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明細書 :微小物質固定装置及び微小物質固定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4714877号 (P4714877)
公開番号 特開2008-055349 (P2008-055349A)
登録日 平成23年4月8日(2011.4.8)
発行日 平成23年6月29日(2011.6.29)
公開日 平成20年3月13日(2008.3.13)
発明の名称または考案の名称 微小物質固定装置及び微小物質固定方法
国際特許分類 B01J  19/12        (2006.01)
G02B  21/32        (2006.01)
B81C  99/00        (2010.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI B01J 19/12 B
G02B 21/32
B81C 99/00
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 16
全頁数 22
出願番号 特願2006-236599 (P2006-236599)
出願日 平成18年8月31日(2006.8.31)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成18年3月1日 社団法人 精密工学会発行の「2006年度 精密工学会春季大会学術講演会講演論文集」に発表
審査請求日 平成21年6月23日(2009.6.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】岩田 太
【氏名】山本 龍二
【氏名】伊東 聡
【氏名】佐々木 彰
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100101465、【弁理士】、【氏名又は名称】青山 正和
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】安積 高靖
参考文献・文献 特開2003-071800(JP,A)
特開平06-123886(JP,A)
特開平05-018887(JP,A)
特開2005-349496(JP,A)
調査した分野 B01J 10/00-12/02、14/00-19/32
B81B 1/00- 7/04
B81C 1/00-99/00
B82B 3/00
G02B 21/32
JSTPlus、JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
液体内に予め投入された微小物質を基板上に固定する微小物質固定装置であって、
前記基板上に前記液体を介在させた状態で対向配置され、少なくとも対向面が導電性とされた対向基板と、
レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する光学系と、
光源を有し、該光源から照射された光を利用して前記微小物質を観察する観察系と、
前記基板を、前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に移動させ、捕捉された前記微小物質を基板上の所定位置に近接させる移動手段と、
前記基板と前記対向面との間に所定電圧値の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記微小物質が前記基板上の所定位置に近接したときに電圧印加を行わせて、微小物質を基板上に引き寄せて固定させるように前記電圧印加手段を制御する制御部とを備えていることを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微小物質固定装置において、
前記対向基板が、導電性基板であることを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微小物質固定装置において、
前記制御部は、前記光学系、前記移動手段及び前記電圧印加手段を制御して、前記基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させることを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、
前記光学系は、前記レーザ光を複数の光束に分岐させるレーザ分岐素子を備え、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉することを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、
前記対向面には、金属層が形成されており、
前記制御部は、前記電圧印加を行わせた後、電圧値を前記所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧印加を行わせ、前記金属層から金属微粒子を前記微小物質が固定された前記基板に向けて電気泳動により移動させると共に、基板上に金属微粒子を堆積させることで金属膜を成膜させるように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の微小物質固定装置において、
前記金属層は、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に形成されていることを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の微小物質固定装置において、
前記制御部は、前記所定電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値よりも大きな電圧値で電圧印加を行わせるときとで、極性が逆になるように前記電圧印加手段を制御することを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、
前記制御部は、所定時間以上の間、前記所定電圧よりも大きな電圧値で電圧を印加するように前記電圧印加手段を制御して、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させることを特徴とする微小物質固定装置。
【請求項9】
液体内に予め投入された微小物質を基板上に固定する微小物質固定方法であって、
少なくとも対向面が導電性とされた対向基板を、前記微小物質が予め投入された前記液体を間に介在させた状態で前記基板上に対向配置させるセット工程と、
該セット工程後、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する捕捉工程と、
該捕捉工程後、前記基板を前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉された前記微小物質を基板上の所定位置に近接させる位置調整工程と、
該位置調整工程後、前記基板と前記対向面との間に所定電圧値の電圧を印加して、捕捉された前記微小物質を基板上に引き寄せて固定させる固定工程とを備えていることを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の微小物質固定方法において、
前記対向基板が、導電性基板であることを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の微小物質固定方法において、
前記捕捉工程、前記位置調整工程及び前記固定工程を繰り返し行って、前記基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させることを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、
前記捕捉工程の際、前記レーザ光を複数の光束に分岐させた後、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉することを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、
前記対向面には、金属層が形成されており、
前記固定工程後、電圧値を前記所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧印加を行って、前記金属層から金属微粒子を前記微小物質が固定された前記基板に向けて電気泳動により移動させると共に、基板上に金属微粒子を堆積させることで金属膜を成膜する電圧印加工程を行うことを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の微小物質固定方法において、
