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明細書 :ホログラフィによる画像記録装置および画像記録方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5162733号 (P5162733)
公開番号 特開2008-122565 (P2008-122565A)
登録日 平成24年12月28日(2012.12.28)
発行日 平成25年3月13日(2013.3.13)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
発明の名称または考案の名称 ホログラフィによる画像記録装置および画像記録方法
国際特許分類 G03H   1/04        (2006.01)
G03H   1/10        (2006.01)
FI G03H 1/04
G03H 1/10
請求項の数または発明の数 7
全頁数 21
出願番号 特願2006-305047 (P2006-305047)
出願日 平成18年11月10日(2006.11.10)
審査請求日 平成21年10月28日(2009.10.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
発明者または考案者 【氏名】佐藤 邦弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100084375、【弁理士】、【氏名又は名称】板谷 康夫
【識別番号】100121692、【弁理士】、【氏名又は名称】田口 勝美
【識別番号】100125221、【弁理士】、【氏名又は名称】水田 愼一
審査官 【審査官】竹村 真一郎
参考文献・文献 特表2005-512127(JP,A)
特許第3471556(JP,B2)
特表2002-526815(JP,A)
特開昭62-217283(JP,A)
特開2005-283683(JP,A)
調査した分野 G03H 1/00-1/34
G11B 7/004-7/0065
特許請求の範囲 【請求項1】
位相シフトデジタルホログラフィ法により物体の画像を電子的に記録する画像記録装置において、
コヒーレント光を発生するコヒーレント光発生手段と、
前記コヒーレント光発生手段により発生されたコヒーレント光を参照光と照明光とに分けて出射するビームスプリッタと、
前記ビームスプリッタによって出射された照明光を物体に照射する照射手段と、
画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面を有すると共に該受光面に入射する光の情報を記録する画像記録手段と、
前記ビームスプリッタによって出射された参照光を前記画像記録手段の受光面に入射させる参照光入射手段と、を備え、
前記参照光入射手段は、前記受光面の各画素に入射する参照光の前記各画素の中心における位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となり、かつ、画素ピッチの整数倍で周期的に変化するように、当該参照光の伝播方向を前記受光面の法線方向から傾け、
前記画像記録手段は、前記参照光入射手段により入射される参照光と前記照射手段による照明光の照射により発生する物体からの物体光とが前記受光面に形成する干渉パターンを物体の画像情報として電子的に記録することを特徴とする画像記録装置。

【請求項2】
前記参照光入射手段は、前記各画素に入射する参照光の前記各画素の中心における位相値が互いに隣り合う画素間においてπ/2またはπの位相差となるように、当該参照光を入射させることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。

【請求項3】
前記画像記録手段は、CCD画像センサを用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記画像記録手段は、CMOS画像センサを用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記コヒーレント光発生手段は、赤色、緑色、青色の3色のコヒーレント光を発生するように3つ備えられ、前記ビームスプリッタと、前記照射手段と、前記参照光入射手段とが、それぞれ前記各コヒーレント光発生手段に対応して備えられていることを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項6】
互いにコヒーレントな参照光と照明光とを生成する光束生成工程と、
画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面に、前記受光面の各画素に入射する光波の前記各画素の中心における位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となり、かつ、画素ピッチの整数倍で周期的に変化するように伝播方向を前記受光面の法線方向から傾けて、前記参照光を入射させる参照光入射工程と、
前記参照光入射工程に並行して前記照明光を物体に照射する照射工程と、
前記参照光入射工程により受光面に入射した参照光と前記照射工程による照明光の照射によって発生する物体からの物体光とが前記受光面に形成する干渉パターンを物体の画像情報として電子的に記録する画像記録工程と、を備えることを特徴とする画像記録方法。

【請求項7】
前記画像記録工程によって記録した画像情報に基づいて物体光の複素振幅を求める振幅演算工程を備えることを特徴とする請求項6に記載の画像記録方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトデジタルホログラフィ法により物体の画像を電子的に記録する画像記録装置および画像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィは、レーザ光を互いにコヒーレントな照明光と参照光に分け、モデルとなる物体を照明光により照射して発生した物体光と別経路を伝播してきた参照光とを写真乾板面で受光し、受光面での干渉パターンを写真乾板に記録する技術であり、この乾板を現像したものがホログラムである。ホログラムに再生照明光を当てることによって物体のあった位置に物体の立体像(虚像)を再生して見ることができる。
【0003】
