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明細書 :車両運動制御装置およびこれを搭載した自動車

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5119433号 (P5119433)
公開番号 特開2008-044561 (P2008-044561A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成20年2月28日(2008.2.28)
発明の名称または考案の名称 車両運動制御装置およびこれを搭載した自動車
国際特許分類 B60W  30/12        (2006.01)
B60T   8/1755      (2006.01)
B60T   8/17        (2006.01)
B60L  15/00        (2006.01)
FI B60W 30/12
B60T 8/1755 C
B60T 8/17 D
B60L 15/00 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 14
出願番号 特願2006-223716 (P2006-223716)
出願日 平成18年8月20日(2006.8.20)
審査請求日 平成21年8月20日(2009.8.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
発明者または考案者 【氏名】ポンサトーン ラクシンチャラーンサク
【氏名】永井 正夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100094488、【弁理士】、【氏名又は名称】平石 利子
【識別番号】100095485、【弁理士】、【氏名又は名称】久保田 千賀志
審査官 【審査官】堀川 泰宏
参考文献・文献 特開平11-321690(JP,A)
特開平11-078949(JP,A)
特開2002-211430(JP,A)
特開2006-224750(JP,A)
特開平11-099848(JP,A)
特開2004-243783(JP,A)
調査した分野 B60W 10/00-50/08
B62D 6/00- 6/06
B60T 7/12- 8/96
G08G 1/16
B60R 21/00-21/34
特許請求の範囲 【請求項1】
ヨーレートを制御情報のひとつとして車線追従制御を行う車線追従制御装置において、
操舵角および/または操舵角速度から、現在、車両が車線追従モード下にあるのか、車線変更モード下にあるのか、あるいは、前記車線追従モードまたは前記車線変更モードの一方から他方に遷移する途中の中間モード下にあるのかをドライバの運転意図決定手段を隠れマルコフモデルにおける出力シンボルによる判断で行う運転モード判断部と、
前記運転モード判断部が前記各モードを判定した際に、各モードに対応した制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記運転モード判断部が前記車両が前記車線追従モード下にあると判断したときは車線追従運転用の第一の目標ヨーレートを生成する生成手段により、前記第一の目標ヨーレート(γc)は車体前方横偏差ysrを用いた二次予測式(1)により、リアルタイムで計算され、
γc(t)=-(2V/lc2)ysr・・・(1)
(V:車体速度,lc:カメラの前方注視距離,ysr:前方横偏差)
前記運転モード判断部が前記車両が前記車線変更モード下にあると判断したときは、車線変更運転用の第二の目標ヨーレートを生成する生成手段により前記第二の目標ヨーレート(γδ)は一次遅れ式(2)により計算され、
γδ(s)=〔k/(τ0s+1)〕・δsw(s)・・・(2)
δsw:操舵角,k:ヨーレートゲイン,τ0:時定数,s:ラプラス演算子,
k:2CfV/〔mV2+2(lff-lrr)〕・(1/N),
τ0:IV/2(Cff2+Crr2
(mは車体重量、Iは車体の慣性モーメント、Cf,Crは前輪,後輪のコーナリングパワー、lf,lrは重心点から前輪,後輪までの長さ、Nはステアリングギア比である。)
前記運転モード判断部が、前記車線変更モードの一方から他方に遷移する途中の中間モード下にあると判断したときは、制御信号を発生せず、直前のヨーレートを保持し、
前記2つのヨーレートと、前記ドライバの運転意図決定手段より与えられる確率に応じて目標ヨーレートをセレクトする、セレクト手段と、
前記セレクトされた目標ヨーレートに、実ヨーレートを追従させるために、自動車の制御入力であるヨーモーメント信号を生成し、
後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に駆動されたモータまたは制動機を制御する制御信号を出力する車両運動制御部と、
