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明細書 :ペプチド化合物PYY3-36の存否の確認方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4762114号 (P4762114)
公開番号 特開2008-122163 (P2008-122163A)
登録日 平成23年6月17日(2011.6.17)
発行日 平成23年8月31日(2011.8.31)
公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
発明の名称または考案の名称 ペプチド化合物PYY3-36の存否の確認方法
国際特許分類 G01N  25/20        (2006.01)
G01N  33/68        (2006.01)
C07K  14/575       (2006.01)
FI G01N 25/20
G01N 33/68
C07K 14/575 ZNA
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2006-304529 (P2006-304529)
出願日 平成18年11月9日(2006.11.9)
審査請求日 平成20年8月22日(2008.8.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 佳久
【氏名】ミハイル レハルスキー
【氏名】キムーン キム
【氏名】ヨンホー コー
【氏名】ナラヤナン セルバパラン
個別代理人の代理人 【識別番号】100065215、【弁理士】、【氏名又は名称】三枝 英二
【識別番号】100076510、【弁理士】、【氏名又は名称】掛樋 悠路
【識別番号】100105821、【弁理士】、【氏名又は名称】藤井 淳
審査官 【審査官】高橋 亨
参考文献・文献 特開2005-503415(JP,A)
米国特許出願公開第2005/0080068(US,A1)
調査した分野 G01N 25/20
G01N 33/68
C07K 14/575
G01N 25/20
G01N 33/68
C07K 14/575
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36の存否を確認する方法であって、
(1)前記被検薬剤及びキューカービチュリル[7]を溶媒とともに混合することにより溶液を調製する工程、及び
(2)工程(1)で得られた溶液を熱分析する工程
を含む、ペプチド化合物PYY3-36の存否の確認方法。
【請求項2】
さらに、被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH
で表されるペプチド化合物PYY1-36及び/又はペプチド化合物PYY1-36が分解することにより生成したペプチド分解物の存否を確認する請求項1に記載の確認方法。
【請求項3】
ペプチド化合物PYY3-36が分解することにより生成したペプチド分解物を検知する、請求項1に記載の確認方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチド化合物PYY3-36の存否の確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、肥満が健康に対して与える悪影響について問題となっている。減量を行い、さらにそれを維持するためには、長期間或いは侵襲的な治療が必要となる。米国保健社会福祉省は、年間およそ30万人の米国人が肥満が原因で死亡していると報告している。アメリカ合衆国内における肥満よる直接費及び間接費は、1000億ドルを突破している。
【0003】
従来より、シブトラミン、フェンテルミン、オルリスタット等の食欲抑制剤が市販されている。しかし、これら抑制剤の抑制効果は不十分である。
【0004】
そこで、近年、食欲の調整に効果的な天然ペプチドホルモンを医学的に応用することに期待が集まっている。製薬会社数社は、天然ペプチドホルモンに関する肥満の臨床試験及び前臨床試験を行っている。
【0005】
特に、天然のペプチドホルモンとして、下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36(以下「PYY3-36」と略記する場合がある)が注目されており、PYY3-36を鼻内へ注入するという新しい肥満治療の方法がすでに提供されている。PYY3-36は、人間の内臓(特に胃)の内分泌細胞によって作られる分泌物(以下「分泌物」と略記する場合がる)に含まれる。この分泌物は、人間の食物摂取量等に応じて分泌されやすい。
【0006】
前記分泌物には、通常、下記アミノ酸配列
H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH
で表されるペプチド化合物PYY1-36(以下「PYY1-36」と略記する場合がある)が含まれる。PYY1-36は、PYY3-36のN末端にさらに「Tyr-Pre-」が結合したものであり、PYY3-36と類似のアミノ酸配列を有する。
また、分泌物にトリプシンが含まれる場合、トリプシンがPYY1-36及びPYY3-36を分解し、ペプチド分解物が新たに生成することがある。
【0007】
PYY3-36を含む薬剤は、例えば、前記分泌物からPYY3-36を抽出して、製造することができる。しかし、該薬剤を製造する際、PYY1-36並びにPYY1-36及びPYY3-36由来のペプチド分解物が薬剤に混入するおそれがある。
【0008】
