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明細書 :成膜装置及び成膜方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4862158号 (P4862158)
公開番号 特開2008-057011 (P2008-057011A)
登録日 平成23年11月18日(2011.11.18)
発行日 平成24年1月25日(2012.1.25)
公開日 平成20年3月13日(2008.3.13)
発明の名称または考案の名称 成膜装置及び成膜方法
国際特許分類 C25D  13/02        (2006.01)
C25D  15/02        (2006.01)
FI C25D 13/02 Z
C25D 15/02 E
C25D 15/02 C
C25D 15/02 H
C25D 15/02 M
請求項の数または発明の数 16
全頁数 22
出願番号 特願2006-236598 (P2006-236598)
出願日 平成18年8月31日(2006.8.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年3月1日 社団法人 精密工学会発行の「2006年度 精密工学会春季大会学術講演会講演論文集」に発表
審査請求日 平成21年6月23日(2009.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 太
【氏名】山本 龍二
【氏名】佐々木 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100101465、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 正和
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】國方 康伸
参考文献・文献 特開2008-55349(JP,A)
特開2005-349496(JP,A)
特開平10-123031(JP,A)
特開2006-073487(JP,A)
国際公開第2006/051825(WO,A1)
特開平11-209898(JP,A)
特開昭52-133833(JP,A)
特開2004-138906(JP,A)
国際公開第2005/084874(WO,A1)
調査した分野 C25D 9/00~ 9/12
C25D 13/00~21/22
G01N 1/28
特許請求の範囲 【請求項1】
液中にて被成膜基板上に金属膜を成膜する成膜装置であって、
前記被成膜基板上に液体を介在させた状態で対向配置され、対向面に予め金属層が形成された対向基板と、
前記被成膜基板と前記金属層との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層から金属微粒子を被成膜基板に向けて電気泳動により移動させると共に、金属微粒子を被成膜基板上に堆積させることで前記金属膜を成膜する電圧印加手段とを備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成膜装置において、
前記対向基板が、導電性基板であることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜装置において、
前記金属層は、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に予め形成されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置において、
レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記液体内に予め投入された微小物質を光放射圧によって捕捉する光学系と、
光源を有し、該光源から照射された光を利用して前記液体内に投入された前記微小物質を観察する観察系と、
前記被成膜基板を、前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に移動させ、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上の所定位置に近接させる移動手段と、
前記微小物質が前記被成膜基板上の所定位置に近接したときに一旦前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせて、微小物質を被成膜基板上に引き寄せて固定させ、その後、電圧値を所定電圧値以上に上げた状態で電圧印加を行わせて、微小物質が固定された被成膜基板上に前記金属膜を成膜させるように前記電圧印加手段を制御する制御部とを備えていることを特徴とする成膜装置。
【請求項5】
請求項4に記載の成膜装置において、
前記制御部は、前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値以上の電圧値で電圧印加を行わせるときとで、極性が逆になるように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする成膜装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の成膜装置において、
前記制御部は、前記光学系、前記移動手段及び前記電圧印加手段を制御して、前記金属膜を成膜させる前に、前記被成膜基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させることを特徴とする成膜装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の成膜装置において、
前記光学系は、前記レーザ光を複数の光束に分岐させるレーザ分岐素子を備え、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉することを特徴とする成膜装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の成膜装置において、
前記制御部は、所定時間以上の間、前記所定電圧以上の電圧値で電圧を印加するように前記電圧印加手段を制御して、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させることを特徴とする成膜装置。
【請求項9】
液中にて被成膜基板上に金属膜を成膜する成膜方法であって、
対向面に予め金属層が形成された対向基板を、液体を間に介在させた状態で前記被成膜基板上に対向配置させるセット工程と、
該セット工程後、前記被成膜基板と前記金属層との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層から金属微粒子を被成膜基板に向けて電気泳動により移動させると共に、金属微粒子を被成膜基板上に堆積させることで前記金属膜を成膜する電圧印加工程とを備えていることを特徴とする成膜方法。
【請求項10】
請求項9に記載の成膜方法において、
前記対向基板が、導電性基板であることを特徴とする成膜方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の成膜方法において、
前記金属層は、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に予め形成されていることを特徴とする成膜方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の成膜方法において、
前記セット工程時に前記液体内に微小物質を投入する投入工程と、
該投入工程及び前記セット工程後、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する捕捉工程と、
該捕捉工程後、前記被成膜基板を前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上の所定位置に近接させる位置調整工程と、
該位置調整工程後、前記被成膜基板と前記金属層との間に前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧を印加して、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上に引き寄せて固定させる固定工程とを備え、
