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明細書 :食事支援システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2008-125696 (P2008-125696A)
公開日 平成20年6月5日(2008.6.5)
発明の名称または考案の名称 食事支援システム
国際特許分類 A61G  12/00        (2006.01)
FI A61G 12/00 D
請求項の数または発明の数 8
出願形態 OL
全頁数 13
出願番号 特願2006-312523 (P2006-312523)
出願日 平成18年11月20日(2006.11.20)
発明者または考案者 【氏名】田中 幹也
【氏名】明石 卓也
出願人 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
審査請求 未請求
テーマコード 4C341
Fターム 4C341LL01
要約 【課題】 上肢の運動機能を完全に失った障害者でも操作可能で実用的な食事支援システムを提供する。
【解決手段】 利用者1に食事を提供する食事支援ロボット2と、利用者の状態及び食事支援ロボットの状態を監視する1又は複数個の撮像手段3と、利用者に動作メニュー及びカーソルを含む情報を提供する表示手段4と、撮像手段からの情報に基づいて前記食事支援ロボットを制御するとともに表示手段に情報を表示させる制御手段とを有する食事支援システムであって、食事支援ロボットは、食物を載せる食物皿5、利用者に食物を提供する食物提供手段6、食物皿の食物を前記食物提供手段に押出す食物押出手段7、食物押出手段の押出し方向と直交方向に食物皿を移動させる食物皿移動手段8、とを有し、食事支援ロボットの食物提供手段、食物押出手段及び食物皿移動手段はアクチュエータにより駆動されるとともに、各手段は直交座標方式により制御される。
【選択図】 図1
特許請求の範囲 【請求項1】
利用者に食事を提供する食事支援ロボットと、
前記利用者の状態、及び、前記食事支援ロボットの状態を監視する、1又は複数個の撮像手段と、
前記利用者に動作メニュー及びカーソルを含む情報を提供する表示手段と、
前記撮像手段からの情報に基づいて前記食事支援ロボットを制御するとともに、前記表示手段に情報を表示させる制御手段と、を有する食事支援システムであって、
前記食事支援ロボットは、食物を載せる食物皿、利用者に食物を提供する食物提供手段、前記食物皿の食物を前記食物提供手段に押出す食物押出手段、前記食物押出手段の押出し方向と直交方向に前記食物皿を移動させる食物皿移動手段、とを有し、
前記食事支援ロボットの食物提供手段、食物押出手段及び食物皿移動手段はアクチュエータにより駆動されるとともに、前記各手段は直交座標方式により制御されることを特徴とする食事支援システム。
【請求項2】
前記食物皿は、それぞれ異なる食物を載せる複数の区画を有し、前記複数の区画間の壁は前記食物押出手段の押出し方向と平行であり、前記複数の区画の前記食物供給手段に食物を押出す部分は開放状態になっていることを特徴とする請求項1記載の食事支援システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮像手段からの前記食事支援ロボットの状態情報に基づいて知的ビジュアル制御を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の食事支援システム。
【請求項4】
前記アクチュエータは、超音波モータであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の食事支援システム。
【請求項5】
前記超音波モータは、知的可変IMC-PID制御により制御されることを特徴とする請求項4記載の食事支援システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮像手段により撮像された利用者の眼球状態により操作可能なアイ・インターフェイス機能を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の食事支援システム。
【請求項7】
前記アイ・インターフェイス機能は、眼球位置及び視線方向の検出に遺伝的アルゴリズムを用いることを特徴とする請求項6記載の食事支援システム。
【請求項8】
前記利用者の音声を入力する音声入力手段を更に有し、