前記金属層は、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に形成されていることを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の微小物質固定方法において、
前記電圧印加工程の際、前記固定工程時の逆の極性で電圧を印加することを特徴とする微小物質固定方法。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、
前記電圧印加工程の際、所定時間以上の間電圧印加を行って、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させることを特徴とする微小物質固定方法。


発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、液中にて基板上に微小物質を固定する微小物質固定装置及び微小物質固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液中に存在する微小物質、例えば、ポリスチレン微粒子や細胞等を捕捉する技術として、レーザ光を微小物質に集光させ、光放射圧を利用して捕捉する技術が従来から知られている。これは、光トラップとも呼ばれるものであり、媒質の違いによって屈折した光の運動量に起因した力を利用して微小物質を捕捉する方法である。
ところで、現在ではマイクロマシンやMEMS(Micro Electro Mechanical System)等のマイクロ物体の組み立てに応用するために、微小物質を基板上の所定位置に固定させると共に、所定の形状にパターニングすること等が求められている。そのため、上述したように液中で微小物質を捕捉した後、捕捉した微小物質を基板上に固定することが重要な課題とされている。
【0003】
ところが、液中に存在する微小物質は、通常帯電している状態であるので、基板に容易に固定することができなかった。
つまり、液中環境下におかれた物体表面は、液体の種類やpH等の状況によりプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっている。なお、説明を判り易くするため、ここでは物体表面がマイナスに帯電している場合を例に挙げて以下に説明する。
そのため、液中に存在する微小物質の表面や基板の表面についても同様に、マイナスに帯電した状態となっている。一方、物体表面の近傍は、帯電したマイナスを打ち消すようにプラスに帯電した状態となっている、そのため、微小物質の表面近傍並びに基板の表面近傍は、プラスに帯電した状態となっている。つまり、マイナスに帯電した層とプラスに帯電した層とが重なった電気二重層が形成されている。よって、液中に浮遊している微小物質が基板に接近すると、互いの電気二重層が重なり合うので、静電気的相互作用によって斥力が働く。また、この現象は、基板だけでなく他の微小物質に対しても同様である。従って、微小物質は基板や他の微小物質に付着することなく、液中を浮遊した状態となっている。
【0004】
ここで、光トラップによって微小物質を捕捉する力は、ピコニュートンレベルの力であるので、捕捉した微小物質を基板に近づけたとしても、上述したように電気二重層が重なって生じた斥力によって跳ね返されてしまう。従って、単に捕捉して近づけただけでは微小物質を基板に固定することはできなかった。そこで、微小物質を基板に固定するために、幾つかの方法が考えられている。
例えば、その1つとして、光トラップした微小物質を基板に極力近づけた状態でパルスレーザを照射して、微小物質を基板に溶着する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。この方法によれば、微小物質を加熱により溶解させて基板に固定するので、斥力を受けたとしても固定を行うことができる。
【0005】
また、別の方法として、光硬化性材料を含む液体内に微小物質を入れた後、光トラップした微小物質を基板に極力近づけた状態で微小物質周辺に光を照射して集光させ、該光によって硬化した樹脂で微小物質を固定する方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。この方法によれば、硬化した樹脂で基板と微小物質とを繋ぎとめて固定するので、斥力を受けたとしても固定を行うことができる。
【0006】
また、さらに別な方法として、光トラップした微小物質を予め帯電した基板に近づけて、静電気的相互作用を用いて固定する方法が知られている(例えば、非特許文献3参照)。この方法は、予め基板がプラスに帯電するように調整されている。これにより、光トラップした微小物質を基板に近づけると、該微小物質が斥力を受けるのではなく、逆に基板に引き寄せられる。その結果、微小物質を基板に固定することができる。

【非特許文献1】Jaihyung.Won、他3名、「Photothermal fixation of laser-trapped polymer microparticles on polymer substrates」、APPLIED PHYSICS LETTERS、1999年9月13日、VOLUME75、NUMBER11、P1506-P1508
【非特許文献2】Syoji Ito、他2名、「Optical patterning and photochemical fixation of polymer nanoparticles on glass substrates」、APPLIED PHYSICS LETTERS、2001年4月23日、VOLUME78、NUMBER17、P2566-P2568
【非特許文献3】J,P,Hoogenboom、他4名、「Patterning surfaces with colloidal particles using optical tweezers」、APPLIED PHYSICS LETTERS、2002年6月24日、VOLUME80、NUMBER25、P4828-P4830
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の方法では以下の課題が残されている。
即ち、微小物質を溶着により固定する方法は、レーザ光により微小物質を加熱する必要があるので、微小物質に与えるダメージが大きく、変形や変質等が生じる恐れがあった。特に、微小物質が生体物質等のバイオ試料である場合には、使用することができなかった。また、融点が高い微小物質の場合には固定することが難しく、微小物質の種類が制限されてしまうものであった。加えて、装置自体が非常に高価なものであり、安易に使用することができず、製造コストが高くなってしまうものであった。
【0008】
また、光硬化性樹脂を利用して固定する方法は、予め光硬化性樹脂を含む液体内でしか固定することができないので、液体の種類が限定されてしまい、使い難いものであった。また、微小物質の種類に応じて最適な液体を使用するといったことができなかった。また、光を集光させた近傍の溶液が全て硬化してしまうので、狙った位置に高精度に光を集光させる必要があった。場合によっては、確実に微小物質を固定できなかったり、微小物質を樹脂の内部に埋没させてしまったりする可能性もあり、取り扱いが難しいものであった。更には、周囲を暗くする必要があるので、作業環境が限定されてしまうものであった。
【0009】
また、帯電した基板を利用して固定する方法は、予め基板を帯電させておく必要があるので、無駄に電力を使用してしまい、製造コストが高くなってしまうものであった。また、光トラップして基板に近づけた微小物質以外の微小物質が基板に接近してしまった場合、該微小物質も基板に引き寄せられて固定されてしまう恐れがあった。つまり、意図しない微小物質も固定されてしまう恐れがあった。
【0010】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、液中に存在する複数の微小物質の中から任意に選択した微小物質のみを、該微小物質に何ら影響を与えることなく確実且つ容易に基板上に固定でき、しかも、作業環境や液体の種類に影響を受けることなく、あらゆる種類の微小物質をコストをかけずに基板上に固定することができる微小物質固定装置、及び、微小物質固定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、液体内に予め投入された微小物質を基板上に固定する微小物質固定装置であって、前記基板上に前記液体を介在させた状態で対向配置され、少なくとも対向面が導電性とされた対向基板と、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する光学系と、
