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明細書 :層状シリケートの層間修飾による新規ゼオライト様物質及びその製法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982246号 (P4982246)
公開番号 特開2008-162878 (P2008-162878A)
登録日 平成24年4月27日(2012.4.27)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年7月17日(2008.7.17)
発明の名称または考案の名称 層状シリケートの層間修飾による新規ゼオライト様物質及びその製法
国際特許分類 C01B  37/02        (2006.01)
FI C01B 37/02
請求項の数または発明の数 14
全頁数 24
出願番号 特願2007-132205 (P2007-132205)
出願日 平成19年5月17日(2007.5.17)
優先権出願番号 2006327154
優先日 平成18年12月4日(2006.12.4)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年1月15日(2010.1.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】辰巳 敬
【氏名】稲垣 怜史
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開2005-194113(JP,A)
特開2005-041763(JP,A)
特開2003-073115(JP,A)
調査した分野 C01B 33/20-39/54
特許請求の範囲 【請求項1】
層状シリケートを脱水縮合して製造され、ケイ素原子と酸素原子との共有結合からなるマイクロ孔を有するゼオライト様物質であって、当該層状シリケートに層間架橋剤を添加して脱水縮合することにより当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質。
【請求項2】
層間架橋剤が、シリル化剤である請求項1に記載のゼオライト様物質。
【請求項3】
シリケートからなるゼオライト様物質の粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)が、原料の層状シリケートの粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のゼオライト様物質。
【請求項4】
層状シリケートが、シリンダー状にマイクロ孔を有する層状シリケートである請求項1~3のいずれかに記載のゼオライト様物質。
【請求項5】
層状シリケートが、PLS-1である請求項4に記載のゼオライト様物質。
【請求項6】
シリケートからなるゼオライト様物質の化学組成が次式(1)
Si20・O38(OH)・M (1)
(式中、Mは、アルカリ金属を表し、xは0≦x≦3.0の範囲を表す。)
で表される請求項1~5のいずれかに記載のゼオライト様物質。
【請求項7】
層状シリケートに層間架橋剤を添加し、脱水縮合して、当該層状シリケートの層間が層間架橋剤により架橋され、当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質を製造する方法。
【請求項8】
層間架橋剤が、シリル化剤である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
層状シリケートに層間架橋剤を添加する工程が、酸性条件下で行われる請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
層間架橋剤の添加量が、層状シリケートの30質量%~500質量%である請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
層状シリケートが、シリンダー状にマイクロ孔を有する層状シリケートである請求項7~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
層状シリケートが、PLS-1である請求項7~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
さらに、架橋の後に、焼成する工程を含んでなる請求項7~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
さらに、焼成の前に、層間架橋剤との反応を充分に行わせるための加熱処理を行う請求項7~13のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、層状シリケートを脱水縮合して製造され、ケイ素原子と酸素原子との共有結合からなるマイクロ孔を有するゼオライト様物質であって、当該層状シリケートの層間架橋剤を添加して脱水縮合することにより当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、ギリシャ語の「沸騰する石」の意味から命名されたもので、日本語では「沸石」と言われている。ゼオライトは、主にアルミニウムとケイ素からなるアルミノシリケートを主成分とするものであり、結晶構造にアルミノシリケートの立体構造に由来するオングストローム単位の微孔を有している。
ゼオライトは、独特な結晶構造を有しているために、分子ふるい作用、吸脱着作用、イオン交換能などの様々な作用を有しており、洗剤などのビルダーとしてだけでなく、触媒、吸着剤、イオン交換剤などとして広く工業的に利用されてきているが、アルミノシリケートの立体構造に由来する微孔の形状や大きさにより、ゼオライトの特性が異なり、利用目的に合わせて多種多様なゼオライトが開発されてきている。
現在までに、約40種類以上のゼオライトが天然ゼオライトとして発見されてきており、約160種類以上の合成ゼオライトが開発されてきている。このような合成ゼオライトは、一般に水熱合成法により製造されおり、有機分子などの鋳型を用いて結晶構造の微孔の大きさを調整したり、また原料のシリカとアルミナの量を調整してシリカ/アルミナ比を調製するなどして製造されている。最近では、特殊な触媒能や吸着能を付与させるために、鋳型として複雑な有機分子を使用する傾向が強まっている。しかしながら、特に触媒としての実用化を考えた場合、複雑な有機分子の使用はコスト的に非常に不利となる。また、近年になって、シリカ/アルミナ比の高いゼオライトの合成法も開発されてきた。
【0003】
このような背景から、簡単な有機分子を構造規定剤とするゼオライトによる新規なゼオライトの合成が望まれている。そのひとつの手法として、層状シリケート構造から出発して、それに対応した3次元ゼオライト構造を合成する手法が開発されてきており、既に10に近い例が報告されてきている(非特許文献1及び2参照)。この方法は、アルミニウムを含有しておらず、アルミノシリケートではなく、シリケートによる立体規則的な結晶構造によるゼオライト様物質ということができる。例えば、PLS-1(pentagonal-cylinder layered silicate)の層間を脱水縮合により架橋することにより、新規結晶構造を有するゼオライト様物質CDS-1(cylindrically double saw-edged zeolite)が報告されている(特許文献1-3参照)。この方法で使用されているPLS-1は、Si-Oの4面体配位の繰り返し単位をシリケート基本構造に持ち、ケイ素5員環による微細孔がシリケート内に含まれた構造を有している。この方法は、PLS-1の層間を直接脱水縮合させるものであり、製法としては比較的簡単ではあるが、生成物の結晶構造はPLS-1の特徴に依存しており、このような生成物は、層状化合物の層間の脱水縮合により得られる新規構造体の多くは8員環の小細孔ゼオライトの合成にしか連なっておらず、触媒や吸着剤としての適用範囲は限られてた。
簡便な製造法で、規則的な小さな細孔を有し、かつ結晶構造を自由に選択することができ、さらに機械的強度や熱的安定性を有するゼオライト又はゼオライト様物質の新規な開発が望まれてきている。
【0004】

【特許文献1】特開2004-339044号公報
【特許文献2】特開2005-145773号公報
【特許文献3】特開2005-194113号公報
【非特許文献1】T. Ikea, Y. Akiyama, Y. Oumi, A. Kawai and F. Mizukami, Angew. Chem. Int. Ed., 43 (2004) 4892-4896.
