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明細書 :薄膜電極の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4257437号 (P4257437)
公開番号 特開2008-181906 (P2008-181906A)
登録日 平成21年2月13日(2009.2.13)
発行日 平成21年4月22日(2009.4.22)
公開日 平成20年8月7日(2008.8.7)
発明の名称または考案の名称 薄膜電極の製造方法
国際特許分類 H01L  21/285       (2006.01)
H01L  21/28        (2006.01)
C23C  14/14        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
H05B  33/26        (2006.01)
H05B  33/10        (2006.01)
C23C  14/24        (2006.01)
C23C  14/34        (2006.01)
C30B  29/16        (2006.01)
C30B  23/08        (2006.01)
G01N  27/30        (2006.01)
FI H01L 21/285 Z
H01L 21/28 301R
C23C 14/14 D
H05B 33/14 A
H05B 33/26 Z
H05B 33/10
C23C 14/24 S
C23C 14/34 S
C30B 29/16
C30B 23/08
G01N 27/30 B
請求項の数または発明の数 7
全頁数 7
出願番号 特願2007-012113 (P2007-012113)
出願日 平成19年1月23日(2007.1.23)
審査請求日 平成19年1月23日(2007.1.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】岸岡 真也
個別代理人の代理人 【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
審査官 【審査官】長谷山 健
参考文献・文献 特開平10-125930(JP,A)
特開平06-188241(JP,A)
調査した分野 H01L 21/285
H01L 21/28
H01L 51/50
C23C 14/14
C23C 14/24
C23C 14/34
C30B 23/08
C30B 29/16
G01N 27/30
H05B 33/10
H05B 33/26
特許請求の範囲 【請求項1】
へき開性を有する単結晶状態の(100)配向面に導電性薄膜を形成した後に、該導電性薄膜を高分子接着剤層を介して基板に接合し、前記(100)配向面を剥離することを特徴とする薄膜電極の製造方法。
【請求項2】
前記へき開性を有する単結晶状態の(100)配向面が、天然マイカのへき開面又は鏡面仕上されたシリコン単結晶面であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜電極の製造方法。
【請求項3】
前記導電性薄膜が金属又は金属酸化物により構成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜電極の製造方法。
【請求項4】
前記金属又は金属酸化物が、貴金属又は貴金属酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の薄膜電極の製造方法。
【請求項5】
前記導電性薄膜を蒸着又はスパッタリングにより形成することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の薄膜電極の製造方法。
【請求項6】
前記高分子接着剤がエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の導電性薄膜の製造方法。
【請求項7】
基板がガラス、石英、セラミックス、プラスチックから選択されたものであることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の薄膜電極の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学センサー用電極、有機EL素子用電極、表面プラズモン共鳴バイオセンサー等に使用される薄膜電極を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金や白金等の貴金属をガラスや石英からなる基板上に、真空蒸着、スパッタリング等により堆積させた薄膜は、光透過性電極や高度な平滑性或いは配向性を有する電極として広く使用されている。しかしながら、貴金属とガラスや石英等の絶縁性基板は密着性が低くこれらの基板表面に直接薄膜を堆積させた電極は使用に耐えないという問題がある。したがって、薄膜との密着性を改善するために、基板表面に1)金属酸化物や遷移金属からなる薄い下地層や、2)有機シランカップリング剤からなる下地層を設け、その上に電極用金属を堆積させるといった手法がとられている。
【0003】
しかしながら、上記1)では真空を破らずに2層の金属を堆積させる必要があり、高価な装置を必要とする。また、金の下地として一般に使用されるクロムは電気化学的に金よりも溶解しやすいために、電気化学測定で使用できる電位幅を狭めるという欠点がある(例えば、非特許文献1、2参照)。そして、下地との合金化を避けるために、薄膜を構成する金属の厚さを厚くすると、透明性が失われるという問題がある。また、上記2)では、再現性よく目的とする性状を有する薄膜電極を得ることが困難である。

