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明細書 :嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4915024号 (P4915024)
公開番号 特開2008-109950 (P2008-109950A)
登録日 平成24年2月3日(2012.2.3)
発行日 平成24年4月11日(2012.4.11)
公開日 平成20年5月15日(2008.5.15)
発明の名称または考案の名称 嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器
国際特許分類 A61B   5/11        (2006.01)
FI A61B 5/10 310K
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2006-291931 (P2006-291931)
出願日 平成18年10月27日(2006.10.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年10月10日 日本磁気歯科学会発行の「日本磁気歯科学会第16回学術大会抄録集」に発表
優先権出願番号 2006275547
優先日 平成18年10月6日(2006.10.6)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年10月10日(2009.10.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
【識別番号】501034106
【氏名又は名称】アイチ・マイクロ・インテリジェント株式会社
発明者または考案者 【氏名】市川 哲雄
【氏名】荒井 一生
個別代理人の代理人 【識別番号】100104949、【弁理士】、【氏名又は名称】豊栖 康司
【識別番号】100074354、【弁理士】、【氏名又は名称】豊栖 康弘
審査官 【審査官】冨永 昌彦
参考文献・文献 特表2006-507038(JP,A)
特開2006-110245(JP,A)
特表2005-532117(JP,A)
特開2003-111748(JP,A)
特開2007-014727(JP,A)
石田瞭,向井美惠,嚥下時における甲状軟骨動態の外部観察-非接触型磁気センサー3次元解析装置による方法-,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会誌,日本,日本摂食・嚥下リハビリテーション学会,2001年12月30日,第5巻 第2号,PAGE.101
複数磁気マーカを用いたモーションキャプチャシステムによる新型顎運動測定装置の開発,金高弘恭,薮上信,河内満彦,荒井賢一,三谷英夫,orthodontic Waves,日本,日本矯正歯科学会,2002年 4月25日,第61巻 第2号,PAGE.110-117
調査した分野 A61B 5/11
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
患者の甲状軟骨皮膚上に装着可能な小型磁石と、
周囲の磁場の変化を検出して該小型磁石の相対位置を検出可能な磁気インピーダンス素子と、
該磁気インピーダンス素子を含む本体部と、
該本体部を患者の所定の位置に装着するための装着手段と、
を備えることを特徴とする嚥下機能評価装置。
【請求項2】
患者の甲状軟骨皮膚上に装着可能な小型磁石と、
前記小型磁石との相対位置を、周囲の磁場の変化を検出することにより検出可能な磁気センサと、
前記磁気センサで検出された前記小型磁石の相対位置の変化に基づき、前記小型磁石の移動パターンを抽出し、該移動パターンに基づき、患者の嚥下機能を評価するための嚥下機能評価手段と、
を備えることを特徴とする嚥下機能評価装置。
【請求項3】
請求項2に記載の嚥下機能評価装置であって、
前記嚥下機能評価手段が、反復唾液嚥下テストに従い空嚥下した患者の甲状軟骨皮膚の移動パターンに基づき、嚥下機能を評価することを特徴とする嚥下機能評価装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の嚥下機能評価装置であって、
前記磁気センサに磁気インピーダンス素子を使用したことを特徴とする嚥下機能評価装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一に記載の嚥下機能評価装置であって、