該固定工程後に、前記電圧印加工程を行って、前記微小物質が固定された前記被成膜基板上に前記金属膜を成膜させることを特徴とする成膜方法。
【請求項13】
請求項12に記載の成膜方法において、
前記電圧印加工程の際、前記固定工程時の逆の極性で電圧を印加することを特徴とする成膜方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の成膜方法において、
前記電圧印加工程前に、前記捕捉工程、前記位置調整工程及び前記固定工程を繰り返し行って、前記被成膜基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させることを特徴とする成膜方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれか1項に記載の成膜方法において、
前記捕捉工程の際、前記レーザ光を複数の光束に分岐させた後、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉することを特徴とする成膜方法。
【請求項16】
請求項12から15のいずれか1項に記載の成膜方法において、
前記電圧印加工程の際、所定時間以上の間電圧印加を行って、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させることを特徴とする成膜方法。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液中にて基板上に金属膜を成膜させる成膜装置及び成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に金属膜を成膜させる方法は、従来からスパッタ法や蒸着法や電気めっき法等の様々な方法が知られており、用途に応じて使い分けがなされている。また、この成膜技術は、各種の分野で様々な用途に応用されている。その1つとして、電子顕微鏡を利用して基板上の試料を観察する場合に、金属膜の成膜技術が用いられている。これは、電子顕微鏡を利用した観察は電子線を照射して観察する必要があるためである。一般的には真空スパッタ法や真空蒸着法等により、導電性物質や導電性膜を試料上に成膜(コーティング)している(例えば、非特許文献1参照)。

【非特許文献1】麻蒔 立男著、「超微細加工の基礎-電子デバイスプロセス技術」、日刊工業新聞社、第8章(蒸着とイオンプレーティング)、第9章(スパッタ)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の方法では以下の課題が残されている。
即ち、観察対象である試料がバイオ試料等の場合には、成膜に必要な真空環境にさらされてしまうと、細胞が破壊されたり、水分が蒸発して構造が変形したりする恐れがあった。そのため、本来の形状や組織等から大きく異なったものとなってしまい、正確な観察を行うことができない不都合があった。
【0004】
よってこのような不都合をなくすために、バイオ試料等の場合には、バッファー溶液等の液中内で成膜されることが望まれている。これは、液中内で成膜することができれば、バイオ試料を生に近い状態で観察することができるためである。
このような液中内で成膜する方法としては、電気めっき法が知られているが、この電気めっき法では液体が電解液に限定されるうえ、バイオ試料が電解液の影響を受けてしまう欠点があった。そのため電気めっき法は、バイオ試料の成膜には不向きな方法であった。また、電気化学反応が生じる点もバイオ試料には不向きな原因の1つであった。
ところが電気めっき法以外の方法によって、液中内で金属膜を成膜する方法はいまだ有効な手立ては知られていない。つまり現時点においては、液体の種類の限定されずに液中内で成膜を行う技術はまだ見出されていない。
【0005】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、液体の種類に限定されずに、容易且つ確実に液中で金属膜を成膜することができる共に、微小物質等の試料の固定に応用することができる金属膜の成膜装置及び成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、液中にて被成膜基板上に金属膜を成膜する成膜装置であって、前記被成膜基板上に液体を介在させた状態で対向配置され、対向面に予め金属層が形成された対向基板と、前記被成膜基板と前記金属層との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層から金属微粒子を被成膜基板に向けて電気泳動により移動させると共に、金属微粒子を被成膜基板上に堆積させることで前記金属膜を成膜する電圧印加手段とを備えている成膜装置を提供する。
【0007】
また、請求項9に係る発明は、液中にて被成膜基板上に金属膜を成膜する成膜方法であって、対向面に予め金属層が形成された対向基板を、液体を間に介在させた状態で前記被成膜基板上に対向配置させるセット工程と、該セット工程後、前記被成膜基板と前記金属層との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層から金属微粒子を被成膜基板に向けて電気泳動により移動させると共に、金属微粒子を被成膜基板上に堆積させることで前記金属膜を成膜する電圧印加工程とを備えている成膜方法を提供する。
【0008】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、まず、被成膜基板上に純水等何らかの液体を介在させた状態で、対向面を被成膜基板の表面に向けて対向基板を配置するセット工程を行う。この際、対向基板の対向面には、金属微粒子からなる金属層が予め形成されている。なお、この金属層は、スパッタや蒸着等どのような方法で形成されていても構わない。
このセット工程が終了した後、電圧印加手段により、被成膜基板と金属層との間に電圧を印加すると、金属層がチャージされ、極性に応じてプラス若しくはマイナスに帯電した状態となる。つまり、対向面に形成された金属層を構成する金属微粒子が、徐々にプラス若しくはマイナスの電荷を帯びてくる。一方、被成膜基板も同様にチャージされ、金属層とは反対の極性に帯電した状態となる。そのため、両基板の間に介在された液体には電界が形成される。
【0009】
そして、所定電圧値以上の電圧を印加する電圧印加工程を行うと、上述した状態からさらにチャージが進み、帯電した金属微粒子が異なる極性に帯電された被成膜基板に引き寄せられて対向面から剥離すると共に、液中に浮遊した状態となる。なお、この浮遊した金属微粒子は、依然として帯電した状態となっている。そのため、金属微粒子は、液中に浮遊したと同時に、金属層と被成膜基板との間に形成された電界によって電気泳動により液体内を被成膜基板に向かって移動し始める。そして、移動した金属微粒子は、被成膜基板の表面全体に次々と付着して堆積する。
【0010】
このように電圧印加工程を行うことで、対向基板の対向面に予め形成した金属層の金属微粒子を電気泳動により被成膜基板に向けて移動させると共に、被成膜基板の表面全体に次々と堆積させることで金属膜を成膜することができる。また、被成膜基板に付着した金属微粒子は、帯電した状態が解かれると同時にファンデルワールス力によって強固に固定される。
なお、電圧印加工程を行う際、極性に影響されることはない。即ち、被成膜基板がプラスに帯電されようと、マイナスに帯電されようと、上述した作用効果を同様に奏することができる。
【0011】
その結果、液中にて被成膜基板上に金属膜を成膜(コーティング)することができる。特に、電圧を印加して金属微粒子を対向基板から剥離させると共に、剥離した金属微粒子を電気泳動により移動させて金属膜を成膜するので、電界が形成できれば液体は何でも構わない。よって、電気めっき法等とは異なり、液体の種類に関係なく成膜を行えるので、汎用性が高く、様々な分野への応用を期待することができる。例えば、従来では困難であったバイオ試料の固定等にも好適に応用することができる。また、真空スパッタ法のように、周囲の環境を真空にする等の特殊な環境にする必要がなく、単に液中環境にするだけで成膜を行うことができるので、低コスト化及び作業性の容易化を図ることができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の成膜装置において、前記対向基板が、導電性基板である成膜装置を提供する。
【0013】
また、請求項10に係る発明は、請求項9に記載の成膜方法において、前記対向基板が、導電性基板である成膜方法を提供する。
