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明細書 :結晶成長方法及び結晶成長装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4876242号 (P4876242)
公開番号 特開2007-165805 (P2007-165805A)
登録日 平成23年12月9日(2011.12.9)
発行日 平成24年2月15日(2012.2.15)
公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
発明の名称または考案の名称 結晶成長方法及び結晶成長装置
国際特許分類 H01L  21/365       (2006.01)
H01L  21/205       (2006.01)
FI H01L 21/365
H01L 21/205
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2005-364018 (P2005-364018)
出願日 平成17年12月16日(2005.12.16)
審査請求日 平成20年10月21日(2008.10.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】中村 篤志
【氏名】天明 二郎
【氏名】青木 徹
【氏名】田中 昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100108914、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
審査官 【審査官】大塚 徹
参考文献・文献 特開2002-329887(JP,A)
特開2002-075866(JP,A)
特開2004-119421(JP,A)
特開2002-076026(JP,A)
特開2003-264201(JP,A)
国際公開第2005/048337(WO,A1)
特開昭63-303070(JP,A)
特開平07-022343(JP,A)
特開平10-158099(JP,A)
国際公開第00/016411(WO,A1)
特開2003-068656(JP,A)
調査した分野 H01L 21/365
H01L 21/205
H01L 21/31
特許請求の範囲 【請求項1】
1Pa以上の圧力に減圧された反応容器中で基板を成長温度まで加熱し、該成長温度に維持するステップと、
前記減圧された反応容器中で、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを前記基板の表面に供給するステップと、
前記減圧された反応容器中で、プラズマ発生位置から前記基板の表面までの距離が、イオンの寿命距離がラジカルの寿命距離よりも短くなるように設定して、前記II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、前記基板の表面に供給するステップ
とを含み、前記圧力に減圧された気相中の反応を利用して、前記基板の表面にp型ZnO系化合物半導体薄膜を成長することを特徴とする結晶成長方法。
【請求項2】
前記窒素原子ラジカル及び前記酸素原子ラジカルが、窒素ガスと酸素ガスの混合ガスをプラズマ化して生成され、前記窒素原子ラジカル及び前記酸素原子ラジカルの生成部と前記基板の表面との間の距離が、前記イオンの寿命距離よりも長く、前記ラジカルの寿命距離よりも短く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の結晶成長方法。
【請求項3】
基板を内部に収納し、該内部を減圧可能な反応容器と、
前記基板を成長温度まで加熱し、該成長温度に維持する加熱手段と、
1Pa以上の圧力に減圧された前記反応容器中において、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを前記基板の表面に供給する原料ガス導入ラインと、
減圧された前記反応容器中において、プラズマ発生位置から前記基板の表面までの距離が、イオンの寿命距離がラジカルの寿命距離よりも短くなるように設定して、前記基板の表面に前記イオンが到達しないようにして、前記II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、前記基板の表面に供給する中性ラジカル供給手段
とを備え、前記圧力に減圧された気相中の反応を利用して、前記基板の表面にp型ZnO系化合物半導体薄膜を成長することを特徴とする結晶成長装置。
【請求項4】
前記中性ラジカル供給手段が、
前記反応容器の外部から前記反応容器の内部まで延在し、先端部が前記基板の表面に向かうプラズマガスラインと、
該プラズマガスラインの一部に備えられ、前記窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを生成するプラズマジェネレータ
とを備えることを特徴とする請求項3に記載の結晶成長装置。
【請求項5】
前記プラズマガスラインに窒素ガスと酸素ガスの混合ガスが導入され、前記プラズマジェネレータにより前記混合ガスをプラズマ化して、前記窒素原子ラジカル及び前記酸素原子ラジカルが生成されることを特徴とする請求項4に記載の結晶成長装置。
【請求項6】
前記プラズマジェネレータと前記基板の表面との間の距離が、前記イオンの寿命距離よりも長く、前記ラジカルの寿命距離よりも短く設定されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の結晶成長装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はp型のMgxZn1-xO等のp型酸化亜鉛(ZnO)系化合物半導体材料の結晶成長方法及びその結晶成長方法を実現する結晶成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物半導体の結晶成長においては、化学量論的組成(ストイキオメトリ)の制御が重要であるが、特にII-VI族間化合物半導体では、化学量論的組成の制御が難しく、例えばZnO系化合物半導体材料の場合、長い間、p型のZnOの実現はできないと言われていた時期があったが、最近になって、p型のZnOの結晶成長の報告例が出始めるようになった。しかしながら、ZnO系化合物半導体材料の結晶成長は、工業的な意味では未完成の段階にあり、特にp型のZnOの抵抗率や不純物密度(キャリア密度)の広いダイナミックレンジにおける制御は困難である。
【0003】