【非特許文献2】E. Hida, Y. Oumi, T. Ikeda, A. Kawai, T. Yokoyama, F. Mizukami and T. Sano, J. Ceram. Soc. Jpn., 113 (2005) 424-428.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便な製造法で、規則的なマイクロ孔(小さな細孔)を有し、かつ結晶構造を自由に選択することができ、さらに機械的強度や熱的安定性を有する新規なゼオライト様物質、及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、層状化合物とゼオライトの相互変換を利用して、新規でかつ拡大した細孔を有するゼオライトの製造を検討してきた。しかし、層状化合物からゼオライトを製造する場合には、生成するゼオライトの構造が原料となる層状化合物の層間距離に依存し、ゼオライトの小さな細孔(微孔)構造を自由に設計することができなかった。本発明者らは、原料となる層状化合物の層間距離に依存せずに、任意のマイクロ孔(小さな細孔)構造を有するゼオライト様物質を製造するために、種々の方法を検討してきたが、このような層状化合物は通常一定の層間距離を維持していることにより安定に存在していることや、層と層の間に取り込まれる分子が制限されていることなどから、層状化合物の層間距離を変化させることは容易なことではなく、困難を極めたが、種々検討してきた結果、層状シリケートに層間架橋剤を加えることにより層間にケイ素原子を挿入することができ、層状化合物の層間距離に依存しない、新規な税押出機ライト様物質の製造法を開発することに成功した。
【0007】
即ち、本発明は、層状シリケートを脱水縮合して製造され、ケイ素原子と酸素原子との共有結合からなるマイクロ孔を有するゼオライト様物質であって、当該層状シリケートの層間架橋剤を添加して脱水縮合することにより当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質に関する。
また、本発明は、層状シリケートに層間架橋剤を添加し、脱水縮合して、当該層状シリケートの層間が層間架橋剤により架橋され、当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質を製造する方法に関する。
【0008】
本発明をより詳細に説明すれば、次の(1)~(8)のとおりとなる。
(1)層状シリケートを脱水縮合して製造され、ケイ素原子と酸素原子との共有結合からなるマイクロ孔を有するゼオライト様物質であって、当該層状シリケートに層間架橋剤を添加して脱水縮合することにより当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質。
(2)層間架橋剤が、シリル化剤である前記(1)に記載のゼオライト様物質。
(3)シリケートからなるゼオライト様物質の粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)が、原料の層状シリケートの粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)よりも小さいことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のゼオライト様物質。
(4)層状シリケートが、シリンダー状にマイクロ孔を有する層状シリケートである前記(1)~(3)のいずれかに記載のゼオライト様物質。
(5)層状シリケートが、PLS-1である前記(4)に記載のゼオライト様物質。
(6)シリケートからなるゼオライト様物質の化学組成が次式(1)
SiO・O38(OH)・M (1)
(式中、Mは、アルカリ金属を表し、xは0≦x≦3.0の範囲を表す。)
で表される前記(1)~(5)のいずれかに記載のゼオライト様物質。
(7)層状シリケートに層間架橋剤を添加し、脱水縮合して、当該層状シリケートの層間が層間架橋剤により架橋され、当該層状シリケートの層間距離が層間架橋剤により拡大されたマイクロ孔を有することを特徴とするシリケートからなるゼオライト様物質を製造する方法。
(8)層間架橋剤が、シリル化剤である前記(7)に記載の方法。
(9)層状シリケートに層間架橋剤を添加する工程が、酸性条件下で行われる前記(7)又は(8)に記載の方法。
(10)層間架橋剤の添加量が、層状シリケートの30質量%~500質量%である前記(7)~(9)のいずれかに記載の方法。
(11)層状シリケートが、シリンダー状にマイクロ孔を有する層状シリケートである前記(7)~(10)のいずれかに記載の方法。
(12)層状シリケートが、PLS-1である前記(7)~(11)のいずれかに記載の方法。
(13)脱水縮合の前に、50℃~300℃、好ましくは100℃~200℃程度で加熱処理を行う前記(7)~(12)のいずれかに記載の方法。
(14)さらに、架橋の後に、焼成する工程を含む前記(7)~(13)のいずれかに記載の方法。
(15)さらに、焼成の前に、層間架橋剤との反応を充分に行わせるための加熱処理を行う前記(7)~(14)のいずれかに記載の方法。
【0009】