【0014】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、対向基板として導電性基板を用いているので、対向面に形成された金属層に電圧を印加した際に、基板自体に電流を流して金属層に電圧を印加することができる。よって、より効率良く且つ金属層全体に均等に電圧を印加でき、成膜をより円滑にムラなく行うことができる。また、金属微粒子の剥離によって、仮に金属層が途中で分断されてしまったとしても、導電性基板を介して電流が流れるので、まだ剥離していない残りの金属層に電圧を確実に印加することができる。よって、この点からもムラのない成膜を行うことができる。
【0015】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の成膜装置において、前記金属層が、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に予め形成されている成膜装置を提供する。
【0016】
また、請求項11に係る発明は、請求項9又は10に記載の成膜方法において、前記金属層が、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に予め形成されている成膜方法を提供する。
【0017】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、対向面に金属層がスパッタ法又は蒸着法により形成された対向基板を用いるので、金属層に電圧を印加したときに、金属微粒子を対向面から剥離させ易い。従って、より効率良く成膜を行うことができ、成膜時間を短縮することができる。
【0018】
また、請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の成膜装置において、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記液体内に予め投入された微小物質を光放射圧によって捕捉する光学系と、光源を有し、該光源から照射された光を利用して前記液体内に投入された前記微小物質を観察する観察系と、前記被成膜基板を、前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に移動させ、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上の所定位置に近接させる移動手段と、前記微小物質が前記被成膜基板上の所定位置に近接したときに一旦前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせて、微小物質を被成膜基板上に引き寄せて固定させ、その後、電圧値を所定電圧値以上に上げた状態で電圧印加を行わせて、微小物質が固定された被成膜基板上に前記金属膜を成膜させるように前記電圧印加手段を制御する制御部と、
を備えている成膜装置を提供する。
【0019】
また、請求項12に係る発明は、請求項9から11のいずれか1項に記載の成膜方法において、前記セット工程時に前記液体内に微小物質を投入する投入工程と、該投入工程及び前記セット工程後、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する捕捉工程と、該捕捉工程後、前記被成膜基板を前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上の所定位置に近接させる位置調整工程と、該位置調整工程後、前記被成膜基板と前記金属層との間に前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧を印加して、捕捉された前記微小物質を被成膜基板上に引き寄せて固定させる固定工程とを備え、該固定工程後に、前記電圧印加工程を行って、前記微小物質が固定された前記被成膜基板上に前記金属膜を成膜させる成膜方法を提供する。
【0020】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、液体内に予め投入された微小物質(例えば、直径1μm程度のポリスチレン微粒子等の高分子粒子や、バイオ試料等)を被成膜基板上に固定させた後、該微小物質を金属膜でコーティングすることができる。しかもこの際、金属膜によって微小物質をより強固に被成膜基板上に固定することができる。
【0021】
まず、セット工程を行う際に、液体内に予め所望する微小物質を投入する投入工程を行う。この投入工程後、対向基板をセットするセット工程を行う。そしてセット工程が終了した後、光源から照射された光を利用して液体内の状態を観察系によって光学的に観察する。この際、複数の微小物質は、液中に浮遊している状態となっている。
ここで、液中環境下におかれた物体表面は、液体の種類やpH等の状況によりプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっている。なお、説明を判り易くするため、ここでは物体表面がマイナスに帯電している場合を例に挙げて以下に説明する。
【0022】
そのため、液体内に投入された微小物質の表面、並びに、金属層及び被成膜基板の表面についても同様に、マイナスに帯電した状態となっている。一方、物体表面の近傍は、帯電したマイナスを打ち消すようにプラスに帯電した状態となっている。そのため、微小物質の表面近傍、並びに、金属層及び被成膜基板の表面近傍は、プラスに帯電した状態となっている。つまり、電気二重層が形成されている。よって、液中に浮遊している微小物質が被成膜基板に接近すると、互いの電気二重層が重なり合うので静電気的相互作用によって斥力が働く。従って、微小物質は、被成膜基板から離れてしまう。
このように、液体内に投入された微小物質は、被成膜基板や金属層に付着することなく、液中を浮遊した状態となっている。
【0023】
次いで、観察系によって液中内の状態を確認しながら、光学系によって液体内にレーザ光をスポットとして集光させる。これにより、液中内を浮遊している微小物質を1つだけ光放射圧を利用して捕捉することができる。この捕捉工程後、制御部は移動手段を制御して被成膜基板をXY方向及びZ方向の3方向に適宜移動させ、被成膜基板上の所定位置に捕捉した微小物質を近接させる位置調整工程を行う。この際、微小物質を捕捉して近づける力よりも、上述した斥力の方が強いので、これ以上微小物質を被成膜基板に近づけることができない。
【0024】
そこで制御部は、微小物質が被成膜基板上の所定位置に近接したときに、上述した所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧を印加するように電圧印加手段を作動させる。なおこの際、被成膜基板がプラスに帯電するように電圧を印加させる。これにより被成膜基板は、微小物質と異なるプラスに帯電するので電気二重層の重なりによる斥力がなくなる。よって微小物質は、被成膜基板に引き寄せられるように移動して、該被成膜基板上の所定位置に固定される。特に、微小物質と被成膜基板との距離が近接した状態になると、両者の間にファンデルワールス力が強く作用するので、微小物質は一層引き寄せられた後固定される。この固定工程によって、浮遊している複数の微小物質の中から、先ほど捕捉した微小物質のみを被成膜基板上に確実に固定させることができる。
【0025】
そして、微小物質を固定させた後、制御部は、電圧値を所定電圧値以上に上げた状態で電圧印加するように電圧印加手段を作動させる。この電圧印加工程を行うことで、対向面に形成された金属層の金属微粒子を電気泳動により被成膜基板に向けて移動させ、微小物質が固定された被成膜基板上に堆積させることができる。これにより、微小物質を金属膜でコーティングすることができる。特に、被成膜基板上に固定している微小物質の周囲に金属微粒子が堆積するので、微小物質をさらに強固に固定することができる。このように、被成膜基板上を単に金属膜で成膜するだけでなく、この金属膜を利用して微小物質を液中で強固に固定することができる。
【0026】
特に、金属微粒子を利用して微小物質を強固に固定しているので、被成膜基板を液中から大気中に取り出して乾燥させたとしても、液体の乾燥過程で生じる気液界面における表面張力の影響を受けることがない。つまり、乾燥過程で気液界面が移動したとしても、微小物質は被成膜基板の表面全体に堆積している金属微粒子によって周囲が囲まれているので、気液界面につられて移動したり、変形したりする恐れがない。よって、液中内で被成膜基板上に固定させた微小物質を、そのままの状態で大気中に取り出すことができる。
従って、マイクロスケールの微粒子の組み立てや、MEMS等の微小デバイス等の組み立てを容易に行うことができる。また、微小物質がバイオ試料である場合には、従来困難であった生に近い状態で固定して大気中に取り出すことができる。しかも、大気中に取り出された微小物質は、金属膜によってコーティングされているので、直ちに電子顕微鏡により観察することもできる。
【0027】
また、請求項5に係る発明は、請求項4に記載の成膜装置において、前記制御部が、前記所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値以上の電圧値で電圧印加を行わせるときとで、極性が逆になるように前記電圧印加手段を制御する成膜装置を提供する。
【0028】
また、請求項13に係る発明は、請求項12に記載の成膜方法において、前記電圧印加工程の際、前記固定工程時の逆の極性で電圧を印加する成膜方法を提供する。
【0029】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、微小物質を被成膜基板上に固定させる固定工程時と、固定した微小物質を金属微粒子でより強固に固定する電圧印加工程時とで、極性が逆になるように電圧を印加する。
例えば、液中に浮遊している微小物質がマイナスに帯電している場合には、固定工程時に被成膜基板がプラスとなるように電圧を印加する。これにより、微小物質は被成膜基板に引き寄せられて固定される。次いで、電圧印加工程時には、被成膜基板がマイナスとなるように電圧を印加する。このように極性を変えることで、液中に浮遊している残りの微小物質(マイナスに帯電している)を被成膜基板側に引き寄せることなく、金属微粒子だけを被成膜基板に向けて電気泳動により移動させて堆積させることができる。従って、被成膜基板上に固定させた微小物質だけを確実に固定することができる。
なお、液中に浮遊している微小物質がプラスに帯電している場合には、固定工程時に被成膜基板がマイナスとなるように電圧を印加すると共に、電圧印加工程時に被成膜基板がプラスとなるように電圧を印加すれば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0030】
また、請求項6に係る発明は、請求項4又は5に記載の成膜装置において、前記制御部が、前記光学系、前記移動手段及び前記電圧印加手段を制御して、前記金属膜を成膜させる前に、前記被成膜基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させる成膜装置を提供する。
【0031】
また、請求項14に係る発明は、請求項12又は13に記載の成膜方法において、前記電圧印加工程前に、前記捕捉工程、前記位置調整工程及び前記固定工程を繰り返し行って、前記被成膜基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させる成膜方法を提供する。
【0032】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、電圧印加工程を行う前に、捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行って、被成膜基板上に微小物質を任意のパターンで複数固定させる。その後、電圧印加工程を行って、複数の微小物質を一度に金属微粒子によって強固に固定する。このように固定された複数の微小物質は、大気中に取り出されて乾燥されたとしても、気液界面の移動によって移動しないのでそのままのパターンで取り出される。従って、液中で任意のパターンに並べた微小物質を、そのままのパターンで確実に大気中に取り出すことができる。また、予め複数の微小物質を任意のパターンで並べることができるので、効率よく短時間で作業を行うことができる。
【0033】
また、請求項7に係る発明は、請求項4から6のいずれか1項に記載の成膜装置において、前記光学系が、前記レーザ光を複数の光束に分岐させるレーザ分岐素子を備え、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉する成膜装置を提供する。
【0034】
また、請求項15に係る発明は、請求項12から14のいずれか1項に記載の成膜方法において、前記捕捉工程の際、前記レーザ光を複数の光束に分岐させた後、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉する成膜方法を提供する。
【0035】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、捕捉工程の際、レーザ分岐素子によりレーザ光を複数の光束に分岐させた後、これら複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットして液中に集光させる。これにより、複数の微小物質を任意の配列に並ばせた状態で一度に捕捉することができる。その後、固定工程によってこれら複数の微小物質を一度に被成膜基板上に固定させることができる。
特に、1つ1つ微小物質を固定させることなく、一度に複数の微小物質を所望する配列で固定させることができるので、作業時間をより短縮することができると共に使い易さが向上する。
【0036】
また、請求項8に係る発明は、請求項4から7のいずれか1項に記載の成膜装置において、前記制御部が、所定時間以上の間、前記所定電圧以上の電圧値で電圧を印加するように前記電圧印加手段を制御して、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させる成膜装置を提供する。
【0037】
また、請求項16に係る発明は、請求項12から15のいずれか1項に記載の成膜方法において、前記電圧印加工程の際、所定時間以上の間電圧印加を行って、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させる成膜方法を提供する。
【0038】
この発明に係る成膜装置及び成膜方法においては、電圧印加工程を行う際に所定時間以上の間電圧を印加して、金属微粒子を被成膜基板上に堆積させ続ける。これにより、微小物質をコーティングする金属膜の膜厚が徐々に厚くなり、微小物質を埋没させることができる。このように金属膜を厚く成膜することで、微小物質の鋳型を作ることができる。つまり、厚く成膜した金属膜を被成膜基板から剥すことで、微小物質の外表面形状が転写した金属膜を得ることができる。よって、この鋳型となった金属膜を観察することで、微小物質の観察を行うことができる。即ち、レプリカ法で観察することができる。特に、液中における微小物質の状態を金属膜に転写できるので、液中に存在している状態で微小物質を観察することができる。そのため微小物質がバイオ試料の場合には、観察に特に好適な方法である。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る成膜装置及び成膜方法によれば、液体の種類に関係なく成膜を行えるので、汎用性が高く、様々な分野への応用を期待することができる。また、単に液中環境にするだけで成膜を行うことができるので、低コスト化及び作業性の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る成膜装置及び成膜方法の第1実施形態を、図1から図4を参照して説明する。
本実施形態の成膜装置1は、液中にてITOガラス2上に金属膜3を成膜する装置であって、図1に示すように、ITOガラス(被成膜基板)2上に純水(液体)Wを介在させた状態で対向配置され、対向面4aに予め金属層5が形成されたカバーガラス(対向基板)4と、ITOガラス2と金属層5との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層5から金微粒子(金属微粒子)5aをITOガラス2に向けて電気泳動により移動させると共に、金微粒子5aをITOガラス2上に堆積させることで金属膜3を成膜する電圧印加手段6とを備えている。
【0041】
上記ITOガラス2及びカバーガラス4は、図示しない架台によって微小な隙間を空けた状態でそれぞれ支持されており、ITOガラス2とカバーガラス4との間に純水Wが表面張力等によって保持されている。なお、本実施形態では、ITO基板2とカバーガラス4との間に塩化ビニル薄膜(厚さが約20μm~50μm)7が形成されており、該塩化ビニル薄膜7によって純水Wの周囲を囲んでいる。但し、この塩化ビニル薄膜7を用いずに、表面張力だけによって純水Wを保持して構わない。
