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明細書 :透明層の厚さ測定方法及び測定装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4918679号 (P4918679)
公開番号 特開2008-157834 (P2008-157834A)
登録日 平成24年2月10日(2012.2.10)
発行日 平成24年4月18日(2012.4.18)
公開日 平成20年7月10日(2008.7.10)
発明の名称または考案の名称 透明層の厚さ測定方法及び測定装置
国際特許分類 G01B  11/06        (2006.01)
B05D   1/36        (2006.01)
B05D   5/06        (2006.01)
B05C  11/00        (2006.01)
FI G01B 11/06 H
B05D 1/36 Z
B05D 5/06 101A
B05C 11/00
請求項の数または発明の数 10
全頁数 13
出願番号 特願2006-348834 (P2006-348834)
出願日 平成18年12月26日(2006.12.26)
審査請求日 平成21年12月3日(2009.12.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】安達 正明
個別代理人の代理人 【識別番号】100098545、【弁理士】、【氏名又は名称】阿部 伸一
【識別番号】100087745、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 善廣
【識別番号】100106611、【弁理士】、【氏名又は名称】辻田 幸史
審査官 【審査官】清藤 弘晃
参考文献・文献 特開平05-005699(JP,A)
特開2002-296013(JP,A)
特開2000-346620(JP,A)
特開平03-084401(JP,A)
特開平07-231023(JP,A)
特開昭63-193003(JP,A)
特開2006-317428(JP,A)
特開2002-246302(JP,A)
特開2001-255125(JP,A)
特開平04-074910(JP,A)
調査した分野 G01B11/00-11/30
G01N21/84-21/90、21/93-21/958
B05C7/00-21/00
B05D1/00-7/26
特許請求の範囲 【請求項1】
反射が少ない透明層と、前記透明層との境界面において反射する不透明層とが積層され、前記透明層の表面に向けてレーザ光を照射し、前記表面での第1の反射光と、前記境界面での第2の反射光とから前記透明層の厚みを計測する透明層の厚さ測定方法であって、
S偏光成分とP偏光成分とによって前記表面での反射率の大きさが異なる角度で前記レーザ光を前記透明層に入射し、
前記第1の反射光と前記第2の反射光とを受光部にて撮像し、
S偏光成分による前記レーザ光の反射光を撮像した第1の撮像データと、P偏光成分による前記レーザ光の反射光を撮像した第2の撮像データとを画像データ記録部に記憶し、
前記第1の撮像データと前記第2の撮像データとの差から表面位置判定部にて前記表面の位置を判定し、
前記第2の撮像データから境界面位置判定部にて前記境界面の位置を判定し、
前記表面位置判定部にて判定した前記表面の位置データと、前記境界面位置判定部にて判定した前記境界面の位置データとから、前記透明層の厚さを計測することを特徴とする透明層の厚さ測定方法。
【請求項2】
前記透明層が透明体からなる塗装膜であり、前記不透明層がアルミ粉末などからなるメタリック層であることを特徴とする請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項3】
前記透明層の塗装膜が半乾きの状態で測定を行うことを特徴とする請求項2に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項4】
前記透明層を半透明膜としたことを特徴とする請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項5】
前記レーザ光を、ブリュースター角で入射することを特徴とする請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項6】
前記レーザ光を、所定幅を有する照射光とし、前記境界面位置判定部では、前記照射光からの所定幅の前記反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定することを特徴とする請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項7】