計算機ホログラフィは、計算機内部のデータとして物体を表現し、光の反射、回折、干渉の物理シミュレーションを計算機上で行い、ホログラム面として定めた任意の面上での干渉パターンのデータを計算する技術である。計算結果に基づき、何らかの表示デバイスを用いてホログラムを製作する。物体を計算機上のデータで定義するので、モデルとなる物体が不要であり、光学的な補正が可能である。また、メモリに記録した干渉パターンを反射型液晶ディスプレイなどに次々と表示してホログラムを実体化すると共に参照光を照射して物体像を連続的に再生できる。
【0004】
ディジタルホログラフィは、写真乾板ではなくCCD画像センサやCMOS画像センサなどによって干渉パターンを検出して電子的に記録する。記録された光強度分布を計算機で数値処理し物体光波を算出してホログラムを作成する。ディジタルホログラフィを用いれば、画像センサ面における2次元の複素振幅分布の形で物体光の波面情報を取得できる。この波面情報に基づいて、上述の計算機ホログラフィと同様に、様々な視点や位置での物体像が得られる。また、ディジタルホログラフィでは、物体光どうしが作る干渉縞を取り除いて高画質3次元画像を記録することができる。
【0005】
位相シフトデジタルホログラフィは、上述の複素振幅分布を取得する技術である。従来の写真乾板などを用いるホログラムは、光波の瞬時位相を記録する代わりに干渉という方法によって物体光の位相情報を固定化して記録するので、実数型のデータである。複素振幅は、振幅と位相、あるいは実数部と虚数部といった複数のデータから成る。従って、複素振幅を求めるには、複数枚のホログラムデータが必要であり、位相シフトデジタルホログラフィでは、物体光に対する参照光の位相状態が互いに異なる複数枚のホログラムデータを用いる。
【0006】
参照光の位相をシフトする方法として、薄いガラス板を参照光の伝播経路に挿入したり、参照光を反射するミラーの位置をピエゾ素子を用いて移動させたりする方法がある。例えば、ピエゾ素子を用いて、参照光の位相をπ/2ずつシフトさせた状態で3種類のホログラムデータを取得し、3枚のホログラムの各画素データ間の連立方程式から物体光の複素振幅を求める例が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、参照光の位相状態を受光面の画素毎に異ならせて、複数枚のホログラムデータを一括して取得する方法がある。例えば、隣接する素子が互いにπ/2ずつ位相を異ならせるようにアレイ配置した位相シフトアレイ素子を参照光の伝播経路に挿入して、参照光の断面に位相分布を持たせることにより、1枚のホログラムに参照光の位相が0,π/2,π,3π/2の4段階に変化させた干渉パターンの情報を記録する。この場合、一枚のホログラム中の画素データの1/4ずつが4種類のホログラムをそれぞれ形成している(例えば、特許文献2参照)。

【特許文献1】特許第3471556号公報
【特許文献2】特開2005-283683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような位相シフトデジタルホログラフィによる画像記録においては、位相状態の異なる複数のホログラムを記録するのに、参照光の位相状態を変化させて複数回記録する必要があり、画像記録の高速化に限界がある。また、一般に位相シフトのための制御パラメータに対するシフト量が波長依存性を有するので、カラー画像を記録する場合に、各色毎の参照光システムが必要になるが、各色毎かつ参照光の位相状態毎に、高速にホログラムを記録するのは難しくなる。
【0009】
また、上述した特許文献2に示されるような位相シフトデジタルホログラフィによる画像記録においては、位相シフトアレイ素子とCCD画像センサのそれぞれの画素位置を厳密に一致させる必要があり、高い位置合わせ精度が要求されるので、外乱による画素位置ずれに対する信頼性確保などの問題もある。また、このような位相シフトアレイ素子を高精度で低コスト化するのは難しいと思われる。
【0010】
本発明は、上記課題を解消するものであって、システム構成の簡単化および位相シフトホログラムデータの高速取得化を実現して画像の高速記録を可能とし、さらにカラー画像記録の簡単化と高速化を容易に実現できるホログラフィによる画像記録装置および画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、位相シフトデジタルホログラフィ法により物体の画像を電子的に記録する画像記録装置において、コヒーレント光を発生するコヒーレント光発生手段と、前記コヒーレント光発生手段により発生されたコヒーレント光を参照光と照明光とに分けて出射するビームスプリッタと、前記ビームスプリッタによって出射された照明光を物体に照射する照射手段と、画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面を有すると共に該受光面に入射する光の情報を記録する画像記録手段と、前記ビームスプリッタによって出射された参照光を前記画像記録手段の受光面に入射させる参照光入射手段と、を備え、前記参照光入射手段は、前記受光面の各画素に入射する参照光の前記各画素の中心における位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となり、かつ、画素ピッチの整数倍で周期的に変化するように、当該参照光の伝播方向を前記受光面の法線方向から傾け、前記画像記録手段は、前記参照光入射手段により入射される参照光と前記照射手段による照明光の照射により発生する物体からの物体光とが前記受光面に形成する干渉パターンを物体の画像情報として電子的に記録するものである。

【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記参照光入射手段は、前記各画素に入射する参照光の前記各画素の中心における位相値が互いに隣り合う画素間においてπ/2またはπの位相差となるように、当該参照光を入射させるものである。

【0013】
請求項3の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記画像記録手段は、CCD画像センサを用いて構成されているものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記画像記録手段は、CMOS画像センサを用いて構成されているものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1に記載の画像記録装置において、前記コヒーレント光発生手段は、赤色、緑色、青色の3色のコヒーレント光を発生するように3つ備えられ、前記ビームスプリッタと、前記照射手段と、前記参照光入射手段とが、それぞれ前記各コヒーレント光発生手段に対応して備えられているものである。
【0016】
