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明細書 :木材の改質法および該方法で改質された木材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4496034号 (P4496034)
公開番号 特開2006-044125 (P2006-044125A)
登録日 平成22年4月16日(2010.4.16)
発行日 平成22年7月7日(2010.7.7)
公開日 平成18年2月16日(2006.2.16)
発明の名称または考案の名称 木材の改質法および該方法で改質された木材
国際特許分類 B27K   3/34        (2006.01)
B27K   3/15        (2006.01)
FI B27K 3/34 B
B27K 3/15 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2004-230230 (P2004-230230)
出願日 平成16年8月6日(2004.8.6)
審判番号 不服 2008-017204(P2008-017204/J1)
審査請求日 平成19年8月2日(2007.8.2)
審判請求日 平成20年7月4日(2008.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】390026387
【氏名又は名称】武蔵エンジニアリング株式会社
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】由井 浩
【氏名】生島 和正
【氏名】植村 恒彦
【氏名】甕 武治
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100102314、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 阿佐子
【識別番号】100123984、【弁理士】、【氏名又は名称】須藤 晃伸
参考文献・文献 特開平6-271792(JP,A)
特開2001-260104(JP,A)
特開平7-62955(JP,A)
特開2004-66461(JP,A)
特開平8-318509(JP,A)
特開平5-116107(JP,A)
特開2002-103308(JP,A)
調査した分野 B27K1/00-9/90
特許請求の範囲 【請求項1】
表面劣化防止剤、木材保存剤および/または難燃剤である木材改質剤で処理して木材を改質するに際し、木材を該木材改質剤の必要量の一部で処理した後に、吸水性ポリマーおよび/または微粒子の存在下金属アルコキシドの加水分解重縮合時に該木材改質剤の必要量の残りの部を共存させて得た反応物である金属アルコキシドを加水分解重縮合した反応物を木材の調湿性を維持しつつ該木材改質剤の水による溶脱を抑制する作用の有効成分として用いることを特徴とする木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法。
【請求項2】
上記の反応物がそれを含む溶液の形態である請求項記載の木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法。
【請求項3】
上記の反応物を木材にコーティングまたは含浸して適用する請求項1または2記載の木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法。
【請求項4】
上記の反応物を木材に適用し、その後、該木材を加熱処理する請求項記載の木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は改質した木材を製造する方法に係り、特に表面劣化防止剤、木材保存剤あるいは難燃剤が水によって溶脱する欠点を改良し、しかも調湿性を有する木材を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の表面劣化を防ぐ方法として紫外線吸収剤などの表面劣化防止剤を塗布あるいは含浸することが一般に行われている。また、防カビ剤、防腐剤、防蟻剤、防虫剤などの木材保存剤を塗布あるいは含浸あるいは注入してカビ、シロアリ、虫などの害から木材を守ることが広く行われている。さらに、難燃剤、防炎剤を塗布あるいは含浸あるいは注入して木材を難燃化することも行われている。しかし、木材に塗布あるいは含浸あるいは注入された紫外線吸収剤、防カビ剤、防腐剤、防蟻剤、防虫剤、難燃剤、防炎剤などの薬剤は雨水などの水に木材が晒されると木材から溶脱しやすく、薬剤の効果が短期間で失われるという大きな問題点が存在する。
【0003】
表面劣化を改良するために木材の表面に油性ペイント、合成樹脂ペイント、フタル酸樹脂エナメル、合成樹脂エマルジョンペイントなどで塗装を施すことが一般的に行なわれている。しかし、この方法では木材特有の外観(木理や質感)が損なわれ、また調湿性も減少する。また塗装の効果は長期間持続せず、1~3年で塗り替える必要がある。
【0004】
また、パラフィン、アスファルトなどを含浸させて耐水性を付与して木材保存剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの水による溶脱を防ぐことが行なわれているが、この方法ではパラフィン、アスファルトなどを大量に含浸させる必要があるために木材保存剤、難燃剤、紫外線吸収剤などを必要量木材中に含有させることができず、また調湿性が大幅に減少する。
