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明細書 :立ち上がり運動補助装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4931123号 (P4931123)
公開番号 特開2008-086586 (P2008-086586A)
登録日 平成24年2月24日(2012.2.24)
発行日 平成24年5月16日(2012.5.16)
公開日 平成20年4月17日(2008.4.17)
発明の名称または考案の名称 立ち上がり運動補助装置
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A61G   5/00        (2006.01)
A61H   3/04        (2006.01)
A63B  23/04        (2006.01)
A63B  24/00        (2006.01)
A63B  69/00        (2006.01)
FI A61H 1/02 N
A61G 5/00 502
A61H 3/04
A63B 23/04 Z
A63B 24/00
A63B 69/00 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2006-271530 (P2006-271530)
出願日 平成18年10月3日(2006.10.3)
審査請求日 平成21年4月30日(2009.4.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】小林 伸明
【氏名】鈴木 亮一
【氏名】谷 正史
【氏名】丸田 和夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】久保 竜一
参考文献・文献 特開平9-299419(JP,A)
特開昭63-135168(JP,A)
国際公開第2005/074369(WO,A2)
特開平4-285556(JP,A)
調査した分野 A61H 1/02,3/04
A61G 5/00,7/00-7/10
A63B 24/00
特許請求の範囲 【請求項1】
人間の立ち上がり動作を補助する立ち上がり運動補助装置であって、
被補助者が身体の一部をもたせかけて立ち上がり動作を行うときに当該被補助者による負荷を支える支持部と、
スイッチがオンされたときに回転運動を開始する動力部と、
前記動力部における回転運動により発生した動力を用いて前記支持部を立ち上がり方向へ移動させる可動機構と、
前記被補助者の胸部に付勢可能であり、その立ち上がり方向と直交する方向の支持軸を中心に前記被補助者の立ち上がり動作時の前傾姿勢の変化に応じて回転自在な胸当パッドと、
前記被補助者が立ち上がり動作のために前記支持部に負荷をかけたときに前記可動機構を介して前記動力部にかかる負荷を検知する検知部と、
前記支持部に対する前記被補助者の立ち上がり動作の依存度合いを前記検知部による検知結果に基づいて決定して前記被補助者が知覚的に認識できる態様にて通知するフィードバック通知部と、
を備えることを特徴とする立ち上がり運動補助装置。
【請求項2】
前記可動機構は、前記被補助者の起立姿勢を補助できる構造体に取付固定するための取付機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の立ち上がり運動補助装置。
【請求項3】
前記被補助者の歩行を補助するための車輪を含む歩行補助部を前記支持部の下方にさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立ち上がり運動補助装置。
【請求項4】
前記動力部は、回転運動により動力を発生するモータを含み、
前記検知部は、前記モータに設けたエンコーダを通じて認識される回転運動の変化から前記モータにかかる負荷を検知することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の立ち上がり運動補助装置。
【請求項5】
前記フィードバック通知部は、前記検知部による検知結果の履歴を記憶するとともに、過去の検知結果との比較により通知内容を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の立ち上がり運動補助装置。
【請求項6】
前記フィードバック通知部は、前記検知部による検知結果と所定の理想値との比較により通知内容を決定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の立ち上がり運動補助装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち上がり運動補助装置、特にリハビリテーションの一環として行われる立ち上がり運動を補助者に代わり補助する立ち上がり運動補助装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