請求項6の発明は、互いにコヒーレントな参照光と照明光とを生成する光束生成工程と、画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面に、前記受光面の各画素に入射する光波の前記各画素の中心における位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となり、かつ、画素ピッチの整数倍で周期的に変化するように伝播方向を前記受光面の法線方向から傾けて、前記参照光を入射させる参照光入射工程と、前記参照光入射工程に並行して前記照明光を物体に照射する照射工程と、前記参照光入射工程により受光面に入射した参照光と前記照射工程による照明光の照射によって発生する物体からの物体光とが前記受光面に形成する干渉パターンを物体の画像情報として電子的に記録する画像記録工程と、を備える画像記録方法である。

【0017】
請求項7の発明は、請求項6に記載の画像記録方法において、前記画像記録工程によって記録した画像情報に基づいて物体光の複素振幅を求める振幅演算工程を備えるものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、受光面の各画素に入射する参照光の前記各画素の中心における位相値(主たる位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となるように、参照光の伝播方向を受光面の法線方向から傾けるので、物体光の複素振幅を決定するために必要な画像情報、すなわち、位相シフトデジタルホログラフィにおける互いに参照光の位相状態が異なる複数枚のホログラムデータ(以下、位相シフトホログラムデータともいう)を1回の記録で取得できる。従って、位相シフトホログラムデータの高速取得による画像の高速記録を実現できる。本発明は、平面波から成る参照光を受光面に斜め照射すると受光面上で参照光位相が周期的に分布する現象に基づいており、この位相の周期分布を利用して参照光位相が異なる複数の干渉パターンを同時に記録するものである。
【0019】
従って、隣り合う画素において位相値を互いに異なる値とするには、参照波の伝播方向を受光面の法線方向から傾けるだけでよいので、位相を変えるための空間光変調素子や位相シフトアレイ素子、あるいは光路中に挿入するガラスなどの位相変調板が不要であり、参照光入射手段のシステム構成が簡単となる。このように、参照光入射手段による条件調整が伝播方向の調整だけでよいので、画像記録装置の安定性の確保が容易であり、信頼性の高い使い勝手の良い装置を実現できる。
【0020】
また、本発明によると、カラー画像記録の簡単化と高速化を容易に実現できる。すなわち、赤緑青の3色の平行参照光それぞれの入射角を設定するだけで、3色に対応する3回の記録により、カラー化に必要な位相シフトホログラムデータを取得できる。また、異なる色の光毎に入射角の調整を行うだけで、受光面の画素の位相分担を異なる色に対して共通化できる。つまり、位相シフトにおける波長依存性を入射角によって吸収できるので、システム構成を複雑化することなく、カラー画像対応を容易に実現できる。
【0021】
上述の3色に対応する3回の位相シフトホログラムデータの取得は、コヒーレント光発生手段を各色のパルスレーザ光源を用いて構成することにより、レーザ光源の高速切替えにより高速に実行できる。そこで、本発明によれば、パルスレーザと受光素子を用いてコンパクトで安価な3次元動画像記録装置を実現でき、移動する被写体や変化する被写体のカラー画像を高速に記録したり、高画質3次元カラー動画像をリアルタイム記録したりできる。本発明の画像記録装置は、ノイズの少ない鮮明な3次元カラー動画像表示のための画像記録が可能であり、映像技術分野、情報分野、医療分野、設計支援分野、バーチャルリアリティなどの分野において用いることができる。
【0022】
請求項2の発明によれば、正方格子状に画素を配置して成る受光面を、互いに隣り合う画素間の位相差がπとなる田の字状に組み合わせた4つの画素の組で覆い尽くすことにより、位相状態の異なる2枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。画素配置が簡単であり、データ処理が容易である。ホログラムデータから物体光の複素振幅を求めるには、物体光の振幅、参照光の振幅、および物体光と参照光間の位相差の3つの未知数を求める必要がある。そこで、物体光または参照光のいずれか一方の光を遮断し他方の光の強度を測定する測定を追加することにより、未知数を1つ減らすことができる。
【0023】
また、正方格子状に画素を配置して成る受光面を、互いに隣り合う画素間の位相差がπ/2となるように直線状に組み合わせた4つの画素の組で覆い尽くして、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。4枚のホログラムデータの内、3枚または4枚のデータを用いて物体光の複素振幅を求めることができる。
【0024】
また、正方格子状に画素を配置して成る受光面を、互いに隣り合う一方向の画素間の位相差がπおよび他方向の画素間の位相差がπ/2となる画素を2×4に組み合わせた8つの組で覆い尽くして、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。この場合、将棋やチェスの桂馬飛びの配置によって、位相値を同じとする画素を8画素の中に2画素ずつ配置する。また、2個並び画素間では位相差をπとし、4個並びの画素間では位相差をπ/2とする。このような同位相画素の配置によると、同じ位相となる画素の分布を一様化でき、データ点の分布の片寄りを抑えて、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。
【0025】
請求項3の発明によれば、ノイズが少なく画素寸法を小さくできるCCD画像センサを用いて画像記録手段を構成するので、精細でノイズの少ない画像を記録できる。
【0026】
請求項4の発明によれば、読み出す画素の選択の自由度があり、低電圧で動作し、消費電力を小さくできるCMOS画像センサを用いて画像記録手段を構成するので、使いやすい画像記録装置を実現できる。
【0027】
請求項5の発明によれば、3色のコヒーレント光によるホログラムデータを取得するためのシステムを備えているので、カラー画像の記録が容易に行える。3色に対応する3回の位相シフトホログラムデータの取得は、コヒーレント光発生手段として各色毎のレーザ光源を用いて、レーザ光源の切替えにより実行できる。また、レーザ光源としてパルスレーザ光源を用いると、より高速にカラー画像の記録を実行できる。光速記録により、移動物体や時間変化現象を画像化できる。
【0028】