【0005】
一方、金属アルコキシドを用いて木材を改質することがいくつかのグループによって行われている。特許文献1ではケイ素アルコキシド、シリコーンポリマーを木材中で合成して、耐候性、難燃性を付与することが提案されている。特許文献2では木材の中に1種あるいは2種以上の金属アルコキシドの溶液を含浸させ、その後この金属アルコキシドを加水分解もしくは加熱分解することによって、これを不燃性の金属酸化物に変え、これによって木材を難燃化することが提案されている。特許文献3、4,5でも金属アルコキシドを用いた木材の改質方法が提案されている。しかしながらこれらの方法では表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤、などの水による溶脱を防ぐことはできない。
【0006】
特許文献6では水溶性無機薬剤を含浸乾燥後、金属アルコキシドの溶液を含浸させ、さらにその後で金属アルコキシドを加水分解もしくは加熱分解することによって、これを不燃性の金属酸化物に変えると共に、この金属酸化物に変える過程で木材に含浸した水溶性無機薬剤を包み込み、前記無機化合物が水の作用で溶出しないようにすることが提案されている。この方法によれば、25℃で4時間攪拌後、含浸薬剤の水抽出試験である程度の薬剤溶脱防止効果は認められるが、非特許文献1で定められた、25℃×5h水浸漬と40℃×19h乾燥を10日間繰り返した後に薬剤の溶脱量を測定する厳しい試験では薬剤溶脱防止効果は著しく少ない。
【0007】

【特許文献1】特開昭63-265601
【特許文献2】特開平5-278008
【特許文献3】特開平6-802
【特許文献4】特開平8-318509
【特許文献5】特開平4-187579
【特許文献6】特開平5-116107
【非特許文献1】日本木材保存協会「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法及び性能基準」(JWPS‐FW‐S.1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、木材の持つ表面劣化防止剤、木材保存剤あるいは難燃剤などの薬剤が水によって溶脱しやすい欠点を改良し、しかも木材の長所である特有の外観および調湿性をできるだけ保持できる木材改質方法で、改質処理時の環境悪化の懸念がなく、経済的にも有利な方法を提供すること、および該方法を用いた改質木材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表面劣化防止剤、木材保存剤および/または難燃剤である木材改質剤で処理し木材を改質するに際し、木材を該木材改質剤の必要量の一部で処理した後に、吸水性ポリマーおよび/または微粒子の存在下金属アルコキシドの加水分解重縮合時に該木材改質剤の必要量の残りの部を共存させて得た反応物である金属アルコキシドを加水分解重縮合した反応物木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する作用の有効成分として用いることを特徴とする木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法を要旨とする。
【0012】
上記の反応物がそれを含む溶液の形態であり、その場合、本発明は、表面劣化防止剤、木材保存剤および/または難燃剤である木材改質剤で処理し木材を改質するに際し、木材を該木材改質剤の必要量の一部で処理した後に、吸水性ポリマーおよび/または微粒子の存在下金属アルコキシドの加水分解重縮合時に該木材改質剤の必要量の残りの部を共存させて得た反応物である金属アルコキシドを加水分解重縮合した反応物を、木材の調湿性を維持しつつ該木材改質剤の水による溶脱を抑制する作用の有効成分として、それを含む溶液の形態で用いることを特徴とする木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法を要旨とする。
【0015】
上記の反応物を木材にコーティングまたは含浸して適用しており、その場合、本発明は、表面劣化防止剤、木材保存剤および/または難燃剤である木材改質剤で処理し木材を改質するに際し、木材を該木材改質剤の必要量の一部で処理した後に、吸水性ポリマーおよび/または微粒子の存在下金属アルコキシドの加水分解重縮合時に該木材改質剤の必要量の残りの部を共存させて得た反応物である金属アルコキシドを加水分解重縮合した反応物を、木材の調湿性を維持しつつ該木材改質剤の水による溶脱を抑制する作用の有効成分として、上記の反応物、またはそれを含む溶液を木材にコーティングまたは含浸して適用する、ことを特徴とする木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法を要旨とする。
【0016】