本発明は、層状シリケートからゼオライト様物質を製造する方法において、当該層状シリケートの層間距離を拡大させることを特徴とするものである。以下の説明では、より具体的に説明するために層状シリケートとしてPLS-1を挙げ、層間架橋剤としてジクロロジメチルシランを挙げ、層状シリケートを直接脱水縮合させる従来の方法によるセオライト様物質の例としてDCS-1を挙げ、そして本発明のゼオライト様物質としてTIT-3と命名された物質を挙げて説明するが、これは本発明の例示に過ぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
まず、図1の模式的図により説明する。図1は層状シリケートとしてPLS-1を用いて説明しているカラーの図であり、原図のカラーでは赤橙色が酸素原子を示し、緑色の折れ曲がり部分がケイ層状シリケート原子を示している。図1の左上が原料となる層状シリケートである。図1の右側中央は、これを直接焼成(Calcination)することによりCDS-1と呼ばれるゼオライト様物質(非特許文献1-3参照)が製造された様子を示している。図1の下側は本発明の方法を示している。図1の右上側の四角でくくった内側は、CDS-1のマイクロ孔(上側)及び本発明のゼオライト様物質(TIT-3)のマイクロ孔をそれぞれ示している。図1に示されるように、従来の方法では、層状シリケートの層と層が直接脱水縮合されるために層を形成しているケイ素原子が相互に酸素原子により結合して、ゼオライト様物質を形成している(図1の右側中央)。これに対して、本発明の方法では、層間架橋剤が存在し、そして、当該層間架橋剤が層状シリケートの層間に挿入され、層を形成しているケイ素原子が直接結合するのではなく、添加した層間架橋剤と脱水縮合し、添加した層間架橋剤により架橋されたような構造になっている(図1の下側参照)。しかも、このような架橋構造のミクロ構造は、添加する層間架橋剤の量により変化している。図1の下側の(a)及び(b)は、層間架橋剤を層状シリケートに対して約50質量%添加した場合のものであり、(c)は約100質量%添加したときのものである。このように、層状シリケートの層間に形成される新たなマイクロ孔の形状や大きさは添加する層間架橋剤の量により異なってくる。
従来のCDS-1のマイクロ孔と本発明のゼオライト様物質におけるマイクロ孔を比較した結果が図1の右上に模式的に示されている。数字の単位はオングストロームである。従来のCDS-1では、2.7×4.6オングストロームであるが、本発明の方法により製造されるゼオライト様物質では、4.0×4.9オングストロームと飛躍的に大きくなっていることがわかる。このことは、細孔の平均容積の相違からも明らかにされた。
次の表1に、従来のCDS-1と本発明のゼオライト様物質であるTIT-3の、比表面積及びマイクロ孔の容積を示す。
【0010】
【表1】
JP0004982246B2_000002t.gif

【0011】
この結果によれば、CDS-1のマイクロ孔容積が0.107cm-1であるのに対して、TIT-3では0.172cm-1と約1.6倍に増加している。これはTIT-3ではシリル化により層間が拡張しており、マイクロ孔が大きくなったために、CDS-1よりも高いマイクロ孔容積を示すと考えられる。また、比表面積も同様にBET比表面積では、本発明のTIT-3では約1.3倍になり、TIT-3がCDS-1よりも高い値となっているが、これもマイクロ孔の拡張という同様の理由によるものである。
これは、本発明の方法によれば、層間に層間架橋剤をあらかじめ侵入させておくため、層の表面にある水酸基同士が直接脱水縮合せずに、その水酸基と層間架橋剤のシリル化剤とが脱水縮合することで、シリル化剤が層間を支える柱となって層間が拡張した構造となり、これを焼成して層間の有機物を除去することで、本発明のTIT-3が形成する。このとき、層間に形成する柱の形状や存在箇所によって、本発明のTIT-3の構造としてはいくつかの可能性が考えられる。図1の下段の(a)および(b)では、層間架橋剤のシリル化剤による層間の架橋度が50%の場合を示してある。この構造では、架橋していない孤立水酸基が残存しているものの、酸素20員環程度の細孔空間が存在している。いっぽう、図1の(c)には、層間架橋剤のシリル化剤による層間の架橋度が100%の場合を示してあり、このときには、シリカ架橋構造により区切られた空間は約10員環程度である。この10員環程度の大きさを見積もると4.0×4.9オングストロームであると推測される。
【0012】
次に図2に各物質の粉末XRDパターンを示した。その結晶構造と層間距離について説明する。図2の(a)は、層状シリケートとしてPLS-1のXRDパターンである。ここではPLS-1の結晶構造に由来する回折ピークが得られている。図2の(b)は、PLS-1の層間架橋剤を添加してシリル化処理した後の生成物のXRDパターンである。回折角10°~40°にわたって、結晶構造に由来する回折ピークが現れており、シリル化処理によってPLS-1の層内の周期構造が損なわれていないことがわかる。また、7.6°付近に現れている回折ピークは層の周期構造を示すが、このピーク位置がPLS-1での層の周期構造を示すピーク位置、8.5°付近から大きく、低角度へとずれていることがわかる。このピークのずれは、PLS-1での層の繰り返し間隔が10.4オングストロームと狭かったところから、シリル化後の生成物では11.6オングストロームに拡張したことを意味している。PLS-1の層間内で向かい合う水酸基同士は水素結合しているため、その距離は非常に近いが、シリル化剤分子がその間に入ると水酸基同士の水素結合が解離し、新たにシリル化剤分子と化学結合を形成する結果、層の繰り返し間隔が約1.2オングストローム分、広がったと考えられる。また、シリル化後に焼成した生成物のXRDパターンを図2の(c)に示すが、回折角8.5°付近に回折ピークを示すこと、また回折角10°~40°でも結晶構造に由来する回折ピークが現れている。これらのことは、焼成後にもこの層間が拡張した構造が保持されていることを意味している。