前記嚥下機能評価手段が、コンピュータであることを特徴とする嚥下機能評価装置。
【請求項6】
小型磁石と、周囲の磁場の変化を検出することで前記小型磁石の相対位置を検出可能な磁気センサとを備える嚥下機能評価装置の操作方法であって、
前記小型磁石を患者の甲状軟骨皮膚上に装着すると共に、前記磁気センサを含む本体部を患者の所定の位置に装着する工程と、
患者が反復唾液嚥下テストを行う際の甲状軟骨の動きを、前記磁気センサで前記小型磁石の相対位置を検出して記録する工程と、
記録された甲状軟骨の動きを嚥下機能評価手段に取り込み、患者の嚥下機能を評価して出力する工程と、
を含むことを特徴とする嚥下機能評価装置操作方法。
【請求項7】
小型磁石と、周囲の磁場の変化を検出することで前記小型磁石の相対位置を検出可能な磁気センサとを備える嚥下機能評価装置の操作プログラムであって、コンピュータを、
前記小型磁石と前記磁気センサを含む本体部を患者に装着した初期相対位置を記録すると共に、患者が反復唾液嚥下テストを行う際の甲状軟骨の動きを、前記磁気センサで前記小型磁石の相対位置を検出して連続的に記録する記録手段と、
記録された甲状軟骨の動きに基づき、患者の嚥下機能を評価する情報処理手段と、
して機能させることを特徴とする嚥下機能評価装置操作プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の嚥下機能評価装置操作プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記憶した機器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、脳神経外科、耳鼻咽喉科、歯科、リハビリテーション科から高齢者介護等の医療分野で利用される、嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本では高齢化が進み、高齢者、要介護高齢者の増加により、摂食・嚥下障害を有する患者のリハビリテーションへの関心が高まっている。しかし、摂食・嚥下障害は、脳神経外科医師、耳鼻咽喉科医師、歯科医師、看護師、栄養士、言語聴覚士、理学療養士、作業療養士等多くの職種による管理・治療が必要であり、原因疾患によって病態、予後等が異なってくるため、その対応は大変難しい。
【0003】
また、摂食・嚥下障害は、機能障害や能力障害の有無や程度について、その障害をどのように評価するかが非常に重要である。現在、嚥下障害の確定診断には嚥下ビデオX線透視検査(VF)が使われており、スクリーニング法としては、30秒間の空嚥下(唾液の飲み込み)の回数を測定する反復唾液嚥下テスト(repetitive saliva swallowing test:RSST)が有効とされている。この方法は甲状軟骨付近の皮膚に指をおき、時計を眺めながら、30秒間に何回嚥下をしたかを確認するものである。
【0004】
しかしながら、RSSTではある程度の経験を有する医師による手作業を要し、作業効率が悪い上、医師によって評価基準が一定しないという問題もあった。そこで、専用の装置を用いた客観的で信頼性の高い評価方法が望まれている。このような嚥下機能を検出する装置として、例えば特許文献1には、表面筋電図を用いた嚥下障害の検知装置が提案されている。この検知装置84は、図8に示すように、患者の嚥下の筋肉表面に直接、複数の電極83を配置し、計測器85で表面筋電図を記録し、この図から抽出されるパラメータを健常人、及び障害者のデータと対比し、その差異を制御部86で評価するものである。
【0005】
しかしながら、この方法では図8に示すように多数の電極2を、粘着剤を塗布して患者の筋肉表面に装着する必要があり、手間がかかる上、患者への肉体的、精神的負担が大きく、特に嚥下機能に関する筋肉が弱体化している患者にとっては苦痛となる。さらに、患者に実際に飲み物や食物を嚥下させた上での評価となるため、この嚥下も患者にとって相当の負担となる。
【0006】
一方、特許文献2にはビール等の飲料を連続的に飲むときの嚥下運動を正確に測定する連続嚥下運動測定装置及び連続嚥下運動測定方法が開示される。しかしながらこの方法も、図9、図10に示すように装置が大掛かりとなり、上記特許文献1と同様に装着による患者への肉体的又は精神的な圧迫感により、自然な状態での評価が困難である。さらにこの方法も実際に飲料を連続的に嚥下することを要し、嚥下機能が低下している患者に対する負担が大きい上、誤嚥の危険性が生じるという問題もあった。

