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明細書 :無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法及びこの方法による半導体デバイス、量子デバイス、マイクロマシーンコンポーネント及び微細構造体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4052430号 (P4052430)
公開番号 特開2003-179032 (P2003-179032A)
登録日 平成19年12月14日(2007.12.14)
発行日 平成20年2月27日(2008.2.27)
公開日 平成15年6月27日(2003.6.27)
発明の名称または考案の名称 無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法及びこの方法による半導体デバイス、量子デバイス、マイクロマシーンコンポーネント及び微細構造体
国際特許分類 H01L  21/3065      (2006.01)
B81C   1/00        (2006.01)
FI H01L 21/302 105A
B81C 1/00
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2001-377084 (P2001-377084)
出願日 平成13年12月11日(2001.12.11)
審査請求日 平成16年12月6日(2004.12.6)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000057
【氏名又は名称】財団法人新産業創造研究機構
発明者または考案者 【氏名】金子 忠昭
【氏名】浅岡 康
【氏名】佐野 直克
個別代理人の代理人 【識別番号】100089196、【弁理士】、【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226、【弁理士】、【氏名又は名称】須原 誠
審査官 【審査官】今井 淳一
参考文献・文献 特開昭63-51641(JP,A)
特開平6-310491(JP,A)
特開平4-130619(JP,A)
調査した分野 H01L 21/3065
B81C 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
半導体基板Xの表面に、前記基板Xの酸化を防止し化学的にも熱的にも安定な酸化膜層を形成できる無機材料Y層を形成し、さらに、該Y層表面に該Y層の酸化を防止し熱的に不安定な自然酸化膜又はY層よりも弱いが化学的に安定な強制酸化膜といった複数の酸化膜を形成できる無機材料Z層を形成した後、該Z層表面に自然に形成されている表面自然酸化膜の存在又は酸素分子放射のもとでの金属イオン打ち込みにより、前記表面自然酸化膜を選択的に安定な強制酸化膜Z'層に置換又は生成させ、更にイオンの打ち込み量を増やし、自然酸化膜または強制酸化膜Z'層からのOイオンの伝播及びZ層のスパッタリングにより前記Y層に熱的にも化学的にも安定な酸化膜Y'層を生成させた後、前記基板X表面を反応性エッチングガスにより精度よくドライエッチングし、前記強制酸化膜Z'層及び酸化膜Y'層に置換した部分以外の前記表面酸化膜、Z層、Y層及び基板Xの一部を除去する無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法。
【請求項2】
前記Z層の厚みを制御することによって前記Y層表面に形成される前記酸化膜Y'層の大きさを制御する請求項1に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法。
【請求項3】
前記金属イオンの注入量を制御することによって前記Y層表面に形成される酸化膜Y'層の大きさを制御する請求項1又は2に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法。
【請求項4】
前記強制酸化膜Z'層及び酸化膜Y'層に置換される部分の大きさ及び前記ドライエッチングによる除去量を制御することによって前記基板表面を、ネガ型、ポジ型のいずれにも加工することができる請求項1~3のいずれかに記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法。
【請求項5】