また、PYY3-36を含有する薬剤が固形状(錠剤、粉末物等)の場合、長期間保存により、PYY3-36が分解し、PYY3-36由来のペプチド分解物が該薬剤中に存在するおそれがある。従来より、固体状のペプチド化合物は、水溶液中のものより不安定であることが知られている(非特許文献1~4)。固体状のペプチド化合物は、内部のペプチド結合が分解しやすく(非特許文献5)、特に、ペプチド化合物が内部にアルギニン残基を有する場合、アルギニン残基とそれに隣接するアミノ酸残基間の結合は切れやすい(非特許文献6)。
【0009】
よって、PYY3-36を含む薬剤は、製造時や長期間保存後に、PYY3-36の存否、すなわち、PYY3-36由来のペプチド分解物が存在しているかどうか確認することが重要である。加えて、PYY3-36を分泌物から抽出して薬剤を製造する場合、PYY1-36及びPYY1-36由来のペプチド分解物の存否を、薬剤製造時に確認することが望ましい。
【0010】
確認方法としては、例えば、HPLC法や電気泳動が考えられる。
【0011】
しかしながら、PYY3-36、PYY1-36及び前記ペプチド分解物は、C末端からのアミノ酸配列が共通するため、従来の方法によって、PYY3-36の存否を確認することは困難を要する。また、薬剤に含まれるペプチド化合物全ての全アミノ酸配列を決定する場合、時間がかかり煩雑である。

【非特許文献1】Pearlman, R.; Nguyan, T.J. J.Pharm. Pharmacol.. 1992, 44, 178
【非特許文献2】Strickley, R.G.; Visor, G.C.; Lin, L.; Gu, L. Pharm. Res. 1989, 6, 971
【非特許文献3】Bhatt, N.; Patel, K.; Borchart, R.T. Pharm. Res. 1990, 7, 593
【非特許文献4】Jordan, G.M.; Yoshioka, S.; Terao, T. J. Pharm. Pharmacol. 1994, 46, 182
【非特許文献5】Lai, M. C.; Topp, E. M. J. Pharm. Sci. 1999, 88 489
【非特許文献6】Kertscher, U.; Bienert, M.; Krause, E.; Sepetov, N.F.; Mehlis, B. Int. J. Pept. Protein Res. 1993, 41, 207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、薬剤中における下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36の存否を簡便に、且つ、精度良く確認する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記のような従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の確認方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記の定量方法に係る。
1. 被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36の存否を確認する方法であって、
(1)前記被検薬剤及びキューカービチュリル[7]を溶媒とともに混合することにより溶液を調製する工程、及び
(2)工程(1)で得られた溶液を熱分析する工程
を含む、ペプチド化合物PYY3-36の存否の確認方法。
2. さらに、被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH
で表されるペプチド化合物PYY1-36及び/又はペプチド化合物PYY1-36が分解することにより生成したペプチド分解物の存否を確認する上記項1に記載の確認方法。
3. ペプチド化合物PYY3-36が分解することにより生成したペプチド分解物を検知する、上記項1に記載の確認方法。

【発明の効果】
【0015】
本発明の確認方法によれば、簡便に、且つ、精度良く(誤差1~2%程度で)、薬剤中における下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36の存否を確認することができる。具体的に、本発明の確認方法によれば、ペプチド化合物PYY3-36が分解することにより生成したペプチド分解物を検知することにより、薬剤を長期保存した場合の薬剤中におけるPYY3-36の存否を確認することができる。また、本発明の確認方法によれば、PYY1-36及び/又はペプチド化合物PYY1-36が分解することにより生成したペプチド分解物を検知し、その存否を確認することができる。従って、本発明の確認方法によれば、薬剤製造時に、PYY1-36及びその分解物の混入の有無を簡便に、且つ、精度良く(誤差1~2%程度で)、確認することができる。
【0016】
このように、本願発明の確認方法は、PYY3-36を含む薬剤の定性分析手段として極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の確認方法は、被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X
(アミノ酸配列中、XはOH、又はカルボン酸保護基を示す)
で表されるペプチド化合物PYY3-36の存否を確認する方法であって、
(1)前記被検薬剤及びキューカービチュリル[7]を溶媒とともに混合することにより溶液を調製する工程、及び
(2)工程(1)で得られた溶液を熱分析する工程
を含む。
【0018】
前記カルボン酸保護基としては、例えば、NH、NH-R、NHCOR、OR、SH、SR等が挙げられる。
【0019】
