TOP > 国内特許検索 > 赤外ガラス蛍光体及び半導体発光素子で構成した光干渉断層撮影装置用光源。 > 明細書

明細書 :赤外ガラス蛍光体及び半導体発光素子で構成した光干渉断層撮影装置用光源。

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4982751号 (P4982751)
公開番号 特開2008-185378 (P2008-185378A)
登録日 平成24年5月11日(2012.5.11)
発行日 平成24年7月25日(2012.7.25)
公開日 平成20年8月14日(2008.8.14)
発明の名称または考案の名称 赤外ガラス蛍光体及び半導体発光素子で構成した光干渉断層撮影装置用光源。
国際特許分類 G01N  21/01        (2006.01)
G01N  21/17        (2006.01)
FI G01N 21/01 D
G01N 21/17 630
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2007-017260 (P2007-017260)
出願日 平成19年1月29日(2007.1.29)
審査請求日 平成21年12月7日(2009.12.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】渕 真悟
【氏名】竹田 美和
【氏名】阪野 紋子
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
審査官 【審査官】横尾 雅一
参考文献・文献 特開2001-255265(JP,A)
特開2003-243724(JP,A)
特開2006-193399(JP,A)
特開2006-083259(JP,A)
特開2006-213910(JP,A)
調査した分野 G01N 21/00-21/61
C09K 11/00-11/89
H01L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
光干渉断層撮影装置用光源において、
青緑色の励起光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の発光面に配置され、Yb2O3 粉末と、Bi2O3 粉末と、H3BO3 粉末とを溶融させた後、急冷して得られたガラスであって、前記励起光の入射により、スペクトルが、前記励起光のスペクトルの半値幅よりも広い半値幅を有し、ガウシアン類似形状を有し、中心波長が近赤外領域に位置する光を放射するガラス蛍光体と、
を有し、
生体における光干渉断層撮影に用いられる
ことを特徴とする光干渉断層撮影装置用光源。
【請求項2】
光干渉断層撮影装置用光源において、
青緑色の励起光を発光する半導体発光素子と、
前記半導体発光素子の発光面に配置され、Yb2O3 粉末と、Nd2O3 粉末と、Bi2O3 粉末と、H3BO3 粉末とを溶融させた後、急冷して得られたガラスであって、前記励起光の入射により、スペクトルが、前記励起光のスペクトルの半値幅よりも広い半値幅を有し、ガウシアン類似形状を有し、中心波長が近赤外領域に位置する光を放射するガラス蛍光体と、
を有し、
生体における光干渉断層撮影に用いられる
ことを特徴とする光干渉断層撮影装置用光源。
【請求項3】
前記半導体発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする請求項1 又は請求項2に記載の光干渉断層撮影装置用光源。
【請求項4】
前記半導体発光素子は、スーパールミネッセントダイオードであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光干渉断層撮影装置用光源。
【請求項5】
前記半導体発光素子は、レーザダイオードであることを特徴とする請求項1 又は請求項2に記載の光干渉断層撮影装置用光源。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮影(OCT: Optical Coherence Tomography)装置に用いる光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
OCT装置はマイケルソン干渉計を利用した断層撮影技術であり、例えば眼科用OCT装置が実用化されている。OCTは、従来のX線断層撮影技術や超音波断層撮影技術よりも遙かに高分解能であるという特徴を有している。一般的には、X線断層撮影では数mm程度、超音波断層撮影でも数百μm程度であるのに対し、OCTでは十μm~数十μmという分解能である。また、近赤外光を用いるために、X線断層撮影よりも安全性が高いという特徴も有している。さらに、X線断層撮影のように大型の装置を要さないという利点も有している。
