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明細書 :プロトン伝導性芳香族高分子、プロトン伝導性芳香族高分子膜及びそれを用いた燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5211317号 (P5211317)
公開番号 特開2008-169337 (P2008-169337A)
登録日 平成25年3月8日(2013.3.8)
発行日 平成25年6月12日(2013.6.12)
公開日 平成20年7月24日(2008.7.24)
発明の名称または考案の名称 プロトン伝導性芳香族高分子、プロトン伝導性芳香族高分子膜及びそれを用いた燃料電池
国際特許分類 C08G  73/10        (2006.01)
C08G  65/40        (2006.01)
C08G  75/20        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
H01M   8/10        (2006.01)
H01B   1/06        (2006.01)
FI C08G 73/10
C08G 65/40
C08G 75/20
H01M 8/02 P
H01M 8/10
H01B 1/06 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2007-005226 (P2007-005226)
出願日 平成19年1月12日(2007.1.12)
審査請求日 平成21年11月12日(2009.11.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 政廣
【氏名】宮武 健治
審査官 【審査官】阪野 誠司
参考文献・文献 特開2005-071961(JP,A)
特開2005-209576(JP,A)
特開2004-288531(JP,A)
英国特許出願公開第01238511(GB,A)
特表2002-512291(JP,A)
特開2002-105199(JP,A)
Macromolecules,1976年,9 (4),626-32
調査した分野 C08G 73/00
C08G 65/00
C08G 75/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
窒素原子上に水素を有するトリアゾール基をポリアリーレンエーテル類、ポリアリーレンスルホン類、ポリイミド類のいずれか又はそれらの共重合体を含む構造の主鎖又は側鎖中の芳香族基と共有結合、または脂肪族基、エーテル基、スルフィド基、ケトン基、エステル、スルホン基のいずれかを介した結合により、1つ以上含み、かつ、スルホン酸基、ホスホン酸基、またはカルボン酸基のいずれかの酸性基を1つ以上含むことを特徴とするプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項2】
前記酸性基はプロトン伝導性芳香族高分子1g当たり0.1mmolから5mmolであることを特徴とする請求項に記載のプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項3】
前記トリアゾール基が有機又は無機酸化合物とイオン結合状態にあることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項4】
前記トリアゾール基が有機又は無機酸化合物と混合状態にあることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項5】
前記有機又は無機酸化合物の含量がトリアゾール1基当たり0.01mmolから20mmolであることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項6】
重量平均分子量が5000以上であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載のプロトン伝導性芳香族高分子。
【請求項7】
請求項1からのいずれかに記載のプロトン伝導性芳香族高分子により製造されたことを特徴とするプロトン伝導性芳香族高分子膜。
【請求項8】
請求項7に記載のプロトン伝導性芳香族高分子膜を含むことを特徴とする燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を含む新規なプロトン伝導性芳香族高分子とそれを成膜することにより得られるプロトン伝導性芳香族高分子膜、およびそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトン伝導性の高分子は、イオン交換膜、食塩電解隔膜、燃料電池隔膜、水素センサー隔膜などに有効に用いられている。なかでも燃料電池は、温室ガスや有害物質を発生しないクリーンな次世代の発電装置として、早期の実用化と広範な普及が望まれている。
【0003】