ZnO系化合物半導体材料をp型とすることが困難な理由の1つはその酸素欠損にある。したがって、ZnOの酸素欠損を防止すれば、p型を実現することが可能となる。しかしながら、単に酸素(O2)ガスを含有する雰囲気下でZnO薄膜を成膜しただけでは、ZnOの酸素欠損を十分に防止することができず、n型となってしまう。例えば、ZnOの酸素欠損を防止するため及びp型アクセプタを導入するために、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを励起することにより得られる励起ガス雰囲気下でZnO薄膜を成膜することが検討されているが、実際、窒素を導入する方法で得られるZnOはn型であり、p型は実現されていない。
【0004】
そこで、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いる代わりに、酸化窒素(N2O)ガスを用い、p型のZnOを実現する方法が提案されている(特許文献1参照。)。特許文献1の発明者らのグループが、その後報告した論文によれば、窒素(N2)ガスの流量に対する酸素(O2)ガスの流量比(N2/O2)が1の場合はp型のZnOは得られなかったと報告されている(非特許文献1参照。)。

【特許文献1】特開2001-68707号公報
【非特許文献1】グオ(Xin-Li Guo)ら、 オプチカル・マテリアルズ(Optical Materials)第19巻(2002年)p.229-233
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を鑑み、本発明は、抵抗率の制御が広いダイナミックレンジで可能なp型のZnO系化合物半導体材料の結晶成長方法及び結晶成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、(イ)減圧された反応容器中で基板を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持するステップと、(ロ)減圧された反応容器中で、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを基板の表面に供給するステップと、(ハ)減圧された反応容器中で、基板の表面にイオンが到達しないようにして、II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、基板の表面に供給するステップとを含み、基板の表面にp型ZnO系化合物半導体薄膜を成長する結晶成長方法であることを要旨とする。
【0007】
本発明の第2の態様は、(イ)基板を内部に収納して、この内部を減圧可能な反応容器と、(ロ)基板を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持する加熱手段と、(ハ)減圧された反応容器中において、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを基板の表面に供給する原料ガス導入ラインと、(ニ)減圧された反応容器中において、基板の表面にイオンが到達しないようにして、II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、基板の表面に供給する中性ラジカル供給手段とを備え、基板の表面にp型ZnO系化合物半導体薄膜を成長する結晶成長装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、抵抗率の制御が広いダイナミックレンジで可能なp型のZnO系化合物半導体材料の結晶成長方法及び結晶成長装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、以下に示す第1及び第2の実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1に示す様に、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長装置は、基板41を内部に収納して、この内部を減圧可能な反応容器11と、基板41を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持する加熱手段21と、減圧された反応容器11中において、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを基板41の表面に、成長圧力で供給する原料ガス導入ライン13と、減圧された反応容器11中において、基板41の表面にイオンが到達しないようにして、II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、基板41の表面に、成長圧力で供給する中性ラジカル供給手段(12,15)とを備えるリモートプラズマ励起MOCVD装置である。反応容器11は、横型の石英ガラス製反応菅11であり、この反応菅11にフランジを介してL型の真空排気用ステンレス配管22が接続され、真空排気用ステンレス配管22を介して反応菅11の内部が真空排気される
図1~図3に示す様に、反応菅11の内部には、プラズマガスライン12と原料ガス導入ライン13が設けられている。図1に示すように、プラズマガスライン12には、配管81、バルブ69、配管(タンク回路)83を介して、窒素(N2)ガスボンベ51、酸素(O2)ガスボンベ52、水素(H2)ガスボンベ54が接続されている。窒素(N2)ガスボンベ51、酸素(O2)ガスボンベ52、水素(H2)ガスボンベ54は、それぞれバルブ55と65との間のマスフローコントローラ61、バルブ56と66との間のマスフローコントローラ62、及びバルブ58と68との間のマスフローコントローラ64によって流量が制御されてタンク回路83に接続される。マスフローコントローラ61,62,64によりガスの混合比を制御できる。尚、窒素(N2)ガスボンベ51、酸素(O2)ガスボンベ52、水素(H2)ガスボンベ54等は、例示であり、窒素(N2)ガス、酸素(O2)ガス及び水素(H2)ガス等は集中配管から取り出しても良いことは勿論である。この場合、窒素(N2)ガスは液化窒素から蒸発された窒素(N2)ガスを使用する等、周知の種々のガス供給の方法が等価的に採用可能である。
【0011】