前記制御手段は、前記音声入力手段により入力された音声により操作可能なボイス・インターフェイス機能を有することを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の食事支援システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、上肢障害者や高齢者等の食事を支援する、食事支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、上肢障害者は全国で約57.7万人も存在しており、高齢者の増加に伴い加齢による上肢機能障害者も急増し今後大きな社会問題化することが予想されている。上肢障害者は独力で日常生活を送ることが困難で介護者の支援を必要としているが、特に食事支援は介護作業の中でも長時間を要し、障害者の身体状況に個別にきめ細かく対応する必要があり介護者に大変な負担がかかっていた。一方、障害者にとっても食事支援を受けることは自尊心が傷つき介護者に遠慮してマイペースで食事が出来ず精神的にも大きな負担になっていた。食事は人生を豊かにする最も大切なイベントであるため、上肢障害者が独力で食事が可能となる食事支援ロボットが開発できれば障害者のQOLの向上に大いに寄与できる。このため国内外で食事支援ロボットの開発が行われてきた。障害者の指や腕の動きをタッチセンサーで検知して操作もの、マニピュレータで上肢障害者の飲食動作を支援するもの、障害者がジョイスティックでロボットを操作し飲食するもの、音声認識を応用した食事支援ロボットハンドなどが開発されている。しかし、いずれの食事支援ロボットも多関節方式で、アクチュエータはDCモータである。多関節方式ではロボット駆動時の振動は避けられず運搬中に食物が落下し易く、口元への食物の正確な運搬は困難である。DCモータの使用は電磁両立性(EMC)に問題があり、ペースメーカー装着者には危険であり、家電機器への電波妨害の恐れもある。また、タッチセンサーやジョイスティック操作では上肢の運動機能を完全に失った障害者では操作が不可能であり、残存機能があってもロボット操作にはかなりの訓練が必要である。
【0003】
従来技術として、特許文献1~3が挙げられる。
特許文献1には、食事支援ロボットが記載されている。特許文献1では多関節方式のロボットを採用している。また、操作にはタッチセンサーを利用しており、駆動手段にはステッピングモータ等を利用している。
特許文献2には、運動機能補助装置が記載されており、眼球運動により駆動手段の駆動制御を行うことが記載されている。眼球運動を電位変化によって検出しているので、利用者の眼球周辺に電極を設ける必要がある。
特許文献3は、本発明者らによる特許で、眼球運動により利用者が意思伝達を行うシステムが記載されている。

【特許文献1】特開2004-8327号公報
【特許文献2】特開2004-254876号公報
【特許文献3】特許第3673834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の問題を解決し上肢の運動機能を完全に失った障害者でも操作可能で実用的な食事支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
利用者に食事を提供する食事支援ロボットと、前記利用者の状態及び前記食事支援ロボットの状態を監視する1又は複数個の撮像手段と、前記利用者に動作メニュー及びカーソルを含む情報を提供する表示手段と、前記撮像手段からの情報に基づいて前記食事支援ロボットを制御するとともに前記表示手段に情報を表示させる制御手段と、を有する食事支援システムであって、前記食事支援ロボットは、食物を載せる食物皿、利用者に食物を提供する食物提供手段、前記食物皿の食物を前記食物提供手段に押出す食物押出手段、前記食物押出手段の押出し方向と直交方向に前記食物皿を移動させる食物皿移動手段、とを有し、前記食事支援ロボットの食物提供手段、食物押出手段及び食物皿移動手段はアクチュエータにより駆動されるとともに、前記各手段は直交座標方式により制御されることを特徴とする食事支援システム。
撮像手段としてはCCDカメラを用いることができる。撮像手段の数は2個が好ましいがこれに限定されない。制御手段には、PC等が利用できる。
前記アクチュエータとしては、超音波モータ、DCモータ、空気圧モータ、空気圧シリンダー等を用いることができる。
【0006】
また、以下の実施態様を有する。
