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明細書 :表面に金微粒子を付着させた高分子材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5114008号 (P5114008)
公開番号 特開2007-197591 (P2007-197591A)
登録日 平成24年10月19日(2012.10.19)
発行日 平成25年1月9日(2013.1.9)
公開日 平成19年8月9日(2007.8.9)
発明の名称または考案の名称 表面に金微粒子を付着させた高分子材料およびその製造方法
国際特許分類 C08J   3/20        (2006.01)
B82B   3/00        (2006.01)
FI C08J 3/20 CERZ
B82B 3/00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 11
出願番号 特願2006-018721 (P2006-018721)
出願日 平成18年1月27日(2006.1.27)
審査請求日 平成21年1月13日(2009.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】305027401
【氏名又は名称】公立大学法人首都大学東京
発明者または考案者 【氏名】春田 正毅
【氏名】皆川 歩
【氏名】木下 直人
個別代理人の代理人 【識別番号】100108350、【弁理士】、【氏名又は名称】鐘尾 宏紀
【識別番号】100082865、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 陽一
審査官 【審査官】繁田 えい子
参考文献・文献 特開2002-201284(JP,A)
特開平04-285604(JP,A)
特開2004-353040(JP,A)
調査した分野 C08J 3
B82B
特許請求の範囲 【請求項1】
水または有機溶媒に溶解する金の化合物と還元剤を含む溶液に、ビニル系高分子を縣濁または浸漬するか、又はビニル系高分子が懸濁または浸漬された、水または有機溶媒に溶解する金の化合物を含む溶液に、還元剤を含む溶液を加え、溶液中では金化合物の還元が起こらない条件を設定して、高分子の表面に平均粒子径が1nmから10nmの金微粒子を付着させる高分子材料の製造方法において、
前記溶液中では金化合物の還元が起こらない条件が、高分子の担持体を分離した上澄み液において金コロイドの生成が見られないことを判定基準とすることを特徴とする、前記高分子材料の製造方法
【請求項2】
還元剤が、重量分析で用いる金属イオンの還元剤である無機系還元剤および有機系還元剤から選択された1種以上の化合物、または易酸化性ガスであることを特徴とする請求項1に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項3】
前記水または有機溶媒に溶解する金の化合物が、水または有機溶媒に溶解する金の塩および錯体から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項4】
前記水または有機溶媒に溶解する金の化合物と還元剤を含む溶液に、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールが更に含有されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の高分子材料の製造方法。
【請求項5】
前記ビニル系高分子が平均粒子径10nmから10mmの粒子であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の高分子材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金微粒子を表面に付着させた高分子材料の製造方法に関するものである。

【背景技術】
【0002】
貴金属は宝飾品以外にも、歯科用材料、電子回路、触媒などとして広く利用されている。近年は、特に自動車排ガス浄化や燃料電池用の触媒としての需要が急速に伸びている。貴金属は高価であるので、その重量(質量)当たりの触媒性能を最大限に引き出すため、粒子径2-10nmのナノ粒子にして露出表面積を大きくする工夫が通常なされている。実際には、比表面積が大きく、かつ熱的、化学的安定性の高いAlやSiOなどの金属酸化物、または活性炭やカーボンブラックなどの炭素材料を担体に用いて、貴金属をナノ粒子として分散・固定された状態で使用する。
【0003】