中性ラジカル供給手段(12,15)は、図1~図3に示すように、反応容器11の外部から反応容器11の内部まで延在し、先端部が基板41の表面に向かうプラズマガスライン12と、このプラズマガスライン12の一部に備えられ、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを生成するプラズマジェネレータ15とを備える。即ち、プラズマガスライン12は、反応菅11の内部から、反応菅11の左側に導出され、この導出部にプラズマジェネレータ15が配置され、このプラズマジェネレータ15で酸素及び窒素の混合ガスをプラズマ化する。プラズマジェネレータ15により生成されたイオン、電子、ラジカルの内、比較的寿命が短いイオンを消滅させ、比較的寿命が長い中性原子ラジカル(N原子ラジカル(N*)、O原子ラジカル(O*))を反応菅11へ輸送させ、リモートプラズマ励起MOCVDによる結晶成長を行う。リモートプラズマ励起MOCVDでは、必要に応じて、プラズマガスライン12に水素を導入し、プラズマジェネレータ15で酸素、水素、窒素の混合ガスをプラズマ化し、発生するイオン、電子、ラジカルの内、比較的寿命が短いイオンが消滅し、比較的寿命が長い中性原子ラジカル(N原子ラジカル(N*)、O原子ラジカル(O*)、H原子ラジカル(H*))を反応菅11へ輸送し、原料の分解反応や基板表面での表面反応に使用する。
【0012】
プラズマジェネレータ15には、例えば、プラズマガスライン12の太さをφ35mm程度とし、ホローカソード(Hollow-cathode)-ジェット(jet)型タイプのプラズマジェネレータを採用することが可能である。但し、プラズマジェネレータ15としてはホローカソード方式以外に誘導結合プラズマ(ICP)方式、マイクロ波誘導プラズマ(MIP)方式、レーザ誘起プラズマ(LIP)方式や平行平板方式でも良いので、プラズマジェネレータ15はコイル又は電極等で構成できる。図1に示すように、プラズマジェネレータ15は、反応菅11の左側導出部に沿って左右に移動可能で、サセプタ42の位置から見て任意の所望の位置に設定される。したがって、成長中にプラズマ発生位置を移動することも可能である。プラズマジェネレータ15と基板41の表面までの距離は、プラズマジェネレータ15で生成されたイオンが消滅するイオンの寿命距離よりも長く、プラズマジェネレータ15で生成されたラジカルが消滅するラジカルの寿命距離よりも短く設定すれば良い。したがって、プラズマジェネレータ15は、例えば、サファイア基板41からおよそ5cm~60cmの間の距離、例えば20cmのところに配置すれば、イオンの成分よりも比較的寿命が長い中性原子ラジカルの成分が、サファイア基板41の表面で支配的になるので好ましい。
【0013】
図1~図3に示すように、プラズマガスライン12は原料ガス導入ライン13の下流側で合流し、ラジカルと原料が混合したのち、サファイア基板41の表面に到達する。図2及び図3に示すように、サファイア基板41は、SiCコートのカーボンサセプタ42の表面に設けられた凹部に嵌め込まれる。そして、プラズマジェネレータ15には、例えば、13.56MHzの高周波を10W以上のパワーで印加してプラズマを発生せて、プラズマで励起された比較的寿命が長い中性原子ラジカルがプラズマガスライン12を経由した後、原料ガス導入ライン13の原料ガスと混合し、その後サファイア基板41上に到達するが、プラズマで励起されたイオンはサファイア基板41上に到達する前に消滅する。このため、中性原子ラジカルがイオンの成分よりも支配的にサファイア基板41の表面に導入される。プラズマジェネレータ15の位置を可変とすることにより、サセプタ42位置に到達するラジカル量及びイオン量を制御することができ、反応速度、結晶に取り込まれる不純物密度や結晶性を操作することができる。
【0014】
図2(a)に示すように、原料ガス導入ライン13は上から見ると3角形に広がり、図2(b)に示すように、横から見ると平行平板状である。即ち、サセプタ42を反応領域とすると、原料ガス導入ライン13は薄く広がりをもった案内管構造になっている。サセプタ42の面積は、例えば50mmx50mm程度等、例えば、市場で入手可能な基板41のサイズを考慮して、その大きさを任意に設計可能である。そして、案内管構造の下流部を、サセプタ42の面積以上の大きさに広がりをもつようにして、原料供給の均一性を達成する。
【0015】
図1に示すように、原料ガス導入ライン13には、バルブ91、配管82を介して、ジエチル亜鉛(DEZn)ガスボンベ53が接続されている。DEZnガスボンベ53は、バルブ57と67との間のマスフローコントローラ63によって流量が制御され、原料ガス導入ライン13からDEZnが導入される。配管82はタンク回路となり、バルブ93を介して、水素ガスを導入することも、バルブ92を介して、窒素ガスを導入することも可能である。つまり、水素ガスや窒素ガスは、プラズマガスライン12及び原料ガス導入ライン13両方から導入可能である。
【0016】
図2(b)及び図3(b)に示すように、サセプタ42と原料ガス導入ライン13の結合箇所では、原料ガス導入ライン13の下が開放され、そこにサファイア基板41を搭載したサセプタ42が挿入される。図3(b)のサセプタ42の位置での断面(図2のB-B方向に沿った断面)を右正面から見た図に示すように、サセプタ42はU溝に嵌め込まれ、サセプタ42の周りは、石英ガラスで詰まっている。
【0017】
図2(a)の上面図に示すように、サセプタ42から下流側の長方形の溝が延び、最後がラッパに開いている。即ち、サセプタ42の位置からは、図3(b)に示すような断面が矩形の溝(U溝が下流方向に延びている。溝の下流部は、図2(a)の上面図に示すように、上部から見て、ラッパ形に広がるが、図3(b)に対応する右正面方向から見れば、ラッパは、左右方向にのみ広がりがある構造で、下部方向へは延びていない。
【0018】
基板41を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持する加熱手段としては、サセプタ42にヒータを内蔵する方式も可能であるが、図1に示す第1の実施の形態に係る結晶成長装置では、RFコイル21を加熱手段とし、この加熱手段を反応管11の外側に配置してRF加熱による温度制御方式をしている。セプタ42の内部には熱電対23が挿入可能で、熱電対23を用いて成長温度を測定する。
【0019】
図示を省略しているが、リモートプラズマ励起MOCVD装置は図1の右端に示した真空排気用ステンレス配管22をT型とし、このT型のステンレス配管22を介して、ロードロック機構を備えるようにし、反応菅11の内部は常に外気と遮断されるようにすることが可能である。
【0020】
本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長装置(リモートプラズマ励起MOCVD装置)によれば、反応過程にラジカルを導入し表面反応を促進し、低温での結晶成長を行うことができる。即ち、反応過程にラジカルを導入し有機金属の分解を促進し、低温での結晶成長を行うことができる。
【0021】