脳疾患や事故による脳障害、或いは高齢化に伴い、歩行に関するトレーニング(リハビリテーションも含む)を必要とする人が増加傾向にある。従来、歩行のトレーニングには、歩行姿勢を支えるのみの歩行器や、歩行器に車輪が付けられ歩行器に比べ移動が容易な歩行車などが利用される。
【0003】
ところで、歩行器や歩行車の補助を必要とする人(以下、被補助者という)は、脚部の筋肉や関節が衰えている場合が多い。また、脳からの下半身への運動指示がスムーズに行われていない場合もある。そのため、歩行に先立ち必要となる立ち上がり運動が十分にできない場合が多い。このような場合、歩行トレーニングが必要であり、そのトレーニングを開始するときに、看護師や家族など第三者である補助者による助けが必要な場合が多かった。そこで、立ち上がり運動の補助を行う機能を有する歩行車の提案が種々行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の歩行車(歩行屈伸動作補助装置)は、体幹支持部で被補助者の体を支えながら立ち上がり運動を補助するように体を引き上げる機能を有している。その結果、歩行トレーニングに先立ち必要となる立ち上がり運動が一人でも可能になり、それに続く歩行トレーニングも一人で行うことができる。
【0005】
ところで、リハビリテーションを含むトレーニングにおいて、第三者である補助者による「声かけ」は、被補助者のやる気を喚起させたり、トレーニングの達成度を被補助者に認識させたりする効果があり、トレーニングの効率化に有効であるとされている。たとえば、被補助者の立ち上がり運動を補助するために補助者が被補助者を支える場合、前回に比べ今回の補助に必要な力が少なくて済んだ場合、つまり、被補助者の自立立ち上がり能力が高まり補助者への依存度合いが少なくなった場合、補助者は補助動作の間にその微妙な変化を感じ取ることができる。この場合、補助者が被補助者に感じ取った微妙な変化に基づき「前回よりしっかり立てるようになりましたよ」とか、「前回より筋肉が強くなったみたいですよ」などと伝えて、被補助者を励ますことができる。この励ましにより被補助者の心理的な自立心が向上し、被補助者はさらに頑張ろうとする。このように、心理的なアドバイスを被補助者に与えることによりトレーニング成果の向上、つまり、立ち上がり運動機能の早期回復に寄与できることが臨床等により証明されている。

【特許文献1】特開平9-99022号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述したように、歩行トレーニングに先立ち必要となる立ち上がり運動が一人できるような機能が歩行車に備えられている場合、被補助者は一人でトレーニングができる反面、上述のような「声かけ」による心理的なアドバイスを受けることができず、精神的な頑張りや向上心を得ることが困難になる。また、トレーニング成果は、前述したように、補助者の微妙な感覚で認識できる程度のものである。つまり、立ち上がり運動の成果は、徐々に現れるものであり、その微妙な変化を被補助者に認識させることもできない。なお、被補助者のトレーニング成果の微妙な変化は、被補助者の脚部に筋電計を装着することにより検出可能であるが、専用の計測器やそれを扱うには専門的な知識が必要である。したがって、筋電計などの測定器は、日々のトレーニング時の使用には適していない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、一人で立ち上がり運動のトレーニングをさせることができるとともに、補助者による「声かけ」と同等な心理的効果を被補助者に提供できて、容易に利用できる立ち上がり運動補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の立ち上がり運動補助装置は、人間の立ち上がり動作を補助する立ち上がり運動補助装置であって、被補助者が身体の一部をもたせかけて立ち上がり動作を行うときに当該被補助者による負荷を支える支持部と、スイッチがオンされたときに回転運動を開始する動力部と、動力部における回転運動により発生した動力を用いて支持部を立ち上がり方向へ移動させる可動機構と、被補助者の胸部に付勢可能であり、その立ち上がり方向と直交する方向の支持軸を中心に被補助者の立ち上がり動作時の前傾姿勢の変化に応じて回転自在な胸当パッドと、被補助者が立ち上がり動作のために支持部に負荷をかけたときに可動機構を介して動力部にかかる負荷を検知する検知部と、支持部に対する被補助者の立ち上がり動作の依存度合いを検知部による検知結果に基づいて決定して被補助者が知覚的に認識できる態様にて通知するフィードバック通知部と、を備える。
【0010】