【非特許文献1】「(続)電気化学測定法」電気化学会編、第75~82頁、1995年、財団法人電気化学会発行
【非特許文献2】Anal.Chem. 1991, 63,85-88
【0004】
一方、転写により薄膜電極を製造する方法も種々提案されており、例えば、離型剤をコーティングした基材上に形成した薄膜導電性物質からなる転写箔の表面に接着剤層を設け、絶縁性基体と対面させて、加熱可能な凸版金型にてホットスタンピングすることによって、絶縁性基体面上に薄膜導電性物質からなる電極を転写により形成する方法がある(特許文献1)。また、透光性の基板上に分離層を介して導電性薄膜(被転写層)を形成し、基板と反対側に転写体を接合した後に、分離層に照射光を照射して剥離を生ぜしめ、被転写層を基板から離脱させて転写体に転写することにより、薄膜電極を製造する方法も知られている(特許文献2)。

【特許文献1】特開平10-232215号公報
【特許文献2】特開平10-125930号公報
【0005】
しかしながら、これらの特許文献に記載された薄膜電極の製造方法では、導電性薄膜を形成する基体上に離型剤をコーティングしたり、分離層を設けるといった工程を必要とするものであり、薄膜電極の製造工程が複雑となり製造コストも高くなるなどの問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明はこれら従来技術の問題点を解消して、基板との密着性が良好で、しかも光透過性に優れかつ高度な平滑性や配向性を有する薄膜電極を、安価な製造装置を使用して簡単な工程で、低コストで製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の課題を解決するために次の1~7の構成を採用する。
1.へき開性を有する単結晶状態の(100)配向面に導電性薄膜を形成した後に、該導電性薄膜を高分子接着剤層を介して基板に接合し、前記(100)配向面を剥離することを特徴とする薄膜電極の製造方法。
2.前記へき開性を有する単結晶状態の(100)配向面が、天然マイカのへき開面又は鏡面仕上されたシリコン単結晶面であることを特徴とする1に記載の薄膜電極の製造方法。
3.前記導電性薄膜が金属又は金属酸化物により構成されたものであることを特徴とする1又は2に記載の薄膜電極の製造方法。
4.前記金属又は金属酸化物が、貴金属又は貴金属酸化物であることを特徴とする3に記載の薄膜電極の製造方法。
5.前記導電性薄膜を蒸着又はスパッタリングにより形成することを特徴とする1~4のいずれかに記載の薄膜電極の製造方法。
6.前記高分子接着剤がエポキシ樹脂接着剤であることを特徴とする1~5のいずれかに記載の導電性薄膜の製造方法。
7.基板がガラス、石英、セラミックス、プラスチックから選択されたものであることを特徴とする1~6のいずれかに記載の薄膜電極の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の製造方法では必要とされていた高価な製造装置や複雑な工程を使用せずに、安価な製造装置を使用して簡単な工程で、光が充分に透過する平滑な薄膜金属配向膜を、大きな密着強度を保ちながらガラス、石英等の絶縁性基板上に形成した薄膜電極を低コストで得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の薄膜電極の製造方法の具体的な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、へき開性を有する単結晶状態の(100)配向面として天然マイカのへき開面を使用して、本発明の薄膜電極の製造工程を説明する模式図である。本発明の製造方法は、基本的に次の(1)~(3)の工程からなる。
(1)はじめに、天然マイカのへき開面1上に蒸着、スパッタリング等の方法により、金属又は金属酸化物により構成された導電性薄膜2を形成する〔図1(A)参照〕。
(2)ついで、導電性薄膜2の表面に高分子接着剤層3を設け〔図1(B)〕、該接着剤層3を介してガラス、石英等からなる基板4を接合する〔図1(C)〕。
(3)得られた接合体から天然マイカのへき開面1を剥離し、基板4の表面に導電性薄膜2が強固に密着した薄膜電極を得る〔図1(D)〕。
また、上記(2)の別法として、あらかじめ基板4の表面に高分子接着剤層3を設けておき、この高分子接着剤層3を導電性薄膜2の表面に接合するようにしてもよい。
【0010】
天然マイカのへき開面は、高度に平滑な単結晶状態の(100)配向面を有することから、その表面に蒸着やスパッタリング等により金属の薄膜を形成すると、エピタキシャルに成長して金属の表面は平滑な(111)配向膜となることが知られている。しかしながら、従来の方法では薄膜形成後に500℃以上の高温で、アニール処理をすることが必要であった。本発明によれば、導電性薄膜2を高分子接着剤を介して基板4に接合した後に、マイカのへき開面1を剥離することによって、高温でのアニール処理を行なうことなく平滑な表面を有する導電性薄膜2を設けた薄膜電極を得ることができる。また、天然マイカのへき開面に代えて、鏡面仕上された(100)シリコン単結晶面を使用した場合にも、同様の性状を有する薄膜電極を得ることができる。
また、本発明で導電性薄膜2を形成する装置としては特に制限はなく、例えば電子顕微鏡試料作製用イオンコーターのような安価な装置を使用することができるので、製造コストを大幅に低減することが可能となる。