前記反応性エッチングガスに、AsBr、AsBr2、AsBr3を用いる請求項1に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの方法により製作された半導体デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかの方法により製作された量子デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれかの方法により製作されたマイクロマシーンコンポーネント。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれかの方法により製作された微細構造体。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、Si、SiC、GaAsを含むInxGa1xAsy1yやAlxGa1xAsy1y等の無機材料からなる半導体基板表面へのイオンビーム微細加工方法及びこの方法による半導体デバイス、量子デバイス及びマイクロマシーンコンポーネントに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、マイクロエレクトロニクスの中核をなすULSIの集積度の向上とともに、これら量子デバイスにおける回路パターンは微細化の一途をたどっている。このため、ナノ領域での微細加工技術の開発が盛んに行われている。
【0003】
従来、これら量子デバイスの回路パターンの微細加工技術の代表的なものとしては、パターン転写方式の光リソグラフィーがある。この光リソグラフィー技術は、極紫外光やX線を用いることにより高精度化を目指してはいるものの、高精度の微細なマスクを作製する必要があるとともに、フォトレジストを用いるときの解像度の点で限界に近づきつつある。また、これら従来の方法からの拡張では開発コストも無視し得ないものになっており、新しい、微細加工方法の開発が要望されている。
【0004】
また、半導体デバイスの作製プロセスでは、絶縁膜や金属薄膜の不要部分を、レジストパターン通りに高精度で取り除くための基礎技術として、半導体結晶のエッチング法が広く採用されている。このエッチング法のための手段として、ハロゲンガスを用いたドライエッチングの検討も進められている。このドライエッチングは、超高真空中の比較的清浄な雰囲気でエッチングを行うため、微細な量子デバイスの加工が可能なものとして期待されている。
【0005】
例えば、デバイス材料として代表的なSiについては、フッ素および塩素系のハロゲンガスによるドライエッチングプロセスが検討されている。しかしながら、これまでのところ、このSiの場合についても、より微細な量子素子を作製するためのドライエッチングプロセスはいまだ完成していないのが実情である。そして、GaAsを含むGaxIn1-xAsy1-yやGaxAl1-xAsy1-y等の化合物半導体についてもドライエッチングプロセスに関する報告は多いが、量子素子の作製を可能とする技術的手段についてはいまだSi同様に、完成していないのが実情である。
【0006】
例えば、GaAsはSiに比べ電子の移動度が大きく、Siより高周波、高速の動作が可能な材料であって、資源の豊かさ、結晶の完全性等の点から工業規模の大きさで発展し、Siに代わり、その限界を克服する化合物半導体の1種としてその優れた性質と多様性で注目されているものである。またこのGaAs等の化合物半導体のエピタキシャル結晶技術として、MBE(分子線エピタキシャル成長)法や、MOCVD(気相成長)法等の技術が進歩し、一様な結晶成長が可能になってきており、化合物半導体のデバイス材料としての重要度は増してきている。
【0007】
そこで、本発明者は、化合物半導体等に対する従来のハロゲンガスによるドライエッチング方法の技術的限界を克服するドライエッチング方法として、半導体結晶表面を臭素化物により一原子層単位でドライエッチングする方法を開発し、特開平8-321483号公報で開示している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、GaAs基板表面に精度良く回路パターンを形成するためには、前述の一原子層単位でドライエッチングする場合であっても、ドライエッチング用マスクを形成する必要があった。このドライエッチング用マスクは、前述したように、近年の、量子デバイスにおける回路パターンの微細化、複雑化に伴い、ドライエッチング用マスクの微細化は限界に近づきつつある。
【0009】
