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明細書 :血液細胞の力学的特性計測システム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4843794号 (P4843794)
公開番号 特開2008-170390 (P2008-170390A)
登録日 平成23年10月21日(2011.10.21)
発行日 平成23年12月21日(2011.12.21)
公開日 平成20年7月24日(2008.7.24)
発明の名称または考案の名称 血液細胞の力学的特性計測システム
国際特許分類 G01N  33/49        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 33/49 A
G01N 33/49 K
G01N 21/27 B
G01N 21/27 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2007-006090 (P2007-006090)
出願日 平成19年1月15日(2007.1.15)
審査請求日 平成21年8月10日(2009.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】安田 利貴
審査官 【審査官】淺野 美奈
参考文献・文献 特表平10-508700(JP,A)
特開平02-130471(JP,A)
特開2006-145345(JP,A)
特開2004-138561(JP,A)
特開2003-137760(JP,A)
特表2001-507122(JP,A)
Nobuo Watanabe, et al.,Dynamic Deformation and Recovery Response of Red Blood Cells to a Cyclically Reversing Shear Flow: Effects of Frequency of Cyclically Reversing Shear Flow and Shear Stress Level,Biophysical Journal,2006年 9月,Vol 91, No. 5,1984-1998
Mamiko Fujii, et al.,Orientation and Deformation of Erythrocytes due to Flow,Proc Annu Int Conf IEEE Eng Med Biol Soc,1998年,Vol.20th, No. Vol.6,3024-3027
調査した分野 G01N 33/49
G01N 21/27
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えることで血液細胞の力学的特性を計測する、血液細胞の力学的特性計測システムであって、
少なくとも一部が透明な第1平板と、
前記第1平板に対して隙間を隔てて平行に配置されている第2平板と、
前記第1平板と前記第2平板との間の隙間に配置される、血液細胞を含む試料と、
前記試料中の血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えるため、前記第1平板と前記第2平板の少なくとも一方を所定の振動周波数で平行振動させる平板振動手段と、
前記試料に光を照射する光照射手段と、
前記試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光する受光手段と、
前記受光手段からの信号を解析して前記血液細胞の力学的特性を求める信号解析手段と、を有し、
前記信号解析手段は、前記受光手段からの受光信号を周波数解析する手段を有しており、前記周波数解析によって前記受光信号の周波数情報及び位相情報を求め、前記平板振動手段の振動周波数を含む制御情報と、前記受光信号の周波数情報及び位相情報と関係から前記血液細胞の力学的特性を求める、血液細胞の力学的特性計測システム。
【請求項2】
血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えることで血液細胞の力学的特性を計測する、血液細胞の力学的特性計測方法であって、
少なくとも一部が透明な第1平板と、前記第1平板に対して隙間を隔てて平行に配置される第2平板との間に、血液細胞を含む試料を配置する、試料準備工程と、
前記試料中の血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えるため、前記第1平板と前記第2平板の少なくとも一方を所定の振動周波数で平行振動させる平板振動工程と、
前記試料に光を照射する光照射工程と、
