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明細書 :炭素ナノ繊維の表面積制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4613309号 (P4613309)
公開番号 特開2006-193836 (P2006-193836A)
登録日 平成22年10月29日(2010.10.29)
発行日 平成23年1月19日(2011.1.19)
公開日 平成18年7月27日(2006.7.27)
発明の名称または考案の名称 炭素ナノ繊維の表面積制御方法
国際特許分類 D01F   9/127       (2006.01)
FI D01F 9/127
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2005-004033 (P2005-004033)
出願日 平成17年1月11日(2005.1.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 carbon2004(2004年7月11-16日)で発表
審査請求日 平成19年12月28日(2007.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
発明者または考案者 【氏名】尹 聖昊
【氏名】持田 勲
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】平井 裕彰
参考文献・文献 特開2004-122031(JP,A)
調査した分野 D01F9/08-9/32
特許請求の範囲 【請求項1】
熱処理炉内にCu-Ni合金触媒を装入し、炭素を含有する反応ガス中にて所定の反応温度で反応させることによって炭素ナノ繊維を製造するにあたり、
前記Cu-Ni合金触媒は、Cu-Ni窒化物をカーボンブラック上に担持した後に大気中でカーボンブラックを燃焼させて消失させる、いわゆる空気燃焼法によって酸化物の微粒子を生成させた後、これを還元し微粒金属化して形成し、
Cu-Ni合金触媒の組成比、反応ガスおよび/または反応温度を変化させることにより、炭素ナノ繊維の比表面積を23~766m/gの範囲内の特定値に制御することを特徴とする炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【請求項2】
Cu-Ni合金触媒は、Cu/Ni組成比が質量比で2/8~8/2の範囲であることを特徴とする請求項1記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【請求項3】
反応ガスは、エチレンと水素の混合ガスであり、この混合ガス中のエチレン/水素組成比が体積百分率で100/0~5/95の範囲であることを特徴とする請求項1または2記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【請求項4】
反応温度は、450~620℃の範囲であることを特徴とする請求項1、2または3記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【請求項5】
炭素ナノ繊維は、クロス断面形状を有する請求項1~のいずれか1項記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【請求項6】
炭素ナノ繊維は、円形断面形状を有する請求項1~のいずれか1項記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素ナノ繊維の表面積制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素ナノ繊維(繊維状ナノ炭素やカーボンナノファイバーともいう。)は、カーボン材料の特異な形態をとして認められている。
【0003】
本発明者らは、炭素ナノ繊維の構造についてさらに詳細に検討し、特許文献1において、図1に示すように、炭素ナノ繊維1が、炭素ヘキサゴナル網面2の積層体からなる炭素ナノ繊維素3を単位として、かかる炭素ナノ繊維素3を、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成されていることを開示した。

【特許文献1】特開2003-342839号公報
【0004】
また、炭素ナノ繊維の物理的特性、例えば比表面積は、炭素ナノ繊維素の生成条件等によって大きく異なってくるが、かかる比表面積を制御する方法を開示した公知文献は、現状では見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、炭素ナノ繊維の生成条件を適正に制御することにより、所望の比表面積を持つ炭素ナノ繊維の生成を可能とした炭素ナノ繊維の表面積制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明の要旨構成は、以下のとおりである。
(1)熱処理炉内にCu-Ni合金触媒を装入し、炭素を含有する反応ガス中にて所定の反応温度で反応させることによって炭素ナノ繊維を製造するにあたり、前記Cu-Ni合金触媒は、Cu-Ni窒化物をカーボンブラック上に担持した後に大気中でカーボンブラックを燃焼させて消失させる、いわゆる空気燃焼法によって酸化物の微粒子を生成させた後、これを還元し微粒金属化して形成し、Cu-Ni合金触媒の組成比、反応ガスおよび/または反応温度を変化させることにより、炭素ナノ繊維の比表面積を23~766m/gの範囲内の特定値に制御することを特徴とする炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【0007】
(2)Cu-Ni合金触媒は、Cu/Ni組成比が金属質量比で2/8~8/2の範囲であることを特徴とする上記(1)記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【0008】