被補助者は、たとえば、支持部を脇の下に抱え込むことにより体をもたせかけることができる。被補助者は自力で立ち上がり運動を行おうとするが、脚部の筋力が不足していたり、関節をスムーズに動かせない場合、それを補助するように支持部が立ち上がり方向に移動する。このとき、被補助者が自力で立ち上がり運動できる場合、支持部の移動に頼ることなく立ち上がる。一方、筋力不足や関節がうまく動かせない場合、支持部の移動の補助を受けて立ち上がり運動を行うことになる。つまり、被補助者は支持部を移動させる駆動部の動力に頼ることなる。被補助者が駆動部の動力に頼る場合、その頼る力が駆動部にかかる負荷となる。フィードバック通知部がこの負荷を被補助者の依存度合いとして、被補助者が知覚的に認識できる態様で通知する。その結果、被補助者は立ち上がり運動時に装置に対する自らの依存度合いを認識できる。また、被補助者に依存度合いを認識させることにより立ち上がり運動完成度を認識できる。被補助者にこのような認識を行わせることにより被補助者のやる気を喚起したり、新たなトレーニング目標を積極的に立てさせることが可能になる。その結果、立ち上がり運動の早期回復に寄与できる。
【0011】
被補助者に通知する内容は、たとえば、過去の依存度合い(履歴)との比較により依存度合いが低下した場合、つまり、立ち上がり運動能力が高まった場合、「頑張りました。その調子です。」とか、「よい調子です。引き続き頑張りましょう。」などとすることができる。また、標準的な依存度合いの減少モデル(理想値)と比較して通知をしてもよい。この他、具体的な数値で依存度合いの変化を通知してもよいし、依存度合いの変化と関連付けたメッセージでもよい。たとえば、「焦らずに頑張りましょう。」とか、「次の目標は○○です。」などとしてもよい。これらの通知は、聴覚的なメッセージやアラームでもよい。また、表示装置に文字やキャラクタを用いたメッセージを表示して視覚的に行ってもよい。また、LEDやランプの点滅や数値表示でもよい。
【0012】
また、立ち上がり運動補助装置の可動機構は、被補助者の起立姿勢を補助できる構造体に取付固定するための取付機構を備えてもよい。この場合、運動補助装置を壁面やラックなどに固定すれば、立ち上がり運動のトレーニングを病院施設やトレーニングセンターなどで行うことができる。また、立ち上がり運動補助装置は、支持部の下方に車輪を備えて、歩行車としての機能を兼ね備えてもよい。この場合、立ち上がり運動のトレーニングに続き歩行トレーニングも行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の立ち上がり運動補助装置によれば、一人で立ち上がり運動のトレーニングをさせることができるとともに、補助者による「声かけ」と同等な心理的効果を被補助者に提供可能となり、トレーニング効果の向上、つまり、立ち上がり運動機能の早期回復に寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0015】
本実施形態の立ち上がり運動補助装置10は、被補助者が立ち上がり運動を行うときの立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いを駆動部の負荷に基づき検知し、その依存度合いを視覚的や聴覚的な通知により被補助者に認識させる。依存度合いに応じた通知を被補助者に提供することにより、従来第三者(補助者)が行っていた「声かけ」と同等の心理的な刺激を被補助者に提供して、被補助者の立ち上がり運動の頑張り度や成果認識度を向上させる。
【0016】
図1は、本実施形態の立ち上がり運動補助装置10の基本構造を説明する斜視図である。この立ち上がり運動補助装置10は、支持部12、モータやギアなどで構成される駆動部14、駆動部14により駆動する可動機構16、駆動部14にかかる負荷を検知する検知部18、及び被補助者に通知を行うフィードバック通知部20を含んで構成されている。
【0017】
支持部12は、立ち上がり運動のときに立ち上がり運動補助装置10の補助を必要とする利用者(以下、被補助者という)が身体の一部をもたせかけて当該被補助者による負荷を支える。支持部12は、たとえば「C」字型形状の板状の部品で、C字の湾曲内側部分Aに被補助者の胸部を迎え入れるとともに、両側に延設されたアーム部12aが被補助者の両脇の下に入り込むようになっている。被補助者は、アーム部12aを両脇の下に抱え込む姿勢をとることにより、体を支持部12にもたせかけることができる。したがって、被補助者の立ち上がり運動能力が高い場合、つまり、立ち上がり運動補助装置10の補助をあまり必要としない場合、支持部12が支える負荷は小さい。逆に立ち上がり運動能力が低い場合、支持部12が支える負荷は大きくなる。なお、支持部12の上面側は、クッション材などを配置して、被補助者が体をもたせかけても不快感を感じないようにすることが望ましい。
【0018】
ところで、通常、椅子などに座った状態から立ち上がり運動を行う場合、最初の動作として、上体を前傾させ、その後、前傾させた上体を起こしながら立ち上がる。そのため、支持部12の湾曲内側部分Aには、被補助者の上体の前傾動作を許容する胸当パッド22が備えられている。この胸当パッド22は、たとえば軟質のゴムや発砲素材などで形成された円筒状の部材で、被補助者の前傾姿勢に応じて、支持軸22aを中心に矢印B方向に回転自在であるとともに、支持軸22a自体がガイドレールなどに支持されながら矢印C1、C2方向に移動自在になっている。なお、胸当パッド22は、定常状態で矢印C2方向に付勢され、被補助者の前傾姿勢が変化しても胸部を支持するようになっている。
