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明細書 :分子模型制作方法及び化学反応学習教材

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4892681号 (P4892681)
公開番号 特開2008-145670 (P2008-145670A)
登録日 平成24年1月6日(2012.1.6)
発行日 平成24年3月7日(2012.3.7)
公開日 平成20年6月26日(2008.6.26)
発明の名称または考案の名称 分子模型制作方法及び化学反応学習教材
国際特許分類 G09B  23/26        (2006.01)
FI G09B 23/26
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2006-331847 (P2006-331847)
出願日 平成18年12月8日(2006.12.8)
審査請求日 平成21年11月18日(2009.11.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】藤井 豊
【氏名】淺原 雅浩
個別代理人の代理人 【識別番号】100087169、【弁理士】、【氏名又は名称】平崎 彦治
審査官 【審査官】中澤 言一
参考文献・文献 国際公開第2006/080871(WO,A1)
実開平2-78975(JP,U)
特開2004-309578(JP,A)
調査した分野 G09B 1/00 - 1/40
G09B 23/00
G09B 23/20
G09B 23/24 - 23/26
G09B 25/00
特許請求の範囲 【請求項1】
分子構造の模型を制作する方法において、教材としては基台と球体を使用し、基台には原子穴を貫通して設け、この原子穴より僅かに大きくて原子を表す球体を嵌め、互いに結び付く原子同士は球体表面が接するように又は近接するように配置することを特徴とする分子模型の制作方法。
【請求項2】
上記基台を長方形の紙製とし、下面がテーブル面などに接しないように対向する辺を下方へ折り曲げて脚を形成し、他方の対向する辺を上方へ折り曲げてリブを形成した請求項1記載の分子模型の制作方法。
【請求項3】
化学反応を習得する学習教材において、教材としては基台と各種の球体から成り、基台には複数の原子穴を貫通して設けると共に下面が浮上するように脚を設け、該原子穴には原子穴より僅かに大きくて原子を表す上記球体を嵌めることが出来、そして、基台表面には化学反応式を表示し、該化学反応式と対を成して上記球体が嵌る穴を配置し、互いに結び付く原子同士は球体表面が接するように又は近接するように配置されることを特徴とする化学反応学習教材。
【請求項4】
上記基台を長方形の紙製とし、下面が浮上してテーブル面などに接しないように対向する辺を下方へ折り曲げて脚を形成し、他方の対向する辺を上方へ折り曲げてリブを形成した請求項3記載の化学反応学習教材。
【請求項5】
1枚の基台に反応前と反応後の原子の配列が出来るように原子穴を配置した請求項3、又は請求項4記載の化学反応学習教材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は分子構造の模型を迅速に制作することが出来る方法、及び化学反応を理解する為に使用する教材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中学生や高校生が学習する化学の授業において、あらゆる物質の基となる原子が組み合わされて構成される分子の構造を理解することが重要である。そして、異なる分子が反応して他の分子が作られるが、従来の学習形態である化学反応式だけでは十分な理解が得られない。特に、ゆとり教育が求められている今日、限られた授業時間内で分子構造や化学反応を理解することは容易でない。
【0003】
中学生の理科学習においては、簡単な化学反応(例えば、水素の燃焼反応、水の電気分解、炭素の燃焼、メタンの燃焼など)が取り上げられて、身近な2原子分子、3原子分子の形が学習内容に盛り込まれている(原子説と定比例の法則)。又、化学反応の前後で変化するのは原子の並びであり、原子の種類と数は変化しないと言う「質量保存の法則及び倍数比例の法則」を学習する。しかし、中学生にとって「原子説と定比例の法則」や「質量保存の法則及び倍数比例の法則」は難解な法則であり、多くの生徒の理解度は低いとされる。