を備えたことを特徴とする車両運動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車線追従制御装置を搭載した自動車であって、後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に駆動されるモータを備え、前記制御部は前記モータを制御することを特徴とする自動車。
【請求項3】
請求項1に記載の車線追従制御装置を搭載した自動車であって、後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に制動力を付与する制動機を備え、前記制御部は前記制動機を制御することを特徴とする自動車。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵角情報さらには操舵角速度情報をドライバの操作意図の推定に用いることで当該推定を正確に行い、さらに当該推定結果に適合した車両運動制御を行うことができる車線追従制御装置およびこれを搭載した自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車線追従制御装置を搭載した車両(自動車)が開発されるようになっている。この種の自動車では、ドライバにより車線変更操作が行われるような場合には、適宜のタイミングで(すなわち、運転中にドライバに違和感を感じさせない適切なタイミングで)車線追従制御を解除している。たとえば、特許文献1の技術では、車線追従制御中に車線変更が行われる場合には、あらかじめ記憶したドライバの運転行動パターンに基づいて、ドライバの車線変更意図を認識し、車線追従制御を解除する。

【特許文献1】特開平11-321690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記した特許文献1の技術では、異なるドライバが運転する際には車線変更意図の認識ができない。また、車線変更に際してすべての運転操作にかかる制御が解除されてしまうと、スリップ等が生じた場合に重大事故につながる可能性がある。このため、車線追従制御がなされているときに車線変更があったときは、制御を当該車線変更に対応した制御に切り替えることも考えられる。
【0004】
車線追従制御が行われている場合に車線変更操作がなされると、車線追従制御と車線変更のための制御とが干渉し、以下のような問題が生じる。すなわち、ドライバが、車線変更意図に基づき車線変更操作をしても、車線追従制御装置が車線追従制御をし続けるために、円滑な車線変更を行うことができない。また、たとえばドラバイの不注意によりハンドルを僅かに回転させてしまった場合に、ドライバに車線変更意図がないにもかかわらず、制御が車線変更運転用の制御に切り替わってしまうこともある。
【0005】
さらに、運転履歴を考慮してドライバの車線変更意図を推定し、推定結果に基づき制御を行うことも考えられるが、高い安全性に応えることができる制御技術は従来提供されていない。
【0006】
本発明の目的は、操舵角等の履歴情報をドライバの操作意図の推定に用いることで当該推定を正確に行い、さらに当該推定結果に適合した車両運動制御(車線追従制御の維持や車線変更操作への円滑な移行)を行うことができる車線追従制御装置およびこれを搭載した自動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両運動制御装置は、(1)を要旨とする。
(1)ヨーレートを制御情報のひとつとして車線追従制御を行う車線追従制御装置において、
操舵角および/または操舵角速度から、現在、車両が車線追従モード下にあるのか、車線変更モード下にあるのか、あるいは、前記車線追従モードまたは前記車線変更モードの一方から他方に遷移する途中の中間モード下にあるのかをドライバの運転意図決定手段を隠れマルコフモデルにおける出力シンボルによる判断で行う運転モード判断部と、
前記運転モード判断部が前記各モードを判定した際に、各モードに対応した制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記運転モード判断部が前記車両が前記車線追従モード下にあると判断したときは車線追従運転用の第一の目標ヨーレートを生成する生成手段により、前記第一の目標ヨーレート(γc)は車体前方横偏差ysrを用いた二次予測式(1)により、リアルタイムで計算され、
γc(t)=-(2V/lc2)ysr・・・(1)
(V:車体速度,lc:カメラの前方注視距離,ysr:前方横偏差)
前記運転モード判断部が前記車両が前記車線変更モード下にあると判断したときは、車線変更運転用の第二の目標ヨーレートを生成する生成手段により前記第二の目標ヨーレート(γδ)は一次遅れ式(2)により計算され、
γδ(s)=〔k/(τ0s+1)〕・δsw(s)・・・(2)