また、SiやGaAs基板表面には、自然にSiO2、As23、As2O、GaO等の表面酸化膜が形成されており、ドライエッチング用マスクを形成するにあたり、これら表面酸化膜を除去する必要もあった。
【0010】
本発明は、前記問題点に鑑みなされたものであり、Si、SiCやGaAs等の無機材料からなる多層基板の表面酸化膜を予め除去する必要がなく、また、複雑で微細化された回路パターンを形成するためのドライエッチング用マスクを形成することなく、無機材料からなる多層基板表面に、量子デバイスに用いられる微細な2次元及び3次元の回路パターンを形成するイオンビーム微細加工方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するための本発明の請求項1に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、半導体基板Xの表面に、前記基板Xの酸化を防止し化学的にも熱的にも安定な酸化膜層を形成できる無機材料Y層を形成し、さらに、該Y層表面に該Y層の酸化を防止し熱的に不安定な自然酸化膜又はY層よりも弱いが化学的に安定な強制酸化膜といった複数の酸化膜を形成できる無機材料Z層を形成した後、該Z層表面に自然に形成されている表面自然酸化膜の存在又は酸素分子放射のもとでの金属イオン打ち込みにより、前記表面自然酸化膜を選択的に安定な強制酸化膜Z'層に置換又は生成させ、更にイオンの打ち込み量を増やし、自然酸化膜または強制酸化膜Z'層からのOイオンの伝播及びZ層のスパッタリングにより前記Y層に熱的にも化学的にも安定な酸化膜Y'層を生成させた後、前記基板X表面を反応性エッチングガスにより精度よくドライエッチングし、前記強制酸化膜Z'層及び酸化膜Y'層に置換した部分以外の前記表面酸化膜、Z層、Y層及び基板Xの一部を除去するものである。
【0012】
無機材料基板X表面に無機材料Y層を形成することで、基板Xの酸化が抑制される。このY層は、MBE法やCVD法によって形成されたものであることが好ましい。MBE法やCVD法によって形成されることで、原子層単位での厚み制御が可能となる。このY層の表面に、さらに無機材料Z層を形成する。このZ層も、前述のY層同様にMBE法やCVD法で形成されたものであることが好ましい。MBE法やCVD法で形成されることによって、原子層単位での厚み制御が可能であるため、Y層へのOイオンの伝播量の制御が可能となる。また、このZ層は緩衝層としても作用する。このZ層の表面に形成される自然酸化膜の表面に直接任意のイオンビーム径及びイオン電流密度に調整したGa等の比較的重い金属のイオンの集束イオンビームを照射して、Z層表面の表面自然酸化膜を選択的に化学的に安定な強制酸化酸化膜Z'層に置換する。このZ'層からのOイオンの伝播及びZ層のスパッタリングによってY層表面に化学的にも熱的にも安定な酸化膜Y'層を形成し、それ以外の酸化膜、Z層、Y層及び基板Xの一部を10-8Pa以下程度の減圧下において、ドライエッチングして、化学的に安定なY'を残すことによって、無機材料である基板表面Xにマスクを使用することなく、任意の回路パターンを自在に形成することができる。
【0013】
なお、ここで、半導体基板Xとなる無機材料としては、Si、SiC、GaAsを含むGaxIn1-xAsy1-yやGaxAl1-xAsy1-y等を使用できる。また、この基板Xの酸化を防止し化学的にも熱的にも安定な酸化膜層を形成できる無機材料Y層としては、Al、AlAsを含むGaxAl1-xAsy1-y等がある。さらにこのY層の表面に形成されるZ層としては、アモルファスSi層や、GaAsを含むGaxIn1-xAsy1-y等がある。
【0014】
また、請求項2に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、請求項1において、前記Z層の厚みを制御することによって前記Y層表面に形成される前記酸化膜Y'層の大きさを制御するものである。
無機材料Z層は、MBE法やCVD法によって形成されることが好ましい。原子層単位の厚みで制御されるからである。これによって、このZ層の厚みによってY層へ伝播されるOイオンの量を制御することができ、Y層表面に形成される酸化膜Y'層の大きさが制御できる。
【0015】
また、請求項3に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、請求項1又は2において、前記金属イオンの注入量を制御することによって前記Y層表面に形成される酸化膜Y'層の大きさを制御するものである。