【0004】
限られた授業時間内で分子構造及び化学反応を学習しなくてはならない訳であるが、従来分子構造の学習に関しては幾つかの模型が提案されている。
特開2004-233900号に係る「分子模型」は、立方体の8つの角を中心に切り落とし、その際できる三角形が稜線の中央部で交わるような14面体と、その14面体の各面を上にしたとき中央の6本の稜線に平らな面を形成した20面体と、稜線の中央部を中心に直角に12個の切り落とし面を形成した26面体と、5角12面体の20個の面を中心に直角に切り落として三角形の面を作り、稜線の中央部で交わるようにした32面体と、中心に連結孔を有する球体と、前記14面体、20面体、26面体および32面体の各面の中央部に法線方向に設けられた連結孔と前記球体が有する連結孔とに両端が挿入される原子間の距離を表現する原子間杆とを備えて、前記14面体、20面体、26面体および32面体のいずれかと原子間の距離を表現する原子間杆とを連結して化合物の分子構造を立体的に表現することが出来る。
【0005】
特開2004-309578号に係る「分子模型作製方法、及び分子模型作製用部材」は、中心部と複数の枝状部とを有し、前記複数の枝状部は、隣接する枝状部間が所定の角度で前記中心部から延在してなり、前記中心部の中心から2πr(θ/360)の位置に分子鎖固定位置を有する樹枝状部材を、半径rの球状部材の外周に沿って延在させ、前記球状部材の、前記中心及び前記分子鎖固定位置に相当する位置に針状部材を固定し、結合角度θの分子鎖を有する分子模型を作製することが出来る。
【0006】
ところで、上記公報に記載している分子模型はその制作に時間がかかり、その為に教員が制作した分子模型を生徒に展示するに過ぎない。生徒自らが分子模型を組立て・体感して学習する時間的な余裕はない。それに、上記分子模型はコスト的にも高くなってしまい、非常に数多くの分子をこの模型を使って制作することは容易でない。一方、一旦制作した模型はそのままの形態で保存され、分解して作り直すといった学習効果を期待することは出来ない。

【特許文献1】特開2004-233900号に係る「分子模型」
【特許文献2】特開2004-309578号に係る「分子模型作製方法、及び分子模型作製用部材」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の分子模型には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、分子模型を短時間で制作することが出来、又解体して繰り返し作ることが出来る分子構造模型の制作方法を提供する。そして、化学反応が原子の配列を基にして理解できる学習教材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分子構造の模型は球体と基台とで構成され、球体は基台に貫通して設けた穴に嵌ることが出来る。球体は原子を表しており、各原子を特定する為に、表面色彩、大きさ、又は表面に記号など付している。そして、上記基台に貫通して設けた穴は球体が落下しない大きさと成っていて、穴に嵌る球体同士が接する位置に設けている。従って、穴に原子を表現する球体を嵌めることで分子構造が出来上がる。
【0009】
一方、化学反応を模型化する場合、反応前の分子構造と反応後の分子構造が理解できるように基台には各原子が嵌る穴を設けている。そして、基台の表面には化学反応の表題と化学反応式が併記され、模型と合わせて理解できる内容に構成している。ここで、原子を表す球体は一般に発泡スチロール製又は樹脂製とするが、特に限定するものではなく、基台の材質も自由である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の分子模型は穴を貫通して設けた基台と原子を表す球体から成り、該当する球体を穴に嵌めるだけで分子構造を表現する模型を簡単にしかも短時間で作ることが出来る。又、この分子構造の模型は原子を表現する球体を組み合わせて構成し、しかも基台に設けた穴に球体を嵌めるだけであるために、分解することも出来る。すなわち、分子構造を繰り返し作ることで各自の学習効果を高めることが出来る。