δsw:操舵角,k:ヨーレートゲイン,τ0:時定数,s:ラプラス演算子,
k:2CfV/〔mV2+2(lff-lrr)〕・(1/N),
τ0:IV/2(Cff2+Crr2
(mは車体重量、Iは車体の慣性モーメント、Cf,Crは前輪,後輪のコーナリングパワー、lf,lrは重心点から前輪,後輪までの長さ、Nはステアリングギア比である。)
前記運転モード判断部が、前記車線変更モードの一方から他方に遷移する途中の中間モード下にあると判断したときは、制御信号を発生せず、直前のヨーレートを保持し、
前記2つのヨーレートと、前記ドライバの運転意図決定手段より与えられる確率に応じて目標ヨーレートをセレクトする、セレクト手段と、
前記セレクトされた目標ヨーレートに、実ヨーレートを追従させるために、自動車の制御入力であるヨーモーメント信号を生成し、
後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に駆動されたモータまたは制動機を制御する制御信号を出力する車両運動制御部と、
を備えたことを特徴とする車両運動制御装置。
【0010】
本発明の自動車は、()および()を要旨とする。
)(1)に記載の車線追従制御装置を搭載した自動車であって、後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に駆動されるモータを備え、前記制御部は前記モータを制御することを特徴とする自動車。たとえば、全輪に独立に駆動されるモータを備えている場合、前記制御部はまたは後輪の何れかの左右両輪のモータを制御するようにできる。
【0011】
)(1)に記載の車線追従制御装置を搭載した自動車であって、後部側または前部側の左右両輪または全輪にそれぞれ独立に制動力を付与可能な制動機を備え、前記制御部は前記制動機を制御することを特徴とする自動車。自動車がエンジン自動車の場合には、制動機はブレーキ機構である。また、自動車が電気自動車の場合には、制動機はブレーキ機構であってもよいし、モータの制動システムであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
操舵角(操舵角速度)等をドライバの操作意図の推定に用いることで当該推定を正確に行い、これにより、車線追従制御装置とドライバとの協調を図ることができる。
また、車線追従制御と車線変更操作との干渉がなくなるので、車線変更意図のあるドライバに操舵中に違和感を感じさせることがない。
さらに、車線変更中には横滑り零化制御に切替えることで、急な車線変更に対して車両が安定して走行することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の車線追従制御および自動車は、典型的にはインホイールモータタイプの電気自動車に応用されるが、エンジン自動車のようなホイールシャフト駆動タイプの自動車にも適用できる。
【0014】
本発明では、通常は、操舵される車輪と車線追従制御装置により制御される車輪とは異なっているが、同じであってもよい。たとえば、通常は、前輪が操舵される場合には後輪(駆動輪)が車線追従制御装置により制御されるが、全輪駆動の場合においては前輪は操舵されとともに車線追従制御装置により制御されるようにしてもよい。
【0015】
図1は本発明の車線追従制御装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。図1において、自動車5(ハンドル101,前輪102,後輪103を含む)に搭載された車線追従制御装置1は、ヨーレートγを制御情報のひとつとして車線追従制御を行うもので、運転モード判断部11と、制御部12と、車両運動制御部13とを備えている。
【0016】
運転モード判断部11は、操舵角δ(操舵角速度を含む)または操舵角履歴(操舵角速度履歴を含む)から、現在、自動車5が車線追従モードS1下にあるのか、車線変更モードS3にあるのか、またはこれらのモードの一方から他方に遷移する途中の中間モード下S2にあるのかを判断することができる。この判断は、本実施形態では操舵角δまたは操舵角履歴に基づき行っているが、図1において点線nで示すように横偏差Δy(カメラ等により測定することができる)を参照して(操舵角または操舵角履歴に基づき判断に際して横偏差Δyを参照して)行うことができる。なお、操舵角または操舵角履歴を用いることなく横偏差Δyに基づき運転モードを判断することもできるが、この場合には運転モード判断の精度が低下するので、通常は横偏差Δyのみに基づき運転モードを判断することは行わない。
【0017】
制御部12は、車線追従制御用ヨーレート生成手段121と車線変更制御用ヨーレート生成手段122と切替え手段123とを備えている。図1ではヨーレート生成やヨーレートの切り替えはソフトウェアで行っている。