前記Rとしては、置換されていてもよい飽和炭化水素基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいヘテロアリール基、又は置換されていてもよいアラルキル基等を例示できる。
【0020】
置換されていてもよい飽和炭化水素基の飽和炭化水素基としては、特に限定されず、例えばC~C20の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基並びにC~C12シクロアルキル基が挙げられる。具体的には、C~C20の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、イコシル基等を例示できる。また、C~C12シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロドデシル基等を例示できる。
【0021】
置換されていてもよい飽和炭化水素基の置換基としては、特に限定されるものではないが、例えばアルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。アルコキシ基としては、例えばC1-6アルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示できる。アリールオキシ基としては、例えばC6-12アリールオキシ基が挙げられ、具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を例示できる。シロキシ基としては、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリイソプロピルシロキシ、tert-ブチルジメチルシロキシ等を例示できる。ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等を例示できる。
【0022】
置換されていてもよい飽和炭化水素基の置換基の置換位置及び置換基の数は、本発明の効果を妨げない範囲であればよく、特に限定されるものではない。
【0023】
置換されていてもよいアリール基のアリール基としては、特に限定されず、例えばC6-14アリールが挙げられる。具体的には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、アンスリル等を例示できる。
【0024】
置換されていてもよいアリール基の置換基としては、本発明の効果を妨げない範囲であればよく、特に限定されるものではない。例えばC1-6アルキル基、C6-14アリール基、5~10員芳香族複素環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シロキシ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0025】
1-6アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0026】
6-14アリール基としては、例えばフェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル等が挙げられる。
【0027】
5~10員芳香族複素環基としては、例えば2-又は3-チエニル、2-,3-又は4-ピリジル、2-,3-,4-,5-又は8-キノリル、1-,3-,4-又は5-イソキノリル、1-,2-又は3-インドリル、2-ベンゾチアゾリル、2-ベンゾ[b]チエニル、ベンゾ[b]フラニル等が挙げられる。
【0028】
アルコキシ基としては、例えばC1-6アルコキシ基が挙げられる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ヘキシルオキシ基等を例示できる。
【0029】
アリールオキシ基としては、例えばC6-12アリールオキシ基が挙げられる。具体的には、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等を例示できる。
【0030】
シロキシ基としては、トリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、トリイソプロピルシロキシ、tert-ブチルジメチルシロキシ等を例示できる。
ジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等を例示できる。
【0031】
置換されていてもよいアリール基の置換基の置換位置、置換基の数は、本発明の効果を妨げない範囲であればよく、特に限定されるものではない。
【0032】
置換されていてもよいヘテロアリール基のヘテロアリール基としては、特に限定されず、例えば、硫黄原子、酸素原子及び窒素原子から選ばれる原子を1~3個含む、縮環していてもよい5~14員芳香族複素環基が挙げられる。具体的には、フリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、カリボリニル、フェナンスリジニル及びアクリジニル等を例示できる。
【0033】
置換されていてもよいヘテロアリール基の置換基の種類、置換基の位置及び置換基の数は、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基の種類、置換基の位置及び置換基の数と同様である。
【0034】
置換されていてもよいアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。置換されていてもよいアラルキル基の置換基の種類、置換基の位置及び置換基の数は、前記置換されていてもよいアリール基で述べた置換基の種類、置換基の位置及び置換基の数と同様である。
