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明細書 :タウロオルニチン脂質の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5049556号 (P5049556)
公開番号 特開2008-113590 (P2008-113590A)
登録日 平成24年7月27日(2012.7.27)
発行日 平成24年10月17日(2012.10.17)
公開日 平成20年5月22日(2008.5.22)
発明の名称または考案の名称 タウロオルニチン脂質の製造方法
国際特許分類 C12P  13/02        (2006.01)
C12R   1/02        (2006.01)
FI C12P 13/02
C12P 13/02
C12R 1:02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 20
出願番号 特願2006-298832 (P2006-298832)
出願日 平成18年11月2日(2006.11.2)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第58回日本生物工学会大会講演要旨集(平成18年8月3日)社団法人日本生物工学会発行第62頁に発表
特許法第30条第1項適用 平成18年9月11日大阪大学において開催された社団法人日本生物工学会第58回大会で発表
審査請求日 平成21年10月28日(2009.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
発明者または考案者 【氏名】小幡 斉
【氏名】河原 秀久
個別代理人の代理人 【識別番号】100074332、【弁理士】、【氏名又は名称】藤本 昇
【識別番号】100114421、【弁理士】、【氏名又は名称】薬丸 誠一
【識別番号】100114432、【弁理士】、【氏名又は名称】中谷 寛昭
審査官 【審査官】小川 明日香
参考文献・文献 特開昭62-087099(JP,A)
国際公開第06/025148(WO,A1)
特開平03-004785(JP,A)
特開平05-310520(JP,A)
特開昭63-074490(JP,A)
特開2006-345796(JP,A)
Physiologia Plantarum,1962年,Vol.15,p.552-565
Biosci Biotech Biochem.,1995年,Vol.59,p.805-808
FEMS Immunol Med Microbiol.,2000年,Vol.28,p.205-209
Chemistry and Physics of Lipids,1978年,Vol.21,p.1-29
日本食品工業学会誌,1986年,Vol.33,p.52-60
Biochimica et Biophysica Acta,1976年,Vol.450,p.225-230
畜大研報,1978年,Vol.10,p.917-925
調査した分野 C12P 13/02
C12R 1/02
CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
(A)フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の富化条件下に、グルコノアセトバクター・キシリナス(Gluconoacetobacter xylinus)を培養する工程、および、
(B)前記工程(A)で得られた培養物からタウロオルニチン脂質を得る工程
を含むことを特徴とするタウロオルニチン脂質の製造方法。
【請求項2】
該グルコノアセトバクター・キシリナスが、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13773)〕、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕およびグルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13772)〕からなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項記載の製造方法。
【請求項3】
セルロース生成条件下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
セルラーゼの存在下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養する、請求項1~いずれか1項に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、タウロオルニチン脂質の製造方法関する。

【背景技術】
【0002】
従来、酢酸菌は、酢、バクテリアセルロース、セルロースゲルなどの製造などの用途に用いられている。具体的には、前記酢酸菌の用途としては、例えば、前記酢酸菌を用いて、酢酸発酵を行ない、食酢を製造すること(例えば、特許文献1~3などを参照のこと)、セルロース生産能を有する酢酸菌を培養してセルロースを生産すること(例えば、特許文献4などを参照のこと)、酸素透過性素材を含む素材から形成された中空体を、培養液中に浸漬し、セルロースを産生する酢酸菌を培養することにより、任意の形状のセルロース製品を製造すること(例えば、特許文献5などを参照のこと)、セルロース産生能を有する酢酸菌と酵母とを用いた静置培養を行ない、可食性ゲルを製造すること(例えば、特許文献6などを参照のこと)などが知られている。
【0003】
一方、前記酢酸菌に属するグルコノバクター・セリウス(Gluconobacter cerius)に、膜成分として、アミノ脂質であるオルニチン脂質およびタウロオルニチン脂質が存在することが確認されている(例えば、非特許文献1、2などを参照のこと)。
【0004】
しかしながら、前記非特許文献1および2には、グルコノバクター・セリウス(Gluconobacter cerius)の膜成分の同定が行なわれているに過ぎず、微量のアミノ脂質しか得られていないのが現状である。

【特許文献1】特開平6-22741号公報
【特許文献2】特開平6-22742号公報
【特許文献3】特開2006-230329号公報
【特許文献4】特開平6-9703号公報
【特許文献5】特開2005-320657号公報
【特許文献6】特開平7-79797号公報
【非特許文献1】タハラ(Tahara Y)ら、「バイオキミカ エ バイオフィジカ アクタ(Biochimica et biophysica acta)」、1976年11月19日、第450巻、p.225-230