【特許文献1】特開2005-304890号公報
【特許文献2】特開2006-095264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、患者への負担を極力抑えた状態で、自然な状態での測定ができ、簡単かつ正確に嚥下機能を記録・分析可能な、嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の嚥下機能評価装置は、患者の甲状軟骨皮膚上に装着可能な小型磁石と、周囲の磁場の変化を検出して該小型磁石の相対位置を検出可能な磁気インピーダンス素子と、該磁気インピーダンス素子を含む本体部と、該本体部を患者の所定の位置に装着するための装着手段とを備える。これにより、摂食・嚥下運動による甲状軟骨の移動が、甲状軟骨皮膚上に装着した該小型磁石の移動に伴って生じる磁場の変化として、該磁気インピーダンス素子によって検出される。装着する該小型磁石は患者に与える違和感も小さく、自然な状態での測定ができ、簡単かつ正確に嚥下機能を記録・分析可能となる。該本体部を装着する所定の位置とは、例えば、胸骨弓上皮膚や首筋とすることができる。また、該小型磁石や該本体部を装着するための装着手段とは、例えば、粘着テープや弾力性を有するバンドを使用することができる。なお、本明細書において「甲状軟骨皮膚上」とは、甲状軟骨上の皮膚あるいはその近傍を意味するものとする。
【0009】
また、第2の嚥下機能評価装置は、患者の甲状軟骨皮膚上に装着可能な小型磁石と、小型磁石との相対位置を、周囲の磁場の変化を検出することにより検出可能な磁気センサと、磁気センサで検出された小型磁石の相対位置の変化に基づき、小型磁石の移動パターンを抽出し、該移動パターンに基づき、患者の嚥下機能を評価するための嚥下機能評価手段とを備えることができる。これにより、小型磁石を患者に装着することで小型磁石を付した部位の甲状軟骨皮膚の移動を磁気センサで検出し、これに基づき嚥下機能評価手段が嚥下機能を評価できるので、評価試験に際して患者への肉体的負担の軽減を図ることができる。
【0010】
さらに第3の嚥下機能評価装置は、嚥下機能評価手段が、反復唾液嚥下テストに従い空嚥下した患者の甲状軟骨皮膚の移動パターンに基づき、嚥下機能を評価することができる。これにより、患者は実際に食物や液体を飲み下す必要が無く、RSSTに従い30秒間の空嚥下のみで足りるので、評価試験における患者への負担を極減できる上、誤嚥の危険性もない。
【0011】
さらにまた第4の嚥下機能評価装置は、磁気センサに磁気インピーダンス素子を使用できる。これにより、小型で高精度な相対位置の検出が容易に実現できる。
【0012】
さらにまた第5の嚥下機能評価装置は、嚥下機能評価手段にコンピュータを利用できる。これにより、既存のコンピュータを利用して嚥下機能評価装置を容易に実現できる。
【0013】
さらにまた第6の嚥下機能評価装置操作方法は、小型磁石と、周囲の磁場の変化を検出することで小型磁石の相対位置を検出可能な磁気センサとを備える嚥下機能評価装置の操作方法であって、小型磁石を患者の甲状軟骨皮膚上に装着すると共に、磁気センサを含む本体部を患者の所定の位置に装着する工程と、患者が反復唾液嚥下テストを行う際の甲状軟骨の動きを、磁気センサで小型磁石の相対位置を検出して記録する工程と、記録された甲状軟骨の動きを嚥下機能評価手段に取り込み、患者の嚥下機能を評価して出力する工程とを含むことができる。これにより、簡単かつ正確に嚥下機能を記録・分析可能となる。
【0014】
さらにまた第7の嚥下機能評価装置操作プログラムは、小型磁石と、周囲の磁場の変化を検出することで小型磁石の相対位置を検出可能な磁気センサとを備える嚥下機能評価装置の操作プログラムであって、コンピュータを、小型磁石と磁気センサを含む本体部を患者に装着した初期相対位置を記録すると共に、患者が反復唾液嚥下テストを行う際の甲状軟骨の動きを、磁気センサで小型磁石の相対位置を検出して連続的に記録する記録手段と、記録された甲状軟骨の動きに基づき、患者の嚥下機能を評価する情報処理手段として機能させることができる。これにより、簡単かつ正確に嚥下機能を記録・分析可能となる。該小型磁石の相対位置を記録する場合、移動距離・移動速度・時間間隔等を評価の指標として使用することが可能である。