一方、有機高分子を担体として、その表面に貴金属をナノ粒子として分散・固定化したものは、これまで材料として注目されておらず、関連するものとしては固体高分子電解質膜用白金電極があるに過ぎない。但し、この場合、白金は微粒子の凝集体となって、薄膜を形成しており、金属微粒子が孤立分散した構造ではない。触媒としての実用化が実現していないのは、有機高分子の耐熱温度が200℃以下と低く、基幹化成品を製造する工業反応プロセスの温度条件や自動車排ガスの温度域では使用できない上に、高分子材料の比表面積が小さく、しかも無機材料に対して高価であることに起因する。精密化成品の合成では、一般に溶液に溶解した状態で触媒が使用され(均一系触媒)、200℃以下での反応が多いので、分子レベルで触媒の設計が可能である反面、反応物と生成物から触媒を分離するプロセスにエネルギーがかかることが課題となっている。そのため、こうした均一系触媒を高分子などに固定化することが試みられている。
【0004】
貴金属触媒の場合においても、ナノ粒子、さらにはもっと小さいクラスターとして反応溶液中に分散して、有機合成反応における金属の新しい触媒作用を探索するとともに、サイズ効果を探究する研究が進められている。従って、こうした研究成果を実用化していくためには、液相分散ではなく高分子固体に分散・固定化していくことが重要である。
【0005】
発明者は触媒としての活性が極めて乏しいとされていた金でも、直径10nm以下の半球状ナノ粒子として種々の金属酸化物担体上に分散・固定化することにより、低温CO酸化、プロピレンの気相一段エポキシ化、低温水性ガスシフト反応、酸素と水素からの直接過酸化水素合成など、多くの反応に対して、他の貴金属より優れた触媒特性を発現することを見出している(例えば特許文献1および非特許文献1)。また、金の粒子径が2nm以下、原子数で300個以内のクラスターになると、触媒特性がさらに激変する場合があることも見出している。
このように、金は貴金属の中でも、寸法によって最も著しく物性が変動することがわかっており、かつnmレベルの寸法になっても空気中で最も安定であるので、高分子材料を担体として種々の寸法・形状の粒子として分散・固定化した材料が望まれていた。
【0006】
なお、高分子と金との複合材料に関する技術としては、NaAuCl・2HOとピロールとを混合して、超音波をかけることにより、金粒子への還元とピロールの重合とを同時に行い、これにより、金ナノ粒子を高分子内部に包み込んだ複合体を製造する方法(非特許文献2)や、イオン交換樹脂の乾燥したものをアルカリ水溶液で処理した後、四塩化金酸水溶液に浸漬して、水分を蒸発させる、いわゆる含浸法によって、イオン交換樹脂に金を担持させた触媒を得ること(非特許文献3)が報告されている。
しかし、後者の方法では、瞬時に反応が終了しないので、粒度が不揃いとなり、触媒活性が低下する。
従って、これらに限らず、多くの展開が望まれるところである。

【特許文献1】特公平5-49338号公報
【非特許文献1】エム ハルタ(M.Haruta),ケミストリー レコード(Chem.Record)3(2),2003年,p75-87
【非特許文献2】ジョン‐エン パルク(Jong-Eun Park)、外2名,「ソノケミカル シンセシス オブ インオーガニック‐オーガニック ハイブリッド ナノコンポジット ベイスト オン ゴールド ナノパーティクルズ アンド ポリピロール(Sonochemical Synthesis of Inorganic-Organic Hybrid Nanocomposite Based on Gold Nanoparticles and Polypyrrole)」,ケミストリー レターズ(Chemistry Letters),第34巻(Vol.34),第1号(No.1),2005年,p96-97
【非特許文献3】フェング シ(Feng Shi)、外4名,「フロム CO オキシデイション トウ CO2 アクチベイション(From CO Oxidation to CO2 Activation):アン アンエクスペクティッド カタリティック アクティビィティ オブ ポリマー‐サポーティッド ナノゴールド(An Unexpected Catalytic Activity of Polymer-Supported Nanogold)」,ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)コミニュケーションズ(Communications),127,2005年,p4182-4183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、表面に、粒度が揃った金微粒子を付着させた高分子材料の製造方法を提供することである。このような高分子材料は、例えば、ナノオーダーの金微粒子とした触媒に適用したときは性能の向上を図ることが期待でき、また、比較的大きな粒子径の金微粒子とした顔料等の用途においては色調調整が可能になるとともに使用量の低減化を図ることができる。