【0035】
、R及びRとしては、上記Rと同様である。
【0036】
、R、R及びRとしては、特に、メチル基及びエチル基が好ましい。R、R、R及びRがメチル基及びエチル基の場合、後述する溶液の調製において、溶媒として水を用いる際、好適にPYY3-36を水に溶解させることができる。
【0037】
特に本発明の確認方法においては、XはNHであることがより好ましい。
【0038】
本発明の確認方法は、被検薬剤中において、PYY3-36の存否を確認する方法である。PYY3-36は、例えば、人間の内臓(特に胃)の内分泌細胞によって作られる分泌物から抽出することができる。得られた抽出物を用いて前記薬剤を製造する場合、PYY1-36及びその分解物が薬剤に混入するおそれがある。また、PYY3-36を含む薬剤を長期間保存する場合、PYY3-36が分解することにより、ペプチド分解物が生成するおそれがある。特に、PYY1-36及びPYY3-36内部のアルギニンとチロシン間の結合は結合力が他のアミノ酸間の結合よりも比較的弱く優先して切れやすい。よって、PYY1-36が分解する(前記結合が切れる)ことにより、N-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物が生成しやすい。また、PYY3-36が分解する(前記結合が切れる)ことにより、N-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物と、N-末端にイソロイシン残基を有するペプチド分解物が生成しやすい。
【0039】
N-末端にチロシン残基を有するPYY1-36、PYY1-36由来のペプチド分解物、及びPYY3-36由来のペプチド分解物は、キューカービチュリル[7](以下「CB[7]ということがある」)と反応する(錯体を形成する)ことにより熱を発する。本発明の確認方法によれば、前記薬剤及びCB[7]を溶液中で混合し、混合液を熱分析することにより、N-末端にチロシン残基を有するPYY3-36由来のペプチド分解物を検知し、PYY3-36の存否を確認することができる。また、N-末端にチロシン残基を有するPYY1-36及びPYY1-36由来のペプチド分解物を検知し、被検薬剤中のPYY3-36の純度を確認することができる。
【0040】
<工程(1)>
工程(1)では、前記被検薬剤及びキューカービチュリル[7]を溶媒とともに混合することにより溶液を調製する。
【0041】
被検薬剤
本発明の確認方法によれば、被検薬剤中におけるPYY3-36の存否を確認することができる。すなわち、PYY3-36が分解することにより生成したペプチド分解物を検知することにより、PYY3-36の存否(PYY3-36の分解の有無)を確認できる。
【0042】
PYY3-36が分解することにより生成したペプチド分解物としては、例えばN-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物、N-末端にイソロイシン残基を有するペプチド分解物等が挙げられる。
【0043】
PYY3-36由来のN-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物(以下「分解物A」と略記する場合がある)としては、例えばTyr-X、Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-X、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg、Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg等が挙げられる。これらは、被検薬剤中に1種又は2種以上で含んでいてもよい。
【0044】
PYY3-36由来のN-末端にイソロイシン残基を有するペプチド分解物(以下「分解物B」と略記する場合がある)としては、H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg、H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His、H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Argが挙げられる。これらは、被検薬剤中に1種又は2種以上で含んでいてもよい。
【0045】
本発明の確認方法によれば、さらに、被検薬剤中において、下記アミノ酸配列
H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH
で表されるペプチド化合物PYY1-36及び/又はペプチド化合物PYY1-36が分解することにより生成したペプチド分解物の存否を確認することができる。
【0046】
PYY1-36が分解することにより生成したペプチド分解物としては、例えば、N-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物等が挙げられる。
【0047】
PYY1-36由来のN-末端にチロシン残基を有するペプチド分解物(以下「分解物C」と略記する場合がある)としては、例えば、Tyr-NH、Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His、Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg、Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg、H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg、H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His、H-Tyr-Pre-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg等が挙げられる。これらは、被検薬剤中に1種又は2種以上で含んでいてもよい。