【0015】
さらにまた、第8のコンピュータで読み取り可能な記録媒体又は記憶した機器は、上記嚥下機能評価装置操作プログラムを記録している。記録媒体には、CD-ROM、CD-R、CD-RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW、Blu-ray、HD DVD(AOD)等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。またプログラムには、上記記録媒体に格納されて配布されるものの他、インターネット等のネットワーク回線を通じてダウンロードによって配布される形態のものも含まれる。さらに記憶した機器には、上記プログラムがソフトウェアやファームウェア等の形態で実行可能な状態に実装された汎用もしくは専用機器を含む。さらにまたプログラムに含まれる各処理や機能は、コンピュータで実行可能なプログラムソフトウエアにより実行してもよいし、各部の処理を所定のゲートアレイ(FPGA、ASIC)等のハードウエア、又はプログラムソフトウエアとハードウェアの一部の要素を実現する部分的ハードウエアモジュールとが混在する形式で実現してもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明の第1の嚥下機能評価装置によれば、摂食・嚥下運動による甲状軟骨の移動が、甲状軟骨皮膚上に装着した該小型磁石の移動に伴って生じる磁場の変化として、該磁気インピーダンス素子によって検出される。装着する該小型磁石は患者に与える違和感も小さく、自然な状態での測定ができ、簡単かつ正確に嚥下機能を記録・分析可能となる。また、他の嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器によれば、小型磁石を患者に装着することで小型磁石を付した部位の甲状軟骨皮膚の移動を磁気センサで検出し、これに基づき嚥下機能評価手段が嚥下機能を評価できるので、評価試験に際して患者への肉体的負担の軽減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器を例示するものであって、本発明は嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器を以下のものに特定しない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0018】
本明細書において嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器は、嚥下機能評価装置の嚥下機能の記録・分析に関する操作や表示、設定を行うシステムそのもの、ならびに嚥下機能評価装置の嚥下機能の操作、表示、設定等に関連する入出力、表示、演算、通信その他の処理をハードウェア的に行う装置や方法に限定するものではない。ソフトウェア的に処理を実現する装置や方法も本発明の範囲内に包含する。例えば汎用の回路やコンピュータにソフトウェアやプログラム、プラグイン、オブジェクト、ライブラリ、アプレット、スクリプレット、コンパイラ、モジュール、特定のプログラム上で動作するマクロ等を組み込んで嚥下機能評価装置の嚥下機能の記録・分析そのもの、あるいはこれに関連する処理を可能とした汎用あるいは専用のコンピュータ、ワークステーション、情報端末、携帯型電子機器その他の電子デバイスも、本発明の嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器の少なくともいずれかに含まれる。また本プログラムは単体で使用するものに限られず、特定のコンピュータプログラムやソフトウェア、サービス等の一部として機能する態様や、必要時に呼び出されて機能する態様、OS等の環境においてサービスとして提供される態様、環境に常駐して動作する態様、バックグラウンドで動作する態様やその他の支援プログラムという位置付けで使用することもできる。
【0019】