一方、PLS-1を直接焼成して得られるCDS-1のXRDパターンを図2の(d)に示すが、こちらではCDS-1の結晶構造に由来する回折ピークが現れており、とくに層の周期構造を示す回折ピークは回折角9.6°付近に現れている。焼成処理により、層間内で向かい合う水酸基同士が脱水縮合するので、層の繰り返し間隔が9.2オングストロームまで縮まることを表している。
【0013】
図3には各物質の電子顕微鏡観察像を示す。図3の(a)は層状シリケートであるPLS-1であり、図3の(b)はCDS-1であり、図3の(c)は本発明のTIT-3である。前駆物質である層状シリケートのPLS-1は四角平板であり、その1辺が0.5~1.0μm程度であり、厚さが30~50nm程度である。PLS-1を直接焼成して得られるCDS-1ゼオライトは、PLS-1由来の幾何学的な形状はほとんど変化していないことがわかる。また、TIT-3でも同様に、PLS-1の粒子形状とほぼ同様の形状をしている。即ち、本発明の方法においても、原料の層状シリケートにおける各層の層構造は極端な変化を生じていないことがわかる。
【0014】
図4にはCDS-1とTIT-3のチッ素吸・脱着等温線を示す。図4の(a)は従来のCDS-1の場合を示し(原図では青色)、(b)は本発明のTIT-3の場合を示す(原図では赤色)。どちらの物質でも、相対圧0.1までにチッ素吸着量の急激な増加が見られ、その構造にマイクロ孔を有していることがわかる。また双方の物質の最大吸着量も300cm-1程度に達しており、高い比表面積を有する物質であることがわかる。
【0015】
図5および図6にはCDS-1とTIT-3でのn-ヘキサンの吸・脱着等温線、およびベンゼンの吸着等温線を示す。図5の(a)は従来のCDS-1の場合を示し(原図では青色)、(b)は本発明のTIT-3の場合を示す(原図では赤色)。図6の(a)は従来のCDS-1の場合を示し(菱形印(◇))、(b)は本発明のTIT-3の場合を示す(丸印(○))。ここでは相対圧0.1以下の吸着量に注目すると、TIT-3では10cm(S.T.P.)g-1までの急激な吸着量の増加が見られるのに対して、CDS-1では、n-ヘキサンの吸着がTIT-3に比べて極めてわずかである。CDS-1では結晶構造に由来する8員環マイクロ孔へのn-ヘキサンの吸着は起こらなかったと考えられる。一方、TIT-3では構造内に層間が拡張したことにより形成した8員環よりも大きいマイクロ孔があり、そのマイクロ孔はn-ヘキサンが吸着するのに十分な大きさを有していることがわかる。対照的にベンゼンを吸着質とした場合には、TIT-3でも低圧部での急激な吸着量の増加が見られなかったことより、TIT-3構造内に存在するマイクロ孔の大きさでは室温でベンゼンを吸着することができないことがわかる。したがって、TIT-3の層間にあるマイクロ孔は、n-ヘキサン(3.9×4.3×9.7オングストローム)を取り込むことはできるが、ベンゼン(2.5×6.5×7.2オングストローム)を吸着することはできない大きさであることがわかる。
【0016】
次に、層状シリケートの層間修飾処理でジクロロジアルキルシラン又はジアルコキシシジアルキルシランを架橋剤として用いることで、層間架橋シロキサン結合部分にアルキル基を保持した新規な有機無機ハイブリッド・ミクロ多孔体を製造することができる。ここでは、この新規な有機無機ハイブリッド物質をTKT-1(Tokyo Institute of Technology - 1)と呼ぶ。またTKT-1を焼成することでTKT-2を得ることができる。
まず、層状化合物PLS-1の層間にシリカを挿入して層間が拡大した細孔を形成する操作により得られる、TKT-1となる過程を図7に示す。PLS-1には、シリカ骨格以外にカリウムイオン(K)及びトリメチルアンモニウムイオン(TMA)がその層間に存在しているが、KおよびTMAイオンはともに酸処理により除去可能である。
PLS-1の結晶構造をある方向からみると、酸素5員環が直線的に連結した構造を見ることができる。この周期的な5員環連結構造には、その5員環を形成するケイ素原子と結合した水酸基がやはり周期的に存在している。本発明で開発した手法では、層間にシリル化剤をあらかじめ侵入させておくため、層の表面にある水酸基どうしが脱水縮合せずに、その水酸基とシリル化剤とが脱水縮合することで、シリル化剤が層間を支える柱となって層間が拡張した構造、TKT-1が形成する。
【0017】