【0011】
そして、原子を表現する球体は色彩、大きさ、記号などにて特定されるが、その数は限られており、所定の個数の球体と基台を準備することであらゆる分子構造の模型を制作できる。一方、基台に設けた穴に球体を嵌めて構成した分子の化学反応を学習する上で効果がある。この化学反応も分解しながら繰り返し作ることが可能である。例えば、基台表面に化学反応式を表示しておくことで、これを見て穴に球体を嵌めることが出来、化学反応式の表示がない裏面を使用して復習確認を行うことも出来る。
【0012】
一方、化学反応前の分子を構成する原子と化学反応にて出来る新たな分子との間では、結び付く相手が変わるだけであり、原子の種類も個数が不変であることが一目で分かり、「質量保存の法則」の内容が体得できる優れた効果がある。又、化学反応する時、反応に関与する物質の割合は常に一定となる「定比例の法則」を理解出来、更には「倍数比例の法則」が簡単に理解できる。更に、本発明の学習教材は基台と球体で構成される為に軽く出来、コスト的には安く、又分解すればコンパクトに収納可能となる。
【実施例】
【0013】
図1は水の分子(HO)を表している模型である。同図の(a)は基台1を表し、(b)は原子を示す球体で、2は酸素原子球体、3は水素原子球体を表し、(c)は水の分子構造を示す模型である。上記基台1は厚めの紙が用いられ、1個の酸素原子穴4と2個の水素原子穴5,5を有している。そこで、基台1の酸素原子穴4には(b)に示す酸素原子を表す酸素原子球体2を嵌め、又水素原子穴5,5には水素原子を表す水素原子球体3,3を嵌めることが出来る。
【0014】
図1(c)はこのようにして出来た水の分子(HO)を表すことが出来る。ここで、酸素原子穴4及び水素原子穴5,5は酸素原子球体2及び水素原子球体3,3が嵌ると共に通過しない大きさと成っている。又酸素原子穴4に対する水素原子穴5,5の位置は、各穴に嵌った酸素原子球体2に2個の水素原子球体3,3が(c)に示すように接することが出来る位置関係に設けられている。ただし、基台1の原子穴の大きさやその位置精度、及び原子球体の大きさのバラツキの影響で原子球体が僅かな隙間を残して接しないこともある。
【0015】
そして、同図に示す紙製の基台1は前後に脚6,6を有し、下面が床やテーブル面に接しないように持ち上げられ、又両側にはリブ7,7を設けている。脚6,6は酸素原子穴4に酸素原子球体2を嵌めた場合、及び水素原子穴5,5に水素原子球体3,3を嵌めた場合に各球体が床面に接しないように下面を浮上し、同時にリブ7,7を設けることで基台1の強度・剛性が向上する。勿論、基台1は紙製に限るものではなく、樹脂を材質とした成形基台とすることもある。
【0016】
図2は二酸化炭素の分子(CO)を表している模型である。同図の(a)は基台1を表し、(b)は原子を示す球体で、2は酸素原子球体、9は炭素原子球体を表し、(c)は二酸化炭素の分子構造を示す模型である。上記基台1は1個の炭素原子穴8と2個の酸素原子穴4,4を有している。そこで、基台1の酸素原子穴4には(b)に示す酸素原子球体2を嵌め、又炭素原子穴8には炭素原子球体9を嵌めることが出来る。
【0017】
図2(c)はこのようにして出来た二酸化炭素の分子(CO)の分子構造を表している。ここで、酸素原子穴4,4及び炭素原子穴8は酸素原子球体2,2及び炭素原子球体9が嵌ると共に通過しない大きさと成っている。又炭素原子穴8に対する酸素原子穴4,4の位置は、各穴に嵌った炭素原子球体9に2個の酸素原子球体2,2が(c)に示すように接することが出来る位置関係に設けられている。
【0018】
そして、同図に示す紙製の基台1は前後に脚6,6を有し、下面が床に接しないように持ち上げられ、又両側にはリブ7,7を設けており、基台1の強度・剛性を向上させている。ところで、原子球体は発泡スチロール製で原子の種類ごとに色分けされている。例えば、酸素は赤色、水素は黄色、炭素は黒色・・・のように色分けすることで分子を構成する原子の存在が明瞭化される。発泡スチロール製の原子球体は非常に軽くて紙製の基台1に配置しても強度的には何ら問題はない。ただし、発泡スチロール製以外の原子球体を使用することもあり得るし、基台1の材質も紙製に限るものではない。
【0019】