また、本実施形態の金属層5は、予めカバーガラス4の対向面4aに金(Au)をスパッタ法によって形成したものである。
【0042】
この金属層5には、電圧印加部6aに接続された一方の電気配線6bが電気的に接続されている。また、ITOガラス2にも同様に、電圧印加部6aに接続された他方の電気配線6bが電気的に接続されている。これにより、ITOガラス2と金属層5との間に電圧を印加できるようになっている。即ち、これら電圧印加部6a及び電気配線6bは、上記電圧印加手段6を構成している。特にこの電圧印加部6aは、印加する電圧値を自在に調整できるようになっている。
【0043】
次に、このように構成された成膜装置1を利用して、ITOガラス2上に金属膜3を成膜する成膜方法について説明する。
本実施形態の成膜方法は、対向面4aに予め金属層5が形成されたカバーガラス4を、純水Wを間に介在させた状態でITOガラス2上に対向配置させるセット工程と、該セット工程後、ITOガラス2と金属層5との間に所定電圧値以上の電圧を印加して、金属層5から金微粒子5aをITOガラス2に向けて電気泳動により移動させると共に、金微粒子5aをITOガラス2上に堆積させることで金属膜3を成膜する電圧印加工程とを備えている。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0044】
まず、対向面4aに予め金属層5を形成したカバーガラス4を用意した後、ITOガラス2上に純水Wを介在させた状態でカバーガラス4を配置するセット工程を行う。この際、金属層5が形成された対向面4aがITOガラス2の表面に対向するように、カバーガラス4をセットする。
【0045】
このセット工程が終了した後、図2に示すように、電圧印加手段6によりITOガラス2と金属層5との間に電圧を印加する。この際本実施形態では、金属層5側がプラス、ITOガラス2側がマイナスとなるように電圧を印加する。この電圧印加によって、金属層5はチャージされてプラスに帯電した状態となる。つまり、金属層5を構成する金微粒子5aが、徐々にプラスの電荷を帯びてくる。
一方、ITOガラス2も同様にチャージされて金属層5とは反対の極性であるマイナスに帯電した状態となる。そのため、ITOガラス2とカバーガラス4との間に介在された純水Wには、電界が形成される。
【0046】
そして、電圧印加部6aが所定電圧値以上の電圧を印加すると、上述した状態からさらにチャージが進み、帯電した金微粒子5aが図3に示すように、異なる極性に帯電されたITOガラス2に引き寄せられて対向面4aから剥離すると共に、液中に浮遊した状態となる。なお、この浮遊した金微粒子5aは、依然として帯電した状態となっている。そのため金微粒子5aは、液中に浮遊したと同時に、金属層5とITOガラス2との間に形成された電界によって電気泳動により純水W内をITOガラス2に向かって移動し始める。そして、移動した金微粒子5aは、図4に示すように、ITOガラス2の表面全体に次々と固定して堆積する。
【0047】
このように電圧印加工程を行うことで、カバーガラス4の対向面4aに予め形成した金属層5の金微粒子5aを電気泳動によりITOガラス2に向けて移動させると共に、ITOガラス2の表面全体に次々と堆積させることで金属膜3を成膜することができる。また、ITOガラス2に付着した金微粒子5aは、帯電した状態が解かれると同時に、ファンデルワールス力によって強固に固定される。その結果、液中にてITOガラス2上に金属膜3を成膜(コーティング)することができる。
特に、この方法は、電圧印加して金微粒子5aをカバーガラス4から剥離させると共に、剥離した金微粒子5aを電気泳動により移動させて金属膜3を成膜する方法であるので、電界が形成できれば液体は純水Wに限られず何でも構わない。例えば、生理食塩水等を利用しても構わない。よって、従来の電気めっき法とは異なり、液体の種類に関係なく成膜を行えるので、汎用性が高く、様々な分野への応用を期待することができる。
【0048】
また、液体としてバッファー溶液を用いたとしても成膜を行えるので、従来では困難であったバイオ試料の固定等にもこの方法を好適に応用することができる。また、真空スパッタ法のように、周囲の環境を真空にする等の特殊な環境にする必要がなく、単に液中環境にするだけで成膜を行うことができる。つまり、真空環境でしか成し遂げられなかった金属スパッタを、液中環境にて行うことができる。そのため、極端な低コスト化及び作業性の容易化を図ることができる。
特に、本実施形態では、スパッタ法によって金属層5が形成されたカバーガラス4を用いているので、電圧を印加したときに金微粒子5aを対向面4aから剥離させ易い。従って、効率良く成膜を行うことができ、成膜時間を短縮することができる。但し、スパッタ法に限られず、蒸着法やその他の方法によって金属層5を形成しても構わない。特に、蒸着法を利用することで、スパッタ法と同様の効果を奏することができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、金属層5側がプラス、ITOガラス2側がマイナスとなるように電圧を印加したが、この場合に限られず極性に影響されることはない。即ち、ITOガラス2側がプラスに帯電されようとマイナスに帯電されようと、上述した作用効果を同様に奏することができる。
【0050】
また、上記実施形態において、対向基板としてカバーガラス4を用いたが、カバーガラス4に代えて、ITOガラス2等の導電性基板を用いても構わない。このように導電性基板を用いることで、金属層5に電圧を印加した際に、導電性基板自体に電流を流して金属層5に電圧を印加することができる。よって、より効率良く且つ金属層5全体に均等に電圧を印加でき、成膜をより円滑にムラなく行うことができる。また、金微粒子5aの剥離によって、仮に金属層5が途中で分断されてしまったとしても、導電性基板を介して電流が流れるので、まだ剥離していない残りの金属層5に電圧を確実に印加することができる。よって、この点からもムラのない成膜を行うことができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る成膜装置及び成膜方法の第2実施形態を、図5から図16を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ITOガラス2に金属膜3を単に成膜しただけであったのに対し、第2実施形態では、ITOガラス2上に直径1μm程度のポリスチレン微粒子(微小物質)Pを任意のパターンに並べた固定した後成膜を行って、ポリスチレン微粒子Pを金属膜3でコーティングしながら強固に固定することができる点である。
【0052】
即ち、本実施形態の成膜装置10は、図5に示すように、上述した構成に加えさらに、レーザ光Lを照射すると共に照射したレーザ光Lを純水W内でスポットして集光させ、純水W内に予め投入されたポリスチレン微粒子Pを光放射圧によって捕捉する光学系11と、ハロゲンランプ(光源)23を有し、該ハロゲンランプ23から照射された光を利用して純水W内に投入されたポリスチレン微粒子Pを観察する観察系12と、ITOガラス2を対向面4aに平行なXY方向及び対向面4aに垂直なZ方向の3方向に移動させて、捕捉されたポリスチレン微粒子PをITOガラス2上の所定位置に近接させる移動手段13と、これら各構成品を総合的に制御する制御部14とを備えている。
【0053】
本実施形態のITOガラス2は、フレーム20に支持された状態でステージ21上に隙間を空けて固定されている。そして、このステージ21とITOガラス2との間の隙間に、ミラー22が配置されている。このミラー22は、ステージ21の近傍に配置されたハロゲンランプ23から照射された光をITOガラス2に向けて反射している。
ステージ21は、Zステージ25上に固定されたXYステージ26上に固定されている。これらXYステージ26及びZステージ25は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる圧電素子であり、ドライブ回路27から電圧が印加されると、その電圧印加量及び極性に応じて、XY方向及びZ方向の3方向に対して微小移動するようになっている。つまり、XYステージ26及びZステージ25は、微動ステージとして機能する。
【0054】
また、上記Zステージ25は、XYZステージ28上に固定されている。このXYZステージ28は、ボールネジの駆動によって3方向に移動するものであり、上記XYステージ26、Zステージ25及びステージ21を一体的に粗動移動させるようになっている。つまり、XYZステージ28は、粗動ステージとして機能する。
