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明細書 :酸化物粒子を分散させるための組成物、粒子が分散されている組成物及びその製造方法並びにアナターゼ型酸化チタン焼結体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5205611号 (P5205611)
登録日 平成25年3月1日(2013.3.1)
発行日 平成25年6月5日(2013.6.5)
発明の名称または考案の名称 酸化物粒子を分散させるための組成物、粒子が分散されている組成物及びその製造方法並びにアナターゼ型酸化チタン焼結体
国際特許分類 B01F  17/00        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
C01G  23/053       (2006.01)
B01J  37/04        (2006.01)
C01F   7/02        (2006.01)
B01J  13/00        (2006.01)
FI B01F 17/00
B01J 35/02 J
C01G 23/053
B01J 37/04 102
C01F 7/02 Z
B01J 13/00 B
請求項の数または発明の数 12
全頁数 20
出願番号 特願2006-511621 (P2006-511621)
出願日 平成17年3月17日(2005.3.17)
国際出願番号 PCT/JP2005/004804
国際公開番号 WO2005/094978
国際公開日 平成17年10月13日(2005.10.13)
優先権出願番号 2004079265
優先日 平成16年3月18日(2004.3.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成20年2月1日(2008.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】櫻田 修
【氏名】橋場 稔
【氏名】高橋 康隆
【氏名】大矢 智一
【氏名】斉藤 雅昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100094190、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 清路
【識別番号】100117134、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 義昇
【識別番号】100111752、【弁理士】、【氏名又は名称】谷口 直也
審査官 【審査官】馳平 裕美
参考文献・文献 特表2004-507421(JP,A)
特開2000-119898(JP,A)
特開2004-026553(JP,A)
特開2004-256727(JP,A)
特開平10-338516(JP,A)
調査した分野 B01J 13/00
B01F 17/00~17/56
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
酸化物粒子を分散させるための組成物であって、
本組成物は、+3~5価の金属元素を含む金属アルコキシドと、シュウ酸以外の有機酸と、水と、を混合することにより得られ、
上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、モル比で(0.5~1.8):1であり、
上記金属元素アルミニウム又はチタンであり、
上記有機酸、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種であり、
本組成物は、上記金属アルコキシド及び上記有機酸に由来する、有機酸金属錯体を含む透明な水溶液であり、
上記水溶液のpHは2~11であることを特徴とする酸化物粒子を分散させるための組成物。
【請求項2】
上記混合において、上記水の存在により加水分解された上記金属アルコキシド由来の加水分解物と、上記有機酸とを、1~6週間撹拌する請求項1に記載の酸化物粒子を分散させるための組成物。
【請求項3】
酸化物粒子と、請求項1又は2に記載の酸化物粒子を分散させるための組成物と、を含むことを特徴とする粒子が分散されている組成物。
【請求項4】
上記酸化物粒子の含有割合が、60体積%以下である請求項に記載の粒子が分散されている組成物。
【請求項5】
pH2~11である請求項又はに記載の粒子が分散されている組成物。
【請求項6】
セラミックス材料、光触媒材料、光学材料又は電子材料分野に用いられる請求項乃至のいずれかに記載の粒子が分散されている組成物。
【請求項7】
アナターゼ型酸化チタン粒子と、請求項1又は2に記載の酸化物粒子を分散させるための組成物と、を含み、
上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、モル比で(0.7~1.5):1であり、
上記金属アルコキシドはチタンアルコキシドであることを特徴とする粒子が分散されている組成物。
【請求項8】
請求項に記載の粒子が分散されている組成物の固形分が焼結されたことを特徴とするアナターゼ型酸化チタン焼結体。
【請求項9】
焼結温度が、300~750℃である請求項に記載のアナターゼ型酸化チタン焼結体。
【請求項10】
光触媒材料又は太陽電池材料分野に用いられる請求項又はに記載のアナターゼ型酸化チタン焼結体。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の酸化物粒子を分散させるための組成物と、酸化物粒子と、溶媒とを混合する混合工程を備えており、且つ該混合工程において、上記組成物の混合量を上記酸化物粒子の等電点に応じて制御することを特徴とする粒子が分散されている組成物の製造方法。
【請求項12】
上記溶媒が、水である請求項11に記載の粒子が分散されている組成物の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物粒子を分散させるための組成物、粒子が分散されている組成物及びその製造方法並びにアナターゼ型酸化チタン焼結体に関する。更に詳しくは、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有し且つ環境面への負荷のない酸化物粒子を分散させるための組成物、安定して粒子が分散されている組成物及びその製造方法並びにアナターゼ型酸化チタン焼結体に関する。
本発明は、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、粒子の分散系の調製には、静電的な粒子の反発を利用するための懸濁液のpH調整、及び分散剤の添加が主に行われている。この分散剤としては、例えば、水ガラス、ポリリン酸等の無機電解質、並びに高分子電解質が一般的に使用されている。特に濃厚な懸濁液の調製には、高分子電解質を分散剤として添加する以外では困難と考えられてきた。
【0003】
また、コロイド科学において、多価のイオンが少量でも共存すると懸濁液の安定性が崩れることが一般的に知られており、チタン(+4価)等の多価金属のような高い陽電荷をもつイオンの共存下では、分散系はすぐに凝集してしまうと考えられてきた。
