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明細書 :成分分析評価装置、河川流量比測定システム、成分分析評価方法、河川流量比測定方法、及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4843791号 (P4843791)
公開番号 特開2008-076305 (P2008-076305A)
登録日 平成23年10月21日(2011.10.21)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成20年4月3日(2008.4.3)
発明の名称または考案の名称 成分分析評価装置、河川流量比測定システム、成分分析評価方法、河川流量比測定方法、及びプログラム
国際特許分類 G01N  27/06        (2006.01)
G01N  21/73        (2006.01)
G01N  21/31        (2006.01)
G01N  33/18        (2006.01)
FI G01N 27/06 Z
G01N 21/73
G01N 21/31 610Z
G01N 33/18 C
請求項の数または発明の数 15
全頁数 14
出願番号 特願2006-257844 (P2006-257844)
出願日 平成18年9月22日(2006.9.22)
審査請求日 平成21年5月19日(2009.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
発明者または考案者 【氏名】穴澤 活郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100090273、【弁理士】、【氏名又は名称】國分 孝悦
審査官 【審査官】中村 祐一
参考文献・文献 特開平03-245050(JP,A)
特開平10-332661(JP,A)
特開2004-205479(JP,A)
特開平06-109721(JP,A)
特開2004-037315(JP,A)
特開平09-304327(JP,A)
調査した分野 G01N27/00-27/24
G01N21/00-21/61
G01N21/73
G01N33/18
特許請求の範囲 【請求項1】
陸水の成分分析結果を評価する成分分析評価装置であって、
前記陸水に含まれる所定のイオンの成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段と、
前記陸水から測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出手段によって算出された電気伝導度とを比較して、前記成分分析結果の信頼性を評価する分析評価手段とを有することを特徴とする成分分析評価装置。
【請求項2】
前記陸水を採水する採水手段と、
前記採水手段によって採水された陸水から所定のイオンの成分を分析し、その結果を前記電気伝導度算出手段に受け渡す成分分析手段と、
前記陸水から電気伝導度を測定し、その結果を前記分析評価手段に受け渡す電気伝導度測定手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の成分分析評価装置。
【請求項3】
前記電気伝導度算出手段は、前記陸水に含まれる単位体積当たりの陽イオンの当量の和または陰イオンの当量の和から電気伝導度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の成分分析評価装置。
【請求項4】
前記電気伝導度算出手段は、以下の数1に示す式を用いて電気伝導度を算出することを特徴とする請求項3に記載の成分分析評価装置。
【数1】
JP0004843791B2_000007t.gif

【請求項5】
前記分析評価手段により前記信頼度が所定の基準よりも高いと評価された成分分析結果を用いて、前記成分分析手段によって分析できなかったイオンの濃度を推定する濃度推定手段を有することを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の成分分析評価装置。
【請求項6】
前記分析評価手段により前記信頼度が所定の基準よりも低いと評価された場合、前記採水手段は、前記陸水を再度採水し、前記成分分析手段は、前記採水手段によって再度採取された陸水からイオンの成分を分析することを特徴とする請求項2~5の何れか1項に記載の成分分析評価装置。
【請求項7】
合流前の河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第1の成分分析評価装置と、前記河川の支流から試料水の成分の分析及び評価を行う第2の成分分析評価装置と、前記支流の合流後における河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第3の成分分析評価装置と、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置から得られた情報を基に河川の流量比を算出する河川流量比測定装置とを有する河川流量比測定システムであって、
前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置は夫々、
前記試料水を採水する採水手段と、
前記採水手段によって採水された試料水から所定のイオンの成分を分析する成分分析手段と、
前記試料水から電気伝導度を測定する電気伝導度測定手段と、
前記成分分析手段による成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段と、