(3)反応ガスは、エチレンと水素の混合ガスであり、この混合ガス中のエチレン/水素組成比が体積百分率で100/0~5/95の範囲であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【0009】
(4)反応温度は、450~620℃の範囲であることを特徴とする上記(1)、(2)または(3)記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【0012】
(5)炭素ナノ繊維は、クロス断面形状を有する上記(1)~()のいずれか1項記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【0013】
(6)炭素ナノ繊維は、円形断面形状を有する上記(1)~()のいずれか1項記載の炭素ナノ繊維の表面積制御方法。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、炭素ナノ繊維の生成構造を適正に制御することにより、所望の比表面積をもつ炭素ナノ繊維の生成が可能になった。
例えば、炭素ナノ繊維を活性炭のように高表面積を利用する用途に使用する場合には、比表面積を大きくすることができるので、硫黄酸化物や窒素酸化物のような有害ガスの吸着能力を高めることができる。
また、炭素ナノ繊維を高分子複合材料のフィラーのような用途に使用する場合には、高分子を混合する時溶媒の炭素ナノ繊維への吸収を最小限に抑制するために比表面積を小さくすることができるので、製造した高分子複合材料の溶媒吸収、脱離による複合材料の機械的物性の劣化を防ぐことができる。即ち、炭素ナノ繊維の応用によって物性を最適化制御し、最大応用物性の発揮が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明は、一般の熱処理炉内に一定量のCu-Ni合金触媒を装入し、炭素を含有する反応ガス中にて所定の反応温度で反応させることによって炭素ナノ繊維を製造するにあたり、炭素ナノ繊維の比表面積を制御する方法であって、具体的には、Cu-Ni合金触媒の組成比、反応ガスおよび/または反応温度を変化させることにより、炭素ナノ繊維の比表面積を23~766m/g の範囲内の特定値に制御することにある。
【0016】
炭素ナノ繊維1は、図1に示すように、2~12層の炭素ヘキサゴナル網面2の積層体からなる基本構造単位である炭素ナノ繊維素3を、前記炭素ヘキサゴナル網面2の少なくとも一端が炭素ナノ繊維1の側周面1aを形成するように、繊維軸方向Lに沿って複数積層して形成した炭素ナノ繊維素群4を、さらに、繊維軸方向Lに 対して一定の角度で複数積層して形成されている。
【0017】
炭素ナノ繊維の積層構造としては、代表的には3つの構造が挙げられ、具体的には、図2(a)~(c)に示すように、繊維軸に対し(炭素ナノ繊維を構成する一単位である)炭素ナノ繊維素を直交配列したプレートリット(Platelet)構造(図2(a))、繊維軸に対し炭素ナノ繊維素を平行配列したチューブラ(Tubular)構造(図2(b))、そして、繊維軸に対し炭素ナノ繊維素を矢筈状の傾斜配列にしたへリングボーン(Herringbone)構造(図2(c))である。これらの中で、前記炭素ヘキサゴナル網面2の両端2a、2bが炭素ナノ繊維1の側周面1aを形成するのは、プレートリット構造の場合であり、前記炭素ヘキサゴナル網面2の一端2aが炭素ナノ繊維1の側周面1aを形成するのは、へリングボーン構造の場合である。
【0018】
本発明者らは、炭素ナノ繊維の比表面積が、Cu-Ni合金触媒の組成比、触媒の調製法、反応ガスおよび反応温度に強く依存することを見出した。
すなわち、Cu-Ni合金触媒の組成比、 触媒の調製法、反応ガスおよび反応温度のいずれかを異なる条件で生成した炭素ナノ繊維は、炭素ナノ繊維の繊維径はほとんど同じであるにもかかわらず、異なる比表面積を有することがわかった。
【0019】
図3は、炭素ナノ繊維の生成装置の概略を示したものである。
図4は、熱処理炉10(水平炉)の石英管11(内径45mm)内に載置された石英ボート12内に、組成比の異なる種々のCu-Ni合金触媒13を30mg装入し、80体積%エチレンと20体積%水素の混合ガスからなる反応ガスを熱処理炉内に流速200ml/minで導入して580℃で1時間反応させることによって炭素ナノ繊維を生成したときの、Cu-Ni合金触媒の組成比と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示したものを示す。なお、上記反応ガスの導入は、予め水素とヘリウムの混合ガスを熱処理炉内に導入し還元雰囲気にしてから行った。また、比表面積の測定は、窒素BET法によって行った。
【0020】
図4の結果から、Cu-Ni合金触媒のCu/Ni組成比を変化させることによって、炭素ナノ繊維の比表面積を制御できることがわかる。
【0021】
なお、Cu-Ni合金触媒は、Cu/Ni組成は、質量比で2/8~8/2の範囲であることが触媒の製造の点で好ましい。Cuの20%以下含まれた触媒は、前記触媒調製時アンモニウム炭酸塩で触媒の前躯体である金属窒化物を金属炭酸塩に共析出する時に、Cuイオンがアンモニウムイオンによって錯体され可溶化することによって定量的な組成をもつ触媒の調製が難しい。さらに、Cuが80%より多い比率の触媒の調製は可能であるが、触媒による炭素ナノ繊維の合成収率が5%未満であるので経済性に欠ける。
【0022】
図5は、熱処理炉(水平炉)の石英管(内径45mm)内に載置された石英ボート内に、80質量%Cu-20質量%Ni合金触媒を30mg装入し、種々の組成比のエチレンと水素の混合ガスからなる反応ガス(流速200ml/min)中にて580℃で1時間反応させることによって炭素ナノ繊維を生成したときの、反応ガスの組成比と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示したものである。
【0023】