【非特許文献2】タハラ(Tahara Y)ら、「アグリカルチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー(Agricultural and biological chemistry)」、1976年、第40巻、p.243-244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率的に、かつ工業的規模でアミノ脂質(タウロオルニチン脂質)を得ることができる、タウロオルニチン脂質の製造方法を提供することを1つの課題とする本発明の他の課題は、本明細書の記載から明らかである。

【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 (A)フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の富化条件下に、グルコノアセトバクター・キシリナス(Gluconoacetobacter xylinus)を培養する工程、および、
(B)前記工程(A)で得られた培養物からタウロオルニチン脂質を得る工程
を含む、タウロオルニチン脂質の製造方法、
〕 該グルコノアセトバクター・キシリナスが、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13773)〕、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕およびグルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13772)〕からなる群より選ばれた少なくとも1種である、前記〔1記載の製造方法、
〕 セルロース生成条件下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養する、前記〔1〕又は記載の製造方法、
〕 セルラーゼの存在下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養する、前記〔1〕~〔〕いずれか1項に記載の製造方法に関する。

【発明の効果】
【0007】
本発明のアミノ脂質の製造方法は、効率的に、かつ工業的規模でタウロオルニチン脂質を得ることができるという優れた効果を奏する
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、1つの側面では、グルコノアセトバクター・キシリナス(Gluconoacetobacter xylinus)を培養することを特徴とする、アミノ脂質の製造方法に関する。本発明のアミノ脂質の製造方法では、グルコノアセトバクター・キシリナスが用いられていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の製造方法は、効率的にアミノ脂質を製造することができるという優れた効果を発揮する。また、本発明の製造方法においては、前記グルコノアセトバクター・キシリナスが用いられているため、本発明の製造方法は、工業的規模でアミノ脂質を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【0009】
また、本発明の製造方法は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスを培養し、それにより、アミノ脂質を製造することにも1つの大きな特徴がある。したがって、本発明の製造方法は、例えば、化学合成によりアミノ脂質を得る場合などに比べ、より高い効率で、安価にアミノ脂質を得ることができるという優れた効果を発揮する。
【0010】
本発明の製造方法の1つの実施態様としては、具体的には、(I)グルコノアセトバクター・キシリナスを培養する工程、および
(II)前記工程(I)で得られた培養物からアミノ脂質を得る工程
を含む方法が挙げられる。
【0011】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスは、食品用途に用いられている微生物であるため、かかるグルコノアセトバクター・キシリナスを用いる本発明の製造方法は、同様に、食品用途に適した産物が得られうる点でも極めて有利である。前記グルコノアセトバクター・キシリナスとしては、一般に、グルコノアセトバクター・キシリナスに分類される微生物であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13773)〕、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13772)〕などが挙げられる。なかでも、より高いアミノ脂質の生産能を発揮する観点から、好ましくは、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕が望ましい。なお、これらの微生物は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(郵便番号292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)から容易に入手される微生物である。
【0012】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養は、酢酸菌の生育可能な条件下で行なわれる。
【0013】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養は、該グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより増加させる観点から、好ましくは、セルロース生成条件下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することが望ましい。前記セルロース生成条件としては、特に限定されないが、例えば、ポリペプトン0.5質量%と酵母エキス0.5質量%とグルコース0.5質量%とマンニトール0.5質量%と硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%とエタノール(フィルター滅菌済)5容量%と水 残部とを含む培地(培養前pH6.6)による培養条件などが挙げられる。かかるセルロース生成条件は、本発明の目的を妨げない範囲で適宜濃度などを変動させてもよい。
【0014】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いられる窒素源としては、例えば、ポリペプトン、各種アミノ酸などが挙げられる。
【0015】
本発明の製造方法では、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、各種アミノ酸をさらに含む条件下に培養することが望ましい。かかる各種アミノ酸は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いる培地の窒素源として用いられうる。
【0016】