前記試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光手段によって受光する受光工程と、
前記受光手段からの信号を解析して前記血液細胞の力学的特性を求める信号解析工程と、を有し、
前記信号解析工程は、前記受光手段からの受光信号を周波数解析する工程を有しており、前記周波数解析に前記受光信号の周波数情報及び位相情報を求め、前記平板振動手段の振動周波数を含む制御情報と、前記受光信号の周波数情報及び位相情報と関係から前記血液細胞の力学的特性を求める、血液細胞の力学的特性計測方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、血液細胞、特に赤血球の力学的特性を再現性よく、かつ、定量的に測定が可能な計測システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血液細胞の主要な働きを担う赤血球は、自らの直径よりも小さい毛細血管を通過する機能を備えている。この赤血球の変形能は、一般的に、赤血球自身の加齢、浸透圧、さらには血液内に溶解している脂質の影響などを受けると言われている。さらには、人工心臓、人工弁、透析などの循環器系人工臓器を用いた延命・治療において、生体内では生じないような非生理的な大きさのせん断応力が赤血球に加わり、赤血球の瞬時な破壊には至らないものの、膜の損傷が生じて不可逆的な形態変化や変形能の低下をもたらすことがあり、これにより赤血球の寿命を低下させ貧血などを誘発する可能性もある。一方、医薬品による赤血球の変形能機能改善薬なども開発されているため、その効果を測定するためにも赤血球の詳細な変形能計測装置の開発が要求されている。
【0003】
従来、赤血球の変形能の評価技術として、赤血球が微細な細孔を通過する時間を測定する膜通過法(特許文献1)、毛細血管相当の流路内を通過する赤血球状態をCCDにより観察、もしくは散乱光(回折光分布)を測定するマイクロフローセル法(特許文献2、特許文献3、特許文献4)、回転粘度計をベースとしたエクトサイト法、赤血球膜を吸引法で測定するマイクロピペット法などがある。また、周期的な流れ場における赤血球の形状変化を高速度カメラで捉える方法もある(非特許文献1)。
【0004】
一方、赤血球の力学的負荷、すなわち耐久性を計測する方法には、異なる2つの内径を備えたフローセル内を通過する赤血球の散乱光強度から推定する方法などもある(特許文献5)。
【0005】
赤血球の変形能計測は、赤血球の形状を直接的ならびに間接的な方法で測定を行い、その測定結果から赤血球の変形能を推定する方法がある。直接的な方法としては、赤血球が毛細血管などを通過する速度や形状変化などを想定しており、随意な流路形状を備えたフローセル内を随意な条件で流れる状態をCCDカメラで捉えるため、赤血球の形状変化や流路を塞ぐ状態などの主観的な評価となりやすく、定量的な評価は赤血球の移動速度などの情報に留まってしまう。また、平行平板間内の周期的な流れ場における赤血球の形状変化から、変形能を測定する方法もある。しかしながら、この方法では、高せん断応力下での赤血球の形状変化、すなわち楕円体形状、を計測するためには、血漿の粘性に比べ数10~数100倍の高粘度溶媒に赤血球を浮遊させる必要がある。そのため、赤血球内部の粘性影響などを考慮した変形能の測定は困難となる。
【0006】
一方、間接的な方法としては、フローセルもしくは2重円筒管内を流れている赤血球に光を照射し、その回折像もしくは散乱光を計測し、その光強度特性から変形能を推定する方法がある。この方法では、高せん断応力下の測定であるため、赤血球を高粘度溶媒内に浮遊させるため、前述と同様な問題が生じる.
赤血球の負荷蓄積の測定は、流れ場内における赤血球の形状変化を示す散乱光と、損傷を受けた程度を示す散乱光のデータベースとを比較することで、損傷の程度を推定するシステムがある。従来のシステムでは、別途、負荷を受けた血液試料の損傷を調べていくシステムであり、疲労破壊のような特定試料に対して繰り返し負荷を与える方法には不向きである。
【0007】
赤血球の耐久性を測定する疲労破壊試験では、回転粘度計をベースとした試験機や平行平板を用いた試験機などがある。これらの試験機の多くは、負荷を与えた後の赤血球の状態を観察もしくは遊離ヘモグロビン計測をするため、赤血球の状態をリアルタイムに計測するような方法には適さない。
平行平板間に赤血球試料を浮遊させて、せん断応力を加え、赤血球の形状を可視化する方法があるものの、前述のように高速度カメラを用いた画像処理を用いた方法であるため、装置が大きく、高価になる。
【0008】