請求項6の発明によれば、受光面の各画素に入射する参照光の主たる位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となるように伝播方向を傾けて、参照光を受光面に入射させて、受光面における参照光と物体光との干渉パターンを記録するので、物体光の複素振幅を決定するために必要な画像情報、すなわち、位相シフトデジタルホログラフィにおける位相状態の異なるホログラムデータを1回の記録で、容易に取得することができる。
【0029】
請求項7の発明によれば、記録された画像情報に基づいて複素振幅を求めるので、この複素振幅を用いて、共役像などを除去したノイズの少ない画像を容易に再生できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る位相シフトデジタルホログラフィ法に基づく画像記録装置および画像記録方法について、図面を参照して説明する。
【0031】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る画像記録装置1を示す。画像記録装置1は、コヒーレント光を発生するコヒーレント光発生手段2と、コヒーレント光発生手段2からのコヒーレント光21を参照光22と照明光23とに分けて出射するビームスプリッタ3と、ビームスプリッタ3によって出射された照明光23を物体10に照射する照射手段4と、画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面5aを有すると共に受光面5aに入射する光の情報を記録する画像記録手段5と、ビームスプリッタ3によって出射された参照光22を画像記録手段5の受光面に入射させる参照光入射手段6とを備えている。
【0032】
コヒーレント光発生手段2は、レーザで構成される。従って、コヒーレント光21はレーザ光である。ビームスプリッタ3は、例えば、ハーフミラーで構成される。参照光22はビームスプリッタ3を通過したコヒーレント光21であり、照明光23はビームスプリッタ3によって反射されたコヒーレント光21である。
【0033】
照射手段4は、レンズ41,42を備え、これらのレンズ41,42のコリメータ機能によって照明光23のビーム径を拡大して平行光とした照明光Liを、物体10に照射する。照明光Liは、平行光であるので、平面波である。なお、照明光Liは、平行光である必要はなく、平面波である必要もない。
【0034】
画像記録手段5は、例えば、CCD画像センサからなる画像センサ51と、画像センサ51から出力される画像データを記録し、データ処理する画像記録部52と、を備えている。CCD画像センサの光センサ部が画素を構成し、光センサ部の2次元配列面が受光面5aを構成する。
【0035】
参照光入射手段6は、ミラーM、レンズ61,62を備え、ミラーMによって参照光22の向きを変えると共に、レンズ61,62のコリメータ機能によって参照光22のビーム径を拡大し平行光とした参照光LRを、受光面5aに入射する。参照光LRは、照明光Liと同様に平行光であるので、平面波である。
【0036】
この参照光入射手段6は、受光面5aの各画素に入射する参照光LRの主たる位相値が隣り合う画素において互いに所定の異なる値となるように、参照光LRの伝播方向を受光面5aの法線方向から所定の角度傾けて、受光面5aに参照光LRを入射させる。このような参照光LRの受光面5aへの入射は、本発明における位相シフトデジタルホログラフィの特徴であり、後述の第2の実施形態の説明の後に、まとめて詳細説明する。
【0037】
上述の構成のもとで、参照光入射手段6によって入射された参照光LRと、照射手段4による照明光Liの照射によって発生した物体10からの物体光Loとが受光面5aに干渉パターンを形成する。当然のことながら、画像記録装置1における光学系は、コヒーレント光発生手段2のレーザ光源から受光面5aまでの、参照光LRと物体光Loの両者の経路長差がレーザ光のコヒーレンス長内に収まる設定とされている。画像記録手段5は、受光面5a上の干渉パターンを画像センサ51によって検知し、その出力を物体10の画像情報として、画像記録部52に電子的に記録する。記録した画像データは、画像記録装置が別途備えた通信手段や可搬性記録媒体などを用いて、移動でき、他の場所や装置で利用することができる。
【0038】
上述の参照光入射手段6による受光面5aへの参照光LRの入射は、特定の画素毎に特定の位相状態が現れるように、受光面5aに対する入射角度によって調整されているので、画像記録手段5によって記録された画像情報は、位相シフトデジタルホログラフィにおける位相状態の異なる複数枚のホログラムデータ(複数枚の位相シフトホログラムデータ)をまとめて記録したものとなっている。言い換えると、2次元配列された画素全体が一度に受け取る画像情報は、複数枚の位相シフトホログラムデータに対応している。
【0039】
なお、画像記録手段5は、画像センサ51として、CCD画像センサの代わりCMOS画像センサを用いるようにしてもよい。この場合も、CCD画像センサと同様に、CMOS画像センサの光センサ部が画素を構成し、その2次元配列面が受光面5aを構成する。
【0040】
画像記録手段5にCCD画像センサを用いる場合、ノイズが少なく画素寸法の小さい受光面5aを形成でき、精細でノイズの少ない画像を記録できる。また、画像記録手段5にCMOS画像センサを用いる場合、読み出す画素の選択の自由度が高く、低電圧動作し、消費電力が小さいなどの特性を生かして、使いやすい画像記録装置1を実現できる。
【0041】
(第2の実施形態)
図2は第2の実施形態に係る画像記録方法のフローチャートを示す。本実施形態の画像記録方法は、例えば、上述の第1の実施形態の画像記録装置1を用いて、位相シフトホログラフィによる画像を記録する方法である。そこで、図1を再度参照して説明する。従って、ここでの説明は、上述した内容と一部重複した内容となっている。すなわち、この画像記録方法は、互いにコヒーレントな参照光LRと照明光Liとを生成する光束生成工程S1と、画素を構成する光センサ部を2次元配列して成る受光面5aに、受光面5aの各画素に入射する光波の主たる位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となるように伝播方向を受光面5aの法線方向から傾けて、参照光LRを入射させる参照光入射工程S2とを備えている。
【0042】
また、本画像記録方法は、上述の参照光入射工程S2に並行して照明光Liを物体10に照射する照射工程S3と、参照光入射工程S2により受光面5aに入射した参照光LRと照射工程S3による照明光Liの照射によって発生する物体10からの物体光Loとが受光面5aに形成する干渉パターンを物体10の画像情報として電子的に記録する画像記録工程S4と、を備えている。