更に、チタン等の多価金属のイオンを含む水溶液は、その陽電荷密度のために、アクア錯イオンが容易に加水分解・縮合し、一般には塩基性酸化物として沈殿する傾向があり、多価金属イオンを含む水溶液は極めて酸濃度が高い条件でしか安定に得られないことが知られている(例えば、米国特許第2926183号等)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、チタン等の多価金属イオンが含まれる水溶液が、粒子の懸濁液に対して、高分子電解質を分散剤として使用したような効果を奏することは知られていない。
【0005】
本発明は上記観点に鑑みてなされたものであり、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有し且つ環境面への負荷のない酸化物粒子を分散させるための組成物、安定して粒子が分散されている組成物及びその製造方法並びにアナターゼ型酸化チタン焼結体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、チタンアルコキシド等の金属アルコキシドと、乳酸等の有機酸と、水とを混合することで得られる透明で安定な水溶液(組成物)の利用用途について、鋭意検討した結果、イオン性染料を用いた沈殿物の形成試験及びゼータ電位の測定等により、組成物中の金属イオンが有機酸と錯形成し、嵩高く且つ負の電荷を有する溶存種として存在しており、分散剤としての効果が従来報告されている高分子電解質と同等若しくはそれ以上であり、酸化物粒子等の各種粒子の分散に非常に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は以下の通りである。
(1)酸化物粒子を分散させるための組成物であって、
本組成物は、+3~5価の金属元素を含む金属アルコキシドと、シュウ酸以外の有機酸と、水と、を混合することにより得られ、
上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、モル比で(0.5~1.8):1であり、
上記金属元素アルミニウム又はチタンであり、
上記有機酸、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種であり、
本組成物は、上記金属アルコキシド及び上記有機酸に由来する、有機酸金属錯体を含む透明な水溶液であり、
上記水溶液のpHは2~11であることを特徴とする酸化物粒子を分散させるための組成物(以下、「粒子分散用組成物」とも言う。)。
(2)上記混合においては、上記水の存在により加水分解された上記金属アルコキシド由来の加水分解物と、上記有機酸とを、1~6週間撹拌する上記(1)に記載の粒子分散用組成物。
)酸化物粒子と、上記(1)又は)に記載の粒子分散用組成物と、を含むことを特徴とする粒子が分散されている組成物(以下、「粒子含有組成物」とも言う。)。
)上記酸化物粒子の含有割合が、60体積%以下である上記()に記載の粒子含有組成物。
)pH2~11である上記()又は()に記載の粒子含有組成物。
)セラミックス材料、光触媒材料、光学材料又は電子材料分野に用いられる上記()乃至()のいずれかに記載の粒子含有組成物。
)アナターゼ型酸化チタン粒子と、上記(又は(2)に記載の酸化物粒子を分散させるための組成物と、を含み、
上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、モル比で(0.7~1.5):1であり、
上記金属アルコキシドはチタンアルコキシドであることを特徴とする粒子含有組成物。
)上記()に記載の粒子含有組成物の固形分が焼結されたことを特徴とするアナターゼ型酸化チタン焼結体。
)焼結温度が、300~750℃である上記()に記載のアナターゼ型酸化チタン焼結体。
10)光触媒材料又は太陽電池材料分野に用いられる上記()又は()に記載のアナターゼ型酸化チタン焼結体。
11)上記(1)又は)に記載の粒子分散用組成物と、酸化物粒子と、溶媒とを混合する混合工程を備えており、且つ該混合工程において、上記組成物の混合量を上記酸化物粒子の等電点に応じて制御することを特徴とする粒子含有組成物の製造方法。
12)上記溶媒が、水である上記(11)に記載の粒子含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の粒子分散用組成物は、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有しており、且つ環境面への負荷がないため、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。
また、分散させる粒子と同系の金属元素を用いることで(例えば、分散させる粒子が酸化チタン粒子であり、粒子分散用組成物における金属元素がチタンの場合)、より不純物の少ない粒子含有組成物を得ることができる。また、分散させる粒子と、系が異なる金属元素を用いることで、電子材料分野等において用いる場合に、所望の割合でその粒子をドープすることができる。
更に、上記有機酸と上記金属アルコキシドとを特定の混合割合としているため、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有し且つ透明で十分に安定な組成物となる。
本発明の粒子含有組成物は、本粒子分散用組成物により粒子が安定して分散されており、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。
本発明の他の粒子含有組成物は、アナターゼ型酸化チタン粒子と、特定の粒子分散用組成物とを含んでおり、上記酸化チタン粒子が安定して分散されており、光触媒材料又は太陽電池材料分野において好適に利用できる。
本発明のアナターゼ型酸化チタン焼結体は、上記粒子分散用組成物におけるチタン酸が酸化チタンとなるため不純物が混入せず、且つこのチタン酸由来の酸化チタンが、アナターゼ型酸化チタン粒子の周りに均一に存在し、粒子間において焼結助剤として働くため、例えば、300~750℃という低温の焼成によっても強度のあるアナターゼ型酸化チタン焼結体となる。そのため、光触媒材料又は色素増感型太陽電池等の太陽電池材料分野において好適に用いることができる。
本発明の粒子含有組成物の製造方法によれば、粒子が安定して分散された粒子含有組成物を容易に製造することができる。
また、溶媒が水である場合には、取り扱い易く、火災等の危険がないため、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】染料における沈殿物の形成試験の結果を説明する説明図である。
【図2】各種チタン酸濃度の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、pHとゼータ電位との関係を説明するグラフである。
【図3】各種pHの2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とゼータ電位との関係を説明するグラフである。
【図4】pH2の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と沈降体積と沈降速度との関係を説明するグラフである。
【図5】pH4の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と沈降体積と沈降速度との関係を説明するグラフである。