本発明では、金を高分子粉末、高分子微粒子、高分子薄膜、高分子デンドリマー、多孔性高分子金属錯体など種々の高分子材料に金をマイクロ粒子、ナノ粒子、ナノクラスターの微粒子として表面に付着した材料を対象とする。これらは、一部、既述のとおり、高耐久性顔料・塗料、がん治療用マーカー、高感度DNA検出素子、柔軟性のある導電性材料、燃料電池用や化学センサ用の電極、赤外線センサ、触媒、さらには、新しい反応を可能とする固体触媒などとして優れた機能を有することが期待できる。

【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水または有機溶媒に溶解する金の化合物と還元剤を含む溶液に、ビニル系高分子を縣濁または浸漬するか、又はビニル系高分子が懸濁または浸漬された、水または有機溶媒に溶解する金の化合物を含む溶液に、還元剤を含む溶液を加え、溶液中では金化合物の還元が起こらない条件を設定して、高分子の表面に平均粒子径が1nmから10nmの金微粒子を付着させる高分子材料の製造方法において、前記溶液中では金化合物の還元が起こらない条件が、高分子の担持体を分離した上澄み液において金コロイドの生成が見られないことを判定基準とすることを特徴とする、前記高分子材料の製造方法である。
本発明では、還元剤として、好ましくは、重量分析で用いる金属イオンの還元剤である無機系還元剤および有機系還元剤から選択された1種以上の化合物を用いることができ、また、易酸化性ガスを用いることができる。
また、金微粒子は水または有機溶媒に溶解する金の塩および錯体から選択された1種以上の金化合物から得られたものであることが好ましい
また、金微粒子を付着させる時に還元剤とともに用いられる添加剤は、ポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールであることが好ましい。
そして、金微粒子の平均粒子径は1nmから10nmであることが好ましく、特に好ましくは1nmから5nmである。一方、高分子粒子の平均粒子径は10nmから10mmであることが好ましい
なお、非特許文献2には、NaAuCl・2HOとピロールとを混合して、超音波をかけることにより、金粒子への還元とピロールの重合とを同時に行い、これにより、金ナノ粒子を高分子内部に包み込んだ複合体を製造する方法が記載されているが、本発明の高分子材料の製造方法によって得られるものは、表面に金微粒子を付着させたものであり、これとは異なるものである。また、非特許文献3には、イオン交換樹脂の乾燥したものをアルカリ水溶液で処理した後、四塩化金酸水溶液に浸漬して、水分を蒸発させる、いわゆる含浸法によって、イオン交換樹脂に金を担持させた触媒を得ることが報告されているが、本発明の金化合物の還元法についての記載はない。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面に金微粒子を付着させた高分子材料を得る際に還元剤を用いているので、瞬時に、粒度の揃った金微粒子を得ることができ、ナノオーダーの金微粒子とした触媒として用いたときは性能の向上を図ることができる。また、比較的大きな粒子径の金微粒子として顔料等に用いたときは、少量の使用量として色調調整の効果を得ることができる。
このように、本発明で得られる高分子材料は、触媒、特に、新しい反応を可能とする固体触媒などとしての用途が期待できる。また、高耐久性顔料・塗料、がん治療用マーカー、高感度DNA検出素子、柔軟性のある導電性材料、燃料電池用や化学センサ用の電極、赤外線センサなどの用途としても期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、例えば、高分子を金化合物の水溶液に懸濁または浸漬し、還元剤を加えてよく攪拌を行い、水溶液の濃度(金化合物および還元剤等)や、pHと温度を調整して、攪拌を1時間以上(通常は1時間程度)続けることにより表面に金微粒子を付着させた高分子材料が得られる。このとき、金微粒子と高分子担体との付着性を高めるために、溶解性高分子化合物を添加することが、場合によっては有効である。

【0011】