前記第1の反射光と前記第2の反射光との強度がほぼ等しくなる位置で受光することを特徴とする請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法。
【請求項8】
反射が少ない透明層と、前記透明層との境界面において反射する不透明層とが積層され、前記透明層の表面に向けてレーザ光を照射し、前記表面での第1の反射光と、前記境界面での第2の反射光とから前記透明層の厚みを計測する透明層の厚さ測定装置であって、
前記レーザ光を照射する照射部として、
前記レーザ光を発振する光源と、
前記光源から発振される前記レーザ光を、S偏光成分とP偏光成分とに切り換える偏光フィルタとを備え、
反射光を受光する受光部として、
前記反射光を受光する受光面を有する光学拡大部と、
前記光学拡大部を経由した反射光を撮像する撮像部とを備え、
前記偏光フィルタの切換指示を行う偏光切換指示部と、
前記偏光切換指示部からの切換指示の前後において前記撮像部で撮像されたそれぞれの撮像データを記録する画像データ記録部と、
S偏光成分の前記レーザ光により撮像されて前記画像データ記録部に記録された第1の撮像データと、P偏光成分の前記レーザ光により撮像されて前記画像データ記録部に記録された第2の撮像データとの差から前記透明層の表面の位置を判定する表面位置判定部と、
前記第2の撮像データから前記境界面の位置を判定する境界面位置判定部と、
前記表面位置判定部にて判定した前記表面の位置データと、前記境界面位置判定部にて判定した前記境界面の位置データから、前記透明層の厚さを計測する透明層厚さ計測部と、
前記透明層厚さ計測部にて計測した値を表示する表示部と、
を有することを特徴とする透明層の厚さ測定装置。
【請求項9】
前記照射部に、前記レーザ光を所定幅の照射光とするスリットを備え、前記境界面位置判定部では、前記照射光からの所定幅の前記反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定することを特徴とする請求項8に記載の透明層の厚さ測定装置。
【請求項10】
前記反射光によって測定位置であるか否かを検出する測定位置検出部を備え、前記測定位置検出部にて測定位置であることを検出した時に前記偏光切換指示部に対して信号を発することを特徴とする請求項8に記載の透明層の厚さ測定装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばメタリック塗装のクリア層の膜厚測定に用いられる透明層の厚さ測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の高級車志向から、車の美観が非常に重視されている。車体に残る微細なキズの他に、車体表面の滑らかさが問題とされ、風景を美しく写し出す程度の鏡面の車体を求めて製作され、検査されている。このような車体の製作には、板金の良好な成型と、一定した塗装の膜厚が重要となる。
この膜厚測定においては、非接触での検査が要望されている。
メタリック塗装は、下地に光沢を持たせるためのアルミ粉末が塗布され、表面にクリア層とよばれる透明膜が設けられている。この透明膜の厚さは、数10μmから100μm程度である。
このメタリック塗装は、光沢を持たせるための下地のアルミ粉面が、外から入射する光に対して極めて強い乱反射を発生させ、この乱反射光が透明膜による反射光を強度的に大きく上回り、透明膜による反射光の検出を困難にしている。
レーザ光を被測定物に照射し、反射光を利用して膜厚を測定する方法が既に提案されている(例えば特許文献1、2)。
特許文献1は、レーザ光を測定対象である膜面に対して、ブリュースター角以上の入射角を持って照射し、これにより得られるP偏光成分とS偏光成分との干渉波形を作成して膜厚を測定するものであり、更に2つの異なる波長を用いて干渉波形に表れる位相差から絶対膜厚を求めるものである。
特許文献2は、ブリュースター角で設定したP偏光成分以外のS偏光成分などを透明膜と下地不透明膜に入射すると、透明膜表面で反射する光と、透明膜を通過し不透明膜で反射して透明膜から抜けてくる光とが干渉を起こすため、この光の干渉現象を利用することで透明膜の膜厚を測定するものである。特許文献2の場合にも、誤検出防止のために波長を変化させている。なお、特許文献2では、ブリュースター角で設定したP偏光成分を透明膜に入射させて下地不透明膜で反射させることで、下地不透明膜の形状を求めている。

【特許文献1】特開昭63-122906号公報
【特許文献2】特開平7-231023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、各特許文献に示されている方法は、光の干渉現象を利用するものであるため、特に不透明膜の表面が乱反射を生じるような場合には、正確な厚さが得られにくいという問題を有している。
【0004】