燃料電池の実用化と普及には高効率化と高出力化が不可欠であり、そのために現在の80℃以下の運転温度を120℃以上の高温で運転することが求められている。現在燃料電池に用いられている高分子膜は、主にパーフルオロアルキルスルホン酸高分子からなる膜である。この膜は含水状態では高いプロトン伝導度を示すが、100℃以上では含水率が低下するためにプロトン伝導度が低下し、また膜強度も弱くなるため、高温で使用することができないという課題がある。
さらにパーフルオロアルキルスルホン酸高分子からなる膜は、燃料や酸化剤の高い透過性、フッ素樹脂であるため高コスト・低環境適合性などの問題点もあり、燃料電池の高性能化と実用化を阻んでいる要因の一つとなっている。
【0004】
このような問題を解決するため、水の影響を受けにくいプロトン伝導体の開発が進められている。易動性水素を有する化合物において水素結合の組み替えやホッピングを活用すれば、水が全くあるいはほとんどない状態でも比較的高いプロトン伝導性が得られることが知られており、特に、イミダゾールなどの複素環化合物に関する報告例が多い。
例えば、酸ドープしたポリベンズイミダゾールは無加湿条件でも10-3S/cm程度のプロトン伝導度を示し、150℃を超える温度でもその値を保持する(非特許文献1)。
また、イミダゾールやピラゾールの誘導体(イオン液体、高分子も含む)を、酸性基を持つ高分子と複合させた系なども報告されている(非特許文献2、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。しかし、燃料電池に供するために必要とされるプロトン伝導度は少なくとも10-2S/cm以上が必要となるが、これらのプロトン伝導体はかかる伝導度を示す条件として100℃以下、あるいは湿度80%以上等の条件下でないと必要な伝導度が確保されないとう問題がある。
【0005】
イミダゾールやピラゾールよりも酸性度が高いトリアゾールを利用する試みも検討されてきており、1H-1,2,3-トリアゾールを側鎖に導入した脂肪族高分子(非特許文献3)や1H-1,2,4-トリアゾールを側鎖に導入したポリシロキサン(非特許文献4)が無加湿条件下でプロトン伝導性を示すことが見出されている。
これらのプロトン伝導度は10-5S/cm以下であるが、リン酸や酸性基を持つ高分子と複合させることによって10-2S/cm程度まで向上するとされている。しかしながら、酸性化合物や低分子化合物の漏れ出しについては解決されておらず、また、高分子主鎖が柔軟な脂肪族やシロキサン結合で構成されているため、十分な耐熱性や化学安定性を持たせることができない。
【0006】

【非特許文献1】J. Electrochem. Soc., 142, L121, 1995; J. New Mater. Electrochem. Sys., 2, 95, 1999; J. Membr. Sci., 185, 41, 2001
【非特許文献2】Electrochim. Acta, 43, 1281, 1998; CHem. Mater., 16, 329, 2004; Chem. Rev., 104, 4637, 2004; 特開2005-44548; 特開2005-44550; 特開2005-222890
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 127, 10824, 2005
【非特許文献4】Chem. Mater., 17, 5884, 2005
【特許文献1】特開2005-44548
【特許文献2】特開2005-44550
【特許文献3】特開2005-222890
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記事情に鑑みて、本発明の課題は、高温、無加湿下でも燃料電池のプロトン伝導体として好適に動作可能なプロトン伝導性芳香族高分子の提供、及び燃料電池用電解質膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らはトリアゾール基を含む高分子について鋭意検討を重ねた結果、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を導入した芳香族高分子膜が、100℃以上の温度、かつ低湿条件下で高いプロトン伝導度と優れた安定性を示すことを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のプロトン伝導性芳香族高分子は窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を分子中に少なくとも1つ以上含むことを特徴とする。化学的に極めて安定な芳香族高分子にトリアゾール基を結合させることにより、高温かつ無加湿の条件下でも高いプロトン伝導度と耐熱性、化学安定性を併せ持たせることができる。また、本発明のプロトン伝導性芳香族高分子を用いて成膜した高分子膜は、トリアゾール基が共有結合しているため、膜外への低分子化合物の漏れ出しを防ぐことができる。