【0003】
OCT装置は、マイケルソン干渉計を利用した断層撮影技術であるから、その分解能Δzは以下の式で表される。
【0004】
【数1】
JP0004982751B2_000002t.gif
ここで、Δλは光源のスペクトルの半値幅、λcは光源の中心波長である。したがって、上式 より、光源の半値幅が広くなればなるほどOCT装置の分解能が向上することがわかる。また、中心波長が短いほど分解能が高いことも分かる。なお、上式は、光源の発光スペクトルがガウシアン形状であることを仮定している。
【0005】
さて、OCT装置を我々人間のような生体材料に適用しようとすると、生体による光の吸収が重要な因子となる。光が生体材料に吸収されてしまっては、生体に光が侵入できないため、結果として、断層撮影ができなくなってしまう。そこで、できるだけ短波長で、生体材料による吸収が少ない波長領域を選択する必要がある。生体を構成する主要成分は水であるが、水の吸収は1μm付近で極小となる。したがって、中心発光波長が1μm付近、かつ、広帯域でガウシアン形状の光源が切望されている。
【0006】
現在、OCT装置の光源には、例えば、非特許文献1、2及び特許文献1、2に記載されているように、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode: SLD)が、非常に良く用いられている。また、通常の発光ダイオード(Light Emitting Diode: LED)も用いられている。さらに、スーパーコンテニューム光のように、ファイバーを利用した広帯域光源も知られている。また、タングステンライトのような熱光源や、複数の光源を合成する手法、フェムト秒レーザを用いる方法も知られている。
【0007】

【非特許文献1】Institute of Physics Publishing, Report on Progress in Physics, Vol. 66 (2003) pp.239-303
【特許文献1】特開2006-64610号公報
【特許文献2】特開2003-35660号公報
【非特許文献2】Optics Letters, Vol.24 (2001) pp.205-207
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの種々の光源は、OCT用光源としては一長一短である。例えば、LEDやSLDのような半導体発光素子は、安価、小型、簡単な構成で取り扱いが容易であるが、一般に半値幅がそれほど大きくない。一方、ファイバーを利用した広帯域光源は、一般に、大型、高価、複雑な構成で取り扱いが難しいことが多い。また、ファイバーを利用した広帯域光源では、スペクトル形状がガウシアン形状ではないことが多く、ノイズ成分が問題になることも指摘されている。タングステンランプは、簡便で安価であるが、強度が足りず、空間的コヒーレンスに劣るという問題点が挙げられる。複数の光源を合成する方法は、安価なLEDやSLDを用いて、それほど複雑でない構成であるが、LEDの発光強度をうまく制御しなければ所望のスペクトルにならない。また、合成光源のコヒーレンス関数のサイドローブによりノイズ成分が発生することが知られている。このように、近赤外線領域で、光源の半値幅が広く、かつ、ガウシアン類似形状のスペクトル、また、産業的観点からは、安価・小型・簡単な構成、取り扱いが容易という特徴を有する光源は存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、(1)半値幅の広い赤外ガラス蛍光体と半導体発光素子とを組み合わせることにより、光干渉断層撮影装置用光源に関する上記課題を解決した。
【0010】
具体的には、(2)赤外ガラス蛍光体中に、Ybイオンが含まれていることを特徴とする。また、(3)赤外ガラス蛍光体中に、YbイオンとNdイオンが含まれていることを特徴とする。さらに、(4)赤外ガラス蛍光体は、Yb2O3を含むことを特徴とする。そして、(5)赤外ガラス蛍光体は、Yb2O3及びNd2O3を含むことを特徴とする。また、(6)赤外ガラス蛍光体は、Bi2O3及びB2O3からなるガラスであることを特徴とする。一方、(7)半導体発光素子は、発光ダイオードであることを特徴とする。また、(8)半導体発光素子は、スーパールミネッセントダイオードであることを特徴とする。