そこで本発明は、光の干渉現象によらずに、膜厚を測定する方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の透明層の厚さ測定方法は、反射が少ない透明層と、前記透明層との境界面において反射する不透明層とが積層され、前記透明層の表面に向けてレーザ光を照射し、前記表面での第1の反射光と、前記境界面での第2の反射光とから前記透明層の厚みを計測する透明層の厚さ測定方法であって、S偏光成分とP偏光成分とによって前記表面での反射率の大きさが異なる角度で前記レーザ光を前記透明層に入射し、前記第1の反射光と前記第2の反射光とを受光部にて撮像し、S偏光成分による前記レーザ光の反射光を撮像した第1の撮像データと、P偏光成分による前記レーザ光の反射光を撮像した第2の撮像データとを画像データ記録部に記憶し、前記第1の撮像データと前記第2の撮像データとの差から表面位置判定部にて前記表面の位置を判定し、前記第2の撮像データから境界面位置判定部にて前記境界面の位置を判定し、前記表面位置判定部にて判定した前記表面の位置データと、前記境界面位置判定部にて判定した前記境界面の位置データとから、前記透明層の厚さを計測することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記透明層が透明体からなる塗装膜であり、前記不透明層がアルミ粉末などからなるメタリック層であることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記透明層の塗装膜が半乾きの状態で測定を行うことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記透明層を半透明膜としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記レーザ光を、ブリュースター角で入射することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記レーザ光を、所定幅を有する照射光とし、前記境界面位置判定部では、前記照射光からの所定幅の前記反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項1に記載の透明層の厚さ測定方法において、前記第1の反射光と前記第2の反射光との強度がほぼ等しくなる位置で受光することを特徴とする。
請求項8記載の本発明の透明層の厚さ測定装置は、反射が少ない透明層と、前記透明層との境界面において反射する不透明層とが積層され、前記透明層の表面に向けてレーザ光を照射し、前記表面での第1の反射光と、前記境界面での第2の反射光とから前記透明層の厚みを計測する透明層の厚さ測定装置であって、前記レーザ光を照射する照射部として、前記レーザ光を発振する光源と、前記光源から発振される前記レーザ光を、S偏光成分とP偏光成分とに切り換える偏光フィルタとを備え、反射光を受光する受光部として、前記反射光を受光する受光面を有する光学拡大部と、前記光学拡大部を経由した反射光を撮像する撮像部とを備え、前記偏光フィルタの切換指示を行う偏光切換指示部と、前記偏光切換指示部からの切換指示の前後において前記撮像部で撮像されたそれぞれの撮像データを記録する画像データ記録部と、S偏光成分の前記レーザ光により撮像されて前記画像データ記録部に記録された第1の撮像データと、P偏光成分の前記レーザ光により撮像されて前記画像データ記録部に記録された第2の撮像データとの差から前記透明層の表面の位置を判定する表面位置判定部と、前記第2の撮像データから前記境界面の位置を判定する境界面位置判定部と、前記表面位置判定部にて判定した前記表面の位置データと、前記境界面位置判定部にて判定した前記境界面の位置データから、前記透明層の厚さを計測する透明層厚さ計測部と、前記透明層厚さ計測部にて計測した値を表示する表示部と、を有することを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の透明層の厚さ測定装置において、前記照射部に、前記レーザ光を所定幅の照射光とするスリットを備え、前記境界面位置判定部では、前記照射光からの所定幅の前記反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定することを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8に記載の透明層の厚さ測定装置において、前記反射光によって測定位置であるか否かを検出する測定位置検出部を備え、前記測定位置検出部にて測定位置であることを検出した時に前記偏光切換指示部に対して信号を発することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第2の撮像データからは境界面の位置を判定できるとともに、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から表面の位置を判定できるため、表面の位置データと境界面の位置データとから、透明層の厚さを計測することができる。