前記電気伝導度測定手段によって測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出手段によって算出された電気伝導度とを比較して、前記成分分析手段による成分分析結果の信頼性を評価する分析評価手段とを有し、
前記河川流量比測定装置は、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置において所定の基準以上の評価が得られた成分分析結果から前記河川の本流に対する前記河川の支流の流量比を算出する流量比算出手段を有することを特徴とする河川流量比測定システム。
【請求項8】
前記成分分析手段は、ナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、及び溶存ケイ素からなる群から選ばれる1種以上の成分を分析することを特徴とする請求項7に記載の河川流量比測定システム。
【請求項9】
前記流量比算出手段は、前記電気伝導度測定手段によって測定された電気伝導度からも前記流量比を算出することを特徴とする請求項7または8に記載の河川流量比測定システム。
【請求項10】
前記電気伝導度算出手段は、前記試料水に含まれる単位体積当たりの陽イオンの当量の和または陰イオンの当量の和から電気伝導度を算出することを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の河川流量比測定システム。
【請求項11】
前記電気伝導度算出手段は、以下の数2に示す式を用いて電気伝導度を算出することを特徴とする請求項10に記載の河川流量比測定システム。
【数2】
JP0004843791B2_000008t.gif

【請求項12】
前記分析評価手段により前記信頼度が所定の基準よりも低いと評価された場合、前記採水手段は、前記試料水を再度採水し、前記成分分析手段は、前記採水手段によって再度採取された試料水からイオンの成分を分析することを特徴とする請求項7~11の何れか1項に記載の河川流量比測定システム。
【請求項13】
陸水の成分分析結果を評価する成分分析評価方法であって、
前記陸水に含まれる所定のイオンの成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出工程と、
前記陸水から測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出工程において算出した電気伝導度とを比較して、前記成分分析結果の信頼性を評価する分析評価工程とを有することを特徴とする成分分析評価方法。
【請求項14】
合流前の河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第1の成分分析評価装置と、前記河川の支流から試料水の成分の分析及び評価を行う第2の成分分析評価装置と、前記支流の合流後における河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第3の成分分析評価装置と、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置から得られた情報を基に河川の流量比を算出する河川流量比測定装置とを用いた河川流量比測定方法であって、
前記試料水を採水する採水工程と、
前記採水工程において採水した試料水から所定のイオンの成分を分析する成分分析工程と、
前記試料水から電気伝導度を測定する電気伝導度測定工程と、
前記成分分析工程における成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出工程と、
前記電気伝導度測定工程において測定した電気伝導度と、前記電気伝導度算出工程において算出した電気伝導度とを比較して、前記成分分析工程における成分分析結果の信頼度を評価する分析評価工程と、
前記分析評価工程において所定の基準以上の評価が得られた成分分析結果から前記河川の本流に対する前記河川の支流の流量比を算出する流量比算出工程とを有することを特徴とする河川流量比測定方法。
【請求項15】
請求項13に記載の成分分析評価方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は成分分析評価装置、河川流量比測定システム、成分分析評価方法、河川流量比測定方法、及びプログラムに関し、例えば、河川水、湖沼水、あるいは温泉の分析結果の評価に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川水など人体に影響を及ぼす水に対しては、成分分析は欠かせないものとなっており、それに伴い、分析精度を向上させるために様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、雨水などの試料水が電気的に中性であることを利用して陰イオンと陽イオンとの電荷バランスから分析値の信頼性を評価するとともに、Kohlrauschの式において、得られた各イオンの濃度に予め知られた各イオンの当量電導度を掛け合わせ、その和をとった値(導電率の理論値)で電気伝導度を計算して信頼性を評価する雨水自動分析装置が開示されている。
【0003】