【図6】pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と沈降体積と沈降速度との関係を説明するグラフである。
【図7】pH4の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と見かけ粘度との関係を説明するグラフである。
【図8】pH4の20体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と見かけ粘度との関係を説明するグラフである。
【図9】pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と見かけ粘度との関係を説明するグラフである。
【図10】pH10.5の20体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と見かけ粘度との関係を説明するグラフである。
【図11】pH4の20体積%酸化アルミニウム懸濁液における、剪断応力と剪断速度との関係を説明するグラフである。
【図12】pH10.5の20体積%酸化アルミニウム懸濁液における、剪断応力と剪断速度との関係を説明するグラフである。
【図13】pH4の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とチタン吸着量との関係を説明するグラフである。
【図14】pH9の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とチタン吸着量との関係を説明するグラフである。
【図15】pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とチタン吸着量との関係を説明するグラフである。
【図16】pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化を説明するグラフである。
【図17】pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化を説明するグラフである。
【図18】pH2の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化を説明するグラフである。
【図19】pH2の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化を説明するグラフである。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳しく説明する。
[1]酸化物粒子を分散させるための組成物(粒子分散用組成物)
本発明の粒子分散用組成物は、酸化物粒子を分散させるための組成物であって、+3~5価の金属元素を含む金属アルコキシドと、有機酸と、水と、を混合することにより得られ、上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、モル比で(0.5~1.8):1であり、上記金属元素アルミニウム又はチタンであり、上記有機酸、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種であり、本組成物は、上記金属アルコキシド及び上記有機酸に由来する、有機酸金属錯体を含む透明な水溶液であり、上記水溶液のpHは2~11であることを特徴とする。
上記粒子分散用組成物は、金属イオン(主として金属酸イオン)が有機酸と錯形成し、嵩高く且つ負の電荷を有する安定な金属錯体が水溶液中に存在している金属酸水溶液と考えられる。
【0011】
上記「有機酸」は、乳酸、クエン酸及び酒石酸から選ばれる。これらの有機酸は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
上記「金属アルコキシド」は、+3~5価の金属元素を含むものである。この金属アルコキシドは、〔M(OR)〕[但し、M;+3~5価の金属元素、R;アルキル基、x;3~5の整数であり、金属元素(M)の価数に対応する。]と表すことができる。
上記金属元素(M)は、アルミニウム、又はチタンである。特にチタンが好ましい。
上記アルキル基(R)は、通常、炭素数1~8、好ましくは1~6、更に好ましくは1~4のアルキル基である。具体的には、例えば、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等が挙げられる。特に、このアルキル基がブトキシドである場合には、金属アルコキシドの加水分解で生じるアルコール分(ブタノール)が分相するため、減圧下での留去等の処理をすることなくアルコール含量の少ない組成物を容易に調製できる。
尚、これらの金属アルコキシドは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記金属元素がチタンである場合の具体的なチタンアルコキシドとしては、例えば、チタンテトラメトキシド〔Ti(O-Me)〕、チタンテトラエトキシド〔Ti(O-Et)〕、チタンテトライソプロポキシド〔Ti(O-iPr)〕、チタンテトラブトキシド〔Ti(O-Bu)〕及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのなかでも、一般的に入手し易く、取り扱い易いという観点から、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドが好ましい。また、加水分解により生じるアルコール分の除去が容易であるという観点から、チタンテトラブトキシドが好ましい。
また、上記金属元素がアルミニウムである場合の具体的なアルミニウムアルコキシドとしては、例えば、アルミニウムトリメトキシド〔Al(O-Me)〕、アルミニウムトリエトキシド〔Al(O-Et)〕、アルミニウムトリイソプロポキシド〔Al(O-iPr)〕、アルミニウムトリブトキシド〔Al(O-Bu)〕及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのなかでも、一般的に入手し易く、取り扱い易いという観点から、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシドが好ましい。また、加水分解により生じるアルコール分の除去が容易であるという観点から、アルミニウムトリブトキシドが好ましい。
【0014】
上記「混合」において、前記金属アルコキシドと、前記有機酸と、水と、を混合する順序は特に限定されない。例えば、(1)金属アルコキシドと、有機酸と、水と、を同時に混合してもよいし、(2)金属アルコキシドと有機酸とを混合した後に水を混合してもよいし、(3)金属アルコキシドと水とを混合した後に、有機酸を混合してもよい。これらのいずれの場合においても、金属アルコキシドが水の存在により加水分解されて白濁し、その後、得られる金属アルコキシド由来の加水分解物が有機酸と混合されることにより溶解し、透明の液体となる。尚、本発明の粒子分散用組成物においては、これらの混合後、1週間以上、特に2~6週間、更には2~4週間の攪拌を行うことで透明の液体として得られるものもあるし、これらの混合後、上記攪拌を行わなくとも透明の液体として得られるものもある。
【0015】