例えば、Ga等の金属イオンの注入量を制御することによって、Z層表面に生成される強制酸化膜Z'層の大きさを制御することが可能となる。これにより、このZ'層から伝播されるOイオン量を制御することができ、Y層表面に形成される酸化膜Y'層の大きさを制御することができる。
【0016】
また、請求項4に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、請求項1~3のいずれかにおいて、前記強制酸化膜Z'及び酸化膜Y'層に置換される部分の大きさ及び前記ドライエッチングによる除去量を制御することによって前記基板表面を、ネガ型、ポジ型のいずれにも加工することができるものである。
化学的に安定なZ'層及び熱的にも化学的にも安定なY'層の形成される大きさを制御するとともに、エッチング量を制御することによって、基板X表面を、ネガ型、ポジ型のいずれにも自在に加工することができる。このため、近年の量子デバイスに用いられる回路パターンのように、複雑化し、微細化した回路パターンにも対応が可能となる。
【0017】
また、請求項5に記載の無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、請求項1において、前記反応性エッチングガスに、AsBr、AsBr2、AsBr3を用いるものである。
原子層単位でのエッチングが可能となり、基板X表面に任意の回路パターンを自在に形成することができる。
【0018】
また、本発明は、上記の請求項1乃至5のいずれかの方法により製作された半導体デバイス、量子デバイス、マイクロマシーンコンポーネント及び微細構造体である。
本発明に係る無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、任意の形状に無機材料表面を加工することが可能であることから、半導体デバイス、量子デバイス、マイクロマシーンコンポーネント及び微細構造体の製作を可能とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法の実施の形態の一例を説明する。図1は、Gaイオンを打ち込んだ状態の断面模式図であり、図2及び図3は、原子層単位でドライエッチングをした場合の断面模式図であり、図2はエッチング量の少ないもの、図3はエッチング量の多いものを示している。
【0020】
図1において、1はSiやGaAsを含むGaxIn1-xAsy1-y等の無機材料からなる基板Xである。2は基板X1表面にMBE法やCVD方により形成され、基板X1表面の酸化を防止し化学的にも熱的にも安定な酸化膜層を形成できるAlやAlAsを含むGaxAl1-xAsy1-y等の無機材料Y層を示す。3はこのY層2の表面にMBE法やCVD法により形成されたY層2の酸化を防止し熱的に不安定な表面酸化膜又はY層よりも弱いがある程度化学的に安定な強制酸化膜といった複数の酸化膜を形成でき、レジスト層となるアモルファスSi層、GaAs層、InAs層を含むGaxIn1-xAsy1-y層等の無機材料Z層である。4はこのZ層3の表面に自然に形成されているSiO2やAs23等の表面の表面自然酸化膜を示している。また、紙面左から右にかけて、即ち、図1(a)~(e)に移るにしたがって金属イオン、例えば、Gaイオンの注入量が増加していることを示している。
【0021】
本発明に係る無機多層レジストのイオンビーム微細加工方法は、まず、Si、SiCや、GaAsを含むGaxIn1-xAsy1-y基板X1表面にMBE法やCVD法により任意の厚みに形成されたAlやAlAsを含むGaxAl1-xAsy1-y等の無機材料Y層2、及びアモルファスSi層、GaAs層やInAs層を含むGaxIn1-xAsy1-y層等の無機材料Z層3と積層する。そして、Z層3の表面に自然に形成されているSiO2やAs23等の表面自然酸化膜4を除去することなく、この表面自然酸化膜4の表面に向ってイオンビーム径を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.1μm以下に絞った比較的重い金属からなるイオン、好ましくはGaイオン5を真空中若しくは酸素供給の下で照射して、表面自然酸化膜4にイオンを注入する。金属イオン5の注入により、表面自然酸化膜4のSiO2、As23等の酸化物は、ある注入量以下では化学的に安定した酸化物であるSiO2、Ga23等の強制酸化膜Z'層6に置換される(図1(a)参照)。そして、金属イオン5の注入量あるいはZ層3の厚みによって、Y層2に伝播する酸素の量又はZ層のスパッタリング量を制御でき、Y層2の表面にAl23等の酸化膜Y'層7が形成される(図1(b)参照)。これら化学的に安定な強制酸化膜Z'層6及び酸化膜Y'層7は、ドライエッチング時のマスクの役割を果たす。また、酸化膜Y'層7のサイズは強制酸化膜Z'層6の約1/10の大きさであるため、強制酸化膜Z'層6のみが形成された場合に比べて、細かいパターニングが可能となる。このため表面を臭素化物により原子層一層単位でドライエッチングし、強制酸化膜Z'層6及び酸化膜Y'層7に置換された部分以外を除去する(図2(b)参照)と、基板X1の表面を所定の回路パターンとなるように加工することが可能となる。