光源を有し、該光源から照射された光を利用して前記微小物質を観察する観察系と、前記基板を、前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に移動させ、捕捉された前記微小物質を基板上の所定位置に近接させる移動手段と、前記基板と前記対向面との間に所定電圧値の電圧を印加する電圧印加手段と、前記微小物質が前記基板上の所定位置に近接したときに電圧印加を行わせて、微小物質を基板上に引き寄せて固定させるように前記電圧印加手段を制御する制御部とを備えている微小物質固定装置を提供する。
【0012】
また、請求項9に係る発明は、液体内に予め投入された微小物質を基板上に固定する微小物質固定方法であって、少なくとも対向面が導電性とされた対向基板を、前記微小物質が予め投入された前記液体を間に介在させた状態で前記基板上に対向配置させるセット工程と、該セット工程後、レーザ光を照射すると共に照射したレーザ光を前記液体内でスポットとして集光させ、前記微小物質を光放射圧によって捕捉する捕捉工程と、該捕捉工程後、前記基板を前記対向面に平行なXY方向及び対向面に垂直なZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉された前記微小物質を基板上の所定位置に近接させる位置調整工程と、該位置調整工程後、前記基板と前記対向面との間に所定電圧値の電圧を印加して、捕捉された前記微小物質を基板上に引き寄せて固定させる固定工程とを備えている微小物質固定方法を提供する。
【0013】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、液体内に予め投入された微小物質(例えば、直径1μm程度のポリスチレン微粒子等の高分子粒子や、バイオ試料等)を基板上に確実且つ容易に固定することができる。
【0014】
まず、基板上に純水等何らかの液体を介在させた状態で、対向面を基板の表面に向けて対向基板を配置するセット工程を行う。この際、対向基板は、少なくとも対向面が導電性となっている。また、液体内には、予め複数の微小物質が投入されている。このセット工程が終了した後、光源から照射された光を利用して液体内の状態を観察系によって光学的に観察する。この際、複数の微小物質は、液中に浮遊している状態となっている。
【0015】
ここで、液中環境下におかれた物体表面は、液体の種類やpH等の状況によりプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっている。なお、説明を判り易くするため、ここでは物体表面がマイナスに帯電している場合を例に挙げて以下に説明する。
そのため、液体内に投入された微小物質の表面、並びに、対向面及び基板の表面についても同様に、マイナスに帯電した状態となっている。一方、物体表面の近傍は、帯電したマイナスを打ち消すようにプラスに帯電した状態となっている。そのため、微小物質の表面近傍、並びに、対向面及び基板の表面近傍は、プラスに帯電した状態となっている。つまり、電気二重層が形成されている。よって、液中に浮遊している微小物質が基板に接近すると、互いの電気二重層が重なり合うので、静電気的相互作用によって斥力が働く。従って、微小物質は基板から離れてしまう。このように、液体内に投入された微小物質は、基板や対向面に付着することなく、液中を浮遊した状態となっている。
【0016】
次いで、観察系によって液中内の状態を確認しながら、光学系によって液体内にレーザ光をスポットとして集光させる。これにより、液中内を浮遊している微小物質を1つだけ光放射圧を利用して捕捉することができる。この捕捉工程後、制御部は移動手段を制御して基板をXY方向及びZ方向の3方向に適宜移動させ、基板上の所定位置に捕捉した微小物質を近接させる位置調整工程を行う。この際、微小物質を捕捉して近づける力よりも、上述した斥力の方が強いので、これ以上微小物質を基板に近づけることができない。
【0017】
そこで制御部は、微小物質が基板上の所定位置に近接したときに、所定電圧値で電圧を印加するように電圧印加手段を作動させる。なおこの際、基板がプラスに帯電するように電圧を印加させる。これにより基板は、微小物質と異なるプラスに帯電するので電気二重層の重なりによる斥力がなくなる。よって微小物質は、基板に引き寄せられるように移動して、該基板上の所定位置に固定される。
特に、微小物質と基板との距離が近接した状態になると、両者の間にファンデルワールス力が強く作用するので、微小物質は一層引き寄せられた後固定される。この固定工程によって、浮遊している複数の微小物質の中から、先ほど捕捉した微小物質のみを基板上の所定位置に確実に固定させることができる。
【0018】
上述したように、本発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法によれば、液中に存在する複数の微小物質の中から任意に選択した微小物質のみを確実且つ容易に基板上に固定することができる。しかも従来の方法とは異なり、微小物質を加熱させる必要がないので、該微小物質に何ら影響を与えることなく、固定することができる。特に、微小物質が生体物質等の場合には、何のダメージを与えることなく固定することができる。また、融点が高い微小物質であっても、確実に固定することができる。更には、従来のものと違い、簡単な構成であるので、コストを抑えることができる。
【0019】
また、光硬化性樹脂を利用する従来のものとは異なり、液体の種類に限定されず、様々な液体、例えば、バッファー溶液や生理食塩水等も使用することができる。従って、汎用性が高く、様々な分野への応用を期待することができる。例えば、従来では困難であったバイオ試料の固定等にも好適に応用することができる。また、周囲を暗くする等の特殊な環境にする必要がなく、単に液中環境にするだけで固定を行うことができるので作業性の容易化を図ることができる。
更に、予め基板を常時帯電させる必要がないので、省電力化を図ることができる。この点においてもコストの低減化を図ることができる。また、任意に選択して捕捉した微小物質のみを確実に固定できるので、意図しない微小物質を固定してしまう恐れが少ない。
なお、微小物質がプラスに帯電している場合には、基板がマイナスに帯電するように電圧を印加させれば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0020】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の微小物質固定装置において、前記対向基板が、導電性基板である微小物質固定装置を提供する。
【0021】
また、請求項10に係る発明は、請求項9に記載の微小物質固定方法において、前記対向基板が、導電性基板である微小物質固定方法を提供する。
【0022】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、対向基板自体が、ITOガラスや金属板等の導電性基板であるので、特別な処理を施さなくても確実に対向面を導電性にすることができる。
【0023】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の微小物質固定装置において、前記制御部が、前記光学系、前記移動手段及び前記電圧印加手段を制御して、前記基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させる微小物質固定装置を提供する。
【0024】
また、請求項11に係る発明は、請求項9又は10に記載の微小物質固定方法において、前記捕捉工程、前記位置調整工程及び前記固定工程を繰り返し行って、前記基板上に前記微小物質を任意のパターンで複数固定させる微小物質固定方法を提供する。
【0025】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行うことで、基板上に微小物質を任意のパターンで複数固定することができる。このように、微小物質を所望する位置に自在に配置しながら基板上に固定できるので、設計の自由度を向上することができる。
【0026】
また、請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、前記光学系が、前記レーザ光を複数の光束に分岐させるレーザ分岐素子を備え、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉する微小物質固定装置を提供する。
【0027】