【0010】
窒素原子上にプロトン解離度が高い易動性水素を有するトリアゾールは特に好ましい。
【0011】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子は、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を主鎖中に含むことを特徴とする。これにより、芳香族高分子の高い結晶性と剛直性が保たれ、優れた化学安定性と機械強度を持たせることができる。
【0012】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子は、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を側鎖中に含むことを特徴とする。これにより、トリアゾール基の分子運動が比較的容易となり水素結合の形成や組み換え、プロトンホッピングが起こりやすく、高温で水がない条件下でも極めて高いプロトン伝導度を示すこととなる。
【0013】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子は、窒素原子上に易動性水素を有するため高いプロトン伝導度を示すが、より高いプロトン伝導度を達成するためには、スルホン酸基、ホスホン酸基、またはカルボン酸基などの酸性基のうちいずれか一つ以上を分子中に少なくとも1つ以上含むことが好ましい。これにより、芳香族高分子中のプロトン濃度が増大するため、プロトン伝導度が大幅に増大することとなる。
【0014】
さらにプロトン伝導度を増大させるためには、プロトン伝導性芳香族高分子に有機または無機酸化合物をドープまたは混合させることが好ましい。これにより、芳香族高分子中のプロトン濃度がさらに増大するため、プロトン伝導度が飛躍的に増大することとなる。また、トリアゾール基と有機または無機酸化合物との結合をイオン結合とすることにより、高温や高加湿条件においても酸化合物の漏れ出しが抑制され、長期に亘って高いプロトン伝導度を保つ優れた安定性が得られる。
【0015】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子膜は、上述したプロトン伝導性芳香族高分子により製造されることを特徴とする。このため、本発明のプロトン伝導性芳香族高分子膜は、100℃以上の高温でも高いプロトン伝導度と高い安定性を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子膜は、高温、無加湿、あるいは低加湿条件下においても優れたプロトン伝導特性を保持する。このため、燃料電池を運転する際の湿度管理が容易となる。また、従来から用いられているパーフルオロアルキルスルホン酸高分子よりも低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係るプロトン伝導性芳香族高分子及びプロトン伝導性芳香族高分子膜の実施の形態について以下説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
本発明に係るプロトン伝導性芳香族高分子は窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を分子中に少なくとも一つ以上含むが、窒素原子上に水素を有するトリアゾールとしては、1H-1,2,3-トリアゾール、2H-1,2,3-トリアゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、4H-1,2,4-トリアゾール、およびそれらに各種置換基を導入した誘導体を用いることができる。各種置換基とは、1,2,3-トリアゾールの場合には4または5位炭素上に存在する水素原子を置換するものであり、1,2,4-トリアゾールの場合には3または5位炭素上に存在する水素原子を置換するものである。
【0019】
各種置換基としては水素原子を置換するものであれば特に制限はないが、脂肪族基、芳香族基、ハロゲン原子、およびそれらをエーテル基、ケトン基、エステル、スルホン基などで結合したものが例示される。これらの中でも、ハロゲン原子などの電子吸引性置換基がトリアゾール基のプロトン解離度を増大させるため好ましく用いられる。
【0020】
トリアゾール基は中性の状態でもよいが、水素が結合していない窒素原子上にプロトンや各種陽イオン基が結合したオニウム(陽イオン)の状態であってもよい。後述するようにオニウムの状態では、プロトン解離度が高くなりプロトン濃度が増大するため、高温における高いプロトン伝導度が得られることとなる。
【0021】
プロトン伝導性芳香族高分子に含まれるトリアゾール基の含量は特に限定されないが、一般的には高分子1gあたり0.1~15mmol当量程度である。0.1mmol当量以下ではトリアゾール基の効果があまり認められなくなり、15mmol当量以上は合成が困難となる。
【0022】
