍冷蔵庫により氷結させた氷は多結晶であり、単結晶氷とはならない。
【0003】
単結晶氷は透明度が高く、見た目にも美しいことから氷としての商品価値が高い。また、単結晶氷は硬度が高く氷解し難いという特性をも有している。このような特性があることから、従来技術においても種々の方法で単結晶氷を得る技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、単結晶氷である氷筍の結晶方位に直交する面の摩擦係数が低いことに着目して、人工的に氷筍を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。

【特許文献1】特開平5-264137号公報
【特許文献2】特開平11-236295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される製氷装置にあっては、低温熱源である製氷板上において、静止状態または流動状態で水を徐々に氷結させている。このような製氷装置では、単結晶氷を製造することはできても任意形状の単結晶氷を製造することはできなかった。また、製氷板上に水を氷結させた場合には、氷結後に氷結板上から氷を剥がすことは容易でなかった。
【0006】
また、特許文献2に開示された発明においては、氷結する単結晶氷は筍形状に製造することはできるものの、任意の形状の単結晶氷を製造することはできなかった。また、氷の結晶の方位も制御することはできなかった。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、硬度および透明度が高く商品価値の高い単結晶氷を、任意形状をもって連続的に製造できる製氷方法および製氷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の製氷装置の発明は、上部に開口部を有する容器と、前記開口部を覆う真空槽と、前記真空槽の上に設けられたペルチェ素子と、前記容器の内部と連通する緩衝容器とを備え、前記容器の上縁に載置された前記真空槽の下板に接するまで充填された前記容器内の水を単結晶氷に氷結させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項記載の発明は、請求項記載の製氷装置において、前記ペルチェ素子の上に放熱体を取り付けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項記載の発明は、請求項1または2記載の製氷装置において、前記容器が内容器と外容器とを備え、前記内容器と外容器との間の空隙を真空にした断熱容器からなることを特徴とするものである。
【0011】
請求項記載の発明は、請求項1または2記載の製氷装置において、前記真空槽と前記容器の周囲が真空断熱材で覆われていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項記載の発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の製氷装置において、前記真空槽内の真空度が略0.01気圧であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載の製氷装置において、少なくとも1以上の温度検出器を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
発明によれば、硬くて透明度が高く、商品価値の高い単結晶氷を連続的に製造できる固化方法および製氷方法を実現できる。また、0℃よりもいくらか高い雰囲気温度で製氷できるため、製氷容器に対する凍結付着力が弱く、氷を製氷容器から容易に取り出すことができる製氷方法を実現できる。
【0015】
また、本発明によれば、硬くて透明度が高く、商品価値の高い任意形状の単結晶の氷を連続的に製造できる製氷装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施例としての製氷装置10を示す縦断面図である。図2は、図1中のA-A矢視断面図である。本実施例では液体として安価で、取扱いが容易で、かつ入手も容易ということで水を用いて実験をした。
【0017】
図1において、氷結させる水11を収容する容器12は有底筒状をしており、上部開口部13を除く周囲は断熱材14で覆われている。容器12の水平断面形状は矩形としているが、矩形以外の多角形とすることもできるし、単純な円形とすることもできる。容器12の底部近くの側面には孔15が設けられ、該孔15には前記断熱材14の外部まで延びるパイプ16の一端16aが液密に接続されている。そして、前記パイプ16の他端16bには緩衝容器17が液密に接続されている。容器12はステンレス鋼等の金属材料を用いて製作することも可能であるが、本実施例では透明なアクリル樹脂を用いて製作した。また、容器12と緩衝容器17とを接続するパイプ16の材料は熱伝導率が低い方が好ましく、非金属材料を用いるのが好適である。仮に、パイプ16を熱伝導率の高い材料で製作すると、パイプ16を経由して容器12と緩衝容器17との間の熱移動量が多くなってしまうからである。