本発明の製造方法では、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、前記各種アミノ酸として、カザミノ酸存在下に、該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することが好ましい。前記カザミノ酸は、カゼインを加水分解することにより得られるアミノ酸混合物である。培地中におけるカザミノ酸の含有量は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、脂質生産効率をより高める観点から、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、よりさらに好ましくは、0.6質量%以下であることが望ましい。なかでも、アミノ脂質の製造効率およびコスト負荷の低減の観点から、培地中におけるカザミノ酸の含有量は、好ましくは、0.4~0.6質量%(例えば、0.5質量%など)が望ましい。
【0017】
また、本発明の製造方法では、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、前記各種アミノ酸のなかでも、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸が富化された条件(富化条件)下に、前記グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することがより好ましい。
【0018】
本明細書において、前記「フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸」は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸のそれぞれの単独、ならびに2種以上の組み合わせのいずれをも含む概念である。2種以上の組み合わせとしては、例えば、フェニルアラニンとトリプトファンとアスパラギンとの組み合わせ、フェニルアラニンとトリプトファンとの組み合わせ、フェニルアラニンとアスパラギンとの組み合わせ、トリプトファンとアスパラギンとの組み合わせなどが挙げられる。前記アミノ脂質のなかでも、タウロオルニチン脂質の割合をより増加させる場合、好ましくは、フェニルアラニンまたはアスパラギン酸が望ましく、よりタウロオルニチン脂質の割合を増加させる観点からは、より好ましくは、フェニルアラニンが望ましい。
【0019】
なお、本明細書において、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の富化条件とは、他の物質(例えば、他のアミノ酸など)の量に比べ、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の量が大きい条件をいう。ここで、前記富化条件は、例えば、他の物質(例えば、他のアミノ酸など)の量に比べ、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の量が、好ましくは少なくとも2倍である条件が望ましい。例えば、酢酸菌基本培地〔ポリペプトン0.5質量%、酵母エキス0.5質量%、グルコース0.5質量%、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%、残部 水(pH6.0)〕の場合、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の含有量は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、アミノ脂質の生産効率を高める観点から、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、よりさらに好ましくは、0.6質量%以下であることが望ましい。なかでも、アミノ脂質の製造効率およびコスト負荷の低減の観点から、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の含有量は、好ましくは、0.4~0.6質量%(例えば、0.5質量%など)が望ましい。
【0020】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いられる炭素源としては、特に限定されないが、例えば、グルコース、グリセロールなどが挙げられる。また、前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いられる培地は、硫酸マグネシウムなどがさらに配合された培地であってもよい。
【0021】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いられる培地のpHは、培養前のpHとして、細胞の増殖能を十分に発揮させる観点から、好ましくは、pH5.0以上、より好ましくは、pH5.5以上であり、好ましくは、pH6.5以下であることが望ましい。なかでも、細胞の増殖能を十分に発揮させる観点から、培地のpHは、培養前のpHとして、pH6.0前後が望ましい。また、前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いられる培地のpHは、培養中、一定に維持されていることが望ましい。
【0022】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養温度は、酢酸菌の生育可能な温度であればよく、特に限定されないが、良好なアミノ脂質の製造効率を達成する酢酸菌の増殖速度を得る観点から、好ましくは、25~30℃が望ましい。
【0023】
前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時間は、該グルコノアセトバクター・キシリナスにアミノ脂質を産生させるに十分な時間であればよく、特に限定されないが、脂質生産向上の観点から、48時間以上であり、アミノ脂質の製造効率の観点から、72時間以下、好ましくは、60時間以下であることが望ましい。
【0024】
本発明の製造方法では、前記グルコノアセトバクター・キシリナスの増殖速度を向上させ、かつ増殖を増大させ、アミノ脂質の生産量を増大させる観点から、セルラーゼの存在下に該グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することが好ましい。培地中におけるセルラーゼの量は、グルコノアセトバクター・キシリナスにより生産されうるセルロースの分解に十分な量であればよく、特に限定されないが、セルラーゼ活性を十分に発揮させる観点から、活性単位(U)として、1mlあたり、好ましくは、0.1U以上であり、脂質生産向上の観点から、0.5U以下であることが望ましい。なお、前記セルラーゼ活性は、セルラーゼの至適温度で、1時間の反応で1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する酵素量とする。