また、本発明は、前記プロトン伝導性芳香族高分子として、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を主鎖中に含むことは好適である。
【0023】
トリアゾール基を主鎖中に含む芳香族高分子としては特に限定されないが、ポリフェニレン類、ポリキシリレン類、ポリナフチレン類、ポリアリーレンエーテル類、ポリアリーレンケトン類、ポリアリーレンスルホン類、ポリアリーレンスルフィド類、ポリアラミド類、ポリイミド類、ポリアリレート類、およびそれらの共重合体(ブロック共重合体、交互共重合体、あるいはランダム共重合体)などが例示される。尚、芳香族高分子は、複素環基や脂肪族基を含んでいてもよい。また、この芳香族高分子は分岐や架橋構造を含んでいてもよい。分岐基や架橋基の種類は特に限定されない。
【0024】
トリアゾール基を主鎖中に含む芳香族高分子の分子量は特に限定しないが、燃料電池に供するのに十分な強度を持つ膜を形成するために重量平均分子量が5000以上であることが好ましい。
【0025】
芳香族高分子の主鎖に結合するトリアゾール基の結合位置は特に限定されないが、1,2,3-トリアゾールの場合には4および5位、1,2,4-トリアゾールの場合には3および5位における炭素原子が、芳香族高分子の主鎖に連結していることが特に好適である。また、上述したようにトリアゾリウム陽イオンの場合には、水素が結合していない窒素原子と芳香族高分子の主鎖が結合していても良い。トリアゾール基は、芳香族高分子主鎖中の芳香族基と直接結合していてもよく、脂肪族基やエーテル基、スルフィド基、ケトン基、エステル、スルホン基などのヘテロ結合で結合していてもよい。
【0026】
また、本発明のプロトン伝導性芳香族高分子として、窒素原子上に水素を有するトリアゾール基を側鎖中に含むことは好ましい。
【0027】
トリアゾール基を側鎖中に含む芳香族高分子としては特に限定されないが、ポリフェニレン類、ポリキシリレン類、ポリナフチレン類、ポリアリーレンエーテル類、ポリアリーレンケトン類、ポリアリーレンスルホン類、ポリアリーレンスルフィド類、ポリアラミド類、ポリイミド類、ポリアリレート類、およびそれらの共重合体(ブロック共重合体、交互共重合体、あるいはランダム共重合体)などである。
これらの芳香族高分子は、複素環基や脂肪族基を含んでいてもよい。また、芳香族高分子は、複素環基や脂肪族基を含んでいてもよく、また、この芳香族高分子は分岐や架橋構造を含んでいてもよい。分岐基や架橋基の種類は特に限定されない。
【0028】
トリアゾール基を側鎖中に含む芳香族高分子の分子量は特に限定しないが、燃料電池に供するのに十分な強度を持つ膜を形成するために重量平均分子量が5000以上であることが好ましい。
【0029】
芳香族高分子の側鎖に結合するトリアゾール基の結合位置は特に限定されないが、1,2,3-トリアゾールの場合には4または5位、1,2,4-トリアゾールの場合には3または5位における炭素原子が、芳香族高分子の側鎖となるように連結していることが好ましい。また、上述したようにトリアゾリウム陽イオンの場合には、易動性水素が結合していない窒素原子が芳香族高分子の側鎖となるように結合していてもよい。
トリアゾール基は、芳香族高分子中の芳香族基と直接結合していてもよく、脂肪族基やエーテル基、スルフィド基、ケトン基、エステル、スルホン基などのヘテロ結合で結合していてもよい。また、トリアゾール基の2つ以上の部位が結合して、分岐や架橋構造を形成してもよい。
【0030】
また、本発明のプロトン伝導性芳香族高分子は、スルホン酸基、ホスホン酸基、またはカルボン酸基のうちいずれか一つ以上を分子中に少なくとも1つ以上含むことは好ましい。これら酸性基を含むことにより、プロトン伝導度を向上させることができる。酸性基と芳香族高分子の結合位置や様式は、特に限定されない。芳香族高分子主鎖中の芳香族基に直接または脂肪族基などを介して結合していてもよく、側鎖基に結合していてもよい。
【0031】
プロトン伝導性芳香族高分子に含まれる酸性基の含量は特に限定されないが、一般的には高分子1gあたり0.1~5mmol当量程度である。0.1mmol当量以下では酸性基の効果があまり認められなくなり、5mmol当量以上では成膜製や水に対する安定性が不十分となる。
【0032】
また、本発明プロトン伝導性芳香族高分子は、有機または無機酸化合物をドープまたは混合することが好ましい。これら酸化合物をドープまたは混合することにより、プロトン伝導度を飛躍的に向上させることができる。