【0043】
この画像記録方法によれば、受光面5aの各画素に入射する参照光LRの主たる位相値が隣り合う画素において互いに異なる値となるように伝播方向を傾けて、参照光LRを受光面5aに入射させて、受光面5aにおける参照光LRと物体光Loとの干渉パターンを記録するので、物体光Loの複素振幅を決定するために必要な画像情報、すなわち、位相シフトデジタルホログラフィにおける位相状態の異なる複数のホログラムデータを1回の記録で、容易に取得することができる。
【0044】
また、上述の画像記録方法は、さらに、画像記録工程S4によって記録した画像情報に基づいて物体光Loの複素振幅を求める振幅演算工程S5を備えることができる。振幅演算工程S5により、記録された画像情報に基づいて複素振幅を求めるので、次工程において画像を再生する際に、この複素振幅を用いて、共役像などを除去したノイズの少ない画像の再生が容易となり、画像情報の利用効率が向上する。
【0045】
(第1及び第2の実施形態における参照光入射の詳細説明)
図3(a)(b)、図4(a)(b)を参照して、参照光LRの斜め入射による位相シフトを説明する。本発明の画像記録装置1及び画像記録方法においては、CCD画像センサのような受光デバイスの受光面5aに、平行参照光LRを斜め照射し、受光面5aにおける参照光LRの位相を周期的に分布させて物体光Loと参照光LRが形成する干渉パターンを記録する。
【0046】
受光面5aにおける各画素は、通常の画像センサで行われているように、各画素のセンサ部全面で積分した受光強度を各画素の受光強度とするので、各画素毎に記録される受光強度は、各画素の中心における受光強度に比例する。従って、CCD画像センサなどを用いて受光強度を記録すると、受光面5aにおいて画素ピッチと等しい間隔でサンプリングした干渉パターンを記録することができる。
【0047】
参照光LRの各画素における主たる位相(すなわち画素中心での位相)が、画素ピッチの整数倍の周期で受光面5aに分布するように、参照光LRの入射角を設定すると、位相シフト素子を用いることなく、参照光LRの位相状態が互いに異なる複数の干渉パターンの組、つまり位相シフトデジタルホログラフィ法における互いに位相状態の異なる複数のホログラムデータを1回の撮影で取得できる。
【0048】
(平行参照光の斜め照射と画素の位相)
図3(a)(b)は、画像記録装置1および画像記録方法における波長λを有する参照光LRの受光面5aへの斜め入射の様子を示す。ここで、受光面5aをx-y平面とし、受光面5aに垂直に入射する方向をz軸とするxyz直交座標系を定義する。受光面5aには画素が升目格子状に配列されているとし、x軸、y軸は、画素の配列方向とする。
【0049】
受光面5aに斜め入射する参照光LRを、図3(a)(b)に示すように、z-x平面内で入射角がθxであり、z-y平面内で入射角がθyであるとすると、x=y=0の点を基準とした、受光面5aにおける参照光LRの位相分布φ(x,y)は、次式(1)のようになる。
【0050】
【数1】
JP0005162733B2_000002t.gif

【0051】
上式(1)は、位相分布φ(x,y)が、x軸方向とy軸方向にそれぞれ周期λ/sinθおよびλ/sinθで変化すること、すなわち、受光面5aにおいて線状分布した等位相点(位相値一定の波面と受光面5aとのなす交線)が周期的に分布することを示している。従って、物体光Loと参照光LRとが作る干渉パターンを受光素子表面において等位相値画素をサンプリングして記録すれば、光位相の異なる複数の干渉パターンを1回の撮影で記録することができる。
【0052】
上述のことは、参照光LRを斜め入射することによる効果である。もし、参照光LRを受光面5aに垂直入射させると、θx=θy=0、従って、φ(x,y)=0となり、受光面5aにおける位相分布は得られない。
【0053】
ここで、受光面5aにおける画素毎の位相分布の具体例を説明する。図4(a)は、参照光LRの波長λ、画素配列のピッチに応じて、上述の入射角θx,θyを適切に選択することにより、x-y座標の原点を基準とした位相がπ/2,3π/2,π/2,3π/2と田の字に組み合わされた4つの画素の組によって、受光面5aを覆い尽くす様子を示す(各区画が画素領域を示し、以下において同じ)。この受光面5aの状態は、各画素に入射する参照光LRの主たる位相値が隣り合う画素において互いに異なる値、すなわち互いに隣り合う画素間における位相差がπの状態を示す。
【0054】
図4(a)の受光面5aにおいて、位相値が3π/2とされた画素の組により1枚の位相シフトデジタルホログラムが得られ、位相値がπ/2とされた画素の組によりもう1枚の位相シフトデジタルホログラムが得られる。すなわち、互いに参照光LRの位相がπだけシフトした2枚の位相シフトホログラムデータが1回の記録で取得できる。
【0055】
上述の画素配置は簡単であり、データ処理が容易である。なお、ホログラムデータから物体光Loの複素振幅を求めるには、物体光Loの振幅、参照光LRの振幅、および物体光Loと参照光LR間の位相差の3つの未知数を求める必要がある。そこで、物体光Loまたは参照光LRのいずれか一方の光を遮断し他方の光の強度を測定する測定を追加することにより、未知数を1つ減らすことにより、物体光Loの複素振幅を求めることができる。
【0056】
図4(b)は、x-y座標の原点を基準とした位相がπ/4,3π/4,-3π/4,-π/4となるようにx方向とy方向のそれぞれの方向に並べて組み合わされた4つの画素の組によって、受光面5aを覆い尽くす様子を示す。主たる位相値が隣り合う画素間において互いにπ/2だけ異なっている。この状態の位相値分布によると、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。しかしながら、同位相値画素の分布が筋状に片寄っているので、図4(b)の例は、あまり好ましいものではない。
【0057】
(より好ましい位相シフト対応の画素分布)
図5は、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる、より好ましい位相と画素の配置を示す。このような配置は、再度述べると、参照光LRの波長λ、画素配列のピッチに応じて、図3(a)(b)に示した入射角θx,θyを適切に選択することにより構成される。すなわち、参照光LRの入射条件設定により、各画素に対して位相シフトの属性が決定される。そのような参照光LRの入射条件設定の結果、正方格子状に画素を配置して成る受光面5aを、位相が-3π/4,-π/4,π/2,3π/4の画素を2×4に組み合わせた8つの組で覆い尽くすようにでき、位相状態の異なる4枚のホログラムデータを1回の記録で取得できる。