従来のMOCVD法では熱で原料を分解する必要があるために、原料により基板温度が決められ、低温化には限界がある。第1の実施の形態に係る結晶成長装置(リモートプラズマ励起MOCVD装置)では、従来あるMOCVD装置にプラズマ生成部と輸送部を加えて、反応過程にラジカルを導入し有機金属の分解を促進し、低温での結晶成長を可能にしている。即ち、第1の実施の形態に係る結晶成長装置では、酸素(O2)と窒素(N2)の混合ガスをプラズマ化し、そのうち必要な励起種、例えば中性原子ラジカルを取り出して薄膜結晶成長反応に用いる。このリモートプラズマ励起MOCVD装置は、一般に行われているMOCVD法では結晶成長圧力は常圧から減圧(数hPa)であるのに対し、これよりも一桁以上小さい10Pa~1Paの圧力範囲に保つことで、気相中での反応を制御することができることが特徴である。
【0022】
第1の実施の形態に係る結晶成長装置では、窒素ガスと酸素ガスを混合させプラズマ化する方法で高励起状態のN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を同期して基板表面に供給し高温アニール処理を行わなくても低抵抗率p型ZnO薄膜を成長させることができる。N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を「同期して供給」とは、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)が常に同時に供給されている必要はなく、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の少なくともいずれかをパルス状に基板表面に供給することを許容する意である。つまり、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の少なくともいずれかがパルス状に基板表面に供給される場合は、表面反応の緩和時間を考慮して両者の導入のタイミングが同期される。基板表面では、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の吸着及び離脱の素過程、並びに、N原子ラジカル(N*)及びO原子ラジカル(O*)の基板表面でのマイグレーションによる結晶格子サイトへの移動等の表面反応が進行している。したがって、この基板表面での表面反応の緩和時間より短い時間内に、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)が、それぞれ基板表面に到達するように、両者の導入のタイミングを同期して、周期的な繰り返しサイクルで成長しても良く、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)とが、完全に同時刻に基板表面に到達する必要はない。成長温度にもよるが、表面反応の緩和時間は数十秒~数分のオーダーであるが、成長時間の短縮を考慮するならば、数秒以内にN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)とを基板表面に到達させれば良く、基本的にN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の導入は、そのタイミングが重畳しても、同時であっても構わない。このため、「窒素ガスと酸素ガスを混合」には、バルブ65とバルブ66を同期制御して開閉し、窒素ガスと酸素ガスを周期的に同期してタンク回路83に導入するようなガスの混合方法も含み得るが、基本的には、窒素ガスと酸素ガスの導入のタイミングが重畳しても、同時であっても構わない。
【0023】
ZnO系化合物半導体の他の例として、Zn1-xCdxOのエピタキシャル結晶成長する場合には、原料として、II族原料にはDEZnとジメチルカドミウム(DMCd)を、VI族原料には酸素ガスを使用するのでこの場合は、配管82にDMCdの導入系を追加すれば良い。一方、MgzZn1-zOのエピタキシャル結晶成長には、原料として、II族原料にはDEZnとビスエチルシクロペンタジニエルマグネシウム(EtCp2Mg)を、VI族原料には酸素ガスを使用する。MOCVD法においてMgプリカーサー原料にCp2MgやMeCp2Mgが用いられている例があるが、EtCp2Mgを用いてMgzZn1-zOを作製している例はないが、本発明の第1の実施の形態では、安定な結晶成長法として採用している。有機原料であるDEZn、EtCp2Mg、DMCdは常温で液体である。このため、DEZn、EtCp2Mg、DMCdを用いる場合には、キャリアガスでバブリングを行うことにより、配管82を介して、反応菅11内に導入するのが好ましい。特にEtCp2Mを導入する場合は、EtCp2Mg原料ガス導入ラインにはラインヒータを設け、原料輸送中に輸送管中で固化を防止することが好ましい。又、DEZn、DMCdとは稼働温度が異なるため、反応菅11への導入には別ライン(輸送管)をEtCp2Mg用に用意すれば良い。
【0024】
第1の実施の形態に係る結晶成長装置によれば、イオンの基板表面への影響を抑制しつつ、N2ラジカル(N2*)と酸素ラジカル(O2*)を同期して基板表面に供給することにより、抵抗率を広いダイナミックレンジで制御して、p型のZnO系化合物半導体材料を結晶成長可能で、特に、低抵抗率p型ZnO化合物半導体材料が結晶成長できる。特に、窒素ガスと酸素ガスを混合させプラズマ化する方法により、N2ラジカル(N2*),酸素ラジカル(O2*)及びNOラジカル(NO*)が形成され、NをOのサイトに置換することにより、低抵抗率p型ZnO化合物半導体材料が結晶成長できる。更に、窒素ガス、酸素ガス及び水素ガスを混合させプラズマ化する方法により、N2ラジカル(N2*),酸素ラジカル(O2*)、NOラジカル(NO*)及びNHラジカル(NH*)を形成し、p型ZnO化合物半導体材料の不純物源とすることができる。
【0025】
<第1の実施の形態に係る結晶成長方法>
次に、図1~図3に示す第1の実施の形態に係る結晶成長装置を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法を説明する。尚、以下に述べる結晶成長方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。例えば、以下の説明では、サファイア基板41上のZnO薄膜作製で、図1~図3に示すリモートプラズマ励起MOCVD装置を用いた場合を説明するが、ZnO薄膜作製時の反応過程に導入するラジカルは、紫外線励起等、リモートプラズマ励起MOCVD装置以外の他の手法によっても構わない。
【0026】
(イ)先ず、サファイア基板41をアセトン、メタノール等の有機溶媒で洗浄する。その後、超純水で超音波洗浄した後、高純度窒素等でブローし、乾燥させる。更に、160℃の硫酸(H2SO4):燐酸(H3PO4)=3:1溶液で15分間、サファイア基板41の表面をエッチングし、純水で洗浄(リンス)する。そして、図1~図3に示す反応菅(反応容器)11内に設けられたSiCコートのカーボンサセプタ42上に搭載される。