上記の反応物を木材に適用し、その後、該木材を加熱処理しており、その場合、本発明は、表面劣化防止剤、木材保存剤および/または難燃剤である木材改質剤で処理し木材を改質するに際し、木材を該木材改質剤の必要量の一部で処理した後に、吸水性ポリマーおよび/または微粒子の存在下金属アルコキシドの加水分解重縮合時に該木材改質剤の必要量の残りの部を共存させて得た反応物である金属アルコキシドを加水分解重縮合した反応物を、木材の調湿性を維持しつつ該木材改質剤の水による溶脱を抑制する作用の有効成分として、上記の反応物、またはそれを含む溶液を木材に適用し、好ましくはコーティングまたは含浸して適用し、その後、該木材を加熱処理する、ことを特徴とする木材の調湿性を維持しつつ木材改質剤の水による溶脱を抑制する方法を要旨とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、木材の持つ表面劣化防止剤、木材保存剤あるいは難燃剤などの薬剤が水によって溶脱しやすい欠点を改良し、しかも木材の長所である特有の外観および調湿性をできるだけ保持できる木材改質方法を提供することができる。
本発明によりこのような優れた木材改質がなされる機構は必ずしも明らかではないが、金属アルコキシド加水分解重縮合反応物が木材表面から侵入した後に形成される金属酸化物三次元架橋体が木材表面から約1mmまでの厚み範囲に実質的に存在していることがその要因の一つであると考えられる。
改質処理時の環境悪化の懸念がなく、経済的にも有利な方法を提供すること、および該方法を用いた改質木材を提供することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る木材の新たな改質方法は、第一には紫外線吸収剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の必要量を木材に含浸あるいは注入あるいは塗布した後に、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることを特徴としている。また第二には紫外線吸収剤、木材保存剤、難燃剤などの存在下で金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることを特徴としている。
【0022】
本発明の方法においては、木材を、未改質の木材と同等の調湿性と特有の外観を保持したまま、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることの予期せざる効果として、木材に加えられた表面劣化防止剤、木材保存剤あるいは難燃剤などの薬剤が水によって溶脱しやすい欠点を大幅に改良することができる。
【0023】
以下に本発明について更に詳しく説明する。
本発明は、先に本発明者らが発明した木材の表面改質方法および表面改質木材(特開2001-260104)の技術を応用したものである。本発明の木材の改質方法は第一には表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の必要量を木材に含浸あるいは注入あるいは塗布して木材に所定の表面劣化防止性、防カビ性、防腐性、防蟻性、防虫性、難燃性を付与する一方で、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることを特徴としている。この場合、木材に表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の必要量を木材に含浸あるいは注入あるいは塗布した後に、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることが好ましいが、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させた後に表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の必要量を木材に含浸あるいは注入あるいは塗布することもできる。
また第二には、表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの必要量の全部あるいは一部の存在下で金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させることを特徴としている。表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの必要量の残部は予め木材に含浸あるいは注入あるいは塗布するか、あるいは金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液を木材にコーティングあるいは含浸させた後に木材に含浸あるいは注入あるいは塗布する。第二の改質方法の方が表面劣化防止剤、木材保存剤、難燃剤などの水による溶脱を防ぐ効果がより大きい。
【0024】
表面劣化防止剤としては通常の紫外線吸収剤を用いることができる。たとえばフェニルサリシレート、p‐tert‐ブチルフェニルサリシレート、p‐オクチルフェニルサリシレート、2,4‐ジヒドロキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐オクトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2'‐ジヒドロキシ‐4‐メトキシベンゾフェノン、2,2'‐ジヒドロキシ‐4,4'‐ジメトキシベンゾフェノン、2‐ヒドロキシ‐4‐メトキシ‐5‐スルホベンゾフェノン、2‐(2'‐ヒドロキシ‐5'‐メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2'‐ヒドロキシ‐5'‐tert‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