図3は水素と酸素が化合して水となる反応式を表す為の基台である。基台1は前記図1(a)のように脚6,6、及びリブ7,7を有しているが、これらを省略した平面図として表している。同図の4は酸素原子穴、5は水素原子穴を示しており、2個の水素分子Hと酸素分子Oとが結び付いて、2個の水分子HOが出来る。ここで、水素原子穴5には水素原子球体3が嵌り、酸素原子穴4には酸素原子球体2が嵌る。このように、本発明では基台1に設けた原子穴に原子球体を嵌めることで化学反応の模型を作ることが出来、しかも分解して繰り返し作り直すことが可能である。又、同図の基板表面には各原子穴に嵌る夫々の原子球体の色彩を合わせて表示している。
【0020】
ところで、化学反応の矢印を境として反応前の酸素原子球体2,2・・の個数及び水素原子球体3,3・・の個数と、反応後の酸素原子球体2,2・・の個数及び水素原子球体3,3・・の個数は等しく成っている。化学反応によって異なる物質が出来るが、該物質を構成する原子の個数は不変であることが一目で理解できる。化学反応とは結び付く相手の原子を違わせるだけで、化学反応の前と後の総質量は変化しないことも解る。そして同図の基台1の表面には各原子穴と対を成して化学反応式が表示されている。
【0021】
図4は炭素と酸素が化合する燃焼反応式を表す為の基台である。同図の基台1は前記図1(a)のように脚6,6、及びリブ7,7を有しているが、これらを省略した平面図として表している。同図の4は酸素原子穴、8は炭素原子穴を示しており、炭素原子Cと酸素分子Oとが結び付いて、二酸化炭素COが出来る。ここで、炭素原子穴8には炭素原子球体9が嵌り、酸素原子穴4,4には酸素原子球体2,2が嵌る。
【0022】
ところで、化学反応の矢印を境として反応前の炭素原子球体9の個数及び酸素原子球体2,2の個数と、反応後の炭素原子球体9の個数及び酸素原子球体2,2の個数は等しく成っている。炭素の燃焼反応によって異なる物質が出来るが、該物質を構成する原子の個数は不変である。
【0023】
図5はメタンの燃焼反応を表す為の基台1である。この基台1も前記図1(a)のように脚6,6、及びリブ7,7を有しているが、これらを省略した平面図として表している。メタンは炭素原子の周りに4個の水素原子を有す分子構造をなし、このメタンが燃焼する場合には2個の酸素分子を必要とする。そして燃焼した後には水と二酸化炭素が出来る。同図の8は炭素原子穴、5は水素原子穴を、4は酸素原子穴を夫々示しており、水素分子Hと酸素原子Oとが結び付いて水の分子HOが出来、炭素原子Cと酸素分子Oが結び付いて二酸化炭素COが出来る。ここで、炭素原子穴8には炭素原子球体9が嵌り、水素原子穴5,5・・には水素原子球体3,3・・が嵌る。又酸素原子穴4,4・・には酸素原子球体2,2・・が嵌る。
【0024】
この化学反応の場合も、化学反応の矢印を境として反応前の炭素原子球体9の個数、酸素原子球体2,2・・の個数、及び水素原子球体5,5・・の個数と、反応後の炭素原子球体9の個数、酸素原子球体2,2・・の個数、及び水素原子球体3,3・・の個数は等しく成っていることが解る。メタンの燃焼反応によって水と二酸化炭素が出来るが、これら物質を構成する原子の個数は不変である。
【0025】
図5に示す基台1にもメタンの燃焼反応式が表示されている。生徒はこの反応式を見て炭素原子穴8、水素原子穴5,5・・、及び酸素原子穴4,4・・に炭素原子球体9、水素原子球体3,3・・、及び酸素原子球体2,2・・を嵌めることで、繰り返し学習することが出来る。そして、習得した後は基台1を裏返して、メタン燃焼反応式が表示されていない状態で学習することも可能である。紙製の基台1を裏返しにすれば、リブ7,7が脚6,6として機能するために、上記各原子球体を原子穴に嵌めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】水の分子構造模型を示す実施例。
【図2】炭素の分子模型を示す実施例。
【図3】水素と酸素の化合を示す模型。
【図4】炭素の燃焼反応を示す模型。
【図5】メタンの燃焼反応を示す模型。
【符号の説明】
【0027】
1 基台
2 酸素原子球体
3 水素原子球体
4 酸素原子穴
5 水素原子穴
6 脚
7 リブ
8 炭素原子穴
9 炭素原子球体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4