【0027】
(ロ)サファイア基板41をカーボンサセプタ42上にセットしたのち反応菅11の内部を10-2Pa~10-8Pa程度に真空排気し、基板温度600℃にまで加熱する。そして、基板温度600℃で、反応菅11の内圧力が13Pa~1.3Paとなるように、水素(H2)ガスを導入し、水素雰囲気中、少なくとも45分以上、好ましくは1時間程度、水素ラジカルを照射し、水素ラジカルにより、サファイア基板41の表面をクリーニングする。
【0028】
(ハ)その後、基板温度を、300℃から600℃程度、好ましくは約400℃から約500℃程度の最適基板温度に設定し(場合により300℃以下でも可)、サファイア基板41の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をサファイア基板41の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層結晶成長する。
【0029】
(ニ)その後、水素ラジカルの照射を停止し、Zn原料(DEZn)をサファイア基板41の表面への導入とともに、高励起状態のN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を、同期してサファイア基板41の表面に供給し、サファイア基板41の表面に、抵抗率を広いダイナミックレンジで制御して、p型のZnO薄膜を結晶成長可能である。
【0030】
特に、抵抗率5Ωcm以下の低い抵抗率のp型のZnO薄膜を得るためには、等価流量比(N2/O2)を3以上にすれば良い。「等価流量比(N2/O2)」とは、定常的に窒素(N2)ガスと酸素(O2)ガスが同時に連続供給される場合は、マスフローコントローラ61及び62等で直接測定される流量比が「等価流量比(N2/O2)」に対応するが、パルス的に窒素(N2)ガスと酸素(O2)ガスが同期して供給される場合は、導入時間の比を考慮して等価流量比(N2/O2)が決定される。例えば、酸素(O2)ガスを定常的に連続供給して、窒素(N2)ガスのみをパルス的に導入し、その導入時間を酸素(O2)ガスの導入の半分の時間となるようにタイミングを調整するならば、窒素(N2)ガスの流量6に対し、酸素(O2)ガスの流量1とすれば、等価流量比N2/O2=3となる。尚、この際、H2流量1.7×10-2Pam3/s~2.7×10-2Pam3/s(10sccm~16sccm)で供給することが、低抵抗p型ZnOの結晶成長にはより好ましい。
【0031】
図4は、水素雰囲気中において窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス(N2+O2)をプラズマ化した場合のプラズマスペクトルを示す。図4に示すように、窒素と酸素の混合ガス(N2+O2)のプラズマスペクトルは、N2ラジカル(N2*)、N+イオンラジカル(N+*)、N原子ラジカル(N*)、O原子ラジカル(O*)、NOラジカル(NO*)に分類される。窒素と酸素の混合ガス(N2+O2)によってNOラジカル(NO*)が生成されていることは、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)が同時に生成されていることの証拠として解釈可能である。窒素と酸素を個別にプラズマ化した場合はNOラジカル(NO*)は生成されない。又、NHラジカル(NH*)も生成していることが分かる。
【0032】
したがって、第1の実施の形態に係る結晶成長方法においては、以下の反応:
2+O2 → (プラズマ)+H2
→ N2*+N+*+N*+O*+NO*+NH* ・・・・・(1)
が推定され、N原子ラジカル(N*)及びO原子ラジカル(O*)が基板表面に照射され、基板表面における表面反応において、NがOのサイトに置換されることにより、低抵抗率p型ZnO化合物半導体材料が結晶成長できる。一方、図5は、水素雰囲気中におけるO2プラズマのスペクトルを示す。窒素が存在しない系では、主な活性種は、Oラジカル(O*)、Hラジカル(H*)、OHラジカル(OH*)であることが分かる。
【0033】
図7は、H2流量に対する抵抗率及びキャリア密度依存性を示す。成長温度が異なるため、データに不連続性が見られるが、水素流量を増加させると抵抗率が減少し、p導電型のキャリア密度が増加する傾向が分かる。
【0034】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法におけるN2/O2流量比、成長温度及びH2流量の関係を示す図で、N2/O2流量比3以上、成長温度約400℃~約500℃、H2流量1.7×10-2Pam3/s~2.7×10-2Pam3/s(10sccm~16sccm)の3次元領域が、抵抗率5Ωcm以下の低い抵抗率のp型ZnOの結晶成長に最適の領域であることを示す。
図8は、成長温度400℃における抵抗率・キャリア密度のN2/O2流量比依存性を示す。N2ガス(ラジカル)供給量が多いほど、抵抗率が低下し、p型活性になることが分かる。N2/O2流量比を3以上とすることにより、抵抗率5Ωcm以下の低い抵抗率のp型のZnO薄膜を得ることができることが分かる。
【0035】
図9は、流量比N2/O2=3.2に固定した場合の抵抗率・キャリア密度の成長温度依存性を示す。図9では、現れていないが、(N2:O2比、H2流量が異なる)600℃で成長させた場合の抵抗率は8Ωcmとなり、500℃付近が抵抗率が最も減少する成長温度になると考えられる。又、キャリア密度が400℃付近で最大となるため、400-500℃付近が最適なp型ZnO成長温度と考えられる。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係る結晶成長装置は、第1の実施の形態に係る結晶成長装置と同様に、反応過程にラジカルを導入し表面反応を促進し、低温での結晶成長を行う。即ち、反応過程にラジカルを導入し有機金属の分解を促進し、低温での結晶成長を行うリモートプラズマ励起MOCVD装置である。このリモートプラズマ励起MOCVD装置は、一般に行われているMOCVD法では結晶成長圧力は常圧から減圧(数hPa)であるのに対し、これよりも一桁以上小さい10Pa~1Paの圧力範囲に保つことで、気相中での反応を制御することができる。
【0037】