また本発明の実施の形態において使用されるコンピュータ等の情報端末同士、およびサーバやこれらに接続される操作、制御、入出力、表示、各種処理その他のためのコンピュータ、あるいはプリンタ等その他の周辺機器との接続は、例えばIEEE1394、RS-232xやRS-422、USB等のシリアル接続、パラレル接続、あるいは10BASE-T、100BASE-TX、1000BASE-T等のネットワークを介して電気的に接続して通信を行うことができる。接続は有線を使った物理的な接続に限られず、IEEE802.1x、OFDM方式等の無線LANやBluetooth(登録商標)等の電波、赤外線、光通信等を利用した無線接続等でもよい。さらにデータの交換や設定の保存等を行うための記録媒体には、メモリカードや磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等が利用できる。
【0020】
図1は嚥下機能評価装置の使用の様子を示す模式図である。この図に示す嚥下機能評価装置は、患者の甲状軟骨皮膚上に装着される小型磁石10と、小型磁石10と離間されて、患者の胸骨弓上皮膚に装着される本体部20とを備える。本体部20は、磁気センサを備えている。また磁気センサは同軸ケーブルを介してコンピュータ40と接続されている。
【0021】
磁気センサには、磁気インピーダンスセンサやホール素子、磁気抵抗素子、フラックスゲートセンサ等、周囲磁場の変化を検出できる素子が適宜利用できる。磁気インピーダンス素子は、小型・高感度で磁気を検出できるので、高倍率の増幅器を必要とせず、好ましい。また磁気インピーダンス素子は、動作させるための消費電力が少なく、小型で軽量化できるという利点も有する。磁気インピーダンス素子を磁気センサとして利用する嚥下機能評価装置は、本体を小型に構成することが可能で、取扱いを容易にすることができるとともに、電池等バッテリー駆動も可能にする。このような周囲の磁場の変化を検出して小型磁石10の相対位置を検出可能な磁気インピーダンス素子としては、特開2003-329748号公報に開示されるMIセンサが利用できる。アモルファスワイヤの磁気インダクタンス効果を利用したMIセンサは、0.1mGの感度を持つ磁気インピーダンス素子である。
【0022】
小型磁石10は、磁気センサが検出できる磁場の変化を生じるものであれば、形態、磁束密度の大きさを問わない。一般的には、磁束密度80~100mT、直径3~10mm、厚さ1~5mmの円盤状の磁石を使用することができ、本体部20も30×10×5mm程度のサイズに作製できるため、嚥下の際に不要なストレスを与えない。このような小型サイズの磁石はピップエレキバン(登録商標)等の磁気治療磁石程度の、小型軽量であるため、製造コストが安価で取り扱いも容易であって、両面テープ等の簡単な粘着テープにより貼付でき、患者への装着が容易である上、患者にとっても極めて負担が少ないという利点が得られる。特に、実際に食物等を嚥下する必要のないRSSTを使用することで、従来のような現実の食物等の嚥下運動を要さず、さらに医師の触診による負担すらもない、極めて低負荷の嚥下機能評価が実現できる。なお、小型磁石10とは、患者の嚥下運動の妨げとならず、かつ磁気センサで十分な磁束変化量を検出可能な大きさを意味する。また図1の例では、小型磁石10を1個のみ装着しているが、必要に応じて複数の磁石を装着することも可能であることはいうまでもない。
【0023】
嚥下時の甲状軟骨の動きに伴い、小型磁石10が移動するので、磁場の変化を磁気センサで検出し、出力信号をA/D変換装置30を介してコンピュータ40に取り込む。これにより嚥下時の甲状軟骨の動きをリアルタイムで表示するとともに、データを記録することが可能となる。小型磁石10の位置すなわち甲状軟骨の位置の、移動距離・移動速度・時間間隔等を嚥下機能評価の指標として使用する。
【0024】
A/D変換装置30は、磁気センサの出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換してコンピュータ40に入力できるようにする。なお、本体部にA/D変換器を組み込む等して、本体部からデジタル信号を出力するように構成すれば、本体部とコンピュータと直接接続することもできることはいうまでもない。
【0025】
また、この構成であれば小型磁石10と、本体部20に含まれる磁気センサとの相対位置検出を無線で行えるため、有線による弊害、例えばリード線等が患者の嚥下運動の妨げとなるといった問題も解消でき、スマートで低負荷の検出が可能となる。
【0026】