【0022】
表面自然酸化膜4の表面に照射する集束イオンビームは、図4に示すように、ビーム先端が円形をしている。このため、図4(a)に示すように、表面自然酸化膜4上を一定速度で進めると、各部分で、イオンビーム5が重なり合う部分が形成される。このため、表面自然酸化膜4に注入されるイオンドーズ量は、図4(b)に示すように、イオンビーム5の中心部付近ほどその量が多くなる。すなわち、表面自然酸化膜4に及ぼすイオン領域は、実際のイオンビーム5の径よりも小さくなり、その領域は、照射するイオンビーム径の2/3~1/2の大きさとできる。このため、表面自然酸化膜4表面には、イオンビーム5のイオンビーム径の2/3~1/2の太さの線のパターンを加工することが可能となる。
【0023】
ここで、本実施形態例に係るドライエッチングによると、平坦性のよい表面を再現性よく得ることを可能としている。具体的には、例えば、臭素化物等からなる反応性エッチングガスによるエッチングでは、エッチングされていく原子が表面のステップ位置であって、表面の凹凸を構成しているステップを優先的に取り除くため、原子層を一層単位でエッチングすることができる。このような一層単位でのエッチングの結果、得られる表面はきわめて平坦性の高いものである。すなわち原子レベルで平坦な表面を得ることができる。さらにこの方法はへき開面である(110)面でも、面指数に関わらない同様なエッチングを可能としている。
【0024】
このドライエッチングにおいては、反応性エッチングガスを用いて超高真空中で、たとえば10-8Paレベルへの排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのエッチャントガスの導入によりエッチングを実施することができる。ここで、エッチャントガスとして用いられる反応性エッチングガスとしては、好ましくは臭素との化合物、たとえばAsBr3がその代表的なものとして例示される。もちろん、他種のものであってもよい。
【0025】
このように、表面自然酸化膜4や、アモルファスSi層、GaAs層やInAs層を含むGaxIn1-xAsy1-y層等の無機材料Z層3、Al層やAlAs層を含むGaxAl1-xAsy1-y層等の無機材料Y層2を原子層一層単位毎にエッチングすることが可能であるため、Gaイオンの注入によって形成される化学的に安定なSiO2、Ga23、Al23の強制酸化膜Z'層6及び酸化膜Y'層7をドライエッチング時のマスクとして、高アスペクト比で微細寸法の構造体を再現性良く且つ容易に形成することが可能となる。
【0026】
図1(a)は、金属イオン5がある所定量注入され、表面自然酸化膜4の一部にのみ強制酸化膜Z'層6が形成された状態を示している。
【0027】
この状態で、反応性エッチングガスとして、例えば、臭素化物ガスを用いて超高真空中で、例えば10-8Paレベルへの排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのエッチャントガスの導入によりドライエッチングを行ったものを図2(a)に示す。エッチング量を制御することによって、図2(a)に示すように、Siあるいは、GaAsやInAsを含むGaxIn1-xAsy1-y等の基板X1表面を、強制酸化膜Z'層6に置換された部分を残した凸状に加工することが可能となる。
【0028】
さらに、エッチングを行うと、強制酸化膜Z'層6に置換された部分もエッチングされ、図3(a)に示すように、平坦な面となる。
【0029】
図1(b)は、金属イオン5の注入量がある所定の注入量を超えた場合について示している。図1(b)に示すように、金属イオン5の注入量がある所定の注入量を超えると強制酸化膜Z'層6はスパッタリングされ金属イオンは無機材料Z層3に侵入し、この無機材料Z層3に金属イオンが注入された金属イオン侵入領域8が形成される。この金属イオン侵入領域8のOイオンがAl層やAlAs層等の無機材料Y層2に到達し、この無機材料Y層2の表面にAl23等の酸化膜Y'層7が形成される。このとき、Al、AlAsを含む無機材料Y層2の表面に形成される酸化膜Y'層7は、無機材料Z層3の厚みによって制御される。