このため、第2の実施の形態に係る結晶成長装置は、基板41を内部に収納して、この内部を減圧可能な反応容器33と、基板41を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持する加熱手段43と、減圧された反応容器33中において、少なくともZn元素の化合物ガスを含む1又は2以上のII族原料ガスを基板41の表面に、成長圧力で供給する原料ガス導入ライン38と、減圧された反応容器33中において、基板41の表面にイオンが到達しないようにして、II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、酸素原子ラジカルを基板41の表面に、成長圧力で供給する第1の中性ラジカル供給手段(34,36)と、減圧された反応容器33中において、基板41の表面にイオンが到達しないようにして、II族原料ガスの導入と同時若しくは交互に、窒素原子ラジカルを基板41の表面に、成長圧力で供給する第1の中性ラジカル供給手段(34,36)とを備える。
【0038】
第1中性ラジカル供給手段(34,36)は、図10に示すように、反応容器33の外部から反応容器33の内部まで延在し、先端部が基板41の表面に向かうプラズマガスライン(ラジカル輸送管)34と、このプラズマガスライン34の一部に備えられ、酸素原子ラジカルを生成するプラズマジェネレータ36とを備え、第2中性ラジカル供給手段(35,37)は、反応容器33の外部から反応容器33の内部まで延在し、先端部が基板41の表面に向かうプラズマガスライン(ラジカル輸送管)35と、このプラズマガスライン35の一部に備えられ、窒素原子ラジカルを生成するプラズマジェネレータ37とを備える。第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34及び第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35は、反応容器となるステンレスチャンバー33から左右の2箇所で、それぞれ、斜めにステンレス配管で分岐されている。
【0039】
第1プラズマガスライン34には、バルブ72、配管76を介して、酸素(O2)ガスボンベ52が接続されている。酸素(O2)ガスボンベ52は、バルブ56を介してマスフローコントローラ62に接続され、マスフローコントローラ62によって流量が制御される。第2プラズマガスライン35には、バルブ71、配管75を介して、窒素(N2)ガスボンベ51が接続されている。窒素(N2)ガスボンベ51は、バルブ55を介してマスフローコントローラ61に接続され、マスフローコントローラ61によって流量が制御される。第1プラズマジェネレータ36で酸素をプラズマ化し、発生するイオン、電子、ラジカルの内、比較的寿命が長い中性原子ラジカル(O原子ラジカル(O*))をステンレスチャンバー33へ輸送し、原料の分解反応に使用する。一方、第2プラズマジェネレータ37で窒素(N2)をプラズマ化し、発生するイオン、電子、ラジカルの内、比較的寿命が長い中性原子ラジカル(N原子ラジカル(N*))をステンレスチャンバー33へ輸送し、原料の分解反応に使用する。
【0040】
図10に示される様に、縦型のステンレスチャンバー33の内部には、ステンレスチャンバー33の上部を封止するフランジ32を介して、石英ガラス製のガス流案内管39が取り付けられている。ステンレスチャンバー33は、冷却水により水冷されている。サファイア基板41は、SiCコートのカーボンサセプタ42上に搭載され、原料気体の導入口より下方約10cmの位置に水平におかれている。カーボンサセプタ42を搭載する基板ホルダ44には、基板41を成長温度まで加熱して、この成長温度に維持する加熱手段として抵抗加熱ヒータ43が内蔵されており、サファイア基板41に対し反対側に設けられた熱電対により温度制御を行う。この基板ホルダ44には回転機構が備えられており、例えば、サファイア基板41を約25rpmで回転させながら結晶成長を行う。図示を省略してい得るが、リモートプラズマ励起MOCVD装置はロードロック機構を備え、ステンレスチャンバー33は常に外気と遮断されている。
【0041】
第1及び第2プラズマジェネレータ37,37には、ホローカソード方式、ICP方式、MIP方式、LIP方式や平行平板方式等が採用可能である。第1及び第2プラズマジェネレータ37,37は、例えば、サファイア基板41からおよそ5cm~60cmの間の距離、例えば20cmのところに配置すれば、イオンの成分よりもラジカルの成分が支配的になるので好ましい。そして、第1及び第2プラズマジェネレータ37,37には、例えば、13.56MHzの高周波を10W以上のパワーで印加してプラズマを発生せて、第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34及び第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35を通して、それぞれ、サファイア基板41上にラジカルが導入される。ステンレスチャンバー33と第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34及び第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35はメタルフランジで接続されているが、ラジカルが再結合して消滅するのを防ぐためにフランジ内に石英ガラスの内管を設けて、輸送中のラジカルが直接金属表面に触れることのない様に設計するのが好ましい。
【0042】
ZnOのエピタキシャル結晶成長には、第1の実施の形態と同様に、II族原料にはDEZnを、VI族原料には酸素ガスを使用する。VI族原料は、第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34からラジカルとして導入されるが、DEZnは、フランジ32に設けられた原料ガス導入ライン38から導入される。図10に示すように、原料ガス導入ライン38には、バルブ73、配管77を介して、DEZnガスボンベ53が接続されている。DEZnガスボンベ53は、バルブ57を介してマスフローコントローラ63が接続され、マスフローコントローラ63によって流量が制御され、原料ガス導入ライン38からDEZnが導入される。 又、フランジ32には、更に補助ガス導入ライン40が設けられている。補助ガス導入ライン40には、バルブ74、配管78を介して、水素ガスボンベ54が接続されている。水素ガスボンベ53は、バルブ58を介してマスフローコントローラ64が接続され、マスフローコントローラ64によって流量が制御され、補助ガス導入ライン40から水素が導入される。
【0043】
図10に示す第2の実施の形態に係る結晶成長装置によれば、O原子ラジカル(O*)を第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34から、N原子ラジカル(N*)を第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35から同期して基板表面に供給し、高温アニール処理を行わなくても低抵抗率p型ZnO薄膜を成長させることができる。第1の実施の形態で説明したように、「同期して供給」とは、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)が常に同時に基板表面に供給されている必要はなく、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の少なくともいずれかをパルス状に基板表面に供給することを許容する意であり、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の少なくともいずれかがパルス状に基板表面に供給される場合は、そのタイミングが同期される。つまり、したがって、バルブ65とバルブ66を同期制御して開閉し、或いは、第1プラズマジェネレータ36及び第2プラズマジェネレータ37をパルス的に同期制御して、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を同期して基板表面に供給しても良い。
【0044】
即ち、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を同期して基板表面に供給することにより、効率良くNがOの置換サイトに導入され、抵抗率を広いダイナミックレンジで制御して、p型のZnO系化合物半導体材料を結晶成長可能で、特に、低抵抗率p型ZnOが結晶成長できる。更に、窒素ガス、酸素ガス及び水素ガスを混合させプラズマ化する方法により、NOラジカル及びNHラジカルを形成し、p型ZnOの不純物源とすることができる。
【0045】
結晶成長中の結晶成長速度は、ステンレスチャンバー33に取り付けられた石英窓31よりHe-Neレーザ等の光源からの光を照射して、サファイア基板41表面と膜表面で反射した光をフォトダイオードセル等の光検出器(図示省略)で受光し、その干渉を用いてインシツ(in-situ)で測定を行う。膜厚の校正は結晶成長後の触針式表面形状測定装置を用いて膜厚を測定する。結晶成長中のプラズマ状態を観察するために、チャンバー上部のフランジ32に取り付けられた石英製ののぞき窓(観察窓)からプラズマ種の発光をスペクトロメーターを用いて観察する。
【0046】
<第2の実施の形態に係る結晶成長方法>
次に、図10の結晶成長装置を参照しながら、本発明の第2の実施の形態に係る結晶成長方法を説明する。尚、以下に述べる結晶成長方法は、一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により、実現可能であることは勿論である。例えば、以下の説明では、サファイア基板41上のZnO薄膜作製で、図10に示すリモートプラズマ励起MOCVD装置を用いた場合を説明するが、ZnO薄膜作製時の反応過程に導入するラジカルは、紫外線励起等、リモートプラズマ励起MOCVD装置以外の他の手法によっても構わない。
【0047】
(イ)先ず、サファイア基板41をアセトン、メタノール等の有機溶媒で洗浄する。その後、超純水で超音波洗浄した後、高純度窒素等でブローし、乾燥させる。更に、160℃の硫酸(H2SO4):燐酸(H3PO4)=3:1溶液で15分間、サファイア基板41の表面をエッチングし、純水で洗浄(リンス)する。そして、図10に示すステンレスチャンバー(反応容器)33内に設けられたSiCコートのカーボンサセプタ42上に搭載される。カーボンサセプタ42は、原料気体の導入口より下方約10cmの位置になるように、基板ホルダ44に搭載されている。
【0048】
(ロ)サファイア基板41をカーボンサセプタ42上にセットしたのちステンレスチャンバー33の内部を10-2Pa~10-8Pa程度に真空排気し、基板温度600℃にまで加熱する。そして、基板温度600℃で、チャンバー内圧力が13Pa~1.3Paとなるように、水素(H2)ガスを導入し、水素雰囲気中、少なくとも45分以上、好ましくは1時間程度、水素ラジカルを照射し、水素ラジカルにより、サファイア基板41の表面をクリーニングする。
【0049】
(ハ)その後、基板温度を、300℃から600℃程度、好ましくは約400℃から約500℃程度の最適基板温度に設定し(場合により300℃以下でも可)、サファイア基板41の表面にDEZnガスを導入しZn原料を供給し、水素ラジカル照射でZnの原子層をサファイア基板41の表面に、少なくとも一原子層、好ましくはほぼ一原子層結晶成長する。
【0050】
(ニ)その後、水素ラジカルの照射を停止し、DEZnをサファイア基板41の表面に導入し、O原子ラジカル(O*)を第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34から、N原子ラジカル(N*)を第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35から、同期してサファイア基板41の表面に供給し、サファイア基板41の表面に、抵抗率を広いダイナミックレンジで制御して、p型のZnO薄膜を結晶成長可能である。
【0051】
特に、抵抗率5Ωcm以下の低い抵抗率のp型のZnO薄膜を得るためには、等価流量比(N2/O2)を3以上にすれば良い。尚、この際、H2流量1.7×10-2Pam3/s~2.7×10-2Pam3/sで供給することが、低抵抗p型ZnOの結晶成長にはより好ましい。
尚、図10に示す結晶成長装置において、第2プラズマガスライン35に酸素(O2)ガスボンベ52からの配管をタンク回路を介して接続し、第2プラズマガスライン35からN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の両方を供給し、第1プラズマガスライン34からO原子ラジカル(O*)のみを供給するようにしても良い。パルス的に窒素(N2)ガスと酸素(O2)ガスが同期して供給される場合は、導入時間の比を考慮して等価流量比(N2/O2)が決定されるので、例えば、O原子ラジカル(O*)を第1プラズマガスライン34及び第2プラズマガスライン34から定常的に連続供給して、N原子ラジカル(N*)のみを第2プラズマガスライン34パルス的に導入し、N原子ラジカル(N*)の導入時間をO原子ラジカル(O*)の導入の半分の時間となるようにタイミングを調整するならば、窒素(N2)ガスの流量6に対し、第1プラズマガスライン34及び第2プラズマガスライン34に導入される酸素(O2)ガスの全流量を1とすれば、等価流量比N2/O2=3となる。
【0052】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0053】