回転粘度計をベースとした装置では、リアルタイムな疲労破壊の計測が可能であるが、回転粘度計をベースとした装置では、一定の応力を与える方法には非常に優れている。しかしながら、周期的な繰り返し負荷を与える方法では、直接の回転軸を動力源としているため振幅の大きさや周期を調整することは困難である。
【0009】

【特許文献1】特開2001-242166号公報
【特許文献2】特開2006-145345号公報
【特許文献3】特開平8-122328号公報
【特許文献4】特表2001-507122号公報
【特許文献5】特開2004-138561号公報
【非特許文献1】Biophysical Journal、2006年9月発行、Vol.91、No.5、p.1984-1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように従来では、赤血球の力学的特性として、変形能や耐久性などの計測は別個に計測されていたが、採血量を極力減らす方向などを考慮すると、同一試料でかつ同一の計測装置で赤血球の力学的特性を計測できることが望まれる。
また、安価でかつ使用者に依存せずに再現性のある赤血球の力学的特性が計測可能な装置の開発が期待されている。さらには、赤血球内部の粘性の影響を小さくするために、血液と同粘度の溶媒下における赤血球変形能の計測も期待されている。
【0011】
従来、赤血球の変形能や耐久性などの力学的特性を計測するために、赤血球に周期的なせん断応力負荷を与えて、赤血球をカメラで撮影する技術は知られている。しかし、赤血球に対して十分なせん断応力負荷を与えるためには高せん断速度を加える必要があり、これに対応するためには高価な高速度カメラや大きな光源を用いる必要があった。これでも赤血球の形状変化速度が高速度カメラの性能を上回ってしまうため、高速度カメラの性能内で赤血球に十分なせん断応力負荷を与えるためには溶媒の粘性を高くする必要があった。しかし、血液よりも高粘度の溶媒を用いると、実際の血液中での赤血球の運動を再現できないという問題があった。さらに、カメラを用いての解析方法では、個々の赤血球に関する形状変化を画像処理するためのシステムが別途必要になる問題点もあった。また、回転粘度計をベースにしたシステムも知られているが、この様なシステムでは赤血球にかかる力学的負荷は一定になってしまい、力学的負荷の振幅や周期を調整するのが困難であるという問題点もあった。
【0012】
上記問題点を解決するため、本発明は、高速度カメラや高粘度溶媒を用いなくても、血液細胞、特に赤血球の力学的特性を再現性よく、かつ、定量的に測定が可能な計測システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えることで血液細胞の力学的特性を計測する、血液細胞の力学的特性計測システムであって、少なくとも一部が透明な第1平板と、前記第1平板に対して隙間を隔てて平行に配置されている第2平板と、前記第1平板と前記第2平板との間の隙間に配置される、血液細胞を含む試料と、前記試料中の血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えるため、前記第1平板と前記第2平板の少なくとも一方を所定の振動周波数で平行振動させる平板振動手段と、前記試料に光を照射する光照射手段と、前記試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光する受光手段と、前記受光手段からの信号を解析して前記血液細胞の力学的特性を求める信号解析手段と、を有し、前記信号解析手段は、前記受光手段からの受光信号を周波数解析する手段を有しており、前記周波数解析によって前記受光信号の周波数情報及び位相情報を求め、前記平板振動手段の振動周波数を含む制御情報と、前記受光信号の周波数情報及び位相情報と関係から前記血液細胞の力学的特性を求める、血液細胞の力学的特性計測システム。
【0014】
血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えることで血液細胞の力学的特性を計測する、血液細胞の力学的特性計測方法であって、少なくとも一部が透明な第1平板と、前記第1平板に対して隙間を隔てて平行に配置される第2平板との間に、血液細胞を含む試料を配置する、試料準備工程と、前記試料中の血液細胞に周期的なせん断応力負荷を加えるため、前記第1平板と前記第2平板の少なくとも一方を所定の振動周波数で平行振動させる平板振動工程と、前記試料に光を照射する光照射工程と、前記試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光手段によって受光する受光工程と、前記受光手段からの信号を解析して前記血液細胞の力学的特性を求める信号解析工程と、を有し、前記信号解析工程は、前記受光手段からの受光信号を周波数解析する工程を有しており、前記周波数解析に前記受光信号の周波数情報及び位相情報を求め、前記平板振動手段の振動周波数を含む制御情報と、前記受光信号の周波数情報及び位相情報と関係から前記血液細胞の力学的特性を求める、血液細胞の力学的特性計測方法。