酸化物としては、公知の有機酸、無機酸をはじめ、それらの混合物もしくは複合体が使用される。具体的には、たとえば、塩酸、臭化水素酸、青酸などの非酸素酸、硫酸、リン酸、塩素酸、臭素酸、硝酸、炭酸、硼酸、モリブデン酸、インポリ酸、ヘテロポリ酸、などの無機オキソ酸、硫酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、プロトン残留ヘテロポリ酸、モノメチル硫酸、トリフルオロメタン硫酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、コハク酸、安息香酸、フタル酸などの1価、もしくは多価のカルボン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのハロゲン置換カルボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸などの1価、もしくは多価のスルホン酸、五塩化アンチモン、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、塩化亜鉛、塩化銅、塩化鉄などのルイス酸などを挙げることができる。
【0033】
これらのなかでも、プロトン伝導性芳香族高分子膜のプロトン伝導度や安定性の点から強酸性のプロトン酸が好ましく、リン酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、メタン硫酸、などが好ましく用いられる。なお、これらの酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合もしくは複合して組み合わせてもよい。
【0034】
プロトン伝導性芳香族高分子にドープまたは混合する酸化合物の含量は特に限定されないが、一般的には、トリアゾール基一つあたり0.01~20mol当量程度である。0.01mol当量以下では酸化合物の効果があまり認められなくなり、20mol当量以上ではプロトン伝導性芳香族高分子膜からの酸化合物の漏れ出しが大きくなり安定性も低下する。
【0035】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子膜は、上記プロトン伝導性芳香族高分子を公知の方法で成膜することによって製造することができる。製造方法としては特に限定されないが、例えば、プロトン伝導性高分子の溶液を平板上にキャストするキャスト法、ダイコータ、コンマコータ等により平板上に溶液を塗布する方法、溶融液を延伸等する方法などの一般的な方法を用いることができる。この場合、プロトン伝導性芳香族高分子を単独で用いるほか、その他の高分子化合物、低分子可塑剤等と混合して用いることができる。
【0036】
本発明のプロトン伝導性芳香族高分子およびその膜は、燃料電池用隔膜あるいは触媒層中のプロトン伝導性バインダーなどとして用いることができる。
【実施例】
【0037】
実施例1
(芳香族高分子化合物1の合成)
シール付の水銀温度計、窒素導入口、還流管を付した100mLの四口フラスコに、0.921g(2.0mmol)の3,3’-ビス(スルホプロピルオキシ)ベンジジン、0.503g(2.0mmol)の3,5-ビス(4-アミノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール、3mLのトリエチルアミン、15mLのm-クレゾールを加えて、窒素気流下140℃で10分間加熱した。この混合物を激しく撹拌して、透明均一溶液を得た。
この混合液に1.073g(4.00mmol)のナフタレン-1,8:4,5-四カルボン酸二無水物と、0.977g(8mmol)の安息香酸と、5mLのm-クレゾールを加えた。反応溶液は赤褐色となった。その後、窒素気流下175℃で撹拌しながら15時間加熱した。反応溶液は粘稠となった。次いで窒素気流下195℃で3時間加熱した。加熱を止めて40℃にまで冷却した。赤褐色の粘稠な重合体の溶液を得た。
【0038】
この溶液を200mLのアセトンに滴下することにより、赤褐色の繊維状固体を得た。固体をろ別、アセトンで洗浄、減圧乾燥することにより、芳香族高分子化合物1を得た(収率99%)。この化合物のイオン交換容量(IEC)は、滴定により1.70meq/gであることを確認した。
【0039】
【化1】
JP0005211317B2_000002t.gif

【0040】
(芳香族高分子化合物1の成膜)
0.1gの高分子化合物1を10mLのジメチルスルホキシドに溶解し、得られた溶液をキャスト法により成膜した。キャスト法は平板なガラス板上に高分子化合物溶液をそのまま流した後に、60℃で一日自然乾燥を行い成膜した。その後、80℃で12時間常圧乾燥を行った後に、更に80℃で12時間減圧乾燥を行った。得られた芳香族高分子化合物幕1を1N硝酸水溶液400mL中に浸漬し12時間撹拌した。この酸処理工程を更に2回繰り返した。その後、純水で洗浄し60℃で12時間減圧乾燥を行うことにより、膜を得た。
【0041】
(芳香族高分子化合物膜1への酸ドープ)
芳香族高分子化合物膜1を、5Mリン酸に常温で24時間浸漬した。その後、膜を純水で洗浄し60℃で12時間減圧乾燥を行うことにより、リン酸ドープ膜を得た。膜の重量増加より、トリアゾールあたり1当量のリン酸がドープされていることが明らかとなった。
【0042】
実施例2
(芳香族高分子化合物2の合成)