さらに、(9)半導体発光素子は、レーザダイオードであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、安価、小型、取り扱いが容易な半導体発光素子の特徴を損なうことなく、かつ簡単な構成を維持しつつ、半値幅の広いスペクトルを実現できる。また、赤外ガラス蛍光体と半導体発光素子との組み合わせは、いわば白色LEDのようなものでもあり、単一デバイスとして光源として取り扱うことができ、非常に簡便である。その結果、既存のOCT装置の光源だけを取り代えることにより、高分解能のOCT装置を実現できる。さらに、白色LEDの生産技術を利用可能であり、工業プロセス上有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に実施例1を示す。
【実施例1】
【0013】
Yb2O3粉末と、Bi2O3粉末と、H3BO3粉末を、Yb2O3と、Bi2O3と、B2O3とが5.1mol%、47.5mol%、47.4mol%となるように秤量したのち、十分混合した。その後、混合した粉末を坩堝に投入し、1000℃で10分間溶融した。坩堝内の材料が溶融していることを確認後、ステンレス上に流し出し、ステンレス板でプレスして急冷し、ガラス蛍光体を作製した。試料の外観はガラス状であり、Bi2O3とB2O3のモル比から、作製した蛍光体はガラスであると考えられる。
【0014】
作製したガラス蛍光体を、波長488nmの光で励起して得られた発光スペクトルを図1に示す。図1からわかるように、中心発光波長が1026nm、半値幅72nmのガウシアン類似形状の発光スペクトルが得られた。中心発光波長は目的の波長領域に存在し、半値幅72nmは既存の半導体発光素子の半値幅よりも大きい。また、この発光スペクトルから計算される分解能は6.5μmであり、十分分解能が高いものである。
【0015】
ここで、この発光スペクトルについて考察する。この発光スペクトルは、発光波長領域から、Ybイオン特有の、2F5/22F7/2の遷移による発光であると言える。また、Ybイオンのような希土類イオンは、一般に、結晶中で非常に鋭いスペクトルを示すことが知られているが、本発明では、ガラスを母体材料として用いることによって、72nmという広帯域発光を実現することができた。これは、希土類イオンの発光は、結晶中では均一なシュタルク分裂により鋭い発光を示すのに対し、ガラスのような非晶質中では、シュタルク分裂が不均一となり、その結果、種々のシュタルク分裂が合成され、広帯域発光になるからである。したがって、本発明は、Ybイオンとガラスを用いることによって、1μm付近で広帯域の発光を実現できたのである。また、Yb2O3粉末を6.1mol%、6.9mol%とした場合でも同様のスペクトルが得られている。
【0016】
なお、Ybイオンを添加した赤外蛍光体は、特許文献3~5に記載されているように、古くから知られている。しかしながら、無機物を母体とした蛍光体は、母体材料が結晶質であり、非常に鋭い発光線を用いることを前提としている、つまり、半値幅の広い発光を得るということには、まったく無関心である。また、有機物を母体にした蛍光体でも、50nm程度の半値幅しか得られていない。さらに、非特許文献3、4に記載されているように、Yb添加ガラスも知られているが、これは、蛍光体として用いることは想定されておらず、半値幅を広げるという技術的発想が存在しないため、本発明とは無関係である。
【0017】
<patcit num="3"><text>特開2003-082346号公報</text></patcit><patcit num="4"><text>米国特許明細書第4202491号</text></patcit><patcit num="5"><text>特開平08-151545号公報</text></patcit><nplcit num="3"><text>Chemical Physics Letters, Vol. 382 (2003) pp.481-488</text></nplcit><nplcit num="4"><text>Journal of Non-Crystalline Solid, Vol.88 (1986) pp.66-82</text></nplcit>
【実施例2】
【0018】
Yb2O3粉末と、Nd2O3粉末と、Bi2O3粉末と、H3BO3粉末を、Yb2O3と、Nd2O3と、Bi2O3と、B2O3とが5.0mol%、2.0mol%、44.4mol%、48.6mol%となるように秤量したのち、十分混合した。その後、実施例1と同様にガラス蛍光体を作製した。実施例1と同様に、試料外観はガラス状であった。また、Bi2O3と、B2O3とのモル比は、一般に、ガラスが作製される組成範囲である。