【特許文献1】特開平6-109721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の雨水自動分析装置の場合、雨水のような希薄溶液に対しては、前記のような方法で電気伝導度を計算することができるが、土壌などから様々な成分を吸収した河川水や湖沼水など、高濃度の溶存イオンが含まれている陸水に対しては、前記のような方法で電気伝導度を計算することができない。したがって、一般に、河川水や湖沼水などの主要化学成分の分析値の信頼性は、陰イオンと陽イオンとの電荷バランスのみにより判断されている。しかし、この方法では主要成分の陰陽成分の全てを測定する必要があるとともに、分析の過誤を起こしている成分を同定することが難しい。そこで、より簡便に分析値の信頼性を確認する方法が要望されている。
【0005】
本発明は前述の問題点に鑑み、河川水や湖沼水などの分析値の信頼性を簡便に確認できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の成分分析評価装置は、陸水の成分分析結果を評価する成分分析評価装置であって、前記陸水に含まれる所定のイオンの成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段と、前記陸水から測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出手段によって算出された電気伝導度とを比較して、前記成分分析結果の信頼性を評価する分析評価手段とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の河川流量比測定システムは、合流前の河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第1の成分分析評価装置と、前記河川の支流から試料水の成分の分析及び評価を行う第2の成分分析評価装置と、前記支流の合流後における河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第3の成分分析評価装置と、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置から得られた情報を基に河川の流量比を算出する河川流量比測定装置とを有する河川流量比測定システムであって、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置は夫々、前記試料水を採水する採水手段と、前記採水手段によって採水された試料水から所定のイオンの成分を分析する成分分析手段と、前記試料水から電気伝導度を測定する電気伝導度測定手段と、前記成分分析手段による成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出手段と、前記電気伝導度測定手段によって測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出手段によって算出された電気伝導度とを比較して、前記成分分析手段による成分分析結果の信頼性を評価する分析評価手段とを有し、前記河川流量比測定装置は、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置において所定の基準以上の評価が得られた成分分析結果から前記河川の本流に対する前記河川の支流の流量比を算出する流量比算出手段を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の成分分析評価方法は、陸水の成分分析結果を評価する成分分析評価方法であって、前記陸水に含まれる所定のイオンの成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出工程と、前記陸水から測定された電気伝導度と、前記電気伝導度算出工程において算出した電気伝導度とを比較して、前記成分分析結果の信頼性を評価する分析評価工程とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の河川流量比測定方法は、合流前の河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第1の成分分析評価装置と、前記河川の支流から試料水の成分の分析及び評価を行う第2の成分分析評価装置と、前記支流の合流後における河川の本流から試料水の成分の分析及び評価を行う第3の成分分析評価装置と、前記第1、第2及び第3の成分分析評価装置から得られた情報を基に河川の流量比を算出する河川流量比測定装置とを用いた河川流量比測定方法であって、前記試料水を採水する採水工程と、前記採水工程において採水した試料水から所定のイオンの成分を分析する成分分析工程と、前記試料水から電気伝導度を測定する電気伝導度測定工程と、前記成分分析工程における成分分析結果から電気伝導度を算出する電気伝導度算出工程と、前記電気伝導度測定工程において測定した電気伝導度と、前記電気伝導度算出工程において算出した電気伝導度とを比較して、前記成分分析工程における成分分析結果の信頼度を評価する分析評価工程と、前記分析評価工程において所定の基準以上の評価が得られた成分分析結果から前記河川の本流に対する前記河川の支流の流量比を算出する流量比算出工程とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のプログラムは、前記の成分分析評価方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、陸水に含まれる所定のイオンの成分分析結果から電気伝導度を算出し、前記陸水から測定された電気伝導度と、前記算出された電気伝導度とを比較して、前記成分分析結果の信頼性を評価するようにした。これにより、河川水、湖沼水などの陸水の分析途中で分析値の信頼性を評価することができるため、分析誤差の生じた試料を速やかに再分析にまわすことができる。したがって、河川水や湖沼水などの分析値の信頼性を簡便に確認でき、分析の時間的及び経済的な節約を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態における成分分析評価装置の機能構成例を示すブロック図である。本実施形態においては、河川、湖沼等に設置された採水施設に本装置が設置されている例について説明する。