【0025】
本発明の製造方法により得られるアミノ脂質としては、タウロオルニチン脂質、オルニチン脂質などが挙げられる。前記タウロオルニチン脂質は、一般式(I):
【0026】
【化1】
JP0005049556B2_000002t.gif

【0027】
(式中、R1は、例えば、炭素数12~20の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される化合物である。なお、前記R1は、さらに修飾基を有していてもよい。また、前記オルニチン脂質は、一般式(II):
【0028】
【化2】
JP0005049556B2_000003t.gif

【0029】
(式中、R2は、例えば、炭素数12~20の直鎖または分枝鎖のアルキル基を示す)
で表される化合物である。
【0030】
本発明の製造方法においては、前記グルコノアセトバクター・キシリナスの培養後に得られた培養物からアミノ脂質が分離される。
【0031】
培養物からのアミノ脂質の分離は、例えば、培養物から脂質試料を抽出し、抽出された脂質試料から、必要によりアミノ脂質を分離することにより行なわれる。
【0032】
培養物から脂質試料の抽出は、具体的には、特に限定されないが、例えば、
(b1)得られた培養物を、遠心分離して、菌体を回収する工程、
(b2)前記工程(b1)で得られた菌体から凍結乾燥菌体を製造する工程、および
(b3)前記工程(b2)で得られた凍結乾燥菌体を、クロロホルム-メタノール抽出に供して、脂質試料を得る工程、
を含むプロセスにより行なわれうる。ここで、クロロホルム-メタノール抽出は、例えば、クロロホルム-メタノール〔2:1(容量比)〕を用いて行なわれうる。前記クロロホルム-メタノール抽出では、目的の脂質試料は、クロロホルム層から回収される。
【0033】
また、アミノ脂質を得るために、さらに分離工程を行なう必要がある場合、例えば、ケイ酸カラムクロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィーなどを行なえばよい。例えば、前記ケイ酸カラムクロマトグラフィーにより、前記脂質試料からアミノ脂質の分離を行なう場合、特に限定されないが、前記脂質を適切な大きさのケイ酸カラムに供し、クロロホルムとメタノールとの容量比のステップワイズ勾配により抽出を行なうことにより、クロロホルム-メタノール(50:50容量比)で抽出されるフラクションとしてアミノ脂質を得ることができる。
【0034】
本発明の製造方法により得られるアミノ脂質は、特に限定されないが、例えば、Mandle法に従い、ニンヒドリン反応でアミノ基の存在を検出することによりアミノ脂質の存在を評価すること、必要により、リンの非存在を評価することなどにより確認されうる。
【0035】
本発明は、他の側面では、カザミノ酸を用いて、前記グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することを特徴とする、アミノ脂質の生産向上方法(以下、本明細書において、「アミノ脂質の生産向上方法1」ともいう)に関する。本発明のアミノ脂質の生産向上方法1は、グルコノアセトバクター・キシリナスの培養が、カザミノ酸を用いて行なわれていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明のアミノ脂質の生産向上方法1は、グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産を簡便に、高い効率で向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【0036】
グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時におけるカザミノ酸の濃度は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、脂質生産効率をより高める観点から、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、よりさらに好ましくは、0.6質量%以下であることが望ましい。なかでも、アミノ脂質の製造効率およびコスト負荷の低減の観点から、グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時におけるカザミノ酸の濃度は、培地中の含有量として、好ましくは、0.4~0.6質量%(例えば、0.5質量%など)であることが望ましい。
【0037】
また、本発明は、他の側面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸を用いて、前記グルコノアセトバクター・キシリナスを培養することを特徴とする、アミノ脂質の生産向上方法(以下、本明細書において、「アミノ脂質の生産向上方法2」ともいう)に関する。本発明のアミノ脂質の生産向上方法2は、グルコノアセトバクター・キシリナスの培養が、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸を用いて行なわれていることに1つの大きな特徴がある。したがって、本発明のアミノ脂質の生産向上方法2は、グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産を簡便に、高い効率で向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【0038】
グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の濃度は、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の濃度が、培地中における他の物質(例えば、他のアミノ酸など)の濃度に比べて大きくなる濃度であればよく、例えば、他の物質(例えば、他のアミノ酸など)の濃度に比べ、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の濃度が、好ましくは少なくとも2倍であることが望ましい。グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の濃度は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、脂質生産効率をより高める観点から、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、よりさらに好ましくは、0.6質量%以下であることが望ましい。なかでも、アミノ脂質の製造効率およびコスト負荷の低減の観点から、グルコノアセトバクター・キシリナスの培養時におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の濃度は、好ましくは、0.4~0.6質量%(例えば、0.5質量%など)が望ましい。