例えば、図10に示す第2の実施の形態の結晶成長装置では、ステンレスチャンバー33に第1プラズマガスライン(ラジカル輸送管)34に第1プラズマジェネレータ36を、第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35に第2プラズマジェネレータ37を配置した2系列のプラズマガスラインの構成を例示したが、第2プラズマガスライン(ラジカル輸送管)35を省略した単一のプラズマガスライン(ラジカル輸送管)の構成でも良い。
【0054】
例えば、図10において、第1プラズマガスライン35に窒素(N2)ガスボンベ51と酸素(O2)ガスボンベ52からの配管をタンク回路を介して接続し、第1プラズマガスライン35からN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)の両方を供給する方式にすれば、縦型と横型の相違はあるものの、第1の実施の形態の結晶成長装置と実質的に類似な構成になるので、同様な結晶成長が可能であることは、容易に理解できるであろう。
【0055】
更に、第1及び第2の実施の形態で説明した窒素(N2)ガスの代わりにアンモニア(NH3)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス等の窒素を含む化合物のガスを用いても同様に、イオンの基板表面への影響を抑制しつつ、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を同期して基板表面に供給することができるので、p型ZnOのキャリア密度を制御した結晶成長が可能であることは、上記の説明から容易に理解できるであろう。
【0056】
更に、第1及び第2の実施の形態では、プラズマでN原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を励起する場合について説明したが、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)は紫外線等の光エネルギーで励起しても良い。光エネルギーで励起する場合は、本来的にイオンの成分は無視できるので、プラズマジェネレータ15,36,37と基板41の表面までの距離を、イオンが消滅するイオンの寿命距離よりも長く、ラジカルが消滅するラジカルの寿命距離よりも短く設定するような配慮も不要である。
【0057】
或いは、プラズマ励起と光励起の両方で、N原子ラジカル(N*)とO原子ラジカル(O*)を励起するようにしても良いが、プラズマ励起と光励起の両方を用いる場合は、プラズマジェネレータ15,36,37と基板41の表面までの距離を、イオンが消滅するイオンの寿命距離よりも長く、ラジカルが消滅するラジカルの寿命距離よりも短く設定する必要がある。但し、プラズマ励起と光励起の両方を用いる場合は、プラズマ励起のみの場合に比し、イオンの強度を相対的に弱くできる。
【0058】
第1及び第2の実施の形態では、減圧された反応容器(11,33)中で、基板41の表面にイオンが到達しないようにし、II族原料ガスの導入と同時に窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、基板41の表面に供給する結晶成長方法を示したが、分子層エピタキシの手法のように、II族原料ガスの導入と交互に、窒素原子ラジカル及び酸素原子ラジカルを、基板41の表面に、成長圧力で供給して、ラングミュラー型の吸着過程を用いて、単分子層毎にp型のZnO薄膜を結晶成長しても良い。
【0059】
第1及び第2の実施の形態では、サファイア基板41を用いる例を示したが、基板41は、サファイア基板に限定されるものではなく、炭化珪素(SiC)基板や他の半導体基板でも良い。更に、既にn型ZnO系化合物半導体薄膜が形成されている基板上に、p型ZnO系化合物半導体薄膜を成長する場合でも本発明は適用可能で、同様にp型のキャリア密度が広いダイナミックレンジで制御可能であることは、勿論である。
【0060】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長装置の全体構造の概略を説明するための模式的図である。
【図2】図2(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長装置の反応菅の構造の概略を説明するための模式的な上面図で、図2(b)は、 図2(a)のA-A方向から見た断面に対応する模式的な断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長装置の反応菅の左正面図で、 図3(b)は、図2(b)のB-B方向から見た断面図である。
【図4】水素雰囲気中において、窒素ガスと酸素ガスとの混合ガス(N2+O2)をプラズマ化した場合のプラズマスペクトルである。
【図5】水素雰囲気中におけるO2プラズマのスペクトルである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法におけるN2/O2流量比、成長温度及びH2流量の関係を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法におけるH2流量に対する抵抗率及びキャリア密度依存性を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法における抵抗率・キャリア密度のN2/O2流量比依存性を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る結晶成長方法における流量比N2/O2=3.2に固定した場合の抵抗率・キャリア密度の成長温度依存性を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る結晶成長装置の構造の概略を説明するための模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0062】
11…反応管(反応容器)
12…プラズマガスライン
13…原料ガス導入ライン
15…プラズマジェネレータ
21…RFコイル(加熱手段)
22…ステンレス配管
23…熱電対
31…石英窓
32…フランジ
33…ステンレスチャンバー(反応容器)
34…第1プラズマガスライン
35…第2プラズマガスライン
36…第1プラズマジェネレータ
37…第2プラズマジェネレータ
38…原料ガス導入ライン
39…ガス流案内管
40…補助ガス導入ライン
41…サファイア基板
42…サセプタ
43…抵抗加熱ヒータ(加熱手段)
44…基板ホルダ
51…窒素ガスボンベ
52…酸素ガスボンベ
53…水素ガスボンベ
53…DEZnガスボンベ
54…水素ガスボンベ
55~58,69,71~74,91~93…バルブ
61,62,63,64…マスフローコントローラ
75~78,81~83…配管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9