ビニル系高分子としては、特に、制限なく用いることができるが、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリスチレン(PS)から選択されることが好ましく、通常、用いられるのは、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンであり、粉末(平均粒子径10μmから10mm)、微粒子(平均粒子径10nmから10μm)、薄膜(平均膜厚10μmから10mm)、中空粒子(平均粒子径10nmから10mm)、デンドリマー(樹枝状構造体)、多孔体などの形態を持つものが挙げられる。なかでも、触媒などの種々の用途を考えれば、高分子粒子が好ましく、その粒子径は目的・用途によって異なるが、平均粒子径10nmから10μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、球状粒子の場合は直径、楕円形粒子の場合は長径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)観察あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。


【0012】
金化合物としては、四塩化金酸(HAuCl)、四塩化金酸塩(例えばNaAuCl)、シアン化金(AuCN)、シアン化金カリウム{K[Au(CN)]}、三塩化ジエチルアミン金酸[(CNH・AuCl]、エチレンジアミン金錯体(例えば、塩化物錯体{Au[C(NHCl})、ジメチル金β‐ジケトン誘導体錯体(例えば、ジメチル金アセチルアセトナート{(CHAu[CHCOCHCOCH]})など、その他、水や有機溶媒に溶解できる金の塩や錯体を用いることができる。
金化合物の水溶液中の濃度としては、希薄すぎると金が高分子上に還元析出できなくなり、濃厚すぎると高分子上だけでなく溶液中でも金の還元析出が起こってしまうので、0.01mmol/Lから10mmol/Lの範囲が望ましいが、0.05mmol/Lから1mmol/Lがより望ましい。
【0013】
高分子に付着する金の担持量は、水溶液の濃度と量によって0.01質量%から50質量%までの範囲で調整することができる。
【0014】
還元剤としては、重量分析で用いる金属イオンの還元剤を用いることができる。このような還元剤は、無機系であっても、有機系であってもよく、無機系還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、二酸化硫黄(SO)、亜硝酸ナトリウム(NaNO)などが挙げられ、有機系還元剤としては、ヒドラジン、ホルムアルデヒド、メタノール、クエン酸およびその塩、シュウ酸およびその塩、グルコース、エチレングリコールが挙げられる。また、水素や一酸化炭素などの易酸化性ガスを用いることができる。
通常、用いられる還元剤としては、還元力の強い順に、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、ホルムアルデヒド(HCHO)、クエン酸およびその塩(クエン酸ナトリウム塩、クエン酸マグネシウム塩など)、グルコース(nC12)などがあり、また、エチレングリコールも挙げられる。
その使用量としては、還元剤分子/Au原子=1-1000、より好ましくは2-200、さらに好ましくは5-100である。
【0015】
溶液のpHは、2-13まで、好ましくは5-11で、還元剤によって適正な範囲が決まる。温度は、0℃から90℃までの範囲であるが、水素化ホウ素ナトリウムを用いる場合は特に0℃から30℃が望ましく、クエン酸またはその塩を用いるときは30℃から70℃が特に望ましい。
【0016】
金を還元析出させるときの添加剤としては、PVP(ポリビニルピロリドン),PVA(ポリビニルアルコール)などがあり、適宜用いることができる。このような添加剤を使用するときの添加量は、組み合わせる金化合物等により異なるが、高分子担体に対して、通常、5質量%から90質量%程度である。
【0017】
本発明では、例えば、水または有機溶媒に溶解する金の化合物と還元剤とを含む溶液に、高分子を縣濁または浸漬し、溶液中では金化合物の還元が起こらない条件を設定して、高分子の表面に選択的に金の微粒子を付着する。
上記の条件としては、金化合物の種類と濃度、溶液の種類とpH、還元剤の種類と濃度、還元反応の温度、および溶液に添加する有機化合物や高分子化合物の種類と濃度を適切に選ぶ。
その選定方法として、高分子の担持体を分離した上澄み液において金コロイドの生成(赤から紫色に発色)が見られないことを判定基準とする。
【0018】
このようにして得られる表面に金微粒子を付着させた高分子材料の金微粒子の平均粒子径は、目的・用途によって異なるが、触媒として用いるときは、10nm以下、さらには5nm以下であることが好ましい
このときの平均粒子径は、球状粒子の場合は直径、楕円形粒子の場合は長径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)観察あるいは透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、粒子径分布を作り、平均値を求めたものである。