【0039】
前記アミノ脂質のなかでも、タウロオルニチン脂質の生産を向上させる場合、好ましくは、フェニルアラニンまたはアスパラギン酸が望ましく、よりタウロオルニチン脂質の生産を向上させる観点からは、より好ましくは、フェニルアラニンが望ましい。
【0040】
本発明は、別の側面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸を有効成分として含有する、グルコノアセトバクター・キシリナスのためのアミノ脂質生産向上剤に関する。本発明のアミノ脂質生産向上剤は、フェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸を有効成分として含有するため、グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量を簡便に、かつ安価に向上させることができるという優れた効果を発揮する。
【0041】
本発明のアミノ脂質生産向上剤は、前記有効成分を、グルコノアセトバクター・キシリナスの培養に用いる培地、生理的食塩水などに配合して得られた液体組成物であってもよく、前記有効成分の乾燥物であってもよい。
【0042】
本発明のアミノ脂質生産向上剤中における有効成分の含有量は、使用形態に応じて、適宜設定されうる。例えば、本発明のアミノ脂質生産向上剤が、前記有効成分を培地に配合して得られた液体組成物である場合、例えば、液体組成物中における他の物質(例えば、他のアミノ酸など)の量に比べて大きくなる量であればよい。例えば、前記培地が、酢酸菌基本培地〔ポリペプトン0.5質量%、酵母エキス0.5質量%、グルコース0.5質量%、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%、残部 水(pH6.0)〕である場合、液体組成物中における前記有効成分の含有量は、前記グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産量をより向上させる観点から、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.4質量%以上であり、生産効率を高める観点から、好ましくは、3.0質量%以下、より好ましくは、2.5質量%以下、さらに好ましくは、1.0質量%以下、よりさらに好ましくは、0.6質量%以下であることが望ましい。なかでも、アミノ脂質の製造効率およびコスト負荷の低減の観点から、培地中におけるフェニルアラニン、トリプトファンおよびアスパラギン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種のアミノ酸の含有量は、好ましくは、0.4~0.6質量%(例えば、0.5質量%など)が望ましい。また、本発明のアミノ脂質生産向上剤は、例えば、使用時において、本発明のアミノ脂質生産向上剤を培地などに添加して、グルコノアセトバクター・キシリナスによるアミノ脂質の生産時に用いられる培地中における前記有効成分の含有量が、前記含有量の範囲となる量となるように用いてもよい。
【0043】
また、本発明のアミノ脂質生産向上剤は、本発明の目的を妨げないものであれば、種々の助剤をさらに含有していてもよい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
各種酢酸菌を、酢酸菌基本培地〔ポリペプトン0.5質量%、酵母エキス0.5質量%、グルコース0.5質量%、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%、残部 水(pH6.0)〕またはセルロース膜生成培地〔組成:ポリペプトン0.5質量%、酵母エキス0.5質量%、グルコース0.5質量%、マンニトール0.5質量%、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%、エタノール(フィルター滅菌済)5容量%、水 残部、(培養前pH6.6)〕で、25℃で定常期になるまで培養した。得られた培養物を、遠心分離して、各菌体を回収し、得られた菌体を、超純水10mlに懸濁した。その後、得られた懸濁物それぞれを、凍結乾燥機に供して、凍結乾燥菌体を得た。得られた凍結乾燥菌体10~50mgをガラス製遠沈管に入れ、1mlの1質量%KCl溶液を添加して、該凍結乾燥菌体を懸濁した。得られた懸濁物に、メタノール2.5mlとクロロホルム1.25mlとを添加した。得られた混合物を2分間十分に攪拌し、ついで、室温で10分間放置した。得られた産物に、クロロホルムを1.25ml添加し、約30秒間攪拌した。その後、得られた産物に、クロロホルムを1.25ml添加し、さらに30秒間攪拌し、その後、得られた産物を、700×g、25℃で5分間、遠心分離した。下層のクロロホルム層を回収した。また、さらに収率を高めるために、上層にクロロホルムを1ml添加し、前記と同様の操作を行ない、クロロホルム層を回収した。クロロホルム層の溶液を、窒素気流下で、エバポレーターを用いて蒸発乾固した。得られた産物を、クロロホルム-メタノール〔2:1(容量比)〕に溶解し、脂質試料を得た。
【0046】
前記脂質試料を、薄層プレート〔商品名:Silica Gel 60 Plate、メルク(Merck)KGaA製〕に供し、展開溶媒として、クロロホルム:メタノール:25容量%アンモニア水溶液〔7:3:4(容量比)〕の溶液で展開させることにより、薄層クロマトグラフィーを行なった。なお、標品として、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、カルジオリピンを用いた。展開後の薄層プレートについて、ニンヒドリン試薬およびDittmer試薬それぞれを用いて、アミノ基の有無およびリン酸基の有無を評価し、それにより、アミノ脂質の存在を確認した。
【0047】
さらに、前記脂質試料の一定量を、蓋付ガラス試験管に入れた。前記蓋付ガラス試験管中の脂質試料に、5質量%ピリジン溶液および1質量%ニンヒドリン溶液それぞれを、該脂質試料の2倍容量混合し、沸騰水浴中で、25分間煮沸した。その後、得られた産物に、該脂質試料の6倍容量の蒸留水を添加し、攪拌した。得られた産物について、分光光度計を用いて、570nmの吸光度を測定して、アミノ基を定量し、それにより、アミノ脂質の量を定量化した。なお、検量線として、同様に、グルタミン酸を用いて得られた検量線を用いた。
【0048】
各種酢酸菌におけるアミノ脂質であるオルニチン脂質およびタウロオルニチン脂質の存在を確認した結果の一例を図1に示す。図中、パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。図1において、レーン1は、ホスファチジルエタノールアミン、レーン2は、ホスファチジルグリセロール、レーン3は、脂質試料、レーン4は、ホスファチジルコリン、レーン5は、カルジオリピンを示す。また、各種酢酸菌から、タウロオルニチン脂質高生産微生物を探索した結果の一例を図2に示す。