図5の結果から、反応ガスのエチレン/水素組成比を変化させることによって、炭素ナノ繊維の比表面積を制御できることがわかる。
【0024】
なお、反応ガスは、エチレンと水素の混合ガスであり、この混合ガス中のエチレン/水素組成比が体積百分率で100/0~5/95の範囲であることが製造収率の点で好ましい。 混合ガス中のエチレン/水素組成比で水素の比が体積百分率で95以上の場合は、1時間以上合成しても合成収率が5%未満であり、経済性に欠ける。
【0025】
図6は、熱処理炉(水平炉)の石英管(内径45mm)内に載置された石英ボート内に、20質量%Cu-80質量%Ni合金触媒を30mg装入し、80体積%エチレンと20体積%水素の混合ガスからなる反応ガス(流速200ml/min)中にて種々の温度で1時間反応させることによって炭素ナノ繊維を生成したときの、反応温度と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示したものである。
【0026】
図6の結果から、反応温度を変化させることによって、炭素ナノ繊維の比表面積を制御できることがわかる。
【0027】
なお、反応温度は、450~620℃の範囲であることが生成した炭素ナノ繊維の純度と合成収率の点で好ましい。合成温度が620℃以上の場合、炭素ナノ繊維合成時、エチレンガスの熱分解によって非晶質の炭素が炉内に形成され、生成した炭素ナノ繊維の表面を汚す。さらに、合成温度が450℃以下では、1時間以上合成を行っても合成収率が5%未満であり、経済性に欠ける。
【0028】
以上のことから、本発明では、Cu-Ni合金触媒の組成比、反応ガスおよび/または反応温度を変化させることにより、炭素ナノ繊維の比表面積を23~766m/gの範囲内の特定値に制御することができる。
【0029】
加えて、反応時間は、2分~2時間とすることが合成収率の点で好ましい。 反応時間が2分以下では合成収率が5%未満であり、経済性に欠ける。さらに、反応時間が2時間以上の場合は、合成収率が上がらない。
【0030】
また、Cu-Ni合金触媒は、その生成方法によっても、炭素ナノ繊維の比表面積に影響を与えることも判明している。
【0031】
本発明では、Cu-Ni合金触媒の生成方法として、Cu-Ni窒化物をカーボンブラック上に担持した後に大気中でカーボンブラックを燃焼させて消失させる、いわゆる空気燃焼法を採用することとしこれによって、比表面積の制御は可能であるが、特に350m/g以上の高表面積炭素ナノ繊維を合成する場合に有利である。触媒調製時、カーボンブラックに担持せずに一般的な酸化、還元法で調製したCu-Ni(2/8)の触媒は、同一条件で合成を行っても得られた炭素ナノ繊維の表面積350m/gよりも大きくすることはできない。なお、上記した図4~6の結果は、いずれも空気燃焼法によって生成したCu-Ni合金触媒を用いた場合のものである。
【0032】
さらに、炭素繊維は、比表面積の大きさによって、2種類の断面形状を有することもまた判明した。
【0033】
図7は、比表面積が766m/gであるときの炭素ナノ繊維の断面形状を走査型電子顕微鏡で撮像したときのものであり、図8は、比表面積が38m/gであるときの炭素ナノ繊維の断面形状を走査型電子顕微鏡で撮像したときのものである。
【0034】
これらの図から、炭素ナノ繊維の断面形状は、比表面積が大きくなると、クロス状になり、比表面積が小さくなると、円形になることがわかる。
【0035】
尚、上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明によれば、炭素ナノ繊維の生成条件を適正に制御することにより、所望の比表面積をもつ炭素ナノ繊維の生成が可能になった。
例えば、炭素ナノ繊維を活性炭のような用途に使用する場合には、比表面積を大きくすることができるので、高表面積を利用した硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)又はシックハウスガスのような有害ガスの吸着能力を高めることができる。
また、炭素ナノ繊維を高分子複合材料のフィラーのような用途に使用する場合には、高分子を混合する時溶媒の炭素ナノ繊維への吸収を最小限に抑制するために比表面積を小さくすることができるので、製造した高分子複合材料の溶媒吸収、脱離による複合材料の機械的物性の劣化を防ぐことができる。即ち、炭素ナノ繊維の応用によって物性を最適化制御し、最大応用物性の発揮が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、炭素ナノ繊維の構成を説明するための模式図である。
【図2】図2(a),(b),(c)は、炭素ナノ繊維の3つの代表的な構造を示す模式図であり、(a)がプレートリット構造、(b)がチューブラ構造、そして、(c)がへリングボーン構造である。
【図3】図3は、炭素ナノ繊維の生成装置の概略図である。
【図4】図4は、Cu-Ni合金触媒の組成比と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示した図である。
【図5】図5は、反応ガスの組成比と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示した図である。
【図6】図6は、反応温度と炭素ナノ繊維の比表面積の関係を示した図である。
【図7】図7は、比表面積が766m/gであるときの炭素ナノ繊維の断面形状を走査型電子顕微鏡で撮像したときのSEM写真である。
【図8】図8は、比表面積が38m/gであるときの炭素ナノ繊維の断面形状を走査型電子顕微鏡で撮像したときSEM写真である。
【符号の説明】
【0038】
1 炭素ナノ繊維
2 炭素ヘキサゴナル網面
3 炭素ナノ繊維素
4 炭素ナノ繊維素群
10 熱処理炉(水平炉)
11 石英管
12 石英ボート
13 Cu-Ni合金触媒
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7