また、請求項12に係る発明は、請求項9から11のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、前記捕捉工程の際、前記レーザ光を複数の光束に分岐させた後、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、前記微小物質を一度に複数捕捉する微小物質固定方法を提供する。
【0028】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、捕捉工程の際、レーザ分岐素子によりレーザ光を複数の光束に分岐させた後、これら複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットして液中に集光させる。これにより、複数の微小物質を任意の配列に並ばせた状態で一度に捕捉することができる。その後、固定工程によってこれら複数の微小物質を一度に被成膜基板上に固定させることができる。
特に、1つ1つ微小物質を固定させることなく、一度に複数の微小物質を所望する配列で固定させることができるので、作業時間をより短縮することができると共に使い易さが向上する。
【0029】
また、請求項5に係る発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、前記対向面には、金属層が形成されており、前記制御部が、前記電圧印加を行わせた後、電圧値を前記所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧印加を行わせ、前記金属層から金属微粒子を前記微小物質が固定された前記基板に向けて電気泳動により移動させると共に、基板上に金属微粒子を堆積させることで金属膜を成膜させるように前記電圧印加手段を制御する微小物質固定装置を提供する。
【0030】
また、請求項13に係る発明は、請求項9から12のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、前記対向面には、金属層が形成されており、前記固定工程後、電圧値を前記所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧印加を行って、前記金属層から金属微粒子を前記微小物質が固定された前記基板に向けて電気泳動により移動させると共に、基板上に金属微粒子を堆積させることで金属膜を成膜する電圧印加工程を行う微小物質固定方法を提供する。
【0031】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質工程方法においては、基板上に固定した微小物質を金属膜でコーティングすることができると共に、金属膜によって微小物質をより強固に基板上に固定することができる。
初めに、対向基板の対向面には、金属微粒子からなる金属層が形成されている。なお、この金属層は、スパッタや蒸着法どのような方法で形成されていても構わない。また、上述した固定工程によって基板と対向面との間に電圧を印加した時点で、金属層がチャージされており、極性に応じてプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっている。つまり、金属層を構成する金属微粒子が、徐々にプラス若しくはマイナスの電荷を帯びてきている。一方、基板も同様にチャージされており、金属層とは反対の極性に帯電した状態となっている。そのため、両基板の間に介在された液体には電界が形成されている。
【0032】
そして、固定工程により微小物質を基板上に固定させた後、制御部は、電圧値を所定電圧値よりも上げた状態で電圧印加するように電圧印加手段を作動させる。この電圧印加工程を行うと、上述した状態からさらにチャージが進み、帯電した金属微粒子が異なる極性に帯電された基板に引き寄せられて対向面から剥離すると共に、液中に浮遊した状態となる。なお、この浮遊した金属微粒子は、依然として帯電した状態となっている。そのため、金属微粒子は、液中に浮遊したと同時に、金属層と基板との間に形成された電界によって電気泳動により液体内を基板に向かって移動し始める。そして、移動した金属微粒子は、微小物質が固定された基板の表面全体に次々と付着して堆積する。
【0033】
このように電圧印加工程を行うことで、対向基板の対向面に形成された金属層の金属微粒子を電気泳動により基板に向けて移動させると共に、微小物質が固定された基板上に堆積させて金属膜を成膜させることができる。これにより、微小物質を金属膜でコーティングすることができる。特に、基板上に固定している微小物質の周囲に金属微粒子が堆積するので、微小物質をさらに強固に固定することができる。このように、基板上を単に金属膜で成膜するだけでなく、この金属膜を利用して微小物質を液中で強固に固定することができる。
なお基板に付着した金属微粒子は、帯電した状態が解かれると同時にファンデルワールス力によって強固に固定されている。また、この電圧印加工程を行う際、極性に影響されることはない。即ち、基板がプラスに帯電されようと、マイナスに帯電されようと、上述した作用効果を同様に奏することができる。
【0034】
特に、金属微粒子を利用して微小物質を強固に固定しているので、基板を液中から大気中に取り出して乾燥させたとしても、液体の乾燥過程で生じる気液界面における表面張力の影響を受けることがない。つまり、乾燥過程で気液界面が移動したとしても、微小物質は基板の表面全体に堆積している金属微粒子に周囲が囲まれているので、気液界面につられて移動したり、変形したりする恐れがない。よって、液中内で基板上に固定させた微小物質を、そのままの状態で大気中に取り出すことができる。従って、マイクロスケールの微粒子の組み立てや、MEMS等の微小デバイス等の組み立てを容易に行うことができる。また、微小物質がバイオ試料である場合には、従来困難であった生に近い状態で固定して大気中に取り出すことができる。しかも、大気中に取り出された微小物質は、金属膜によってコーティングされているので、直ちに電子顕微鏡により観察することもできる。
【0035】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の微小物質固定装置において、前記金属層が、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に形成されている微小物質固定装置を提供する。
【0036】
また、請求項14に係る発明は、請求項13に記載の微小物質固定方法において、前記金属層が、スパッタ法又は蒸着法により前記対向面に形成されている微小物質固定方法を提供する。
【0037】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、対向面に金属層がスパッタ法又は蒸着法により形成された対向基板を用いるので、電圧を印加したときに金属微粒子を対向面から剥離させ易い。従って、より効率良く成膜を行うことができ、成膜時間を短縮することができる。
【0038】
また、請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の微小物質固定装置において、前記制御部が、前記所定電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値よりも大きな電圧値で電圧印加を行わせるときとで、極性が逆になるように前記電圧印加手段を制御する微小物質固定装置を提供する。
【0039】
また、請求項15に係る発明は、請求項13又は14に記載の微小物質固定方法において、前記電圧印加工程の際、前記固定工程時の逆の極性で電圧を印加する微小物質固定方法を提供する。
【0040】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、微小物質を基板上に固定させる固定工程時と、固定した微小物質を金属微粒子でより強固に固定する電圧印加工程時とで、極性が逆になるように電圧を印加する。
例えば、液中に浮遊している微小物質がマイナスに帯電している場合には、固定工程時に、基板がプラスとなるように電圧を印加する。これにより、微小物質は基板に引き寄せられて固定される。次いで、電圧印加工程時には、基板がマイナスとなるように電圧を印加する。このように極性を変えることで、液中に浮遊している残りの微小物質(マイナスに帯電している)を基板側に引き寄せることなく、金属微粒子だけを基板に向けて電気泳動により移動させて堆積させることができる。従って、基板に固定させた微小物質だけを確実に固定することができる。
なお、液中に浮遊している微小物質がプラスに帯電している場合には、固定工程時に基板がマイナスとなるように電圧を印加すると共に、電圧印加工程時に基板がプラスとなるように電圧を印加すれば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0041】