【0013】
図1において、101は採水装置であり、河川、湖沼等から直接試料水を採水する装置である。採水装置101には、採水した試料水を貯蔵する容器が含まれており、後述するデータ判別部105から再分析を行う旨の信号が後述する成分分析部102を介して送られてきた場合は、採水装置101は容器に満たされた試料水を排水し、試料水を河川、湖沼等から再度採水する。なお、試料水を貯蔵する容器を複数個設け、データ判別部105から再分析を行う旨の信号が送られてきた場合に、試料水を排水せずに別の容器に試料水を再度採水するようにしてもよい。
【0014】
102は成分分析部であり、採水装置101において採水された試料水に含まれるイオン成分について定量分析を行う。分析方法としては、イオンクロマトグラフ等の分析装置で分析を行う。
【0015】
103はEC測定部であり、採水装置101において採水された試料水の電気伝導度を測定する。測定方法としては、ECメータ等の装置で測定を行う。
【0016】
104はデータ処理部であり、成分分析部102において分析した成分の分析値を集計し、集計結果を基に電気伝導度を算出する。電気伝導度と溶存イオン当量との関係はすでにKohlrausch(1897)やOnsager(1927)らにより体系的に理論化されているが、本願発明者は湖沼水や河川水などの陸水については、これらの理論式では計算することができなかった、電気伝導度として10mS m-1を超える量の溶存イオンが含まれる試料水に対しても、単位体積当たりの単純な陽イオン当量和あるいは陰イオン当量和と電気伝導度との間に高い相関性が認められることを見いだした。そこで本実施形態では、電気伝導度と総陽イオン和及び総陰イオン和の関係を最小二乗法により算出した以下の数1に示す式を用いて電気伝導度(EC)を算出する。
【0017】
【数1】
JP0004843791B2_000002t.gif

【0018】
なお、河川水や湖沼水などの表流水の主要な陽イオンは、数1に示したように、通常は、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)の4種類であるが、稀にpHの極端に低いもの(pHが4以下)や還元的な地下水には水素イオン(H+)やアンモニウムイオン(NH4+)が有意に存在する。
【0019】
同様に、主要な陰イオンは、数1に示したように、通常は、塩化物イオン(Cl-)、硝酸イオン(NO3-)、硫酸イオン(SO42-)、重炭酸イオン(HCO3-)の4種類であるが、地質によってはフッ化物イオン(F-)、人為的負荷が大きな場合は燐酸イオン(PO43-)、pHが高い場合(pHが9以上)では炭酸イオン(CO32-)、水酸化物イオン(OH-)が有意に存在する。
【0020】
したがって、数1の式では、陽イオンに関しては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、及びカルシウムイオンの4種類の和で示したが、場合によっては水素イオンやアンモニウムイオンを含めて電気伝導度を算出する。また、陰イオンに関しても同様に、塩化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、及び重炭酸イオンの4種類以外に、場合によっては、フッ化物イオン、燐酸イオン、炭酸イオン、または水酸化物イオンを含めて電気伝導度を算出する。
【0021】
また、データ処理部104はメモリ(図示せず)を備えており、成分分析部102において分析した成分の分析値と、EC測定部103において測定された電気伝導度とを一時的にメモリに格納する。
【0022】
105はデータ判別部であり、データ処理部104において算出された電気伝導度と、EC測定部103において測定された電気伝導度とを比較し、成分分析部102における分析結果の信頼性が十分であるか否かを判別する。具体的には、以下の数2に示す式を用いて、分析結果の信頼性が十分であるか否かを判別する。
【0023】
【数2】
JP0004843791B2_000003t.gif

【0024】
数2に示した分析精度の信頼性(R)が基準値に満たない場合は、成分分析部102に対して、再分析を行う旨の信号を送る。なお、基準値については、ユーザがあらかじめ設定することができる。
【0025】
一方、分析精度の信頼性が基準値を満たした場合は、データ保存部106にその分析値を保存する。なお、データ保存部106の代わりに、データロガーをUSB等を介して成分分析評価装置100に接続して、分析値をデータロガー等に保存するようにしてもよい。また、I/F(インタフェース)107を介して他の情報処理装置等にデータとして送信するようにしてもよい。
【0026】
108は表示制御部であり、成分分析部102において分析した成分の分析値、EC測定部103において測定した電気伝導度、データ判別部105において判別した信頼性の結果等を表示装置109に表示させる。
【0027】
なお、本実施形態において、採水装置101、成分分析部102、及びEC測定部103については、データ処理部104等と信号の送受信を行うことができればよいので、必ずしも成分分析評価装置100に内蔵されている必要はなく、互いに別の装置として構成してもよい。
【0028】