【0058】
図5において、x軸方向に2個、y軸方向に4個並んだ8個の画素(図中の太実線枠内の画素)に注目すると、将棋やチェスの桂馬飛びの配置で、左下の+3π/4の画素に対応する画素が、1つ右かつ2つ上の位置に配置されている。全ての画素が、互いに位相を同じとする画素を桂馬飛び配置にして配置されている。また、x軸方向の2個並び画素間では位相差をπとし、y方向の4個並びの画素間では位相差をπ/2としている。このような位相と画素の配置によると、受光面5aにおける同じ位相となる画素の分布をより一様化(均一化)できるので、データ点の分布の片寄りを抑えた、高品位の位相シフトデジタルホログラムデータを取得できる。
【0059】
上述の一様性の様子は、図6に示した濃淡図によって確認することができる。この濃淡図は、上述の入射条件に設定した参照光LRと受光面5aに垂直入射させた平行物体光Loとの干渉パターンを記録して得られたものである。
【0060】
なお、このような濃淡図は、参照光LRの入射角θx,θyを所定の角度に設定するための調整手段として用いることができる。すなわち、画像センサ51から出力される画像を拡大してモニタに表示して、各画素毎の濃淡表示が鮮明に得られるように、参照光LRの入射角θx,θyを調整すればよい。また、このような調整は、濃淡値に対応する電気信号値を目標値として、入射角θx,θyを操作する手段、例えば、ミラーMを傾動駆動するアクチュエータ手段の制御電流を制御する制御手段を設けて、この制御手段によって自動化することができる。
【0061】
(干渉パターンのサンプリング)
上述の図5に示した位相値分布となるように入射条件を設定した参照光LRと、照明光Liによって照明された物体10から放射される散乱光(物体光Lo)とが、受光面5aに入射すると、参照光LRと物体光Loとが作る干渉パターンを、ホログラムとして記録する。この記録の内容を、数式を用いて説明する。受光面5aにおける角周波数ωの物体光LoをO(x,y,t)とし、参照光LRをR(x,y,t)として、一般的な波動の式で表すと、次式(2)(3)となる。また、受光面5aにおいて時間平均されて測定される光強度I(x,y)は次式(4)となる。式(4)は、ホログラムの数学的表現になっている。
【0062】
【数2】
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【0063】
上式(4)の右辺第1項と第2項は、それぞれ物体光Loと参照光LRの光強度に対応し、これらは、直流成分Idと物体光Loどうしの干渉で生じる低周波数成分I(x,y)を構成する。この第1項と第2項は、物体光Loおよび参照光LRの位相を含まない。第3項は、物体光Loと参照光LRとが作る干渉パターンの交流成分を表す高周波数成分I(x,y)である。この第3項には、物体光Loの波面情報である振幅Oと位相φが含まれている。すなわち、物体光Loの波面情報(複素振幅)が、右辺第3項によって記録される。振幅Oと位相φが求められると、物体光Loの複素振幅が得られたことになり、複素振幅によって物体光Loの波面の再生、つまり像再生をすることができる。
【0064】
上述の式(4)に対応するデータを、参照光LRの位相が異なる条件で複数測定することにより、すなわち、複数の位相シフトホログラムデータを記録することにより、データ間の連立方程式に基づいて、振幅Oと位相φを求めることができる。
【0065】
上述の干渉パターンI(x,y)を、画素ピッチがd、画素数がN×Nという、有限の受光面での記録の場合について説明する。
【0066】
この場合、受光面5aにおける干渉パターンは、上述の画素ピッチdと受光面のサイズNとから決まる基本周期Ndのフーリエ級数で表すことができる。そこで、視野角θの物体光Loに対する高周波数成分I(x,y)は、整数mとnが範囲mMIN<m<mMAXおよびnMIN<n<nMAXにあるフーリエ級数によって、次式(5)のように表される。なお、以下に現れる式中の大文字Iの上のチルダは無視される。
【0067】
【数3】
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【0068】
ところで、CCD画像センサなどの各画素では、光センサ部の全面で積分した値を入射光の強度として記録するので、中心座標(x,y)を有する画素により記録される高周波数成分の値は、次式(6)となる。
【0069】
【数4】
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【0070】
上式(6)の右辺の関数(πm/N)sin(πm/N)(πn/N)sin(πn/N)は、整数mとnに対して緩やかに変化する。従って、I(x,y)の積分値は、不等式、θ<<(λ/d)を満たすような視野角θをもつ物体(被写体)に対して次式(7)のように近似できる。
【0071】
【数5】
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【0072】
ここに、整数mとnは参照光の入射角から決まり、それぞれ、m=N(d/λ)sin(θ)、および、n=N(d/λ)sin(θ)、で与えられる。つまり、各画素で記録される高周波数成分Iの値は画素の中心(x,y)においてサンプリングしたI(x,y)に定数d(πm/N)sin(πm/N)(πn/N)sin(πn/N)を掛けた値に等しくなる。従って、視野角θがθ<<(λ/d)を満たす物体を受光面で記録すると、各画素の中心でサンプリングした干渉パターンが、物体光Loと参照光LRが作る干渉パターンI(x,y)として記録されることになる。
【0073】
(複素振幅ホログラムの導出)
受光面5a上における、参照光LRの位相周期が、画素ピッチdの整数倍になるように参照光LRの入射角を特定の値に設定すると、異なる参照光位相に対する複数の干渉パターンを同時に記録できる。このとき、同じ参照光位相に対する干渉パターンは、飛び飛びの画素で記録され、記録画素の間隔は画素ピッチの整数倍になる。視野角θが、θ<<λ/dを満たす被写体に対しては、物体光Loの振幅Oと位相φが、受光面5aの各画素間で緩やかに変化する。従って、上述したように、同じ参照光位相に対する記録データにおいて、記録されていない画素値は、補間によって十分な精度で求めることができる。
【0074】