図7にシリル化剤による層間の架橋度が100%の場合を模式的に示してある。図7の上段の(a)は、層状シリケートPLS-1を示し、独立している薄い黒丸印(原図では緑色の丸印)はトリメチルアンモニウムイオン(TMA)を示し、黒丸印(原図では紫色の丸印)はカリウムイオン(K)を示し、結合中の黒丸印(原図では赤色の丸印)は酸素原子(O)を示し、線で示されている箇所の節(ノード)部分はケイ素原子(Si)を示している。図7の中段の(b)は、ジクロロジメチルシランで架橋された有機無機ハイブリッドミクロ体TKT-1を示し、架橋部分の灰色の丸印(原図では黄色の丸印)はメチル基を示し、線分で結合されている黒丸印(原図では赤色の丸印)は酸素原子を示し、線で示されている箇所の節(ノード)はケイ素原子を示している。図7の下段の(c)はゼオライト様物質TKT-2を示し、架橋部分の灰色の丸印(原図では黄色の丸印)及びその右側の拡大図における黒丸印(原図では赤色の丸印)は水酸基(OH)を示しており、その他は前述してきたとおりである。
このときには、シリカ架橋構造により区切られた空間は10員環である。この10員環の大きさを見積もると4.0×4.9オングストロームであると推測される。また、シリル化剤にアルキル基を含むものを用いると、架橋シロキサンにアルキル基が導入された構造となり、有機無機ハイブリッドミクロ多孔体TKT-1となる。一方、TKT-1を焼成すると、層間が拡張した細孔構造を保持しているが、層間架橋シロキサン部位に結合しているアルキル鎖が燃焼し、水酸基へと変化する。このようにして得られる構造体には有機基が残存していないため、無機の構造体となる。このために、当該無機の構造体を、前記した有機無機ハイブリッド構造体であるTKT-1と区別してTKT-2と呼ぶ。
【0018】
図8に各物質の粉末XRDパターンを示し、その結晶構造と層間距離について説明する。図8(a)には層状化合物PLS-1のXRDパターンを示すが、ここではPLS-1の結晶構造に由来する回折ピークが得られている。図8(b)にはPLS-1のシリル化処理後の生成物TKT-1のXRDパターンを示す。回折角10°~40°にわたって、結晶構造に由来する回折ピークが現れており、シリル化処理によってPLS-1の層内の周期構造が損なわれていないことがわかる。また、7.6°付近に現れている回折ピークは層の周期構造を示すが、このピーク位置がPLS-1での層の周期構造を示すピーク位置である8.5°付近から大きく、低角度へとずれていることがわかる。このピークのずれは、PLS-1での層の繰り返し間隔が10.4オングストロームと狭かったところから、シリル化後の生成物では11.6オングストロームに拡張したことを意味している。PLS-1の層間内で向かい合う水酸基どうしは水素結合しているため、その距離は非常に近いが、シリル化剤分子がその間に入ると水酸基どうしの水素結合が解離し、新たにシリル化剤分子と化学結合を形成する結果、層の繰り返し間隔が約1.2オングストローム分、広がったと考えられる。また、シリル化後に焼成した生成物TKT-2のXRDパターンを図8(c)に示すが、回折角8.5°付近に回折ピークを示すこと、また回折角10°~40°でも結晶構造に由来する回折ピークが現れている。これらのことは、焼成後にもこの層間が拡張した構造が保持されていることを意味している。
なお、図8(d)は、原料のCDS-1のXRDパターンを示している。
【0019】
図9は、CDS-1とTKT-1のチッ素吸・脱着等温線を示す。図9の上段の(b)はTKT-1を示し、下段の(a)はCDS-1の場合を示す。図9の白菱形印は吸着の場合を示し、黒菱形印は脱着の場合を示す。どちらの物質でも、相対圧0.1までにチッ素吸着量の急激な増加が見られ、その構造にマイクロ孔を有していることがわかる。また双方の物質の最大吸着量も150cm(S.T.P.)g-1程度に達しており、高い比表面積を有する物質であることがわかる。
【0020】
図10には、CDS-1、TKT-1、及びTKT-2でのn-ヘキサンの吸着等温線を示す。図10の白菱形印(◇)はCDS-1の場合を示し、白四角印(□)はTKT-1の場合を示し、白丸印(○)はTKT-2の場合を示す。ここでは相対圧0.1以下の吸着量に注目すると、TKT-1及びTKT-2では、10cm(S.T.P.)g-1までの急激な吸着量の増加が見られるのに対して、CDS-1ではn-ヘキサンの吸着がTIT-1に比べて極わずかである。CDS-1では結晶構造に由来する8員環マイクロ孔へのn-ヘキサンの吸着は起こらなかったと考えられる。一方、TKT-1及びTKT-2では構造内に層間が拡張したことにより形成した8員環よりも大きいマイクロ孔があり、そのマイクロ孔はn-ヘキサンが吸着するのに十分な大きさを有していることがわかる。
【0021】
図11には、TKT-1とTKT-2でのベンゼンの吸着等温線を示す。図11の白菱形印(◇)はTKT-1の場合を示し、白丸印(○)はTKT-2の場合を示す。ベンゼンを吸着質とした場合には、TKT-2では低圧部での急激な吸着量の増加が見られなかった。一方、TKT-1では低圧部での急激な吸着量の増加が観察できた。TKT-1とTKT-2ではミクロ孔の大きさはほとんど変わりないと考えられるため、TKT-1の選択的なベンゼンの吸着はミクロ孔内壁に存在するメチル基とベンゼン分子との相互作用に起因する。TKT-2では焼成処理によりメチル基が水酸基に変化しているため、ベンゼン分子との相互作用が生まれず、ミクロ孔内への吸着が起こらない。このような挙動はベンゼン以外にも、トルエンおよびパラキシレンで観察できる。
【0022】