【0011】
導電性薄膜2を形成する金属としては特に制限はないが、金、白金等の貴金属を使用することが好ましい。
また、高分子接着剤3としては、エポキシ系、アクリレート系、シリコーン系等通常の接着剤はいずれも使用可能であるが、エポキシ系接着剤を使用した場合には、基板4と導電性薄膜2の密着性が大きくなるので、好ましい。
【実施例】
【0012】
つぎに、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
へき開した天然マイカを、通常の電子顕微鏡試料作製用イオンコーターにセットし、表面に定法により金薄膜をスパッタ製膜するにあたって、イオン電流5mAでスパッタ時間を2分から20分の間で変化させることにより、膜厚の異なる薄膜を得た。
清浄な石英基板(1cm×1cm)表面に、市販のエポキシ樹脂接着剤「epo-tek302-1」を10μL塗布し、所定の大きさに切断した上記で得られた金薄膜/マイカ複合体を、金薄膜面が接着剤と接触するように石英基板上に載置した後に、80℃で3時間加熱してエポキシ樹脂接着剤を硬化させた。ついで、粘着テープをマイカ側に付着させてマイカを剥ぎ取ることにより、石英基板上に金薄膜が強固に密着した薄膜電極を得た。このマイカの剥ぎ取りは、テトラヒドロフランに浸漬することによっても行うことができる。また、薄膜電極表面が異物の付着や酸化等により変質するのを防止するには、マイカの剥ぎ取りは電極の使用直前に行うことが好ましい。
【0013】
得られた薄膜電極の性状について、下記の試験方法を用いて評価した。
(密着性の評価)
JIS 5600-5-6、塗膜の機械的性質、付着性(クロスカット法)に準じて、次のようにして試験を行なった。
金薄膜の表面に1mm間隔で縦横10本の切込みを入れ、粘着テープを付着後剥離させて、剥離の程度を6段階で評価した。実施例1で得られた膜厚20nmの金薄膜は、分類0(カットの縁が滑らかで、どの格子の目にも剥がれがない)に該当するものであり、極めて密着性が高いと判定された。
【0014】
(電気化学特性)
金電極の電気化学的特性評価法として一般に用いられる、0.5M硫酸水溶液中での酸化皮膜生成、酸化皮膜脱離についての電流-電位曲線測定を行った結果を図2に示す。
この測定は、上記実施例1で得られた膜厚が20nmの金薄膜を有する電極を、0.5M硫酸水溶液中で、ポテンショスタット(北斗電工HA-301)、ファンクションジェネレーター(北斗電工HB-104)、X-Yレコーダー(理研電子D42F)を使用し、白金線を補助電極に、銀塩化銀電極を基準電極とした3電極式セルによるサイクリックボルタンメトリーとして行った。掃引速度は10mVs-1、電位は標準水素電極基準に変換して表示した。図2の左側(0.5μAスケール)は、第1回目の掃引結果を示し、右側(10μAスケール)は、第2回目以降の掃引結果を示す。また、太い矢印は(111)に特有の挙動を示すものである。
この結果によれば、膜厚20nmの金薄膜でも、硫酸水溶液中で安定に作動することが確認された。また、この電流-電位曲線は、金(111)単結晶電極で報告されているものと極めて類似したプレ酸化ピークを示したことから、(111)配向しているものであるといえる。
【0015】
(平滑性)
得られた金薄膜表面について、原子間力顕微鏡(AFM)により測定した結果を図3に示す。この結果を、市販の90%以上の(111)配向面を有する金薄膜(田中貴金属製)についてAFMにより測定した結果(図4参照)と比較したところ、本発明により作製した金薄膜では凹凸はみられず、市販品よりも平滑な表面を持つことが判明した。なお、図3の縦軸はフルスケールで6.9nm、図4の縦軸はフルスケールで48nmである。
また、得られた金薄膜について、X線反射率(X-ray Reflectivity:XRR)法により測定した結果を図5に示す。シミュレーションによる解析から、金薄膜の密度として19gcm-3、スパッタ時間2分のサンプルに対して膜厚12.9nm、表面ラフネスのRMS(Root mean squere:二乗平均)として0.28nmを得たことから、極めて薄く平滑な表面を有することが判明した。
【0016】
(実施例2)
上記実施例1において、へき開した天然マイカに代えて鏡面仕上された(100)シリコン単結晶面を使用した以外は、実施例1と同様に処理することによって、実施例1と同様に石英基板上に金薄膜が強固に密着した薄膜電極を得た。
この薄膜電極を使用して、同様に電流-電位曲線測定を行った結果を図6に示す。図6は、実施例1に係る図2と極めて類似したものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の薄膜電極の製造工程を説明する模式図である。
【図2】実施例1の薄膜電極について電流-電位曲線測定を行った結果を示す図である。
【図3】実施例1の薄膜電極についてAFMにより測定した結果を示す図である。
【図4】市販の金薄膜についてAFMにより測定した結果を示す図である。
【図5】実施例1で得られた金薄膜についてX線反射率法による測定結果を示す図である。
【図6】実施例2の薄膜電極について電流-電位曲線測定を行った結果を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 天然マイカのへき開面
2 導電性薄膜
3 高分子接着剤層
4 基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5