また、本発明における金微粒子の粒度分布は比較的狭く、粒子径の揃ったものとなる。
このように、粒度分布の狭い金微粒子を表面に付着させることによって、ナノオーダーの金微粒子を用いる触媒のような用途においては、性能の向上を図ることができる
【参考例1】
【0019】
PVC粉末への金の担持
粒子径100μm前後のPVC粉末10gを蒸留水400mLに加え、超音波をかけて分散させた。次に、四塩化金酸・四水塩20.6mg(0.05mmol)をこれに溶解させた後、60℃に加温した。別に、クエン酸三ナトリウム・二水塩1.47g(5mmol)を溶解した水溶液100mlを60℃に加温し、これを塩化金酸水溶液に一気に加え、60℃に保ちながら攪拌を1時間続けた。このとき溶液のpHは10である。室温になるまで放冷し、分液ロートを用いて淡いピンク色のPVC粉末と水溶液を分離した。PVC粉末は蒸留水で何度も洗浄し、ナトリウムや塩素のイオンを除去した。ろ液はほぼ無色透明で、液相で金錯イオンが還元されて金コロイドが生成してはいないことを示唆した。試しに、ろ液に水素化ホウ素ナトリウムを大過剰に室温で加えると、数10秒後に僅かにピンク色の着色が見られたことから、金錯イオンのごく一部は還元されずに残存することが判明した。PVC粉末を90℃で半日間乾燥して得た淡いピンク色をした粉末試料について、ICP元素分析を行ったところ金が0.085質量%含有されており、溶液中の金0.10質量%の85%が析出したことがわかった。SEMで観察したところ、板状の100nm前後の金が密集してほぼ均一にPVC粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図1参照)。
【実施例1】
【0020】
PMMA微粒子への金の担持
平均粒子径2.6μmのPMMA微粒子1.0gを蒸留水200mLに加え、超音波をかけて分散させた。次に、四塩化金酸・四水塩10.3mg(0.025mmol)とPVP(poly vinylpyrrolidone)300mgをこれに溶解させた後、水素化ホウ素ナトリウム1.89mg(0.05mmol)の水溶液50mLを一気に加え、室温で攪拌を1時間続けた。このとき溶液のpHは9である。分液ロートを用いて僅かにピンク色のPMMA粉末と水溶液を分離した。PMMA粉末は蒸留水で何度も洗浄し、ナトリウム,ホウ素、塩素のイオンを除去した。ろ液はほぼ無色透明で、液相で金錯イオンが還元されて金コロイドが生成してはいないことを示唆した。試しに、ろ液に水酸化ナトリウムを加えてpHを12にしてからホルマリンを大過剰に加え、加温すると、数10秒後に僅かにピンク色の着色が見られたことから、金錯イオンのごく一部は還元されずに残存することが判明した。PMMA粉末を90℃で半日間乾燥して得た淡いピンク色をした粉末試料について、ICP元素分析を行ったところ金が0.40質量%含有されており、溶液中の金0.49質量%の80%以上が析出したことがわかった。TEMで観察したところ、10nm前後の球状、半球状金ナノ粒子が離散してPMMA粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図2参照;なお、図中の線の長さは20nmである)。
【実施例2】
【0021】
PMMA微粒子への金の担持
実施例において、PMMA微粒子を1.0g用い、四塩化金酸・四水塩を10.3mg(0.025mmol)含む濃度0.1mmol/Lの水溶液とし、この溶液にPMMA微粒子を添加して分散させ、還元剤としてNaBHを1.89mg用い、PVPを添加しないほかは、同様にして、粉末試料を得た。同様にして分析を行ったところ、金が0.47質量%含有されていた。TEMで観察したところ、10nm前後の球状、半球状の多量の金ナノ粒子がPMMA粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図3参照;なお、図中の線の長さは20nmである)。
【参考例2】
【0022】
PVC微粒子への金の担持(ポリオール法)
参考例1において、乳化重合で合成したPVC微粒子(平均粒子径300nm)を1.0g、四塩化金酸・四水塩を10.3mg、還元剤としてエチレングリコールを15ml用いるほかは、同様にして、粉末試料を得た。但し、四塩化金酸・四水塩の溶解時にPVPを300mg加えてともに溶解させた。同様にして、分析を行ったところ、金が0.45質量%含有されており、TEMで観察したところ、板状の100nm前後の金粒子が密集してほぼ均一にPVC粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図4参照;なお、図中の線の長さは100nmである)。