図12には、TKT-1とTKT-2での水の吸・脱着等温線を示す。図12の白四角印(□)はTKT-1の場合を示し、白丸印(○)はTKT-2の場合を示す。n-ヘキサンやベンゼンなどの有機分子のときとは対照的に、ミクロ孔内に水酸基をもつTKT-2の方が、メチル基をもつTKT-1よりも多く水分子を吸着することがわかる。TKT-1はメチル基の存在により、高い疎水性を示すものと考えられる。
【0023】
本発明におけるゼオライト様物質としては、アルミノシリケートで無い点において、いわゆるゼオライトではないが、その結晶構造や特性はゼオライトと同様な性質を有しているという意味でゼオライト様物質という。本発明のゼオライト様物質は、原則としてはシリケートからなるものであるが、必要に応じてケイ素原子の一部をアルミニウム、ガリウムなどの他の金属原子に置き換えることもできる。その置換量としては、特に制限はないが、ゼオライトとの区別のためとしては、天然のアルミノシリケート以下とすることができる。10%以下程度の置換量は通常は可能であろう。本発明のセオライト様物質は、吸着能、脱着能、分子ふるい作用などにおいて、ゼオライトと同様な性質を有しており、かつ特異的なマイクロ孔の大きさを有することから、従来の物質とは異なる特異的な選択性を有している。例えば、前記してきたように、n-ヘキサンは取り込むことはできるが、ベンゼンの取り込みは困難となるような選択性があり、また、TKT-2のようにほぼ完全に焼成することによりより親水性とすることができるなどの特性を有しており、工業的な有用性を有している。
本発明の層状シリケートとしては、層状になっているシリケートであって、焼成によりゼオライト様物質を製造することができるものであればよい。好ましい層状シリケートとしてはシリンダー状にマイクロ孔を有する層状シリケートが挙げられる。このような層状シリケートは各層において、ケイ素と酸素原子からなる規則的な環状構造が形成され、この環が層状となってシリンダー状を形成するものであり、当該シリンダー状の構造自体がゼオライトと同様な機能を有する場合もあり、本発明における好ましい層状シリケートとなる。本発明の層状シリケートとして、好ましい例としては、PLS-1が挙げられる。このような層状シリケートは、例えば、二酸化ケイ素などのシリカ源、アルカリ金属イオンのような陽イオン源、鋳型となるアミン等の有機化合物、及び溶媒を加熱処理することにより製造することができる。
【0024】
本発明における製造方法としては、層状シリケートと層間架橋剤を混合、好ましくは溶媒の存在下で混合させ、次いで脱水縮合させる。溶媒としては、水などの他に各種の有機溶媒を使用することができるが、好ましい溶媒としては水が挙げられる。混合は中性条件でも、pH7未満、好ましくはpH1~5程度の酸性条件でもよい。酸性条件にする場合の酸としては、塩酸などの酸性物質を使用することができる。
また、本発明における層間架橋剤としては、層状シリケートの層間に侵入することができる大きさであり、層状シリケートの層を形成するケイ素原子に結合する水酸基と反応できる反応性の官能基を2個以上、好ましくは2個有するものであれば特に制限はない。本発明の層間架橋剤は層状シリケートと同質のものが好ましいが、必ずしも同質のもである必要はなく、アルミニウムやガリウムのような金属を含む化合物であってもよい。しかし、生成されるゼオライト様物質の均質性を保持する必要が有る場合には、層状シリケートと同質の層間架橋剤が好ましく、好ましい層間架橋剤としては有機又は無機の低分子のシリル化剤が挙げられる。具体的には、例えば、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシランなどのジハロゲノジアルキルシラン、ジクロロジメトキシシラン、ジクロロジエトキシシランなどのジハロゲノジアルコキシシラン、やジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシランなどのジアルコキシジアルキルシランなどのシリル化剤が挙げられる。
添加する層間架橋剤の量としては、特に制限はないが、層状シリケートに対して10質量%~500質量%、30質量%~500質量%、好ましくは10質量%~300質量%、30質量%~300質量%、10質量%~150質量%、30質量%~150質量%程度が挙げられる。
また、脱水縮合処理は、通常の方法によって行うことができるが、焼成の前に層間架橋剤との反応を充分に行わせるための加熱処理を行うのが好ましい。例えば、オートクレーブなどによる加圧下で、50℃~300℃、好ましくは100℃~200℃程度の加熱処理を行い、層間架橋剤との反応を行った後、常圧、減圧下又は加圧下で300℃~700℃、好ましくは400℃~600℃程度で焼成処理を行うことができる。脱水縮合の後、必要により乾燥処理を行うことができる。
層状シリケートは鋳型になるアミンなどの有機化合物を含有している場合もあるが、これらの有機化合物は焼成により除去可能であるし、必要により他の方法で除去してもよい。また、層状シリケートは、Kイオンなどの金属イオンを含有している場合もあるが、これはゼオライト様物質にそのまま利用することもできるが、必要により公知の方法によりNaイオンや水素イオンなどの陽イオンと交換することができる。
【0025】