【0049】
その結果、図1の点線で囲まれた部分に、アミノ脂質であるオルニチン脂質およびタウロオルニチン脂質が確認できた。また、図2に示されるように、実験番号:1~18の酢酸菌のなかでも、実験番号:15~17の酢酸菌には、タウロオルニチン脂質が、より多く存在していた。なお、前記実験番号15~17の酢酸菌は、それぞれ、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13773)〕(実験番号:15)、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕(実験番号:16)、およびグルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13772)〕(実験番号:17)であった。かかる実験番号15~17の微生物には、それぞれ、従来、膜成分中にタウロオルニチン脂質が存在することが示されていた微生物であるグルコノアセトバクター・リクエファシエンス〔Gluconoacetobacter liquefaciens(NBRC12257)〕(実験番号:1)、グルコノバクター・セリナス〔Gluconobacter cerinus(NBRC3262)〕(実験番号:3)、アセトバクター・パスツリアヌス〔Acetobacter pasteurianus(NBRC3299)〕(実験番号:11)およびアセトバクター・アセチ〔Acetobacter aceti(NBRC3281)〕(実験番号:14)に比べ、より多くタウロオルニチン脂質が存在していた。
【0050】
次に、前記脂質試料に、十分量の6N塩酸を添加して、よく撹拌し、得られた混合物を、100℃で24時間加熱した。得られた産物に、ヘキサンを添加して、非水溶性物質を除去し、塩酸層の溶液を回収した。得られた溶液を、エバポレーターで蒸発乾固させた。得られた産物を、超純水に溶解させ、酸加水分解試料を得た。得られた酸加水分解試料を、セルロース薄層プレート〔メルク株式会社製〕に供し、展開溶媒として、イソプロパノール:25容量%アンモニア水溶液〔70:30(容量比)〕の溶液で展開させることにより、薄層クロマトグラフィーを行なった。また、標品として、タウリン(和光純薬株式会社製、カタログ番号203-00111)、タウロオルニチン(関西大学工学部微生物工学研究室による合成標品)、およびL-オルニチン(和光純薬株式会社製、カタログ番号154-00372)を用いた。前記グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕(実験番号:16)から得られた酸加水分解試料の薄層クロマトグラフィーの結果を図3に示す。図中、レーン1は、酸加水分解試料単独、レーン2は、酸加水分解試料とタウリン標品との混合物、レーン3は、酸加水分解試料とオルニチン標品との混合物、レーン4は、酸加水分解試料とタウロオルニチン標品との混合物、レーン5は、タウリン標品とオルニチン標品とタウロオルニチン標品との混合物、レーン6は、タウリン標品、レーン7は、オルニチン標品、レーン8は、タウロオルニチン標品を示す。
【0051】
その結果、図3に示されるように、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕から得られた酸加水分解試料には、タウロオルニチンが検出されたため、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕は、タウロオルニチン脂質を産生していることがわかった。
【0052】
(実施例2)
グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕を、酢酸菌基本培地〔ポリペプトン0.5質量%、酵母エキス0.5質量%、グルコース0.5質量%、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%、残部 水(pH6.0)〕で、25℃で72時間培養した。得られた培養物から前記実施例1と同様の手法により、脂質試料を得た。
【0053】
得られた脂質試料を、ケイ酸カラム〔カラム内径:30mm、カラム長:300mm、担体ベッド高:250mm、ケイ酸粉末AR 100mesh、Mallinckrodt Inc.製〕に供し、クロロホルムとメタノールとの容量比をステップワイズで、勾配させて、抽出を行ない、10mlずつ分画した。抽出溶媒として、順に、クロロホルム、クロロホルム-メタノール(95:5容量比)、クロロホルム-メタノール(90:10容量比)、クロロホルム-メタノール(80:20容量比)、クロロホルム-メタノール(70:30容量比)、クロロホルム-メタノール(60:40容量比)、およびクロロホルム-メタノール(50:50容量比)をそれぞれ用いた。フラクション1~20は、クロロホルム、フラクション21~35は、クロロホルム-メタノール(95:5容量比)、フラクション36~45は、クロロホルム-メタノール(90:10容量比)、フラクション46~55は、クロロホルム-メタノール(80:20容量比)、フラクション56~65は、クロロホルム-メタノール(70:30容量比)、フラクション66~75は、クロロホルム-メタノール(60:40容量比)、フラクション76~85は、クロロホルム-メタノール(50:50容量比)をそれぞれ用いて抽出されたフラクションである。
【0054】
得られたフラクション1.25mlをメジウム管に入れ、エバポレーターで蒸発乾固させた。ついで、得られた産物に、溶媒〔クロロホルム-メタノール(1:2容量比)〕0.25mlを添加し、濃縮液を得た。得られた濃縮液に、5質量%ピリジン溶液および1質量%ニンヒドリン溶液それぞれを、該濃縮液の2倍容量混合し、沸騰水浴中で、25分間煮沸した。その後、得られた産物に、該濃縮液の6倍容量の蒸留水を添加し、攪拌した。得られた産物について、分光光度計を用いて、570nmの吸光度を測定して、アミノ基を定量し、それにより、アミノ脂質の量を定量化した。なお、検量線には、同様に、グルタミン酸を用いて得られた検量線を用いた。
【0055】
また、前記フラクション3mlを、サンプリングチューブに入れ、溶媒を蒸発させた。得られた産物に、70容量%過塩素酸0.4mlを添加し、得られた混合物を、ブロックヒーターを用いて、100℃で4分間加熱した。得られた産物に、蒸留水4.2mlと、5容量%モリブデン酸アンモニウム0.2mlとアミドール試薬0.2mlとを添加し、混合し、得られた混合物を沸騰水浴中で7分間加熱した。得られた産物を冷却し、15分後に830nmの吸光度を測定した。なお、検量線として、同様に、リン酸塩溶液を用いて得られた検量線を用いた。その結果のクロマトグラムを図4に示す。
【0056】