また、本発明によれば、不透明層が金属粉末を塗布したようなメタリック層のように、境界面が乱反射を生じるような測定物においても、透明層の厚さを正確に計測することができる。
更に、本発明によれば、非接触にて計測を行うことができるため、透明層が半乾きの状態で測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法は、S偏光成分とP偏光成分とによって表面での反射率の大きさが異なる角度でレーザ光を透明層に入射し、第1の反射光と第2の反射光とを受光部にて撮像し、S偏光成分によるレーザ光の反射光を撮像した第1の撮像データと、P偏光成分によるレーザ光の反射光を撮像した第2の撮像データとを画像データ記録部に記憶し、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から表面位置判定部にて表面の位置を判定し、第2の撮像データから境界面位置判定部にて境界面の位置を判定し、表面位置判定部にて判定した表面の位置データと、境界面位置判定部にて判定した境界面の位置データとから、透明層の厚さを計測するものである。本実施の形態によれば、S偏光成分による第1の撮像データでは、透明層表面で反射する第1の反射光と、境界面で反射する第2の反射光とによる画像データとなり、P偏光成分による第2の撮像データでは、境界面で反射する第2の反射光による画像データとなる。従って、第2の撮像データからは境界面の位置を判定できるとともに、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から表面の位置を判定できるため、表面の位置データと境界面の位置データとから、透明層の厚さを計測することができる。このように本実施の形態によれば、特に境界面での乱反射が大きな場合であっても、表面の位置データを正確に判定できるため、透明層の厚さを正確に計測することができる。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、透明層が透明体からなる塗装膜であり、不透明層がアルミ粉末などからなるメタリック層である。本実施の形態によれば、金属粉末を塗布したようなメタリック層であって境界面が乱反射を生じるようなものでも透明層の厚さを正確に計測することができる。
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、透明層の塗装膜が半乾きの状態で測定を行うものである。本実施の形態によれば、非接触にて計測を行うことができるため、半乾きの状態で測定を行うことができる。
本発明の第4の実施の形態は、第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、透明層を半透明膜としたものである。本実施の形態によれば、薄い色が着色されたカラークリアーのような半透明膜であっても測定することができる。
本発明の第5の実施の形態は、第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、レーザ光を、ブリュースター角で入射するものである。本実施の形態によれば、P偏光成分による反射光を測定する場合に、第1の反射光を完全に無くすことができる。
本発明の第6の実施の形態は、第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、レーザ光を、所定幅を有する照射光とし、境界面位置判定部では、照射光からの所定幅の反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定するものである。本実施の形態によれば、特に境界面での凹凸が多い場合に、測定箇所による誤差を少なくし、複数回の測定によらずに平均的な厚さを測定することができる。
本発明の第7の実施の形態は、第1の実施の形態による透明層の厚さ測定方法において、第1の反射光と第2の反射光との強度がほぼ等しくなる位置で受光するものである。本実施の形態によれば、第2の反射光が乱反射であるために、境界面と受光面との距離によって第2の反射光の強さを調整できることに着目し、第1の反射光と第2の反射光との強度が等しくなるように受光面の位置を調整することで、計測精度を向上させることができる。