このように、ITOガラス2は、XYZステージ28による粗動移動と、XYステージ26及びZステージ25による微動移動とによって、3方向に移動させられるようになっている。即ち、これらXYステージ26、Zステージ25、XYZステージ28及びドライブ回路27は、上記移動手段13を構成している。
【0055】
上記光学系11は、レーザ光L(例えば、波長500nm程度のアルゴンイオンレーザ)を照射するレーザ光源30と、照射されたレーザ光Lをカバーガラス4の上方から対向面4aに対して略直角に入射させるように反射するミラー31と、該ミラー31で反射されたレーザ光Lを純水W内でスポットとして集光させる対物レンズ(例えば、NA=1.25、倍率100倍)32とを備えている。これにより、純水W内に投入されているポリスチレン微粒子Pを、光放射圧を利用して捕捉することが可能とされている。これについては、後に詳細に説明する。
【0056】
また、レーザ光源30とミラー31との間におけるレーザ光Lの光路上には、ハーフミラー33が配置されている。これにより、レーザ光源30から照射されたレーザ光Lは、一部がハーフミラー33を通過した後、ミラー31に入射するようになっている。
【0057】
またハーフミラー33の近傍には、ハロゲンランプ23から照射された光を利用してポリスチレン微粒子Pを観察するための集光レンズ35と、レーザ光Lをカットするフィルタ36と、CCD等の撮像素子37と、モニタ38とが配置されている。
つまり、ミラー22によってITOガラス2に向けて反射されたハロゲンランプ23からの光は、ITOガラス2を透過した後、純水Wに入射してポリスチレン微粒子Pに当たり散乱している。この散乱光は、対物レンズ32を通過した後、ミラー31で反射されてハーフミラー33に入射する。そして、その一部がハーフミラー33によって反射した後、集光レンズ35に入射する。なおこの集光レンズ35は、撮像素子37に焦点が合うように調整されている。そして、集光レンズ35で集光された光は、フィルタ36を通過した後、撮像素子37によって撮像される。この際、フィルタ36はレーザ光Lと同じ波長を有する光をカットしているので、ポリスチレン微粒子Pに当たって散乱した光だけを撮像素子37で撮像できるようになっている。そして、撮像素子37で撮像された画像は、モニタ38に表示される。
【0058】
これにより、純水Wに投入されたポリスチレン微粒子Pをモニタ38で観察することができるようになっている。即ち、上述したハーフミラー33、集光レンズ35、フィルタ36、撮像素子37及びモニタ38は、上記観察系12を構成している。
【0059】
上記制御部14は、光学系11で捕捉されたポリスチレン微粒子PがITOガラス上の所定位置に近接したときに、一旦所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせて、ポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に引き寄せて固定させ、その後、電圧値を所定電圧値以上に上げた状態で電圧印加を行わせて、ポリスチレン微粒子Pが固定されたITOガラス2上に金属膜3を成膜させるように電圧印加手段6の制御を行っている。
また本実施形態では、制御部14が所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値以上の電圧値で電圧印加を行わせるときとで、印加する電圧の極性が逆になるように電圧印加手段6を制御する場合を例にして説明する。但し、この場合に限定されず、同じ極性となるように電圧を印加しても構わない。
【0060】
次に、このように構成された成膜装置10を利用して、ポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に任意のパターンで並べて固定した後、成膜を行ってポリスチレン微粒子Pを金属膜3で強固に固定しながらコーティングする成膜方法について説明する。
本実施形態の成膜方法は、セット工程と電圧印加工程との間に、投入工程と、捕捉工程と、位置調整工程と、固定工程とを行う方法である。
投入工程は、セット工程時に純水W内にポリスチレン微粒子Pを投入する工程である。また、捕捉工程は、レーザ光Lを照射すると共に照射したレーザ光Lを純水W内でスポットとして集光させ、ポリスチレン微粒子Pを光放射圧によって捕捉する工程である。位置調整工程は、ITOガラス2をXY方向及びZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉されたポリスチレン微粒子PをITOガラス2上の所定位置に近接させる工程である。また、固定工程は、ITOガラス2と金属層5との間に所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧を印加して、捕捉されたポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に引き寄せて固定させる工程である。
これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0061】
まず、セット工程を行う際に、純水W内に予め複数のポリスチレン微粒子Pを投入する投入工程を行う。この投入工程後、カバーガラス4をセットするセット工程を行う。これにより、図6に示すように、カバーガラス4とITOガラス2との間に、ポリスチレン微粒子Pが投入された純水Wを密閉することができる。
【0062】
そしてセット工程が終了した後、図5に示すように、ハロゲンランプ23を点灯させると共に、ハロゲンランプ23から照射された光を利用して純水W内のポリスチレン微粒子Pの状態を観察系12により光学的に観察する。この際、複数のポリスチレン微粒子Pは、純水W内で浮遊している状態となっている。この様子は、モニタ38に表示された画像により確認することができる。
【0063】
ここで、液中環境下におかれた物体表面は、液体の種類やpH等の状況によりプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっているが、本実施形態では、物体表面がマイナスに帯電されてる場合を例に挙げて説明する。
そのため、純水W内に投入されたポリスチレン微粒子Pの表面、並びに、ITOガラス2の表面についても同様に、図7に示すように、マイナスに帯電した状態となっている。一方、物体表面の近傍は、帯電したマイナスを打ち消すようにプラスに帯電した状態となっている。そのため、ポリスチレン微粒子Pの表面近傍、並びに、ITOガラス2の表面近傍は、プラスに帯電した状態となっている。つまり、マイナスに帯電した層とプラスに帯電した層とが重なった電気二重層が形成されている。
【0064】
よって、液中に浮遊しているポリスチレン微粒子PがITOガラス2に接近すると、互いの電気二重層が重なり合うので、静電気的相互作用によって斥力が働く。従って、ポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2から離れてしまう。また、金属層5及び他のポリスチレン微粒子Pに関しても同様である。従って、純水W内に投入されたポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2や金属層5や他のポリスチレン微粒子Pに付着することなく、液中を浮遊した状態となっている。
【0065】
次いで、観察系12によって液中内の状態を確認しながら、光学系11によってレーザ光Lを純水W内にスポットとして集光させる。これにより、図8に示すように、液中内を浮遊しているポリスチレン微粒子Pを1つだけ光放射圧を利用して捕捉(トラップ)することができる。具体的には、図9(a)に示すように、ポリスチレン微粒子Pにレーザ光Lをスポットとして集光させると、該レーザ光Lは媒質等の違いから屈折し、光の運動量がPa、Pbだけ変化する。このときポリスチレン微粒子Pには、運動量を保存しようと、図9(b)に示すように、Pa、Pbと逆向きの力Fa、Fbの合力Fが作用する。その結果、ポリスチレン微粒子Pは、焦点に向かって移動するので捕捉される。このように光の放射圧を利用してポリスチレン微粒子Pを捕捉することができる。
【0066】