【0019】
作製した試料を波長488nmの光で励起して得られた発光スペクトルを図2に示す。図2からわかるように、中心発光波長1026nm、半値幅84nmのガウシアン類似形状のスペクトルが得られた。この発光は、中心発光波長は実施例1と同様に目的の波長領域に存在し、実施例1よりも半値幅が拡大したガウシアン類似形状のスペクトルである。また、図2に示した発光スペクトルから計算される分解能は5.5μmとなり、非常に高分解能となる。
【0020】
ここで、半値幅拡大の原因について考察する。Ndイオンは、900nm付近(4F3/24I9/2)、及び1064nm付近(4F3/24I11/2)に発光を示すため、Ybイオンの発光にNdイオンの発光が重なった結果、半値幅が拡大したと考えられる。実際に、図2を見ると、900nm付近に発光が見られ、1060nm付近にスペクトルの盛り上がりが見られることから、この考えは正しいと推論される。また、発光強度もNdイオンを添加した方が強い。したがって、Ybイオン単独でも広帯域光源として用いることができるが、Ybイオンに、さらにNdイオンを共添加することが非常に有効であることがわかる。
【0021】
なお、Yb2O3と、Nd2O3と、Bi2O3と、B2O3とを5.0mol%、2.9mol%、43.9mol%、48.1mol%とした場合や、Yb2O3とNd2O3とを、ほぼ5.0mol%、3.0mol%に固定したまま、Bi2O3とB2O3との比率を、“91.9mol%と0mol%”、“82.4mol%と9.5mol%”、“73.2mol%と18.8mol%”、“64.5mol%と27.3mol%”、“55.2mol%と33.7mol%”、“36.6mol%と55.4mol%”と変化させた場合も同様のスペクトルが得られている。
【0022】
なお、非特許文献5、6に記載されているように、NdイオンやYbイオンを共添加したガラスは報告されているが、これらの文献はレーザ応用や太陽電池、物理学的知見に興味を持っていると記載されているものの、蛍光体として用いることは記載されていない。さらに、半値幅を広げるという技術的思想は持っていないため、本発明と異なるものである。
【0023】
<nplcit num="5"><text>Journal of Physics and Chemistry of Solids, Vol. 46 (1985) pp. 1083-1092</text></nplcit><nplcit num="6"><text>Journal of Non-Crystalline Solids, Vol. 273 (2000) 233-238</text></nplcit>
【実施例3】
【0024】
実施例2で得られたガラス蛍光体を、中心発光波長490nmの青緑色のLED上に配置し、ガラス蛍光体からの発光を、石英系光ファイバーを通して測定した発光スペクトルを図3に示す。石英系光ファイバーとの結合が最適化されていないため、強度が多少減少しているものの、図2の発光スペクトルと同様であり、中心発光波長は1023nm、半値幅は88nmであった。また、この発光スペクトルから計算される分解能は5.2μmとなり、非常に高分解能である。
【0025】
このことから、本発明のガラス蛍光体は、半導体発光素子の中でも、一般的に強度が弱いLEDでも十分励起でき、光ファイバーとも結合できる蛍光体であることがわかった。したがって、容易にOCT装置に組み込むことができる。また、LEDよりも発光強度が強い半導体発光素子であるSLDやレーザダイオード(Laser Diode :LD)を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】Yb2O3と、Bi2O3と、B2O3とが5.1mol%、47.5mol%、47.4mol%となるように秤量して作製した赤外ガラス蛍光体の発光スペクトル。
【図2】Yb2O3と、Nd2O3と、Bi2O3と、B2O3とが5.0mol%、2.0mol%、44.4mol%、48.6mol%となるように秤量して作製した赤外ガラス蛍光体の発光スペクトル。
【図3】Yb2O3と、Nd2O3と、Bi2O3と、B2O3とが5.0mol%、2.0mol%、44.4mol%、48.6mol%となるように秤量して作製した赤外ガラス蛍光体を、中心発光波長490nmの青緑色のLED上に配置し、赤外ガラス蛍光体からの発光を、石英系光ファイバーを通して測定した発光スペクトル。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2