また、請求項8に係る発明は、請求項5から7のいずれか1項に記載の微小物質固定装置において、前記制御部が、所定時間以上の間、前記所定電圧よりも大きな電圧値で電圧を印加するように前記電圧印加手段を制御して、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させる微小物質固定装置を提供する。
【0042】
また、請求項16に係る発明は、請求項13から15のいずれか1項に記載の微小物質固定方法において、前記電圧印加工程の際、所定時間以上の間電圧印加を行って、前記微小物質を埋没させるように前記金属膜を成膜させる微小物質固定方法を提供する。
【0043】
この発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法においては、電圧印加工程を行う際に所定時間以上の間電圧を印加して、金属微粒子を基板上に堆積させ続ける。これにより、微小物質をコーティングする金属膜の膜厚が徐々に厚くなり、微小物質を埋没させることができる。このように金属膜を厚く成膜することで、微小物質の鋳型を作ることができる。つまり、厚く成膜した金属膜を基板から剥すことで、微小物質の外表面形状が転写した金属膜を得ることができる。よって、この鋳型となった金属膜を観察することで、微小物質の観察を行うことができる。即ち、レプリカ法で観察することができる。特に、液中における微小物質の状態を金属膜に転写できるので、液中に存在している状態で微小物質を観察することができる。そのため微小物質がバイオ試料の場合には、観察に特に好適な方法である。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法によれば、液中に存在する複数の微小物質の中から任意に選択した微小物質のみを、該微小物質に何ら影響を与えることなく確実且つ容易に基板上に固定でき、しかも、作業環境や液体の種類に影響を受けることなく、あらゆる種類の微小物質をコストをかけずに基板上に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法の第1実施形態を、図1から図12を参照して説明する。
なお本実施形態では、導電性を有するカバーガラス3の対向面3aに金属層4を形成し、この金属層4とITOガラス2との間に電圧を印加する場合を例に挙げて説明する。なおこの金属層4は、金(Au)をスパッタ法により形成したものである。
本実施形態の微小物質固定装置1は、純水(液体)W内に予め投入された直径約1μmのポリスチレン微粒子(微小物質)PをITOガラス(基板)2上に固定する装置であって、図1に示すように、ITOガラス2上に純水Wを介在させた状態で対向配置され、対向面3aに金属層4が形成されたカバーガラス(対向基板)3と、レーザ光Lを照射すると共に照射したレーザ光Lを純水W内でスポットして集光させ、ポリスチレン微粒子Pを光放射圧によって捕捉する光学系5と、ハロゲンランプ(光源)16を有し、該ハロゲンランプ16から照射された光を利用してポリスチレン微粒子Pを観察する観察系6と、ITOガラス2を対向面3aに平行なXY方向及び対向面3aに垂直なZ方向の3方向に移動させて、捕捉されたラテクッス粒子PをITOガラス2上の所定位置に近接させる移動手段7と、ITOガラス2と金属層4との間に所定電圧値の電圧を印加して、ポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に引き寄せて固定させる電圧印加手段8と、これら各構成品を総合的に制御する制御部9とを備えている。
【0046】
上記ITOガラス2は、フレーム10に支持された状態でステージ11上に隙間を空けて固定されている。また、カバーガラス3は、図示しない架台によって微小な隙間を空けた状態でITOガラス2上に支持されており、カバーガラス3とITOガラス2との間に純水Wが表面張力等によって保持されている。なお、本実施形態では、カバーガラス3とITOガラス2との間に塩化ビニル薄膜(厚さが約20μm~50μm)12が形成されており、該塩化ビニル薄膜12によって純水Wの周囲を囲んでいる。但し、この塩化ビニル薄膜12を用いずに、表面張力だけによって純水Wを保持して構わない。
【0047】
この金属層4には、電圧印加部8aに接続された一方の電気配線8bが電気的に接続されている。また、ITOガラス2も同様に、電圧印加部8aに接続された他方の電気配線8bが電気的に接続されている。これにより、ITOガラス2及び金属層4の間に電圧を印加できるようになっている。即ち、これら電圧印加部8a及び両電気配線8bは、上記電圧印加手段8を構成している。特にこの電圧印加部8aは、印加する電圧値を自在に調整できるようになっている。
【0048】
ステージ11とITOガラス2との間の隙間には、ミラー15が配置されている。このミラー15は、ステージ11の近傍に配置されたハロゲンランプ16から照射された光をITOガラス2に向けて反射している。
また、ステージ11は、Zステージ17上に固定されたXYステージ18上に固定されている。これらXYステージ18及びZステージ17は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなる圧電素子であり、ドライブ回路19から電圧が印加されると、その電圧印加量及び極性に応じて、XY方向及びZ方向の3方向に対して微小移動するようになっている。つまり、XYステージ18及びZステージ17は、微動ステージとして機能する。
【0049】
また、上記Zステージ17は、XYZステージ20上に固定されている。このXYZステージ20は、ボールネジの駆動によって3方向に移動するものであり、上記XYステージ18、Zステージ17及びステージ11を一体的に粗動移動させるようになっている。つまり、XYZステージ20は、粗動ステージとして機能する。
このように、ITOガラス2は、XYZステージ20による粗動移動と、XYステージ18及びZステージ17による微動移動とによって、3方向に移動させられるようになっている。即ち、これらXYステージ18、Zステージ17、XYZステージ20及びドライブ回路19は、上記移動手段7を構成している。
【0050】
上記光学系5は、レーザ光L(例えば、波長500nm程度のアルゴンイオンレーザ)を照射するレーザ光源25と、該レーザ光Lをカバーガラス3の上方から対向面3aに対して略直角に入射させるように反射するミラー26と、該ミラー26で反射したレーザ光Lを純水W内でスポットとして集光させる対物レンズ(例えば、NA=1.25、倍率100倍)27とを備えている。これにより、純水W内に投入されているポリスチレン微粒子Pを、光放射圧を利用して捕捉することが可能とされている。これについては、後に詳細に説明する。
【0051】
また、レーザ光源25とミラー26との間におけるレーザ光Lの光路上には、ハーフミラー28が配置されている。これにより、レーザ光源25から照射されたレーザ光Lは、一部がハーフミラー28を通過した後、ミラー26に入射するようになっている。
【0052】
またハーフミラー28の近傍には、ハロゲンランプ16から照射された光を利用してポリスチレン微粒子Pを観察するための集光レンズ30と、レーザ光Lをカットするフィルタ31と、CCD等の撮像素子32と、モニタ33とが配置されている。つまり、ミラー15によってITOガラス2に向けて反射されたハロゲンランプ16からの光は、ITOガラス2を透過した後、純水Wに入射してポリスチレン微粒子Pに当たり散乱している。この散乱光は、対物レンズ27を通過した後、ミラー26で反射されてハーフミラー28に入射する。そして、その一部がハーフミラー28によって反射した後、集光レンズ30に入射する。なおこの集光レンズ30は、撮像素子32に焦点が合うように調整されている。そして、集光レンズ30で集光された光は、フィルタ31を通過した後、撮像素子32によって撮像される。この際、フィルタ31はレーザ光Lと同じ波長を有する光をカットしているので、ポリスチレン微粒子Pに当たって散乱した光だけを撮像素子32で撮像できるようになっている。そして、撮像素子32で撮像された画像は、モニタ33に表示される。
【0053】
これにより、純水W等に投入されたポリスチレン微粒子Pをモニタ33で観察することができるようになっている。即ち、上述したハーフミラー28、集光レンズ30、フィルタ31、撮像素子32及びモニタ33は、上記観察系6を構成している。
【0054】