本発明のゼオライト様物質は、層状シリケートの層間にシリル化剤をあらかじめ侵入させておくため、層の表面にある水酸基同士が脱水縮合せずに、その水酸基と層間架橋剤、好ましくはシリル化剤とが脱水縮合することで、層間架橋剤が層間を支える柱となって層間が拡張した構造となっていることを特徴とするものである。このことは、図2に示されるX線回折からも示されることであり、本発明における「シリケートからなるゼオライト様物質の粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)が、原料の層状シリケートの粉末X線回折における2θの主ピークの角度(CuKα/度)よりも小さい」ということは、原料となる層状シリケートの層間距離が拡大された構造を有するものであることを示したものである。
また、本発明のゼオライト様物質の化学組成は、原料となる層状シリケートと層間架橋剤、好ましくはシリル化剤によって規定されるものであり、化学組成自体には主たる特徴を有していないが、原料となる層状シリケートとしてPLS-1を用いた場合の典型的な化学組成としては、次式(1)
Si20・O38(OH)・M (1)
(式中、Mは、アルカリ金属を表し、xは0≦x≦3.0の範囲を表す。)
で表される化学組成が挙げられるが、本発明のゼオライト様物質の化学組成はこれに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、層状シリケートからゼオライト様物質を製造する際の新規な方法を提供するものであり、原料の層状シリケートの層間距離に依存せずに、層間架橋剤により層状シリケートの層間距離を拡大させて、任意のマイクロ孔を有するゼオライト様物質を製造することができる簡便で、かつ選択性の高いゼオライト様物質の製造方法、及びその方法によって製造される新規なゼオライト様物質を提供するものである。本発明のゼオライト様物質は、従来のものとは異なり、層間距離が拡大された大きなマイクロ孔を有するものであり、ゼオライト様物質としての新規な応用が期待されるものである。
【0027】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実験においては、粉末X線回折(XRD)パターンは、リガク社製RINT-2000を使用し、CuKα線を用いて、0.01°の間隔のステップスキャンにより得た。また電子顕微鏡(SEM)観察は、日立社製S-5200を用いた。各吸着質の吸着等温線の測定には、日本ベル社製BELSORP18を用いた。チッ素吸着については-196℃、n-ヘキサンおよびベンゼンの吸着測定は25℃でそれぞれ行った。
【実施例1】
【0028】
(1)結晶性層状化合物PLS-1の調製
SiO(商品名:Cab-O-Sil M5,CABOT Co.製)を10.0gとり、26%濃度のTMAOH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)12.7g、0.5規定のKOHを5.0g、水を34.2g、1,4-ジオキサンを50.0gに加えて、1時間ほどよく撹拌し、テフロン(登録商標)内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、150℃で7日間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、蒸留水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。
生成物が層状化合物PLS-1であることをSEM及びXRD測定により確認した。得られたPLS-1の粉末XRDパターンを図2(a)に示し、次の表2に回折ピークを示す。また、得られたPLS-1をシリル化剤でシリル化したものの粉末XRDパターンを図2(b)に示し、次の表3に回折ピークを示す。
【0029】
【表2】
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【0030】
【表3】
JP0004982246B2_000004t.gif

【0031】
(2)新規ゼオライト様物質TIT-3の調製
前記(1)で製造したPLS-1を0.50gとり、蒸留水30.0mgと混合した後に、シリル化剤としてジクロロジメチルシランを0.50gを加えて、テフロン(登録商標)内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、170℃で24時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、蒸留水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、粉末状の生成物を得た。さらに得られた生成物を焼成皿にとり、マッフル炉内にて、室温から550℃まで6時間かけて昇温、6時間保持、及び自然放冷の3工程からなる熱処理を行い、白色粉末であるTIT-3を生成物として得た。
この生成物は、図2(c)に示す粉末XRDパターンを示し、表4に示される回折ピークから、層内の結晶構造を保持したまま、層間が拡張した新規構造体が得られていることがわわる。
【0032】
【表4】
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【0033】
またこの生成物は、1辺0.5~1.0μm、厚さ30~50nmの薄い鱗片状の結晶形態であり、層状化合物であるPLS-1と幾何学的に相似な構造変化によって、TIT-3が生成していることがわかる。
【0034】
比較例:CDS-1ゼオライトの調製