上記混合を行う際の雰囲気及び温度は、各々特に限定されず、例えば、大気下にて室温(約25℃)で行うことができる。また、上記攪拌を行う際の雰囲気及び温度についても、各々特に限定されず、例えば、大気下にて室温(約25℃)で行うことができる。
【0016】
上記有機酸と上記金属アルコキシドとの混合割合(有機酸:金属アルコキシド)は、(0.5~1.8):1であり、更に好ましくは(0.7~1.5):1、特に好ましくは1:1である。この割合が(0.5~4):1である場合、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有し且つ透明で十分に安定な組成物が得られる。特に、この割合が1:1である場合、所定の金属アルコキシドの金属成分が高濃度で含まれる組成物をより容易に得られる。また、上記金属アルコキシドの割合を増加させることで、分散効果をより向上させることができる。一方、上記有機酸の割合を増加させることで、前記攪拌の期間を短くすることができる。
【0017】
また、本発明の粒子分散用組成物は、上記チタンアルコキシドと、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種の有機酸と、水と、を混合することにより得られ、チタンアルコキシドと有機酸との混合割合(有機酸:チタンアルコキシド)が、モル比で(0.7~1.5):1(好ましくは1:1)であるものとすることができる。この場合、チタン酸を1~3mol/dm、特に1~2.5mol/dm、更には1.5~2.5mol/dmという高濃度で含有し、且つより優れた粒子の分散効果を有する粒子分散用組成物を得ることができる。
【0018】
上記「水」の混合量は特に限定されず、本発明の粒子分散用組成物に含まれる金属成分が所定の濃度となるように適宜調整される。尚、この水は特に限定されず、純水、蒸留水等が用いられる。
【0019】
本発明の粒子分散用組成物に含まれる金属成分の濃度は、特に限定されず、用途や目的等に応じて適宜調整される。
【0020】
また、本発明の粒子分散用組成物には、製造過程上、金属アルコキシドの加水分解によりアルコール分が含有されるが、このアルコール分は必要に応じて公知の方法(例えば、減圧留去等)により除去することが可能である。尚、この加水分解で生じるアルコ-ル分を除去することによって、組成物の均一性や安定性、粒子を分散させる効果が低減することはない。
また、この粒子分散用組成物は、長期間(通常、1年以上、特に1~10年間)、均質な溶液の状態を維持することができ、ゲル化や沈殿が生じることは殆どない。
【0021】
このようにして得られる本発明の粒子分散用組成物は、透明(特に無色透明)で安定した液体である。また、本発明の粒子分散用組成物は、pH2~11の範囲において、透明で安定した液体であり且つ所定の粒子を安定して分散させることができる。
【0022】
また、本発明の粒子分散用組成物は、後述の実施例における「沈殿物の形成試験」に用いられている陽イオン染料と反応させた場合に、沈殿を形成するものであることが好ましい。
【0023】
本発明の粒子分散用組成物は、種々の粒子の懸濁液に対して優れた分散効果を有しており、且つ環境面への負荷がないため、工業的に簡単に応用でき、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。更に、ハロゲン、硝酸、硫酸などの他の成分を含まないので、焼成工程を経ても環境への悪影響がなく、水溶液であることから火災などの危険もなく、安全性に優れる。
また、この粒子分散用組成物では、組成物中の水又は水とアルコール分を除去して得られる固形分を、再度、水に溶解することで、本発明の粒子分散用組成物して用いることができる。この場合においても、上記と同様の分散効果を得ることができる。
【0024】
[2]粒子が分散されている組成物(粒子含有組成物)
本発明の粒子含有組成物は、酸化物粒子と、粒子分散用組成物と、を含むことを特徴とする。尚、上記「粒子分散用組成物」については、前記[1]の説明をそのまま適用することができる。
【0025】
上記酸化物粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化クロム及びフェライト等の酸化物の粒子を挙げることができる。
本発明においては、粒子の種類を用途や目的等に応じて適宜選択して用いることができる。これらの粒子は、単独で用いてもよいし、粒子の表面電荷を考慮して2種以上を併用してもよい。
【0026】
更に、本発明においては、上記酸化物粒子が酸化チタン粒子であり、上記粒子分散用組成物が、チタンアルコキシドと、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種の有機酸と、水と、を混合することにより得られ、チタンアルコキシドと有機酸との混合割合(有機酸:チタンアルコキシド)が、モル比で(0.7~1.5):1の前記粒子分散用組成物である粒子含有組成物とすることができる。この場合、分散媒となる粒子分散用組成物はチタン酸を高濃度で含有することができるため、チタン成分の濃厚な懸濁液とすることができる。尚、チタンアルコキシドの加水分解により生じたアルコール分は、前述の方法により除去されていてもよい。
また、上記酸化チタン粒子の結晶型は特に限定されず、アナターゼ型、ルチル型及びブルカイト型のいずれであってもよいが、好ましくはアナターゼ型である。この粒子がアナターゼ型酸化チタン粒子である場合には、この粒子分散組成物を光触媒材料又は太陽電池材料分野に好適に用いることができる。
【0027】
上記粒子の平均粒径は特に限定されず、用途や目的等に応じて適宜調整することができる。
【0028】
また、本発明の粒子含有組成物における金属成分の濃度は、用途や目的等に応じて適宜調整することができる。尚、この濃度が大きい程、分散させる粒子の表面電荷を負にシフトさせ易い。
【0029】
更に、本発明の粒子含有組成物における粒子の含有割合は特に限定されず、例えば、粒子含有組成物を100体積%とした場合、60体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1~50体積%である。この含有割合が60体積%以下である場合、所定の粒子がより安定して分散された組成物となる。
【0030】
また、この粒子含有組成物は、pH1~12であることが好ましく、より好ましくはpH1~11、更に好ましくはpH2~11である。特にpHが2~11の範囲である場合、所定の粒子がより安定して分散された組成物となる。
【0031】
本発明の粒子含有組成物には、通常、溶媒が含まれる。この溶媒としては、(1)純水、蒸留水等の水、(2)水と親水性の有機溶媒との混合液等が挙げられる。この有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール等が挙げられる。これらのなかでも、取り扱い易く、且つ火災等の危険がなく安全性が高いという観点から水であることが好ましい。
更に、本発明の粒子含有組成物には、粒子の安定した分散を損なわない範囲で、目的及び用途等に応じて、公知の添加剤を含有させてもよい。
【0032】
また、本発明の粒子含有組成物は、上記粒子分散用組成物を用いているため、環境面への負荷がなく、工業的にも簡単に応用することができ、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。更に、ハロゲン、硝酸、硫酸などの他の成分を含まないので、焼成工程を経ても環境への悪影響がなく、更には水系とすることができるため火災などの危険もなく、安全性に優れる。