【0019】
支持部12は、駆動部14により駆動する可動機構16により支持されている。図2は可動機構16の概略構造を示す断面図である。駆動部14の出力軸が接続された駆動プーリ24aと、当該駆動プーリ24aから所定距離隔てられて配置された従動プーリ24bの間に駆動ベルト26が巻回されている。駆動ベルト26の一部にはキャリッジ28が固定されている。このキャリッジ28は駆動ベルト26の駆動に応じて移動する。また、駆動ベルト26などを収納する本体ケース30の表面には、立ち上がり方向(矢印D方向)に延びるガイドレール32が固定されている。このガイドレール32上を摺動するスライダ34の一端には、キャリッジ28が固定され、他端には、支持部12が固定されている。したがって、駆動ベルト26の駆動に応じて、支持部12が立ち上がり方向(矢印D方向)にスムーズに移動できるようになっている。
【0020】
図1に戻り、可動機構16を動作させる駆動部14には、被補助者が立ち上がり運動のために支持部12に負荷をかけたときに可動機構16を介して駆動部14にかかる負荷を検知する検知部18が備えられている。検知部18は、駆動部14を構成するモータに設けたエンコーダを含み、当該エンコーダを通じて認識される回転運動の変化から駆動部14のモータにかかる負荷を検知する。たとえば、モータ負荷が大きい場合、すなわち、被補助者の立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが高い場合、モータの回転が相対的に遅くなり、エンコーダの出力パルスの間隔は相対的に広くなる。一方、モータ負荷が小さい場合、すなわち、被補助者の立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが低い場合、エンコーダの出力パルスの間隔は、被補助者の依存がない場合のパルス間隔に近くなる。そして、検知部18から得られる検知結果に応じて、被補助者の立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いをフィードバック通知部20が推定して被補助者に報知する。
【0021】
フィードバック通知部20は、たとえば、支持部12の上面に配置した液晶表示装置を介して依存度合いを示唆する文字メッセージを被補助者に提供することができる。文字メッセージの内容は、たとえば「昨日よりしっかり立てるようになりましたよ」とか、「前回より筋肉が強くなったみたいですよ」とすることができる。また、同様な内容をスピーカを介して音声で提供してもよい。また、LEDやランプの点灯により同様な内容を示唆してもよい。立ち上がり運動中にこのような通知を受けることにより、被補助者は心理的に励まされ、より頑張ろうとしたり、次の明確な目標を立てることが可能になり、立ち上がり運動能力の早期回復に寄与することができる。特に、音声により通知を行うことにより、従来の「声かけ」と同等の効果を期待できる。
【0022】
図3は、立ち上がり運動補助装置10の機能ブロック図である。前述したように、支持部12を立ち上がり方向に移動させる可動機構16は、スタートスイッチ35のオンにより動作する駆動部14によって駆動する。駆動部14に含まれるモータの回転運動の変化は、検知部18に含まれるエンコーダにより検知される。制御部36は、立ち上がり運動補助装置10全体の制御を行う。制御部36は、駆動部14を駆動するドライバや、検知部18から提供される負荷に応じてドライバの駆動を補正するフィードバック制御部を含む。また、駆動部14のモデル駆動パターンやフィードバック通知部20に含まれる液晶表示装置上のタッチパネルや図示しない入力スイッチなどから入力される被補助者のパーソナルデータなどを記憶する記憶部を含む。
【0023】
フィードバック通知部20は、液晶表示装置38やスピーカ40で通知する内容を決定する通知決定部42と、通知の内容を決定するために用いる過去の履歴情報である負荷情報(依存度合いの情報)やモデルとなる負荷情報(理想値)、種々の通知の内容などを記憶する記憶部44を含んでいる。通知決定部42は、制御部36を介して提供される検知部18の検知結果に基づき、被補助者の依存度合いを推定する。そして、推定した依存度合いと記憶部44に記憶している依存度合いの履歴情報や理想値と比較して通知する内容を決定する。
【0024】