上記制御部9は、光学系5で捕捉されたポリスチレン微粒子PがITOガラス2上の所定位置に近接したときに、所定電圧値で電圧印加を行わせて、ポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に引き寄せて固定させるように電圧印加手段8の制御を行っている。
更に、本実施形態における制御部9は、上述した電圧印加を行わせた後、電圧値を所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧印加を行わせて、金属層4から後述する金微粒子(金属微粒子)4aをポリスチレン微粒子Pが固定されたITOガラス2に向けて電気泳動により移動させると共に、ITOガラス2上に堆積させることで金属膜35を成膜させるように電圧印加手段8を制御するようになっている。
また本実施形態では、制御部9が所定電圧値で電圧印加を行わせるときと、所定電圧値よりも大きな電圧値で電圧印加を行わせるときとで、印加する電圧の極性が逆になるように電圧印加手段8を制御する場合を例にして説明する。但しこの場合に限定されず、同じ極性となるように電圧を印加しても構わない。
【0055】
次に、このように構成された微小物質固定装置1を利用して、ポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に任意のパターンに並べて固定した後、成膜を行ってポリスチレン微粒子Pを金属膜35で強固に固定しながらコーティングする微小物質固定方法について説明する。
本実施形態の微小物質固定方法は、セット工程と、捕捉工程と、位置調整工程と、固定工程と、電圧印加工程とを行う方法である。
セット工程は、対向面3aに金属層4が形成されたカバーガラス3を、ポリスチレン微粒子Pが予め投入された純水Wを間に介在させた状態でITOガラス2上に対向配置させる工程である。また、捕捉工程は、レーザ光Lを照射すると共に照射したレーザ光Lを純水W内でスポットとして集光させ、ポリスチレン微粒子Pを光放射圧によって捕捉する工程である。また、位置調整工程は、ITOガラス2をXY方向及びZ方向の3方向に適宜移動させて、捕捉されたポリスチレン微粒子PをITOガラス2上の所定位置に近接させる工程である。また、固定工程は、ITOガラス2と金属層4との間に所定電圧値の電圧を印加して、捕捉されたポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に引き寄せて固定させる工程である。また、電圧印加工程は、電圧値を所定電圧値よりも上げた状態で再度電圧を印加して、金属層4から金微粒子4aをポリスチレン微粒子Pが固定されたITOガラス2に向けて電気泳動により移動させると共に、ITOガラス2上に堆積させることで金属膜35を成膜させる工程である。
これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0056】
まず、対向面3aに金属層4が形成されたカバーガラス3を用意した後、ITOガラス2上に純水Wを介在させた状態でカバーガラス3をセットするセット工程を行う。この際、金属層4が形成された対向面3aがITOガラス2の表面に対向するように、カバーガラス3をセットする。また、純水W内に予め複数のポリスチレン微粒子Pを投入しておく。これにより、図2に示すように、カバーガラス3とITOガラス2との間に、ポリスチレン微粒子Pが投入された純水Wを密閉することができる。
【0057】
そしてセット工程が終了した後、図1に示すように、ハロゲンランプ16を点灯させると共に、ハロゲンランプ16から照射された光を利用して純水W内のポリスチレン微粒子Pの状態を観察系6により光学的に観察する。この際、複数のポリスチレン微粒子Pは、純水W内で浮遊している状態となっている。この様子は、モニタ33に表示された画像により確認することができる。
【0058】
ここで、液中環境下におかれた物体表面は、液体の種類やpH等の状況によりプラス若しくはマイナスに帯電した状態となっているが、本実施形態では、物体表面がマイナスに帯電されている場合を例に挙げて説明する。
そのため、純水W内に投入されたポリスチレン微粒子Pの表面、並びに、ITOガラス2の表面についても同様に、図3に示すように、マイナスに帯電した状態となっている。一方、物体表面の周囲環境は、帯電したマイナスを打ち消すようにプラスに帯電した状態となっている。そのため、ポリスチレン微粒子Pの表面近傍、並びに、ITOガラス2の表面近傍には、プラスに帯電した状態となっている。つまり、マイナスに帯電した層とプラスに帯電した層とが重なった電気二重層が形成されている。
【0059】
よって、液中に浮遊しているポリスチレン微粒子PがITOガラス2に接近すると、互いの電気二重層が重なり合うので、静電気的相互作用によって斥力が働く。従って、ポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2から離れてしまう。また、金属層4及び他のポリスチレン微粒子Pに関しても同様である。従って、純水W内に投入されたポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2や金属層4や他のポリスチレン微粒子Pに付着することなく、液中を浮遊した状態となっている。
【0060】
次いで、観察系6によって液中内の状態を確認しながら、光学系5によってレーザ光Lを純水W内にスポットとして集光させる。これにより、図4に示すように、液中内を浮遊しているポリスチレン微粒子Pを1つだけ光放射圧を利用して捕捉(トラップ)することができる。具体的には、図5(a)に示すように、ポリスチレン微粒子Pにレーザ光Lをスポットとして集光させると、該レーザ光Lは媒質等の違いから屈折し、光の運動量がPa、Pbだけ変化する。このときポリスチレン微粒子Pには、運動量を保存しようと、図5(b)に示すように、Pa、Pbと逆向きの力Fa、Fbの合力Fが作用する。その結果、ポリスチレン微粒子Pは、焦点に捕捉される。このように光の放射圧を利用してポリスチレン微粒子Pを捕捉することができる。
【0061】
この捕捉工程後、制御部9はXYZステージ20を適宜移動させてITOガラス2を粗動移動させると共に、ドライブ回路19に指示を出してXYステージ18及びZステージ17をXYZの3方向に適宜微小移動させて、図4に示すように、ITOガラス2上の所定位置に捕捉したポリスチレン微粒子Pを近接させる位置調整工程を行う。ところが、ポリスチレン微粒子Pを捕捉して近づける力よりも、上述した斥力の方が強いので、図6に示すように、これ以上ポリスチレン微粒子PをITOガラス2に近づけることができない。
【0062】
そこで制御部9は、ポリスチレン微粒子Pが上述したようにITOガラス2上の所定位置に近接したときに、図7に示すように、所定電圧値で電圧を印加するように電圧印加手段8を作動させる。なおこの際、ITOガラス2がプラスに帯電するように電圧を印加させる。
これによりITOガラス2は、ポリスチレン微粒子Pと異なるプラスに帯電するので電気二重層の重なりによる斥力がなくなる。よってポリスチレン微粒子Pは、ITOガラス2に引き寄せられるように移動して、図8に示すように、ITOガラス2に付着した後固定される。特に、ポリスチレン微粒子PとITOガラス2との距離が近接した状態になると、両者の間にファンデルワールス力が強く作用するので、ポリスチレン微粒子Pは一層引き寄せられて固定される。この固定工程によって、浮遊している複数のポリスチレン微粒子Pの中から、先ほど捕捉したポリスチレン微粒子PのみをITOガラス2上の所定位置に確実に固定させることができる。
【0063】
上述したように、本実施形態の微小物質固定装置1及び微小物質固定方法によれば、液中に存在する複数のポリスチレン微粒子Pの中から任意に選択したポリスチレン微粒子Pのみを確実且つ容易にITOガラス2上の所定位置に固定することができる。しかも従来の方法とは異なり、ポリスチレン微粒子Pを加熱する必要がないので、ポリスチレン微粒子Pに何ら影響を与えることなく固定することができる。特に、本実施形態の微小物質固定装置1は、従来のものと違い、簡単な構成であるので、コストを抑えることができる。
【0064】
また、光硬化性樹脂を利用する従来のものとは異なり、液体の種類に限定されず、様々な液体、例えば、バッファー溶液や生理食塩水等も使用することができる。従って、汎用性が高く、様々な分野への応用を期待することができる。例えば、従来では困難であったバイオ試料等の固定等にも好適に応用することができる。また、周囲を暗くする等の特殊な環境にする必要がなく、単に液中環境にするだけで固定を行うことができるので作業性の容易化を図ることができる。
【0065】
更に、予めITOガラス2を常時帯電させる必要がないので、省電力化を図ることができる。この点においてもコストの低減化を図ることができる。また、任意に選択して捕捉したポリスチレン微粒子Pのみを確実に固定できるので、意図しないポリスチレン微粒子Pを固定してしまう恐れがない。