【0018】
容器12の上部開口部13には箱状の真空槽18が配設される。本実施例の真空槽18は図2に示すように容器12の形状に対応して平面視矩形としているが、円形など他の形状であっても構わない。ここで肝心なことは容器の上部開口部13全体を真空槽18で覆うことである。そのため、本実施例では真空槽18の平面視寸法を容器12の開口部13より大きな寸法として製作されている。また、真空槽18の周囲は容器12と同様にして断熱材14で覆われる。このことにより周囲から真空槽18内へ熱が流入するのを極力抑制できる。
【0019】
断熱材14としては、発泡スチロール等の保温材を用いることができるが、汎用品として市販されている真空断熱材を用いることも可能である。また、コンパクトな寸法で断熱性能を重視する場合には、内容器と外容器とを有し、該内容器と外容器との間の空隙を真空にした真空断熱容器を用いるのが好適である。
【0020】
本実施例では、真空槽18の材質も容器12と同じく合成樹脂材料を採用している。真空槽18を構成する上板19および下板20の厚さは、熱移動の効率を高めるという観点からすると極力薄い方が好ましい。しかし、真空槽18の外面には大気圧が作用するため、板厚が薄すぎると真空槽として必要十分な機械的強度を確保できず、板厚を薄くするにも限界がある。本実施例では真空槽18を構成する上板19および下板20の厚さを3~4 mm としている。また、真空槽18の内部は略0.01気圧程度の真空度に設定している。真空槽18の内部を略0.01気圧程度の真空度に減圧するのは、空気分子の存在による対流現象を阻止するためである。したがって、真空槽内部の真空度は対流が発生しない程度で十分であり、必要以上に真空度を高める必要性はない。かかる理由から前記のような真空度に設定している。
【0021】
真空槽18の上板19の上には低温熱源としてのペルチェ素子21が載置され、さらに該ペルチェ素子21の上には放熱体22としてのヒートシンク23と電動ファン24が備えられている。平板状のペルチェ素子21の両面のうち、低温側となる面は真空槽の上板19に当接され、高温側となる面はヒートシンク23の下面に当接される。なお、電動ファン24はヒートシンク23の上面に装着されるが、電動ファン24はヒートシンク23からの放熱を効率的に行うためのものであり、ヒートシンク23だけで十分な放熱性能を確保できる場合には、電動ファン24を省略することができる。
【0022】
また、本実施例においては、容器12内の各部の温度および真空槽18内の各部温度を把握すべく、適所に温度検出器としての熱電対が配設されている。具体的には、容器内の上部25および下部26と、真空槽内の上部27および下部28に各1個の熱電対が配設されている。さらに、ペルチェ素子の低温側29と、周囲温度を計測するため製氷装置の近傍30にも熱電対が備えられている。
【0023】
次に、上述した製氷装置10を用いて液体である水から氷を製造する方法について説明する。製氷装置10の運転開始に先立って、容器12内に水11が充填される。水11は容器12の上部開口部13まで充填される。具体的には緩衝容器17から水を注入して容器12内に水11を充填することができる。容器12の上部開口部13まで水を完全に充填することができるよう、容器12の上端部には空気抜きとしての細孔(図示せず)が設けられている。したがって、緩衝容器17から水11を注入して、細孔から水が溢れ出ることを確認して細孔に栓をすることにより容器12内に水を充填することができる。このとき、緩衝容器17内の水面レベル31は、容器開口部13の高さと等しくなっている。なお、緩衝容器17を設置する本来の目的は、容器12内の水11が氷結する際の体積変化を吸収するためである。
【0024】
ここで、製氷装置10の設置される雰囲気温度は、2℃程度にコントロールされることが好ましい。雰囲気温度が常温であっても製氷できなくなることはないが、容器12内の温度と雰囲気温度との温度差が大きくなると、無駄な熱移動が生じてしまい製氷に要する時間が長くなるとともに、余分な電力を消費してしまうというデメリットが生じるからである。
【0025】
そして、ペルチェ素子21および電動ファン24に通電すると、ペルチェ素子21の下側、すなわち真空槽18の上板19に接する部分は-26℃程度まで冷却される。一方、ペルチェ素子21の上側、すなわちヒートシンク23に接する部分の温度は雰囲気温度以上に上昇し、発生した熱は電動ファン24によって生じる空気流に伝達されて放熱される。
【0026】
真空槽の上板19がペルチェ素子21により-26℃程度に冷却されると、真空槽の下板20との間に大きな温度差が生じる。真空槽の下板20は容器12の上縁に載置され、下板20の下面は水11に接していることから、下板20の温度は容器内の水11の温度に等しく、ペルチェ素子21に通電を開始した段階では10℃程度である。一方、真空槽18内は0.01気圧程度に減圧されていることから、真空槽の上板19と下板20との間に大きな温度差があっても、空気の対流による熱移動は生じない。真空槽の上板19と下板20との間の熱移動は、高温の下板20側から低温の上板19側への放射による熱移動に限られる。