上述の図5に示した、4種類の位相値を取りうる参照光LRの入射条件のもとでは、4種類の独立な記録データ(位相シフトホログラムデータ)が得られる。各データに補間処理を施して、3枚または4枚の干渉パターンデータを用いて、物体光Loの受光面5aにおける複素振幅を求めることができる。
【0075】
図7は受光面5aにおいて注目した格子点(画素の境界交差点)回りの4つの画素の中心における、参照光LRの位相φ,φ,φ,φを示す。注目した格子点の参照光位相φGを基準としたとき、格子点の回りの4つの画素中心における位相Δφ,Δφ,Δφ,Δφは、前出の式(1)を参照すると、次式(8)(9)となる。
【0076】
【数6】
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【0077】
4つの位相φ,φ,φ,φに対して一括して記録された干渉パターン(ホログラムデータ)から、各位相毎に上述の補間によって4枚の干渉パターン(位相シフトホログラムデータ)を求める。格子点右上の画素における4つの干渉パターンの値を、それぞれI,I,I,Iとし、格子点の位相φGを基準とした複素振幅の実数部と虚数部である余弦成分Iと正弦成分Iをそれぞれ次式(10)(11)とする。
【0078】
【数7】
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【0079】
すると、三角関数の余弦定理と正弦定理などを用いて、I,I,I,Iをそれぞれ直流成分Idと低周波数成分IおよびI,Iで表すことができる。逆に、複素振幅ホログラムの余弦成分Iと正弦成分Iは、I,I,I,Iを表す4つの式から求めることができ、次式(12)(13)となる。
【0080】
【数8】
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【0081】
上式(12)(13)に示した加減演算によって、I,I,I,I中の直流成分Iおよび物体光Loどうしの干渉で生じる低周波数成分Iは消えてなくなり、物体光Loと参照光LRとの干渉で生じる目的の交流成分のみが残る。このようにして直流成分Iと低周波数成分Iを除いた複素振幅をすべての画素において得ることができ、求めた複素振幅から高画質の画像を再生することが可能になる。
【0082】
(複素振幅インラインホログラムの導出)
式(12)(13)によって得られる複素振幅ホログラムは、斜め照射平行参照光に対するオフアクシス方式による空間搬送波型のホログラムである。この斜め照射参照光に対するオフアクシスホログラムから垂直照射参照光(入射角θ=θ=0)に対するインラインホログラムに変換すると、干渉パターンの空間周波数を低くできるので同じ記録画像に対してホログラムデータ量を減らすことができる。しかし、このようなホログラム変換を行うには変換のための計算処理が必要である。
【0083】
ところが、受光面5aにおける平行参照光LRの位相の周期が、画素ピッチの2倍または4倍になるように参照光LRの入射角を特定の値に設定すると、複雑な計算を行うことなく、加減演算のみで記録された干渉パターンから直接、インラインホログラムを得ることができ、ホログラム変換のための計算処理を省くことができる。以下、これを示す。
【0084】
図5に示すように、x方向とy方向の位相周期がそれぞれ画素ピッチdの2倍および4倍になるように入射角θ,θを設定した場合について説明する。この場合、d,λ,θ,θは、次式(14)の関係を満たしている。
【0085】
【数9】
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【0086】
また、上式(14)を満たすように参照光LRの入射角θ,θを設定すると、x-y平面上の座標(id,jd)にある格子点の位相は、前出の式(1)により、φ(id,jd)=(2i+j)π/2となる。図7に示す格子点を基準とする各画素中心の参照光LRの位相は、式(8)(9)により、Δφ=3π/4,Δφ=-π/4,Δφ=-3π/4,Δφ=π/4となる。この場合、インラインホログラムの複素振幅の余弦成分IInCと正弦成分IInSとは、(2i+j)が偶数のとき次式(15)(16)となり、(2i+j)が奇数のときには次式(17)(18)となる。すなわち、記録された干渉パターンデータの加減演算のみで複素振幅インラインホログラム(複素振幅情報を有するインラインホログラム)が得られる。
【0087】
【数10】
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【0088】
(第3の実施形態)
次に、図8を参照して、第3の実施形態に係るカラー対応の画像記録装置を説明し、図9乃至図12を参照して、画像例を含む記録データの例を説明する。本実施形態の画像記録装置1は、図1に示した第1の実施形態の画像記録装置1が1つのコヒーレント光発生手段2(レーザ光源)を備えているのと異なり、カラー対応のため、赤色R、緑色G、青色Bの3色のコヒーレント光を発生するように、3つのコヒーレント光発生手段2を備えている。
【0089】
さらに、画像記録装置1は、各コヒーレント光発生手段2に対応して、ビームスプリッタ3と、照射手段4と、参照光入射手段6とを、それぞれ備えている。本実施形態の画像記録装置1は、これらの点を除いて、上述の第1の実施形態と同様であり、重複説明は省略する。なお、画像記録手段5は、3色に対して共通に用いられる。
【0090】
この画像記録装置1によると、カラー画像記録の簡単化と高速化を容易に実現できる。すなわち、赤緑青の3色の平行参照光LRそれぞれの受光面5aへの入射角を設定するだけで、3色に対応する3回の記録により、カラー化に必要な位相シフトホログラムデータを取得できる。
【0091】
また、異なる色の光毎に入射角の調整を行うことにより、受光面5aの画素の位相分担を異なる色に対して共通化できる。つまり、位相シフトにおける波長依存性を入射角によって吸収できるので、システム構成を複雑化することなく、カラー画像対応を容易に実現できる。画像記録手段5が、3色共通とされるのは、この波長依存性吸収能力による。
【0092】
上述の3色に対応する3回の位相シフトホログラムデータの取得は、コヒーレント光発生手段2を、各色に応じて3台のパルスレーザ光源を用いて構成することにより、レーザ光源の光速切替えにより高速に実行できる。
【0093】
そこで、本発明によれば、パルスレーザと受光素子を用いてコンパクトで安価な3次元動画像記録装置を実現でき、移動する被写体や変化する被写体のカラー画像を高速に記録したり、高画質3次元カラー動画像をリアルタイム記録したりできる。この画像記録装置1は、ノイズの少ない鮮明な3次元カラー動画像表示のための画像記録が可能であり、映像技術分野、情報分野、医療分野、設計支援分野、バーチャルリアリティなどの分野において用いることができる。