【0030】
この状態で、ドライエッチングを行い、そのエッチング量が少ないものを図2(b)に示す。エッチング量が少ない場合、表面自然酸化膜4に形成された強制酸化膜Z'層6及び無機材料Y層2表面に形成された酸化膜Y'層7がマスクとして作用する。金属イオンが侵入したイオン侵入領域8は、アモルファス化され、イオンが侵入していない無機材料Z層3に比べ大きなエッチング速度を示す。このため、ドライエッチングを行うと、これら強制酸化膜Z'層6及び酸化膜Y'層7以外の部分がエッチングされるとともに、中央に深い溝9が形成された凸状部が基板X1表面に形成される。
【0031】
さらに、エッチングを行うと、図3(b)に示すように、Al237部分以外がエッチングされ、基板1上に凸状部が形成される。
【0032】
また、図1(c)に示すように、表面自然酸化膜4にさらに金属イオンを注入していくと、表面に形成されている表面自然酸化膜4が強制酸化膜Z'層6に置換していくが、強制酸化膜Z'層6へ置換されるものにも金属イオンの濃度限界があり、ある一定量以上の金属イオンが注入されると、強制酸化膜Z'層6が金属イオンによってスパッタリングされ、幅広の溝9が形成される。この場合、さらにOイオンが無機材料Y層2表面に伝播されやすくなり、無機材料Y層2表面に酸化膜Y'層7が広い範囲で形成される。
【0033】
この状態で、エッチングを行うと、エッチング量が少ない場合は、図2(c)に示すように、幅広の溝9を有した凸状部が基板X1上に形成される。また、エッチング量を多くすることによって、図3(c)に示すように、酸化膜Y'層7部分以外がエッチングされ、基板X1上に凸状部が形成される。
【0034】
さらに、注入する金属イオン5量を増やしていくと、図1(d)に示すように、無機材料Z層3がアモルファス化される範囲が拡大して、金属イオン5によってスパッタリングされる。また、無機材料Y層2表面に形成される酸化膜Y'層7も、金属イオンによってスパッタリングされ、溝10が形成される。この基板X1の表面を、前述同様に反応性エッチングガスを用いて超高真空中で、たとえば10-8Paレベルへの排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのエッチャントガスの導入によりドライエッチングを行うと、表面に幅広の深い溝9を有するとともに、底部にも溝10が形成された凸状部を加工することができる(図2(d)参照)。また、エッチング量を多くすることによって、図3(d)に示すように、酸化膜Y'層7部分以外がエッチングされ、基板X1上に溝10を有する凸状部が形成される。
【0035】
さらに、注入する金属イオン5量を増やしていくと、図1(e)に示すように、無機材料Z層3がアモルファス化される範囲が拡大して、金属イオン5によってスパッタリングされる。また、無機材料Y層2も同様にアモルファス化される範囲が拡大し金属イオン5によってスパッタリングされ、深いV字溝11が表面に形成される。この基板1の表面を、前述同様に反応性エッチングガスを用いて超高真空中で、たとえば10-8Paレベルへの排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのエッチャントガスの導入によりドライエッチングを行うと、無機材料Z層3のアモルファス化された部分等がエッチングされ、図2(e)に示すように、強制酸化膜Z'層6によるマスク下がエッチングされ、幅広の溝9が形成されるとともに、底部に幅広で深い溝10を有する凸状部を加工することができる。また、エッチング量を多くすることによって、図3(e)に示すように、酸化膜Y'層7部分以外がエッチングされ、基板X1上に溝10を有する凸状部が形成される。
【0036】