【0066】
次に、上述した捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行って、図9に示すように、ITOガラス2上にポリスチレン微粒子Pを任意のパターンで複数固定させる。なお、この図9では、4個のポリスチレン微粒子Pを密着させた状態で固定させた例を示している。
このようにポリスチレン微粒子Pを任意のパターンで固定させた後、制御部9は、電圧値を所定電圧値よりも上げた状態で電圧印加するように電圧印加手段8を再度作動させる。この際、本実施形態では、図10に示すように固定工程時とは逆の極性で電圧を印加する。即ち、金属層4側がプラス、ITOガラス2側がマイナスとなるように電圧を印加する。
【0067】
この電圧印加によって、金属層4はチャージされてプラスに帯電した状態となる。つまり、金属層4を構成する金微粒子4aが、徐々にプラスの電荷を帯びてくる。一方、ITOガラス2も同様にチャージされて金属層4とは反対の極性であるマイナスに帯電した状態となる。そのため、ITOガラス2とカバーガラス3との間に介在された純水Wには、電界が形成される。
【0068】
そして、電圧印加部8aが電圧値を所定電圧値以上に上げると、上述した状態からさらにチャージが進み、帯電した金微粒子4aが図10に示すように、異なる極性に帯電されたITOガラス2に引き寄せられて対向面3aから剥離すると共に、液中に浮遊した状態となる。なお、この浮遊した金微粒子4aは、依然としてプラスに帯電した状態となっている。そのため金微粒子4aは、液中に浮遊したと同時に、金属層4とITOガラス2との間に形成された電界によって電気泳動により純水W内をITOガラス2に向かって移動し始める。そして、移動した金微粒子4aは、ポリスチレン微粒子Pが固定されたITOガラス2の表面全体に次々と付着して堆積する。
【0069】
このように電圧印加工程を行うことで、カバーガラス3の対向面3aに形成された金属層4の金微粒子4aを電気泳動によりITOガラス2に向けて移動させると共に、ポリスチレン微粒子Pが固定されたITOガラス2上に堆積させて金属膜35を成膜させることができる。これにより、図11に示すように、ポリスチレン微粒子Pを金属膜35でコーティングすることができる。特に、ITOガラス2上に固定されている複数のポリスチレン微粒子Pの周囲に金微粒子4aが堆積するので、ポリスチレン微粒子Pをさらに強固に固定することができる。従って、ITOガラス2上を単に金属膜35で成膜するだけでなく、この金属膜35を利用してポリスチレン微粒子Pを液中で強固に固定することができる。
なお、ITOガラス2に付着した金微粒子4aは、帯電した状態が解かれると同時に、ファンデルワールス力によって強固に固定される。
【0070】
しかも、本実施形態では、電圧印加固定を行う際に、固定工程時と極性が異なるように電圧を印加している。そのため、液中に浮遊している残りのポリスチレン微粒子P(マイナスに帯電している)をITOガラス2側に引き寄せることなく、金微粒子4aだけをITOガラス2に向けて電気泳動により移動させて堆積させることができる。従って、図11に示すように、ITOガラス2に固定させたポリスチレン微粒子Pだけを確実に固定することができる。
【0071】
上述したように本実施形態の微小物質固定装置1及び微小物質固定方法によれば、ITOガラス2上に複数のポリスチレン微粒子Pを固定させた後、さらに金微粒子4aを利用してポリスチレン微粒子Pを強固に固定しているので、ITOガラス2を液中から取り出して乾燥させたとしても、純水Wの乾燥過程で生じる気液界面における表面張力の影響を受けることがない。通常、単にポリスチレン微粒子PをITOガラス2上に固定させただけでは、図12に示すように、純水Wを乾燥させた際に気液界面の移動に伴ってポリスチレン微粒子Pも移動してしまう。
ところが本実施形態では、乾燥過程で気液界面が移動したとしても、ポリスチレン微粒子PはITOガラス2の表面全体に堆積している金微粒子4aによって周囲が囲まれているので、気相界面につられて移動したり、変形したりする恐れがない。よって、液中内で任意のパターンで固定させたポリスチレン微粒子Pをそのままのパターンで大気中に取り出すことができる。
【0072】
従って、マイクロスケールの微粒子の組み立てや、MEMS等の微小デバイス等の組み立てに応用することができる。しかも、大気中に取り出されたポリスチレン微粒子Pは、金微粒子4aによってコーティングされているので、直ちに電子顕微鏡により観察を行うことができる。
【0073】
ここで、液体を超臨界状態で乾燥させる装置が従来から知られている。これは、超臨界乾燥方法と呼ばれ、気相と液相との境界面が存在せず、表面張力が作用しない状態で乾燥を行う方法である。この方法によれば、同様に、液中内で任意のパターンで固定させたポリスチレン微粒子Pをそのままの状態で大気中に取り出すことができる。ところがこの方法は、装置自体が高価なものであるので、かなりの高コストになってしまい、安易に使用できるものではなかった。
これに対して、本実施形態の微小物質固定装置1及び微小物質固定方法によれば、上述したように特殊な構成が不要であり、容易且つ低コストでポリスチレン微粒子Pを大気中に取り出すことができる。
【0074】
また、従来の超臨界乾燥方法は、高温且つ高圧環境下で乾燥を行う方法であるので、環境条件が厳しくなってしまう。例えば、水を乾燥させる場合には、臨界温度が373.95℃、臨界圧力が22.064MPa、臨界密度が322kg/mという厳しい条件となってしまう。特に、微小物質として、上述したポリスチレン微粒子Pではなくバイオ試料を用いた場合には、超臨界乾燥方法を行う従来の装置では、厳しい臨界条件ためのバイオ試料がダメージを受けてしまい、使用することができなかった。
これに対して、本実施形態の微小物質固定装置1及び微小物質固定方法によれば、単に液中で行うだけであるので、バイオ試料に何ら影響を与えることなく、生に近い状態で容易に大気中に取り出すことができる。従って、生体細胞や微生物等を基板に配列固定させる際に本発明を利用することができ、顕微鏡観察や標本作製への応用も可能である。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る微小物質固定装置及び微小物質固定方法の第2実施形態を、図13を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ポリスチレン微粒子Pを任意のパターンでITOガラス2に固定させる際に、捕捉工程、位置調整工程及び固定工程を繰り返し行ったが、第2実施形態では一度で行うことができる点である。
【0076】
即ち本実施形態の光学系41は、レーザ光Lを複数の光束に分岐させる光変調器(レーザ分岐素子)42を備えており、分岐された複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして集光させて、ポリスチレン微粒子Pを一度に複数捕捉することができるように構成されている。
具体的に本実施形態の光学系41は、レーザ光源25とハーフミラー28との間に、レーザ光源25側から順に、ビームエキスパンダ43、偏光板44、上記光変調器42及びレンズ系45を備えている。ビームエキスパンダ43は、レーザ光源25から照射されたレーザ光Lのビーム径を拡大させている。偏光板44は、ビーム系が拡大されたレーザ光Lが有する偏光成分のうち、決められた成分(例えば、P成分)の直線偏光の光を透過させている。光変調器42は、光の位相を制御するデバイスであって、偏光板44を透過してきたレーザ光Lを、予め入力された配列パターンにしたがって光束を複数に分岐させている。レンズ系45は、複数の光束に分岐された光束をそれぞれ元のビーム径に集光させている。
【0077】
このように構成された光学系41を有する微小物質固定装置40によれば、捕捉工程の際、光変調器42によりレーザ光Lを複数の光束に分岐させた後、これら複数の光束を任意の配列で並んだ複数のスポットとして液中に集光させることができる。これにより、複数のポリスチレン微粒子Pを任意の配列に並ばせた状態で一度に捕捉することができる。その後、固定工程によってこれら複数のポリスチレン微粒子Pを一度にITOガラス2に固定させることができる。
特に、1つ1つポリスチレン微粒子Pを固定させることなく、一度に複数のポリスチレン微粒子Pを所望する配列パターンで固定させることができるので、作業時間をより短縮することができると共に使い易さが向上する。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0079】