なお、患者に感電のおそれがないように、少なくとも嚥下機能評価装置を患者に装着し測定している間は、商用電源とは確実に隔離し、本体部20をバッテリー50による駆動とすることが好ましい。あるいは、図1の構成においてUSB接続した本体部20にバスパワーで電力を供給すれば、バッテリーを不要にできる。またコンピュータ40にノートパソコンを使用して、バッテリ駆動させることも好ましい。
【0027】
また、磁気センサの周波数帯域を0.3~5Hzとすることで、地磁気の影響を受けずに計測が可能である。
【0028】
さらに、図2に示すように本体部20Bとコンピュータ40Bとを無線接続することにより、絶縁性を高め、感電による危険をさらに低減できる上、小型磁石10Bのみならず本体部20Bも無線として、患者の自由度を高めることができる。この例では、本体部20Bに赤外線通信やbluetooth(登録商標)、無線LAN等の通信機能を設け、無線通信機能付きのコンピュータ40Bと無線データ通信を行う。この構成であれば、コンピュータ40Bにノートパソコンを使用する必要が無く、デスクトップパソコンが使用できるため、この点においても構成の自由度が高い。
(嚥下機能評価手段)
【0029】
コンピュータ40は、嚥下機能評価手段として機能する。コンピュータ40は、磁気センサで検出された磁気信号の波形データを本体部20から一旦取り込んだ上で、波形を処理して所定のアルゴリズムに従い、嚥下機能が正常かどうか評価する。嚥下機能を評価する際のアルゴリズムとしては、RSSTが好適に利用できる。評価アルゴリズムが確定している場合は、嚥下運動のパターンを直接本体部20から解析処理し、リアルタイムで嚥下機能の評価判定を行うこともできる。
(RSST)
【0030】
通常のRSSTにおいては、患者を座位とした状態で、医師等の検者が触診を行う。具体的には患者の喉頭隆起・舌骨に指腹をあて、30秒間嚥下運動を繰り返させる。患者には「できるだけ何回も『ごっくん』と飲み込むことを繰り返して下さい」と説明する。喉頭隆起・舌骨は、嚥下運動に伴って、指腹をのり越え前方に移動し、また元の位置に戻る。この下降運動を確認し、嚥下完了時点とする。ここで、嚥下運動時に起こる喉頭挙上及び下降運動を触診で確認し、30秒間に起こる嚥下回数を数える。高齢者では、30秒間に3回できれば正常とする。嚥下障害患者では、1回目の嚥下運動はスムーズに起きても、2回目以降、喉頭挙上が完了せず、喉頭隆起・舌骨が上前方に十分移動しないまま、途中で下降してしまう場合がある。これを真の嚥下運動と鑑別することに注意を要する。また口渇が強く、嚥下運動を阻害していると考えられる患者には、サリベート(登録商標)等の人工唾液や少量の水を口腔内に噴霧し、同時にテストを施行する。判定値は、ほとんど変わらない。また、30秒では嚥下運動が観察されない場合には、観察時間を1分に延長する。観察時間の延長は、重度嚥下障害の経時的変化を追跡する場合に有用である。
(嚥下機能評価アルゴリズム)
【0031】
以下、図1のコンピュータ40が、嚥下機能を評価する手順の一例を、図3のフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS1で、患者の嚥下運動を磁気センサで検出する。ここでは、上述のように患者を座位させた状態で、小型磁石10を患者の甲状軟骨皮膚上に装着し、さらに胸骨弓上皮膚に磁気センサを含む本体部20を装着する。いずれも粘着テープによる固定が可能である。また本体部20は面ファスナを使用して固定しても良い。この際、患者がペースメーカ等電磁気に影響を受けやすい医療機器を装着している場合は、念のためこれらの機器を排除する。また、患者の所持品中に磁気の影響を受けやすいカード類等があれば、予め測定の際には遠ざける。そして小型磁石と磁気センサを含む本体部を患者に装着した初期相対位置を記録した上で、RSSTに従い、30秒間の空嚥下を患者に行わせ、喉の動き、すなわち甲状軟骨皮膚に取り付けた小型磁石10の動作を小型磁石10に基づき磁気センサで連続的に検出する。具体的には、嚥下に伴う甲状軟骨上皮膚に貼り付けた小型磁石10の前上方への動きを、胸骨上皮膚に貼り付けた磁気センサで1次元的に計測する。
【0032】
次にステップS2で、磁気センサで検出された喉の動きを示すデータを飲み込み波形として、コンピュータ40で取り込む。図4に、飲み込み波形の一例として磁気センサの電圧出力波形の時間変化を示す。図4において、嚥下に伴う小型磁石10の前上方への動きが、下方向のピークとして表れる。この波形から、嚥下回数を計数するアルゴリズム及び特徴量(パラメータ)が決定される。特徴量としては、唾液の飲み込み回数、各嚥下の所要時間、嚥下から次までの嚥下時間、波形の立ち上がり、立ち下がりの閾値、微分値、ピークからピークまでの時間等が利用できる。