その結果、図4に示されるように、クロロホルム-メタノール(50:50容量比)による抽出により得られたフラクション(フラクション76~85)中に、アミノ脂質が存在することがわかった。
【0057】
また、前記図4のクロマトグラム中、アミノ基の量のピークを示す各フラクションについて、薄層プレート〔商品名:Silica Gel 60 Plate、メルク(Merck)KGaA製〕に供し、展開溶媒として、クロロホルム:メタノール:25容量%アンモニア水溶液〔7:3:4(容量比)〕の溶液で展開させることにより、薄層クロマトグラフィーを行なった。なお、標品として、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、カルジオリピンを用いた。展開後の薄層プレートについて、ニンヒドリン試薬およびDittmer試薬それぞれを用いて、アミノ基の有無およびリン酸基の有無を評価し、それにより、アミノ脂質の存在を確認した。その結果を図5に示す。図中、パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。また、図中、レーン番号は、図4のクロマトグラムにおけるフラクション番号に対応する。
【0058】
その結果、図5のパネル(A)および(B)に示されるように、フラクション78および81に、オルニチン脂質およびタウロオルニチン脂質が存在することがわかった。
【0059】
さらに、前記フラクション78および81それぞれの酸加水分解試料について、商品名:TSK Gel Amide 80〔カラム寸法4.6mm内径×250mm、東ソー株式会社製〕を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、オルニチンの定量を行なった。具体的には、前記フラクション78に、十分量の6N塩酸を添加して、よく撹拌し、得られた混合物を、100℃で24時間加熱した。得られた産物に、ヘキサンを添加して、非水溶性物質を除去し、塩酸層の溶液を回収した。得られた溶液を、エバポレーターで蒸発乾固させた。得られた産物を、超純水に溶解させ、酸加水分解試料を得た。また、同様に、フラクション81から、酸加水分解試料を得た。得られた酸加水分解試料を商品名:TSK Gel Amide 80〔カラム寸法4.6mm内径×250mm、東ソー株式会社製〕に供し、220nmにおける吸光度によりモニターを行ないながら、流速:0.8ml/分、温度:室温で溶出を行なった。なお、溶離液(A)〔0.1容量%トリフルオロ酢酸/水〕、および溶離液(B)〔0.08容量%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル〕を溶離液として用い、溶離液(B)70容量%~40容量%(25分)の濃度勾配で溶出を行なった。なお、検量線には、同様に、オルニチンを用いて得られた検量線を用いた。検量線と、前記薄層クロマトグラフィーのスポットの濃度とに基づき、オルニチン脂質の量とタウロオルニチン脂質の量とを求めた。なお、前記薄層クロマトグラフィーのスポットの濃度は、画像解析ソフトウェアNIH Image(米国国立衛生研究所供給)を用いて求めた。
【0060】
その結果、フラクション75以降のフラクション中におけるオルニチン脂質とタウロオルニチン脂質の存在比は、1:1.75(質量比)であることがわかった。
【0061】
(試験例1)
実施例2において、培地として、酢酸菌基本培地の代わりに、カザミノ酸〔ディフコ(DIFCO)社製、カタログ番号:527-00165〕0質量%(試験番号1)、0.1質量%(試験番号2)、0.5質量%(試験番号3)、1.0質量%(試験番号4)または2.5質量%(試験番号5)と、ポリペプトン0.5質量%と、酵母エキス0.5質量%と、グルコース0.5質量%と、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%と、残部 水(pH6.0)とからなる培地を用いたことを除き、実施例2と同様に、脂質試料を得た。
【0062】
得られた脂質試料の一定量を、蓋付ガラス試験管に入れた。前記蓋付ガラス試験管中の脂質試料に、5質量%ピリジン溶液および1質量%ニンヒドリン溶液それぞれを、該脂質試料の2倍容量混合し、沸騰水浴中で、25分間煮沸した。その後、得られた産物に、該脂質試料の6倍容量の蒸留水を添加し、攪拌した。得られた産物について、分光光度計を用いて、570nmの吸光度を測定して、アミノ基の量を定量した。なお、検量線として、同様に、グルタミン酸を用いて得られた検量線を用いた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
JP0005049556B2_000004t.gif

【0064】
その結果、表1に示されるように、カザミノ酸0.5~2.5質量%(試験番号3~5)、特に、0.5質量%(試験番号3)を含む培地で培養した場合、アミノ基の量が増大したため、アミノ脂質含量が高くなることがわかった。
【0065】
(試験例2)
試験例1において、用いた培地の培養前pHを、6.5(試験番号6)、6.0(試験番号7)、6.0一定に調整(試験番号8)、5.5(試験番号9)、5.0(試験番号10)または4.5(試験番号11)としたことを除き、試験例1と同様に、脂質試料を得た。得られた脂質試料について、前記試験例1と同様に、アミノ基の量を定量した。結果を表2に示す。
【0066】
【表2】
JP0005049556B2_000005t.gif

【0067】
その結果、表2に示されるように、pH5.0~6.5(試験番号6~10)、特に、pH6.0(試験番号7)の培地で培養した場合、アミノ基の量が増大したため、アミノ脂質含量が高くなることがわかった。
【0068】
(試験例3)
試験例1において、培地として、酢酸菌基本培地の代わりに、各種アミノ酸試料0.5質量%と、ポリペプトン0.5質量%と、酵母エキス0.5質量%と、グルコース0.5質量%と、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%と、残部 水(pH6.0)とからなる培地を用いたことを除き、試験例1と同様に、脂質試料を得た。なお、アミノ酸試料として、グループ1:リシンとアルギニンとメチオニンとシステインとの混合物〔1:1:1:1(質量比)〕(試験番号12);グループ2:ロイシンとイソロイシンとバリンとの混合物〔1:1:1(質量比)〕(試験番号13);グループ3:フェニルアラニンとトリプトファンとアスパラギン酸との混合物〔1:1:1(質量比)〕(試験番号14);グループ4:ヒスチジンとグルタミン酸とプロリンとトレオニンとの混合物〔1:1:1:1(質量比)〕(試験番号15);グループ5:アラニンとグリシンとセリンとヒドロキシプロリンとの混合物〔1:1:1:1(質量比)〕(試験番号16);アスパラギン酸(試験番号17)、トリプトファン(試験番号18)、およびフェニルアラニン(試験番号19)を用いた。また、混合物の場合、培地中の濃度は、全アミノ酸の量としての値である。得られた脂質試料について、前記試験例1と同様に、アミノ基の量を定量した。結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