【0094】
(参照光入射角の調整方法)
赤色、緑色、青色3色の干渉パターンから3色の位相シフトデジタルホログラムを取得するには、各参照光LRの入射角θx,θyをそれぞれ所定値に設定する必要がある。この入射角の設定は、第1の実施形態と同様に、図6に示した濃淡図に基づいて行うことができる。
【0095】
つまり、カラー画像の場合にも、図6のもととなる図5に示した、2×4の画素の組を用いる位相シフト方法を、各色毎に適用することができる。そこで、各色に対して、図6の濃淡図を、参照光LRの入射角θx,θyの調整手段として用いることができる。その調整の自動化等は上述同様であり説明を省略する。
【0096】
(3次元カラー画像の記録)
各色の光学系は、レーザ光源から受光面5aまでの参照光LRと物体光Loの経路長差が、レーザ光のコヒーレンス長内に収まるように設定されている。また、上述のように、参照光LRと物体光Loとが作る赤色、緑色、青色それぞれの受光面5a上の干渉パターンが画像センサ51と画像記録部52により記録される。
【0097】
3次元カラー画像を実質上1回の撮影で記録する方法として、3色パルスレーザ光源のそれぞれの発振時間が重ならないように時分割し、1枚の単色画像センサ51を用いて3色の干渉パターンを極めて短時間に記録する方法と、カラー対応の画像センサ51を用いて3色同時に記録する方法とを用いることができる。前者の方法は、3色パルスレーザの発振時間の正確な調整と画像センサ51からの記録データの高速読み取りが必要になる。これに対して、後者の方法は、感度の問題が考えられるが、記録速度の問題を避けることができる。
【0098】
(記録画像の例)
被写体の物体10として1辺の長さが2cmのサイコロを画像センサ51から75cmの位置に静止状態で置き、3次元カラー画像記録装置1を用いて位相シフトホログラムを記録した。図9は緑色レーザ光で記録した干渉パターンを示し、図10(a)(b)は、それぞれホログラムデータから求めた複素振幅インラインホログラムの余弦成分および正弦成分の拡大画像を示す。ホログラムデータは、パルスレーザではなく連続発振レーザを用いて上述の第2の実施形態の画像記録方法により、1回の撮影で記録した。複素振幅インラインホログラムの余弦成分および正弦成分は、振幅の実効値を用いて正規化した後に、256階調化して表示している。
【0099】
図9に示す干渉パターンは、物体光Loと参照光LRとが作る干渉パターンだけでなく物体光Loどうしが作る干渉パターン(雑音)も含んでいるので、本来の物体光Loと参照光LRが作る干渉パターンがこの雑音による擾乱の結果、コントラストの低い高周波数の干渉パターン画像として表示されている。これに対し、図10(a)(b)に示すインラインホログラムは、物体光Loどうしの干渉で生じる成分が除去されており、純粋に物体光Loと参照光LRとが作る干渉パターンが、コントラストが高く鮮明な、低周波数の干渉パターン画像として表示されている。
【0100】
図11(a)(b)(c)は、上述のように複素振幅インラインホログラムを、赤色、緑色、青色の3色について取得し、複素振幅データから数値計算によって再生した、それぞれ赤色、緑色、青色の画像を示す。これらの画像は、雑音のない高画質のものであって、画像が記録された被写体と同じ位置に再生されている。
【0101】
図12は、上述の赤色、緑色、青色の複素振幅データから再生したカラー画像を示す。このように画像記録され、計算処理されて再生された図12のカラー画像は、色ずれのない高画質のカラー画像となっている。
【0102】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、受光面5aにおける画素と位相との関係は、図4(a)(b)や図5に示したものに限られず、全体を90゜回転した関係や、x軸とy軸とを入れ替えた関係なども含まれる。また、図1、図8に示した光学系の配置や、レンズやミラーなどの光学素子の種類なども、これらの図に示したものに限られない。画素間の位相差は、π/2やπとは限らず、π/3でもよい。また、画像センサの画素配置列は、格子状に限られず、任意の2次元配列でもよい。そこで、六角形の画素の千鳥配列や、複数種類の大きさを有する画素配列などによって2次元平面を覆うような受光面でもよい。なお、上述の位相、位相値、位相状態などの用語は、本来、互いに相対的な事柄を表すものであるが、誤解の生じない範囲で、簡便化して用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像記録装置の概念構成図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る画像記録方法のフローチャート。
【図3】(a)(b)は同上画像記録装置および画像記録方法における参照光の受光面への入射を説明する図。
【図4】(a)(b)は同上画像記録装置および画像記録方法における各画素に対する位相シフトの例を説明する図。
【図5】同上画像記録装置および画像記録方法における受光面の各画素に対する位相シフトの他の例を説明する図。
【図6】図5に示した画素構成の受光面における参照光と垂直入射平行物体光とによる干渉パターンの濃淡表示図。
【図7】図5に示した画素配列の格子点における複素振幅演算の説明図。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るカラー対応の画像記録装置の概念構成図。
【図9】同上画像記録装置によって記録された赤色の干渉パターンの例を示す図。
【図10】(a)は図9の干渉パターンの複素振幅の実数部に対応するホログラムの図、(b)は同複素振幅の虚数部に対応するホログラムの図。
【図11】(a)は図9の干渉パターンから再現された赤色画像の図、(b)は図9の干渉パターンと共に記録された干渉パターンから再現された緑色画像の図、(c)は図9の干渉パターンと共に記録された干渉パターンから再現された青色画像の図。
【図12】図11(a)(b)(c)の画像を再現した干渉パターンに基づいて再現されたカラー画像の図。
【符号の説明】
【0104】
1 画像記録装置
2 コヒーレント光発生手段
3 ビームスプリッタ
4 照射手段
5 画像記録手段
6 参照光入射手段
51 画像センサ
5a 受光面
Li 照明光
Lo 物体光
LR 参照光
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図6】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11