【0033】
ここではステップS3で、この飲み込み波形の平均値、最大値、最小値を演算する。図4から、図5に示すように平均値、最大値、最小値が得られると、次にステップS4で、最小値と平均値の間、及び平均値と最大値の間の各々の範囲に、それぞれ閾値1、2を設定する。さらにステップS5で、これら閾値1、2と飲み込み波形を比較した二値波形1、2を、各々生成する。次いでステップS6で、これら二値波形に基づき、許容されるピーク間の時間、すなわち時定数を各々決定すると共に、飲み込み波形に基づき許容されるデータの振幅値を、各々決定する。このようにして、嚥下回数を計数するアルゴリズムが決定される。すなわち、時定数と振幅値の条件をいずれも満たすデータを、嚥下が適切になされた運動として計数する。そしてこのアルゴリズムに基づき、ステップS7で飲み込み波形を解析して嚥下回数をカウントする。ここではRSSTに従い、高齢者の患者であれば、30秒間で3回の嚥下回数がカウントされれば嚥下能力が正常であると判定する。そして判定結果を、コンピュータ40のモニタに表示させる。なお磁気センサ、小型磁石10は使用後は、消毒用アルコールで十分に清拭する。
(嚥下機能評価装置操作プログラム)
【0034】
図6に、嚥下機能評価装置操作プログラムをインストールしたコンピュータ40で嚥下機能評価システムを構成する際のハードウェア構成例を示す。この図ではコンピュータ40としてDOS/Vパーソナルコンピュータ(嚥下機能評価手段)40が利用されている。パーソナルコンピュータ40内には情報処理部41と記憶部42が設けられており、情報処理部41にはマイクロプロセッサ(MPU)43、RAM(random access memory)44、ROM(read only memory)45が設けられている。一方、記憶部42はハードディスクシステムとなっており、オペレーションシステム(OS)46、アプリケーション47、デバイスドライバ48がインストールされている。
【0035】
情報処理部41と記憶部42との共通バス49に、入出力ポート(USB、PS/2等のシリアルポートやパラレルSCSI等)60が設けられており、この入出力ポート60にはMOやDVD-RAM等の補助記憶装置61、スキャナ(デジタルカメラ)62、キーボード63、マウス64、表示部を構成するディスプレイ65、必要に応じて公衆回線PLに接続するためのモデム(ターミナルアダプタ)66、サーバSVに接続するためのLANポート(トランシーバー)67、及び結果を出力するプリンタ68が接続されている。
【0036】
このコンピュータ40においてオペレーションシステム46とアプリケーション47を起動すると、図7に示す嚥下機能評価装置操作プログラムのユーザインターフェース画面70が、ディスプレイ65に表示される。この嚥下機能評価装置操作プログラムのユーザインターフェース画面70の例において、各入力欄や各ボタン等の配置、形状、表示の仕方、サイズ、配色、模様等は適宜変更できることはいうまでもない。デザインの変更によってより見やすく、評価や判断が容易な表示としたり操作しやすいレイアウトとすることもできる。例えば詳細設定画面を別ウィンドウで表示させる、複数画面を同一表示画面内で表示する等、適宜変更できる。またこれらのプログラムのユーザインターフェース画面70において、仮想的に設けられたボタン類や入力欄に対するON/OFF操作、数値や命令入力等の指定は、嚥下機能評価装置操作プログラムを組み込んだコンピュータ40に接続された入力部であるマウス64やキーボード63で行う。本明細書において「押下する」とは、ボタン類に物理的に触れて操作する他、入力部によりクリックあるいは選択して擬似的に押下することを含む。入力部を構成する入出力デバイスはコンピュータ40と有線もしくは無線で接続され、あるいはコンピュータ40等に固定されている。一般的な入力部としては、例えばマウスやキーボード、スライドパッド、トラックポイント、タブレット、ジョイスティック、コンソール、ジョグダイヤル、デジタイザ、ライトペン、テンキー、タッチパッド、アキュポイント等の各種ポインティングデバイスが挙げられる。またこれらの入出力デバイスは、プログラムの操作のみに限られず、嚥下機能評価装置等のハードウェアの操作にも利用できる。さらに、インターフェース画面を表示するディスプレイ65自体にタッチスクリーンやタッチパネルを利用して、画面上をユーザが手で直接触れることにより入力や操作を可能としたり、又は音声入力その他の既存の入力手段を利用、あるいはこれらを併用することもできる。