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【0070】
その結果、表3に示されるように、フェニルアラニンとトリプトファンとアスパラギン酸との混合物(試験番号14)で、アミノ基の量が増大したため、アミノ脂質の量が増大したことがわかる。
【0071】
また、前記試験番号17~19の脂質試料について、実施例2と同様の手法により、薄層クロマトグラフィーを行なった。その結果を図6に示す。図6中、パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。図中、レーン1は、アスパラギン酸を含む培地での培養で得られた脂質試料(試験番号17)、レーン2は、トリプトファンを含む培地での培養で得られた脂質試料(試験番号18)、レーン3は、フェニルアラニンを含む培地での培養で得られた脂質試料(試験番号19)、レーン4は、ホスファチジルエタノールアミン、レーン5は、ホスファチジルグリセロール、レーン6は、ホスファチジルコリン、レーン7は、カルジオリピンを示す。さらに、前記試験番号17~19の脂質試料について、実施例2と同様の手法により、オルニチン脂質の量とタウロオルニチン脂質の量とを定量した。その結果を、表4に示す。
【0072】
【表4】
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【0073】
その結果、図6および表4に示されるように、フェニルアラニンを含む培地を用いた場合(試験番号19)、タウロオルニチン脂質の割合が増大することがわかった。また、アスパラギン酸を含む培地を用いた場合(試験番号17)、最もアミノ脂質含有量(オルニチン脂質とタウロオルニチン脂質との合計量)が高くなることがわかった。
【0074】
(試験例4)
酢酸菌基本培地(試験番号20)、ポリペプトン0.5質量%と、酵母エキス0.5質量%と、グルコース0.5質量%と、硫酸マグネシウム7水和物0.1質量%と、1mlあたり0.1~0.5Uのセルラーゼ(和光純薬株式会社製、商品名:セルラーゼ トリコデルマ由来 生化学用)を含む酢酸菌基本培地(「セルラーゼ含有培地」ともいう)(試験番号21)、または1mlあたり0.1~0.5Uのセルラーゼ(和光純薬株式会社製、商品名:セルラーゼ トリコデルマ由来 生化学用)を含み、かつポリペプトンの濃度と酵母エキスの濃度とグルコースの濃度と硫酸マグネシウム7水和物の濃度とが、酢酸菌基本培地の2倍である培地(「セルラーゼ含有高濃度培地」ともいう)(試験番号22)を用い、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕を、30℃で培養した。その後、OD660nmにおける吸光度を測定した。その結果を、表5に示す。
【0075】
【表5】
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【0076】
その結果、表5に示されるように、酢酸菌基本培地(試験番号20)を用いた場合に比べ、前記セルラーゼ含有培地(試験番号21)で培養した場合、培養2日目における吸光度が、0.32から0.85に増大することがわかった。また、前記セルラーゼ含有高濃度培地(試験番号22)を用いた場合、培養2日目にもかかわらず、吸光度が、2.26となり、前記酢酸菌基本培地を用いた場合に比べ、生育がより良好になることがわかった。
【0077】
(実施例3)
前記セルラーゼ含有培地において、培地中の酵母エキスの含有量を2倍以上にしたところ、対応して、アミノ脂質の生産量が向上し、培地中の酵母エキスの含有量を4倍以上にした場合、生産量の増加率は、ほぼ一定となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、例えば、アミノ脂質の機能の解析、該アミノ脂質の応用用途の開発などに用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、各種酢酸菌におけるアミノ脂質であるオルニチン脂質およびタウロオルニチン脂質の存在を確認した結果の一例を示す図である。パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。図中、レーン1は、ホスファチジルエタノールアミン、レーン2は、ホスファチジルグリセロール、レーン3は、脂質試料、レーン4は、ホスファチジルコリン、レーン5は、カルジオリピンを示す。
【図2】図2は、各種酢酸菌から、タウロオルニチン脂質高生産微生物を探索した結果の一例を示す。
【図3】図3は、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕から得られた酸加水分解試料の薄層クロマトグラフィーの結果を示す図である。図中、レーン1は、酸加水分解試料単独、レーン2は、酸加水分解試料とタウリン標品との混合物、レーン3は、酸加水分解試料とオルニチン標品との混合物、レーン4は、酸加水分解試料とタウロオルニチン標品との混合物、レーン5は、タウリン標品とオルニチン標品とタウロオルニチン標品との混合物、レーン6は、タウリン標品、レーン7は、オルニチン標品、レーン8は、タウロオルニチン標品を示す。
【図4】図4は、グルコノアセトバクター・キシリナス サブスピーシーズ キシリナス〔Gluconoacetobacter xylinus subsp. xylinus(NBRC13693)〕から得られた脂質試料のケイ酸カラムクロマトグラフィーのクロマトグラムを示す図である。
【図5】図5は、ケイ酸カラムクロマトグラフィーによる分画物の薄層クロマトグラフィーの結果を示す図である。パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。図中、レーン番号は、図4のクロマトグラムにおけるフラクション番号に対応する。
【図6】図6は、アスパラギン酸、トリプトファンおよびフェニルアラニンによるアミノ脂質生産への影響を調べた結果を示す図である。パネル(A)は、ニンヒドリン反応によるアミノ基の検出結果、パネル(B)は、Dittmer試薬によるリン酸基の検出結果を示す。図中、レーン1は、アスパラギン酸を含む培地での培養で得られた脂質試料、レーン2は、トリプトファンを含む培地での培養で得られた脂質試料、レーン3は、フェニルアラニンを含む培地での培養で得られた脂質試料、レーン4は、ホスファチジルエタノールアミン、レーン5は、ホスファチジルグリセロール、レーン6は、ホスファチジルコリン、レーン7は、カルジオリピンを示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5