【0015】
また、以下の実施態様を有する。
前記第2平板も前記第1平板と同様に少なくとも一部が透明である。試料からの反射光を得る場合には2枚の平板のうち一方のみが透明であれば十分であるが、両方の平板が透明であれば、試料からの反射光や透過光や散乱光をより確実に得ることができる。
前記平板振動手段による振動の周波数は数Hz~数kHzである。平板の平行振動の振動周波数は特に限定されるものではないが、数Hz~数kHz程度が好ましい。
前記平板振動手段による振動はアクチュエータにより行われ、前記アクチュエータは更に第1平板と第2平板との間隔を調整する機能も有する。第1平板と第2平板との間隔を調整することで血液細胞を含む試料に対するせん断応力を調整できる。また、試料の導入・交換などの際に前記間隔を大きくすることで、試料の導入・交換を容易にすることができる。
【0016】
前記血液細胞は赤血球である。本発明は赤血球以外の血液細胞(例えば白血球など)にも用いることができるが、特に赤血球の力学的特性の計測に好適に用いられ得る。
前記血液細胞を含む試料は血液である。血液細胞を血液以外の溶媒中に含ませても力学的特性を計測できるが、本発明では溶媒として血液をそのまま用いても血液細胞の力学的特性を測定できる。
前記光照射手段は、試料に異なる複数の波長の光を照射可能である。本発明は単一波長の光でも計測可能であるが、異なる複数の波長の光を用いて計測を行うことで、より精密な計測が可能となる。
前記血液細胞を含む試料は、蛍光剤を更に含む。血液細胞を含む試料に蛍光剤を導入することで、血球膜細胞特性変化を膜構造レベルで評価が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記構成を採用したことにより、血液細胞、特に赤血球の力学的特性を再現性よく、かつ、定量的に測定が可能である。本発明は、血液細胞を含む試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光手段で受光し、受光信号を周波数解析して周波数情報や位相情報から血液細胞の力学的特性を計測しているので、カメラを用いる従来の計測システムに比べて血液細胞を高速で運動させることができる。したがって、粘度の低い溶媒中でも血液細胞に十分なせん断応力負荷を与えることができ、試料として血液そのものを用いることもできる。また、カメラによる観察や回折光パターンを測定する従来技術に比べて装置の構成が簡単で済む。さらに本発明は、平板の平行振動により赤血球に力学的負荷を加えているので、赤血球に加える力学的負荷の周期や振幅を調整することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を用いながら本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は、血液細胞にせん断応力負荷を加える機構を示す。赤血球にせん断応力を加える機構は、平板を2枚一組とし、2枚の平板が相対的に平行に動くように設計されている。この平板の移動速度をu、稼動する平板と固定されている平板との間隙をhとすると、平行平板間に生じるせん断速度はdu/dhとなる。その間隙に、赤血球を分散した溶液を入れると、その平行平板間で生じるせん断応力は、次式で定義される。
【0019】
【数1】
JP0004843794B2_000002t.gif
μは赤血球を含んだ溶媒の粘性係数、uは平行板の移動速度、hは間隙の大きさ、ωは平板の角振動数、νは動粘性係数を示す。本発明における赤血球に加えるせん断応力の大きさは、式(1)に示されるように、上記3項(μ,u,h)のパラメータにより調整できる。
特に流れ場をクウエット流れにするには、
【0020】
【数2】
JP0004843794B2_000003t.gif
を満たすように上記項目を設定すればよい。
【0021】
図2は、本発明の実施形態の一例を表す概略図である。透明ガラスなどからなる第1平板1及び第2平板2、血液細胞を含む試料3、試料に光を照射する光照射手段4、試料からの透過光、反射光又は散乱光を受光する受光手段5、固定部6、稼動部7からなる。光照射手段4には、光源や光学フィルタやチョッパなどが含まれる。同様に、受光手段5には、受光素子や光学フィルタなどが含まれる。第1平板1及び稼動部7は、図示されていないアクチュエータによって、固定部6に固定されている第2平板2に対して、平行振動及び高さ制御が可能となっている。第1平板1及び第2平板2の間には、血液細胞を含む試料3が配置される。光照射手段4及び受光手段5は、試料からの透過光、反射光、散乱光のいずれを受光するかにより、適宜配置される。