この捕捉工程後、制御部14はXYZステージ28を適宜移動させてITOガラス2を粗動移動させると共に、ドライブ回路27に指示を出してXYステージ26及びZステージ25をXYZの3方向に適宜微小移動させて、図8に示すように、ITOガラス2上の所定位置に捕捉したポリスチレン微粒子Pを近接させる位置調整工程を行う。ところが、ポリスチレン微粒子Pを捕捉して近づける力よりも上述した斥力の方が強いので、図10に示すように、これ以上ポリスチレン微粒子PをITOガラス2に近づけることができない。
【0067】
そこで制御部14は、ポリスチレン微粒子Pが上述したようにITOガラス2上の所定位置に近接したときに、図11に示すように、所定電圧値よりも小さい電圧値で電圧を印加するように電圧印加手段6を作動させる。なおこの際、ITOガラス2がプラスに帯電するように電圧を印加させる。
これによりITOガラス2は、ポリスチレン微粒子Pと異なるプラスに帯電するので電気二重層の重なりによる斥力がなくなる。よってポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2に引き寄せられるように移動して、図12に示すように、ITOガラス2上に固定される。特に、ポリスチレン微粒子PとITOガラス2との距離が近接した状態になると、両者の間にファンデルワールス力が強く作用するので、ポリスチレン微粒子Pは一層引き寄せられた後、固定される。この固定工程によって、浮遊している複数のポリスチレン微粒子Pの中から、先ほど捕捉したポリスチレン微粒子PのみをITOガラス2上の所定位置に確実に固定させることができる。
【0068】
ここで、次に行う電圧印加工程を行う前に、上述した捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行って、図13に示すように、ITOガラス2上にポリスチレン微粒子Pを任意のパターンで複数固定させる。なお、この図13では、4個のポリスチレン微粒子Pを密着させた状態で固定した例を示している。
【0069】
このようにポリスチレン微粒子Pを任意のパターンで固定させた後、制御部14は、電圧値を所定電圧値以上に上げた状態で電圧印加するように電圧印加手段6を作動させる。この際、本実施形態では、図14に示すように固定工程時の逆の極性で電圧を印加する。
この電圧印加工程を行うことで、第1実施形態で説明したように、カバーガラス4の対向面4aに形成された金属層5の金微粒子5aを電気泳動によりITOガラス2に向けて移動させ、ポリスチレン微粒子Pガ固定されたITOガラス2上の全体に堆積させることができる。これにより、ポリスチレン微粒子Pを金属膜3でコーティングすることができる。特に、図15に示すように、ITOガラス2上に固定しているポリスチレン微粒子Pの周囲に金微粒子5aが堆積するので、ポリスチレン微粒子Pをさらに強固に固定することができる。このように、ITOガラス2上に単に金属膜3を成膜するだけでなく、ポリスチレン微粒子Pを液中で強固に固定することができる。
【0070】
しかも、本実施形態では、電圧印加固定を行う際に、固定工程時と極性が異なるように電圧を印加している。そのため、液中に浮遊している残りのポリスチレン微粒子P(マイナスに帯電している)をITOガラス2側に引き寄せることなく、金微粒子5aだけをITOガラス2に向けて電気泳動により移動させて堆積させることができる。従って、図15に示すように、ITOガラス2上に固定させたポリスチレン微粒子Pだけを確実に固定することができる。
【0071】
特に、金微粒子5aを利用してポリスチレン微粒子Pを強固に固定しているので、ITOガラス2を液中から取り出して乾燥させたとしても、純水Wの乾燥過程で生じる気液界面における表面張力の影響を受けることがない。通常、単にポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に固定させただけでは、図16に示すように、純水Wを乾燥させた際に気液界面の移動に伴ってポリスチレン微粒子Pも移動してしまう。
ところが本実施形態では、乾燥過程で気液界面が移動したとしても、ポリスチレン微粒子PはITOガラス2の表面全体に堆積している金微粒子5aによって周囲が囲まれているので、気相界面につられて移動したり、変形したりする恐れがない。よって、液中内で任意のパターンで固定させたポリスチレン微粒子Pをそのままのパターンで大気中に取り出すことができる。
【0072】
従って、マイクロスケールの微粒子の組み立てやMEMS等の微小デバイス等の組み立てに応用することができる。しかも、大気中に取り出されたポリスチレン微粒子Pは、金微粒子5aによってコーティングされているので、直ちに電子顕微鏡により観察を行うことができる。
【0073】
ここで、液体を超臨界状態で乾燥させる装置が従来から知られている。これは、超臨界乾燥方法と呼ばれ、気相と液相との境界面が存在せず、表面張力が作用しない状態で乾燥を行う方法である。この方法によれば、同様に、液中内で任意のパターンで固定させたポリスチレン微粒子Pをそのままの状態で大気中に取り出すことができる。ところがこの方法は、装置自体が高価なものであるので、かなりの高コストになってしまい、安易に使用できるものではなかった。
これに対して、本実施形態の成膜装置10及び成膜方法によれば、上述したように特殊な構成が不要であり、容易且つ低コストでポリスチレン微粒子Pを大気中に取り出すことができる。
【0074】
また、従来の超臨界乾燥方法は、高温且つ高圧環境下で乾燥を行う方法であるので、環境条件が厳しくなってしまう。例えば、水を乾燥させる場合には、臨界温度が373.95℃、臨界圧力が22.064MPa、臨界密度が322kg/mという厳しい条件となってしまう。特に、微小物質として、上述したポリスチレン微粒子Pではなくバイオ試料を用いた場合には、超臨界乾燥を行う従来の装置では、厳しい臨界条件ためのバイオ試料がダメージを受けてしまい、使用することができなかった。
これに対して、本実施形態の成膜装置10及び成膜方法によれば、単に液中で行うだけの簡単な方法であるので、バイオ試料に何ら影響を与えることなく、生に近い状態で容易に大気中に取り出すことができる。従って、生体細胞や微生物等を基板に配列固定させる際に本発明を利用することができ、顕微鏡観察や標本作製への応用も可能である。
【0075】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る成膜装置及び成膜方法の第3実施形態を、図17を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、ポリスチレン微粒子Pを任意のパターンでITOガラス2に固定させる際に、捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行ったが、第3実施形態では一度で行うことができる点である。
【0076】
即ち本実施形態の光学系41は、レーザ光Lを複数の光束に分岐させる光変調器(レーザ分岐素子)42を備えており、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、ポリスチレン微粒子Pを一度に複数捕捉することができるように構成されている。
具体的に本実施形態の光学系41は、レーザ光源30とハーフミラー33との間に、レーザ光源30側から順に、ビームエキスパンダ43、偏光板44、上記光変調器42及びレンズ系45を備えている。ビームエキスパンダ43は、レーザ光源30から照射されたレーザ光Lのビーム径を拡大させている。偏光板44は、ビーム系が拡大されたレーザ光Lが有する偏光成分のうち、決められた成分(例えば、P成分)の直線偏光の光を透過させている。光変調器42は、光の位相を制御するデバイスであって、偏光板44を透過してきたレーザ光Lを、予め入力された配列パターンにしたがって光束を複数に分岐させている。レンズ系45は、複数の光束に分岐された光束をそれぞれ元のビーム径に集光させている。
【0077】
このように構成された光学系41を有する成膜装置40によれば、捕捉工程の際、光変調器42によりレーザ光Lを複数の光束に分岐させた後、これら複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして液中に集光させることができる。これにより、複数のポリスチレン微粒子Pを任意の配列に並ばせた状態で一度に捕捉することができる。その後、固定工程によってこれら複数のポリスチレン微粒子Pを一度にITOガラス2に固定させることができる。