更に、本発明の粒子含有組成物は焼結工程を経た際に、粒子分散用組成物における金属酸が金属酸化物となり、酸化物粒子等の分散された粒子の周りに均一に存在し、粒子間において焼結助剤として働くため、+3~5価の上記金属元素を粒子間に均一にドープすることができる。
【0033】
[3]粒子含有組成物の製造方法
本発明の粒子含有組成物の製造方法は、粒子分散用組成物と、酸化物粒子と、溶媒とを混合する混合工程を備えており、且つこの混合工程において、上記粒子分散用組成物の混合量を上記粒子の等電点に応じて制御することを特徴とする。尚、上記「粒子分散用組成物」については、前記[1]の説明をそのまま適用することができる。また、上記「酸化物粒子」及び上記「溶媒」については、前記[2]の各説明をそのまま適用することができ、特に水が好ましい。
【0034】
上記「混合工程」では、粒子分散用組成物と、粒子と、溶媒とが混合される。これらの粒子分散用組成物と、粒子と、溶媒とを混合する順序は特に限定されず、これらを同時に混合してもよいし、各々を任意の順に混合してもよい。具体的には、例えば、粒子と溶媒とを混合した後、粒子分散用組成物を混合することができる。
上記混合工程における、混合手段は特に限定されず、例えば、ボールミリング、超音波ホモジナイザー等により行うことができる。
また、混合を行う際の雰囲気及び温度は、各々特に限定されず、例えば、大気下にて室温(約25℃)で行うことができる。
【0035】
上記粒子分散用組成物の混合量は、上記粒子の等電点に応じて制御される。この粒子分散用組成物のpH挙動は、陰イオン性の高分子電解質を分散剤として添加したときのpH挙動ときわめて類似しているため、従来の高分子電解質と同様に用いることができる。
例えば、分散させる粒子を酸化アルミニウム(等電点;pH約9付近)とした場合、等電点よりも酸性側のpH領域(pH約9未満)では、酸化アルミニウム表面は正の電荷を有しているために、負の電荷を有する錯体を含む本粒子分散用組成物を配合していくことで凝集し、更に配合量を増やし、酸化アルミニウムの表面電荷を中和する以上に混合することで再分散させることができる。このように、分散させる所望の粒子の等電点よりも低いpH領域(酸性側)で分散させるためには、粒子表面の電荷を中和する以上に粒子分散用組成物を混合する必要があるが、この場合、多量の金属成分を多量に含む粒子含有組成物を製造することができ、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く応用できる。
一方、等電点よりもアルカリ側のpH領域(pH約9を超える場合)では、酸化アルミニウムの表面電荷も粒子分散用組成物における錯体と同様に負の電荷を有しているため、凝集することなく、更に安定して分散した粒子含有組成物を得ることができる。
【0036】
[4]アナターゼ型酸化チタン焼結体
本発明のアナターゼ型酸化チタン焼結体は、アナターゼ型酸化チタン粒子と、粒子分散用組成物と、を含む粒子含有組成物の固形分が焼結されたことを特徴とする。
上記「アナターゼ型酸化チタン粒子」の平均粒径は特に限定されず、用途や目的等に応じて適宜調整することができる。
このアナターゼ型酸化チタン粒子の含有割合は特に限定されず、例えば、粒子含有組成物を100体積%とした場合、60体積%以下であることが好ましく、より好ましくは1~50体積%である。この含有割合が60体積%以下である場合、粒子が安定して分散するので好ましい。
【0037】
上記「粒子分散用組成物」は、チタンアルコキシドと、乳酸、クエン酸及び酒石酸のうちの少なくとも1種の有機酸と、水と、を混合することにより得られ、チタンアルコキシドと有機酸との混合割合(有機酸:チタンアルコキシド)が、モル比で(0.7~1.5):1の前記粒子分散用組成物である。特に、チタンアルコキシドの加水分解により生じたアルコール分が前述の方法により除去されたものが好ましい。この場合、余分な成分をほとんど含有しないチタン酸水溶液となり、チタン成分の純度がより高まるので好ましい。
【0038】
上記「粒子含有組成物の固形分」は、粒子含有組成物を一般的な方法により乾燥することで得ることができる。
上記焼結温度は、通常300~750℃であり、好ましくは400~750℃、より好ましくは500~750℃である。この焼結温度が上記範囲である場合には、酸化チタン粒子をルチル型へ転移させることなく、強度のあるアナターゼ型酸化チタン焼結体を得ることができる。また、上記焼結温度が上記範囲内において高くなるほど、焼結体の強度を向上させることができる。
【0039】
本発明のアナターゼ型酸化チタン焼結体においては、上記粒子分散用組成物におけるチタン酸が酸化チタンとなるため不純物が混入せず、且つこのチタン酸由来の酸化チタンが、アナターゼ型酸化チタン粒子の周りに均一に存在し、粒子間において焼結助剤として働くため、300~750℃という低温の焼成によっても強度のあるアナターゼ型酸化チタン焼結体となる。そのため、アナターゼ型酸化チタンの薄膜や、ゾルゲル法等の従来法では製造が困難であった厚みのあるアナターゼ型酸化チタンのバルク体を余分な成分を添加することなく容易に製造することができ、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広く利用できる。特に、本発明のアナターゼ型酸化チタン焼結体は、光触媒材料又は色素増感型太陽電池等の太陽電池材料分野(例えば、基板、電極等)において好適に用いることができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]粒子を分散させるための組成物(粒子分散用組成物)の調製
実施例1
チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業株式会社製)と乳酸(和光純薬工業株式会社製)とをモル比(チタンテトライソプロポキシド:乳酸)で1:1となるように混合した後、水(純水)を更に混合した。水を加えると混合液は直ちに加水分解して白濁し、非常に粘度の高い溶液となった。その後、スターラーを用いて、2週間攪拌することで、無色透明な低粘度の粒子分散用組成物[金属成分の濃度(チタン酸濃度);2mol/dm]を得た。
尚、上記乳酸の代わりに、シュウ酸、クエン酸又は酒石酸(いずれもナカライテスク株式会社製)を用いた場合にも同様の粒子分散用組成物を得ることができた。また、上記チタンテトライソプロポキシドの代わりに、チタンテトラブトキシド(和光純薬工業株式会社製)又はアルミニウムトリイソプロポキシド(ナカライテスク株式会社製)を用いた場合にも実施例1と同様の粒子分散用組成物を得ることができた。更に、上記モル比(チタンテトライソプロポキシド:乳酸)を、1:0.8、1:0.9のそれぞれに変更した場合にも実施例1と同様の粒子分散用組成物を得ることができた。また、これらの各粒子分散用組成物を長期間(約1年)保存しても、均一溶液の状態を維持し、ゲル化や沈殿は見られなかった。
【0041】
実施例2
チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業株式会社製)と水(純水)とを混合した。その際、混合液は直ちに加水分解して白濁し、非常に粘度の高い溶液となった。その後、乳酸(和光純薬工業株式会社製)を、上記チタンテトライソプロポキシドとのモル比(チタンテトライソプロポキシド:乳酸)が1:1となるように混合した。次いで、スターラーを用いて、2週間攪拌することで、無色透明な低粘度の粒子分散用組成物[金属成分の濃度(チタン酸濃度);2mol/dm]を得た。
尚、上記乳酸の代わりに、シュウ酸、クエン酸又は酒石酸(いずれもナカライテスク株式会社製)を用いた場合にも同様の粒子分散用組成物を得ることができた。また、上記チタンテトライソプロポキシドの代わりに、チタンテトラブトキシド(和光純薬工業株式会社製)又はアルミニウムトリイソプロポキシド(ナカライテスク株式会社製)を用いた場合にも実施例2と同様の粒子分散用組成物を得ることができた。更に、上記モル比(チタンテトライソプロポキシド:乳酸)を、1:0.8、1:0.9のそれぞれに変更した場合にも実施例1と同様の粒子分散用組成物を得ることができた。また、これらの各粒子分散用組成物を長期間(約1年)保存しても、均一溶液の状態を維持し、ゲル化や沈殿は見られなかった。
【0042】
[2]粒子分散用組成物の物性
(染料における沈殿物の形成試験)
上記[1]で得られた実施例1の粒子分散用組成物を下記に示すNo.1~5の各染料に、金属成分と染料の濃度が0.001mol/dmとなるように添加し、染料における沈殿物の形成試験を行った。その結果を図1に示す。
No.1;陰イオン染料;メチルオレンジ(純正化学株式会社製)
No.2;陰イオン染料;フルオレセイン(ナカライテスク株式会社製)
No.3;陽イオン染料;トルイジンブルー(Chroma Gesellshaft Schmid Gmbh&Co製)
No.4;陽イオン染料;バインドシェドラーグリーン(Chroma Gesellshaft Schmid Gmbh&Co製)
No.5;陽イオン染料;カプリブルー(東京化成工業株式会社製)
【0043】
図1によれば、粒子分散用組成物が添加された各染料のうち、No.1及び2の陰イオン染料では沈殿は形成されていなかった。一方、No.3~5の全ての陽イオン染料では、沈殿の形成が確認できた。
このことから、本実施例1の粒子分散用組成物では、金属酸イオン(チタン酸イオン)が有機酸(乳酸)と錯形成し、負の電荷を有する安定な金属錯体(チタン錯体)が水溶液中に存在していることが確認できた。更に、ある程度の嵩高さがなければ沈殿は形成されないため、この金属錯体は嵩高いものであり、チタンを含むクラスターユニットのような形で存在していると考えられる。
【0044】
[3]粒子分散用組成物の分散効果
上記[1]で得られた実施例1の粒子分散用組成物を用いて、粒子が分散されている組成物(粒子含有組成物)を製造し、粒子分散用組成物の分散性能を下記の各測定及び試験により評価した。
【0045】
(3-1)ゼータ電位(ζ電位)の測定及びその結果
(1)酸化アルミニウム懸濁液の調製(粒子含有組成物の製造)
実施例1の粒子分散用組成物(チタン酸濃度;2mol/dm)と、水と、酸化アルミニウム粉末(平均粒径;0.3μm、純度;99.99%以上、住友化学工業株式会社製、商品名「AKP-30」)と、pH調整剤とを、室温(約25℃)にて、24時間ボールミリングすることにより混合し、チタン酸濃度が1.0×10-3、2.5×10-3、5.0×10-3、1.0×10-2、及び1.0×10-1mol/dmであり、且つpH約2~12の各酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)を調製した。また、比較として、粒子分散用組成物を混合していない酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)も調製した。
尚、上記pH調整剤としては、硝酸(HNO)、アンモニア(NH)、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)を所定のpHとなるように適宜使用した。また、pHを調整する際には、pH電極として、Orion Research社製、型名「Orion 81-72 ROSS」を用いた。
【0046】
(2)ゼータ電位の測定
上記(1)で得られた各酸化アルミニウム懸濁液のゼータ電位を、超音波方式ζ電位測定装置(Dispersion Technology社製、型式「DT1200」)を用いて測定した。その結果を図2及び3に示す。ここで、図2は、各種チタン酸濃度の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、pHとゼータ電位との関係を示すものである。また、図3は、各種pHの2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とゼータ電位との関係を示すものである。
【0047】
(3)ゼータ電位測定の結果
図2及び図3によれば、チタン酸濃度が0mol/dmの懸濁液における酸化アルミニウムの等電点はpH約9付近にあり、等電点以下のpH領域(酸性側)では、酸化アルミニウム表面は正の電荷を有しており、等電点以上のpH領域(アルカリ側)では、酸化アルミニウムの表面は負の電荷を有していることが確認できる。
更に、これらの図によれば、混合する粒子分散用組成物におけるチタン酸濃度が濃くなるに従って、この酸化アルミニウムの等電点が酸性側のpH領域にシフトしていき、即ち酸化アルミニウムの表面電荷が負の側にシフトしていき、チタン酸濃度が1.0×10-1mol/dmの際には、等電点を有さなくなることが確認できた。
以上のことからも、この粒子分散用組成物には、負の電荷を有する安定な金属錯体(チタン錯体)が存在していることが確認できる。
【0048】
(3-2)沈降試験及びその結果
(1)酸化アルミニウム懸濁液の調製(粒子含有組成物の製造)及び沈降試験
上記(3-1)と同様にして、チタン酸濃度が1.0×10-3、2.5×10-3、5.0×10-3、1.0×10-2、及び1.0×10-1mol/dmであり、且つpH2、4及び10.5の各酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)を調製した。また、比較として、粒子分散用組成物を混合していない酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)も調製した。
【0049】
(2)沈降試験
上記(1)で得られた各酸化アルミニウム懸濁液10mlを、それぞれメスシリンダーに移して密栓し、その後、静置することにより沈降試験を行い、各チタン酸濃度及び懸濁液の各pHにおける酸化アルミニウム粒子の沈降速度及び沈降体積を測定した。その結果を図4~6に示す。ここで、図4~6は、各々pH2、4及び10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度と沈降体積と沈降速度との関係を示すものである。
【0050】
(3)沈降試験の結果