【0022】
稼動部7は中空状の円筒形とし、血液試料3との接触面には、ガラス面などの透明な材料(第1平板1)と、固定部となる透明な材料(第2平板2)を用いる。透明な材料を使用することで、直接、赤血球試料3に光を照射することが可能となり、透過光の測定を容易にすることが可能となる。また、稼動部7を中空上の円筒形とすることで、図4のように光素子と受光素子に接続された光ファイバを束ねたセンサ(光ファイババンドル)を容易に設置することが可能となり、稼動部7を絶対座標とした赤血球試料の形状変化状態を容易に計測することもできる。また、光ファイババンドルを固定部に接続することにより、反射光の計測も可能である。
【0023】
図3に基づいて、計測対象内を通過する光から赤血球の形状を計測する方法を説明する。光照射手段4の光源として、レーザやLEDなどの、計測対象に有効となる波長を備えた光源を使用する。例えば、レーザを光源とする場合は、入射レーザ光を光学部品を使用して、減衰、偏光、分割(参照用と計測用)などを行う。また、LEDの場合は、光ファイバを使用して光を伝送し、分割などを行う。次に、分割、減衰、チョッピングなどが行われた光は、そのまま試料3内を通過し、減光、偏光などの光学フィルタを通過したのち、受光手段5の受光部に到達する。受光された光は光センサで電圧信号に変換され、参照光と同周期の信号強度のみを検出する。同周期の信号検出は、ロックインアンプなどを用いて行われる。
【0024】
また、ロックインアンプを通過した光信号は、AD変換回路などを通過してパソコンに取り込まれる。一方、計測中における赤血球へのせん断応力負荷は、第1平板1の稼動部7に接続されたアクチュエータなどで制御される。また、アクチュエータの制御は、信号計測と同期をとるために、パソコン等で行われる。パソコン等により、受光信号を高速フーリエ変換して周波数情報及び位相情報を求めて、アクチュエータの制御情報と合わせて、赤血球の力学的特性を求める。
【0025】
透過光もしくは反射光を計測するような光軸を設けることにより、透過光では特定の位置を通過する際の赤血球の状態を計測することが可能となり、また、反射光では特定の範囲における赤血球の動きに同期した特性を測定することが可能となる。特に、反射光の測定は、稼動部7の円筒部に発光-受光を備えた光プローブを設置することで可能である。計測対象となる血液細胞を力学的負荷を加える流れ場内に組み込むことで、変形能の計測から耐久性評価までを、別途、血液試料を入れ替えることなく、行うことができる。取り込まれたデータを別途解析することで、振動負荷における赤血球の粘弾特性や、疲労破壊に達する時間を測定することが可能となる。また、光源の波長の変更、血液試料内に蛍光剤を導入することにより、血球膜細胞特性変化を膜構造レベルからの評価が可能となる。
【0026】
本実施形態について、平板間の間隙を200μm、稼動部7の駆動周波数を3Hz、振幅を4mmとして実験を行った。計測対象は水、血液試料としてHt8.5%(等張圧でのHt)の等張圧および高浸透圧に赤血球を浮遊させたものを用いた。Htの調整にはPBS溶液を用いた。また、光源のチョッパは150Hzとした。計測結果は、実測値の電圧信号について周波数解析することで求めた。赤血球を含む溶液では、特定の周波数において特徴的な強度が測定された。また、浸透圧の影響については、変形性に優れた赤血球試料(等張圧)では、高浸透圧の条件の赤血球に比べ測定対象の周波数領域における強度が全体的に強く測定された。
以上の結果から、流れ場内を通過する光に対して赤血球の挙動が光の減衰に影響をおよぼし、試料内を通過した光は赤血球の動き、すなわち変形能を示す周期的な光信号となっていることが確認された。このことから、赤血球の変形能診断は、周期的に変動する流れ場内の赤血球の挙動を示す信号を検出することで可能であることがわかる。
【0027】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】平行平板によるせん断速度発生の説明図
【図2】本実施形態の概略図
【図3】本実施形態のブロック図
【図4】光照射手段及び受光手段の一例
【符号の説明】
【0029】
1 第1平板(透明ガラスなど)
2 第2平板(透明ガラスなど)
3 血液細胞を含む試料
4 光照射手段
5 受光手段
6 固定部
7 稼動部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3