シール付の水銀温度計、窒素導入口、還流管を付した100mLの三つ口フラスコに0.350g(1.0mmol)の9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、0.257g(1.0mmol)の3,5-ビス(4-フルオロフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール、0.346g(2.5mmol)の炭酸カリウム、3mLの脱水N,N-ジメチルアセトアミドを加えた。この混合物を窒素気流下で攪拌して、透明均一溶液を得た。この溶液を140℃で3時間、165℃で3時間加熱した。
反応終了後、6mLのN,N-ジメチルアセトアミドを加えてから常温まで冷却し、300mLの純水中に反応溶液をゆっくりと滴下した。得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収し、80℃の純水で3時間洗浄した後メタノールで洗浄し、60℃で15時間真空乾燥すると白色繊維状の重合体が得られた(収率98%)。
【0043】
この重合体0.30gを、50mLの脱水ジクロロメタンに溶解し、滴下漏斗に入れた。100mLナスフラスコ中に、0.1Mのクロロ硫酸ジクロロメタン溶液5mLを入れた。重合体溶液を滴下漏斗で滴下すると、薄赤色の沈殿物が析出した。そのまま攪拌しながら常温で3時間反応させた。反応終了後、反応溶液をヘキサン中に滴下して、得られた沈殿物を吸引ろ過によって回収した。
ヘキサンでよく洗浄した後、80℃で12時間真空乾燥すると、白桃色の芳香族高分子化合物2が得られた。この化合物のイオン交換容量(IEC)は、滴定により1.65meq/gであることを確認した。
【0044】
【化2】
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【0045】
(芳香族高分子化合物2の成膜)
0.1gの高分子化合物2を10mLのN,N-ジメチルアセトアミドに溶解し、得られた溶液をキャスト法により成膜した。キャスト法は平板なガラス板上に高分子化合物溶液をそのまま流した後に、60℃で一日自然乾燥を行い成膜した。その後、80℃で12時間常圧乾燥を行った後に、更に80℃で12時間減圧乾燥を行った。得られた膜を1N硝酸水溶液400mL中に浸漬し12時間撹拌した。この酸処理工程を更に2回繰り返した。その後、純水で洗浄し60℃で12時間減圧乾燥を行うことにより、芳香族高分子化合物膜2を得た。
【0046】
(芳香族高分子化合物膜2の酸ドープ)
芳香族高分子化合物膜2を、10Mリン酸に常温で12時間浸漬した。その後、膜を純水で洗浄し60℃で12時間減圧乾燥を行うことにより、リン酸ドープ膜を得た。膜の重量増加より、トリアゾールあたり1.5当量のリン酸がドープされていることが明らかとなった。
【0047】
比較例1
(トリアゾール基を含まない芳香族高分子の合成と成膜)
実施例1と同様の手順で3,5-ビス(4-アミノフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾールに代えて、1,4-ビス(4-アミノフェニルオキシ)ベンゼンを用いて重合を行い、トリアゾール基を含まない芳香族高分子化合物を得た(収率98%)。この化合物のイオン交換容量(IEC)は、滴定により1.64meq/gであることを確認した。また実施例1と同様の手順で成膜を行った。
【0048】
【化3】
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【0049】
実施例1、実施例2及び比較例で得られた芳香族高分子化合物膜を試験試料として、それぞれの耐酸化性、耐加水分解性、プロトン伝導度について試験を行った。試験結果を表1にまとめた。
(耐酸化性)
実施例及び比較例のそれぞれの試験試料を、80℃のフェントン試薬(2ppmの硫酸鉄を含有する3%過酸化水素水溶液)中に1時間浸漬し、浸漬前後の試験試料の重量変化を測定した。
【0050】
(耐加水分解性)
実施例及び比較例のそれぞれの試験試料を、140℃の加圧水中に40時間浸漬し、浸漬前後の試験試料の重量変化を測定した。
【0051】
(プロトン伝導度)
各実施例及び比較例の試験試料を、5×40mmの大きさに切り取り、4端子法により交流インピーダンスを測定した。測定は、80または120℃で相対湿度20%、電流値として0.005mAの定電流、掃引周波数として10~20000Hzの条件で行った。得られたインピーダンスと膜端子間距離、膜厚から、プロトン伝導度を算出した。
【0052】
【表1】
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【0053】
表1からも明らかなように、水素を有するトリアゾール基を含んだ実施例1から2に係る各試験試料は、トリアゾール基を含まない比較例1に係る試験試料と比較して、高い酸化安定性、高い加水分解耐性、および高いプロトン伝導度を有することが明らかとなった。さらに、酸ドープをした実施例1~2に係る各試験試料は、高い酸化安定性と高い加水分解耐性を保持しながら、一層高いプロトン伝導度を有することが明らかとなった。