図4によれば、pH2の懸濁液では、チタン酸濃度が0~2.5×10-3mol/dmまでは、沈降速度が0.1mm/s以下、且つ沈降体積が1ml以下であり、良好な分散状態を示していた。一方、チタン酸濃度が5.0×10-3mol/dm及び1.0×10-2mol/dmでは、沈降速度が約0.8~1mm/s、且つ沈降体積が約1.8~2.2mlであり、安定した分散系は得られなかった。これは、チタン酸濃度の増加、即ち負の電荷の増加に伴い、酸化アルミニウムの正の表面電荷が中和されたためであり、この現象は、前記図2及び図3におけるゼータ電位が0付近(pH2における等電点付近)の挙動と対応していることが確認できた。また、チタン酸濃度が1.0×10-1mol/dmと更に濃くなると、酸化アルミニウムの表面電荷が更に負の側にシフトするため、沈降速度が0.1mm/s以下、且つ沈降体積が1ml以下となり、再度、良好な分散状態を示した。
【0051】
図5によれば、チタン酸濃度が5.0×10-3mol/dmの際に、沈降速度が約1.6mm/s、且つ沈降体積が約2.3mlであり、安定した分散系は得られなかった。この範囲以外のチタン酸濃度では、沈降速度が0.1mm/s以下、且つ沈降体積が1ml以下であり、良好な分散状態を示していた。これは、上記pH2の場合と同様に、チタン酸濃度の増加に伴い、酸化アルミニウムの正の表面電荷が中和され、一時的に分散性が低下し、その後、更に表面電荷が負の側にシフトすることで再度安定した分散系が得られていることを示している。この現象においても、前記図2及び図3におけるゼータ電位が0付近(pH4における等電点付近)の挙動と対応していることが確認できた。
【0052】
図6によれば、pH10.5の懸濁液では、粒子分散用組成物が配合されていない場合、酸化アルミニウム粒子の等電点がpH約9付近であるため、沈降速度が約5.9mm/s、且つ沈降体積が約2.5mlであり、安定した分散系は得られなかった。
これに対して、粒子分散用組成物を加えた場合には、表面電荷が更に負の側にシフトされるため、良好な分散状態を示した。この現象は、前記図2及び図3におけるゼータ電位が0付近(pH10.5の等電点付近)の挙動と対応していることが確認できた。
【0053】
上記のことから、チタン酸濃度、即ち粒子分散用組成物の混合量を、分散される粒子の表面電荷に応じて制御することにより、幅広いpH範囲で安定した分散系を得ることができることが分かった。
【0054】
(3-3)流動挙動試験及びその結果
(1)酸化アルミニウム懸濁液の調製(粒子含有組成物の製造)
上記(3-1)と同様にして、チタン酸濃度が1.0×10-3、2.5×10-3、5.0×10-3、1.0×10-2、2.5×10-2、5.0×10-2、7.5×10-2及び1.0×10-1mol/dmであり、且つpH4及び10.5の各酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2及び20体積%)を調製した。また、比較として、粒子分散用組成物を混合していない酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2及び20体積%)も調製した。
【0055】
(2)流動試験
上記(1)で得られた各酸化アルミニウム懸濁液の各剪断応力における見かけ粘度及び剪断速度を、温度25℃で、レオメーター(HAKKE社製、型式「RS150」)により測定し、流動挙動を評価した。その結果を図7~12に示す。ここで、図7~10は、それぞれ、pH4の2体積%酸化アルミニウム懸濁液、pH4の20体積%酸化アルミニウム懸濁液、pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液、及びpH10.5の20体積%酸化アルミニウム懸濁液の各剪断応力における、チタン酸濃度と見かけ粘度との関係を示すものである。また、図11及び図12は、それぞれ、pH4の20体積%酸化アルミニウム懸濁液、及びpH10.5の20体積%酸化アルミニウム懸濁液の各チタン酸濃度における、剪断応力と剪断速度との関係を示すものである。
【0056】
(3)流動試験の結果
図7における、pH4の2体積%の酸化アルミニウム懸濁液ではチタン酸濃度の影響は顕著ではないが、図8に示すように、酸化アルミニウムの割合を20体積%に増やした懸濁液(pH4)では、分散性が一旦低下し、更なるチタン酸濃度の増加により、再度分散性が良好になることが確認できた。この現象は、負の電荷の増加に伴い、酸化アルミニウムの正の表面電荷が中和されたために分散性が低下したためである。このように、分散させる所望の粒子の等電点よりも低いpH領域(酸性側)で分散させるためには、粒子表面の電荷を中和する以上に粒子分散用組成物を混合する必要があるが、この場合、多量の金属成分を多量に含む粒子含有組成物を製造することができ、セラミックス材料、光触媒材料、光学材料及び電子材料分野等において幅広い応用が期待できる。
【0057】
図9によれば、pH10.5の2体積%の酸化アルミニウム懸濁液ではチタン酸濃度の影響は顕著ではないが、図10に示すように、酸化アルミニウムの割合を20体積%に増やした懸濁液(pH10.5)では、チタン酸濃度が高くなるに従って見かけ粘度が低下していき、5.0×10-3mol/dmよりも高い場合には、急激に見かけ粘度が低下して流動性が良くなっており、優れた分散系となっていることが分かる。
上記のことから、この粒子分散用組成物を用いることで、分散させる粒子の割合が高くなっても良好な分散系を得られることが確認できた。
【0058】
また、図11及び図12によれば、図11におけるチタン酸濃度が1.0×10-3、1.0×10-2、7.5×10-2及び1.0×10-1mol/dmの20体積%酸化アルミニウム懸濁液(pH4)、並びに図12におけるチタン酸濃度が5.0×10-3、1.0×10-2及び1.0×10-1mol/dmの20体積%酸化アルミニウム懸濁液(pH10.5)では、直線が原点を通っていることからニュートン流体と考えられ、且つ直線の傾きが大きく、これらの分散系は流動性に優れ、非常に均質なものであることが確認できた。
【0059】
(3-4)吸着量測定及びその結果
(1)酸化アルミニウム懸濁液の調製(粒子含有組成物の製造)
上記(3-1)と同様にして、チタン酸濃度が1.0×10-3、2.5×10-3、5.0×10-3、1.0×10-2、及び1.0×10-1mol/dmであり、且つpH4、9及び10.5の各酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)を調製した。また、比較として、粒子分散用組成物を混合していない酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)も調製した。
【0060】
(2)吸着量測定
上記(1)で得られた各酸化アルミニウム懸濁液を遠心分離(最大遠心力;15000G)し、得られた上澄み液を用いて、ICP-AES(Leeman Labs製、型式「JICP-PS-1000UV・AT」)により、各酸化アルミニウム懸濁液のチタン酸濃度における酸化アルミニウム粒子へのチタン吸着量を測定した。その結果を図13~15に示す。尚、図13~15は、それぞれ、pH4、pH9及びpH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタン酸濃度とチタン吸着量との関係を示す。
【0061】
(3)吸着量測定の結果
図13~15によれば、チタンの吸着量は、pH4の場合に2.0×10-5mol/m、pH9の場合に1.5×10-5mol/m、及びpH10.5の場合に6.0×10-6mol/mであり、この吸着量はアルカリ側に変化するに従って減少していた。これは、図2のチタン酸濃度が0mol/dmの際の表面電荷を考慮すると、等電点(pH9付近)以下の領域(酸性側)では酸化アルミニウム粒子の表面電荷は正の側にシフトしているため、酸性側ではアルカリ側よりも吸着量が増加していると考えられる。このことからも、前記実施例1の粒子分散用組成物では、負の電荷を有する金属錯体が存在していると考えられる。