【0037】
図7の嚥下機能評価装置操作プログラムでは、飲み込み波形の取り込みから判定開始、一時停止、終了の操作をそれぞれ行うための波形取込ボタン71、判定開始ボタン72、一時停止ボタン73、終了ボタン74を備える。また飲み込み波形をグラフィカルに表示する波形表示領域75を備える。また波形表示領域75の右側には、演算された飲み込み波形の最大値、閾値2、平均値、閾値1、最小値を各々表示する最大値表示欄76、閾値2表示欄77、平均値表示欄78、閾値1表示欄79、最小値表示欄80が設けられる。さらには嚥下機能評価の結果として嚥下回数を表示する嚥下回数表示欄81と、嚥下機能が正常かどうかの判定結果を表示する判定結果表示欄82を備える。これにより、ユーザはコンピュータ40上でマウス64やキーボード63等のポインティングデバイスを操作して、飲み込み波形の取り込みから嚥下機能評価までを行うことができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態によれば、ピップエレキバン(登録商標)程度の小型磁石10を1個のみ、患者の喉に装着するのみで足りるので、患者への肉体的、精神的負担は最小限に抑えることができる。また評価基準としてRSSTを採用することで、実際に食物や液体を飲み下す必要が無く、30秒間の空嚥下のみで足りるので、誤嚥の危険性を回避でき安全性を高められる上、患者への負担も極減できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の嚥下機能評価装置、嚥下機能評価装置操作方法、嚥下機能評価装置操作プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体並びに記憶した機器は、嚥下障害診断のための反復唾液嚥下テストを簡便に実施する用途等に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】嚥下機能評価装置の使用状態を示す模式図である。
【図2】変形例に係る嚥下機能評価装置の使用状態を示す模式図である。
【図3】嚥下機能評価手段が嚥下機能を評価する手順を示すフローチャートである。
【図4】飲み込み波形の一例として磁気センサの電圧出力波形の時間変化を示すグラフである。
【図5】図4のグラフから、平均値、最大値、最小値、閾値1、2を演算する様子を示すグラフである。
【図6】嚥下機能評価装置操作プログラムをインストールしたコンピュータで嚥下機能評価システムを構成するブロック図である。
【図7】嚥下機能評価装置操作プログラムのユーザインターフェース画面を示すイメージ図である。
【図8】従来の嚥下障害の検知方法を示す模式図である。
【図9】従来の他の連続嚥下運動測定装置を示す模式図である。
【図10】従来のさらに他の連続嚥下運動測定装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0041】
10、10B…小型磁石
20、20B…本体部
30…A/D変換装置
40、40B…コンピュータ
41…情報処理部
42…記憶部
43…マイクロプロセッサ
44…RAM
45…ROM
46…オペレーションシステム
47…アプリケーション
48…デバイスドライバ
49…共通バス
50…バッテリー
60…入出力ポート
61…補助記憶装置
62…スキャナ(デジタルカメラ)
63…キーボード
64…マウス
65…ディスプレイ
66…モデム(ターミナルアダプタ)
67…LANポート(トランシーバー)
68…プリンタ
70…ユーザインターフェース画面
71…波形取込ボタン
72…判定開始ボタン
73…一時停止ボタン
74…終了ボタン
75…波形表示領域
76…最大値表示欄
77…閾値2表示欄
78…平均値表示欄
79…閾値1表示欄
80…最小値表示欄
81…嚥下回数表示欄
82…判定結果表示欄
83…電極
84…従来の嚥下障害検知装置
85…計測器
86…制御部
PL…公衆回線
SV…サーバ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図7】
9