車線追従制御用ヨーレート生成手段121は、運転モード判断部11が、自動車5が車線追従モードS1下にあると判断したときは、車線追従制御用ヨーレートγδを生成する。
【0018】
また、車線変更制御用ヨーレート生成手段122は、運転モード判断部11が、自動車5が車線変更モードS3下にあると判断したときは車線変更制御用ヨーレートγcを生成する。
さらに、制御部12は、運転モード判断部11が、自動車5が中間モードS2下にあると判断した場合において、直前に車線追従制御用ヨーレートγδを生成してしているときは当該車線追従制御用ヨーレートγδを、直前に車線変更制御用ヨーレートγcを生成してしているときは当該車線変更制御用ヨーレートγcを生成する。
【0019】
運転モード判断部11は、前述したようにハンドル101から操舵角δを取得し、この操舵角δの履歴が所定条件に該当するか否かを検出し、当該操舵角δの履歴が車線変更操作によるものか否かを判断する(なお、この判断は前述したように図1において点線nで示すように横偏差Δyを参照して行うことができる)。
たとえば、運転モード判断部11は、操舵角δの時間変化を取得し、操舵角δの時間変化状態が所定条件に該当するか否かを判断する。典型的には、「操舵角δの時間変化状態」は、操舵角速度dδ/dtであるが、これには限定されず、たとえばd2δ/dt2等を含むことができる。
これにより、ドライバの車線変更意図を推測することができる。
すなわち、運転モード判断部11は、走行モードとして、(a)車線追従モードS1、(b)中間モードS2および(c)車線変更モードS3の3つを設定しており、現在どのモードにあるかの確率を可観測な出力シンボルηに基づき隠れマルコフモデルにより決定することができる。
この場合には、出力シンボルを、操舵角δおよび操舵角速度dδ/dtにより決定することができる。
【0020】
制御部12は、運転モード判断部11が、操舵角δの時間変化状態が車線変更操作によるものでないと判断したときは車線追従制御用のヨーレート(第1の目標ヨーレート)γc(t)を生成し、操舵角δの時間変化が車線変更操作によるものであると判断したときは車線変更制御用のヨーレート(第2の目標ヨーレート)γδ(s)を生成する。切替え手段123は、γc(t)とγδ(s)とをソフト的に切り替えて車両運動制御部13に出力する。車両運動制御部13は、第1の目標ヨーレートγc(t)または第2の目標ヨーレートγδ(s)を取得し、γc(t)およびγδ(s)を制御パラメータとするモーメント制御信号Mを生成し、後輪103に備えられたモータを制御する。
【0021】
図2は、図1の車線追従制御装置1のより具体的なブロック図である。 第1の目標ヨーレートγc(t)、第2の目標ヨーレートγδ(s)を重み係数wで切り替える手法を採用している。図2の車線追従制御装置1では、車体横方向位置y*の情報と実際の車体横方向位置yとの偏差が、ドライバ21と車線追従制御手段231に送出される。そして、ドライバ21のハンドル操作による操舵角δの情報(操舵角速度の情報を含む)に基づき、運転意図決定手段(図1の運転モード判断部11に相当する)22が車線変更を行う。この運転意図決定手段22による判断に応じて車線追従制御手段231、または車線変更制御手段232による制御の何れか選択される。車線追従制御手段231、車線変更制御手段232の何れの手段による制御が行われるかは、確率(w),確率(1-w)により決まる。すなわち、車線追従制御手段231、車線変更制御手段232の出力の何れかを、運転意図決定手段22により与えられる確率(符号241,242)に応じてセレクタ(図1の切替え手段123に相当)25が選択する。セレクタ25の選択に基づき、車両運運動制御部26(図1の車両運運動制御部13に相当)は、電気自動車27(図1の後輪103のホイールに備えられたモータに相当)にモーメント制御信号Mを送出する。
【0022】
以下、図2の車線追従制御装置1の作用を詳細に説明する。図2において、第1の目標ヨーレートγc(t)は、車載カメラシステムを利用した前方横偏差零化のための目標ヨーレートであり、車体前方横偏差ysrを用いた二次予測式(1)により、リアルタイムで計算される。
γc(t)=-(2V/lc2)ysr・・・(1)
V:車体速度,lc:カメラの前方注視距離,ysr:前方横偏差
図2における第2の目標ヨーレートγδ(s)は、車体横滑り角零化のための目標ヨーレートであり、一次遅れ式(2)により計算される。なお、本実施形態で用いている第2の目標ヨーレートγδ(s)は、定常時の横滑り角を零化するものではない。
γδ(s)=〔k/(τ0s+1)〕・δsw(s)・・・(2)
δsw:操舵角,k:ヨーレートゲイン,τ0:時定数,s:ラプラス演算子,
k:2CfV/〔mV2+2(lff-lrr)〕・(1/N),
τ0:IV/2(Cff2+Crr2