このように、SiあるいはGaAsやInAsを含むGaxIn1-xAsy1-y等の無機材料の基板X表面に、Al層、AlAs層を含むGaxAl1-xAsy1-y層等の無機材料Y層及びGaAsやInAsを含むGaxIn1-xAsy1-y等の無機材料Z層を積層する。そして、この無機材料Z層の表面に自然に形成されているAs23等の表面自然酸化膜を除去することなく、該表面自然酸化膜にGa等の重い金属のイオンを注入することで、表面に化学的に安定な酸化膜、さらには金属イオンの注入量及び無機材料Z層の厚さを調節することによってAl層やAlAs層を含むGaxAl1-xAsy1-y層等の無機材料Y層表面にAl23等の酸化膜Y'層を形成することが可能となる。そして、注入する金属イオン量を制御することによって反応性エッチングガスによるドライエッチング後の基板Xの表面をネガ型、ポジ型のいずれにも加工することが可能となる。また、Gaイオン注入時に所定の回路パターンとなるように基板Xの表面をイオンビームで描画することによって、容易に任意の回路パターンを再現性良く加工することができる。これによって、半導体デバイスはもちろんであるが、波長弁別デバイス、マイクロマシニングやマイクロコンポーネント等の微細加工、量子ワイヤー等へ応用が可能となる。
【0037】
また、Al層やAlAs層を含むGaxAl1-xAsy1-y層等の無機材料Y層と、アモルファスSi層、GaAs層やInAs層を含むGaxIn1-xAsy1-y層等の無機材料Z層が積層されているため、イオン注入によって形成される化学的に安定な異なる酸化膜を形成することが可能となり、従来のように2次元的な回路パターンの設計のみならず、設計の自由度が広がり、3次元的に回路パターンを設計することも可能となる。
【0038】
3次元の回路パターンを形成させる手段の一つとして、例えば、図5に示すように、可変ドーズ量ビームを用いた空間変調マスクを形成する方法がある。このとき、ドーズ量の調整及びビーム照射位置を制御することで、図6(a)乃至(c)に示すようなパターンの形成が可能となる。
【0039】
図8に、イオンビームを重ね合わせるように描画することによってY層へ伝搬するイオンドーズ量を調整することができ、基板表面に凸部又は凹部が形成できる一例として、基板表面の原子間力顕微鏡(以下、AFMという。)像を示す。図8(a)に示すものは、Z層の厚みを厚くすることで凸部が形成されたもの、図8(b)は、Z層の厚みを図8(a)のものよりも薄くすることでイオンドーズ量を多くし、凹部が形成されたものである。このように、イオンドーズ量に対して非常に敏感に反応するため、Z層の厚みを制御したり、イオン照射量を制御することで、イオンドーズ量を調整することによって、表面形状を自在に設計することが可能となる。
【0040】
また、Gaイオンビームの位置精度は10nmの単位で制御可能であるため、例えば、図7に示すようにイオンビームを重ね合わせることによって更に微細な回路パターン等の加工も可能となる。なお、本実施形態例では、Gaイオンを例示して説明してきたが、基板表面に注入するイオンは、Gaイオンに限定されるものではなく、他の金属からなるイオンを用いることも可能である。
【0041】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
無機材料基板XとしてSi基板を用い、Si基板表面にMBE法によって無機材料Y層として厚さ3nmのAlAs層と、無機材料Z層として厚さ30nmのGaAs層を形成する。そして、GaAs層表面に自然に形成されているAs23等の表面自然酸化膜の表面に向ってイオンビーム径を0.1μmに絞ったGaイオンを真空中で6×1016個/cm2、加速電圧30kVで照射して、表面自然酸化膜にGaイオンを注入する。Gaイオン注入後、超高真空装置に設置し、10-8Paレベルへ排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのAsBr3ガスを導入してエッチングを行う。
【0042】
図9(a)に、その表面のAFM像を示す。図9(a)に示すように、GaAs基板表面には、AsBr3ガスによってエッチングされなかったGaイオンが注入されて表面酸化膜がGa23に置換された部分が凸状に形成されているのが観察できる。
【0043】
(実施例2)
Gaイオンの注入量を6×1017個/cm2とし、照射した以外、実施例1と同様にして、Gaイオンを注入した後、表面をAsBr3ガスでドライエッチングをおこなった。
【0044】
図9(b)に、その表面のAFM像を示す。図9(b)に示すように、Si基板表面には、深い溝の凹状のパターンが形成されているのが観察できる。
【0045】
(実施例3)
無機材料基板XとしてGaAs基板を用い、GaAs基板表面にMBE法によって無機材料Y層として厚さ30nmのAlAs層と、無機材料Z層として厚さ300nmのGaAs層を形成する。そして、GaAs層表面に自然に形成されているAs23等の表面自然酸化膜の表面に向ってイオンビーム径を0.1μmに絞ったGaイオンを真空中で6×1016個/cm2、加速電圧30kVで照射して、表面自然酸化膜にGaイオンを注入する。Gaイオン注入後、超高真空装置に設置し、10-8Paレベルへ排気後、500~600℃で10-6~10-5Paのガス分圧でのAsBr3ガスを導入してエッチングを行う。