特に、1つ1つポリスチレン微粒子Pを固定させることなく、一度に複数のポリスチレン微粒子Pを所望する配列パターンで固定させることができるので、作業時間をより短縮することができると共に使い易さが向上する。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、被成膜基板の一例としてITOガラス2を例に挙げて説明したが、ITOガラス2に限定されるものではない。また、カバーガラス4の対向面4aにスパッタ法で金属層5を形成したが、スパッタ法に限られず、蒸着法等により金属層5を形成しても構わない。また、金属層5は、金に限られるものではない。
【0080】
また、上記第2実施形態及び第3実施形態では、純水Wに投入する微小物質をポリスチレン微粒子Pとしたが、これに限られず、その他の高分子粒子やバイオ試料等でも構わない。
【0081】
また、上記第2実施形態及び第3実施形態では、固定工程の際に、ITOガラス2側がプラスに帯電するように電圧を印加したが、純水W内に微小物質を投入したときに、該微小物質がプラスに帯電するような処理を施したような場合には、ITOガラス2側がマイナスに帯電するように電圧を印加すれば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
また、上記第2実施形態及び第3実施形態では、固定工程時と電圧印加工程時とで極性が異なるように電圧を印加したが、この場合に限定されず、同じ極性となるように電圧を印加しても構わない。
【0082】
更に、上記第2実施形態及び第3実施形態において電圧印加工程を行う際に、所定時間以上の間電圧印加を行って、ポリスチレン微粒子Pを埋没させるように金微粒子5aを堆積させて金属膜3をコーティングしても構わない。
即ち、所定時間以上の間電圧を印加し続け、ITOガラス2上に金微粒子5aを堆積させ続ける。これにより、ポリスチレン微粒子Pをコーティングする金属膜3の膜厚が徐々に厚くなり、ITOガラス2上に固定していたポリスチレン微粒子Pを埋没させることができる。このように金属膜3を厚く成膜することで、ポリスチレン微粒子Pの鋳型を作ることができる。つまり、厚く成膜した金属膜3をITOガラス2から剥すことで、ポリスチレン微粒子Pの外表面形形状が転写した金属膜3を得ることができる。よって、この鋳型となった金属膜3を観察することで、ポリスチレン微粒子Pの観察を行うことができる。即ち、レプリカ法で観察することができる。
特に、液中におけるポリスチレン微粒子Pの状態を金属膜3に転写できるので、液中に存在している状態でポリスチレン微粒子Pを観察することができる。特に、微小物質としてポリスチレン微粒子Pではなくバイオ試料を採用した場合には、観察に好適な方法である。
【0083】
(実施例)
次に、上記第2実施形態に基づいて、実際に実験を行った実施例について説明する。なお、以下の条件で実験を行った。
まず、微小物質として直径1μmのポリスチレン微粒子Pを用いた。また、波長λ=514nmのアルゴンイオンレーザを照射するレーザ光源30を用いると共に、その出力を60mWとした。また、固定工程時の印加電圧を2Vとした。この際、ITOガラス2がプラスに帯電するように電圧を印加した。また、ITOガラス2とカバーカラス4との間隔を、スペーサ等を利用して60μmに調整した。
【0084】
この条件のもと、複数のポリスチレン微粒子PをITOガラス2上にパターニングして固定させた。その結果、図18に示すように、ポリスチレン微粒子Pを「静」の文字となるようにきれいにパターニングできたことを確認した。また、図19に示すように、「SU」の文字となるようにパターニングできたことも確認できた。
【0085】
次に、ITOガラス2がマイナスに帯電するように極性を変えて電圧印加工程を行い、金微粒子5aをITOガラス2上に堆積させてコーティングを行った。この際、印加電圧は8Vであり、電圧印加時間を1分とした。
電圧印加工程後、ITOガラス2を大気中に取り出して乾燥させ、電子顕微鏡で観察したところ図18及び図19に示すパターンのまま、ポリスチレン微粒子PがITOガラス2上に固定されていることを確認できた。
【0086】
一方、上述した固定工程後、電圧印加工程を行わずに、「SU」のパターンでポリスチレン微粒子Pを固定させたITOガラス2を大気中に取り出して乾燥させた場合には、図20に示すように、配列が崩れてしまったポリスチレン微粒子Pが確認された。これは、乾燥に伴う気相界面の移動によって、ポリスチレン微粒子Pも移動してしまったことが原因と考えられる。
【0087】
これらの結果から、本発明に係る成膜装置10及び成膜方法の効果が確認でき、簡単な構成且つ低コストで、液中で任意のパターンに配列したポリスチレン微粒子Pをそのままの状態で大気中に取り出すことができるという、従来にはない特別な効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に係る成膜装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す金属層とITOガラスとの間に電圧を印加した状態を示す図である。
【図3】図2に示す電圧印加によって、金属層の金微粒子が電気泳動によりITOガラスに向けて移動すると共に、ITOガラス上に堆積し始めている状態を示す図である。
【図4】ITOガラス上に金微粒子が次々と堆積して、金属膜が成膜された状態を示す図である。
【図5】本発明に係る成膜装置の第2実施形態を示す構成図である。
【図6】図5に示す成膜装置の一部拡大図であって、純水内にポリスチレン微粒子が浮遊している状態を示す図である。
【図7】純水内に浮遊しているポリスチレン微粒子に作用する静電気的相互作用エネルギを説明するための図である。
【図8】純水内に浮遊しているポリスチレン微粒子にレーザ光を集光させて、光放射圧により捕捉した状態を示す図である。
【図9】光放射圧によってポリスチレン微粒子を捕捉する原理を示す図であって、(a)はポリスチレン微粒子にレーザ光を集光させた図であり、(b)はポリスチレン微粒子に作用する力のベクトル図である。
【図10】図8に示す状態の後、ポリスチレン微粒子をITOガラスに近づけた状態を示す図である。
【図11】図10に示す状態の後、金属層とITOガラスとの間に電圧を印加させた状態を示す図である。
【図12】電圧を印加した結果、捕捉したポリスチレン微粒子をITOガラスに固定させた状態を示す図である。
【図13】ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を固定させた状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態の後、再び金属層とITOガラスとの間に電圧を印加させて、ITOガラス上に金微粒子を堆積させている状態を示す図である。
【図15】ITOガラス上に金微粒子が堆積して、ポリスチレン微粒子が強固に固定された状態で金属膜によりコーティングされた状態を示す図である。
【図16】従来の方法を説明するための図であって、ITOガラス上にポリスチレン微粒子を単に固定させた状態で、液体を乾燥させている状態を示す図である。
【図17】本発明に係る成膜装置の第3実施形態を示す構成図である。
【図18】本発明に係る成膜装置の第2実施形態に基づいて実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を「静」の文字となるようにパターニングした状態で固定させた図である。
【図19】本発明に係る成膜装置の第2実施形態に基づいて実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を「SU」の文字となるようにパターニングした状態で固定させた図である。
【図20】従来の方法で実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、図19に示すITOガラスを、大気中に取り出して乾燥させた後の状態のポリスチレン微粒子を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
L レーザ光
P ポリスチレン微粒子(微小物質)
W 純水(液体)
1、10、40 成膜装置
2 ITOガラス(被成膜基板)
3 金属膜
4a 対向面
4 カバーガラス(対向基板)
5 金属層
5a 金微粒子(金属微粒子)
6 電圧印加手段
11、41 光学系
12 観察系
13 移動手段
14 制御部
42 光変調器(レーザ分岐素子)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
19