【0048】
被検薬剤中におけるPYY3-36、分解物A、分解物B、PYY1-36及び分解物Cの含有量は特に限定されない。本発明の確認方法によれば、N-末端にチロシン残基を有する分解物A、PYY1-36及び分解物Cから選ばれる少なくとも1種を合計で1重量%以上含有する場合、前記分解物A等を好適に検知し、精度良くPYY3-36の存否を確認することができる。
被検薬剤には、通常薬剤に含まれる公知の成分をさらに含んでいてもよい。例えば、PYY3-36、分解物A、分解物B、PYY1-36及び分解物C以外のペプチド化合物等を含んでいてもよい。
【0049】
被検薬剤の形態は、特に限定されず、例えば、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)等が挙げられる。本発明の検査方法においては、これら形態の薬剤を1種又は2種以上で用いることができる。
【0050】
CB[7]
CB[7]は、図1に示す樽状の分子である。
【0051】
キューカービチュリル[7]以外のキューカービチュリル[6]、キューカービチュリル[8]等を用いる場合、PYY3-36の存否を精度良く確認することができない。
【0052】
溶液の調製
前記被検薬剤及びCB[7]を溶媒とともに混合することにより溶液を調製する。
【0053】
被検薬剤中に、分解物A、PYY1-36、分解物C等が存在する場合、被検薬剤及びCB[7]を溶液中で混合することにより、分解物A、PYY1-36及び分解物Cから選ばれる少なくとも1種のペプチド化合物がCB[7]と反応し(錯体を形成し)、発熱する。
【0054】
溶媒としては特に限定されないが、水が好ましい。水を用いることにより、好適にCB[7]を溶解させることができる。
溶液中の被検薬剤の濃度は、特に限定されないが、0.01~1mmol/lが好ましく、0.02~0.5mmol/lがより好ましく、0.02~0.05mmol/lが最も好ましい。
溶液中におけるCB[7]の濃度は、特に限定されないが、0.1~10mmol/lが好ましく、0.2~5mmol/lがより好ましく、0.2~0.5mmol/lが最も好ましい。
溶液のpHは限定的ではないが、1~8が好ましく、3~8がより好ましく、5~7が最も好ましい。特に、pHを3以上とすることにより、PYY3-36、PYY1-36等の分解をより一層防止できる。
【0055】
本発明の確認方法において、前記溶液中には、塩が存在してもよいが、本発明の確認方法においては、前記溶液中に塩が存在しない方が望ましい。塩は、分解物A等とCB[7]との反応(錯体の形成)を妨げる原因となりやすい。
【0056】
塩としては、例えば、NaSO、KSO、MgSO、NaCl、KCl、MgCl、NaNO、KNO、Mg(NO、Ca(NO、NaPO、KPO等の溶液に溶解して中性を呈する塩;NaHPO、KHPO等の溶液に溶解して弱酸性を呈する塩;NaCO、NaHCO、KCO、KHCO、NaHPO、KHPO、CHCOONa、CHCOOK等の溶液に溶解して弱塩基性を呈する塩等が挙げられる。これらの塩は1種又は2種以上で存在してもよい。
【0057】
溶液中の塩の濃度は、通常0.5mol/l以下、好ましくは0.1mol/l以下、より好ましくは10mmol/l以下、さらに好ましくは0~1mmol/lである。溶液中の塩の濃度が0.5mol/lを超える場合、分解物A等とCB[7]との反応(錯体の形成)が進行しにくい。溶液中の塩の濃度が10mmol/l以下の場合、分解物A等とCB[7]との反応(錯体の形成)が好適に進行し、精度良く、PYY3-36の存否を確認できる。
【0058】
混合方法は特に限定されない。例えば、工程(2)における熱分析を等温滴定熱量計を用いて行う場合、熱平衡下、前記薬剤を上記溶媒に溶解させた溶液(以下「溶液A」と略記する場合がある)に、CB[7]及び上記塩を上記溶媒に溶解させた溶液(以下「溶液B」と略記する場合がある)を一定量ずつ(例えば0.01mlずつ)滴下することにより混合することができる。
【0059】
溶液Aにおける被検薬剤の濃度は、特に限定されないが、0.01~1mmol/lが好ましく、0.02~0.5mmol/lがより好ましく、0.02~0.05mmol/lが最も好ましい
溶液BにおけるCB[7]の濃度は、特に限定されないが、0.1~10mmol/lが好ましく、0.2~5mmol/lがより好ましく、0.2~0.5mmol/lが最も好ましい。
【0060】
溶液Bにおける塩の濃度は、特に限定されないが、10mmol/l以下が好ましく、0~2mmol/lがより好ましい。
【0061】
以下、本発明の確認方法を等温滴定熱量計を用いて行う場合を代表例として工程(2)を具体的に説明する。
【0062】
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた溶液を熱分析する。具体的には、溶液Bを滴下するごとに発生する熱量を測定する。
【0063】
本発明の確認方法では、工程(1)で溶液を調製するのに先だって、予め、純粋なPYY3-36及びCB[7]を溶液中で混合する場合に発生する熱量を測定する。すなわち、予め、検量線を作成する。
【0064】
具体的には、PYY3-36含有溶液及び溶液Bを調製した後、熱平衡下、溶液Bを一定量ずつ(例えば0.01mlずつ)、PYY3-36含有溶液に滴下すればよい。
【0065】