PLS-1を焼成皿にとり、マッフル炉内にて、室温から550℃まで6時間かけて昇温、6時間保持、及び自然放冷の3工程からなる熱処理を行い、白色粉末であるCDS-1ゼオライトを得た。
また生成物がCDS-1であることをSEMおよびXRD測定により確認した。得られたCDS-1の粉末XRDパターンを図2(d)に示し、次の表5に回折ピークを示す。
【0035】
【表5】
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【0036】
また、得られたPLS-1、CDS-1、及び本発明のTIT-3の電子顕微鏡観察像を観察した。結果を図3に示す。さらに、CDS-1及び本発明のTIT-3のそれぞれの、チッ素吸・脱着等温線、n-ヘキサンの吸・脱着等温線、及びベンゼンの吸・脱着等温線をそれぞれ測定した。結果をそれぞれ図4、図5、及び図6に示す。
【実施例2】
【0037】
(1)ゼオライト様物質TKT-1の製造
前記した実施例1の(1)で製造したPLS-1を0.50gとり、0.3規定の塩酸30.0mgと混合した後に、シリル化剤としてジクロロジメチルシランを0.10gを加えて、テフロン(登録商標)内筒を有するSUS316製オートクレーブに移し、170℃で24時間加熱処理した。オートクレーブから取り出した後、蒸留水で洗浄を行い、100℃で12時間乾燥させ、白色粉末であるTKT-1を生成物として得た。
この生成物は、図8(b)に示す粉末XRDパターンを示すことから、層内の結晶構造を保持したまま、層間が拡張した新規構造体が得られていることがわかった。
またこの生成物は、1辺0.5~1.0μm、厚さ30~50nmの薄い鱗片状の結晶形態であり、層状化合物であるPLS-1と幾何学的に相似な構造変化によって、TKT-1が生成していることがわかった。
【0038】
(2)ゼオライト様物質TKT-2の製造
前記(1)で製造したTKT-1を焼成皿にとり、マッフル炉内にて、室温から550℃まで6時間かけて昇温、6時間保持、および自然放冷、の3行程からなる熱処理を行い、白色粉末であるTKT-2ゼオライトを得た。
また、生成物がTKT-2であることをXRD測定により確認した(図8(c)参照)。
得られたCDS-1及びTKT-2のチッ素吸・脱着等温線、CDS-1、TKT-1、及びTKT-2のn-ヘキサンの吸着等温線、TKT-1及びTKT-2のベンゼンの吸着等温線、並びにTKT-1及びTKT-2の水の吸着等温線をそれぞれ測定した。結果をそれぞれ図9、図10、図11、及び図12に示す。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、新規なゼオライト様物質、及びその製造方法を提供するものであり、簡便でかつ安定した操業が可能なゼオライト様物質の製造方法を提供するだけでなく、特異なマイクロ孔を有する新規なゼオライト様物質を提供するものであり、吸着剤や分子ふるい剤としてだけでなくゼオライトを利用する産業分野において有用であり、本発明は産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、層状化合物PLS-1の骨格構造と、これを直接焼成することにより得られるCDS-1ゼオライトの骨格構造、及び、PLS-1を層間シリル化後に焼成して得られる本発明のTIT-3ゼオライト様物質のとりうる骨格構造、並びにCDS-1ゼオライトの8員環マイクロ孔、及び本発明のTIT-3の10員環マイクロ孔を、それぞれ模式的に示したものである。
【図2】図2は、層状化合物PLS-1、層間シリル化後の生成物、および層間シリル化後に焼成して得られた生成物(TIT-3)、およびPLS-1を焼成して得られるCDS-1ゼオライトの粉末XRDパターンを示す。
【図3】図3は、PLS-1、本発明のTIT-3及びCDS-1の電子顕微鏡観察像を示す図面に代わる写真である。
【図4】図4は、本発明のTIT-3及びCDS-1の-196℃でのチッ素吸・脱着等温線を測定した結果を示す。
【図5】図5は、本発明のTIT-3及びCDS-1の25℃でのn-ヘキサンの吸・脱着等温線を測定した結果を示す。
【図6】図6は、本発明のTIT-3及びCDS-1の25℃でのベンゼンの吸・脱着等温線を測定した結果を示す。
【図7】図7は、層状化合物PLS-1の骨格構造、並びにPLS-1を層間シリル化後に得られるTKT-1のとりうる骨格構造、及びそれをほぼ完全に焼成したTKT-2の骨格構造を模式的に示したものである。
【図8】図8は、層状化合物PLS-1、層間シリル化後の生成物(TKT-1)、層間シリル化後に焼成して得られた生成物(TKT-2)、及びPLS-1を焼成して得られるCDS-1ゼオライトの粉末XRDパターンを示す。
【図9】図9は、本発明のCDS-1及びTKT-1の-196℃でのチッ素吸・脱着等温線を測定した結果を示す。
【図10】図10は、本発明のTKT-1、TKT-2、及びCDS-1の25℃でのn-ヘキサンの吸着等温線を測定した結果を示す。
【図11】図11は、本発明のTKT-1及びTKT-2の25℃でのベンゼンの吸着等温線を測定した結果を示す。
【図12】図12は、本発明のTKT-1及びTKT-2の25℃での水の吸着等温線を測定した結果を示す。
図面
【図4】
0
【図5】
1
【図6】
2
【図8】
3
【図9】
4
【図10】
5
【図11】
6
【図12】
7
【図1】
8
【図2】
9
【図3】
10
【図7】
11