2'‐ヒドロキシ‐3',5'‐ジ・tert‐ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐(2'‐ヒドロキシ‐3'‐tert‐ブチル‐5'‐メチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2'‐ヒドロキシ‐3',5'‐ジ・tert‐ブチルフェニル)‐5‐クロロベンゾトリアゾール、2‐(2'‐ヒドロキシ‐3',5'‐ジ・tert‐アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2‐エチルヘキシル‐2‐シアノ‐3,3'‐ジフェニルアクリレート、エチル‐2‐シアノ‐3,3'‐ジフェニルアクリレート、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、〔2,2'‐チオビス(4‐tert‐オクチルフェノラート)〕‐n‐ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス‐3,5‐ジ・tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル・リン酸モノエチレート、ニッケル・ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、又光安定剤としてのヒンダードアミンなどを、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の木材に対する配合量は要求性能に応じて木材単位表面積(m)当り0.1g~100gの範囲で設定される。
【0025】
木材保存剤としては、各種防カビ剤、防腐・防蟻剤、防虫剤などが用いられる。
防カビ剤としては、キャプタン、カプタホル等のシクロベンゼンジカボキシアミド系、フォルペット等のフタルアミド系、シクロフルアニド等のスルファミド系、クロロサロニル等のニトリル系、8-オキシノリン銅等のキノリン系、チアベンダゾール-2-(Thiazol-4-yl)benzimidazole(TBZ,)、カーベンダジン、ベノミル等のイミダゾール系、ベンゾチアゾール-2-Thiocyanomethylthio)benzothiazole(TCMTB)等のベンゾチアゾール系、アザコナゾール等のトリアゾール系、Duodomethyl-p-tolyl sulfone(DIMTS)、p-Chlorophenyl-3-iodopropargylformal(CPIPF)、F)、3-Iodo-2-propynylbutylcarbamate(IPBC)、p-クロルフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール(IF-1000)等の有機ヨード系、3-Bromo-2.3-diiodo-2-propenylethyl carbonate(EBIP)等のトリハロアリル系、メチレンビスチオシアネート(MBT)のチオシアネート系他があり、それらを単独で、あるいは2種以上を組み合わせて浸漬、塗布、吹きつけで処理されている。
防カビ剤の木材に対する処理量は要求性能(菌の種類等)に応じて、木材単位表面積(m)当り1mg~1gのオーダーで設定されている。
【0026】
防腐・防蟻剤としては油性のクレオソート油、水溶性のクロム・銅・砒素化合物系(CCA)、アルキルアンモニウム化合物系(AAC)、銅・アルキルアンモニウム化合物系(ACQ)、銅・ほう素・アゾール化合物系(CUBAZ)、銅・アゾール化合物系(CUAZ)、ほう素・アルキルアンモニウム化合物系(BAAC)、油溶性のナフテン酸銅(NCU)、ナフテン酸亜鉛(NZN)、乳化性のナフテン酸銅(NCU)、ナフテン酸亜鉛(NZN)、バーサチック酸亜鉛(VZN)、アゾ-ル化合物系(AZP)等が主として加圧注入用に、塩素化イソシアヌール酸等のシャヌール酸誘導体、ビス(トリ-h-ブチルスズ)オキシドやトリブチルスズフタレート等の有機スズ化合物、その他として3-ブロモー2,3-ジヨード-2-プロパニルエチルカルボナート(サンプラス)、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、p-クロルフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール(IF-1000)、2,3,3-トリヨードアリルアルコール等の脂肪族化合物、トリクロルフェノール、2,4,6-トリブロモフェノール、4-ブロム-2,5-ジクロルフェノール等の一価フェノール誘導体、ペンタクロルフェニルラウレト等のフェノールエステル誘導体、ジヨードメチル-p-トリルスルホン、N,N-ジメチル-N'-(フルオロジクロルメチルチオ-N'-フェニルスルファミド等のスルホン誘導体、トリスー(N-シクロヘキシルジアゼニウムジオキシド)-アルミニウム、N-シクロヘキシルジアゼニウムジオキシーカリウム等のヒドロキシルアミン誘導体、2-(4-チアゾリル)-1H-ベンツイミダゾール、2-(4-チオシアノメチル)-ベンゾチアゾール等のベンゾイミダゾール誘導体、8-オキシキノリン銅等のキノリン誘導体、2-メルカプトベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール誘導体、1-[2-(2'、4'-ジクロロフェニル)-4-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イルーメチル]-1H-1,2,4-トリアゾール(プロピコナゾール)、1-[2-(2'、4-クロロフェニル1,3-ジオキソラン-2-イル)メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール(アザコナゾール)、a-(2,4-クロロフェニルエチル)-a-(1,1-ジメチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール(テブコナゾ-ル)、a-(4-クロロフェニル)-d-(1-シクロプロピルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール(シプロコナゾール)等のトリアゾール誘導体、その他N-シクロヘキシル-N-メトキシ-2,5-ジメチル-3-フランーカルボキシド、p-クミルフェノール等の芳香族化合物等が主として表面処理用薬剤として使用されている。これらの薬剤は単独または防蟻剤と供に用いられている。
処理量については、加圧注入では木材m当り1g~100kg。表面処理薬剤は塗布、吹き付け、浸漬等により処理されるが、その量は木材単位表面積(m)当りで0.1g~100gの範囲で設定される。
【0027】
防虫(蟻)剤には、八ホウ酸ナトリウム四水和物、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ素化合物、フェノカルブ、カルバリル、プロボキサー等のカーバメート化合物、トラロメスリン、ペルメトリン、アレスリン、ビフェントリン、シラフルオフェン、エトフェンプロックス等のピレスロイド化合物、クロルピリホス、ホキシム、テトラクロルビンホス、フェニトロチオン、ピリダフェンチオn、プロペタンホス、ジクロロフェンチオン等の有機リン系化合物、その他の化合物としてイミダクロプリド、トリプロピルイソシアヌレート(TPIC)、4—ブロム—2、5—ジクロルフェノール、フィプロニル等がある。これらの薬剤も加圧注入、表面処理の両方の処理法がある。その木材に対する配合量は加圧注入で木材m当り1g~100kgの範囲で設定される、表面処理で木材単位表面積(m)当りで0.1g~100gの範囲で設定される。
【0028】
難燃剤・防炎剤としては、リン、リン酸、ポリリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸n グアニジン、リン酸グアニル尿素、リン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物、臭化アンモニウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、塩化アンチモン、塩化パラフィン・塩化アンチモン等のハロゲン化合物、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、その他シュウ酸アンモニウム、スルフォン酸アンモニウム、テトラキスオキシメチルホスホニウムクロリド、ホスホリルアミド、ミナリス、パイレソート、THPC・メチロールメラミン等を用いることができる。
これらの薬剤は単一または混合溶液で浸漬、塗布、減圧加圧などの方法で木材中に注入される、その木材に対する配合量は1~80重量%の範囲で設定される。
【0029】
金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物の作成方法の基本は特開2001-260104に記載されている方法である。
【0030】
本発明で用いる金属アルコキシドは、次式(1)または(2)で示される化合物である。
M(OR)…(1)
M(OR)(X)a-n…(2)
ここでMはSi, Al, Ti, Zr, Ca, Fe, V, Sn, Li, Be, BおよびPからなる群から選択される原子であり、Rはアルキル基であり、Xはアルキル基、官能基を含むアルキル基、またはハロゲンであり、aはMの原子価であり、nは1からaまでの整数である。上記Xとしては、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ビニル基、またはエポキシ基を有するアルキル基が好適である。
特に好ましい金属アルコキシドとしては、Si(OC2H54、Si(OCH34、Al(O-iso-C3H73、Ti(O-iso-C3H74、などが挙げられる。
金属アルコキシドの加水分解重縮合反応は一般にゾル・ゲル法と呼ばれる反応の常法に従って行う。すなわち、金属アルコキシドを水とエタノールなどのアルコールとの混合溶媒に溶かし、触媒としての塩酸などの酸、またはアンモニアなどのアルカリを添加して、室温~80℃の温度で攪拌しながら反応させる。
本発明において、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を得る際に吸水性ポリマーを存在させることによって、意外なことに水の浸透性がより少なく、紫外線吸収剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の水による溶脱の少ない改質木材を得ることができる。