なお、mは車体重量、Iは車体の慣性モーメント、Cf,Crは前輪,後輪のコーナリングパワー、lf,lrは重心点から前輪,後輪までの長さ、Nはステアリングギア比である。
式(1),(2)に示す目標ヨーレートに重み係数をかけて、式(3)に従い切り替える。
γd(t)=w(t)・γc(t)+〔1-w(t)〕・γδ(t)・・・(3)
重み係数は、ドライバの運転行動により決定することとし、その認識手法については後述する。

【0023】
また、実ヨーレートを目標ヨーレートに追従させるために、ヨーモーメントMは車両ダイナミックスの逆モデルを考えることにより、式(4)から算出する。ただし、式(4)の第1項はプロパな制御系ではないので、τを時定数とした一次のローパスフィルタを付加している。
M(s)=〔s2-(a11+a22)s+a11×a22-a12×a21
/〔(h2s+a211-a11h2)(τs+1)〕×γd(s)
-〔h2s+a211-a112)/(b2s+a211-a112)〕×δf(s)
・・・(4)
11=-2(Cf+Cr)/mV,
12=-〔1+(2Cff-2Crr)/mV2〕,
21=-2(Cff-Crr)/I,
22=-2(Cff2+Crr2)/IV,
1=0,b2=1/I,h1=2Cff/mV,h2=2Cff/I
δfは前輪実舵角であるが、直接計算できないため、ドライバ操舵角を利用し、式(5)より求める。
δf=δsw/N・・・(5)
【0024】
式(4)により決定したヨーモーメント入力を実現するため、本実施形態では対象とする後輪駆動方式の電気自動車の駆動力制御システムによりヨーモーメントを発生させている。左右輪それぞれの駆動力は直進走行時の駆動力Fx0から同じ駆動力指令値を増減したものとし、以下のように計算できる。
〔左輪の駆動力〕 Fxrl=Fx0-M/d・・・(6)
〔右輪の駆動力〕 Fxrr=Fx0+M/d・・・(7)
d:後輪のトレッド
上記の駆動力は、左右輪それぞれのインホイールモータトルクにより発生させる。モータの減速機構により伝達ロスや車輪のスリップを無視すれば、左右の駆動トルク指令値は式(8),式(9)のようになる。
〔左輪の駆動トルク〕 Tml=Fxrl×rw・・・(8)
〔右輪の駆動トルク〕 Tmr=Fxrr×rw・・・(9)
w:タイヤの有効半径
ドライバの運転行動認識手段として、隠れマルコフモデルを用いた運転制御を説明する。
隠れマルコフモデルは時系列データに基づ確立モデルであり、一般的な行動認識手法である。
これを用いることで、ドライバの車線変更行動を認識することができる。
【0025】
本例では、図3の状態遷移モデルを示すように、ドライバの運転状態として、S1:車線追従状態、S2:待機状態、S3:車線変更状態の3つのパターンを設置した。
これらのドライバの運転状態は観測可能な状態(可視状態)にないため、これらの運転状態を可視のシンボルηdに置き換えることで、現在の運転状態を推定することとする。
可視のシンボルηdはドライバの操舵角と操舵角速度により決定することとし、そのために、図4(A),(B)に示すようなメンバシップ関数を設定し、これを用いて出力シンボルηdを決定する。
図4(A),(B)のメンバシップ関数の閾値はδ1=0.25rad,δ2=0.5rad,dδ1/dt=1.0rad/sec,dδ2/dt=2.0rad/secである。
このメンバシップ関数を用いることで、あるステップ時間tnにおいて、操舵角δ、操舵角速度dδ/dtからそれぞれ3つの値μδl,μδ'm(l,m=1,2,3、なお、δ’はδの微分係数である)を得ることができる。次に、これらの値を式(10)に従い、9つの積Hk(k=1,2,・・・,9)を求める。最後に式(11)に従い、9つの積Hkの値が最大のものの添え字を時間tnにおける出力シンボルμδ'mの値とする。
k(tn)=μδl×μδ'm・・・(10)
μd(tn)=arg max[Hk(tn)] ・・・(11)
時間により変化する各状態は遷移確率<a>(以下、明細書中では確率を三角括弧「<>」で示す)により変化し、出力シンボルは各状態から出力確率<b>によって出力される。これらの確率は状態遷移確率行列《Ay》(以下、明細書中では行列を二重三角括弧「《》」で示す)、出力確率行列《By》として、Baum-Welchのアルゴリズムを用いて学習させ、式(12)のように各出力シンボルに対応する出力分布確率《Bd》を設定する。
《Bd》(yd(tn))[3×3]=diag{<b>yd(tn)}・・・(12)
【0026】
以上に述べた隠れマルコフモデルから現在のドライバの運転行動を認識するための方法を以下に述べる。
まず、式(13)のような行列ベクトルを定義する。
《P》n|n[3×1] =[Pn|n(1) Pn|n(2) Pn|n(3)]T・・・(13)