例えば、上記各実施形態では、基板の一例としてITOガラス2を例に挙げて説明したが、ITOガラス2に限定されるものではない。また、カバーガラス3の対向面3aにスパッタ法で金属層4を形成したが、スパッタ法に限られず、蒸着法等により金属層4を形成しても構わない。また、金属層4は、金に限られるものではない。
【0080】
また、上記各実施形態において、対向基板としてカバーガラス3を用いたが、カバーガラス3に代えて、ITOガラス2等の導電性基板を用いても構わない。このように導電性基板を用いることで、金属層4に電圧を印加した際に、導電性基板自体に電流を流して金属層4に電圧を印加することができる。よって、より効率良く且つ金属層4全体に均等に電圧を印加でき、成膜をより円滑にムラなく行うことができる。また、金微粒子4aの剥離によって、仮に金属層4が途中で分断されてしまったとしても、導電性基板を介して電流が流れるので、まだ剥離していない残りの金属層4に電圧を確実に印加することができる。よって、この点からもムラのない成膜を行うことができる。
【0081】
また、上記各実施形態では、純水Wに投入する微小物質をポリスチレン微粒子Pとしたが、これに限られず、その他の高分子粒子やバイオ試料等でも構わない。
【0082】
また、上記実施形態では、固定工程の際にITOガラス2側がプラスに帯電するように電圧を印加したが、純水W内に微小物質を投入したときに、該微小物質がプラスに帯電するような処理を施したような場合には、ITOガラス2側がマイナスに帯電するように電圧を印加すれば良い。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
また、固定工程時と電圧印加工程時とで極性が異なるように電圧を印加したが、この場合に限定されず、同じ極性となるように電圧を印加しても構わない。
【0083】
更に、上記各実施形態において、電圧印加工程を行う際に所定時間以上の間電圧印加を行って、ポリスチレン微粒子Pを埋没させるように金微粒子4aを堆積させて金属膜35をコーティングしても構わない。
即ち、所定時間以上の間電圧を印加し続け、ITOガラス2上に金微粒子4aを堆積させ続ける。これにより、ポリスチレン微粒子Pをコーティングする金属膜35の膜厚が徐々に厚くなり、ITOガラス2上に固定させたポリスチレン微粒子Pを埋没させることができる。このように金属膜35を厚く成膜することで、ポリスチレン微粒子Pの鋳型を作ることができる。つまり、厚く成膜した金属膜35をITOガラス2から剥すことで、ポリスチレン微粒子Pの外表面形状が転写した金属膜35を得ることができる。よって、この鋳型となった金属膜35を観察することで、ポリスチレン微粒子Pの観察を行うことができる。即ち、レプリカ法で観察することができる。
特に、液中におけるポリスチレン微粒子Pの状態を金属膜35に転写できるので、液中に存在している状態でポリスチレン微粒子Pを観察することができる。また微小物質として、ポリスチレン微粒子Pではなくバイオ試料を採用した場合には、観察に好適な方法である。
【0084】
(実施例)
次に、上記第1実施形態に基づいて、実際に実験を行った実施例について説明する。なお、以下の条件で実験を行った。
まず、微小物質として直径1μmのポリスチレン微粒子Pを用いた。また、波長λ=514nmのアルゴンイオンレーザを照射するレーザ光源25を用いると共に、その出力を60mWとした。また、固定工程時の印加電圧を2Vとした。この際、ITOガラス2がプラスに帯電するように電圧を印加した。また、ITOガラス2とカバーカラス4との間隔を、スペーサ等を利用して60μmに調整した。
【0085】
この条件のもと、複数のポリスチレン微粒子PをITOガラス2上にパターニングして固定させた。その結果、図14に示すように、ポリスチレン微粒子Pを「静」の文字となるようにきれいにパターニングできたことを確認した。また、図15に示すように、「SU」の文字となるようにパターニングできたことも確認できた。
【0086】
次に、ITOガラス2がマイナスに帯電するように極性を変えて電圧印加工程を行い、金微粒子4aをITOガラス2上に堆積させてコーティングを行った。この際、印加電圧は8Vであり、電圧印加時間を1分とした。
電圧印加工程後、ITOガラス2を大気中に取り出して乾燥させ、電子顕微鏡で観察したところ図14及び図15に示すパターンのまま、ポリスチレン微粒子PがITOガラス2上に固定されていることを確認できた。
【0087】
一方、上述した固定工程後、電圧印加工程を行わずに、「SU」のパターンでポリスチレン微粒子Pを固定させたITOガラス2を大気中に取り出して乾燥させた場合には、図16に示すように、配列が崩れてしまったポリスチレン微粒子Pが確認された。これは、乾燥に伴う気相界面の移動によって、ポリスチレン微粒子Pも移動したことが原因と考えられる。
【0088】
これらの結果から、本発明に係る微小物質固定装置1及び微小物質固定方法の効果が確認でき、簡単な構成且つ低コストで、液中で任意のパターンに配列したポリスチレン微粒子Pをそのままの状態で大気中に取り出すことができるという、従来にはない特別な効果を確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明に係る微小物質固定装置の第1実施形態を示す構成図である。
【図2】図1に示す微小物質固定装置の一部拡大図であって、純水内にポリスチレン微粒子が浮遊している状態を示す図である。
【図3】純水内に浮遊しているポリスチレン微粒子に作用する静電気的相互作用エネルギを説明するための図である。
【図4】純水内に浮遊しているポリスチレン微粒子にレーザ光を集光させて、光放射圧により捕捉した状態を示す図である。
【図5】光放射圧によってポリスチレン微粒子を捕捉する原理を示す図であって、(a)はポリスチレン微粒子にレーザ光を集光させた図であり、(b)はポリスチレン微粒子に作用する力のベクトル図である。
【図6】図4に示す状態の後、ポリスチレン微粒子をITOガラスに近づけた状態を示す図である。
【図7】図6に示す状態の後、金属層とITOガラスとの間に電圧を印加させた状態を示す図である。
【図8】電圧を印加した結果、捕捉したポリスチレン微粒子をITOガラスに固定させた状態を示す図である。
【図9】ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を固定させた状態を示す図である。
【図10】図9に示す状態の後、再び金属層とITOガラスとの間に電圧を印加させて、ITOガラス上に金微粒子を堆積させている状態を示す図である。
【図11】ITOガラス上に金微粒子が堆積して、ポリスチレン微粒子が強固に固定された状態で金属膜によりコーティングされた状態を示す図である。
【図12】従来の方法を説明するための図であって、ITOガラス上にポリスチレン微粒子を単に固定させた状態で、液体を乾燥させている状態を示す図である。
【図13】本発明に係る微小物質固定装置の第2実施形態を示す構成図である。
【図14】本発明に係る微小物質固定装置の第1実施形態に基づいて実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を「静」の文字となるようにパターニングした状態で固定させた図である。
【図15】本発明に係る微小物質固定装置の第1実施形態に基づいて実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、ITOガラス上に複数のポリスチレン微粒子を「SU」の文字となるようにパターニングした状態で固定させた図である。
【図16】従来の方法で実際に実験を行った実施例を説明するための図であって、図15に示すITOガラスを、大気中に取り出して乾燥させた後の状態のポリスチレン微粒子を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
L レーザ光
P ポリスチレン微粒子(微小物質)
W 純水(液体)
1、40 微小物質固定装置
2 ITOガラス(基板)
35 金属膜
3 カバーガラス(対向基板)
3a 対向面
4 金属層
4a 金微粒子(金属微粒子)
5、41 光学系
6 観察系
7 移動手段
8 電圧印加手段
9 制御部
42 光変調器(レーザ分岐素子)



図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
5
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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