たとえば、検知部18で検知される駆動部14の負荷が大きいほど被補助者の立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが大きいことになる。つまり、被補助者の脚部の筋力などがまだ十分でない場合、上体の重さを立ち上がり方向にスムーズに移動させることができず、駆動部14の動力に依存することになる。その依存が駆動部14の駆動負荷となり、モータの実際の回転速度を目標回転速度より遅らせる。この遅れが検知部18のエンコーダにより検知される。この遅れは、被補助者の依存度合いに応じて変化するので、エンコーダの出力値を所定の手順に従って演算処理することにより、被補助者の依存度合いを推定できる。したがって、検知部18で検知される駆動部14の負荷が前回に比べ小さくなった場合、被補助者の立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが小さくなったことを示すことになる。つまり、立ち上がり運動の機能が前回に比べ改善されたとみなすことができる。
【0025】
なお、モータ駆動である対象物を目標値に沿って駆動するようにするフィードバック制御の方法としては種々の方法がある。そして、フィードバック制御を応用して、本実施形態における被補助者の依存度合いを推定することもできる。たとえば,内部モデル制御(IMC:Internal Model Control)に基づく制御系の構成によって外乱値を推定することができる。その外乱値に基づいて駆動部14に対しフィードバック制御を実施することができる(R.Suzuki, M. Tani and N. Kobayashi : Design and development of single side driven wheelchairs by using internal model control, Proc.IEEE Conference on Control Applications,pp. 355-360, 2002)。つまり、駆動部14のモータに接続されたエンコーダにより検出される回転の遅れからフィードバック制御量を求めてモータのトルクを補正する。このとき、フィードバック制御をする前に制御量を取り出すことにより、モータに対して被補助者が依存した度合い(負荷)を割り出すことができる。また、エンコーダの遅れと負荷の量の関係を事前に測定してマップまたは関数にして保持しておいてもよい。これにより、エンコーダの遅れさえ得られれば簡単に立ち上がり運動補助装置10が被補助者から受けている負荷を推定することもできる。
【0026】
なお、通常モータが制御されて対象物の運動(本実施形態の場合、支持部12の立ち上がり運動方向の移動)を制御する場合、モータの回転状態をエンコーダで検出している。上述したように、支持部12の駆動システムにエンコーダが含まれる場合、エンコーダにより検出される回転の遅れに基づき被補助者60の依存度合い(負荷)を推定することにより、依存度合い検出用の専用のセンサなどを設けることなく、容易なシステムで立ち上がり運動補助装置10の依存度合いの通知システムを実現できる。
【0027】
図4は、本実施形態の立ち上がり運動補助装置10の支持部12の下方に車輪46を含む歩行補助部48を装着して歩行車50を構成した例である。歩行補助部48は、C字型のパイプフレーム52に、4個の回転自在な車輪46を備えている。車輪46のうち前輪に相当する車輪46a、車輪46bは方向転換が可能なように、矢印E方向に回動自在にすることが望ましい。
【0028】
立ち上がり運動補助装置10は、パイプフレーム52に形成された支持ベース54に固定されている。また、パイプフレーム52には垂直に立ち上がる2本の支柱56が固定されている。支柱56は外筒部と内筒部で構成された伸縮自在な構造で、外筒部の下端がパイプフレーム52に固定され、内筒部の上端が立ち上がり運動補助装置10の支持部12の下面に固定されている。したがって、支持部12は立ち上がり方向に可動機構16と支柱56によってガイドされスムーズに移動できるようになっている。なお、立ち上がり運動補助装置10を歩行車50に適用する場合、駆動部14、フィードバック通知部20、制御部36などを駆動するバッテリをパイプフレーム52や可動機構16など任意の位置に搭載する必要がある。
【0029】
上述のように構成される立ち上がり運動補助装置10を搭載する歩行車50の動作を図5を用いて説明する。
【0030】
椅子58に着座した被補助者60は、図5(a)に示すように、まず歩行車50を体に向かって引き寄せる。このとき、支持部12の胸当パッド22が被補助者60の胸部に接近するように、パイプフレーム52が椅子58の脚の間または外側に入るようにする。様々な幅の椅子58に対応できるようにパイプフレーム52の左右幅を変更する調整機構を設けてもよい。被補助者60は立ち上がり運動の初期動作としての前傾姿勢をとるために、図5(a)に示すように、胸当パッド22の上に手を置く。続いて、図5(b)に示すように、胸当パッド22を矢印B1方向に回転させることにより、自然に被補助者60の上体が前傾する。また、図5(c)に示すように、胸当パッド22は矢印C1方向に移動可能なので、さらに前傾を深くすることができる。胸当パッド22が矢印B1方向に回転しながら、矢印C1方向に移動することにより、被補助者60は胸当パッド22により支持されているという安心感を覚えつつ、前傾姿勢をとるトレーニングを行うことができる。この状態で被補助者60は支持部12を両脇の下に抱え込み、立ち上がり運動補助装置10に対するもたせかけ姿勢を完成させる。なお、胸当パッド22の矢印B1方向の回転や矢印C1への移動をモータ駆動として、被補助者60の前傾姿勢を動力により補助するようにしてもよい。