【実施例3】
【0023】
PVC微粒子への金の担持(ポリオール法)
参考において、PVCを1.0g、金エチレンジアミン錯体を9.8mg、還元剤として、エチレングリコールを15ml、PVPを300mg用いるほかは、同様にして、粉末試料を得た。同様にして分析を行ったところ、金が0.43質量%含有されていた。TEMで観察したところ、10nm前後の球状の金ナノ粒子がPVC粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図5参照;なお、図中の線の長さは100nmである)。
【実施例4】
【0024】
PVC微粒子への金の担持
参考において、PVCを1.0g、金エチレンジアミン錯体を2.0mg(0.005mmol)、還元剤としてNaBHを0.38mg(0.01mmol)、PVPを60mg用いるほかは、同様にして、粉末試料を得た。同様にして分析を行ったところ、金が0.90質量%含有されていた。TEMで観察したところ、2nm前後の球状金クラスターがPVC粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図6参照;なお、図中の線の長さは20nmである)。
【実施例5】
【0025】
PVC微粒子への金の担持
参考において、PVCを1.0g、金エチレンジアミン錯体を9.8mg(0.025mmol)、還元剤として、クエン酸三ナトリウム・二水塩を47mg(0.15mmol)、PVPを300mg用いるほかは、同様にして、粉末試料を得た。同様にして分析を行ったところ、金が0.40質量%含有されていた。TEMで観察したところ、2nm前後と5-20nmの球状金クラスターとその凝集体がPVC粉末の表面上に分散・固定化されていることが判明した(図7参照;なお、図中の線の長さは50nmである)。
【実施例6】
【0026】
金微粒子を担持したPMMAの触媒特性
PMMA微粒子(平均粒子径2.6μm)の代わりに、PMMA微粒子(平均粒子径200nm)を使用した他は実施例と同様にして粉末試料Aを調製した。TEMで観察したところ、金微粒子の平均粒子径は10nmであった。次に、PMMA微粒子(平均粒子径2.6μm)の代わりに、PMMA微粒子(平均粒子径200nm)を使用し、四塩化金酸・四水塩10.3mgの代わりに金エチレンジアミン錯体9.8mgを使用した他は実施例と同様にして粉末試料Bを調製した。TEMで観察したところ、金微粒子の平均粒子径は4nmであった。いずれの試料の場合も、金を析出還元した後液相に残った金化合物は極少量であったので、金微粒子は0.45質量%程度担持されていると推定される。
金微粒子の平均粒子径が異なる上記2種の粉末試料を用いて、水溶液中でのグルコースの酸素酸化を行った。粉末試料を100mg、金/グルコースのモル比を1:5000として、グルコース濃度0.1質量%の水溶液に攪拌下50℃で、酸素を50ml/min.でバブリングした。水溶液のpHを9.5に保つよう、水酸化ナトリウム水溶液を随時滴下し、水酸化ナトリウムの滴下量からグルコン酸の生成量を反応時間の関数として測定した。その結果、上記の金微粒子担持PMMA微粒子は比較的低温でグルコースの酸素酸化に触媒活性を有することが判明した。試料AとBを比較すると、金微粒子の平均粒子径が4nmの場合は70分後のグルコースの反応量が29mol/mol Au、10nmの場合は14mol/mol Auであり、金微粒子の平均粒子径が小さくなると、触媒活性が格段に高くなることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明で得られる高分子材料は、触媒、特に、新しい反応を可能とする固体触媒などとしての用途が期待できる。また、高耐久性顔料・塗料、がん治療用マーカー、高感度DNA検出素子、柔軟性のある導電性材料、燃料電池用や化学センサ用の電極、赤外線センサなどの用途としても期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図面代用写真であり、参考例の高分子材料のSEM写真である。
【図2】図面代用写真であり、本発明の高分子材料のTEM写真である。
【図3】図面代用写真であり、本発明の高分子材料のTEM写真である。
【図4】図面代用写真であり、参考例の高分子材料のTEM写真である。
【図5】図面代用写真であり、本発明の高分子材料のTEM写真である。
【図6】図面代用写真であり、本発明の高分子材料のTEM写真である
【図7】図面代用写真であり、本発明の高分子材料のTEM写真である
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6