【0027】
図3~図5は、本実施例による製氷装置10の運転中の各部温度の推移を示すデータである。各図とも横軸は氷結装置10の運転経過時間を示し、縦軸は温度を示している。図3に示すようにペルチェ素子21の低温側は運転開始後、急激に-26℃程度の温度まで冷却される。参考までに雰囲気温度も記録したが、雰囲気温度は略2℃程度に保持されている。
【0028】
図4には、真空槽内の上部27および下部28の温度が記録されている。真空槽内の上部27温度および下部28温度とも運転開始後1時間程度で急激に低下して2℃以下になる。その後は0℃~2℃程度の温度を保持するが、真空槽内の下部28温度に対して上部27温度の方が1℃程度低い状態で推移する。その理由は、真空槽内であることから空気の対流による熱移動はないものの、真空槽の上部27は低温熱源であるペルチェ素子21に近く、真空槽の下部28は高温熱源である水側に近いからである。真空槽18の内部では、下部側から上部側への放射による熱移動が行われる。
【0029】
図5には、容器12である水槽内の上部25と下部26の温度が記録されている。上部25の温度は、運転開始後3時間程度で緩やかに低下して0℃に達する。その後は0℃近傍の温度に保持される。その理由は、運転開始後3時間程度で上部25は氷結してしまうからである。下部26の温度は、運転開始後3時間程度で2℃程度まで低下するが、その後は20時間経過する段階に至っても、略2℃程度のまま保持される。その理由は、水槽の下部26では20時間経過後も氷結していないことから氷点下にはなり得ず、0℃を若干上回る程度の温度に保持されるためである。
【0030】
本発明の氷結装置10による氷結は、水槽の上部開口部13からの熱放射により冷却されるものであることから、氷結は水槽の上部開口部13から始まる。恰も、厳冬期に水を入れた洗面器等を晴れた夜間に屋外に放置しておくと、朝になり洗面器に入れた水の表面が氷結する現象に似ている。ただし、この場合には空気中における冷却であることから、放射冷却の他に、対流や熱伝導による熱移動もあることは言うまでもない。
【0031】
図6は、氷結装置10の運転開始後の経過時間に対する氷結した氷の厚さを記録したデータである。本実施例では運転開始後3時間程度で水槽の上部開口部13から氷結が始まる。その後、時間の経過とともに氷の厚さは増加し、運転開始後40時間程度で氷の厚さは25mmに達する。なお、図6に示すデータは、容器12の周囲を覆う断熱材14の一部に図示しない光源とカメラを配設して記録したものである。
【0032】
本実施例による製氷装置10により得られた氷を取り出して、氷の結晶構造を顕微鏡より観察したところ、結晶構造は単結晶であることが確認された。本発明の発明者は、単結晶氷が偶然できたものかどうかを確認すべく、実験条件を種々変更して実験を繰り返した。例えば、氷結対象として蒸留水と通常の水道水を用いて実験を行ったが、いずれの場合においても単結晶氷ができることが確認できた。また、水槽内に種氷を入れて製氷装置を運転した場合と種氷を入れないで運転した場合の双方での製氷を試みた。その結果、いずれの場合においても単結晶氷が製造できることが確認できた。本発明に係る製氷装置によれば、十分な再現性をもって単結晶氷を製造できるが、なぜ単結晶氷ができるのかについての理論的解明はなされていない。
【0033】
上記した実施例の製氷方法によれば、硬くて透明度が高く、商品価値の高い単結晶氷を連続的に製造できる固化方法および製氷方法を実現できる。また、0℃よりもいくらか高い周囲温度で製氷できるため、製氷容器に対する凍結付着力が弱く、氷を製氷容器から容易に取り出すことができる製氷方法を実現できる。
【0034】
また、上記した実施例の製氷装置10によれば、硬くて透明度が高く、商品価値の高い任意形状の単結晶の氷を連続的に製造することができる。
【0035】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施をすることができる。上記実施例では固化する液体として水を用いたが、水以外の液体の固化にも適用することができる。たとえば、アルコール等の固化にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例を示す氷結装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例である図1のA-A矢視図である。
【図3】本発明の製氷装置による製氷データを示す特性図である。
【図4】本発明の製氷装置の運転中の各部温度推移を示すデータである。
【図5】本発明の製氷装置の運転中の各部温度推移を示すデータである。
【図6】本発明の製氷装置の運転中の各部温度推移を示すデータである。
【符号の説明】
【0037】
10 製氷装置
11 水
12 容器(水槽)
13 開口部(上部開口部)
14 断熱材(真空断熱材)
17 緩衝容器
21 低温熱源(ペルチェ素子)
22 放熱体
25~30 温度検出器(熱電対)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5