【0046】
図9(c)に、その表面のAFM像を示す。図9(c)に示すように、GaAs基板表面には、AsBr3ガスによってエッチングされなかったGaイオンが注入されて表面酸化膜がGa23に置換された部分が凸状に形成されているのが観察できる。
【0047】
(実施例4)
Gaイオンの注入量を6×1017個/cm2とし、照射した以外、実施例3と同様にして、Gaイオンを注入した後、表面をAsBr3ガスでドライエッチングをおこなった。
【0048】
図9(d)に、その表面のAFM像を示す。図9(d)に示すように、GaAs基板表面には、深い溝を有した凸状のパターンが形成されているのが観察できる。
【0049】
以上のように、半導体基板となる無機材料基板Xの表面に基板Xの酸化を防止し、エッチング時の強いマスクとして働く無機材料Y層、無機材料Y層の酸化を防止するZ層を積層し、無機材料Z層の表面に形成されている表面自然酸化膜に金属イオンを注入することによって、臭素化物等の反応性エッチングガスによってエッチングされない化学的に安定なマスクとなるAl23及びGa23又はSiO2等の酸化膜Y'層、Z'層を形成することができる。さらに、金属イオンの注入量を制御することによって、基板X表面に形成されるパターンをポジ型、ネガ型のいずれにも加工することが可能となる。また、基板Xとしては、無機材料であれば特に制限はなく、例えば、半導体基板として一般的に使用されているSiやGaAsにおいては、その表面に任意の形状に微細加工を行うことができる。
【0050】
また、所定の大きさに微細加工することが可能となるため、2次元だけでなく、3次元的な回路パターニングの設計も可能となる。このため、種々の半導体デバイスや、多様な量子デバイス特性を生かした素子、例えば、図10に示す量子細線、量子箱、また、回折格子やマイクロマシーンコンポーネントの製作が可能となる。
【0051】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明により、無機材料からなる基板表面に、無機材料からなるレジスト層を積層し、その表面に自然に形成される表面自然酸化膜を除去することなく、その表面自然酸化膜に金属イオンを注入することによって、化学的に安定な酸化物を形成し、原子層単位でエッチングを行うことによって、基板表面に形成されるパターンをポジ型、ネガ型のいずれにも加工することが可能となる。また、原子サイズの異なる酸化物を形成することができるため、回路パターンの設計の自由度が広がり、多様な量子デバイス特性を生かした有用な素子、例えば量子細線、量子箱、回折格子、マイクロマシンの実現も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るイオンビーム微細加工方法の実施形態例をイオン・ドーズ量(イオン注入量)の違いによる形成過程の違いを説明するための図である。
【図2】図1に示すイオン注入後の基板表面をドライエッチングした場合の断面模式図を示し、エッチング量が少ない場合の断面模式図を示す図である。
【図3】図1に示すイオン注入後の基板表面をドライエッチングした場合の断面模式図を示し、エッチング量が多い場合の断面模式図を示す図である。
【図4】イオンビーム走査時のイオンドーズ量を説明するための図である。
【図5】3次元の回路パターンの形成方法を説明するための図である。
【図6】3次元の格子状の回路パターンの例を示す図である。
【図7】イオンビームを重ね合わせて行う微細加工の方法の一例を示す図である。
【図8】本発明に係るイオンビーム微細加工方法のイオン・ドーズ量(イオン注入量)が異なる基板表面のAFM像を示す図である。
【図9】Si基板及びGaAs基板表面に本発明に係るイオンビーム微細加工方法を用いた場合のAFM像を示す図である。
【図10】量子細線の概念図を示す図である。
【符号の説明】
1 基板X
2 無機材料Y層
3 無機材料Z層
4 表面自然酸化膜
5 金属イオン
6 強制酸化膜
7 酸化膜
8 イオン侵入領域
9 溝
10 溝
11 V字溝
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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