【0031】
続いて、被補助者60は脚部を延ばす立ち上がり動作を行う。この場合、被補助者60に十分な立ち上がり能力があれば、立ち上がり運動補助装置10の補助を受けることなく立ち上がることができる。しかし、立ち上がり運動補助装置10の補助を必要とする場合、立ち上がり運動補助装置10のスタートスイッチ35をオンして、駆動部14を駆動させる。前述したように、駆動部14は所定速度で支持部12を立ち上がり方向に移動させるようにフィードバック制御が行われる。したがって、被補助者60は立ち上がり運動能力に拘わらず、ほぼ一定のスピードで立ち上がり運動をすることができる。このとき、被補助者60の立ち上がり能力が高い場合、駆動部14に対する負荷は小さく、立ち上がり能力が低い場合、駆動部14に対する負荷が大きくなる。
【0032】
本実施形態の立ち上がり運動補助装置10の場合、駆動部14に対する負荷が小さい場合、立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが小さいと見なすことができる。逆に駆動部14に対する負荷が大きい場合、立ち上がり運動補助装置10に対する依存度合いが大きいと見なすことができる。この依存度合いに基づき、被補助者60のやる気を喚起するようなメッセージをフィードバック通知部20により通知する。たとえば、「スムーズに立ち上がれましたね。これからも頑張ってください。」などの通知を行う。また、被補助者60の過去の依存度合いの履歴情報を記憶部44が持っている場合、その履歴データと今回の依存度合いを比較して、「ずいぶん筋肉が付いてきたみたいです。引き続き頑張りましょう。」とか、「○○日前より**%依存度が減りました。さらに減らせるように頑張りましょう。」、「現在の依存度が**%です。この調子ならあと○○日位で一人で立ち上がれるようになるかもしれません。」などと通知することが可能となる。なお、履歴情報との比較の結果、今回の依存度合いの方が大きくなった場合、通知を行わないか、励ますような内容のメッセージを通知するようにしてもよい。
【0033】
図6は、駆動部14にかかる負荷の変化を示すグラフの一例で、支持部12におもりを載せた場合の負荷の変化と、被補助者60が立ち上がり運動補助装置10により立ち上がり補助を受けたときに駆動部14にかかる負荷の変化を示すグラフを比較できるように示したものである。なお、図6中で破線Lは、支持部12に何も載せないで駆動部14を駆動した場合の負荷の変化、一点鎖線Mは、支持部12に15kgのおもりを載せて駆動部14を駆動した場合の負荷の変化、細線Nは、支持部12に20kgのおもりを載せて駆動部14を駆動した場合の負荷の変化である。また、図6において、駆動部14にかかる負荷は、増加方向をマイナス(-)で示している。図6に示すように、立ち上がり運動補助装置10においてスタートスイッチ35をオンすると、駆動部14が駆動を開始し始め可動機構16を可動させる初期負荷が上昇する。そして、たとえば、1.0s付近で可動機構16が実際に動き始める。このとき、支持部12にかかっている負荷が大きい場合、駆動部14に対する負荷も大きくなる。支持部12に何も載せていない場合、またはおもりを載せている場合は、可動機構16の駆動後、駆動部14にかかる負荷はほぼ一定になる。一方、被補助者60が支持部12にもたれかかり負荷となっている場合、図6中太線Pで示すように、立ち上がり動作中(たとえば、1.5s~2.5s)は、負荷がほぼ一定になり、その後立位姿勢となることで、駆動部14の負荷が軽減される(2.5s以降)。たとえば、被補助者60の依存度合いが図6の状態より小さくなると、太線Pは、一点鎖線Mや破線Lの側に近づく。逆に被補助者60の依存度合いが図6の状態より大きくなると、太線Pは細線Nの側に近づく。したがって、予め様々なおもりを用いた駆動部14の負荷データを準備して、その負荷データと実際に被補助者60が立ち上がり運動補助装置10の補助を受けた場合の負荷データを比較することができる。その結果、被補助者60が立ち上がり運動補助装置10にどれくらい依存して立ち上がり運動を行っているかが推定可能になり、その推定値に応じた具体的な数値を含むメッセージを選択して通知することができる。
【0034】
被補助者60は、図5(d)に示すように、立ち上がり動作が完了した場合、歩行車50の歩行補助機能を用いて歩行トレーニングを行ってもよい。また、椅子58に座り込み、再度立ち上がり運動のトレーニングを行ってもよい。
【0035】