図2は、本実施形態における分析評価の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図2において、処理が開始されると、ステップS201において、データ処理部104は、成分分析部102における試料水の成分分析において、陽イオンまたは陰イオンの何れか一方の分析が終了したか否かを判断する。
【0029】
この判断の結果、どちらの分析もまだ終了していない場合は、何れか一方の分析が終了するまで待機する。一方、ステップS201の判断の結果、何れか一方の分析が終了した場合は、ステップS202において、データ処理部104は、陽イオンまたは陰イオンの当量の和から数1に示した数式を用いて電気伝導度を算出する。
【0030】
次に、ステップS203において、データ処理部104は、EC測定部103で既に電気伝導度を測定してデータをEC測定部103から受け取っているか否かを判断する。この判断の結果、既にEC測定部103で電気伝導度を測定し、データを受け取っている場合は、ステップS205に進む。一方、ステップS203の判断の結果、まだ電気伝導度の測定を行っておらず、データを受け取っていない場合は、ステップS204に進む。
【0031】
次に、ステップS204において、EC測定部103は、試料水の電気伝導度を測定し、測定した電気伝導度をデータ処理部104に送る。次に、ステップS205において、データ判別部105は、データ処理部104からステップS202で算出した電気伝導度を取得し、ステップS204で測定した電気伝導度と比較して、成分分析部102においてした分析結果の信頼性を評価する。
【0032】
次に、ステップS206において、ステップS205における評価の結果、信頼度が所定の基準値を下回り、再分析が必要であるか否かを判断する。この判断の結果、再分析が必要である場合は、ステップS201に戻り、再分析を行う。再分析の際には、再分析を行う旨の信号を成分分析部102を介して採水装置101に送る。採水装置101は試料水を河川、湖沼等から再度採水し、成分分析部102は再度分析を行う。
【0033】
一方、ステップS206の判断の結果、信頼度が所定の基準値を上回り、再分析が必要でない場合は、ステップS207において、試料水に含まれる主要イオン成分の分析結果の信頼性の評価がすべて終了したか否かを判断する。すなわち、陽イオン及び陰イオンの両方で分析結果の信頼性の評価を終えたか否かを判断する。
【0034】
この判断の結果、信頼性の評価がまだ終了していない場合は、ステップS201に戻る。一方、ステップS207の判断の結果、信頼性の評価がすべて終了した場合は、処理を終了する。
【0035】
また、本実施形態においては、陽イオン及び陰イオンを通じて1成分に欠損が生じた場合に、その欠損したイオンの濃度を一定の信頼度をもって推定することができる。例えば、分析設備の中に滴定器具がないため重炭酸イオン(HCO3-)が分析できない場合に、その重炭酸イオンの濃度を推定することができる。
【0036】
図2に示したフローチャートを参照しながら、重炭酸イオン(HCO3-)が測定できない場合に、その重炭酸イオンの濃度を推定する手順について説明する。まず、ステップS201~S206において、陽イオンについて信頼性の高い分析結果を得る。そして、ステップS207においては、陰イオンの成分分析がまだ終了していないため、ステップS201に戻る。次に、ステップS201において、測定不能の重炭酸イオンを除いたすべての陰イオンについての分析が終了したことを判断し、ステップS202に進む。
【0037】
ステップS202において、まず、重炭酸イオンの濃度の推定を行う。一般に、試料水が電気的に中性であることを利用した陰陽イオンバランスの計算法が広く利用されており、このイオンバランスを用いると、以下の数3に示す式を用いて重炭酸イオンの濃度を推定することができる。
【0038】
【数3】
JP0004843791B2_000004t.gif

【0039】
これにより、重炭酸イオンの濃度を推定し、以下の数4に示す式を用いて電気伝導度を算出する。なお、欠損値の推定後に電気伝導度を算出するときは、数1に示した式を用いると、数3に示した式より陰イオンの濃度の和が常に一定となってしまい、再分析を行っても常に同じ電気伝導度しか算出されない。したがって、この場合、個々の陰イオンの濃度から電気伝導度を算出する。
【0040】
【数4】
JP0004843791B2_000005t.gif

【0041】
次に、ステップS203においては、陽イオンの分析評価で既にデータをEC測定部103から受け取っているため、ステップS205に進む。
【0042】
次に、ステップS205において、分析結果及び重炭酸イオンの濃度の推定値の信頼性を評価し、ステップS206において、再分析が必要であるか否かを判断する。信頼度が基準値を下回り、再分析が必要である場合は、ステップS201に戻り、陰イオンの分析値(重炭酸イオンを除く)と重炭酸イオンの推定値とから与えられる電気伝導度の計算値が基準値を満たすまで陰イオンの分析を繰り返す。このようにして、欠損値に対して、一定の信頼性をもってその推定値を与えることができる。
【0043】