用いる吸水性ポリマーは、ポリアクリル酸系、ポリビニルアルコール系、ポリ(N-ビニルアセトアミド)系、ポリアミノ酸系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルピロリドン系、ポリヒドロキシエチルアクリレート系、ポリビニルメチルエーテル系、ポリ(イソブチレン-マレイン酸)系、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸)系、ポリアクロキシプロパンスルホン酸系、ポリビニルホスホン酸系、ポリビニルピリジン系、ポリエチレングリコール系、ポリエチレンイミン系などの化学合成によって得られる吸水性ポリマーおよびアルギン酸、ポリグルタミン酸、ヒアルロン酸、カゼイン、コラーゲン、デンプン、ヒドロキシルセルロース、カルゲナンおよびこれらの金属塩、エステルなどの天燃物由来の吸水性ポリマーのうちいずれか一つまたはその組み合わせである。なかでもポリアクリル酸系、ポリアミノ酸系、ポリ(N-ビニルアセトアミド)系の吸水性ポリマーが好ましく、特に、ポリアクリル酸金属塩部分架橋体を主体とするポリアクリル酸系吸水性ポリマーが経済性の上で最も好ましい。
本発明において、金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を得る際に吸水性ポリマーと無機あるいは有機の微粒子を存在させることによって、水の浸透性および紫外線吸収剤、木材保存剤、難燃剤などの薬剤の水による溶脱がさらに少ない改質木材を得ることができる。
用いる微粒子は、無機微粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化鉄などの金属酸化物、ベントナイト、タルク、カオリナイト、マイカ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイトなどのケイ酸塩、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウムなどの金属炭酸塩あるいは重炭酸塩、硫酸カルシウムなどの金属硫酸塩、鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、などの金属粉、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、硫化モリブデンなどの中の一つまたはその組み合わせである。後述する金属アルコキシドの加水分解重縮合反応を行う際に触媒として塩酸などの酸を用いる場合は酸によって分解されない無機微粒子を用いる。また、金属アルコキシドの加水分解重縮合反応を行う際に触媒としてカセイソーダなどのアルカリを用いる場合はアルカリによって分解されない無機微粒子を用いる。これらの点を考慮して、酸化チタンなどの金属酸化物、タルク、カオリナイトなどのケイ酸塩を用いることが好ましい。
有機微粒子としてはセルロース粉末、もみがら、木粉、でんぷん粉末、パルプ粉末などを用いることができる。
【0031】
用いる微粒子の平均粒径は1nmから10mmの間であり、特に0.1~10μmの範囲にあるものが好ましい。微粒子は親油性に表面処理されていないものを用いるのが好ましい。
【0032】
金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液は、例えば、該溶液を木材にスプレーコーティングする方法、該溶液を入れた容器に木材を浸し、直ちに一軸駆動装置によって一定速度で木材を溶液から引き上げる方法などの各種の方法によって木材にコーティングあるいは含浸される。施工の自由度、経済性などの点からスプレーコーティングなどのコーティング法によることが好ましい。
【0033】
金属アルコキシドを加水分解重縮合させた反応生成物を含む水溶液をコーティングあるいは含浸させた木材は、必要によって各種の方法によって加熱処理される。加熱の条件は温度40~200℃、時間は10秒から10日間の範囲で目的に応じて設定される。加熱時に圧力をかけることもできる。加熱処理はオーブン、炉内で行う方法、熱風を吹きつける方法、加熱プレスする方法など各種の方法によって行なわれる。
加熱温度が高いと、改質木材への水の浸透性がより少なくなり、日光による表面劣化や木材保存剤あるいは難燃剤などの薬剤が水によって溶脱しやすい欠点がより少なくなる。但し加熱温度が高くなると木材自身の組織が変質しやすくなるので、目標とする性能見合いで最適の加熱条件を設定する。
以下に実施例を示す。なお、実施例1から3は参考例である。
【実施例1】
【0034】
スギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に紫外線吸収剤としてp‐tert‐ブチルフェニルサリシレート10.0重量%を浸漬によって含浸させた。
次に、500mlビーカーに水60gにポリアクリル酸ナトリウム部分架橋体を主体とするポリアクリル酸系吸水性ポリマー粉末100mgを入れ、さらに酸化チタン微粒子(ルチル型、平均一次粒径0.2μm)50mgを加え、室温で5分間攪拌した後に、エタノール120g、塩化水素3.8g、テトラエトキシシラン63gを加えて25℃で1時間攪拌して反応液を得た。この反応液6mlを該スギ材全面にスプレーコーティングした後に1時間自然乾燥した。
【0035】
このようにして改質されたスギ材からの紫外線吸収剤の水による溶脱を日本木材保存協会「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法及び性能基準」(JWPS‐FW‐S.1)に準じて測定した。25℃×5h 水浸漬と40℃×19h乾燥を10日間繰り返した後に測定した溶脱量は24重量%であった。