ただし、Pn|n(i)は現在のステップ時間tnにおけるドラバの運転状態がSi(i=1,2,3)である確率であり、これらは以下に示す式(14),(15)に従い求めることができる。
《P》n|n-1[3×1]=《A》T[3×3]《P》n-1|n-1[3×1] ・・・(14)
《P》n|n[3×1]=《B》d(yd(tn))[3×3] 《P》n|n-1[3×1]
/[111]《B》d(yd(tn))[3×3] 《P》n|n-1[3×1] ・・・(15)
以上の手法により、求めた値から、式(16),式(17),式(18)の規則に従い、ドライバの運転行動を決定する。認識結果を制御に適用するため、決定した運転行動をもとに前節で述べた切り替えシステムの重み係数をもとに前節で述べた切り替えシステムの重み係数を決定する。本実施形態では、車線変更行動であると認識されれば“0”、車線変更行動であると認識されなければ“1”を出力することとしている。
【0027】
すなわち、
arg max{Pn|n(i)}=1のときは、w(tn)=1・・・(16)
arg max{Pn|n(i)}=3のときは、w(tn)=0・・・(17)
その他のときは、w(tn)=w(tn-1
以上に述べた隠れマルコフモデルを用いた運転行動認識システムの有効性の検証を行った。システムを実車に実装し、図5に示すシングルレーンチェンジの走行実験を行い、ドライバの操舵角入力、操舵角速度入力により、車線追従、車線変更の行動認識アルゴリズムが有効であるかを検証した。結果を図6に示す。図6において、(A)はドライバの操舵角、(B)は操舵角速度、(C)は出力シンボル、(D)は行動認識出力を示す図である。
結果から、ドライバのハンドル操作後に行動認識出力が0になり、車線変更行動が認識されていることが確認できる。また、ドライバが車線変更を終え、ハンドル操作を終了した後は、行動認識出力が再び1への戻り、車線追従の運転意図を認識できていることからも、システムの有効性を確認できた。
【0028】
運転行動認識に基づく支援効果をシミュレーションにより検討した。シミュレーションの条件は図7に示すように、車体速度35km/hで走行し、5秒後に幅2mの車線変更を10mの間に行うものとした。なお、今回のシミュレーションでは、DYC(Dynamic Yawmoment Controrl)入力の上限値を400Nm、下限値を-400Nmとした。
シミュレーションの結果を図8,図9に示す。図8は切り替えシステムを適用せずに、車線追従制御のみで走行した場合の結果を示している。また、図9は本発明を適用した場合の結果を示す図である。
図8,図9において(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は実ヨーレートおよび目標ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
また、車線追従制御のみの車両軌跡を図10に、行動認識システムを適用した制御の車両軌跡を図11に示す。
図8から、目標ヨーレートの切り替えを行わず、車線追従制御のみで走行した場合、車線変更時に、ドライバの行動に反するヨーモーメントが働き、初期の車線変更において、大きな操舵角が必要となることが確認できる。それに対して、提案したシステムは、図9より、車線変更の行動認識が行われていることが確認できる。それにより、車線変更中は、横滑り角零化のために、操舵角に応じた目標ヨーレートに切り替わり、実ヨーレートが目標ヨーレートに追従し、その結果横滑り角が抑えられる。さらに、図10、図11により、車線追従制御のみで走行した場合の車両軌跡は目標コースからの偏差が大きいのに対し、本発明のシステムは追従性能が上がっていることがわかる。
【0029】
隠れマルコフモデルを用いた運転行動認識システムを適用したヨーモーメント制御を実車NOVEL-1に搭載し、シミュレーションと同様に図5のシングルレーンチェンジ走行実験を行い、運転行動の認識精度及び提案したDYCの支援効果を、目標ヨーレートの切り替えを行わない車線追従制御のみで走行した場合と比較した。実験結果の時系列データを図12,図13に示す。図12,図13において(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は後輪左右の駆動トルク,ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
また、図14はドライバの操舵角速度、図15は車体横滑り角とドライバの操舵角によるリサージュ曲線である。図15のリサージュ曲線は、操舵角‐横滑り角線図上の面積が小さいほど、安定性が優れることを意味する。
図12により、目標ヨーレートの切り替えを行わない車線追従制御モードのみで走行した場合、車線変更中は元の車線に戻そうとするヨーモーメントが加わり、ドライバの操舵負担になっていることがわかる。