以上のように本実施形態においては、現地設置型の成分分析評価装置100における分析時のデータの欠損を防ぎ、信頼のおける分析値を人為的な判断なしでまとめることができる。また再分析によるフィードバックにより、信頼性が基準値に満たない分析値を出した試料については、再度試料水を採水して分析を行うため、試料採取に欠損をきたすことが無くなる。さらに、従来はイオンバランスによって分析結果の評価を行っていたため、陽イオンと陰イオンとの両方を分析する必要があったが、例えば、陽イオンのみを分析して信頼性の高い分析結果を得たい場合であっても、陰イオンの分析を行わなくても分析結果の評価を行って信頼性の高い分析結果を得ることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、河川、湖沼等に設置された採水施設に現地設置型の成分分析評価装置100を設置する場合を想定した。一方、成分分析装置として、分析精度の高い原子吸光光度計やICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析装置を用いる場合には、装置の規模が大きくなるため、これらの装置を現地に設置することは現実的ではない。そこで本実施形態では、試料水を予め採水して持ち帰った場合において、複数の容器に入れてオートサンプラー等で採水する成分分析装置と、電気伝導度を測定するEC測定装置と、分析評価装置とからなる成分分析評価システムについて説明する。
【0045】
図3は、本実施形態における成分分析評価システムの構成例を示す図である。
図3において、本実施形態のシステムは、分析評価装置300と、成分分析装置320と、EC測定装置340とから構成されている。基本的な構成は第1の実施形態と同様であるため、同一の構成については同一の番号を付している。異なる点は、第1の実施形態の採水装置101及び成分分析部102が成分分析装置320となっており、EC測定部103がEC測定装置340となっている点である。この構成により、成分分析値及び測定した電気伝導度等のデータをLAN330を介して送受信を行う。
【0046】
成分分析装置320は、例えば、ICP発光分析装置や原子吸光光度計などであり、採水装置としてはオートサンプラーを用いる。なお、ICP発光分析装置や原子吸光光度計などは、高精度での分析が可能でありながら陰イオン類の測定が不可能であるため、他の成分分析装置と組み合わせてもよい。
【0047】
EC測定装置340は、ECメータなどであるが、LAN接続が可能なものを用いる。本実施形態においては、電気伝導度の測定は1度しか行わないため、EC測定装置340とLAN接続を行わず、予め試料水の電気伝導度を測定しておき、そのデータを分析評価装置300に記憶させておいてもよい。
【0048】
以上のように本実施形態においては、従来のイオンバランスによる分析値の信頼性判定ができなかったICP発光分析装置や原子吸光光度計のような高精度な分析が可能な装置においても、信頼性の評価を行うことができる。
【0049】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態で説明した現地設置型の成分分析評価装置100を用いて河川の流量比を測定する例について説明する。河川の流量を測定するには、河川の数箇所の地点において流速を測り、さらに河川の断面積を求めるのが一般的である。また、河川が小規模の場合は、Vノッチを河川に設置し、流量を測定する方法が利用される。
【0050】
しかし、前者は人員と労力を要し、後者は伏流水が多い場合や河床が岩石で覆われている場合などには適用できない。化学的手法として、NaClや放射性物質などのトレーサー物質による定率希釈法が用いられることもあるが、これは現場において希釈が理想どおりに行くとは限らず、また環境への悪影響も危惧されるため、河川流量の測定法としては活用されていない。本実施形態では、河川の化学成分のうち、溶存態として安定な多種の化学成分を測定することで流量比を測定する。
【0051】
図4は、本実施形態における河川流量比測定システムの一例を示す概略図である。
図4において、合流後の本流河川401に対する支流河川403の流量比(あるいは流量・湧出量)を求めるために、合流後の本流河川401と、合流前の本流河川402と、支流河川403とに、それぞれ第1の成分分析評価装置404と、第2の成分分析評価装置405と、第3の成分分析評価装置406とを設置する。なお、各成分分析評価装置404~406の機能構成については、第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0052】
各成分分析評価装置404~406で河川の成分分析が行われ、信頼度の高い成分分析結果が得られると、河川流量比測定装置400にその結果が送信される。河川流量比測定装置400は、各成分分析評価装置404~406から送信された成分分析結果を基に、以下の数5に示す式を用いて、河川の流量比を算出する。
【0053】
【数5】
JP0004843791B2_000006t.gif

【0054】
合流後の本流河川401と支流河川403との間に化学成分の隔たりがあり、かつ河川水の混合による化学変化がない場合には、この数5を用いて簡便に流量比を算出することができる。このとき、ナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、溶存ケイ素など、溶存態として比較的安定し、かつ分析的にも良好な精度をもって定量値が得られる成分を用いる必要がある。これら多成分による流量比の算出結果が略一致する成分を抽出し、流量比が略一致する成分が多ければ多いほど流量比の推定精度を上げることができる。また、推定流量比の算出結果からはずれた成分については、その成分による算出結果を基に、例えば伏流水や、鉱泉流出水や、廃棄物処分場からの流出水のように観測地点では表出しない流出水による混合の影響を評価し、それらの流出水との妥当な混合比を算出することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、ナトリウムイオン、塩化物イオン、硫酸イオン、溶存ケイ素など、溶存態として比較的安定し、かつ分析的にも良好な精度をもって定量値が得られる成分を用いて流量比を算出しているが、イオンの濃度の代わりに、電気伝導度の実測値を用いて流量比を算出することもできる。具体的には、各成分分析評価装置404~406のEC測定部103で測定した電気伝導度を数5の式にイオン濃度(C)の代わりに代入することにより、流量比を算出することができる。