PYY3-36含有溶液は、PYY3-36を上記溶媒に溶解させることにより調製できる。
【0066】
PYY3-36含有溶液におけるPYY3-36の濃度は、上記溶液Aの濃度と同程度にすればよく、特に限定されないが、0.01~1mmol/lが好ましく、0.02~0.5mmol/lがより好ましく、0.02~0.05mmol/lが最も好ましい。
【0067】
PYY3-36と滴下したCB[7]のモル比を横軸とし、滴下するごとに発生する熱量を縦軸としてプロットすることにより検量線を作成することができる。
【0068】
検量線上の熱量と工程(1)で得られた溶液を熱分析して求めた熱量とを対比することにより、被検薬剤中におけるPYY3-36の存否を確認することができる。すなわち、薬剤製造時においては、PYY1-36、分解物C等が存在するかどうかを確認でき、薬剤を長期保存する場合においては、PYY3-36が分解することなく有効に存在しているかどうかを確認することができる。
【実施例】
【0069】
以下に参考例及び実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0070】
参考例1
0.03mmol/lのTyr-NH水溶液1.5mlを超高感度等温滴定型カロリメータVP-ITC(マイクロキャル社製)の反応セルの中に入れた。
【0071】
また、0.3mmol/lのCB[7]含有水溶液0.25mlを前記カロリメータのシリンジの中に入れた。
【0072】
カロリメータを熱平衡にした後、反応セルの中へ、CB[7]含有水溶液を0.01mlずつ、計25回加えた。得られたデータをORIGIN7.0(マイクロキャル社製)によって自動積分した。結果を図2に示す(図中▼)。
【0073】
図1から、N-末端にチロシン残基を有するペプチド化合物とCB[7]とが反応する(錯体を形成する)ことにより発熱することがわかる。
【0074】
実施例1
検量線の作成
下記アミノ酸配列
H-Ile-Lys-Pro-Glu-Ala-Pro-Gly-Glu-Asp-Ala-Ser-Pro-Glu-Glu-Leu-Asn-Arg-Tyr-Tyr-Ala-Ser-Leu-Arg-His-Tyr-Leu-Asn-Leu-Val-Thr-Arg-Gln-Arg-Tyr-NH
で表されるPYY3-36の水溶液(濃度:0.03mmol/l)1.5mlを超高感度等温滴定型カロリメータVP-ITC(マイクロキャル社製)の反応セルの中に入れた。
【0075】
また、0.3mmol/lのCB[7]含有水溶液0.25mlを前記カロリメータのシリンジの中に入れた。
【0076】
カロリメータを熱平衡にした後、反応セルの中へ、CB[7]含有水溶液を0.01mlずつ、計25回加えた。得られたデータをORIGIN7.0(マイクロキャル社製)によって自動積分した。結果を図2に示す(図中■)。
【0077】
PYY3-36の存否の確認
次に、上記PYY3-36及びTyr-NHからなる被検薬剤(PYY3-36及びTyr-NHのモル比が95:5)を水に溶解させることにより、0.03mmol/lの被検薬剤含有水溶液を調製した。調製した溶液を上記カロリメータの反応セルの中に入れた。また、上記CB[7]含有水溶液0.25mlを前記カロリメータのシリンジの中に入れた。
【0078】
そして、上記と同様の方法により、熱量を測定し、得られたデータを自動積分した。結果を図3に示す(図中■)。なお、比較のため、作成した検量線も併せて図3に示す(図中○)。
【0079】
図3から、被検薬剤(PYY3-36及びTyr-NHのモル比が95:5)を混合する場合、純粋なPYY3-36混合する場合に比べ、発生する熱量が高いことがわかる。すなわち、前記被検薬剤は、純粋なPYY3-36に比べ、PYY3-36が少ない分Tyr-NHが存在しているため、熱量に差が生じたことがわかる。
【0080】
実施例2
検量線の作成
実施例1と同様の方法により検量線を作成した。結果を図4に示す(図中■)。
PYY3-36の存否(PYY1-36の存否)の確認
次に、実施例1で用いたPYY3-36及びPYY1-36からなる被検薬剤(PYY3-36及びPYY1-36のモル比が95:5)を水に溶解させることにより、0.03mmol/lの被検薬剤含有水溶液を調製した。調製した溶液を上記カロリメータの反応セルの中に入れた。また、上記CB[7]含有水溶液0.25mlを前記カロリメータのシリンジの中に入れた。
そして、上記と同様の方法により、熱量を測定し、得られたデータを自動積分した。結果を図4に示す(図中○)。
【0081】
図4から、被検薬剤(PYY3-36及びPYY1-36のモル比が95:5)を混合する場合、純粋なPYY3-36混合する場合に比べ、発生する熱量が高いことがわかる。すなわち、前記被検薬剤は、純粋なPYY3-36に比べ、PYY3-36が少ない分PYY1-36が存在しているため、熱量に差が生じたことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、キューカービチュリル[7]の化学構造を示す図である。
【図2】図2は、参考例1にて測定した熱量(図中■)及び実施例1の「検量線の作成」において測定した熱量(図中▼)をプロットした図である。
【図3】図3は、実施例1の「検量線の作成」において測定した熱量(図中○)及び「PYY3-36の存否の確認」において測定した熱量(図中■)をプロットした図である。
【図4】図4は、実施例2の「検量線の作成」において測定した熱量(図中■)及び「PYY3-36の存否の確認」において測定した熱量(図中○)をプロットした図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3