前記食物皿は、それぞれ異なる食物を載せる複数の区画を有し、前記複数の区画間の壁は前記食物押出手段の押出し方向と平行であり、前記複数の区画の前記食物供給手段に食物を押出す部分は開放状態になっている。
前記制御手段は、前記撮像手段からの前記食事支援ロボットの状態情報に基づいて知的ビジュアル制御を行う。
前記アクチュエータは、超音波モータである。
前記超音波モータは、知的可変IMC-PID制御により制御される。
前記制御手段は、前記撮像手段により撮像された利用者の眼球状態により操作可能なアイ・インターフェイス機能を有する。
前記アイ・インターフェイス機能は、眼球位置及び視線方向の検出に遺伝的アルゴリズムを用いる。
前記利用者の音声を入力する音声入力手段を更に有し、前記制御手段は、前記音声入力手段により入力された音声により操作可能なボイス・インターフェイス機能を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成により、上肢運動機能を完全に失った上肢障害者でも独力で操作可能な食事支援システムを提供できる。撮像手段からの画像に基づいて食事支援ロボットの動作状態を検出し、検出された情報に基づいて食事支援ロボットの制御をしているので簡単な構成で正確な制御ができる。食事支援ロボットは直交座標方式のロボット構造を採用しているので軌道計算が簡単であり、多関節方式のロボットに比べて動作が単純なので撮像手段の死角が少なくなる。本発明は撮像手段により多くの情報を得るシステムになっているので、撮像手段の死角が少なくなる直交座標方式のロボット構造が有利である。さらに、アイ・インターフェイス機能を採用することで、撮像手段からの画像に基づいて利用者の眼球機能(瞬き、視線等)を検出するので、利用者に特別なセンサを取り付ける必要が無くなる。また、食事支援ロボットのアクチュエータに超音波モータを用いることで、振動・騒音が少なくなるとともに、小型軽量でEMCにも優れた特性を持つようになり、人間に対する安全性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本食事支援システムの概略図、図2は上面図である。本食事支援システムは、利用者1に食事を提供する食事支援ロボット2と、利用者1の状態・食事支援ロボット2の状態及び利用者1の眼球状態を監視する撮像手段3(CCDカメラ)と、利用者1に動作メニュー及びカーソルを含む情報を提供する表示手段4と、撮像手段3からの情報に基づいて食事支援ロボット2を制御するとともに表示手段4に情報を表示させる図示されていない制御手段とからなる。食事支援ロボット2は、食物を載せる食物皿5と、利用者1に食物を提供する食物提供手段6(スプーン)と、食物皿5の食物を食物提供手段6に押出す食物押出手段7と、食物押出手段7の押出し方向と直交方向に食物皿を移動させる食物皿移動手段8とからなる。食事支援ロボット2の食物提供手段6、食物押出手段7及び食物皿移動手段8は超音波モータにより駆動されるとともに、各手段は直交座標方式により制御される。
【0009】
図3は、食事支援ロボット2の詳細図である。食物皿5は、それぞれ異なる食物を載せる複数の区画を有し、複数の区画間の壁は食物押出手段7の押出し方向と平行であり、複数の区画の食物供給手段6に食物を押出す部分は開放状態になっている。食物提供手段6と食物押出手段7とは、利用者に向かう方向に前後に移動可能である。食物皿5は、食物皿移動手段8により、食物押出手段7の移動方向と直交する方向に左右に移動可能である。このように、各移動が直交方向となる直交座標方式の制御を用いることにより、構成が簡単になるとともに撮像手段3の死角が少なくなる。また、構造が簡単であるため故障も少なくメンテナンスも容易である。これらの移動は、超音波モータ9により駆動される。従来のDCモータに対して超音波モータは摩擦力駆動であるため低速時のトルクが強い、駆動音がない、停止時の保持力が大きい、小型軽量、EMCに極めて優れているなどの特徴がある。この特徴を活かして超音波モータをロボットのアクチュエータに採用することにより振動の少ない、静粛で、EMCに優れ、人間にも安全なアクチュエータを実現できる。超音波モータ9の制御はどのような制御方法でも良いが、好ましくは知的可変IMC-PID制御が良い(「知的可変IMC-PID制御」について、必要であれば特願2005-312373号及びその関連出願参照)。
【0010】