本発明の第8の実施の形態による透明層の厚さ測定装置は、レーザ光を照射する照射部として、レーザ光を発振する光源と、光源から発振されるレーザ光を、S偏光成分とP偏光成分とに切り換える偏光フィルタとを備え、反射光を受光する受光部として、反射光を受光する受光面を有する光学拡大部と、光学拡大部を経由した反射光を撮像する撮像部とを備え、偏光フィルタの切換指示を行う偏光切換指示部と、偏光切換指示部からの切換指示の前後において撮像部で撮像されたそれぞれの撮像データを記録する画像データ記録部と、S偏光成分のレーザ光により撮像されて画像データ記録部に記録された第1の撮像データと、P偏光成分のレーザ光により撮像されて画像データ記録部に記録された第2の撮像データとの差から透明層の表面の位置を判定する表面位置判定部と、第2の撮像データから境界面の位置を判定する境界面位置判定部と、表面位置判定部にて判定した表面の位置データと、境界面位置判定部にて判定した境界面の位置データとから、透明層の厚さを計測する透明層厚さ計測部と、透明層厚さ計測部にて計測した値を表示する表示部とを有するものである。本実施の形態によれば、S偏光成分による第1の撮像データでは、透明層表面で反射する第1の反射光と、境界面で反射する第2の反射光とによる画像データとなり、P偏光成分による第2の撮像データでは、境界面で反射する第2の反射光による画像データとなる。従って、第2の撮像データからは境界面の位置を判定できるとともに、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から表面の位置を判定できるため、表面の位置データと境界面の位置データとから、透明層の厚さを計測することができる。このように本実施の形態によれば、特に境界面での乱反射が大きな場合であっても、表面の位置データを正確に判定できるため、透明層の厚さを正確に計測することができる。
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による透明層の厚さ測定装置において、照射部に、レーザ光を所定幅の照射光とするスリットを備え、境界面位置判定部では、照射光からの所定幅の反射光のデータを幅方向に加算して平均化したデータで判定するものである。本実施の形態によれば、特に境界面での凹凸が多い場合に、測定箇所による誤差を少なくし、複数回の測定によらずに平均的な厚さを測定することができる。
本発明の第10の実施の形態は、第8の実施の形態による透明層の厚さ測定装置において、反射光によって測定位置であるか否かを検出する測定位置検出部を備え、測定位置検出部にて測定位置であることを検出した時に偏光切換指示部に対して信号を発するものである。本実施の形態によれば、反射光から測定位置を検出し、検出した位置で偏光を切り換えて、偏光前後の反射光を画像データとして撮像することで、非接触での測定を容易に行うことができる。
【実施例】
【0008】
以下本発明の一実施例による透明層の厚さ測定装置について説明する。
図1は本実施例による透明層の厚さ測定装置の構成を機能実現手段で表したブロック図、図2から図8は同装置の測定方法を示す説明図である。
図1に示すように、本実施例による透明層の厚さ測定装置は、測定物1に対してレーザ光を照射する照射部10と、測定物1からの反射光を受光する受光部20と、照射部10及び受光部20の制御を行う制御部30と、測定のためのデータ処理を行う計測部40とからなる。
照射部10は、レーザ光を発振する光源11と、レーザ光の照射を所定のタイミングで遮るシャッタ12と、レーザ光を所定幅の照射光とするスリット13と、レーザ光をS偏光成分とP偏光成分とに切り換える偏光フィルタ14と、エキスパンダレンズやシリンドリカルレンズからなるレンズ群15と、レーザ光の光路を変更するミラー16とを備えている。光源11としては、反射率の高い青色レーザが適しており、例えばアルゴン488を用いる。
受光部20は、レーザ光の光路を変更するミラー16と、測定物1からの反射光を受光する受光面21を有する光学拡大部22と、光学拡大部22を経由した反射光を撮像する撮像部23とを備えている。
【0009】
ここで、図2に示すように、測定物1は、反射が少ない透明層2と、透明層2との境界面において反射する不透明層3とが積層されたものであり、本装置は、透明層2の表面に向けて照射部10のレーザ光を照射し、透明層2の表面での第1の反射光2Xと、境界面での第2の反射光3Xとの間隔Aを測定することで、透明層2におけるレーザ光の入射角θ2との関係で透明層2の厚さBを計測するものである。
図2において、レーザ光の入射角θは、レーザ光のS偏光成分とP偏光成分とによって表面での反射率の大きさが異なる角度であり、好ましくはブリュースター角とする。ここで、S偏光成分とは、偏光方向を入射面に対して垂直とした時の偏光成分であり、P偏光成分とは、偏光方向を入射面に対して平行とした時の偏光成分である。またブリュースター角は、第1の反射光2Xが入射光の入射面内で振動するP偏光成分を持たない時の入射角である。
【0010】