このように、本実施形態の立ち上がり運動補助装置10によれば、一人で立ち上がり運動のトレーニングをさせることができるとともに、補助者による「声かけ」と同等な心理的効果を被補助者に提供可能となり、立ち上がり運動機能の早期回復に寄与できる。また、筋電計などのような専門的な測定器を利用しなくても立ち上がり運動機能の回復状態を依存度合いとして示すので、誰でも立ち上がり運動補助装置10を使用できる。
【0036】
本実施形態の立ち上がり運動補助装置10の別の使用例として、立ち上がり運動補助装置10を被補助者60の起立姿勢を補助できる構造体に取付固定して用いることもできる。図7は、構造体に取付固定するための取付機構を備えた立ち上がり運動補助装置100の構成例である。立ち上がり運動補助装置100の基本構成は、図1で説明したものと同じであり、同様の機能を有する部材には同じ符号を付しその説明を省略する。取付機構はたとえば可動機構16に固定することができる。図7の例の場合、取付機構は支持部12の湾曲内側部分Aと逆向きに開いたC字形状の2本の固定アーム62で構成されている。固定アーム62の先端には、固定座部64が設けられ、たとえば、ボルトなどの締結部材により壁面に固定する。また、固定アーム62が立ち上がり方向Dに高さ調整できるスライド機構を備えれば、被補助者60の体格に応じて支持部12の高さを変更できるので、使い勝手が向上する。また、立ち上がり運動補助装置100のように据え置き型とする場合、駆動部14やフィードバック通知部20などの電源は、商用電源からとることができる。なお、固定座部64をロック機能付きの吸着盤としてもよい。この場合、吸着位置を容易に変更できるので、スライド機構を用いなくとも体格に応じた調整が可能になるとともに、持ち運びが容易になり使い勝手が向上する。また、取付機構の形態は任意であり、取付機構の形態を変更することにより、たとえば、既存の歩行車に立ち上がり運動補助装置10を装着したり、椅子58に立ち上がり運動補助装置10を装着することもできる。
【0037】
本実施形態では、フィードバック通知部20を支持部12上に配置する例を示したが、配置場所は任意であり、立ち上がり運動中に被補助者60が通知内容を確認できる位置であればよい。また、依存度合いのデータを有線または無線により、管理コンピュータなどに転送して、被補助者60のトレーニング管理に活用するようにしてもよい。また、立ち上がり運動補助装置10に印刷機能を搭載し、依存度合いを被補助者60などに提供してもよい。
【0038】
また、本実施形態で示した通知の内容は、一例であり検知部18の検知結果から推定した依存度合いに基づき、被補助者60の心理状態を刺激して、被補助者60のやる気を向上させる内容であれば、適宜変更してもよく、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態で示した依存度合いの推定方法は一例であり、被補助者60が立ち上がり動作のために支持部12に負荷をかけたときの負荷を検知し、依存度合いを推定するものであればよい。たとえば、得られた負荷に数学的処理を加え、依存度合いを推定してもよいし、予め実験で作成したおいた依存度合いと負荷が1対1で対応したマップを用いて依存度合いの推定を行ってもよい。また、本実施形態の立ち上がり運動補助装置10は、胸当パッド22を備えているが、胸当パッド22の搭載は任意であり、胸当パッド22がない簡易タイプでも本実施形態と同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置の基本構造を説明する斜視図である。
【図2】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置の可動機構の概略構造を示す断面図である。
【図3】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置の機能ブロック図である。
【図4】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置に車輪を含む歩行補助部を装着して歩行車を構成した例を説明する説明図である。
【図5】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置を含む歩行車の動作を説明する説明図である。
【図6】本実施形態にかかる立ち上がり運動補助装置の負荷の変化を例示的に示すグラフである。
【図7】構造体に取付固定するための取付機構を備えた立ち上がり運動補助装置の構成例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0041】
10 立ち上がり運動補助装置、 12 支持部、 12a アーム部、 14 駆動部、 16 可動機構、 18 検知部、 20 フィードバック通知部、 22 胸当パッド、 36 制御部、 38 液晶表示装置、 40 スピーカ、 42 通知決定部、 44 記憶部、 60 被補助者。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
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