また、車線変更中には、図13より、車線変更中に重み係数が0に切り替わり、横滑り角零化制御に切り替わることで、ドライバの操舵入力に比例した目標ヨーレートが算出される。また、車線変更終了後、重み係数は再び1に戻っていることから、運転行動認識が行われていることが確認できた。
図14により、初期の車線変更において、本発明を適用したヨーモーメント制御は、操舵角速度が小さくなっており、緊急時において、ドライバの操舵角介入がしやすくなる。さらに、図15から、横滑り角が操舵角とともに同時に低減されており、車両の操縦安定性が工場いていることが確認でき、運転行動認識に基づくヨーモーメント制御システムの有効性が実車実験により実証できた。
【0030】
以上述べたように、本発明の車線追従制御装置1では、ヨーレートγを制御パラメータのひとつとして車線追従制御を行う機能を有し、(a)操舵角δを取得し当該操舵角の時間変化状態が所定条件に該当するか否かを検出し、当該操舵角δの時間変化状態が車線変更操作によるものか否かを判断する運転モード判断部11と、(b)運転モード判断部11が操舵角の時間変化状態が車線変更操作によらないものと判断したときは車線追従制御用の目標ヨーレート(γc)を生成し、運転モード判断部11が操舵角δの時間変化状態が車線変更操作によるものと判断したきは車線変更制御用の目標ヨーレート(γδ)を生成する制御部12と、(c)少なくとも制御部12により取得した目標ヨーレートを制御パラメータとする車両制御信号Mを生成する車両運動制御部13とを備える。これにより、車線追従制御装置作動中にドライバによる車線変更操作が行われる場合において、違和感を感じさせないように適切なタイミングで車線追従制御動作を解除し、かつ車線変更時における車両走行安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の車線追従制御装置の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】図1の車線追従制御装置のより具体的なブロック図である。
【図3】車線追従状態、待機状態、車線変更状態の3つのパターンを設置した。
【図4】(A),(B)はメンバシップ関数を示す図である。
【図5】シングルレーンチェンジの走行実験を示す説明図である。
【図6】車線追従、車線変更の行動認識アルゴリズムが有効であるかを検証するための図であり、(A)はドライバの操舵角、(B)は操舵角速度、(C)は出力シンボル、(D)は行動認識出力を示す図である。
【図7】運転行動認識に基づく支援効果を示すシミュレーションの条件を示す図である。
【図8】切り替えシステムを適用せずに、車線追従制御のみで走行した場合の結果を示す図であり、(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は実ヨーレートおよび目標ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
【図9】本発明を適用した場合の結果を示す図であり、(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は実ヨーレートおよび目標ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
【図10】車線追従制御のみの車両軌跡を示す図である。
【図11】本発明における行動認識システムを適用した制御の車両軌跡を示す図である。
【図12】目標ヨーレートの切り替えを行わない車線追従制御モードのみで走行した場合の実験結果の時系列データを示す図であり、(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は後輪左右の駆動トルク,ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
【図13】本発明による行動認識システムによる制御を行って走行した場合の実験結果の時系列データを示す図であり、(A)は前方横偏差を、(B)は操舵角を、(C)は重み係数およびDYC入力を、(D)は後輪左右の駆動トルク,ヨーレートを、(E)は横滑り角をそれぞれ示すグラフである。
【図14】ドライバの操舵角速度を示す図である。
【図15】車体横滑り角とドライバの操舵角によるリサージュ曲線である。
【符号の説明】
【0032】
1 車線追従制御装置
5 車両
11 運転モード判断部
12 制御部
13 車両運動制御部
14 偏差検出部
101 ハンドル
102 前輪
103 後輪
121 車線追従制御用ヨーレート生成手段
122 車線変更制御用ヨーレート生成手段
123 切替え手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図11】
9
【図12】
10
【図13】
11
【図14】
12
【図15】
13
【図5】
14