図1において、制御部30は、撮像部23で撮像された撮像データを記録する画像データ記録部31と、反射光によって測定位置であるか否かを検出する測定位置検出部32と、偏光フィルタ14の切換指示を行う偏光切換指示部33とを備えている。なお、画像データ記録部31では、偏光切換指示部33からの切換指示の前後において撮像部23で撮像されたそれぞれの撮像データを記録する。記録される画像データは、S偏光成分のレーザ光により撮像される第1の撮像データと、P偏光成分のレーザ光により撮像される第2の撮像データである。レーザ光の入射角θをブリュースター角とした場合には、第1の撮像データでは、透明層表面で反射する第1の反射光と、境界面で反射する第2の反射光とによる画像データとなり、P偏光成分による第2の撮像データでは、境界面で反射する第2の反射光による画像データとなる。
測定部40は、第1の撮像データと第2の撮像データとの差を取り出す画像データ分離処理部41と、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から透明層の表面の位置を判定する表面位置判定部42と、第2の撮像データから境界面の位置を判定する境界面位置判定部43と、表面位置判定部42にて判定した表面の位置データと、境界面位置判定部43にて判定した境界面の位置データとから、透明層2の厚さを計測する透明層厚さ計測部44と、透明層2におけるレーザ光の入射角θ2や拡大縮小倍率などの透明層厚さ計測部44での演算に必要な数値を記憶しているパラメータ記憶部45と、透明層厚さ計測部44にて計測した値を表示する表示部46とを備えている。
本装置において、受光面21は、第1の反射光と第2の反射光との強度がほぼ等しくなる位置、すなわち第1の反射光と第2の反射光との強度比を同程度とする位置とすることが好ましい。第2の反射光3Xは乱反射であるために、境界面と受光面21との距離が大きくなるに従って第2の反射光3Xの強さは弱くなる。従って、第2の反射光3Xの強度が第1の反射光2Xと等しくなるように受光面21の位置を調整することで、計測精度を向上させることができる。
【0011】
次に本装置での測定方法について説明する。
光源11からレーザ光を照射し、シャッタ12を開放した状態で、本装置を測定物に近づける。
光源11から照射されたレーザ光は、スリット13によって所定幅を持つ照射光となり、偏光フィルタ14によってS偏光成分かP偏光成分のいずれかの偏光成分だけとしてレンズ群15に導かれる。照射光は、レンズ群15において絞られ、ミラー16で光路が変更されて装置外へ照射される。
測定物1が測定位置から離れている場合には、受光部20では測定物1からの反射光を受光しない。測定物1が測定位置に近づくと、受光部20内に反射光が導かれ撮像部23にて反射光を捉えることが出来る。この反射光が受光面21の所定の位置で受光されると、測定位置検出部32にて測定位置であることを検出する。
【0012】
図3は、偏光フィルタ14によってS偏光成分とした場合に、撮像部23で反射光を捉えた画像であり、図5は、偏光フィルタ14によってP偏光成分とした場合に、撮像部23で反射光を捉えた画像である。図3及び図5に示すように、第1の反射光2X及び第2の反射光3Xは、ともに所定の範囲に拡散する。特に第2の反射光3Xは、境界面の凹凸によって乱反射するために、反射光2Xよりも更に広範囲に拡散する。
反射光を受光面21で捉えた場合には、図3における第1の反射光2X及び第2の反射光3X、又は図5における第2の反射光3Xは、画面の左右いずれか一方に映し出される。装置と測定物1との距離によって、図3における第1の反射光2X及び第2の反射光3X、又は図5における第2の反射光3Xは、あらかじめ焦点距離として設定している画面の所定位置に移動する。
そして、図3における第1の反射光2X及び第2の反射光3X、又は図5における第2の反射光3Xが設定した位置に移動した時に、測定位置検出部32では、測定位置であることを検出し、偏光切換指示手段33に対して信号を出力する。
偏光フィルタ14は、偏光切換指示手段33からの信号によって、S偏光成分からP偏光成分に、又はP偏光成分からS偏光成分に切換を行う。
このとき、偏光フィルタ14における切換前後の画像を撮像部23において撮像する。これらの画像の撮像は、撮像部23において所定のタイミングにおけるデータを格納してもよいが、シャッタ13の瞬時の開閉によって、撮像部23での画像データの入力を制御することが好ましい。なお、シャッタ13は、受光部20内に設けてもよい。
偏光フィルタ14における切換前後の画像データは、画像データ記録部31に記録される。このとき記録される画像データは、図3及び図5に示すものである。本実施例では、レーザ光を、スリット13によって所定幅を有する照射光としているため、図3及び図5において反射光は縦長に帯状に撮影されている。
【0013】
図4は図3に示す反射光による画像データを模式的に示す図、図6は図5に示す反射光による画像データを模式的に示す図である。
偏光フィルタ14によってS偏光成分とした場合には、図3に示すように、第1の反射光2Xと第2の反射光3Xを区別することは容易ではない。