【0062】
[4]粒子分散用組成物の分散効果(金属アルコキシドと有機酸のモル比による影響)
調製の際におけるチタンテトライソプロポキシドと乳酸のモル比を下記の〔1〕~〔5〕のように変えたこと以外は、上記[1]と同様にして、各粒子分散用組成物を調製し、この組成物の分散性能を下記の試験により評価した。
【0063】
モル比(チタンテトライソプロポキシド:乳酸)
〔1〕1:1、〔2〕1:2、〔3〕1:3、〔4〕1:4、〔5〕1:0.4
尚、上記〔5〕のモル比1:0.4の組成物は、上記[1]における2週間の攪拌では加水分解物が完全に溶解せず、粒子分散用組成物を調製することができなかった。そのため、下記の評価は上記〔1〕~〔4〕のモル比の粒子分散用組成物を用いて行った。
【0064】
(1)酸化アルミニウム懸濁液の調製(粒子含有組成物の製造)
上記各モル比の粒子分散用組成物(チタン酸濃度;2mol/dm)と、水と、酸化アルミニウム粉末(平均粒径;0.3μm、純度;99.99%以上、住友化学工業株式会社製、商品名「AKP-30」)と、pH調整剤とを、室温(約25℃)にて、24時間ボールミリングすることにより混合し、チタン酸濃度が1.0×10-2mol/dmであり、且つpH2及び10.5の各酸化アルミニウム懸濁液(酸化アルミニウムの割合;2体積%)を調製した。尚、各懸濁液の調製時においては、上記酸化アルミニウム粒子は沈降することなく、十分に分散していた。
尚、上記pH調整剤としては、前記と同様のものを適宜使用した。また、pHを調整する際には、pH電極として、前記と同様のものを用いた。
【0065】
(2)沈降試験
上記(1)で得られた各酸化アルミニウム懸濁液10mlを、それぞれメスシリンダーに移して密栓し、その後、静置することにより沈降試験を行い、各pHでの各モル比における酸化アルミニウム粒子の沈降時間を測定した。その結果を図16~19に示す。ここで、図16は、pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化(沈降時間:0~17500分)を示すものである。図17は、pH10.5の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化(沈降時間:0~2900分)を示すものである。また、図18は、pH2の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化(沈降時間:0~16000分)を示すものである。図19は、pH2の2体積%酸化アルミニウム懸濁液における、チタンアルコキシドと乳酸の比率による分散性の変化(沈降時間:0~2900分)を示すものである。尚、図16~19における「TIP」はチタンテトライソプロポキシドを示しており、且つ「Lac」は乳酸を示している。
【0066】
(3)結果
図16及び17によれば、pH10.5である場合において、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:2及び1:1の各懸濁液では、17500分が経過するまで酸化アルミニウム粒子の沈降はほんの僅かであり、沈降界面の高さはほぼ一定であったことから、長期に渡って優れた分散性を有することが分かった。また、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:3の懸濁液では、7500分が経過するまでは粒子の沈降が僅かであり、その後、徐々に粒子が沈降し始めたが、長期にわたって優れた分散性を有することが分かった。更に、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:4の懸濁液では、短い時間で粒子が沈降してしまったが、調製時から短期間は十分な分散性を有することが分かった。
図18及び19によれば、pH2である場合において、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:1の懸濁液では、16000分が経過するまで酸化アルミニウム粒子の沈降はほんの僅かであり、沈降界面の高さはほぼ一定であったことから、長期に渡って優れた分散性を有することが分かった。また、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:2の懸濁液では、2500分が経過するまでは粒子の沈降が僅かであり、その後、徐々に粒子が沈降し始めたが、長期にわたって優れた分散性を有することが分かった。更に、チタンアルコキシドと乳酸の比率が1:3及び1:4の各懸濁液では、短い時間で粒子が沈降してしまったが、調製時から短期間は十分な分散性を有することが分かった。
尚、上記各懸濁液における沈降物は、攪拌することにより、直ぐに調製時と同様に十分に粒子が分散した状態となった。
上記のことから、チタンアルコキシドに対する乳酸の比率が少ないほど、分散性を向上させることができ且つより長期に渡ってその効果を持続できることが分かった。
【0067】
[5]実施例の効果
上記のことから、本発明の粒子分散用組成物には、金属イオンが有機酸と錯形成した、嵩高く且つ負の電荷を有する安定な金属錯体が存在していると考えられる。この粒子分散用組成物によれば、分散させる各種粒子の等電点を考慮し、粒子分散用組成物の混合量を制御することによって均質で安定した分散系(粒子含有組成物)を容易に製造することが可能である。
この粒子分散用組成物が示す上記の現象は、陰イオン性の高分子電解質を分散剤として添加したときのpH挙動と極めて類似しており、高い陽電荷をもつ金属イオン(実施例ではチタンイオン)の存在下で、粒子が凝集せずに分散することは驚くべきことである。また、分散剤としての効果も従来報告されている高分子電解質と同等若しくはそれ以上であり、分散剤として機能する懸濁液のpH範囲が2~11と極めて幅広く、且つ混合可能な量も幅広い。更には、ハロゲン、硝酸、硫酸等の他の成分を含まないので、セラミックスの製造のように製造過程において焼成プロセスがあるような場合には、環境へ悪影響がなく、且つ水溶液であることから火災等の危険もなく、安全性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この粒子分散用組成物は、セラミックス材料、光触媒材料(廃液処理、脱臭、脱色、除菌、感光剤など)、光学材料、誘電体材料等のエレクトロニクス材料(チタン酸バリウム、カリウムチタニルリン酸など)等の分野に幅広く利用可能である。特に、光触媒材料、色素増感型太陽電池等の太陽電池材料分野において好適に利用できる。
また、粒子の分散剤として利用できると共に、均一に金属元素を主成分にドープするための方法としても有効である。この粒子分散用組成物は、水溶液であるため、水溶性の他の化合物との組み合わせることも可能であり、材料の合成範囲を向上させることができる。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図1】
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