【0036】
比較のためにスギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に紫外線吸収剤としてp‐tert‐ブチルフェニルサリシレート10.0重量%を浸漬によって含浸させたものについて同様の溶脱試験を行った。溶脱量は53重量%であった。
【実施例2】
【0037】
スギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に防カビ剤としてパラクロロメタキシノール5重量%を塗布によって含浸させた。
次に、実施例1で用いたものと同一の反応液6mlを該スギ材全面にスプレーコーティングした後に100℃で1時間加熱した。
【0038】
このようにして改質されたスギ材からの防カビ剤の水による溶脱を実施例1と同様の方法で測定した。25℃×5h水浸漬と40℃×19h乾燥を10日間繰り返した後に測定した溶脱量は19重量%であった。
【0039】
比較のためにスギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に防カビ剤としてパラクロロメタキシノール5重量%を塗布によって含浸させた含浸させたものについて同様の溶脱試験を行った。溶脱量は52重量%であった。
【実施例3】
【0040】
ヒノキ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に難燃剤としてホウ砂、ホウ酸混合物20重量%を加圧缶によって加圧注入した。
次に、実施例1で用いたものと同一の反応液6mlを該ヒノキ材全面にスプレーコーティングした後に100℃で1時間加熱した。
【0041】
このようにして改質されたヒノキ材からのホウ砂、ホウ酸混合物の水による溶脱を実施例1と同様の方法で測定した。25℃×5h水浸漬と40℃×19h乾燥を10日間繰り返した後に測定した溶脱量は21重量%であった。
【0042】
比較のためにヒノキ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に難燃剤としてホウ砂、ホウ酸混合物20重量%を加圧缶によって加圧注入したものについて同様の溶脱試験を行った。溶脱量は77重量%であった。
【実施例4】
【0043】
スギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に紫外線吸収剤としてp‐tert‐ブチルフェニルサリシレート1.5重量%を浸漬によって含浸させた。
次に、500mlビーカーに水60gにポリアクリル酸ナトリウム部分架橋体を主体とするポリアクリル酸系吸水性ポリマー粉末100mgを入れ、さらに酸化チタン微粒子(ルチル型、平均一次粒径0.2μm)50mgおよびp‐tert‐ブチルフェニルサリシレート1.0gを加え、室温で5分間攪拌した後に、エタノール120g、塩化水素3.8g、テトラエトキシシラン63gを加えて25℃で1時間攪拌して反応液を得た。この反応液6mlを該スギ材全面にスプレーコーティングした後に100℃で1時間加熱した。
【0044】
このようにして改質されたスギ材からの紫外線吸収剤p‐tert‐ブチルフェニルサリシレートの水による溶脱を日本木材保存協会「表面処理用木材防腐剤の室内防腐効力試験方法及び性能基準」(JWPS‐FW‐S.1)に準じて測定した。25℃×5h水浸漬と40℃×19h乾燥を10日間繰り返した後に測定した溶脱量は8重量%であった。
【0045】
比較のためにスギ材(長さ20cm、幅20cm、厚さ5mm)に紫外線吸収剤としてp‐tert‐ブチルフェニルサリシレート1.8重量%を浸漬によって含浸させたものについて同様の溶脱試験を行った。溶脱量は54重量%であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
日本の森林が荒廃し始めている。その大きな要因として木材の需要が低迷していることが挙げられる。この状況を打破するには木材の需要を拡大させることが必要不可欠である。
これに対して既に国を挙げていろいろな対策が講じられている。たとえば国土交通省は平成12年に建築基準法を改定し、従来は可燃物という認識から外装材などの重要建築材料への使用を禁じていた木材に対して不燃、難燃の性能が規定に合格すれば使用を認めることとし、木材の大口需要への道を開いた。また文部科学省は木材環境が児童生徒の心身に良い影響をもたらすという認識の下に最近校舎の木造化を推進使用としている。
しかしながら木材に含浸あるいは注入された表面劣化防止材、木材保存剤、難燃剤などが雨水によって容易に溶脱して木材の耐久性が損なわれてしまうために、木材の需要分野はほとんど拡大していないのが現状である。
本発明の成果を利用することによって木材が本来有している調湿性を維持したまま、高度の表面劣化防止性、防カビ・防虫・防蟻性、難燃性を長期間にわたって有する高機能木材製品が実用化可能となる。その結果住宅、校舎などの外装材、ドアなどここ数十年間法規制などのために我が国では使用実績が乏しかった用途分野に木材が大量に使用できる道が開け、木材産業の振興に大きく貢献できることが期待される。また木材の需要が大きく増大することによって、日本の森林再生にも大きく貢献することが期待される。