【0056】
図5は、本実施形態における河川流量比測定装置400の機能構成例を示すブロック図である。
図5において、502は河川水分析部であり、各成分分析評価装置404~406から成分分析結果をI/F501を介して受信し、前述した数2を用いて河川の流量比を算出する。そして、算出結果をデータ管理部503に記憶させる。また、前述したように、解からはずれた成分がある場合は、流出水の混合比の算出も行う。504は、表示制御部であり、河川水分析部502において算出した結果を表示装置505に表示させる。
【0057】
図6は、本実施形態における河川流量比の算出手順の一例を示すフローチャートである。
図6において、処理が開始されると、ステップS601において、各成分分析評価装置404~406から成分分析結果をすべて入手したか否かを判断する。この判断の結果、成分分析結果をすべて入手していない場合は、すべての成分分析結果が揃うまで待機する。
【0058】
一方、ステップS601の判断の結果、成分分析結果をすべて入手した場合は、ステップS602において、前述した数5の式を用いて成分ごとに河川流量比を算出する。次に、ステップS603において、すべての成分(電気伝導度も含む)について前述した数5の式を用いて成分ごとに河川流量比を算出したか否かを判断する。なお、すべての成分とは、前述したように溶存態として比較的安定し、かつ分析的にも良好な精度をもって定量値が得られる成分について対象としており、河川流量比を算出するのが困難である成分からは河川流量比を算出しなくてもよい。
【0059】
この判断の結果、すべての成分において河川流量比を算出していない場合は、ステップS602に戻り、残りの成分について河川流量比を算出する。一方、ステップS603の判断の結果、すべての成分において河川流量比を算出した場合は、ステップS604において、すべての成分における河川流量比の算出結果を基に、算出結果が互いに略一致する成分を抽出する。
【0060】
次に、ステップS605において、算出結果が略一致する成分を基に、推定流量比を決定する。次に、ステップS606において、流量比の算出結果が一致しない成分があるか否かを判断する。この判断の結果、一致しない成分がない場合は、処理を終了する。
【0061】
一方、ステップS606の判断の結果、一致しない成分がある場合は、ステップS607において、ステップS605で決定した推定流量比と、その成分から算出した流量比との差から流量水の混合比を算出し、処理を終了する。
【0062】
以上のように本実施形態においては、合流後の本流河川401に対する支流河川403の流量比を算出することができる。また、鉱泉流出水の流量評価や、廃棄物処分場からの流出水の流量評価を行うことができるため、水質汚染のモニタリングに有効である。
【0063】
なお、本実施形態においては、各成分分析評価装置404~406から成分分析結果をすべて入手した後に、各成分における流量比の算出を行っているが、ある成分の成分分析結果が揃った時点でその成分における流量比の算出を行うようにしてもよい。
【0064】
(その他の実施形態)
前述した実施形態の成分分析評価装置100は、具体的にはCPU、RAM、ROM等を含むコンピュータ装置或いはコンピュータシステムにより構成されるものである。したがって、本発明の各機能処理を実現するために、コンピュータにインストールされるコンピュータプログラム自体及びその記録媒体も本発明に含まれる。
【0065】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD-ROM、DVD-R)などもある。
【0066】
また、前記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術的思想又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態における成分分析評価装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における分析評価の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態における成分分析評価装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第3の実施形態における河川流量比測定システムの構成例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態における河川流量比測定装置の機能構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施形態における河川流量比の算出手順の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
100 成分分析評価装置
101 採水装置
102 成分分析部
103 EC測定部
104 データ処理部
105 データ判別部
106 データ保存部
107 I/F
108 表示制御部
109 表示装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5