そこで、画像処理により、図3に示す第1の撮像データと図5に示す第2の撮像データとの差をとると、図7の模式図に示すように第1の反射光2Xの画像データだけを取り出すことができる。
図7に示すように第1の反射光2Xの画像データを取り出すことで、第1の反射光2Xの中心位置を特定することができる。表面位置判定部42では、このように第1の撮像データと第2の撮像データとの差から、第1の反射光2Xの画像データだけを取り出して、第1の反射光2Xの中心位置を特定することで透明層2の表面位置として判定する。このとき、表面位置判定部42では、所定の位置Yにおける画像データを用いて判定することもできるが、所定幅Zの反射光のデータを加算して平均化したデータで判定することが好ましい。このように所定幅Zのデータで判定することで、境界面での凹凸が多くても、測定箇所による誤差を少なくし、複数回の測定によらずに平均的な厚さを測定することができる。
【0014】
境界面位置判定部43では、図5及び図6に示すように、撮像された第2の反射光3Xによる画像データから、中心位置を特定して境界面の位置として判定する。このとき、境界面位置判定部43では、所定の位置Yにおける画像データを用いて判定することもできるが、所定幅Zの反射光のデータを加算して平均化したデータで判定することが好ましい。このように所定幅Zのデータで判定することで、境界面での凹凸が多くても、測定箇所による誤差を少なくし、複数回の測定によらずに平均的な厚さを測定することができる。
透明層厚さ計測部44では、図8に示すように、透明層2の表面位置として判定した第1の反射光2Xの中心位置と、境界面の位置として判定した第2の反射光3Xの中心位置とから距離Aを計測し、パラメータ記憶部45に記憶している入射角θ2や拡大縮小倍率などの数値を元に透明層厚さBを演算する。
そして、透明層厚さ計測部44にて演算された透明層の厚さBは、表示部46にて表示される。
なお、本実施例では、測定部40を備えた装置として説明したが、装置本体には測定部40を備えずに、画像データ記録部31に記憶されたデータを、パーソナルコンピュータを用いて処理してもよい。
また、透明層2は、透明膜以外に、内部で吸収があっても反射が少ないカラークリアー層でも測定できる。ここでカラークリアー層とは、薄い黒や、赤っぽい色や青っぽい色が着色された半透明層である。
不透明層は、反射率の高い材料であれば、金属以外の材料でも測定できる。少なくとも透明膜との境界面において反射がある材料であればよい。
【0015】
本実施例によれば、第2の撮像データからは境界面の位置を判定できるとともに、第1の撮像データと第2の撮像データとの差から表面の位置を判定できるため、表面の位置データと境界面の位置データとから、透明層2の厚さを計測することができる。
このように本実施例によれば、不透明層3が金属粉末を塗布したようなメタリック層のように、境界面が乱反射を生じるような測定物1においても、透明層2の厚さを正確に計測することができる。
また本実施例によれば、非接触にて計測を行うことができるため、透明層2が半乾きの状態で測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の透明層の厚さ測定方法及び測定装置は、表面に透明層を有する塗装膜の膜厚や半導体ウエハにおける透明な絶縁膜厚の膜厚などの測定に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例による透明層の厚さ測定装置の構成を機能実現手段で表したブロック図
【図2】同装置の測定方法を示す説明図
【図3】同装置におけるS偏光成分の反射光を捉えた画像を示す図
【図4】図3に示す反射光による画像データを模式的に示す図
【図5】同装置におけるP偏光成分の反射光を捉えた画像を示す図
【図6】図5に示す反射光による画像データを模式的に示す図
【図7】図3に示す第1の撮像データと図5に示す第2の撮像データとの差を示す模式図
【図8】第1の反射光の中心位置と第2の反射光の中心位置との距離Aを示す図
【符号の説明】
【0018】
1 測定物
2 透明層
3 不透明層
10 照射部
11 光源
13 スリット
14 偏光フィルタ
20 受光部
21 受光面
22 光学拡大部
23 撮像部
30 制御部
31 画像データ記録部
32 測定位置検出部
33 偏光切換指示部
40 測定部
41 画像データ分離処理部
42 表面位置判定部
43 境界面位置判定部
44 透明層厚さ計測部
45 パラメータ記憶部
46 表示部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図4】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図3】
6
【図5】
7