図4及び図5は、表示手段4による動作メニューの表示の一例である。図4は食事支援ロボット2の動作を指示する画面、図5は食物皿5上の食物を選択する画面である。これらの画面は必要に応じて切り替えることができる。画面にはカーソル10が表示されている。カーソル10は、撮像手段3により得た利用者の眼球状態(瞬き、視線等)により制御される(アイ・インターフェイス機能)。眼球状態の検出には様々なアルゴリズムを利用できる(例えば特許文献3)。好ましくは、前記アルゴリズムとして遺伝的アルゴリズムを用いるのが良い(特願2006-274040号)。眼球の位置・動きによりカーソル10を移動させ、瞬きや凝視などにより“クリック”する。画面上のメニューが選択されると、食事支援ロボット2がそれに応じた動作を行う。図4のようなメニューであれば食事支援ロボット2は指示された動作を行い、図5のようなメニューであれば食事支援ロボット2は選択された食物を提供するように動作する。メニューの選択は上記のカーソルに代わり、メニュー項目を一定時間注視することにより選択することも可能である。
【0011】
図6は、知的ビジュアル制御の説明図である。一般に、ロボットの制御にはアーム等の位置情報の検出が必要であり、通常は様々なセンサが用いられている。本食事支援システムにおいては、利用者1の状態を監視しながら食事支援ロボットの制御を行う必要があるため、利用者1の口の位置、食物提供手段6の位置、食物押出手段7の位置などの検出は撮像手段3の画像により行う。撮像手段3を用いて各部分の位置検出を行うため、食事支援ロボット2の構成を簡略化できるとともに、利用者1の状態を監視しながら制御できるので安全性が向上する。また、利用者1が動いても正確に制御することができる。一般に撮像手段からの画像に基づいて位置検出を行うには複雑な演算が必要であるが、本システムの食事支援ロボット2は直交座標方式の制御を採用しているために動作が比較的単純であり、各部の位置検出の演算も簡単で済む。また、撮像手段3からの画像に死角ができると位置検出が困難になるが、本システムの食事支援ロボット2は直交座標方式を採用しているので多関節方式に比べて撮像手段の死角ができにくい。
【0012】
本食事支援システムの動作例について説明する。事前に食物皿5の各区画に食物を載せておく。表示手段4には動作メニューとカーソル10が表示されていて、カーソル10は撮像手段3で得た利用者1の眼球状態により移動・クリックの制御がされる。またはカーソルの使用に代わりメニュー項目を一定時間注視することにより選択することも可能である。利用者1は、表示手段4の画面を見ながら食事支援ロボット2の動作や食物皿5上の食物を選択する。動作メニューにより動作や食物が選択されると、食事支援ロボット2は必要な動作を行う。食事支援ロボット2の動作は撮像手段3により監視され、前述の知的ビジュアル制御により制御される。例えば動作メニューにより食物が選択されると、該食物が食物押出手段7のところに来るように食物皿5が左右に移動し、食物押出手段7が利用者1側に移動して該食物を食物提供手段6に載せ、食物提供手段6が利用者1の方に移動することにより利用者1は該食物を口にすることができる。
【0013】
上記実施形態では利用者による動作メニューの選択にアイ・インターフェイス機能を用いているが、アイ・インターフェイス機能に代えてボイス・インターフェイス機能を用いることもできる。図7はボイス・インターフェイス機能の説明図である。利用者1に音声入力手段11(マイク)を取り付けて、音声により動作メニューの選択が行えるようになっている。制御手段は音声入力手段11により入力された音声を音声認識し、認識された音声に基づいて動作メニューの選択を行う。
【0014】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本食事支援システムの概略図
【図2】本食事支援システムの上面図
【図3】食事支援ロボットの詳細図
【図4】動作メニューの表示例1
【図5】動作メニューの表示例2
【図6】知的ビジュアル制御の説明図
【図7】ボイス・インターフェイス機能の説明図
【符号の説明】
【0016】
1 利用者(上肢障害者)
2 食事支援ロボット
3 撮像手段(CCDカメラ)
4 表示手段
5 食物皿
6 食物提供手段(スプーン)
7 食物押出手段
8 食物皿移動手段
9 超音波モータ
10 カーソル
11 音声入力手段(マイク)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6